大学生探偵福来あざみ 作:あざジャス派の猫
広田まさみさん、つまり
実際には顔と名前を変えて事件とは全く関係ない所で生きているが、そういうように処理される。
ニュースや新聞でも報道されたので、偽装工作はバッチリだ。
諸々の事情を知る人は極少数だけど、コナン君も知ってしまった。
フリではなく、決して誰にも言わないようにお願いする。
たとえ彼女の妹が目の前に現れても、絶対に話しては駄目だ。
行方不明ではなく確実に死んだと黒の組織が判断しない限り、決して追跡して始末するのを止めたりしない。
悪の秘密結社というのは、それぐらいしつこい連中の集まりなのだ。
この世界で十年以上も探偵を続けていると、嫌でも知ることになる。
ただそれでも一般的な探偵は、世界各国の悪の組織とドンパチしたりしない。
私もそんなのはごめんだけど、何故か火の粉が降りかかってくるので、払わないと殺されるのだ。
ついでに自分と無関係でも、放置すると世界平和がぶっ壊れて被害が拡大するし、人が大勢死ぬしで、選べる選択肢がとにかく頑張って解決するしかないのが悲しすぎる。
まあそれはともかく、臭い物は蓋ではなく元から断つのが一番効果的なのは当たり前だ。
今回は一人を助けるために、各方面に頭を下げて色々と手配してもらった。
とにかく面倒で大変なのだが、コナン君が高校生探偵に戻ったら、絶対に貸しを返してもらいたい。
手帳にもしっかりと記載してある。
いくら協力関係にあるとはいえ、私が一方的に負担する側だ。
庶民的な暮らしをしていても、貯金額は桁数を数えるのが面倒になるぐらい貯まっているけど、流石に無報酬のボランティアではやってられない。
まあ悪の組織は百害あって一利なしなので、しっかり潰しておきたい。
だが、それはそれこれはこれだ。
コナン君には、もし誰かに話したら、二度と協力しないからねと念押ししておく。
普段の彼はちゃんと約束は守るし、
そんな天文学的な偶然が、早々起きるはずもない。勝ったなガハハだ。
急な仕事で忙しくて心身共に疲れた私は、ご飯を食べて風呂に入ってゆっくり休息するのだった。
しかし私が布団に入ってぐーすか眠っていると、コナン君から夜中に電話がかかってきて起こされる。
確かに彼にとって自分は貴重な相談相手だが、最近は連絡の頻度が増しており、そんなにホイホイ頼られても困る。
元の姿に戻ったら、今までの貸しをまとめて請求してやると思いつつも、取りあえず急いで着替えてジャスミンさんに車を出してもらう。
夜中に呼び出された理由は、黒の組織の一員でコードネームはシェリーさんが、コナン君に接触を図ってきたからだ。
どうやら彼と同じ薬を飲んで、子供になって正体を隠して脱走したらしい。
理由は色々あるが、一番は唯一の家族だった姉が組織に殺されたからだ。
名前は
コナン君は頭の何処かに引っかかっているが、まだ思い出せてはいないらしい。
なので私は、くれぐれも余計なことを言わないように何度も念押ししたあと、もし何かあっても自己責任で済むように灰原哀さんに直接伝えるべく、わざわざ静岡まで夜中のドライブである。
ここ最近は余計な仕事ばかり増えるし、正直凄く眠い。
運転はジャスミンさんに任せて、助手席を倒して少しでも寝かせてもらう。
教授の家に着いたら、すぐに起こすので安心して寝ていて良いと、頼もしいお言葉をいただく。
本当にジャスミンさんには頭が上がらないのだった。
おかげで教授の家に到着した頃には、取りあえず疲れは取れた。
車内なので寝心地はあまり良くないが、携帯食料で小腹を満たして元気いっぱいである。
「でも何で、家の周りにパトカーが停まってるんだろう?」
「アタシとは管轄が違うから詳しいことは不明だけど。想像はつくな」
「ううー! また事件ー!?」
嘆きながらも、呼び出したコナン君に会わないと話が進まない。
ガックリと肩を落として車を降りて、巡回している警官にジャスミンさんの手帳を見せて通してもらう。
家の中には静岡県警の横溝刑事が居て、私の顔を見るなり大声を出す。
「おおっ! 福来探偵ではありませんか!
こんなところで会うとは奇遇ですなあ!
もしや! 事件解決に協力してくださるのですか!」
「ええとー、……まあ、そんなところです」
本当はコナン君に呼び出されて、保護した少女に事情を説明するためだが、彼に話すわけにはいかない。
それに言い訳を考えるのが面倒だったので、いつものように事件に巻き込まれ、成り行きで善意の協力者になったことにしておいた。
「しかし残念ですな!
福来探偵の名推理が見られると思ったのですが、事件はもう解決しているのですよ!」
「……と、言いますと?」
横溝刑事の近くにコナン君と博士が居るのを横目で確認しながら、私は彼の説明に耳を傾ける。
ちなみに知らない女の子が部屋のパソコンを操作していたが、多分あの子が灰原哀ちゃんで、コードネームはシェリーだろう。
「死んだ広田正巳さんは、本棚の上の方に乗っていた何かを取ろうとして、棚に足をかけてバランスを崩し、本棚ごと倒れ込んだ。
そして先に落ちた置物に後頭部を強打して、死に至ったのです。
その証拠に、この部屋のドアにも、部屋の上の窓にも、しっかりと鍵がかかっていました」
私はなるほどと頷く。
確かに彼の説明を聞く限りでは、密室で起きた不幸な事故にしか思えない。
さらにはたった一つしかないこの部屋の鍵は、本と共に部屋に散乱していたノートの下にあった。
「広田教授本人が鍵をかけて、その後事故で亡くなったとしか、考えられないというわけですね」
「ええ、これはどう見ても──」
「誰かに殺されたかも知れませんね」
「えっ?」
横溝刑事が結論を出す前に、眼鏡をかけた私が彼の発言に遮った。
「電話が床に転がっていますが、受話器が外れていません。
誰かが作為的に部屋を散らかして、事故に見せかけた可能性があります」
念視で犯人らしき黒い影が見えている私は、その何者かが部屋を散らかしているのがはっきりわかった。
なので真犯人のトリックを考えながら、いつも通りに推理を組み立てていく。
「待ってください! それだとこれは! 密室殺人ってことになりますよ!」
横溝刑事が立ち上がり、大きな声で発言する。
「部屋には全て、鍵がかかっていたんですよ!
その鍵は室内にあった!」
「じゃあ誰が! 誰が主人を! 誰が主人を殺したんです!」
奥さんが涙目で取り乱し、横溝刑事に詰め寄る。
だがそう簡単に、犯人やトリックがわかったら苦労はしない。
何とか落ち着かせて不審な人物を聞き出すが、コナン君や博士を含めて三、四人来ていたらしい。
ちなみに哀ちゃんが調べた限りでは、目的のフロッピーディスクはごっそり盗まれていて、パソコンのデータも消されている可能性が高いことがわかった。
「いいかいお嬢ちゃん、この部屋の物には触っちゃ駄目だ!
あっちのお部屋で、お爺ちゃんと大人しく待ってるんだ!
事件の捜査は我々警察と、福来探偵に任せて! わかった?」
またもや殺人事件に巻き込まれる私だが、悲しいかなこのぐらい慣れたものである。
そして善意の協力者だと言ったせいで、警察の捜査を手伝うことになった。
「何かわかったら教えるから」
「うん、あざみお姉さん。捜査頑張ってね」
コナン君たちと別れて、私は事件の起きた部屋に警察関係者と一緒に残る。
だが念視で調査する前に、床に落ちた電話が光っていることに気づき、裏返して元通りにしてみると、留守番電話が十三件もあることに気づく。
「十三件とは、やけに多いですね」
「とにかく聞いてみようよ!」
「そうですね。内容が気になりますし」
さっき別れたはずなのに、何故か隣にコナン君がいる。
私が追い払わずに普通に受け入れているので、横溝刑事もどう扱ったものか困惑している。
だが迷った末に、一先ず自由にさせることにしたようだ。
なおジャスミンさんは、捜査に関しては完全に私任せである。
危険がない限りは、基本的に放置なのだった。