大学生探偵福来あざみ   作:あざジャス派の猫

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山荘包帯男事件1

 日常と非日常を行ったり来たりしている私だが、今日は鈴木綾子(すずきあやこ)先輩に山奥の別荘に招待されている。

 

 特に仲の良かった六人が二年ぶりに集まるらしく、私も友人の誘いは断れない。

 公共交通機関を乗り継いで、鈴木財閥が管理する別荘に向かう。

 

 ちなみに相棒は今回もお休みで、メール連絡だけはしておいた。

 

 だが仕事ではなく、知り合いからのお誘いなのだ。

 わざわざ付き合わせるのは申し訳なかったし、自分だけで良い気もする。

 

 ちなみに相棒の名前はジャスミンさんだが、都市伝説解体センターでも転生者でもない。

 だが何の因果か公安や警察庁に顔が利き、今は私の助手兼運転手をしている。

 

 原作よりも福来あざみの立場が上だったりと、色々と変化しているようだ。

 しかし見た目も性格も、まんまジャスミンさんっぽい。

 

 

 

 それはそれとしてのんびり山道を歩いていると、女子高生と男子小学生の二人組に出会った。

 彼女たちは私に気づき、困った顔で話しかけてくる。

 

「あのー、すみません」

「はい、どうかしましたか?」

 

 私は原作でもお馴染みの、フリルのついた可愛らしい服装だ。

 着ていると妙に落ち着くのは、多分肉体に引っ張られているからだろう。

 けれどストレス軽減できるなら良しとして、幼い頃からの普段着になっていた。

 

 ただし、今回は友人に会いに行くから着ているだけだ。

 そうでなければ身バレを避けるために、外出する時は別の服装である。

 

 とにかく話しかけられたので、条件反射返事をした。

 すると今度は、何処かで見た気がする小学生が尋ねてくる。

 

「ボクたち、山奥の別荘に行きたいんだけど」

「もしかして、鈴木綾子(すずきあやこ)先輩の別荘?」

「いいえ、誘ったのは鈴木園子(すずきそのこ)なんだけど」

 

 私は鈴木園子さんについて考えた。

 そう言えば、先輩には確かそんな名前の妹が居ると聞いたことを思い出す。

 

「ああ、先輩の妹さんですね。

 私も別荘に招待されてますし、良かったら一緒に行きませんか?」

「本当ですか? それじゃ、よろしくお願いします」

 

 二人共、嬉しそうにお礼を言ってくれた。

 だが、たまたま向かう先が同じだけで大したことはしていない。

 まあ悪い気はしないので、微笑みながら口を開く。

 

「お礼はいりませんよ。

 ああ、私は福来(ふくらい)あざみです。

 こちらこそ、よろしくお願いしますね」

 

 私がそう返事をすると、女子高生と男子小学生が揃って驚いた顔をして大声を出す。

 

「福来あざみさんって! あの大学生探偵の!?」

「すごーい! 有名人だー!」

「別に大学生探偵を、名乗ってはいないんだけどね」

 

 私が大学生探偵と呼ばれるようになったのは、十年以上前に旅行先で運悪く事件に巻き込まれて、両親が容疑者にされてしまったのが原点になっている。

 

 このままでは真犯人を野放しにしたり、両親が無実の罪で逮捕されかねないと危機感を覚えて、当時幼かった私はやむを得ず眼鏡をかけた。

 自分の力で、犯罪トリックを暴くことにしたのだ。

 

 その後は両親の無実を勝ち取るために証拠品を探し、順序立てて推理をして潔白を証明した。

 

 だがそれが何の因果か、地元のニュースで大きく報道されてしまう。

 テレビ局が取材中だったのは偶然だが、私的には運が悪かった。

 

 おかげで以降は、警察やら各関係者に依頼されるようになり、そのせいで今も無駄に功績を積み上げ続けている。

 

「私は、成り行きで探偵の真似事をしているだけです。

 別に偉ぶる気はないので、あざみと呼んでくれれば良いですよ」

「わかりました。あざみさん」

 

 とにかく、私が推理して解決に導いた事件や事故など、世界を見ればほんの一握りだ。

 

 最初の件は、まさか実名報道されるとは思わなかったので、以降は顔や名前は出さないようにと切にお願いしている。

 

 念視という転生特典があっても、探偵業で食べていく気はない。

 けれど困っている人を見捨てるのは心苦しいし、無償ではなくお金も稼げれば良いなとは思っている。

 

 割と俗っぽいが、おかげで子供の頃に口座を作ってもらい、依頼を達成したら成功報酬を振り込んでもらっている。

 

 だがいくら収入を得ても、大金を持ち歩くのは怖い。

 お財布には月々のお小遣い程度の額しか入っていないし、着飾ったり散財したりもしないので、現在まで割と慎ましい生活を送っていた。

 

 両親もそういうことに理解あるのか、好きなようにやらせてもらっている。

 本当に今世も恵まれていて、ありがたい限りだ。

 大学を卒業して社会人として独り立ちしたら、絶対に親孝行しないといけない。

 

 

 

 それはそれとして、目の前の二人は何となく見覚えがある。

 会うのもこれが初めてではない気がしたので、福来ではなく下のあざみと呼ぶようにお願いしたのだ。

 

 しかし何処で会ったっけと考えても、どうにも思い出せずに首を傾げる。

 

「私は毛利蘭(もうりらん)です。蘭でいいですよ。

 そしてこっちが──」

 

 蘭さんが小学生の男子に顔を向ける。

 すると、眼鏡をかけた彼が眩しい笑顔を浮かべた。

 

「ボクは江戸川コナン! よろしくね! あざみお姉さん!」

「えっ!? 江戸川コナン! ……君?」

 

 二人の名前を聞いた私は、先程まで笑顔だったが明らかに強張る。

 

「あの、どうかしましたか?」

「ええと、変わった名前だったから、驚いちゃって」

「確かにコナン君の名前は、珍しいものね」

「そうそう、あははー」

 

 本当の理由は違うが、珍しい名前は嘘ではない。

 私は何とか表情を取り繕い、別荘に向かって歩き出す。

 

(米花町は実在してもおかしくないけど。

 小学生男子の江戸川コナン君と、女子高生の毛利蘭さんが揃ってる。

 これは偶然じゃなく必然と考えるべきだろうね)

 

 ここで私はようやく、自分が名探偵コナンの世界に転生したのだと気づく。

 薄々そんな気はしていたけど、認めたくはなかったのだ。

 月影島の一件も、まさかそんなことはないと心の何処かで否定していた。

 

 今回それが確定してしまったが、正直全く嬉しくない。

 

(いや、まだ殺人が起きると決まったわけじゃないはず。

 確率は低いけど、死なない事件や事故もあるだろうし)

 

 私の名探偵コナンに関する知識は、毛利小五郎さんと蘭さんとコナン君と黒ずくめの組織、あとは米花町が舞台のミステリー漫画ぐらいだ。

 ついでに博士の発明品がぶっ飛んでたりと、ネタ方面は多少知っているが、それだけと言えた。

 

 事件の経緯やトリックなど知る由もない。

 

 心の中の私は、高確率で事件に巻き込まれることが確定してしまい、既にガクブル状態である。

 だが決して表情には出さずに、表向きは和やかに話しながら別荘を目指す。

 

(しかし、一体どれだけクロスオーバーしてるの!?)

 

 私の今までの人生で判明しているのが、ルパン三世にシティハンターにキャッツアイ、さらにはまじっく快斗である。

 

 おまけに今回確信した、名探偵コナンだ。

 はっきり言って、クロスオーバーするにも程がある。

 

 そんな自分の心境はさて置き、目の前の少年が嬉しそうに話してきた。

 

「ねえねえ、あざみお姉さん」

「なっ、何かな? コナン君」

「ボクたち、前に何処かで会わなかった? 例えば月影島とか」

「えっ!? ええとー……ちょっと、覚えてないなー。あはは」

 

 何故かコナン君が、めっちゃ見てくる。

 どうやら私の正体を探ろうとしたり、関わった事件や事故について話を聞きたそうにしているようだ。

 でも守秘義務があるので、話せないことも多い。

 

 なので問題ない範囲を教えながら、三人で良く晴れた山道を歩いて行くのだった。

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