大学生探偵福来あざみ 作:あざジャス派の猫
日常と非日常を行ったり来たりしている私だが、今日は
特に仲の良かった六人が二年ぶりに集まるらしく、私も友人の誘いは断れない。
公共交通機関を乗り継いで、鈴木財閥が管理する別荘に向かう。
ちなみに相棒は今回もお休みで、メール連絡だけはしておいた。
だが仕事ではなく、知り合いからのお誘いなのだ。
わざわざ付き合わせるのは申し訳なかったし、自分だけで良い気もする。
ちなみに相棒の名前はジャスミンさんだが、都市伝説解体センターでも転生者でもない。
だが何の因果か公安や警察庁に顔が利き、今は私の助手兼運転手をしている。
原作よりも福来あざみの立場が上だったりと、色々と変化しているようだ。
しかし見た目も性格も、まんまジャスミンさんっぽい。
それはそれとしてのんびり山道を歩いていると、女子高生と男子小学生の二人組に出会った。
彼女たちは私に気づき、困った顔で話しかけてくる。
「あのー、すみません」
「はい、どうかしましたか?」
私は原作でもお馴染みの、フリルのついた可愛らしい服装だ。
着ていると妙に落ち着くのは、多分肉体に引っ張られているからだろう。
けれどストレス軽減できるなら良しとして、幼い頃からの普段着になっていた。
ただし、今回は友人に会いに行くから着ているだけだ。
そうでなければ身バレを避けるために、外出する時は別の服装である。
とにかく話しかけられたので、条件反射返事をした。
すると今度は、何処かで見た気がする小学生が尋ねてくる。
「ボクたち、山奥の別荘に行きたいんだけど」
「もしかして、
「いいえ、誘ったのは
私は鈴木園子さんについて考えた。
そう言えば、先輩には確かそんな名前の妹が居ると聞いたことを思い出す。
「ああ、先輩の妹さんですね。
私も別荘に招待されてますし、良かったら一緒に行きませんか?」
「本当ですか? それじゃ、よろしくお願いします」
二人共、嬉しそうにお礼を言ってくれた。
だが、たまたま向かう先が同じだけで大したことはしていない。
まあ悪い気はしないので、微笑みながら口を開く。
「お礼はいりませんよ。
ああ、私は
こちらこそ、よろしくお願いしますね」
私がそう返事をすると、女子高生と男子小学生が揃って驚いた顔をして大声を出す。
「福来あざみさんって! あの大学生探偵の!?」
「すごーい! 有名人だー!」
「別に大学生探偵を、名乗ってはいないんだけどね」
私が大学生探偵と呼ばれるようになったのは、十年以上前に旅行先で運悪く事件に巻き込まれて、両親が容疑者にされてしまったのが原点になっている。
このままでは真犯人を野放しにしたり、両親が無実の罪で逮捕されかねないと危機感を覚えて、当時幼かった私はやむを得ず眼鏡をかけた。
自分の力で、犯罪トリックを暴くことにしたのだ。
その後は両親の無実を勝ち取るために証拠品を探し、順序立てて推理をして潔白を証明した。
だがそれが何の因果か、地元のニュースで大きく報道されてしまう。
テレビ局が取材中だったのは偶然だが、私的には運が悪かった。
おかげで以降は、警察やら各関係者に依頼されるようになり、そのせいで今も無駄に功績を積み上げ続けている。
「私は、成り行きで探偵の真似事をしているだけです。
別に偉ぶる気はないので、あざみと呼んでくれれば良いですよ」
「わかりました。あざみさん」
とにかく、私が推理して解決に導いた事件や事故など、世界を見ればほんの一握りだ。
最初の件は、まさか実名報道されるとは思わなかったので、以降は顔や名前は出さないようにと切にお願いしている。
念視という転生特典があっても、探偵業で食べていく気はない。
けれど困っている人を見捨てるのは心苦しいし、無償ではなくお金も稼げれば良いなとは思っている。
割と俗っぽいが、おかげで子供の頃に口座を作ってもらい、依頼を達成したら成功報酬を振り込んでもらっている。
だがいくら収入を得ても、大金を持ち歩くのは怖い。
お財布には月々のお小遣い程度の額しか入っていないし、着飾ったり散財したりもしないので、現在まで割と慎ましい生活を送っていた。
両親もそういうことに理解あるのか、好きなようにやらせてもらっている。
本当に今世も恵まれていて、ありがたい限りだ。
大学を卒業して社会人として独り立ちしたら、絶対に親孝行しないといけない。
それはそれとして、目の前の二人は何となく見覚えがある。
会うのもこれが初めてではない気がしたので、福来ではなく下のあざみと呼ぶようにお願いしたのだ。
しかし何処で会ったっけと考えても、どうにも思い出せずに首を傾げる。
「私は
そしてこっちが──」
蘭さんが小学生の男子に顔を向ける。
すると、眼鏡をかけた彼が眩しい笑顔を浮かべた。
「ボクは江戸川コナン! よろしくね! あざみお姉さん!」
「えっ!? 江戸川コナン! ……君?」
二人の名前を聞いた私は、先程まで笑顔だったが明らかに強張る。
「あの、どうかしましたか?」
「ええと、変わった名前だったから、驚いちゃって」
「確かにコナン君の名前は、珍しいものね」
「そうそう、あははー」
本当の理由は違うが、珍しい名前は嘘ではない。
私は何とか表情を取り繕い、別荘に向かって歩き出す。
(米花町は実在してもおかしくないけど。
小学生男子の江戸川コナン君と、女子高生の毛利蘭さんが揃ってる。
これは偶然じゃなく必然と考えるべきだろうね)
ここで私はようやく、自分が名探偵コナンの世界に転生したのだと気づく。
薄々そんな気はしていたけど、認めたくはなかったのだ。
月影島の一件も、まさかそんなことはないと心の何処かで否定していた。
今回それが確定してしまったが、正直全く嬉しくない。
(いや、まだ殺人が起きると決まったわけじゃないはず。
確率は低いけど、死なない事件や事故もあるだろうし)
私の名探偵コナンに関する知識は、毛利小五郎さんと蘭さんとコナン君と黒ずくめの組織、あとは米花町が舞台のミステリー漫画ぐらいだ。
ついでに博士の発明品がぶっ飛んでたりと、ネタ方面は多少知っているが、それだけと言えた。
事件の経緯やトリックなど知る由もない。
心の中の私は、高確率で事件に巻き込まれることが確定してしまい、既にガクブル状態である。
だが決して表情には出さずに、表向きは和やかに話しながら別荘を目指す。
(しかし、一体どれだけクロスオーバーしてるの!?)
私の今までの人生で判明しているのが、ルパン三世にシティハンターにキャッツアイ、さらにはまじっく快斗である。
おまけに今回確信した、名探偵コナンだ。
はっきり言って、クロスオーバーするにも程がある。
そんな自分の心境はさて置き、目の前の少年が嬉しそうに話してきた。
「ねえねえ、あざみお姉さん」
「なっ、何かな? コナン君」
「ボクたち、前に何処かで会わなかった? 例えば月影島とか」
「えっ!? ええとー……ちょっと、覚えてないなー。あはは」
何故かコナン君が、めっちゃ見てくる。
どうやら私の正体を探ろうとしたり、関わった事件や事故について話を聞きたそうにしているようだ。
でも守秘義務があるので、話せないことも多い。
なので問題ない範囲を教えながら、三人で良く晴れた山道を歩いて行くのだった。