誤字脱字の修正報告ありがとうございました。
思ったより皆さまに読まれてたので嬉しかっです。
と言う事で続きです。
あれから数日が経っていた。
この国の情勢というか様子を伺う為に大人しくしていた今、私はとある事に直面していた。
「ひ、ひまだ」
そう、暇なのである。
城の様子や雰囲気など伺う為に大人しく用意された自室に引きこもっていたのはいいのだか何せやる事がない。
この数日、夜になると部屋に来るアーサー王ことアルトリアと一緒に寝たり甘やかしたり愚痴を聞いたりなど、それぐらいしかやってないのだ。
ある意味、自宅警備員と言ってもいいだろう。
その結果、余りにも暇を持て余した私は部屋のさまざまな所に魔術を仕込んでしまったぐらいだ。
むしろ仕込んでない所を探す方が難しいかも知れない。
そのレベルで部屋中に仕掛けた。
核弾頭が爆発してもこの部屋だけは残るかも知れないぐらいに、この部屋は強固になってしまった。
しかも仕込んだ魔術自体もかなり陰湿な物が多い。
その設置した魔術は他人の魔術に反応して発動するタイプの物だ。
つまり他人が魔術を使ったときに出る魔力を吸収し増幅して起動するというとてもコストパフォーマンスに優れている設置型魔術なのだ。
逆を返せば魔術を使わない限り魔力反応などを感じる事が出来ない為、魔術師だろうと気づく事が出来ないという魔術師殺しなようなものだ。
そんな感じに考えていると部屋の強制転移の魔術が起動した。
それと同時に何処か情けない声が響く。
「う、うわぁ!!」
何処から情けない声を上げながら現れたそれは魔術金属ロープでぐるぐる巻きにされ寝室に転がった。
一瞬、敵襲かと身構えて見たらマーリンだった。
こやつまた何か悪巧みをしているのか?
心底何をやっているのか不思議だか、実はこいつも暇なのかも知れない。
そう考えれば良い暇つぶしになるかも知れない。
魔術で編まれた金属ロープを頑張って外そうとしているのかビタンビタンと床を跳ねているそれを見ながら私は声をかけた。
「あら。これは覗き魔様ではありませんか。わざわざ覗き見るぐらい貴方も暇なのですね。よかったらお話の相手になってくれませんか?」
「いやいや。残念ながら忙しくてね。僕は今の城の様子を早急に確認しないといけないんだ。だからこれを外してくれないかい?」
いや、どう見ても嘘やろ。
魔術の覗きに対するカウンターが発動している以上、私を見ようとしたのは間違いない。
何をそんなに隠す事があるのか心底謎だ。
「言い訳を言うのは勝手ですけど、大人しく答えた方が身のためですよ。じゃないとアル様に言いつけますよ」
王としての孤独だった彼女が秘密を打ち明けられる人を得た結果として私にベッタリになってしまった。
甘やかしている私が悪いのかも知れないのだか。
「わ、わかった。大人しく話すからアルトリアに言うのだけ許してくれ」
そう言うと今だに私が男か疑っていると言う事を打ち明けられた。
確かに実は女だったのでは無いかと思うぐらい可愛いけど残念ながら男だ。
「確かに見た目は絶世の美女かも知れませんが残念ながら男ですよ」
「さりげない自慢だ。いやそうじゃないんだよ。確かに可愛いけど!!何か良い匂いもするけど!!」
「えへへ、そうですか」
おふざけ半分で朗らかに微笑む。
「ぐっ。この僕が可愛いと思ってしまうなんて不覚だよ」
そんな感じに遊んでいると外から知っている気配が近づいてくることに気づいた私はピンと、とあること思いつく。
「そんなに気になるなら確かめて見ます?」
何処かあやしげに私はそう言うとマーリンを縛っている鎖を外して地面に落とし、彼の手を取る。
そしてその手にドレスの裾を持たせ少し捲らせると同時に私は掴んでいる手を離した。
その瞬間、部屋の扉が開いてアルトリアが入ってきた。
「ヴィ。この後一緒にピクニックにでも……マーリン。貴方何をやっているんですか?」
何処か怒気が漏れた言葉にマーリンが慌てた様に言葉を返す。
「こ、これは違うんだよ。ね、ちょっとしたお遊びさ。そうだろうギネヴィア」
「私が本当に男かどうか確かめる為に部屋に侵入してきて服を脱がそうとドレスを捲ってきたのです」
「い、いや。確かに今の状況はどう見てもそうだけど…」
「マーリン、貴方にはちゃんと男だと説明した筈ですよ」
「確かにそうだけどね…」
マーリンがそんな感じに俯くとバッと顔を上げた。
「こうなったら逃げるが勝ちさ」
私は魔術を使い逃げ出そうとするマーリンの足もとの鎖を動かしてアルに見えない様に巻きつける。
「なっ!?」
「今日と言う今日は逃しませんよ!!」
アルがそう言うと腰の聖剣を引き抜き振りがざす。
「ま、まって流石にそれはやり過ぎだよ!!」
「問答無用!!エクスカリバー!!」
「ぐわぁああ」
大きな光と断末魔を上げ、吹き飛ぶマーリンを見ながらーー
「悪は滅びるものですね」
と私は呟いたのであった。
ーーーーー
所は変わってギネヴィアは執務室に来ていた。
ギネヴィアは部屋をノックして中から声を掛けられると扉を開き中に入った。
部屋の中はその人物を象徴とするかの様に几帳面に片付けられていた。
「ケイ様。厨房に入る許可が欲しいのです。入ろうとしても何故か追い返されるんです」
何処かめんどくさそうに書類から顔を上げたケイは言葉を返す。
「何をしたんだ?」
「私自ら料理を作ろうと思いまして…お願いしたら断わられたんです」
ケイは何を当たり前の事をと言った感じにギネヴィアの方を見た。
「当たり前だろ王の妃がやる仕事じゃないからな」
「そんな事言わないで使用許可をください!!アル様にも許可を貰ってきました」
「そんな事を言っても俺は許さないからな」
「お願いします。働かせてください!!」
「五月蝿いぞ。仕事の邪魔をするなら出ていってくれ」
「ガウェイン様は料理しても怒られないのに、何故、私だけダメなんですか!!」
「わかるか?変な所で馬鹿をやるあいつを止められる奴がいないだけだ」
「わかりました。好きにやれって事ですね」
「やめろ。勝手な解釈をするな」
「硬いパンと潰したジャガイモには飽きたんです。ケイ様は変わり映えのしない料理が好きなんですか!?」
「確かに飽き飽きしているが、今のこの国に贅沢する余裕はない」
「なら大丈夫です。私が育てた食材を持ってきているのでこの国の負担にはならないです」
何処までも食い下がらないギネヴィアにケイは諦めると渋々といった感じに言葉を返した。
「はぁ…わかった。そこまで言うなら料理しても良いが周りに迷惑をかけるなよ…」
「やったーありがとうございます。ちゃんとケイ様の分も用意しますからーー」
そう言って出て行ったギネヴィアを見ながらケイは愚痴を溢す。
「はぁ…何故、お前らは揃いも揃って面倒事を持ってくるんだ」
ケイはため息を吐きながら書類仕事に戻るのであった。
ーーーーー
と言う事でやってきました。
お料理のお時間です。
ケイとの怒涛の口合戦に勝った私は意気揚々と調理場に来ていた。
今日の為に用意した魔法の袋から食材をポンポンと取り出し並べていく。
そう今の私はある意味無敵なのだ。
何だって作る事が出来る。
今こそジャガイモの束縛から解放される時!!
「さてそれはそうと、何を作りましょうか?」
「ジャガイモのマッシュなどはどうですか?」
気がつくと横にガウェインが居た。
出た。晩餐会にて、出されたジャガイモをお世辞で美味しいと言った結果、何をとち狂ったのか善意で私の朝昼晩をジャガイモのマッシュにした諸悪の根源が。
偶に食う分には良いけど毎日朝昼晩は流石に辛いわ。
「で、出ましたね。ジャガイモに心を奪われた悲しきモンスター。あとジャガイモのマッシュは料理じゃないと思いますよ」
「何を言ってるんですか?ちゃんとした料理ではありませんか」
駄目だ。話が通じない。
「それで何故いるんですか?」
「姫様が料理をするとのことなので料理の経験者のこの私が見守ろうと思いまして」
こいつこんな感じで料理の経験者だと!?
馬鹿な。ジャガイモのマッシュ以外を出された事がないぞ!?
いや待てよ。そもそも素材が無いからこうなっているだけなのでは?
私は恐る恐るマッシュ以外に何が作れるか聞いてみる。
「ちなみにジャガイモのマッシュ以外に何が作れるんですか?」
「何って?ジャガイモのマッシュが作れますよ」
やっぱりお前の料理はジャガイモのマッシュしか無いんかい!!
それで良くもまぁ料理が出来るって言ったな!!
後ろで心配そうにこちらを見てるコック達が何が言いたげな表情をしてるぞ。
それが見えんのかい!!
「わかりました。貴方に料理とは何かというのを叩き付けてあげます」
「良いでしょう。私が相手になります」
キリッした顔で宣言しているけどお前はマッシュしか作れないじゃないか!!
こいつ、下手したらジャガイモを使ってないから料理では無いとか言い出して、はいお前の負けーとか言い出さないか?
それはそれで悔しいのでジャガイモをメインに作れる料理…
マッシュの上位互換。
考えた私の頭に閃きが来る。
そうだコロッケがあるじゃないか。
一品はそれで行くとして、他の料理をどうするか…
折角、油を使うならその系統で行くか?
いや、流石に重いか?
だが体動かしているコイツらなら重たい物でもパクパクと行きそうな感じかする。
良し決めた子供が大好きな定番。
エビフライ、唐揚げ、コロッケこれに合わして適当にスープと野菜を添えて置けば良いだろう。
当然、パンは柔らかい奴にする。
私がそう決めた。
「いざ、料理の時間です!!」
ーーーーー
私ことアルトリアはソワソワしていた。
今日は迷惑を掛けたと言うことで愛しの妻のヴィが料理をしてくれる言ってくれたからだ。
マーリンの事なら自業自得なので気にしなくて良いと思うのですか…
そんな事を考えていると美味しいそうな料理が円卓の上に次々と並べられていった。
円卓の騎士達にも料理が行きつくと同時に食事が始まる。
「これは何でしょうか?」
私はまず色とりどりの料理の中からメインの一つであろう狐色に上がった丸いひらべったいそれをフォークで刺す。
それは刺したと同時にサクッと良い音色が小さく響いた。
私はそれを恐る恐るそれを口に入れるとサクッサクッと言う音色を響かせると同時に熱さを感じた。
こ、これは熱い。だか美味い!!
「ジャガイモとは、こんなに美味しい物だったのですね」
一見シンプルそうな料理だか断面を見てみればそうでは無い事に気づく。
ジャガイモ以外にも刻まれた物が幾つも入っている。
それは、肉や野菜などが適量に刻まれて入っており手間暇かけて作った事が分かる。
「アル様。こちらをかけると更に美味しくなりますよ」
そう言ってヴィが持ってきたのは黒い液体だった。
「ヴィ、これは?」
「ソースといってこのパン粉を使った衣によく合うのです」
私は恐る恐るそれをかけると口に運ぶ。
その瞬間、味の旨味が爆発した。
何ですかこれは。
ジャガイモのねっとりした甘さにスパイシーさを感じるソースが見事に調和をしていた。
衣油のくどさを軽減するとともにジャガイモの味をさらに良くするそのソースに驚く。
「ヴィ。とても美味しいです。今日はこの様な場を作ってくれて本当にありがとうございます」
「いえいえ。こちらこそ美味しそうに食べてくれてありがとうございます。それでこそ作った甲斐があります」
私とヴィがお礼を言い合っている横でガウェインが大きな声で叫んでいた。
「これがマッシュの極地。完成形だとでも言うのが!!このソースと言うのも凄い。まさかジャガイモのマッシュに何かをかけるという発想が無かった!!私が今まで作ってきたあれは何だったんだ!!」
そう叫んでいるガヴェインにヴィが得意げに話しかける。
「ふふっ。どうやら私の勝ちですね」
そう言って腰に手を当てて胸をむんと張っている姿は大変可愛らしい。
本当に男なのだろうか?
知っているはずのそれを疑ってしまうほど可愛い。
そして、料理も上手いと来た。
ヴィはどれだけ私を喜ばせれば済むのでしょうか。
私があの時、嫁を選ぶ時にした選択は間違いなかったと思いながら次々と口に運ぶ。
その横でガウェインが感嘆そうな息を洩らすと言葉を紡いでいた。
「王の姫よ。これは私の負けです。貴方にキングオブマッシュ王の称号を譲ります!!」
意気揚々と叫んだそれをヴィは否定する。
「そんなダサい称号は要らないです。嬉しくありません」
「姫、何故ですか!!私は貰ったら嬉しいですよ!!姫!!」
私は何処かやりづらそうにしているヴィに助け舟を出す。
「ガウェイン卿よ。今この時は楽しい食事会なのです。料理を味わわないと失礼ではありませんか?」
「確かに王の言う通りだ。今はこのマッシュを味わわなければ!!」
そう言って再び口に運び始めたので横目で見ているとヴィが話しかけてきた。
「助けてくれてありがとうございます」
「いや。良いのです。妻を助けるのも夫の勤めですから」
そう言って次の料理に行く前に野菜のサラダに手をつける。
この揚げ物の油で、くどくなりつつある口をサッパリさせる為に新鮮なサラダにドレッシングがかかっているそれを口に運ぶ。
こ、これは美味い!!
口に広がる野菜独特の苦味をサッパリした塩の効いたドレッシングが旨い事調和を取っている。
これでは幾らでもこれが食べられてしまうじゃないか!!
なんという食べ物の合わせだ。我が嫁ながら恐ろしい。
「アル様。この横の揚げ物もまた違った物で作ってるので、美味しいと思いますよ」
馬鹿な!?
これほどの料理を作っておきながらまだ目の前に未知があるというのか!!
「いざ、参ります!!」
そうして意気揚々と口に運んだ細長いそれはプリプリとして歯応えがあり美味しかった。
今さっきのマッシュと比べると甘さの質が違う。
こちらは淡白な甘さと言った感じで、これはこれで美味しい。
そして何処か食べた事があるこの味について考える。
考えてふとそれに気付く。
もしかしてこれはあのエビなのですか!?
以前、旅をしていた時に寄った漁村で食べた事がある。
ただ茹でて出されたそれはエビの殻のせいで食感が悪かった。
そして何処か臭みと苦味を感じたのだ。
あの時、食った時はそれでも美味しいと思ったがそれを圧倒的に越えるほど美味しい物を食った今では、もう美味しいとは思えない。
なんて事をしてくれたのですかヴィ。
そんな事を考えているとまたもやヴィが小さい器を持ってきた。
「これにつけると更に美味しくなりますよ」
馬鹿な!!これより更に美味しくなると言うのか!!
器を見ると少し黄色かかったクリームみたいな物が乗っかっていた。
「ヴィ。これは?」
「これはタルタルソースと言って淡白な味付けの揚げ物とよく合うのです」
なるほど。わざわざこのエビに合わせて作られたと言うことなのか。
絶対美味いに決まっている。
颯爽とそのタルタルソースというものにエビを潜らせると口に入れる。
美味すぎる!!
何だこれは。
ドロっとした濃厚なソースの美味さに何処か酸味のある味、それがこの淡白なエビに見事マッチしているではないか。
美味しいご飯に考え事をしているとヴィが話しかけて来た。
「アル様。アル様。こちらも食べませんか?」
そう言って出された物は今さっきの物とは少し違った。
フォークで刺し目の前にそれを持ってくる。
「これは衣が違う?」
「そうです。流石はアル様ですね」
いざゆかん。
ハムッと口に入れて噛むとそれは恐ろしいほど肉汁が溢れた。
カリッとしてジューシー。
柔らかい肉に溢れる様にでる肉汁。
そして、香辛料で味付けされているだろう肉が食欲を更に誘う。
これは魔性の食べ物だ。
誘惑に抗えずもう一つ口に入れてしまった。
手が止められない。
何と言う美味しいさ。
そうしていると、横でヴィが何かを搾りかけてフォークに刺してこちらに寄せてきた。
「はい。あーん」
そう言って突き出されたそれをモギュッと口に入れると、今さっきの味に酸味が追加されていた。
ただ酸味が追加されたとは言わせない。
肉の肉汁がその酸味によって、サッパリとして美味しく食べれる。
なんて言う事をしてくれたのですか。
これではもう普通の食事に戻れなくなるじゃないですか!!
そう考えているとヴィがこちらを見ていた。
「ふふっ。美味しいそうに食べる物ですからついつい見てしまいます」
そう言ったヴィはとても優しそうで何処まで包み込む様な感じがした。
「まだまだ美味しい物がありますから、食事を楽しみましょう?」
こうして、ヴィが開催した晩餐会は大盛況のもと閉じたのであった。
但し、後日出された料理が味気ない様に感じてしまい急遽円卓会議を開くことになってしまったのであった。
短編から連載にすると色々と変えるところが出るのでタイトル周りが少し変わるかもしれない。
あとタグとサブタイトルが思いつかんなり。
今日もう1話出すつもりなので良かったらどうぞ。