「山田 ジロウ君です」
間もなく今日の授業も終わりという頃、校舎に設置されたスピーカーが作動した。
≪船越先生、船越先生。 吉井明久君が体育館裏で待っています≫
クラス中の視線が僕の所に集中する。
…………無論僕に心当たりは無い。
「おいィ?お前らは今の言葉聞こえたか?」
一応、僕にだけに聞こえた幻の幻聴じゃないか確認をする。
うん、みな頷いているあたりこれが幻聴じゃないのは確定的に明らかだ。
ふふ、あの声は須川君だったかな? 君はなんて事をしてくれたんだい。
君のおかげで僕のストレスがマッハだよ。
謝るにも時すでに時間切れ。HRを終えると、カカッと荷物をまとめてとんずらで須川君を探し出すんと捜索を始める。
☆ ☆ ☆
「やあ、雄……二?」
とりあえず、Fクラスを訪れたのはいいものの、目的である須川君はいない。
居所を知ってそうな、顔見知りである坂本雄二を呼ぼうとしたのだが…………
「正確に言うならば“だったもの”じゃな」
少々疑問気味になってしまった僕の呼び掛けを修正してきたのは、恐らく学園でも十指に入るであろう美少女の木下秀吉だ。
「誰が美少女じゃ、ワシは男じゃぞ」
「かぎかっこの中に入っていない文字は地の文と言って心の中で言っていることなんだけど………… ってやっぱり“コレ”雄二なんだ」
木下秀吉が雄二をこう表現したのは見れば誰もが納得するだろう。
全身ズタボロでむしろ怪我してない部分を探す方が難しい 、恐ろしいことに男性の急所まで攻められていた。
怪我をした部分に包帯を巻いたらミイラのラムさんの完成だろう。
「吉井、少々ネタが古すぎぬか?」
「だから、地の文は読まないでくれ。 ……しょうがない、秀吉。須川君知らないかい?」
「須川かの、奴なら今前線じゃな、じき補給に来るじゃろうて。ここで待っていたらどうじゃ?」
「ふふふ、そうさせてもらうよ」
とりあえず、確保できた武器は靴下と流し台の石鹸を使って作ったブラックジャックだ。
今回は痛めつけるだけなのでこれでも良いだろう。
「ふいー 疲れた。おい代表、次の指示は……よ、吉井!?」
来た! 手製のブラックジャックを上から振り上げ、一直線に突っ込む。
「謝る、謝るから石鹸でぶたないでくれ!!」
「絶対に許さなえ!! 君が、泣くまで、殴るのを、止めない!!」
さすがに頭を狙うのは不味い、肩口を狙い、振り下ろすように打ち据え、怯んだ所を横合いから一撃
更に、さらに下半身めがけてタックル、マウントポジションを取ってもう片方の靴下を口にねじ込んで戯言を封じーー
「代表の、坂本の指示だッ!!」
須川のその声で、教室に静けさが戻る
ーーはは、そうかい。
ようやく理解できたよ、君は僕の敵だ。
「雄二、神は言っている。“ここで死ぬ定めだ“ っと」
須川の水月に一撃食らわせると、ゆらりと立ち上がる。悶絶しながら逃れようとする須川君だが……
「秀吉、悪いけどそれ見張ってて」
「う、うむ。 わかった、時に落ち着くがよい明久。
いくら名誉を貶められたとはいえ焦るのは良くないとおもうのじゃが」
秀吉が、須川をがっちりと動けないように身動きを封じる。
「焦っているだと 私は冷静だ」
ズタボロ状態で椅子に座って燃え尽きたぜ、な状態である以上、調理は思うがままだ。
「あーいかんなぁ、雄二こんな策略」
とりあえずワンパンですまそう。
そう思い、振り上げた拳をーーーーーーーーーーー極められた。
「痛い、痛いィィ」
痛みに頭が真っ白だ。
「代表、それ以上いけない」
秀吉が間に入ってとめてくれた。
全く、やむを得ずFクラスになった姫路さんを除いたら数少ない常識人の秀吉がいて良かった。
「ん、なんだ明久か。 Fクラスにもはいれなかったバカが何のようだ」
「ひでぇ、友達になんて言い様だ! って言うか今まで認識されて無かったのか!」
「代表、生憎と明久はAクラスじゃ」
「あれ、秀吉、何で知ってるの?」
「姉上がAクラスにおるからの、諸用があってAクラスの近くに行ったのじゃ。ヌシの噂は嫌でもきこえたのじゃ」
ああ、そういえば 姫路さんと答案をすり替えたとか、姫路さんの答案をカンニングしたとか悪い噂は結構ながれてたっけ。
「前者はあり得ねえだろ、いくらすり替えるスキが有ったとしてもこいつの“ ミミズが腸捻転で断末魔が 入ったような下手くそな字 ”を教師が見間違えるはず無いだろ。
「うんうん、僕がそんな事する訳何気に酷いこと言われてる!?」
思わず秀吉に視線で救いの手を求めるが…………
「すまぬ、否定はできぬ」
「全くだ」
やめて、僕のLPはもうゼロよ!
あと一回気絶したら死んじゃうから!
あ、須川君。どさまぎに逃げよう何て思っても無駄だよ?
☆ ☆ ☆
とりあえず体育館裏には須川君をノシ ではなく熨斗つけて置いといたから問題ない。
全く、新学期初日からえらい目にあった……
ちなみに雄二をボコったのは霧島嬢