GANTZ∶K   作:一般通過龍

2 / 7
この回の大部分は過去回想になります。


2

ロングコートのように長い黒スーツとコロンビナマスクと呼称されるアイマスクを装着している存在が夢の国とも呼ばれる遊園地に存在するベンチ椅子を一人で占領するかのように座り込んでいる。

 

それの存在は、あまりにも白すぎる肌と言った特徴がある故に通りすがる人間達が何度も見るほどだった。

 

その白さから一種の芸術品。ミロのヴィーナスのような彫刻ではと間違えるほどの美形ぶりだった。それほど、椅子に座っている彼女はこの世界と調和していたのであった。

 

赤黒い目はしていない。そもそも、彼岸島の吸血鬼は感情の高ぶりによって目の色を変えることが出来るから、ただの人間に偽装することは、理論上誰だって可能なのだ。

 

それでも、特徴的な肌や髪の驚きの白さ、奇抜な装いに目を奪われる人間が相次いで続出しているが。

 

『ガハハハ!!クソ人間の死体で作成されたキャンプファイヤーは面白ェな!!』

 

『樽詰めした人間から流れ出てくる血液を飲みながら見るパレードは最高だぜェ!!』

 

『ハッ、今のこの施設はタワー・オブ・テラーなるぬレイプ・オブ・テラーに見事に変貌したよ。クソ人間!!』

 

『どうだぁ!!我らの雅華様が夢の国を改装して作り上げたドリーム・ブラッド・ランドは楽しいかぁ!!』

 

この遊園地を全員、品性下劣な吸血鬼が経営するクソみてェな悪夢の遊園地にしてみたイメージを妄想してみたが、思ったよりも何も感じないな。

 

誰が不幸になっても、人類滅亡しても知るか。命や愛という言葉など虫唾が走るほど気持ち悪い。

 

やっぱり吸血鬼化したことで感性が変わっている。はて、この心の冷えようの原因はキモ傘と呼ばれる彼岸島の吸血鬼としての仕様なのか、それともGANTZ吸血鬼としての側面か?

 

原住吸血鬼としての側面はないな。あれは人間と共存に成功した吸血鬼だから。

 

となると・・・前世の記憶が覚えている限り。感性が変貌した原因は、GANTZ世界の吸血鬼として側面か・・・・・?

 

この世界の局面を握る重要な〈鍵〉である、玄野計。その弟である玄野アキラが吸血鬼化した際の過程を見るに後者で間違いないか。

 

 

「やあ、キミがボクと話をしたいと言った例の吸血鬼かい?」

 

「そうだ。私が例の吸血鬼である」

 

夜の遊園地に、誰かを待っているようにベンチ椅子に座っていた吸血鬼の目の前に現れたのはある人間だった。

 

「どんな存在かと思ッたら・・・・うん、マスク越しでも分かるほど、皮膚を拝借したくなるほどの美貌ぶりだねえ・・・吸血鬼なのが残念だ」

 

「そうか、私も貴様の戦闘力に興味がある。一戦交えてくれたら、皮膚を拝借することを検討してやろう」

 

「ああ、そういうのはやめたまえ。ボクはキミの知識にある百点星人と人間達に呼称される存在と比べたら、それほど戦闘力はないほうだ。それにボクらがここで戦っても何の益も齎さないじゃあないか?」

 

人間らしい目をすることで彼岸島吸血鬼特有の赤黒い目を隠している吸血鬼と物騒な会話をする一人の人間。

 

一見するとその人間は、ただの人間のような外見をしているように見えるだろう。だが、鋭い直感を持っている人がいたら、会話の有無に限らずに、吸血鬼と対峙する人間にも違和感を抱くだろう。

 

「ハッ、再生能力や予知能力、ガンツ武器をメタる装備を持っている星人様がよく言うものだ。なあ、ひょうほん星人よ」

 

そう言うのが早いと思うと、いつの間にか手に持っていた鉄扇をゴミでも捨てるような感覚で目の前にいる人間らしき存在に軽く投げつける吸血鬼の女。

 

投げるにはとても向いてない体勢から放たれた鉄扇の速度は、メジャーリーガーの投手が投げる球速を遥かに上回っていた。このままだと、眼の前にいる人間らしき存在は鋼鉄すら容易く両断できる鉄扇になすすべもなく一刀両断されるだろう。

 

だが、ひょうほん星人と呼ばれた存在は何処からともなく取り出した手術器具で見事に対処したのであった。

 

ひょうほん星人が握っている手術刀(メス)が、殺人的な速度で向かってくる鉄扇を、凄まじい速度で、どこまでもバラバラにしていく。

 

恐ろしいまでの手際の良さだ。

 

これ以上解体しなくてもいいと、当人が判断した時には、既に鉄扇の原型は無くなっていた。粉砕とも呼べるレベルまで、鉄扇はひょうほん星人が有する超越的な技巧で細かく解体されていた。

 

「何回も言うことになるけど、ボクらが今、この場でやり合う必要性はない。それにキミだって、ボクに負けず劣らずな存在だ。今からそれを、見せてあげるよ」

 

不意に、雅華(マサカ)という名前を持つ吸血鬼から全身から重みが無くなる。

 

漆黒の虚空を落ちていく感覚を表情を変えずに味わっていた白髪の吸血鬼。しばらくすると、眼の前にある光景が現れた。

 

『頭だ!!弱点である頭を徹底的にッ!!連続で狙えッ!!倒せるッ!!』

 

『常に自身の身体に痛いという感覚を巡らせるか、頭を狙えッ!!そうすれば、ヤツの能力は耳鳴り程度で済ませることが出来る!!』

 

『血を浴びるな!!アイツの仲間にさせられるぞォ!!』

 

『キリがないよッ!!一匹も逃さないのッ!』

 

そこには怪獣もかくやな、巨大な人型のコウモリと化した姿になった挙句、自身を討伐しにきたガンツチーム相手に理性がないような、本能むき出しな戦法で暴れ回る邪鬼と呼称される怪物が映し出されていた。

 

かの有名な吸血鬼小説に登場したドラキュラ伯爵の天候操作能力で発生した嵐を思わせる、黒雲に空が覆われて、闇に染まったのではないか?と思わせる東京という舞台で暴れる邪鬼(彼女)は、手当たり次第に人間や人間以外の存在も自身が保有するウィルスで感染、吸血鬼化させたり、捕食して自身の糧にする振る舞いを見せていたのであった。

 

彼岸島の邪鬼やアマルガムは素体となった吸血鬼の潜在的な願望を表す能力や姿、行動原理を持っているのではないか?と彼岸島の作中で語られたことがある。チワワ様のように、あまり品性下劣さを感じることがない、いいデザイン(外見)をしている。邪鬼としての私は。

 

 

 

それにしても破壊力や周囲に与える被害が凄いな。彼岸島で例えるとしたら、雅様の能力を持たせた蟲の王様か?GANTZに登場する星人を比較対象にするなら、大阪編に登場した牛鬼になるか?

 

そうなると、GANTZ∶Eに登場した70点の宮本武蔵星人を瞬殺したガンツロボットと殴り合えそうな巨体をしていることから、80点台は到達しているか?

 

しかし、邪鬼という生物になっているとはいえ、有しているはずのGANTZ吸血鬼の能力を全然活かさないな。

 

知性が無いのは駄目だな。邪鬼にはなりたくないモノだ。巨大な怪物になることは、アマルガムでもできることだから。

 

犠牲を出しつつも、見事にガンツの東京チームに攻略されつつある自身が映し出されている光景を見ながら、半場他人事のように考える吸血鬼。

 

「もういい。終わらせろ」

 

『あれ?あれれ?最期まで見ないの?』

 

「いい。結末は大体分かった」

 

ふたたび戻ってきた闇の中を急速に浮上していく吸血鬼。

 

現実に戻ってきた彼女を待っていたのは、息がかかりそうな距離まで近づいていたひょうほん星人の顔だった。

 

「どう?どうだッた?」

 

「確かに私も貴様に負けず劣らずな厄介さを持っていると自負しよう。だが、所詮は倒せる範疇にいる」

 

「そうだよね。流石はクロノケイだ。充分に強いキミに対する攻略法を見つけて、追い詰めることに成功したから」

 

「だからやる気がないのだよ。貴様のご自慢の能力がなくても、どう足掻いても〈鍵〉たる人間に倒される運命が容易く想像できるから」

 

突如、暗い顔になったと思うと、人間の皮を被っているひょうほん星人に対して、愚痴を口にする女性。そこには暗に、地球人に敵対する宇宙人として活動する意味はあるか?という意味が込められていた。

 

「なに、運命を絶対視する必要性はない。キミは邪鬼になりたくないから人間の血を飲んでいるんだろ?ボクが見せたのはキミの未来の一つだ。だが、邪鬼にならずに死をもッて、無事にその生を完結する未来もある。つまり、キミの存在そのものが運命は変えることができるという証拠だよ」

 

「選択式の運命論か・・・。だが、過程は変えることができても結末は変えることができないとしたらどうする?」

 

「運命を完全に変えることができるかどうかは、最期までやッてみなければ分からないよ。それに運命を変える権利があるのは、平等だ。誰にしろあるものだ」

 

「夢を持ちすぎだな。笑えてくるよ」

 

ひょうほん星人の持論に笑みを浮かべる吸血鬼の女。

 

どうやらひょうほん星人との会話は、有意義なモノになったという結果を得たことで満足して笑みを浮かべたのだろう。

 

「ああ、時間だ。ボクは住処に帰るとする」

 

人間に擬態しているひょうほん星人が、腕にはめている腕輪のような装置を操作すると、景色に溶け込むように透明になっていく。

 

「周波数シフトも使えるのか。便利な装備だな」

 

「くふふ、技術提供があッたとはいえ、人間達のテクノロジーでできることが、ボクにできないと思ッた?ああ、キミも装備を持ッていたね。それはそれとして戦闘頑張ッてね」

 

今から起こる出来事を把握したような発言を最期に、完全に姿を消したひょうほん星人を確認した雅華がベンチ椅子から立ち上がる。

 

彼女も住処にしている場所に帰るのだろうか?

違う。

 

 

ひょうほん星人が持つ能力の特異性故に、会話をしてみようと思って実行に移したが、中々いい情報が齎されたな。邪鬼にならない未来があるなんて素敵だ。

 

 

 

彼女の周囲に黒服の集団が集まってくる。

 

「話は終わったか?」

 

「終わったよ」

 

「そろそろハンターが来る頃合いだ」

 

 

予想通りなら、今宵ここに来るハンターは実力者だが、取り引きが通じる部類だ。この予想が正しければ、周囲の吸血鬼達は死ぬだろうが、私は確実に生存できる。

 

しかし、実写版GANTZに登場した星人。壹を筆頭とした黒服星人のメンバーがモデル元の吸血鬼となって存在しているとは驚いた。どうせこの戦闘で死ぬのは確定になるが。

 

 

 

「懐里、本当に星人なの・・・?」

 

「ロックオンが効かない。一般の人間には見えない、不可知に近い状況になっている、こちらの姿を見えていること推測するに、おそらく星人だろう。明里」

 

「正解だ。貴様らがターゲットにしている星人だよ」

 

正確には元人間のな。

 

ロックオン無効化機能も持つマスクの奥に潜んでいる、彼女の目が赤黒くなった瞬間、ガンツチームと黒服の集団の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

◆◇◆

 

夜の遊園地に数多の人間達の死体が転がっている。

吸血鬼と呼称される存在の死体も。

 

「復讐だ。お前達は私達の仲間を沢山殺した」

 

よく言うな。生き続けることは殺されても仕方ない存在になり続けること。捕食者と非捕食者の関係は絶対ではない。捕食者が非捕食者に返り討ちにされて死ぬ事例が数多あるように。人間達によって、こちら側が殺される羽目になるのは仕方ないことだろう。

 

「オレはおめえみたいな星人とは初対面べや」

 

仲間であるはずの吸血鬼達が殺されても、彼女の表情は何も変わらない。人間達が惨たらしく死ぬ光景と同義ということなのだろうか・・・。それとも単に仲間意識が薄いだけなのか?

 

「石橋!避けろ!」

 

「えッ」

 

参という名前を持つ吸血鬼をやっとのことで倒した、石橋と呼ばれた男を、丸太のような太さを持つ巨大な槍が不意打ち気味に襲いかかる。

 

GANTZのゲームでは日本刀やサブマシンガン以外にも、ナイフやグレネードランチャーという武器を吸血鬼は使用していたから、やろうとすれば、色々な武器を生み出すことができると思っていたが、簡単にできるものだな。

 

流石にガンツスーツにも余裕で通じる強度を持つ武器の作成は、身体に内包しているナノマシンの量を結構消費するが。

 

・・・・・この能力はよく考えたら、創作に登場する血液操作能力の亜種と考えることができるか?そう考えたら、GANTZという作品に登場した吸血鬼達はテンプレートな吸血鬼らしい吸血鬼と定義できるか。

 

 

石橋に避けようはなかった、雅華によって投合された槍を避ける気力があってもサイコジャックという能力を使用してきただろう。そう考えると、回避行動はできないのは当然の事実だった。

 

「石橋さんも・・・そんな・・・そん・・・」

 

壹という黒服の男と相打ち気味に倒れた挙句に、今にも死にそうな状態になっている丸刈りの男が驚愕の表情を浮かべていた。

 

最期に残った吸血鬼の女は、手加減していたとはいえ奇跡的にスーツがオシャカになっている程度で済んで、倒れていた石橋に素早く駆け寄ると、吸血鬼らしく首筋に牙を突き立てて、吸血した。

 

 

「あッ、あッ、あああ・・・・」

 

石橋という男の身体が、吸血行為の快楽によって動けなくなり、体液が勝手に放出され、視界はぼやけ、呼吸が止まりかける。

 

彼岸島仕様の吸血鬼体質のおかげで、私に噛まれた人間は例外なく失禁する。おかげで服が穢れることになることがよくあるが、こういう時は便利だ。

 

「取引だ。汐原懐里」

 

「名前を知ッているだと?」

 

このガンツチームで一番の手練と思わしき汐原懐里という男の眉が潜められる。

 

「そんなことはどうでもよいではないか。見てわかる通りに私の正体は吸血鬼だ。つまり、伝承のように他者を吸血鬼化できる。撃ってみろ、その銃で飛び散った私の血がコイツを吸血鬼化をする事実に耐えきれることが」

 

前日譚の物語であるひょうほん星人編であっさりと散ったから、弱いと思い込んでいたが意外と強いな。この人間は。

 

舐めプをしていたとはいえ、ひょうほん星人が装備している腕輪型の端末を切り離す、達人の腕前があるから、ロックオン機能を無効化する装備だけを上手く壊されるのは当然の結末だったか。

アレにかかる値段は結構高いのに・・・。

 

汐原懐里と吸血鬼の女性に呼ばれた男は、石橋を一瞥してからXガンの銃口を下げた。

 

「馬鹿と呼べるくらいにお人好しすぎるな。一般的に考えたら、私ごと撃つべきだろう。そこまでいったら一周回って好感を持てる」

 

「性分というのは簡単に変えられないからな・・・・・」

 

片手で軽々と石橋を投げ飛ばすと同時に呆れ顔と呼べる表情を浮かべた吸血鬼の女が、信じられない敏捷性で懐里に迫る。

 

「懐里ッ!!」

 

ザンッ!!という音が夜の遊園地に鳴り響いた。

 

それは雅華が懐里という男を、先に彼女によって無力化された神功明里の目の前で、掌から出現させた日本刀で叩き切った時に生じた音だった。

 

強度を上げた武器を並外れた怪力で振るうことで、スーツをオシャカにすると同時にダメージを与えることができる。ザンッという音が鳴ったが、完全に一刀両断は出来ずか。まあいい、戦闘不能状態になったのは確実だ。

 

宮本明や雅様なら、簡単に一刀両断できただろうな。・・・・・しかし、あの二人組がガンツスーツを簡単に切断できる光景をイメージしやすいのは何故だろう。

 

「ではさらばだ」

 

大量出血で倒れる汐原懐里に目もくれずに、驚異的な跳躍力を見せつけながら去っていく吸血鬼の女。

 

この戦いは最期に残った吸血鬼がエリア外まで逃亡することで終わった。そして、汐原懐里は奇跡的に命を取り留めていたことで神功明里に喜ばれることになる。

 

 


 

 

「何を考えている」

 

「だいぶ前にハンターに壊された装備のことだよ。割とお気に入りの品物だったんだがな」

 

「高くなるが、また発注しようか?」

 

本当に未来は変えることはできるのだろうか。ひょうほん星人の言う通りに邪鬼にならない未来を辿ることができるのだろうか。

 

とりあえず玄野アキラを試しに生き残らせてみようか。




彼岸島の先生ェの独特なセンスを脳内に入力して外部に出力するのが難しい・・・。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。