子供の頃・・・よく考えることがあった・・・・・。
人間が神の味方か悪魔の味方か別れるとしたら・・・・・僕は・・・・・どっちだろうかと。
善か悪か・・・自分はどっちなのか・・・・。
自分では神の側だろうって感じていた。
神に愛されていると思っていた。
つい最近までは・・・・・。
「玄野アキラだな?」
自分発見セミナーという胡散臭い、それでも今の自分の状態、俺が俺であって俺でない感覚や慢性的な頭痛、背中にできたコウモリの羽のような湿疹等を説明できる講義を聞いた直後の帰り道。
突如として、友人達の背後の空間にいつの間にか現れた四人組の黒服。
赤黒い目と病的なまで白い肌と髪が特徴的な存在。男性にも女性にも見える、中性的な風貌を持っていることにも関わらず、何故か一目で男装をしている女性と自分に分かった。
四人組からなる黒服達、そんなグループの唯一の紅一点。そんな個性を得ている彼女が玄野アキラだな?と、自身の名前を確認する。
返事として無言の肯定をしてしまった瞬間、虐殺が始まってしまった。
無言の肯定を合図に丸刈りに近い短髪の男と長めの黒い縮れ毛が特徴の男と金髪の男が動き出す。勿論、彼女も。
「あッ」
「ぎゃッ」
自身が通っていたスポーツクラブの友人達が四人組の黒服達に、一人につき一人斬るという感覚で丁寧に殺されていく。
逃げることも許されない。当人達の気紛れが起きない限り、友人達に生存の目はなかっただろう。
「どうだ・・・・・気分は・・・・・怖いか?んなわけねーか」
普通は怒るなり、悲鳴をあげる何かしらの反応をするかもしれない。友人達が目の前で殺されるという状況に対して。
「ハァハァハァ・・・・・」
だが、手の平からにじませるように日本刀を出現させる能力を見せた四人組が迷いもなく、平然と友人達を叩き斬る光景。日常から非日常に移行した光景を見てしまった俺の胸中を占めたのは、普通の人間と違ったモノだった。
「やっぱり、斬ったほうが血はたくさんすすれるぜ」
美味しそう。そう、友人達の死体から流れる血液をすする黒服達を見て、自分も血が飲みたいと思ってしまったのだ。
それはそれとして、周囲の黒服達と違う食事方法。日本刀で殺された友人達の死体の切断面から血を飲む三人組と違って、いつの間にか耳元まで引き裂かれた大きな口で人間の身体を丸ごと食べていた彼女の浮きっぷりは凄かった。
その風貌から漂う気品を完膚なきまでに打ち消す粗雑ぶりだった。恵まれた美貌の持ち主がどのように行動するのか?という、他者が抱いている幻想をぶち殺すような行動だった。
「血・・・・・飲め・・・・・」
顔の形状が変わるかもしれないほどに、死体を残さずにドカ食いするために、顔の口を大きく開いている彼女を他の三人組は気にしない。
「頭痛消えたろ?もう自分でもわかっているよな・・・・・」
血が美味しい。今まで食べてきた食材の何よりも。
ああ・・・・・本当に俺は・・・・・。
「あのセミナーにいた人間もそうだ」
人間ではない存在。人間の血を主食にする吸血鬼という人外の存在になってしまったんだな・・・・・。
「俺達はこれからこいつらと戦争するんだ」
玄野アキラが吸血鬼になってしまったという事実を受け入れるのと、セミナーで説明された吸血鬼の天敵たる存在。最近の襲撃で写真に撮ることに成功したガンツの人間の姿を、黒服達が携帯電話で見せてきたのは同じタイミングだった。
ふむ、吸血鬼化したことで悲哀を感じているな。玄野アキラは。邪鬼化というデメリットがない分、私より恵まれていると思うが。普通の人間の生活でも人間社会で生きていけるから、そう悲しむことはないだろう。
悲しむことが許されるなら私の方が悲しみたいな。ああ、羨ましい・・・・・。その気になれば血を吸わずに人間社会で生きていける吸血鬼達が!!
彼岸島の原住吸血鬼も!!今の私が所属しているコミュニティにいる吸血鬼達も!!今すぐ殺したいほど羨ましい!!
吸血鬼だけでなく、その辺の人間達も含めて羨ましい、妬ましい・・・・。血を飲まないと邪鬼になってしまう欠点が存在しないから!!
ガアアア!!と衝動のままに叫んで暴れたいほど、一方的な逆恨みの感情がこもった、怒りと憎悪の炎を胸中で人知れず燃やしはじた雅華。
食事行為が終わった後の表情は相変わらず変わっていない。いつも通りの凍りついた表情をしていたが、確かに怒っている証拠に眼の色の赤黒さがより濃くなっていたのであった。
ようやく気がついた。人間達だけでなく、仲間の筈の吸血鬼達が死んでもなにも感じない理由が。嫉妬しているのだ。
彼女の小さな変化に気づいていたのは玄野アキラのみ。他の黒服達は、怒りのあまり、握力だけで手に持っていた日本刀を粉々に砕くという行為をしてしまった、彼女が次にする行動でようやく心の動きに気がついたのである。
「何をするつもりだ?」
「コイツに私の血を送り込むのだよ。ただそれだけだ」
「そんなことをしたら死ぬぞ?おまえの血は俺達にもとっても劇物すぎる」
「大丈夫だ、問題ない。それに私の血に上手く適合すれば特殊な吸血鬼になるかもしれんから、黙って見とけ」
彼岸島の吸血鬼は同じ吸血鬼の血液を大量に摂取すればほぼ間違いなく激しい拒絶反応が起こり、大抵は身体が耐えきれず即座に全身から血を吹き出して爆裂死するという。
この設定を反映するように、ナノマシンウィルスで誕生した吸血鬼にも私の血液は効いて爆裂死する。実際に、私の血を誤って摂取してしまったことで、体内のナノマシンが不具合を起こしたのか、拒絶反応で爆発するように死んだ吸血鬼達を何回も確認してきたのだから。
おかげで、私の血液が体内に入らないように距離を離して行動する吸血鬼がいるのは今は関係ない話だ。
この事例から推察するに、もしかしたら、この世界に存在した彼岸島産の吸血鬼一族と本土に生息している吸血鬼達の
ただ、自分以外の
とにかく、文武両道どっちもいけるように、玄野アキラは吸血鬼としての才能もあるように見える。有象無象の吸血鬼達を相手にしたステゴロでの勝負で余裕を持って10連勝したという事実が、原作で描写されている。
あのまま生きて成長していたら、氷川にも匹敵する立派な吸血鬼になれただろう。ならば、私と同じアマルガムになることもできるはずだ。根拠はないが。
生存させようと思ったが、玄野アキラが死んだら死んだらその時は仕方ない。できる限り人間社会に迷惑をかけないように、私を律することができる外付けの良心回路の作成に失敗しただけだ。
再び生み出した日本刀で自身の左腕を自ら切り落とした雅華。
会話の内容から、彼女の血が有する危険性に気づいた玄野アキラだったが、逃げることは叶わなかった。
氷川達が取り押さえにかかってきたからだ。しかも、ダメ押しとしてサイコジャックまで雅華が使ってきた。
二重の拘束で動けなくなった哀れな少年に、彼女の左腕から垂れてくる血が、口の中に無理矢理流し込まれる。
「ギャアアアアアアアア!!」
案の定発生した拒絶反応による痛みによって、みっともなく悲鳴を挙げる玄野アキラという少年。
想像しろ・・・・・私。想像力で玄野アキラが私と同じアマルガムになる未来を具現化するのだ。宮本明のように想像力で未来予知能力を発揮するのだ!
ヨシ!玄野アキラが元の形状を保ったままアマルガムになるという未来を予知できたような感じがする・・・・・。
目を瞑りながら、想像力を働かせる彼女。そして、痛みに喚く玄野アキラの絶叫が聞こえなくなった時に見たモノとは・・・?
「ハッァ・・・・・!?」
そこにはアマルガム化したのにも関わらずに見た目が変わっていない。玄野アキラの姿があったのであった。
そこまではいい。彼女の想像力で思い描いたイメージ通りだから。だが、どういうことだ。戦闘力は及んでいないが、一つの生命体として考えてみると、目の前の男が自身の上位互換になっている。と本能的に感じ取ったのだ。
だからこそ、それを理解した途端に困惑と驚愕の意味が込められた声を出したのだ。反射的に。
「死んだのか?」
「死んでない。玄野アキラは私の血が侵入した際の拒絶反応に無事に耐えきって、突然変異したのだ」
「初めてのケースだな・・・・・」
「どう変化したのかを確認する為に吸血するとしよう」
今の玄野アキラの状態は、まさか!!
同族喰い?にあたるかもしれんが、血を吸って確かめる!
全く違う存在に変質する際に訪れた地獄のような痛みに耐えきれずに、気を失って倒れた玄野アキラに、口調は冷静そのものだが、内心抱いている感情がうっすらと表情に浮き出てきている雅華が、吸血する為に牙を突き立てた。
この味は・・・・・人間の血?人間を吸血鬼に変質させるウィルスの存在は体内にあるようだが・・・・・。機会があったら、違いが分かるようになるために通常の吸血鬼も食べてみるとしよう。
だが、一つだけはっきりと分かったことがある。玄野アキラは48日後・・・に登場した鮫島兄弟に近い存在になっていることだ。既にナノマシンによって、吸血鬼としての特徴を持ってしまったが、あえて言えばそれだけだ。
私が保有するウィルスを体内に取り入れたことで、彼岸島産の吸血鬼とGANTZ作品の吸血鬼の良いところだけを持った吸血鬼に新生したのだ。この玄野アキラという人間は!
つまり、邪鬼になることは絶対にないということ。羨ましい・・・・・。既存の人間の完全上位互換の存在、吸血鬼ならぬ新人類となった玄野アキラが妬ましい。縊り殺したいほどに。
いや、吸血衝動や血を美味しそうという感性は残っているかもしれん。それに・・・・・。
「おい、歓迎会と称して宴会を開けるか?」
「どうしたんだ?そもそもそんなに酒に強くないだろ」
「それでも酒を飲みたい気持ちなんだよ。分かれ」
氷川達と一緒に自分達が住処にしているクラブに彼女が帰ったのは、切断した腕をくっつけて再生させた時だった。しかも、激痛のあまりに倒れた玄野アキラを背負って。
「雅華様と呼べ〜。貴様ら〜。でないと、酒の代わりに私の血液を飲ますぞ」
「相変わらず、雅華さんは酒癖悪いスね」
「バカ野郎。お前いいだろそんなこと。雅華様が全て奢ると言っているんだ。ホラ、飲め飲め」
「なんて・・・・・なんて神々しいんだ・・・・・」
酒に酔ったことでキャラ崩壊気味に、頬を真っ赤に染めるほどにべろんべろんに酔っている雅華を余所に玄野アキラは、現状について考える。
いつの間に吸血鬼になった時は、俺は悪魔に愛されていると絶望していたが、どうやら神はまだ俺を見放していなかったらしい。
弱点らしい弱点もない。人間の血を喰らう必要性もない。既存の吸血鬼を超えた存在。人間の上位互換、新人類と呼べる存在になることができたから。
問題として、血を美味そうと感じる感性や吸血衝動や他者を吸血鬼化させるウィルスは残っているが大丈夫だろう。
本当の問題はどうやってこのコミュニティから抜け出せばいいということだ。下手に抜け出そうと殺されるのは確実だ。実力も足らない。今は機を伺うしかない。
「玄野〜。私の血から新しい吸血鬼として新生した以上、貴様は私の
このような現状になった今、付き合っている彼女と別れることになったが。不満はない。
血縁上の関係はないが、自身の血を直接与えたから、吸血鬼的に貴様は私の子供と皆が見ている前で堂々と宣言しながら、うざ絡みしてくる雅華と呼ばれる女吸血鬼をちらりと見る。
残念なところや問題点は色々あるが、それでも美人でかわいいところがあるから、付き合ってあげてもいいかもしれない。彼女自身もどこか自分に期待しているところがあるそうだし。
話せば分かってくれそうだし。彼女となら、現状の問題を解決できるはずだ。
そういえば、悪魔は天使と同じように神の被造物。元は神様な存在がいる。吸血鬼にも吸血鬼の神様がいると聞いたことがある。つまり、どうあれ自分は神様に愛されていることは変わらないということだ。
玄野アキラは知らない。彼女によって知らずに思考汚染されていることを。
今の状況を楽観的に考えている少年は、吸血鬼化してしまったことで雅様を崇めるようになったある人間を思い出させる、崇拝という感情、あるいはそれに近い感情を彼女に抱いていたのであった。
オリ主の雅華が想像力という名の擬似的な未来予知能力を身に着けました。(明さんの想像力よりは精度が低いですが)
今後の展開次第では、金剛戦で明らかに念動力みたいな力を使った明さんみたいに、オリ主の能力の一つとして、脈絡もなく超能力が生えてくるかもしれません。