ガンツ部屋に無事に侵入できたが・・・・。
「ちょッ!おいッ!!」
「俺は・・・・・戻ってきたのか?」
案の定、敵対的な対応を取られている。仕方ないか、和泉や玄野計といった人間達を人質も兼ねた扱いをしているとはいえ、こちらとあちらはつい先程まで殺し合っていた関係だから。
「囲んでくれッ!!ケイちゃんやお互いを撃たないように気をつけろッ」
「巣ごと全滅させるぞ」
今すぐ戦いの火蓋が切られそうな、一触即発の空気が空間に形成される。雅華と玄野アキラもすぐに動ける用意をしている。
そして、吸血鬼達とガンツチームの戦端が開かれる・・・・・ことはなかった。
ガンツの代名詞、ミッション開始を告げるお馴染みのラジオ体操の歌がなり響いたから。
〜〜〜〜♪
よかった。場を収めるために無差別サイコジャックを仕掛けて、毒電波ならぬ毒脳波を敵味方問わず垂れ流す必要があるか・・・?と思っていたが、する必要性がなくなってありがたい。
しかし、こんなにも早くミッション開始の合図の歌が鳴るということは、吸血鬼という強力な駒を4体も手に入れたガンツ運営側の人間達が、百点星人を倒すというミッションの前に、内輪揉め以下な無意味な戦闘でメンバーの数が減るのをもったいないと感じたからか?もしそうだったら高く評価したい。
「そうだ!!おまえ達がやっていることはムダだぞッ!!」
加藤勝が機転を活かして、転送の原理を利用して部屋に侵入してきた吸血鬼達に今の現状の説明という名の説得を行う。ガンツと呼ばれる黒い球体に囚われた者同士戦う必要性はないという意味を込めて。
「俺達はその玉にずっと動かされてきた。俺達が死んでもその玉がどッかから人を・・・・・。それも大半が何かしらの要因で死んだ人間達を、永遠に連れて来る・・・・・。見ろ・・・・・・・・」
てめえ達は今からこの方をヤッつけに行って下ちい。
特徴 つおい。頭がいい。わるい。
好きなもの タバコ お茶。
口ぐせ ぬらーりひょーん ぬらーりひょーん。
氷川がコンコンと黒い球体を日本刀で叩いた途端に、継ぎ目がいっさい見えなかった球体の左右と後部にすうっと線が入ると、大きくせり出し、中から金属のラックにつり下げられた銃と、把手つきの薄いケースがいくつもあらわれた。
「これはおまえのじゃないのか?」
「・・・・・・」
「クスッ」
「今・・・・・笑ッたな・・・・・」
「あッ・・・・いや」
加藤がホストざむらいと書かれているケースを氷川と呼ばれる黒服に見せつける。他の吸血鬼達のケースもあるだろうが、いの一番にホストざむらいと書かれたケースを手に取ったのは、彼が分かりやすい外見。いかにも、ホストをしていますと言わんばかりの整った風貌と日本刀を所持していたからかもしれない。
「どうする・・・・・?もうおまえらも同じ立場だ・・・・・。狩りに行ッて点数を稼ぐしか、この部屋から生きて逃れる方法はない・・・・・」
「郷に入らば郷に従え。私はこの部屋のルールに従うことにするよ。だが、試したいことがあるから少し待ってくれ」
雅華が動き出す。自分と同様にこの部屋の住人になる予定の玄野アキラは当然として。ホストざむらい、きるびるとガンツにふざけた名前を名付けられた二人の吸血鬼の行動指針を自身の行動結果によって決めるために。
予想していたことだが、ガンツの中で生体部品として入っている人間?には、案の定触れることはできないな。正確には害意を持っていたら接触することができなくなるということか。ここの部屋の壁や窓と同じような状態。私にも分からない謎の原理によって、そもそも触れることができなくなるように。
原作では氷川が日本刀で中の存在を突き刺そうとしたが、無理だった。私の力でも中の存在を傷つけるのは無理なのは当たり前の話だが・・・・・ものは試しだ。全力でやってみるか。
雅華の手から滲むように、この狭い空間でも扱える少し小さめな槍が生まれる。それを彼女は思いきり、ガンツの中に入っている存在に向けて力強く刺したのであった。
「駄目だな。貴様が言っているように無駄な行為だったよ」
「そうか・・・・・」
持っていた槍をフローリングに大人しく落とした女性は、加藤勝からホストざむらいのケースを受け取って、自身の分も含めた残り三人分のケースを玄野アキラ達に持ってきた。
流石は氷川。
観念したように、大人しく座ることで敵意がないことと同じ立場の存在になったことをガンツメンバーに示すとは。生かしておいて正解だったか。この分だと、本名を聞くのがどうでもよかった故に知らなが、きるびる(仮)も大丈夫だろう。
「時間がない!!みんなスーツに着替えてくれ!!転送が始まるぞッ」
「どうする?着る・・・・・?」
「・・・・・・・」
スーツを着ようか迷って、氷川に相談しているきるびるや新しくガンツメンバーになった新人の人間を横目に彼女は誰にも見られない場所に移動する。今着ている黒服を全部脱いで、スーツを着るために。
私の諢名は・・・・・彼岸島の雅様の蔑称の一つと同じマサか・・・・・。玄野アキラの諢名がアキラァだったり、ガンツのセンスは実にふざけているな。滑るほどに。
「えッ!?コイツ、計ちゃんの弟なのかよッ!?」
「まだ全部聞かされてなくて、色々事情があるらしいけど・・・・・。今は時間がない。アキラのことはまた話すよ、加藤」
わざわざ玄野兄弟を、この時期で両方生存させて、ガンツ部屋に連れてきた甲斐はあったか。吸血鬼達のこと、特に私のことをガンツチームの人間達に上手く説明してくれよ。
・・・・・そろそろ転送の時間か。支給品で受け取る武器はこれだけで充分だ。後は現地調達にするか。
スーツの上にいつものように着ている黒服を着用した女は、銃身がXの字に展開する拳銃を見ながら、周囲の存在と同じように転送で消えていったのであった。
「一人か・・・・・」
いや、一人ではないな。
すぐに近くにガンツメンバーの人間がいるな・・・・・。
しかも分かりやすい敵意を私に向けて発している。殺意と呼べる領域まできた敵意を今の状況でも抱いている人間は・・・ヤツしかいないだろう。
敵意を抱いている人間がいることを近くにいることに察知した女は今いる場所から飛び退いた。
ドンッと音と共に、先ほどまで彼女がいた場所の地面が重圧で抉れる。
「まだ・・・・・勝負はついてないッ!!オレともう一回戦え!」
やはり私に向けられていた敵意の主の正体は和泉だったか。しかし、いやに執着しているな。貴様が執着する本来の相手は氷川だろう。
もしかして、ひょうほん星人のヤツに見せられた未来が私に倒される未来だったのか?だったらこの執着ぶりにも納得いく。私も和泉という人間を最初は原作通りに、そのまま死亡する末路を辿らせようと考えていたことがあったからな。この手でかけることも予定していたとはいえ。
・・・・・こんな面倒な事態になるのも想像できていたが、やはり和泉に対する洗脳をミッションの事前に解除しない方がよかったか。
「どうしても戦う必要性があるのか?ないだろう?それに、前の戦闘では使ってこなかった武器を持ち出していても、今度はこちらもガンツスーツを着ていることで、個としての性能差が更に大きく開いている。それが分からぬ貴様ではないはずだ」
「ッ・・・!!」
雅華は苦笑しながら、肩をすくめる。
その言葉はオニ星人との戦いで貯まった百点を消費して得た強力な武器。本来なら和泉という人間がミッション外で死亡したことで腐る運命だったZガン如きで、今の私を倒せると思うか?という驕りも本人の心情に含まれていた。
「それにな・・・・優劣を競うなら既に私は負けているよ」
夜の大阪の街並みから喧騒が聞こえ始める。
二人は動かない。和泉紫音という人間は大人しく、眼前にいる吸血鬼の女の持論を聞くことにする。
「私という生物は、命や愛という言葉など虫唾が走るほど気持ち悪い。人間の血液を必要とする吸血鬼の癖に食糧たる人類どころか同じ吸血鬼。一般的に考えたら、仲間とも言える存在が死んでも平気。そういう終わった感性の持ち主だ。目的の為にコミュニティを形成する生物としておかしいよな?仮にも周囲と同じ人型の姿をして、言語も共有しているくせに」
それは客観視も交えた自嘲であり。
「その点、貴様は立派だよ。少なくとも私よりは。なんだって、他者を慈しむ心といった良心や善性がある。それは自分を中心とした利害や損得で動いて、他者を殺すか助けるかを決めようとするこの私の行動指針より素晴らしいモノだ。大量殺人犯と貴様が誰かに批判されようが、私は立派な人間だと和泉紫音という存在を評価しよう」
彼女なりの、独自の価値観による人間讃歌であった。
「これが、和泉紫音という人間の格は私という吸血鬼より上という言論だ。ほら、貴様と私の決着と格付けはとっくについているだろ?これでも戦う必要性があるか?」
「・・・・・・」
Zガンを今も向けたままだが、和泉という男は何もしない。素通りさせる。
ミッションに対して向き合おうと、ゆっくりと動き出した白い吸血鬼に。
我ながら中々の詭弁だと思う言論だったが、どうにか戦闘を回避できたか。今さらだが、和泉と無意味にここでやりあうことで、ガンツの人間達に対して、誤解が広がってしまうケースがありうるからな。
さて、誰よりも早く、タケシという人間の子供と合流して保護する活動や一般人といった人間達を助ける救助活動を見せることで友好的な吸血鬼として活動するとしようか。
欺瞞に満ちていようが、文字通りな偽善者星人として活動することが私に対するガンツメンバー達の好感度を稼ぎやすい選択肢のはずだ。多分。
スピンオフのGANTZ作品で百点星人疑惑の千手観音がガンツメンバー入りするという事態が起きたことと比べたら、吸血鬼が何体か加入することはそれほど大したことはないし、バランスブレイカーにもならないですよね。