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本編どうぞ
意識を覚醒させたのは、理性的な落ち着いた声だった。
「……い。先生、起きてください。エルキドゥ先生!!」
まぶたを開けると、そこにいたのは白い制服を身に纏った聡明そうな黒髪の少女だった。
「少々待ってくださいとお伝えしたのに、お疲れだったのですね。なかなか起きないくらい熟睡されてましたよ。……夢でも見ていたのですか? ちゃんと目を覚まして、集中してください」
「もう一度、あらためて今の状況をお伝えします。私は七神リン、学園都市『キヴォトス』の連邦生徒会所属の幹部です。そしてあなたはおそらく、私たちがここに呼び出した先生……のようですが……」
「? 、どうしてそんな言い方をするんだい?」
ワタシの問いに少女、七神リンが余裕の無さそうな表情で答えてくれる。
「申し訳ありません。曖昧な表現でお話したのは、私も先生がここに来た経緯を詳しく知らないからです。混乱されるのは分かります。
私自身、こんな状況になってしまったことは非常に遺憾に思っていますので」
どうやら彼女も全ての概要を知っていないらしい。ワタシがここにきた理由には、朧げに記憶に残る人影と少女が関係しているのだろうか?
「しかし今はとりあえず、私についてきていただけますか? どうしても、先生にやっていただかなくてはいけない事があるのです」
「そうですね……学園都市の命運をかけた大事なこと……ということにしておきましょう」
「分かったよ。それほどのことが起きているなら、僕のできる事をさせてもらうよ」
「こちらです」
リンの切羽詰まった様子の頼みに、どうしてワタシがここに来たのか。何故ワタシが選ばれたのか。そうした疑問は後回しにすると決め、彼女の後に続く。廊下で誰かすれ違うこともなく、ワタシとリンの足音だけが聞こえた。
そして二人で『エレベーター』に乗り込む。
「……?」
ふと自分の思考に疑問を抱く。何故ワタシは『エレベーター』を知っている。こんなものはウルクにはなかった。それどころかワタシの生きた世界の何処にもなかったというのに今ワタシのいる建物の窓につけられた『ガラス』や今乗り込んだ『エレベーター』を知っている。そして、更に知っている事に違和感をまるで感じなかったことにより驚いた。
「いや、これも後で大丈夫だね」
「先生? 、どうかしましたか?」
「大丈夫、なんでもないよ」
ワタシの声に反応してリンが尋ねてくるが微笑みながら返したワタシの返答に「そうですか」と引いてくれる。そして、正面を向いてようやく彼女が息を抜けたようだ。そして抜いた息を再び引き締めて。
「改めまして『キヴォトス』へようこそ。先生」
リンが薄く微笑みながら、上昇するエレベーターの正面窓の景色を示しながら話す。
「ここについて今一度説明しましょう。キヴォトスは数千の学園からなる巨大な学園都市です。きっと先生のいらっしゃったところとは色々なことが違って、最初は慣れるのに苦労されると思いますが、先生ならそれほど心配しなくてもいいでしょう。なにせ、あの連邦生徒会長がお選びになった方ですからね」
連邦生徒会長、ワタシがここに来た理由に深く関わっているであろう人物の像を思い描く。この後何かわかるといいけど。
「……それは後でゆっくり説明することにして、今は差し迫った問題について考えましょう」
リンにこちらの考えが伝わったのかは分からないが、ひとまずは後の説明を待つしかなさそうだ。エレベーターが到着の合図の音と共に停止し、目の前の扉が開く。エレベーターを降りた先では、リンの物に似た白を基調にした制服らしき服を着た少女たちが慌ただしく動き回っていた。そしてその少女達全員が大なり小なり『銃』を所持していた。さらに全員の頭に『光る輪』と表現するしか無いものが存在していた。
全員が武器を所有している異様な光景に息を呑むワタシにリンは気づかず、そのままスタスタと歩いていってしまう。
慌ててワタシが後を追うと、周りの少女達とは違った格好をした少女の一団がワタシ達の前に駆け寄ってきて。
「ちょっと待って! 代行! やっと見つけた。待ってたわよ! すぐに連邦生徒会長を呼んできて!」
興奮した様子の菫色の髪をツーサイドアップにした白と黒と青で構成された服を着た気の強そうな少女が中々の剣幕でこちらに詰め寄ってくる。リンはうんざりした表情で足を止め、少女たちの方に向く。
「うん? ……そちらの大人の方は?」
最初の菫色の髪の少女がワタシに気づいて問いかけてくるが、それに応えるより先に彼女についてきていた少女達がリンに言葉をかける。
「主席行政官。お待ちしておりました」
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が今の状況について納得のいく回答を要求されています」
長い黒髪に腰から巨大な翼の生えた黒と赤で統一された服を着た少女と茶色がかった短いピンク色の髪にメガネをかけて『風紀』と書かれた腕章をした少女がリンに質問を浴びせていく。その特徴的な容姿と全員の頭にある『光る輪』と表現するしか無いものを見るとワタシのいた世界とはだいぶ理りが違うようだ。
リンが盛大なため息を吐いて、口を開く。
「はぁぁぁ……面倒な人たちに掴まってしまいましたね」
リンが人より長い耳をピクピク上下に微かに動かしながら物腰柔らかに少女たちに語りかける。
「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余した皆さん。こんな暇そ.大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よく分かっています。今、学園都市に起きている混乱の責任を問うために.でしょう?」
物腰柔らかに見えた姿勢が一瞬で喧嘩腰に変わり、怒りをあまり隠そうとしない姿勢に思わず息を呑むが、少女たちは怯む事もなく言い返してきた。
「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ! 連邦生徒会なんでしょ! 数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ! この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱走したという情報もありました」
「スケバンのような不良たちが、登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」
「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」
最初の三人と銀髪に彼と同じ赤い瞳をし灰色の服を着た少女が自身達の問題を次々とリンに投げかける。またも意味がわかるがとても学校生活で飛び出る単語では無いものの多さに思わずギョッとしてしまう。
「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの? どうして何週間も姿を見せないの? 今すぐ合わせて!」
最後に菫色の髪をツーサイドアップにした少女が全員の総括と云える質問をリンにぶつける。リン数秒沈黙して。
「連邦生徒会長は今席にいません。正直に言いますと、行方不明になりました」
「えぇ!?」
「!!」
「やはりあの噂は……」
菫色の髪をした少女が府向けた声をだして、メガネをかけたピンク髪の少女が静かに驚きを露わにして、黒髪の翼の生えた少女がどこか納得したように目を伏せる。
「結論から言いますと『サンクトゥムタワー』の最終管理者がいなくなったため、今の生徒会は行政制御権を失った状態です」
「認証を迂回できる方法を探していましたが.先程まで、そのような方法は見つかっていませんでした」
含みのある言い方だ。今は違うのだろうか……?
「それでは、今は方法があるということですか? 主席行政官」
当然、意味深な言い方に黒髪の少女が質問を投げかけ、周りの少女達の視線もリンに集まる。
「はい。この先生こそがフィクサーになってくれるはずです」
「!?」
「!!」
「この方が?」
突如話題に上がったワタシに視線が一斉に向く。
「ちょっと待って。そういえばこの女の先生はどなた? どうしてここにいるの?」
どうやらの菫色の髪の少女はワタシを女性だと勘違いしているらしい。もっとも泥から生まれたワタシに性別などないのだけど。
「ギヴォトスでは無いところの方のようでしたが……先生だったのですね」
「はい。こちらの先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり連邦生徒会長が特別に指名した人物です」
「行方不明になった連邦生徒会長が指名……? ますますこんがらがってきたじゃないの……」
リンの説明に困惑した様子の彼女がこちらを見てくる。挨拶をした方がいいだろうか。
「こんにちは、僕の名前はエルキドゥ。リンの言ったとおり、ここで先生をすることになったんだ。性別は……ひとまず男性だとしておくよ。よろしくね」
「男の人だったの! 失礼しました! こ、こんにちは、先生。私はミレニアムサイエンススクールの……い、いや! 挨拶なんて今はどうでもよくて……!」
「そちらのうるさい方は無視して構いません。続けますと……」
「誰がうるさいって!? わ、私は早瀬ユウカ! 覚えておいてください、先生」
冷たい態度のリンの声を遮って菫色の髪の少女、ユウカは自己紹介を済ませ、さらに続いて周りの少女達も自己紹介をしていった。黒髪の翼を持つ少女は羽川ハスミ、メガネをかけたピンク髪の少女は、火宮チナツ、赤い瞳の銀髪の少女が守月スズミと名乗った。
自己紹介が済んだところでリンが説明を再開する。
「……先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになっていました」
「連邦捜査部、『
「単なる部活ではなく、一種の超法規的機関であり連邦生徒会所属のため、キヴォトスに存在する全ての学園の生徒たちを制限なく加入させることすらできる組織です」
「『シャーレ』は各学園の自治区で、制約なしに戦闘活動を行うことも可能です。なぜこれだけの権限を持つ機関を連邦生徒会長が作ったのかは分かりませんが……今はとにかくシャーレの部室に案内します」
「シャーレの部室はここから約30km離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に“とある物”を持ち込んでいます。私たちは先生をそこにお連れしなければなりません」
そういうとリンは手持ちのタブレットでどこかへと連絡を取り始めた。
「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど……」
「シャーレの部室? ……あぁ、外郭地区の? そこ、今大騒ぎだけど?」
「大騒ぎ……?」
「うん。矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ」
「……うん?」
「連邦生徒会に恨みを抱いてる地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡行戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?」
「それでどうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに何か大事なものでもあるみたいな動きだけど?」
繋がれた通話口から聞こえてくる幼さの残る声は伝えた事実の重大さを理解していないようだった。重大さを理解しているリンは一瞬唖然としていた。
「まぁ、もともと滅茶苦茶な所なんだし今更大した事な……あっ、先輩、お昼ご飯のデリバリーが届いたからまた連絡するね」
最後までお気楽すぎる通話が切れる。彼以外が統率する組織を知らないが、連邦生徒会という組織について少しばかり不安に思えてきた。
「…………」
怒りで震え出しそうなリンに慎重に話しかける。
「大丈夫かい?」
「だ、大丈夫です。……少々、問題が発生しましたが、大した事はありません」
今も微かに震えているように見るが、きっと触れないほうがいいだろう。そして、リンは大きく深呼吸をした後、背後のユウカ達を見つめた。
「・??」
「な、何? どうして私たちを見つめてるの?」
こちらを見つめるリンに全員が怪訝な顔をしつつ、嫌な予感を感じていた。
「ちょうどここに各学園を代表する立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです」
「えっ?」
突然のリンの言葉にユウカ達が固まる。
「ギヴォトスの平和のため。暇を持て余した皆さんのお力が切実に必要です。行きましょう」
スタスタと歩いていくリンを止められるものは誰もいなかった。
エルキドゥ以外のfateのキャラを出して欲しいですか? *ただしアンケートの結果がどちらかに偏ってもその通りの展開になるかは、保証できません。
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はい
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いいえ