今回はアッコが修司を無理に誘い、山にハイキングに行く話から始まります。
セーラームーン達も出演しております。
[ハイキング]
8月の初め、修司はアッコにやや強引に誘われモコや大将、ギョロ・ゴマと共に山にハイキングにやってきた。
「ハァ……なんでこんな真夏に山に登らなければいけねえんだ……」
「もう、こんな暑い日だからこそ外に出て思いっきり体動かした方が健康的でいいでしょう? それに夏の野山も結構良いものよ」
せっかちな性格で先頭を行く修司を追う様にアッコが後ろを着いていく。
「アッコ、修司……先に行かないでよ~」
「あっ、ゴメンゴメン。ところでモコ、大将たちは一緒じゃないの?」
「ハァッ? 大将たち……ああ、多分まだずっと後ろの方でへばっているわよ……」
「もう、仕方ないわね~」
アッコの後ろを着いていくモコからの報告を聞いて、アッコは呆れてしまう。
そのころの大将たちは…
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……お、お前ら山頂まであとどれくらいなんだ……?」
「まだまだありますよ」
「まだ2合目にも辿りついていませんぜ」
「ハァ、ハァ……い、いくらアッコの誘いだったとはいえ、何でまた山登りなんだ……?」
「大将、そんなに山登りが嫌だったなら断っちゃえば良かったんじゃありませんか?」
「そうですよ~。もう大将もアッコに対しては諦め付いている訳なんですし、無理に誘いを受けることも無かったじゃありませんか」
「バ、バカ言え……た、確かにアッコと修司の仲は認めたが……お、俺がまだアッコに認められ修司から奪えるチャンスが無いとは言えねえんだぞ!?」
「ハ、ハァ!?」
「なんだ、まだアッコの事諦めて無かったんですかい?」
「そ、そうだよ! 悪いか! ……そりゃアッコは修司に首ったけだけど、まだ一緒に居られる機会があるなら俺にもチャンスはあるだろ……」
「「……………」」
大将の弁論にギョロとゴマは呆れ返っていた。
[弁当]
一方、修司達はやっと山頂に到着していた。
「うっ~~ん……空気が美味しいわ~」
「ウグッウグッ……プッハ~、確かに。山の上で飲む麦茶も格別だなぁ~」
「ふぅ~……大将たちはまだみたいね。少し早いけど先に私たちだけでお昼食べちゃわない?」
「さんせ~い、俺も腹が減って……」
「ダメよ、大将たちが来るまで待っていてあげよう」
「もう~、アッコってホント気が良すぎるんだから…」
「まぁ、少しは待っていてやっても良いか。俺はもう少し山の風に当たりながら涼んでいたいしな」
それから20分後、修司達に遅れて大将たちがやってきた。
「ハァ、ハァ……つ、着いた……やっと頂上だな」
「ハァハァ、もう大将がへばっちまいやしたから余計に時間食っちまったじゃないですか……」
「お、俺たちも……大将を押して登ってきたから余計に疲れた……」
「ハァ、ハァ……お、オイ。アッコ達じゃないか。お~い、アッコ~!」
「あっ、大将。やっと着いたのね」
此処で大将はアッコに見栄を張ってしまう。
「あ、ああ。ギョロとゴマが途中でへばっちまってよ、二人のペースに合わせていたらこんなに遅れちまって……」
「もう、本当に……」
「アッコの前ではいっつも調子の良い事を……」
大将の言動にギョロとゴマが呆れ返っていると、アッコが遠くで休んでいる修司とモコに声を掛ける。
「お~い、修司~、モコ~。大将たちが来たからお昼にしましょう~」
「大将たち、やっとたどり着いたのね」
「よ~しっ。やっと飯にありつけれるな」
6人は、山頂の休憩コーナーでそれぞれ昼食を食べ始めた。
「……すっご~いっ。これって全部ウッズさんが用意してくれたの?」
「へへ、まあな……それに俺が作った品々もたっぷり入っている」
修司はリュックサックから、なんと重箱を取り出し中を開けるとそれはそれは豪勢なオカズが並んでいた。
「へぇ……修司って料理得意なんだね」
「い、いやな。単なる趣味道楽程度だよ。ウッズみたいな本格的な料理はまだ作れないしな」
「まだって……つまりいずれは作れるようになりたいって事ね」
「あ、ああ。まあな…」
「ねえ、私も食べて良い?」
「! あ、ああ。みんなの分もあるから良かったら食べて良いぞ」
「やった~! みんな~。修司が自分のお弁当分けてくれるって~」
アッコが声を挙げて皆に修司の弁当を開示する。
「どれどれ……うわぁ~これはスッゴイ豪勢なお弁当ねぇ~」
「ウホォッ! どれもこれも旨そうだ……ジュルッ」
「お、俺たちも食べて良いんですかい?」
「そうよ、修司とウッズさんが丹精込めて作ってくれたんだから残さず食べないと……」
「へっ、ヘイ!有り難く頂きやす!」
モコや大将達が喜ぶのを前に、アッコは残さず食べるのが常道だと告げる。
みんなはそうして、修司とウッズが拵えた弁当を分け合って食べていた。
「ムグムグ……この唐揚げ味が染み込んでいてうめえな」
「……その唐揚げは一応俺の手作りだ……丸一日醤油ダレに漬けこんでいる……」
「うわ~。ずいぶん、本格的ねえ」
「………」
大将やアッコ達が嬉しそうに食べる中、修司は恥ずかしさから気まずそうにしていた。
そして6人は自分たちの弁当だけでなく、修司が持参した大量の弁当も食べ尽くし、食後の休憩をとった。
「プハ~、満腹満腹。もう食えねえぜ」
「ホント、修司のお弁当って食べても全然飽きが来ないんですもの」
「修司って料理の才能あるんだね。尊敬しちゃう♪」
「い、いや……その……さ、才能って程じゃねえよ……」
「そんな事ないわよ、将来はコックさんになれても可笑しくないわよ」
「……高望みしすぎだ……」
満腹になる大将やモコ、そしてアッコの賞賛に修司は不愛想な顔で答える。
[セーラー戦士達との再遇]
6人が休憩をとり、山頂付近の野原でソフトボールでドッジボールしている最中、修司とアッコは木の陰でくつろいでいた。
「……まったく、食べた後だっていうのにもうあんなに遊びまわりやがって……」
「いいじゃない、みんなあんなに楽しそうにしているんだもの」
アッコは修司にそう言うと、そのまま修司の体に身を寄せた。
「………」
これに修司は拒絶する事無く無言でアッコの隣に居続けた。
「行くぞ~! くらえモコっ!」
「当てられて堪るもんですか!」
大将は力の限り、ボールを投げつけたがモコはさっと身を交わした。
その時。ボールはモコの後方で昼食をとっている女性陣のほうに飛んで行ってしまった。
「うわっ、やべえ!」
「き、気を付けてっ、ボールがそちらに……!!」
ボールは女性陣目掛けて直撃しそうになったが、その内の一人、ポニーテールの茶髪の女性が力の限りボールを蹴飛ばした。
「うおりゃーー!」「ヒッ、ヒィーー!」
ボールは大将目掛けて吹っ飛び、大将の顔面に思いっきり直撃した。
「うわっ、大将大丈夫?」
「う、うう…ソ、ソフトボールでなかったら確実に悶絶してたよ…」
大将を心配するモコ。その一方でボールを蹴り返した女性も困惑してた。
「あ、あれっ……軽く蹴り飛ばしたつもりだったんだけどなぁ……」
すると同じ女性グループにいた青い髪の女性がポニーテールの女性に言う。「もう、まこちゃんったら。自分の力量のこと忘れないでよね。ゴメンなさい、ボク大丈夫だった?」
倒れこむ大将に女性が優しく駆け寄った。
「へ、へへ……だ、大丈夫……ウッ!」
駆け寄り、心配そうに大将を見つめる女性の優しげな表情に大将は胸を射とめられた。
「ゴメンなさい、彼女力強くてセーブしたつもりだったんだけど……」
「い、いえ! 大丈夫ですっこれくらい! 俺、体が丈夫なのが取り柄ですし!!」
大将の女性への態度が一変する。
「そ、そう。ホントにゴメンなさいね。どこか怪我してないかしら……」
「いえいえ! 傷一つ付いていませんよ! それにボールをお姉さんたちに当てそうになったのは自分たちがいけなかったわけですし……」
「フフフ、僕たち? 元気に遊びまわるのもいいけど、ちゃんと周りに人が居ないか確認しながら遊んでね」
「はっ、はい! どうも、すいませんでしたっ!!」
この騒ぎを聞きつけてアッコや修司にモコも大将に駆け寄った。
「た、大将大丈夫だった?」
「俺達の方にまでスゴイ音がしたぞ……!」
「ま、まぁ。周りを確認してなかった私たちの方がいけなかったけど……」
大将に駆けつけた修司の顔を見て、女性陣が気が付いた。
「あっ、ああ!」「た、確かあの人は……」
黒い長髪の女性に金髪サイドツインテールの女性が唖然とする。
そんな女性達をモコにアッコそして修司も気づいた。
「アレっ? お姉さん確か火川神社に居た巫女さんよね?」
「ホント、こんなところで会うなんて奇遇ですね」
「えっ、ええ。あのときは家の神社を御ひいきにして頂いてありがとう……」
「…………」
「しっ、市長さん。また会えるなんて光栄ですわ…」
礼儀正しく挨拶を述べるレイに続き、愛野美奈子も戸惑いながら挨拶する。
「あ、貴方が有名な街の新しい市長さん、小田原修司さんですね。は、初めまして……」
「えっ…ボ、ボク? この市長さんのお友達なの?」
二人の反応を見て、先ほど大将を気遣った水野亜美が驚いていると大将が自慢げに話し出す。
「お、おう! そうです! 俺と修司は無二の親友なんです!」
大将はどさくさに紛れていい加減な事を言い放つ。
「俺がいつ、お前と無二の親友になったんだ?」
「い、いいだろ!? この前、海で助けてくれた時から俺とお前は切っても切れない親友だろ!!」
「……フゥ……まぁ、いいけど」
大将のいい加減さに修司が呆れていると、ボールを蹴り返した木野まことが動揺しながら謝罪する。
「ご、ゴメンなさいね! 市長さんのお友達に酷いことしちゃって(ウワァ、ホントにピンピンしてるよ)
修司たち6人は女性陣に謝罪しつつ、その場を立ち去った。
しかし、修司だけはその集いのメンツをしかと目に焼き付けておいた。
(あのレイって女は確か、セーラーマーズだったはず。つまりそのレイって女と居た他の女たちは全員セーラー戦士かっ!? 確かに女たちの顔はあの時見たセーラー戦士たちと一致する……)
修司たち6人が去った後、セーラー戦士達が修司の事で会話をしていた。
「ねぇ、だから言ったでしょ? あの市長さん全然無事だったのよ……」
「ホント、あの出血の量だとかなりの重体だったはず……なのに翌日には何事も無かったのように生活していたなんて……」
「この世の中って、私たちみたいなスーパーヒロインみたいに体が丈夫な人っているんだね」
「うさぎったら。いくら体が丈夫でも普通の人には限りがあるわよ」
火野レイの話を聞いていた水野亜美が驚いている最中、呑気におにぎりを頬張る月野うさぎにレイがきつく言う。
「いっや~、まさかまた此処で会えちゃうとは……まぁ無事だっただけでも儲けもんかなぁ……」
「まさか私がボールをぶつけた子が市長さんの親友だったとは……」
愛野美奈子に木野まことが驚いた様子でお弁当をつつく。
「でもまあ、大した外傷もなかったし、本人も大丈夫って言ってたんだから……まこちゃん気にしなくても大丈夫よ」
「う、うん……亜美ちゃんありがとう。それにしても、あの市長さんやたら私たちの顔を見ていたような気がするんだけど……」
亜美とまことの話を聞いたうさぎは呑気そうに自惚れる。
「そりゃあ、何てったって私たちみたいな魅力的な乙女が5人もいたら誰だって見惚れちゃうでしょう~♡」
「うさぎっ、そんな悠長なことじゃないかもしれないわよ!」
「ほ、ほえ??」
レイの指摘にうさぎが茫然としていると、まこととレイが神妙な面持ちで話し始めた。
「確かこの前、レイちゃんの話によると、レイちゃんの顔どっかで見ているって言っていたのよね?」
「うん、私と市長さんが顔を最初に合わせたのはセーラー戦士に変身しているときだったから……もしかして……」
「レ、レイちゃんがセーラーマーズだって気づいちゃったわけ!? あ、あの市長さんが?」
うさぎが愕然としていると、レイとまことと美奈子そして亜美が険しい面持ちで言う。
「確信は無いけど、もしかしたら……」
「ううん、さっきの市長さんの様子だと私たちの事もガン見していたわけだから……」
「わっ、私たち全員の正体に気づいちゃったってわけ!?」
「そういえば、あの市長さんいやにカンが鋭いって雑誌でも取り上げられていたような……」
「う、うわわ……私たちのこと気付かれちゃったらどうしよう。ねぇ、みんな……」
セーラー戦士達が心配そうに考えているとき、バスケットの中から黒いネコと白いネコが出てきた。
「うさぎ、落ち着いて。みんなもよ。まだ市長さんに正体がバレたって決まったわけじゃないんだから」
「ル、ルナ~……っ」
「そうだよ、まずは冷静になって考えよう。それに僕たちもあの小田原修司って少年に何か感じるんだよ」
「ア、アルテミス。な、何かって…?」
ルナとアルテミスに指摘されて、うさぎと美奈子が反応すると二匹は皆に語り出す。
「うん、何か心の内にとてつもない野心を。そしてそれ以上に、深い闇を感じるんだ……」
「や、闇って……」
「ま、まさかダーク・キングダム……!?」
レイと亜美が動揺する中、ルナとアルテミスがそれを否定する。
「いいえ、奴等の様にドロドロとしたおぞましい闇のオーラとは全く違うから安心して」
「ああ、彼の闇はいうなれば……まるで純粋で、どんな漆黒の闇よりも深い……悲しみに満ちた闇……」
「か、悲しみに満ちた……」
「ああ、まるで近くにいる者を魅了し、すべてを飲み込みたがっている……強く、そして悲しい、闇……」
『…………』
セーラー戦士達はルナやアルテミスの言う修司の闇とは何なのか。そしてその修司は自分たちの正体に気づいているのか。不安と疑心で胸がいっぱいだった。
[chapter:雷神様の祠]
一方そのころ、修司達は山を降り始めようとしていた。
「なっ、なっ! 修司、アッコ、モコ! お前らあのお姉さま方と知り合いなのか!?」
「い、いいえ。知り合いって程の関係じゃないわよ」
「そうそう、それに私たちと面識のあったのはあの中じゃ黒髪のロングヘアーのお姉さんだけよ。あの人、火川神社の巫女さんなのよ」
大将からの質問にアッコとモコは包み隠さず答える。
「ひ、火川神社って結構有名な寺でしたよね……」
「そうそう、色んな厄除けとか儀式とかしてくれるって話は聞いた」
「そ、その巫女のお姉さんと一緒にいたあの青い髪の人……一体何て名前なんだろう……」
「大将、もしかしてそのお姉さんに一目惚れしちゃった訳? やめときなさい、どう見ても中学生だし何より大将みたいなのを相手にする訳ないじゃんっ」
「べ、別に良いじゃないか。恋に歳の差なんて。お、俺だって修司みたいに彼女作ってみたいし…」
モコに反論する大将の発言に、修司も思わず反論する。
「! オ、オイ大将! 俺がいつ彼女作ったって言うんだ!?」
「そ、そりゃあ修司とアッコの事じゃないか……」
「ハ、ハァ? か、勝手に決め付けるな!」
修司は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「……やっぱり二人はそんな関係だったんだ。まぁ、薄々は気づいていたけどね」
「モ、モコお前まで……!」
「フフッ、そうよ♡私と修司は正式なカップルなんだから☆」
「ア、アッコ……!」
モコの反応に否定しないアッコの言動を前に、修司は毎度の如く顔を茹でタコの如く真っ赤にしていた。
すると此処でアッコが皆に提案をする。
「それよりも、この先に祠があるからついでに立ち寄らない?」
「ほ、祠?」
「うん、何でも古くからこの山で崇められてている雷神様を祀っているんですって」
「行ったってなんもねえぞ。あの祠、もう滅多に人も近付かないんだから……」
「まぁ、物はついでよ。行ってみましょうよ」
渋々アッコに了承する大将とアッコに賛同するモコ。だが一方で修司は思慮に耽っていた。
(雷神……もしかして雷の聖龍のことか……!? それじゃあ龍玉もその辺りに……!)
修司たち一行は雷神様を祀っていると言う祠に向かった。
しかし森の中には得体のしれない存在も潜んでいた。
[荒れ狂う天候と妖魔]
修司達が祠に向かう最中、いきなり空が曇り天候が崩れ始めた。
「お、おい。これは……」「う、うん……」
「何だか一雨来そうな感じね……」
「………………」
大将にアッコ、モコが不安を抱く中、修司だけは仏頂面で天を見上げていた。
と、そのとき。
「う、うわーー! やっぱり雨が降って来やがったよ!」
「は、早く行きましょう!」
大将とモコの大声を合図に、6人は一斉に走りだした。
だが、その時。
何と近くの木に雷が落ちたのだった。
「う、うう……み、みんな大丈夫?」
「あ、ああ……生きてるよ」
「ヒ、ヒィ~、危なかったですね……」
「も、もう少しこの木に近かったら……」
モコが皆に声を掛けると、大将やギョロとゴマが返事する。
すると燃え盛る木はグラついたと思った瞬間、一気に倒れてきた。
「あ、危なーい!!」
アッコの叫び声を皮切りに、みんな一斉に倒れてくる木から遠ざかったのだが。
「う、うわ~。危なかったわ」
「うう。お、おいモコ。アッコと修司は?」
「えっ? 大将の近くじゃないの!?」
モコと大将が見当たらない修司とアッコを気に掛け、二人の姿を探していると。
「お~いっ、みんな~無事~?」「生きてるか~」
修司とアッコは倒れてきた木の向こう側に立ち尽くしていた。
「ア、アッコっ! そっちは大丈夫!?」
「私たちは大丈夫、だけど木が道を塞いで……」
「解ったわ、私たちはこのまま進むけどアッコ達はどうする?」
モコがアッコと話していると、修司もモコ達に訴える。
「俺たちは俺たちで別の道を探して進むよ。お前たちは気にせず進んでくれ」
「解ったわ、そっちも気を付けて。ほら行くわよっ! 大将、ギョロ・ゴマ!」
「あ、ああ……」「「へ、へい……」」
この時、モコは口には出さなかったが、アッコの事を心配していた。
(アッコは心配だけど、修司が一緒なら大丈夫よね。そうよ、大丈夫に違いないわ)
こうして、モコ・大将・ギョロ・ゴマとアッコ・修司は別ルートで進むのだった。
一方、セーラー戦士達も急な雨に驚き木陰に身を寄せていた…。
「ふぅ~、まさかいきなり雨が降ってくるとは……」
「今日の天気予報じゃ晴れだって言ってたのに……」
「仕方ないわ、もともと山の天気は変わりやすいって言うし……」
まこと、レイ、亜美が雨宿りしている一方で、うさぎと美奈子は相棒のルナとアルテミスを気に掛けていた。
「ルナ、大丈夫?」
「え、ええ。ほとんど濡れて無かったから平気よ」
「アルテミス、貴方は平気?」
「ああ、僕の方も大丈夫」
戦士たちが木陰で体を拭いているその時。ルナとアルテミスが何かを感じた。
「! この反応は……アルテミス!」
「ああ、ルナ。僕にもしっかり伝わっている」
「「みんな妖魔だ!妖魔が現れた!!」」
『ええ!!?』
そのころ、モコや大将とは別ルートで先を進む修司とアッコ…
「ヒィィ~、俺雨に濡れるのって嫌なんだよな~! ……アッコ、お前は大丈夫か!?」
「わ、私だって濡れるのは嫌よ! 早くいきましょう、この先の祠には確か雨宿りできるところがあったはず……」
二人が全力で山道を駈けていた、そのときだった。
「グオオォォォォ……」
森の中から不気味な唸り声らし気音が鳴り響いてきた。
「えっ……な、なに? この声……!」
アッコが脅えていると、二人の眼前になんとマモノ《妖魔》が立ち塞がった。
「マ、マモノ……!」「こ、こんな時に……!」
修司はマモノと立ち向かいたい気持ちがあったが、アッコと一緒の時に戦おうとしても変にアッコに心配されるかもしれない。何よりアッコの身に危険が及ぶのを一番に危険視した。
「アッコ! こっちだ、早く来い!!」
修司はアッコの手を掴み、森の中へ逃げ込んだ。
「グオオオォォォ……!!」
妖魔は二人を追尾しだした。
「ハァ、ハァ……しゅ、修司……」
「アッコ! 立ち止まるな、とにかく走り続けろ!!」
修司はアッコの手を引っ張り、更に奥深くへと逃げ込む。
「ハァハァ……ど、どこか身を隠せるところは……」
修司は辺りを見回した。すると、岩場の間に何とか子供二人分は入れるスペースを見つけた。
「よ、よし! あそこに隠れよう……アッコ、こっちだ! あの隙間に……!」
修司はアッコを一番奥深くに押し込み、続けて自分も入り込んだ。
「ハァ……ここなら雨も凌げるし、マモノから見つかることもないな……」
「………………」
「アッコ、どうした、疲れたのか? それとも雨に打たれて寒いか?」
「あ、その……寒いのもあるけど……」
「………………?」
「……修司は怖くない?」
「……えっ? な、何に?」
「その……マモノの事とか……このまま孤立しちゃうとか……い、いろいろと……」
「……その……怖くないと言えば嘘になっちまう。だけど怖がってばかりじゃ誰かを護る事もできないし……それに今はお前が隣にいてくれるから、全然心細くなんかないよ……」
「しゅ、修司……!」
修司の発言にアッコが感激していると。
「キャーーーー!!」
何と二人の近くの木に雷が落ちた。
木が激しく燃え盛り、そして倒れる。
「ハ、ハァ……お、驚いた……!」
「え、ええ。……っ! あっ」
「えっ!? ……」
何と、アッコは驚きの余り修司に抱きついていた。
「う、うわっ!」「きゃ、きゃあっ! ご、ごめん……」
「い、いや……俺は何ともない……」
二人は気まずい雰囲気に。
「…………………」「…………………」
二人の雰囲気が気まずいムードになっていたとき、辺りが炎で真っ赤になってきていた。
「…えっ、な、何!? そこらじゅう火の海に……!」
「いけない! さっきの落雷による木の消失で火事が……!」
なんと、辺り一面火の海になりつつあり二人にとっても危険な状態だった。
「い、いけない! このままだと…!」
「アッコ、こっちだ! このまま居たら焼け死んじまう!!」
修司とアッコは再び、山道を駈けて行った。
「ハァハァ……い、いくら山火事でも……こ、ここまでくれば大丈夫だろう」
「ハァ……え、ええ……」
二人が息を切らしながら話している、そのとき。
「グオオオオオオオオォォォォォ!!」
先ほどの妖魔が二人の上方から現れた。
「きゃああああああ!!」「ア、アッコー!」
妖魔は大声で叫んだアッコに襲いかかり、アッコは殴り倒されてしまった。
「ア、アッコ……ク、クソ……!!」
「グオオオォォォ…」
妖魔は更に修司にも襲いかかろうとしたが、その瞬間、修司は妖魔の攻撃をかわしつつ、アッコに駈け寄った。
「おいアッコ! アッコッ!!」
「……う、うぅ……」
アッコは気絶していただけで命に別状はなかった。
「よ、良かった……ウッ!?」
「グオオオオオォォォォ!!!」
アッコの無事を確認して安心する修司に、妖魔が襲い掛かる。
「くっ、今はマズイ……!」
修司は気絶したアッコを抱え、山道を駈け上った。
「グオオオオオオォォォォ!!」
妖魔は更に、修司達に追撃をしかけようとしていた。
「ク、くそぅ……とてもじゃねえがアッコを庇いながら戦う事まではできねえ……!」
二人が妖魔に追われ、そして追撃され掛けそうになった。
「グワワァァァァ!!」「うっ! や、やられる!!」
修司がそう思った瞬間、妖魔に跳び蹴りを喰らわせてきた女が現れた。
「そこまでよ! 妖魔!!」「グゥゥ…セ、セーラー…」
妖魔は人語に似た戯言を発しながらセーラージュピターと向かい合う。
「アナタ達! 大丈夫!?」
「あ、ああ……(こ、この前の緑の戦士……」
修司とアッコの危機に、妖魔の気配を感じ双方に分かれて妖魔を捜索してたセーラー戦士の一人、ジュピターが駈けつけてくれだのだった。
[果たすべき目的]
「グワワァァァァァァァ!!!!!」
「くっ、わ、私一人じゃこの二人を護るので精いっぱい……」
ジュピターは手負いのアッコを庇う修司、計二人の身を案じながら妖魔と応戦するので精いっぱいの状況だった。
「くっ、こ、このままじゃあ…!」
「……ウ、ウウゥ……」
アッコは妖魔に殴られた時の衝撃に加え、雨に当たり続けた事に寄る体温の低下で、体力も消耗していた。
「お、俺とアッコがこのまま此処に居たら、あの緑の戦士の戦いの枷(かせ)になるのは目に見えている……!」
修司は市長として、そして己のプライドに対して市民に対して容赦なく害をなしているマモノを目前に逃げるのを躊躇っていた。
「くっ……こ、この状況で俺がやるべきことは……」
修司は弱り切ったアッコの顔を見て、決心した。
「い、今はこの場から逃げ切るのが正しい答えだ。アッコをこのままにするのも危ない……!」
修司は考え抜き、マモノに立ち向かう事よりもアッコの身を護る事を選んだ。
「おい! ポニーテールの緑の戦士!! 俺はアッコと共にこの場から立ち去る! アンタはその妖魔ってマモノが追尾してこない様にしてくれ!」
「えっ……わ、解ったわ。アナタ達気を付けて」
「ああ、礼を言うよ。後はよろしく……それと……」
「………………?」
「さっきはすまなかったな、それと余計なことかもしれないけどヒーローの時にはもう少し顔を隠したり変装した方が今後のためだぞ!?」
「!! ア、貴方! まさかっ!?」「それじゃあ、俺とアッコはこのまま上の方に逃げて行くよ。アンタは一刻も早くその妖魔ってヤローをぶちのめしてくれよ!!」
「え、ええ……」
そうセーラージュピターに告げると、修司はアッコを抱え込んで一目散に山道を掛けて行った。
(あ、あの市長さん、やっぱり……!?)
セーラージュピターは修司が自分達の正体に気付いているのではと一抹の不安を覚えるのだが。
「グワワァァァァ!!」
「うっ! い、今はまずコイツに集中しないと……!」
修司とアッコは小高い山の上まで来ていた。
「ハァ、ハァ……こ、此処はいったいどの辺なんだ」
修司はアッコを抱き抱えたまま辺りを見回した。
すると、向こうに小さい祠が見えた。
「…! ま、まさか! あ、あれが雷神を祀っている祠?」
修司は木陰に気絶したままのアッコを優しく寄りかからせ、祠の仲を開けてみた。すると祠の中には黄色い玉が祀られていた。
「こ、これが……!」
すると、修司の右手の龍玉たちが一斉に光り出し、祠の中の玉も同じように光り出した。
「我の眠りを覚まし者、我らが一族に認められし者……」
「ア、アンタは雷の聖龍神、雷龍なのか!?」
「いかにも、我は天空を貫き、天地に衝撃を与える雷の化身、雷龍である……」
「か、雷龍。俺の力なってくれっ……」
「うむ、まずは我はこの祠から出してはくれぬかのぉ……」
「あ、ああ……解った」
修司は言われるがままに、祠から黄色い龍玉を取り出した…。
[聖龍の力の秘密]
一方、その少し下方の方では…セーラージュピターが妖魔に対して未だ苦戦を強いられていた…。
「グワワァァァ!!」
「……くっ、このままじゃやられる。ようし、イチかバチか……」
セーラージュピターは己の必殺技を妖魔に当てて撃退しようと考える。
「シュープリーム・サンダー!!!」
本来、この必殺技は彼女のティアラを避雷針として用いて、落雷のエネルギーを貯めその電撃で相手を倒す必殺技なのだが。
「ア、アレっ……? か、雷が落ちて来ない……」
ジュピターが途方に暮れていた時、妖魔の様子がおかしくなっていた。
「グウ……グワワアアア!」
妖魔はいきなり雄たけびを上げたと思いきや、山の上方へ行ってしまった。
「い、いけない!あの付近には市長さんと女の子が……!」
セーラージュピターは慌てて妖魔を追尾する。
一方、修司は雷龍の龍玉を手にとり、立ち尽くしていたのだが。
何と目の前で天からでなく山の下方から雷が来て、龍玉がその雷を吸収したのだ。
「ウッ、ウワッ……! い、今のは……い、一体……!?」
「驚くな、新たな世代の聖龍使いよ。我の力が少し消耗していたので近くの雷の力を吸収したのだよ」
「い、雷の力?」
「そうじゃ。我ら聖龍は自然の力を司る存在。ゆえに自然の力を取りこまなければいけないのじゃ。たまたま近くで雷の力が満ちておったから、吸収したまでぞ」
「そ、そうだったか……っ? そ、それにしても、何で空からで無く山の下から雷が降ってくる訳???」
「うむ、この雷の力は自然の力に寄るものではなさそうじゃ。まるで天空の星ぼし。天星の魔力により生み出された雷の力の様じゃ……」
「て、天の星の……? い、いったいそれは……!?」
修司が呆然と立ち尽くしているその時、修司の目の前に妖魔が現れた。
「グワアアア……!」
「ゲっ、こ、こいつさっきの……! 何でまた俺の方に!?」
「うむ、この存在は……どうやら我ら聖龍の一族が持つ力に惹き付けられておるのじゃろう……」
「ひ、惹き付けられてる……?」
「うむ、そうじゃ。我らの超自然的な力に惹きつけられる妖怪やモノノケは昔から少なくはない。それに主は気づいておらぬが、お前自身の闇の部分にもこの様な存在に魅入られるものが感じられる……」
「お、俺の心の闇のこと言っているのか……!?」
「うむ、主の闇はとても純粋で人はもちろんの事、多種多様な種族や人種、更には人外の者までも虜にする歴史上、まれにみる闇じゃ……」
「そ、それじゃ。この前、俺の目の前にマモノが、妖魔が現れたのも……!」
「うむ、その時の樹木龍の龍玉から発せられた聖なる力だけでなく、主の心の闇から発せられるオーラ。そのオーラにも惹き付けられて現れたのじゃろう……」
「……! マ、マジかよ……!?」
雷龍の自説に驚きが隠せない修司。
そして妖魔が修司と睨みあっていた時、妖魔が木陰で気絶しているアッコに気が付いた。
「……ウゥ……」「グウウウゥゥ……」
妖魔の標的は修司から、弱っていたアッコに変えられてしまった。
「ア、アッコが! クソッ、どうしたら…」
迷っていた修司に雷龍が話しかけた。
「お主、あの女子(おなご)を助けたいのか……?」
「そ、そうだ! 俺の大事な……親友なんだ!」
「なるほどな……では物はついでじゃ、主が本当に聖龍使いに相応しいか試してみよう……」
「ど、どうするつもりだ!!?」
「むむ、まずは我の龍玉を持ったまま、お主の眼前に突き出すのじゃ」
「あ、ああ。こうか」
修司は言われるがまま、龍玉を眼前に突き出した。
「うむ、そうじゃ。次はそのままの体勢で龍玉をあの妖魔なるモノに狙いを定めるのじゃ」
「ああ、こうだな」
修司は龍玉を妖魔の居る方向に突き出した。
「グゥ……グワアァァ!」
その様子に妖魔も気づいて、修司に襲いかかった。
「うわっ! つ、次はどうしたら?」
「あとは祈るのじゃ。あの妖魔を倒したい、あの女子(おなご)を助けたいと……ひたすら強く念じるのじゃ……」
「あ、ああ! ウッ……!!」
修司は強く念じた。あのマモノを倒しアッコを助けたい、そしてゆくゆくは街を、街のみんなを助けられる力になりたいと強く願い、そして念じた。
すると龍玉は輝きだして、そして龍玉から雷が噴き出したのだった。
「う、うわっ!」
その瞬間、修司は怯んでしまうが放出された雷はそのまま妖魔に直撃した。
「グ、グワワアアアァァァァ!!!!!!!!!!!!」
妖魔は断末魔を叫びながら、消滅した。
「こ、これが……龍玉の……聖龍の……ち、力……」
修司は余りの衝撃に倒れこんでしまった。
「やれやれ、性の無い。じゃが初めてにしては上出来じゃ。何よりこ奴の鋼の如く強く、そして固い意思なら聖龍使いとして、やっていけるかもしれんのう……」
雷龍はそう言い残すと、修司の数珠玉の一つになり、辺りは静まり返った。
[不安と謎]
一方、ジュピターの念を感じて集結したセーラー戦士たちはジュピターからの出来事を聞いた。
「……それでね、市長さんと女の子が上の方に逃げて行って、私が必殺技で妖魔を倒そうとしたら何故か電撃が私のティアラじゃなく上の方に、まるで何かに惹きつけられるかのように行っちゃって、それを追うかのように妖魔も上の方に行っちゃった訳なのよ」
「た、大変!それじゃあ上の方に逃げた市長さんと女の子が危ないわ!」
「急いでいきましょう!」
ジュピター、マーキュリー、マーズの三人が先頭を行く中、後ろからセーラームーンとセーラーヴィーナスも駆け足で追走する。
「そ、それにしても……なんでいつもは上手くいっている必殺技が今回に限って失敗しちゃったにかしら?」
困惑するジュピターに、ルナとアルテミスが説いた。
「原因は解らないけど、おそらくジュピターの雷のパワーを吸収する物が妖魔の行った方角にあるのよ。そしてそれに妖魔も惹き付けられて向かっちゃった訳だと思うわ……」
「ああ、セーラー戦士のパワーを吸収できるなんて普通のモノじゃないのは確かだ。それに妖魔も何らかの反応を感じたのかも……」
「とにかく急ぎましょう。この先に市長さんと女の子が逃げて行ったわけでしょ!?」
「え、ええ……そうなんだけど……」
ヴィーナスと話すジュピターの様子にマーズが気が付く。
「ジュピター、何か気にしているの……?」
「マ、マーズ。じ、実はさっき市長さんから……」
ジュピターはみんなに、修司がジュピターに吐きすてた台詞を話した。
「……! そ、それじゃあ! やっぱりあの市長さん……!」
「私たちの正体に気づいていた訳!?」
「うん、そうとしか考えられない……最初会ったときからタダ者じゃない気がしてたけど……」
愕然とするマーキュリーとヴィーナスに、ジュピターは険しい面持ちで話す。
「や、やっぱり! 神社で会った時も何か感づいていた様子だったし……!」
「と、とにかく今はその事は後回しよ! まずは妖魔を追って倒さないと……! 市長さんと女の子の安否も気になるし……」
「……そうね、また最初に会ったときみたいな事になってほしくないし……!」
マーキュリーと話したマーズは修司と最初に会ったとき、妖魔から修司を護れなかった屈辱を繰り返したくないと思っていた。
すると、後方からセーラームーンが他のセーラー戦士に追いつけなく、今にも泣き崩れそうだった。
「うわーんっ。みんなー置いてかないで~、待ってよ~~……」
「もうっ、うさぎのノロマっ!」
鈍くさいセーラームーンをセーラーマ―ズが叱り付ける。
セーラー戦士たちが祠の前に辿り着くと、木陰で寄りかかり気絶しているアッコと、倒れていた修司、更には燃え尽き消失した妖魔の残骸を発見した…。
「こっ、これは……」
「いったい、これはどうなっているの……?」
「し、市長さん!」
マーズとジュピターが驚く中、マーキュリーは倒れこんでいる修司に駆け寄り、脈をとった。
「……ふぅ、大丈夫。気絶しているだけね」
「マーキュリー、こっちの女の子の様子も見て~」
「解ったわ」
ヴィーナスに呼ばれてマーキュリーがアッコを介抱している間、ルナとアルテミスが辺りの様子を確認する。
「……う~ん、もう辺りに妖魔の気配はないのは解るけど……」
「うん、ジュピターのパワーを吸収した様な物の気配は感じられないね……」
「はぁ、はぁ……も、もう妖魔も居なくなった事だし、早く市長さんとその女の子運んで山を降りようよ……」
息を切らすセーラームーンに、ルナとアルテミスが言った。
「セーラームーン! そんな呑気な……」
「そうだよ、セーラー戦士のパワーを吸収できるなんて普通じゃないよ」
そして、アッコの介抱をしていたマーキュリーがルナとアルテミスに駆け寄った。
「あの女の子も大丈夫。妖魔に殴られて多少脳震盪を起こしただけで、すぐに回復するでしょう」
「そう、それは良かったわ」
「ああ、ジュピターのパワーを吸収したものは気になるけど、まずはこの市長さんとその女の子を連れて山を降りよう。人命が何より優先だからね」
「よしっ。市長さんは私がおんぶして運ぶから、他の誰かはその女の子をお願いね」
マーキュリーからの報告に安堵するルナとアルテミス。そして気絶しているアッコをジュピターが運ぶと言い出すとセーラームーンがおちょくる。
「はいはいっ、重い男の子を担げるのはまこちゃんしか居ないもんね♪」
「悪かったわね、怪力バカで……」
「もう~、そんなに気を悪くしないでよ~。軽~い冗談だってば……」
セーラームーンがジュピターをなだめていると、ヴィーナスが気絶しているアッコを抱えてきた。
「それじゃあ、ジュピターは市長さんをお願いね。私はこの女の子を運んで下山するわ」
「わかったわ、ヴィーナスお願いね。ほらっ、うさぎちゃんも早く行きましょう!」
「うわぁ~…まこちゃん機嫌なおしてよ~」
ジュピターからの叱咤に半べそをかくセーラームーン。
すると此処でセーラーマーキュリーが皆に言った。
「み、みんな。まずは変身を解いてから下山した方が良いんじゃ……」
「そうね、一般人の登山者として彼らを見つけてそして運んだって説明した方が何かと都合がいいでしょうし……」
マーキュリーの意見にルナも賛成する。
「……そうね、その方がいいかもね。ほらっ、みんなもう行くわよ」
「まこちゃん、機嫌なおった……?」
「さぁ、どうだろうね?」
「ひ、ひえぇぇ…」
ご機嫌斜めなジュピターを前に萎縮するセーラームーン。
「ほらほら、二人ともケンカしてないで……」
「ははは……? ど、どうしたのマーズ、早く行きましょう?」
「え、ええ……」
マーキュリーとヴィーナスが宥める最中、マーズは開かれ、何かあったと思われる祠を見入っていた。
「……中に何か入っていたのかしら……」
「マーズ~!」
「え、ええ! 今行くわ!」
セーラーヴィーナスに呼ばれたセーラーマーズは一旦、仲間と共に山を下山、ふもとに着く寸前、全員変身を解いた。
[新たなる決意]
山のふもとの小屋で、担ぎ込まれた修司とアッコが介抱されていた。
「う、うう……」
最初に目を覚ましたのはアッコだった。
「ア、アッコ!? だ、大丈夫?」「モ、モコ……?」
モコの呼びかけに反応するアッコを見て、大将もアッコに話し掛ける。
「よ、良かった~。マモノに襲われたって聞いて……」
「た、大将……こ、ここは……?」
「山のふもとの山小屋よ、山の中の祠の前で気絶しているアッコと修司がいて、発見してくれた人達がここまで運んできてくれたのよ!」
「しゅ、修司と……、! そ、そうだ! 修司は? 修司は無事なの!?」
「アッコ落ち着いて。修司も無事よ。祠の前で倒れているのを発見者の女の人達が見つけたって聞いたけど……」
「そ、その女の人達って……?」
「いやね、私たちもお礼を言いたかったんだけど名前も言わずにどっか行っちゃったのよ」
「そ、そう……」
アッコたちが話していると、修司も気が付いた。
「う、うっ……」
「あっ、修司!」「修司っ!」「「修司~」」
「こ、此処は……?」
モコや大将達の声に反応して目覚める修司。
修司は自分の右手の数珠玉に新たに黄色い龍玉があるのを見て思い出した。
(そ、そうだ。確か俺は祠の前で妖魔に対して……!)
修司が目を覚ますと、其処にアッコも駆け付けて声を掛けてきた。
「しゅ、修司……!」
「ア、アッコ……! ぶ、無事か!?」
「わ、私は大丈夫……修司こそ、あの後何が起きたの?」
「あ、ああ。た、確か……お前がマモノに殴り倒されてすぐ緑色の女が現れてな。マモノはその女に気がいっている間にお前を担いで祠のところまで逃げたんだ。だ、だけど気力が無くなって、後は覚えてないわ……」
修司は重要な部分を誤魔化し、みんなに話した。
「それにしてもマモノが現れたなんて運が無かったわね二人とも……」
「ああ、全くだ。それにしても無事で何よりだったぜ」
「え、ええ。まあね。しゅ、修司、あの……」
「う、うん? な、何だ……」
モコと大将に答えた直後、アッコは修司に恥ずかしそうに言った。
「……助けてくれてありがとう」
「い、いや……俺は何もしてないぞ。マモノに対してだって逃げ出したんだしな」
「それでも、気絶した私を担いで逃げてくれたんなら助けてくれたのも当然よ、本当にありがとう!」
「い、いや……」
こうして6人は帰宅の道に入り、最後にはそれぞれの家までの帰路に着き修司とアッコは二人っきりの状況で自身の家に歩いていた。
「修司、今日はマモノとか落雷とかで散々だったけど、またみんなで一緒に遊びに行きましょう♪」
「……あ、ああ……」
アッコが修司に話しかけている最中、修司は考え事をしていた。
(俺の所持する龍玉に秘められた聖龍の力だけでなく、俺自身の心の闇にマモノやその他の危険な存在が魅入られ、惹き付けられると言うのか。このままでは……)
修司はそうこう考えているまま、加賀美家の前に辿り着いた。
「それじゃあ修司、お休みなさい」「あ、ああ。お休み…」
アッコが家に入るのを見届けてから、修司は再び帰路に着き、そして決心した。
(そうだ。もっと強くならなければいけない。聖龍使いとしてはもちろん、一人の人間としても強くならなければ、聖龍の力や俺の闇に惹き寄せられる存在とまともに立ち向かう事が出来ない。何より、こんな俺と行動を共にしてくれる大将やギョロ・ゴマにモコ、そしてアッコ達を護る事なんてとても不可能だ。しかし、どうやって強くなれば良い?)
修司は悩んだ。
聖龍の力だけでなく、自身の闇の心までもがマモノや危険な存在を惹き付けてしまうと知った以上、自分や自分を想ってくれるアッコ達を護るため更に強くならなければいけないと、自分の中で決意したのであった。