修司が妖怪病院での治療が終わり、退院前日になったところから話は始まります。
[回復した修司]
修司が妖怪病院に担ぎ込まれて早、数日が経過。
修司を診ていた妖怪病院の医院長は、予想以上の回復力で治った修司の身体能力に驚きを隠せないでいた。
「し、信じられない、まだあれから5日しか経っていないのに……! 予想以上の回復力だ!」
「へへ……医院長先生、俺の体は並みの人間以上に鍛えてあるんでね。これぐらい、どうもしないぜ」
修司と医院長が話していると、部屋に鬼太郎と変身怪獣、それに猫娘とねずみ男もやって来た。
「しゅ、修司…! もう大丈夫なのか!?」
「ああ、もう体はすっかり良くなっているよ。今すぐにでも退院したい気分だぜ」
変身怪獣の問い掛けに修司は溌溂と答える。
「はははっ、そんなに急がなくても明日にでも退院できますぞ」
「しっかし、こうベットの上で寝っぱなしだと体が鈍っていけねえぜ……」
「ははっ、修司君。そんなに慌てなくても明日にでもすぐに此処を出られる。それまでもう一日ゆっくりしなされ」
「ああ、ホントに手間をかけさせたな目玉の。そして鬼太郎、変身怪獣。それに猫娘やねずみ男も礼を言うよ」
目玉おやじにあと一日は安静しても良いと言われ、修司は変身怪獣を始めとした妖怪達に礼を言う。
「そ、そんな…私たちほとんど何もしていないわよ……」
「そうそう、礼なんかよりも謝礼の方をタンマリと……¥」
「……アンタって!! 患者の前で少しは態度を遠慮したらどう!!」
「ぎゃ、ぎゃああああ!!!!!!」
修司に金銭を要求するねずみ男は猫娘に思いっきり顔を引っ掻かれ、天地が裂けるような悲鳴を上げた。
そんな二人を前に苦笑しながら鬼太郎が修司に話し掛ける。
「ははは……それにしても修司君、君の回復力は凄いね。医院長先生からも聞いたけど予想以上の早さで体調が良くなったんだってね」
「へへっ、今さっき医院長にも言ったんだが俺の体は並大抵のもんじゃ無えのよ」
「……ふぅ~ん、どちらにしても良かったよ」
鬼太郎が安堵していたその時、ねずみ男が修司に近づいてきて、修司の右手に巻きついている数珠について聞いてみた。
「へへへ……ところで市長さん、貴方のその右手にあるキレイな数珠玉はいったいどういった品で?」
「へっ? こ、これか。こ、これはだな……」
修司がねずみ男の質問の返事を迷っていたその時、目玉の親父も修司の右手にある物に気が付いた。
「むむっ! お、お主……そ、その数珠の玉は……!?」
「えっ!? え、え~と……ですね……」
修司は遂に追い詰められて、黙り込んでしまった。
「おおっ。おい親父、この数珠ってそんなに価値のある物なのか?」
「い、いや…わ、ワシの目に狂いが無ければ…」
ねずみ男が目の色を変えて目玉おやじに問い詰めると、目玉おやじは修司に問い掛ける。
[龍玉の在りか]
「おいっ、修司とやら。主が手に身に付けているその数珠の玉、それは聖龍の龍玉ではないのか!?」
「えっ、ええ! な、なんで解るの!?」
修司は身に付けているのが龍玉だと気付かれた事はもちろん、目玉の親父が聖龍の事について知ってたのにも驚かされた。
「父さん、聖龍って、いったい…?」
鬼太郎が目玉おやじに訊ねると、目玉おやじは説き始めた。
「うむ、古よりの伝えでな。この星が生まれたその時から、この星の大自然の力を司り、そして護ってきた聖なる龍の事を云うのじゃ。そして龍玉とは、その聖龍が普段その身を隠し更には力を抑制するために玉の状態になっているときの聖龍の姿なのじゃよ」
「ち、力を抑制……?」
「うむ、聖龍は大自然の力を司っておるため、その強大な力も備わっている。しかし、普段からその力を解放しっ放しでは自然が壊れ、果てはこの星が滅んでしまうのじゃよ。ゆえに、その力を抑え込むためにも聖龍は普段は龍玉となっているんじゃよ」
「な、なるほど……しかし、なんでまたそんな物を修司君、君は持っている訳?」
「えっ……え~とな。その……は、話せば長くなるんだけど……」
困惑している修司に、目玉おやじは真意を衝いた。
「……お主、もしや聖龍に認められ、聖龍使いになる使命を与えられたのではないか?」
「……! そ、そんな事まで見通しているのかよ……!!」
目玉おやじに言い当てられて愕然とする修司。
「と、父さん。聖龍使いって……?」
「聖龍使いとは、全ての聖龍、それぞれ炎・水・樹・氷・雷・風・地の力を司る7体の聖龍全てを従え、この星の自然を護る使命を持っておるのじゃよ……」
「す、すごい……!」
目玉おやじの解説に鬼太郎をも驚く中、修司は目玉おやじに険しい真顔で話し掛ける。
「……目玉の。アンタそこまで聖龍について詳しいんだな」
この修司の発言に、鬼太郎が説明を付け足した。
「父さんは昔から伝承されている言い伝えや裏歴史の事を普段から調べているからね」
すると続けて変身怪獣も修司の真意を打ち明けた。
「修司は、その聖龍使いの力で街の市民を護っていきたいと願っているんだよ」
「! それは凄い! 凄い事を考えているんだね、修司君は」
変身怪獣の話を聞いた鬼太郎は、修司に感心を向ける。
「い、いや……だけど未だにあと2個の聖龍の龍玉の在りかが解らないんだよ。これじゃ聖龍使いになれねえし、何より例えこの先、聖龍使い専用の装具である武者鎧を見つけても装着できないって古文書にも記されているからな……」
「……おい、修司君とやら。今までその龍玉は何処に在ったのじゃ?」
目玉おやじからの質問に修司は真摯に答えた。
「あ、ああ。一個目の樹木龍の龍玉はアニメタウン郊外の山の中の古びた小さな祠の真下の地面に埋まってて、次は火川神社っていう神社の裏手にある古ぼけた社の下の土ん中に、次の水龍はアニメタウン沿いの海辺の隅っこにあった古い祠の中に…大地を司る岩石龍は、アニメタウンの地下工事をしていた時に偶然に見つけて…最後に手に入れた雷龍は雷神を祀っていると云う祠の中に在って……」
「ふむ、そうじゃったか。残りの龍玉はそんな所にばかり在った訳なんじゃな……」
「! め、目玉の! 残りのって……つ、つまりまさか残りの龍玉の在りかを知っているのか!?」
「知っているも何も、残りの龍玉はワシら妖怪の間でしっかり護られているからのぉ」
「ま、護られている?」
「うむ、聖龍の龍玉から発せられる大自然の力に他の妖怪たちが魅入られ、それを巡って争いあってきたのじゃ……主は知らなかったのか?」
「い、いや……そう言えば以前、雷龍からそんな話を聞いた様な……」
「なんと! お主はすでに聖龍と意思を交わすまでに認められているのか! それじゃったら……!」
「……ンっ?」
「残り二つの龍玉は風と氷。それぞれある妖怪たちのところで厳重に保管・監視されておるのじゃよ。また龍玉を巡って争いや心無い妖怪が出て来んようにのう」
「た、頼む目玉の! 残りの龍玉がどこに在るか教えてくれ! 俺はどうしても聖龍使いになりたいんだよっ!」
「ふむ……本来は他の妖怪やまして人間に教えるのは到底できぬのじゃが、すでに聖龍に認められているお主になら教えてやっても良い。じゃが……」
「………………?」
「まずは氷の龍玉。これは人里離れた雪山の奥に在ると云う。そして風の龍玉。これは大天狗達、天狗族が管理・護っているという山の頂上に在ると言われておる。どちらも人が立ち入れる事が出来ぬ秘境じゃ……」
「なるほどな、どおりで見つからないわけだ」
修司にそう告げた目玉の親父は、修司こう続けて話した。
「しかし、どちらの山の妖怪にもワシらと面識があるんでな。訳を話せば何とかしてくれるかもしれん」
「よ、良かったですね修司君! これで聖龍使いになれるよ」
目玉おやじの話を聞いて鬼太郎が喜ぶも、修司は思い悩んでいた。
ただ龍玉を手に入れ、聖龍使いになったとしても本当にそれで強くなれたと言えるのかと
そして、修司はある結論に達した。
[修司の決意]
「おい! 目玉の! 少し話があるんだが」「う、うむ? 何じゃ」
「その龍玉が在るという山は厳しい環境と、それと人間以上に強い妖怪たちで護られているんだよな?」
「う、うむ。雪山には妖怪《雪女郎》とそれに束ねられる雪女や雪男といった、雪国の妖怪が住み着いておる。そして風の龍玉がある天狗山には大天狗引き入る天狗達が自らのの修行場として《天狗大本堂》なるものが建てられていたりと…しかしお主、そんな事を聞いてどうゆう考えがあるのじゃ……?」
「俺は……俺はただ龍玉を手に入れるだけじゃあ、いけないと悟ったんだ。自分自身も強くなって、本当の意味で強くならなければ聖龍使いになっても意味が無いって……そう、思うんだ」
「ふむ……なるほどのう」
「そ、それで助けられてお願いするなんて図々しいかもしれねえが……俺をその龍玉がある所に連れて行ってくれ! そこで俺は…どんな事でもする! どんな修行でも受けて、心身共に立派になりつつ、龍玉を手に入れたいんだよ!!」
「お主、そこまでの考えがあったとは……よしっ、ワシも腹をくくろう。そしてその山を管理している雪女郎や大天狗に交渉して、お主が強くなれるように取り計らってみよう。彼らがワシの意見を聞いてくれれば……」
修司と話す目玉おやじが心配する中、鬼太郎と猫娘が目玉おやじに笑顔で話し掛ける。
「大丈夫ですよ父さん。父さんは雪女郎や大天狗様とは長い付き合いですし、僕等とも面識のある葵ちゃんや黒烏さんたちが居ますし、何かあったら彼らにも協力をお願いしてみますよ」
「そうそう、葵ちゃんや黒烏さん達にはお守りとして持たせた妖怪ケータイがあるんだし、すぐにでも連絡が取れるから大丈夫ですよ」
この二人の話を聞いた修司は行動に移す。
「よ、よし……ま、まずはこの事を帰ってウッズに話してから旅の準備をして、それからすぐに龍玉を入手するとともに修行の身に入ろう……」
修司がベットからとび起き、すぐさま服を自身の服と着替え、さっそうと病院の外に出ると。
「お~いっ、鬼太郎、変身怪獣、猫娘、ねずみ男~早くアニメタウンに帰るぞ~」
「あいつ、ホントに現金なやつだな~」
今まで寝た切りとは思えなかった修司の元気に変身怪獣が呆れる中、鬼太郎と目玉おやじが笑顔を浮かべる。
「ふふふっ、ホントに聖龍もそうですが、自分が強くなれればと考えただけであんなに元気が良くなるなんて」
「ふむっ。どうやら彼は心の底から本当に強くなりたいと想い願っているんじゃな……」
一行は、妖怪病院の医院長先生に別れを告げ、鬼太郎と猫娘は一反木綿へ。修司とねずみ男はカラスで。そして変身怪獣はいつもの如く、自力で飛んでアニメタウンまで一行は飛んで行った。
「いや~……長い人生の中でカラスだけで空を飛ぶなんて滅多にできないチャンスだ。これも良い思い出ってやつだな」
「気にいってくれて、僕もカラスたちも嬉しいよ」
初めてカラスで吊るされて飛行する修司に、鬼太郎もカラス達も嬉しそうだった。
(いや~、まさかあのお宝が龍玉って代物だったとは……何だか危なっかしくて欲しくなくなったな)
一方のねずみ男は修司が腕に装着している龍玉の数珠に恐れを抱いて欲求が消えていた。
そして空を飛びながら変身怪獣は修司に訊ねる。
「それにしても修司、お前どうやって修行すればいいか解ってんのか?」
「あ、ああ。大方の予想はしているよ。まずは雪山では寒い極寒の山々を登り、最終的には龍玉を手に入れて良いと言われるまで雪山で過ごそうかと考えている……」
「も、もう一つの山では?」
「風の龍玉がある山は天狗達に支配されているっていう山だから、俺の修行に付き合ってくれって頼んで格闘術に磨きをかけたいんだよ……」
「なるほどねえ……しかし相手は妖怪だ。並大抵の修行じゃないと思うぜ」
「並大抵であっては困る! 俺はもっともっと強くならなければいけないんだ。今の自分にムチ打って、更に厳しい試練に打ち勝たないと……」
「あきれるぜ、お前のその考え……まぁオレもヒマなんだし一緒に付き合ってみるかな」
「へっ、また宜しくな、相棒」
「ああ」
一行はそのまま、修司の自宅まで飛んで行った。
着いた時には辺りはもう暗くなっていた。
「ふぅ~……修司様の代わりに市長としての書類の目通しやその整理、更には執事兼召使いとしての家事等の雑用にと……全く、心休まる時がありませんよ。しかし、確か変身怪獣さんの話だと今日にも退院して帰ってくるはずなんですけど……」
ウッズがそう言って、更に家事を続けていたその時、外から声が居てきた。
「ぅぉーぃ、うぉーぃ。ウッズ~」「あれっ、この声は…」
自分を呼ぶ修司の声にウッズが気付く。。
「お~いウッズ~、お~~いっ」
「しゅ、修司様? 修司様、ようやくご帰還されたんですね!?」
修司の声に気付いたウッズが玄関に飛び出し外に出たが、修司の姿は無かった。
すると上空の方から。
「ウッズ~。こっちだ~、ここだよ~」
「えっ!? しゅ、修司様? な、何ですかそのカラスで…」
カラス達に吊るされて、空から帰宅した修司を前に驚くウッズ。
「よいしょっと、まあ話は中に入ってからするよ。そうそう紹介するよ。こちらが今回俺を助けてくれた【ゲゲゲの鬼太郎】とその左目に入っているのが彼の父親【目玉の親父】さん、そして友の【猫娘】に【ねずみ男】だ」
「こんばんは、初めまして」「うんしょ、初めましてのう」
「えっ!? え、ええ…」
鬼太郎に、鬼太郎の髪の毛の間から顔を覗かせる目玉おやじを初見してまたも一驚するウッズ。
「どうも」「オッスっ」
「……………………」
更に猫娘やねずみ男も前にして、ウッズは驚きの余り絶句してしまう。
「ウッズ、話は中でするよ。みんなに何か出しておいてくれないか」
「は、はぁ……しょ、承知しました……」
修司は自宅の中に変身怪獣、更には鬼太郎に目玉、猫娘にねずみ男まで誘い入れ、中で茶を飲みながら今までの経緯と自分がこれからどうしたいかウッズに告げた。
「……という訳なんだよ。龍玉の残りは全て妖怪によって護られていて、俺は今回ただ龍玉を手に入れるだけでなく妖怪の住処や妖怪たち自身と過ごし、己を鍛えていきたいと考えている訳なんだよ」
「……は、はぁ……ま、まぁ鬼太郎さん達は確かに修司様の仰る通り、大変良い方達とは思うのですが……他の妖怪のところで修行なんて……」
修司の身を案じるウッズに、目玉おやじが話し掛ける。
「そんな心配しなくても大丈夫ですぞウッズ殿、ワシ達からも其処の住人である妖怪達に一緒に修行に付き合うように取り計らってもらうよう説得してみるわい」
「は、はぁ……ま、まぁ目玉の親父さんが言うには信用しても良いようですね」
「よし! ウッズには報告したし、すぐに修行に出る旅路の準備をしなければ」
「しゅ、修司様! こ、今度はいつまで街を空けていらっしゃるおつもりですか?」
「うむ、そうだな……最低、残りの夏休み中には修行を終えて龍玉も手に入れて帰ってくるつもりだ」
「そ、そんなに……!」
長期に渡ってアニメタウンを空けると言い出す修司に唖然とするウッズに変身怪獣が言う。
「まぁ、そんなに心配すんなウッズ。オレも一緒に同行するからそんな大事は起きないと思うぜ」
「い、いや……し、しかし……」
「それに、お前はコイツの性分を誰よりも理解しているはずだろ? コイツが一度決めた事を簡単に変える様な男じゃないのは承知のはずだ。違うか?」
「は、はぁ……確かに」
変身怪獣の説明に、ウッズは納得してしまうのだった。
[いざ、修行の場へ]
修司はウッズに事情を話し、旅路の準備を終えた後、鬼太郎達に龍玉があるという秘境まで連れて行ってもらう事にした。
「まずは氷の龍玉がある雪山に向かおう。そこには雪男や雪女、更にはそれらを束ねる女王の様な存在、雪女郎が居る。彼らに事情を話し、修司君の修行を行いつつ龍玉を渡してもらえるように言ってみるわい」
「ああ、宜しく頼むぜ目玉の」
修司はそう目玉おやじと話すと、今度は一反木綿に乗り込んだ。
「一反木綿、今度はまたアンタに乗っけてもらうぜ」
「う、うむ……ま、任せるでばってん……」
一反木綿は多少重苦しそうであったが、何とか耐えていた。
「よしっ、ウッズ。後の事は任せたぞ」
「は、はぁ……確かに街の、市長としての代行は引き受けますが、その……」
「うんっ? 何が言いたい?」
「はぁ……その、アッコさん達には何て言えば……実を言うと修司様が妖怪病院で寝ている間も彼女が頻繁にやって来まして……一応は修司様は急病で遠方の病院に入院している状態と、話したのですが……」
「……ああ、アッコ達にか……そうだな、とりあえず俺は街の市長として街の未来のためになる活動をしに行く為に夏休み中は帰ってこないって伝えてくれ」
「は、はぁ……わ、解りました……」
「よっし、みんなそろそろ行くか。出発~」
一反木綿は修司を乗せて空に舞い上がっていった。それに続けて鬼太郎や変身怪獣も続いて飛び立った
「ふぅ~、ついには妖怪とも親睦を深めるまでになるとは……まぁ、これも修司様にとっては良い教育なのかもしれませんね。させと、残りの仕事も片付けて置くか……」
ウッズはそう呟くと家の中に入っていった。
[修司の居ないアニメタウン]
その翌日、いつまでも帰ってこない修司を心配したアッコが修司の自宅、市長オフィスにやってきた。
「はーいっ、今開けま~す」
何度も鳴り響くチャイムにウッズがドアを開けると、そこには不安そうな表情のアッコが立っていた。
「こ、これはアッコさん。な、何かご用で……」
「ウッズさん、修司はまだ帰ってこないの? あれからずいぶん経つのに一向に連絡が無いわ……」
「あ、あのですね……しゅ、修司様は退院してすぐに旅行に行ってしまわれたんです」
「え、えっ~! そ、そんな…わ、私に何も言わずに!?」
「え、ええ……いきなりの旅路でしたので……」
「そ、そんな! こっちは心配で心配で不安だっったのに! もう~っ、修司ったら!」
ウッズから話を聞いたアッコはそのまま怒って帰っていってしまった。
(あ~あ……アッコさん怒らせてしまいましたか。私はどうなっても知りませんよ修司様……)
ウッズが不安を過らせる一方、怒って帰る道中でアッコは内心こう想っていた。
(何よ何よ……修司は私の事なんてどうでも良いと思ってるの? ……私の事は頭に入ってはいないの……)
アッコはそう思いつめながら、しょんぼりしてしまい、その道中、あの女性陣とすれ違ったが彼女が彼女達に気づくことは無く、彼女達も考え事をしていてアッコの事は眼中には入らなかった。
「……で、結局みんなで市長さんところに出向く訳ね」
「そりゃ、行きづらいだろうけど彼が私達の正体に気づいているなら放っておけないわよ」
「そうね。むやみにセーラー戦士がいつもは一般の中学生だった……なんて告発してしまったら……」
「そうよ、私達普通の生活ができないわよ。何とかしなくちゃ」
「だけどさぁ~、実際に市長さんに会って何話したらいいの? 私達が美少女戦士のセーラームーンだってことは黙って下さいなんて……」
それは木野まことに火野レイ、水野亜美に愛野美奈子と月野うさぎの五人だった。
「そ、そりゃあ……実際に会ってから何をどう話せばいいかは解らないけど……」
木野まこと達が不安がる中、うさぎと美奈子に抱きかかえられて連れてきてもらっていたルナとアルテミスが言い放った。
「大丈夫よ、まずは市長さんに会えるように取り計らってもらって、それから彼に事情を話せばきっと解ってくれるわよ」
「そうそう、その為に僕らも付いて来たんだから。何とか話を信じてもらえるよう、驚かれるだろうけど言葉をしゃべる猫を2匹も連れて来られれば、市長さんにもきっと話を信じてもらえるし、理解もしてくれるよ」
「……そうね。まずは市長さんに直談判して直接話を聞いてもらえるように頼んでみましょう」
ルナとアルテミスの協力もあると言う事で、火野レイは決意を新たにする。
そしてセーラー戦士一行は修司の自宅、そう市長オフィスまで直接足を運んだ。
「ここね、市長さんの自宅兼オフィスは」
「うっわ~。スッゴイ大きいね。家の形も円っぽくてなんかカワイイし……」
「うさぎっ。今はそんな呑気な事気にしている時じゃないはずよ」
修司の自宅を見上げて驚くうさぎに美奈子が注意すると、レイがドアベルを鳴らした。
「は~いっ、どなたですか」
玄関先のインターホンにウッズが出る。
「あ、あの…すいません」
「ちょっと市長さんに御話があるのですが」
火野レイと水野亜美が訪ねると、ウッズが答える。
「えっ……は、はい。解りました、ちょっと待っててくださいね(誰だろう、聞き覚えのない女性たちの声だ)」
ウッズが玄関を開けると、そこには5人の女性、そしてその内2人は猫を抱き抱えて立っていた。
「あ、あの……どちら様で」
ウッズが訊ねると、レイ・亜美・まこと・美奈子・うさぎが続けて訴える。
「と、突然押し掛けてきてすいません」
「私達、市長である小田原修司君に話があって此処に来たんです」
「忙しい身の上であるのは重々承知していますが」
「市長さんに直接会ってお話したいんです」
「どうか、市長さんに会わせてもらえますか?」
この五人からの嘆願に対し、ウッズは誠実な対応で返した。
「い、いや……ま、誠に申し訳ありませんが現在、修司様は御在宅ではないのです」
「ええっ? い、今どこに?」
レイが訊ねると、ウッズは上手く誤魔化しながら答えた。
「あ、あの……詳しくは申し上げられないのですが、市長としての仕事の一環で少し遠方の方へ出向いておられるのですよ」
「い、いつ頃帰ってきますか?」
今度はまことが訊ねると、ウッズはまたも上手く誤魔化す。
「そうですねぇ、本人が言うには夏休みが終わるまでには帰ってこないという事でして……」
「そっ、それじゃあ夏の間はずっと……!」
「み、みんな…どうしようか……」
亜美と美奈子が落胆してると、レイとまことが話し出す。
「今は一旦帰りましょう。また折を見て市長さんに直接会える機会を祈りましょう」
「そ、そうね。直接市長さんに話した方が都合がいいし……」
そして亜美はウッズにこう伝えた。
「あ、あの……また今度、できれば市長さんが戻ってきた夏休みあとに再度伺っても宜しいですか?」
「あっ……は、はい。構いませんよ、いつでもお越し下さい」
「解りました、お忙しい所どうもすいませんでした」
ウッズの了承を得てレイが述べると、続けて他の四人も述べた。
『どうも、すいませんでしたっ』
セーラー戦士達はウッズにそう言うと、皆帰っていった。
「……今の女性達は……修司様と直接話したがっていたみたいだけど、修司様のお知り合いなのかな……」
セーラー戦士達の正体を知らないウッズは家の中に戻っていった。
こうして、修司は修行の旅に出て、修司の居ないアニメタウンは猛暑に照っていた。
そして、修司は修業先で何を得て戻ってくるのか。