そこで、修司を待ち受ける修業とは。
[雪山の主・雪女郎]
吹雪激しい人里離れた雪山に、修司と変身怪獣は鬼太郎に案内されてやってきました。
「ひ、ひぃー。ま、マジでこんなところで修行したいって考えているのか?」
極寒の雪山を飛ぶ変身怪獣が、一反木綿に乗る修司に問い掛ける。
「あ、ああ……普通に特訓したらダメだし、何よりまずは此処の主である妖怪に会ってみて話はそれからだ」
吹雪の中を飛んでしばらく、鬼太郎が雪山の中にポツンとある氷穴に降り立った。
「着いたよ、この先に山の主・雪女郎様と雪女達の集落があるんだよ」
「よ、よし。会って話をしなきゃ龍玉も手に入れられないし、俺も強くはなれねえ……」
一行は氷穴の奥に進んでいくと、先の方から灯りが見えてきた。
「着いた。此処が雪女達の集落。言わば雪女達の隠れ里だよ」
そこには多くの色白の肌、白い着物の美しい女の妖怪達がいた。
「う、うわ~。こ、こんな山奥に美人の集まりがあったとは♡」
「おい変身怪獣。余り失礼のないようにしろよ。機嫌損ねて氷漬けにされちまうからな」
「お、おう……」
修司の忠告に、変身怪獣は一瞬脅えながらも返事した。
そして一行は、鬼太郎に連れていかれて更に奥で鎮座している雪女郎に会いに行こうとすると、ある一人の雪女が鬼太郎に話しかけてきた。
「うわ~鬼太郎。久しぶりだね、また会えちゃうなんて」
「あ、葵さん。久しぶり」
「……またよ、あの子」
「う、ウッホ~! こりゃまた雪女の中でもかなりのベッピン。し、しかもきょ、巨乳……」
「オイっ、変身怪獣。何処を見ているんだ!」
鬼太郎達と顔馴染の雪女の葵に、鬼太郎は驚き、猫娘は不機嫌になる一方、目の色を変える変身怪獣に修司が叱咤する。
「見かけないお客さんを連れて来たんだね。鳥の妖怪に……? それと……ま、まさか人間の子!?」
初見の修司と変身怪獣を見て、驚く葵に鬼太郎が訴える。
「葵さん、詳しい話は直接君達の頭、雪女郎に話したいから彼女に会わせてくれるかい」
「え、ええ。鬼太郎が連れてきた人間なら大丈夫とは思うけど……でもなんで?」
葵が疑問視すると目玉おやじが鬼太郎の髪の毛の間から顔を出す。
「葵殿、それは雪女郎に会った時すべて話すから」
「解りました。皆さん此方へ。私達が頭、雪女郎様に会わせましょう」
「ありがとうございます。葵殿」
修司は初対面の葵にきっちり礼を述べ、彼女に付いて行った。
「いや~。まさか鬼太郎の知り合いに、あんなベッピンの雪女ちゃんがいるとは♡」
「彼女は僕らの友達で、今でも度々妖怪横丁に遊びに来るんだ」
「……まぁ、一応は友達ね」
葵に対して目の色を変える変身怪獣に鬼太郎が説明する一方、猫娘は未だに不機嫌そうだった。
そして一行は葵の案内の元、雪女達を束ねる女頭・雪女郎に会う事が出来た。
「わらわは雪女達の頂点に立つ雪女郎である。鬼太郎よ、今回そちらが訪ねた訳、そして共に連れてきた人間は一体何なのじゃ?」
「はい、雪女郎様。実は……」
鬼太郎は修司が伝説の聖龍に認められた人間で、今はすでに5つの龍玉を手に入れた事。そして此処に保管されている氷の龍玉も手に入れたがっていること。さらに、修司が自ら修行を望み、自身の力を強化したいと願っていること。全ての事情を雪女郎に話した。
「……という訳なのです、雪女郎様。彼、小田原修司君はすでに聖龍に認められ7つ全ての龍玉を集めなければいけない使命を持っているんです」
「そ、それだけじゃないんです。俺がこのまま聖龍使いになれたとしても、自分自身が弱かったら何の意味も無い! そこで、アンタ達妖怪の住処でもあり苦境でもあるこの地で修行をしたいと考えているんです。雪女郎殿、何とぞお願い致します」
鬼太郎に続き、修司は雪女郎に深々と土下座をしてお願いをした。
「……人間にしては余程礼儀というものを知っておるようじゃな。確かにこの雪山の奥地に氷の龍玉はある。しかし、普通に渡すことは出来ぬ」
雪女郎は修司にこう告げた。
「お主、修司と申したな。主が自らを強く成長させたいという志は大いに結構。ならば、我らが主に与える試練を乗り越えてみせよ。それを乗り越え、我の許しを得たなら氷の龍玉はそちに渡してしんぜよう」
「あ、ありがとうございます! 雪女郎殿!!」
修司は再び地に額を当てて土下座で雪女郎に礼を申した。
「うむ、良い心がけじゃ。ならば我に着いてくるが良い」
そう言うと雪女郎は氷穴を出て、広い雪の平原に修司を連れてきた。
[雪山の試練]
「……此処で俺がやるべき試練というのは……」
「ふふふ……お主全く動揺しておらぬのう。肝が据わっているのか、それともただ単に強がっているのか。ふふふ」
修司「………」
「主に与える試練は、この吹雪の中、我が貴様に雪の玉を当て続けるというものじゃ。ただでさえ吹雪で体が冷え感覚がマヒしていく最中、すべての雪玉を己の拳のみで防ぎ続けていくのじゃ。言っておくが、わらわは相手が人間だとて容赦はせんぞ。何よりあの聖龍に認められているというなら余計に手は抜けん」
「……解った、さっさと始めようぜ雪女郎!」
修司はいきなり闘志に燃える態度を取り、雪女郎を相手に身構えた。
「ふむ、燃えるような熱い闘志……しかし、此処はそんな闘志も凍りつかせる雪女の里じゃ! では行くぞ!」
雪女郎は自らの妖気で自分の周りの雪を玉状の形に成型して、それを多数修司に向けて当ててきた。
修司は自らの拳を突き出し続けて、雪玉を壊していく。
「ふ、ふぅ~。さ、さすがにこの極寒の中、体を動かして体力を消耗しつつ雪の玉全てを弾くのは至難だぜ…」
雪女郎と修司が、そうして十分程、試練を続けていたとき、雪女郎がある行動に出た。
「……そなた、思ったよりやるのう。では、此方も更に試練の格を上げてみるか」
「うん?」
雪女郎はそう告げると、自分の周りに更に数人の雪女達を立ち並べて、まるで円を描くように修司の前方を取り囲んだ。
「こ、これは……!?」
雪女郎「ふふ…そなたにこれだけの雪女達から受ける雪玉もすべて弾き返せるかのう…それっ!」
雪女郎と雪女達は再び修司に向かって多数の雪玉を当て始めた。
多数の雪玉が修司に当たり続ける。
「ウ、ウプッ。こ、これはかなりレベルアップして来たな。よしっ、俺も全身全霊でこの試練を受けてやるぜ!!」
修司はそう吠えると、何と極寒の雪山の中で自ら上着を脱ぎ捨てて、上半身裸体の状態で身構えた。
「そ、そなた。一体何のつもりじゃ?」
雪女郎や雪女達は驚いた。こんな吹雪の中で、しかも雪玉を当てられタダでさえ体力が消耗するというのに、自ら上半身裸になるのは、もはや自殺行為に等しいからだ。
「へ、へへっ。これが俺の全身全霊を賭けての勝負のスタイルよ」
修司は笑いながら雪女郎に言い放った。
「……ふ、ふふふ……ふはははは……いや修司よ、我はますます主が気にいった。ならば我らとて容赦はせんぞ。今まで以上に主を苦しめてしんぜよう」
「ああ、そうしてくれよ! 自分を追い詰めなきゃ修行にはならねえよ!!」
雪女郎たち雪女の集団はより一層、修司に向かって、しかも雪の玉を押し固めたかのように硬い雪玉にして修司に当て続けた。
「グッ……雪の玉も硬くなってきやがっている。手の……手の感覚も無くなってきた……」
修司の体力が消耗しきっているのは誰の目からも解るようになってきた。
それを氷穴の陰で見続けていた猫娘達が話しだした。
「ねぇ鬼太郎。あ、あのままだと修司君、本当に死んじゃうわよ……」
「そ、そうよ! 雪女郎様もなんであの人間の子にあそこまでムキになっているわけ!?」
猫娘も葵も困惑する中、鬼太郎は冷静に落ち着いていた。
「……みんな、止めてはいけないよ。これは修司君が自ら決めた事なんだ。僕達が出しゃばってはいけないんだ」
「そ、そんな……」
見守るしかできない現状に、猫娘は胸が締め付けられた。
試練が始まって2時間ほど経過した時、修司の上半身は霜焼けで真っ赤になり、拳は霜焼けだけでなく修司の滲み出た血で赤く染まっていた。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
修司は息が切れかかっていた。
「どうした、そなたの限界は此処までか?」
雪女郎が修司に言い放すと、修司は弱り切った体でこう叫んだ。
「バ、バカ言いやがれ! ここで終わったら男の名折れだ!! さあっ、ドンドン来やがれ!!」
修司の弱っていた灼熱の如き闘志は再び、燃え上がるように湧きあがった。
「……うむ、それこそ聖龍に認められた者だからこそ成し得ぬ闘志じゃ。ならば……」
雪女郎は両手を上に揚げ、己の頭上に巨大な氷の塊を作りだした。
「う、うわっ! な、何なんだアレは!?」
「ま、まさか雪女郎様はアレを人間に……!?」
「そ、そんな! あんなのまともに受けたら一溜りも……」
「………………!」
変身怪獣、葵、猫娘、鬼太郎達は愕然とする。
そして頭上に氷の塊を作り上げた雪女郎が修司に告げた。
「……そなたとの時間は楽しかった。最後にこの巨大な氷の玉を受けて朽ち果てるのじゃ」
そう言うと、雪女郎は修司に向かって巨大な氷塊を投げつけた。
「……ま、まだ! 諦めねえぞ!! ウオオオオオオォォォ!!」
修司は己の全ての力を右手に籠めて、氷塊にその右手を殴りつけた。
「む、無茶よ! いくらなんでも人間の力で、片手だけであの氷を砕くのは!」
「きゃあ!」「………」
愕然とする葵に猫娘に鬼太郎たち。
その一方、修司の拳と氷塊が接触した瞬間、修司は想った。
(こ、ここで終わっちまったら俺の夢も終わっちまう……こ、この一撃だけは絶対に……!!)
そのとき、修司の体から赤く光った。
「こ、これは!?」「一体、何が?」「どうなって……!」
「う、うむ……こ、これは……!?」
修司の様子が一変するのを待の足りにし、鬼太郎・猫娘・葵そして目玉おやじが驚愕する。
そして修司の体が光ったその時、修司の拳に当たった巨大な氷塊にヒビが入った。
「な、なんと……こ、これが……!」
「う、うわぁ……!」
雪女郎に雪女達が驚く中、氷塊にヒビが入ると同時に、修司が雄たけびを上げながら拳を前に突き出す。
「ウ、ウオオオオ!!」
「う、うわっ!」「うわあっ!」
巨大な氷塊が砕け散り、その破片が飛散して驚く雪女郎に雪女達。
「うわー!」「きゃあっ、何が起こったの!?」
氷塊の破片は猫娘と葵たちの方まで飛んできた。
「うっ、と、父さん、これは……」
「うむ、これこそ聖龍に認められた者でしか使えぬ力じゃ」
「せ、聖龍に認められた者でしか使えない力…!?」
「うむ。その力とは……決して諦めない心が生み出す奇跡の力じゃ」
目玉おやじの説明に鬼太郎は驚愕した
そして巨大な氷の塊は後形もなく砕け散り、修司は勝ち誇ったかのように叫んだ。
「ウオッシャーー!! 第一の試練、突破したぜーー!!」
辺りは騒然となり、雪女郎が修司に歩み寄った。
「そなた、良くぞ我らが試練を乗り越えおった。試練の最中に主に言った我の冷酷な発言や態度にも怯むことなく試練を突破したのう……」
「へへっ。アンタがわざと俺にやる気を出させるために、あんな事言ったのは気づいていたよ。どちらにしても俺の修行の相手をしてくれて、ありがとな」
「ふふ……そなたは本当に面白い人間じゃのう」
こうして修司は雪女郎に与えられた試練を見事突破したのであった。
[山頂の龍玉]
「い、イテテ……体中、凍傷で痛えわ」
「ガマンしなさいよ、あれだけの試練を受けて生きているだけでも儲けもんよ」
「でも、本当にアンタ大したもんよ。人間であれだけタフな奴が居るとはね」
修司は、試練で凍傷になった体を猫娘と葵に看病してもらっていた。
「……いいな修司の奴。葵ちゃんに診てもらえるとは」
変身怪獣が羨ましそうに修司を見つめていた。
すると其処に鬼太郎が修司に話し掛けてきた。
「修司君、体の傷が完全に回復したら来てくれって雪女郎様が言ってたよ」
「そ、そうか……それじゃしばらく体を休めて置くとするか……」
修司はそう言うと横になり仮眠を取った。しばらくすると修司は何と熟睡し始めてしまった。
「ぐおお…スウウッ」
修司が大きな寝息を掻いて熟睡しているのを猫娘と葵が呆れて言った。
「な、なに?」
「よ、良くあれだけの試練を受けて、しかもこんな寒いところで寝息を掻いて熟睡できるなんて……やっぱり並の人間じゃないわね」
そして修司が爆睡して丸1日が経った。修司は気持ちが良さそうに起きた。
「う~~ん……いやぁ良く寝たわ……フワァァ……」
修司は大きなあくびをして起き上がり、鬼太郎達のいる所に歩き寄った。
「オ~スッ。鬼太郎、お前ら元気か~」
修司は呑気に鬼太郎達に話しかける。
「あっ、おはよう修司君。あれから丸一日は眠っていたんだよ」
「ほう、そんなに眠っていたのか……」
「全く。あんな強烈な試練受けて、しかもこんな極寒の場所で爆睡しちゃうなんて」
「全くね。やっぱりあなた、普通の人間じゃないわよ」
「俺は! 俺は普通なんてものじゃつまらないんだ!!」
「「「???」」」
修司の突然の宣言に驚く三人に対して、修司は断言した。
「人間なんて妖怪と違って人生は1度きりの短けえもんなのよ、俺はただ単に普通の人間として生涯を終わらせるんじゃなく、あえて後世まで名を残せる人間に成りあがりてえのよ」
修司は野心に満ちた表情で3人に告げた。
そのとき、修司が目を覚ましたと聞き付けた変身怪獣も駈けつける。
「あ、相棒~! いやぁ、まさかとは思ったがよ、このまま目を覚まさないんじゃないかと不安だったぜ」
「そう言うお前は今まで何処に居たんだ? 顔がニヤケっぱなしだぞ」
「……彼は他の雪女達にちょっかいばっかり出していたわよ」
葵が修司にそう告げた。
「い、いやな……ちょっと妖怪の事、そして雪女ちゃん達の事を知りたくてよ~」
「……ふ~ん」
「い、いやだな……そんな顔すんなよ」
半ば呆れてしまう修司に変身怪獣が複雑そうな顔を向ける。
「……まぁ良い。それよりも雪女郎殿に伺わないとな。後は龍玉を貰って此処を去るのみだ」
そうして、修司達が雪女郎に会いに行った。
「雪女郎殿、長らくお待たせして申し訳ありませんでした」
「うむ、そちの回復力。鬼太郎や目玉の親父殿から伺っていた通り凄まじいものじゃの」
「はっ、御誉めに頂き感謝致します。ところで最後に。氷の龍玉はどちらに在りますか?」
「うむ、その事なのじゃが…」
雪女郎は何やら思いつめた表情で修司に告げた。
「実は氷の龍玉はこの山の頂上に祀っておる。普段は他所の妖怪が入れぬよう結界を敷いておるのじゃ。私以外の雪女を初め並大抵の妖怪では近づくことさえできん。そこで主に提案いや、最後の試練を与えたい」
「うんっ? 最後の試練?」
「ふむ、そなたには一人で山を登りきり自力で龍玉を手に入れてくるのじゃ。それが我からの最後に試練じゃ」
「解った、要するに極寒の雪山の仲を一人で進み、龍玉の在りかまで自力で行けって言うんだな。へへっ、結構楽勝だな」
「甘く見るな。吹雪の舞う雪山は並みの人間では生き抜く事さえ至難であるぞ」
「へっ、そんなの百も承知だ。何よりそんな過酷な自然を生き抜かなきゃ大自然を護る聖龍使いには成れねえよ。それに、さっきの修行を体感しているんだ。少しの寒さには慣れているぜ」
「……うむ。覚悟も出来ておるようじゃの。ならば、わらわが示したこの山道を行け。その先に龍玉はあるぞ」
そう雪女郎が言うと、彼女が差した方角に青白い炎が点々と一本の道を作り始めた。
「よし、この先にあるんだな。それじゃあ、ちょっくら行ってくるぜ」
修司はそう言うと吹雪の中、走り出していった。
「……雪女郎様、彼本当に大丈夫なのでしょうか……」
「そ、そうよ……いくら聖龍に認められた者であっても所詮は人間。何かあったら……」
「そなた達、あの者を信じるのじゃ。信じ、祈れば自ずと道は開かれる」
「……そうですね。今は修司君を信じましょう」
雪女郎の言葉に鬼太郎達はただ黙って修司を見送った。
[chapter:最後の試練]
「……ふぅ、ふぅ……ち、ちとキツクなって来やがったぜ……」
修司は吹雪舞う、荒れ狂う山の中を青白い炎を辿って龍玉の在る山頂を目指していった。
「……ふ、ふぅ……」
司は一歩一歩、確実に前を歩き、雪の中を掻き進む。
吹雪は一向に止むどころか、さらに激しさを増していた。
「うっ、うぐ……ま、前が見えねえ……!」
修司は目に雪が入らないよう、下を向いて進み始めました。万が一、雪が目に入りでもしたら失明になる恐れがあるからだ。
「……こ、此処で立ち止まる訳にはいかねえ。い、生きてアニメタウンに帰ってお、俺の夢を……英雄による英雄のための集団を……こ、この手で……」
相も変わらず雪を掻きわけ、修司は前を進み続けます。
「……うう、か、体が痺れてきた……」
修司の体はしだいに寒さで思う様に動かなくなっていた。
「は、はぁ……だ、だめだ……い、意識が遠のく……」
修司は次第に意識が薄れていくのを自覚し始め、自らの両手で己の頬を叩いた。
「い、いけねえ。此処で意識が無くなったら……!」
修司は自身にカツを入れ、再び山頂を目指した。
そうして進んでいった修司は、遂に山頂に登り着いた。
「ハァ、ハァ…や、やった! つ、遂に山頂だ!」
修司は喜びの余り、山頂で雄たけびを上げた。
「ウ、ウオオオオオオオ!! やったぞー!! 俺は自らの力で山を登りきったぞ~!!」
修司はそう叫ぶと、その場に寝転んだ。
と、その時。修司は大切な事を思い出した。
「そ、そうだ! りゅ、龍玉! い、一体山頂の何処に有るっていうんだ!?」
修司はあたりを見回した。しかし龍玉らしき物は何処にも無かった。
「い、一体どうなっているんだ…?」
修司は何もない山頂にただただ困惑するばかり。
[聖龍・氷龍]
修司が動揺しているその時、目の前に雪女郎と鬼太郎、猫娘に葵。そして変身怪獣が現れた。
「み、みんな……い、一体なんで此処に……?」
雪女郎が修司にこう言い放った。
「修司殿、騙してしまい申し訳ない。此処には龍玉などは無いのじゃ。龍玉は我の近くでしっかりと保管していたのじゃ」
「えっ? そ、それって……つ、つまりどうなっているんだ?」
困惑する修司に葵が答えた。
「雪女郎様はあなたを試したのよ」
「えっ? た、試した?」
すると今度は鬼太郎と猫娘も説き出す。
「雪女郎は修司君が本当に聖龍使いに相応しい人間かどうか、最後の最後に試したんだよ」
「だから山頂に龍玉があるって言って、修司君が一人で何処まで頑張れるか試した訳なんだけど、まさか山頂まで自力で登り切っちゃうなんて」
「そ、そうだったのか……」
唖然とする修司に、変身怪獣が感心する。
「いやぁ、修司見直したぜ。よく自力で此処まで来れたもんだなぁ」
「そ、それよりも……それじゃあ龍玉は何処に?」
修司が龍玉の在処を訊ねると、雪女郎が修司の眼前に差し出した。
「龍玉なら今、わらわが持って来たぞ。主が見事に己に打ち勝った時に差し出そうと思っておったのじゃ」
雪女郎はそう言うと、修司に白い玉を差し出した。
「こ、これが……」
修司がその玉を手に持つと、玉が光り出した。
「我を望みし者、我らに認められし者、良くぞ雪女郎からの試練を乗り越えた……」
「あ、アンタは氷の……!」
「いかにも、我は聖龍の一族で氷を司る氷龍である。良くぞ試練を果たした。雪女郎の傍らで主の奮闘ぶりを拝見しておったぞ。文句なしに聖龍使いに相応しい意思と志を持っておる」
氷龍はそう修司に告げると玉を縮め、修司の右手の数珠玉の一つになった。
「す、凄い……こ、これが」「せ、聖龍……」
猫娘も葵も聖龍の声を聞いて唖然とする。
「修司君やったね。これで残りの聖龍は風の聖龍一体だ」
「うむ、誰の力も借りず此処まで登り詰めた信念こそ、聖龍使いに相応しい意志じゃ」
鬼太郎も目玉おやじも称賛すると、変身怪獣と雪女郎も修司を称賛した。
「や、やったな! 修司!!」
「うむ、良くぞここまで遣り遂げた者じゃ。天晴れじゃぞ、修司よ」
「へ、へへ……」
こうして修司は氷の聖龍、氷龍の龍玉を手に入れ、雪山での修業を終えたのだった。
[新たなる目的地]
修司達は雪女郎引き入る、雪女達の宴に参加していた。
彼女らは華麗な東北の踊りで修司や鬼太郎達を楽しませてくれた。
「イヤッホー、サイコーだぜ!」
「変身怪獣、余り羽目を外すなよ」
「まぁまぁ相棒、そんな堅い事は言うなよ。こんな宴を開いてくれているんだぜ。楽しまなきゃそれこそ失礼ってもんだろ」
「ハハハ、確かに。彼の言う通りじゃ。ホレっ、修司君も一緒に踊りなされ」
目玉の親父はそう修司に言いながら、雪女達に酒の酌をしてもらっていた。
羽目を外す変身怪獣に修司が呆れていると、目玉おやじも修司に楽しむよう促す。
「そ、そうか……」
修司がそう言うと雪女達が数人、修司のところに歩み寄った。
「修司君って言ったわね。良く雪女郎様の試練を果たせたわね」
「そうそう、みんな修司君の事見直したわって。人間なのに凄い根性だって」
「ねえ、こっち来て一緒に踊らない?」
「い、いや……俺、踊った事ないし……」
「それなら私たちが教えるから……ホレっ」
修司は雪女の一人に腕を掴まれ、半ば強引に宴の踊りに加えられた。
「ホレっ、ホレっ」「う、うわ…」
「ふふふ、もう……そんなに硬くならなくて良いのよ」
「フハハッ、修司お前結構女にモテるんだな」
戸惑いながらも踊らされている修司を見て、変身怪獣がおちょくる。
「ウ、ウルセエ……!」
修司は少々照れた様子で変身怪獣に返答した。
「ふふふ……修司君、何だか楽しそう」
「ああ、人間と妖怪がこんなにも楽しく一緒の時を過ごせるなんて」
宴に加わっている修司を見ていた鬼太郎と猫娘のところに葵が寄って来た。
「ねえ鬼太郎、貴方も一緒に加わって踊らない?」
「えっ、だ、だけど僕……」
「踊りなら私が教えるから、ねえ……」
鬼太郎に歩み寄っている素振りの葵に猫娘が苛立った。
「鬼太郎! 踊りなら私も踊れるから、私と一緒に踊りましょう!」
「えっ、ええ?」
「猫ちゃんじゃダメよ。これは東北の踊りなんだから出身である私が手ほどきをしないと」
「アンタと鬼太郎を躍らせる訳にはいかないわよ……!」
葵と猫娘が言い合っていると鬼太郎が平然と発言する。
「そ、それなら二人で一緒に踊れば良いじゃないか。僕は向こうで父さんの酒の相手でもしているよ」
そう言って鬼太郎は目玉の親父のところに行ってしまった。
「あ~あ……猫ちゃんがしゃしゃり出てきたから鬼太郎が向こうに行っちゃったわ」
「な、何よっ、私がいけないみたいじゃない!?」
二人が言い争っていると、変身怪獣が歩み寄って来た。
「まあまあ御二人さん、そう言い争うのはよしなされ。鬼太郎が相手をしてくれないって言うならこの俺が代わりに相手してあげちゃうよ♪」
「「ウルサイ!」」
変身怪獣は猫娘に引っ掻かれた上、葵に氷漬けにされてしまった。
「……な、なんで、こうなるの……?」「……バカが」
その様子を見てた修司が呟く。
翌朝、一行は次の目的地に向かうため雪女郎始め、葵やその他の雪女と別れの挨拶をした。
「それじゃあ、昨晩は楽しかったぜ。修行にも付き合ってくれて感謝しきれねえぜ」
「主の精神力の強さには程々感心したぞ。これからも絶えず精進しなされ」
「昨日はホンットに楽しかったわ」
「そうそう、修司君の様な人間ならいつだって歓迎するわ」
「また遊びに来てね」
「ふふっ……みんな彼方の事が気にいったみたいだから、気が向いたらいつでも来てよ」
「ああ……ありがとう」
雪女郎や雪女達そして葵から見送られ、修司が礼を述べる。
「お嬢さんたち、この変身怪獣ことみんなのヒーロー、メタルバードもお忘れなく! 俺様もいつだって遊びに来ちゃうよ!!」
「ハハハ……」
変身怪獣には雪女達は苦笑を浮かべていた。
「ハハ、それじゃ次の目的地に向かいましょうか?」
「あ、ああ。そうだな。早く龍玉集めて夏休み中にはアニメタウンに帰らねえといけねえからな」
鬼太郎と修司が次なる目的地を目指して、一行は雪山を去っていく。
「それじゃ! 雪女郎様も葵ちゃん達も元気で!」
「また縁が有ったら会いましょう~」
「お嬢さんたち~、また逢う日まで~」
「それじゃ、色々とありがとう!!」
『さようなら~』
「達者でな~」「また逢いましょう~」
鬼太郎や猫娘、修司や変身怪獣との別れを、雪女達や雪女郎に葵は手を振って見送った。
こうして一行は雪山を後にした。
「なぁ鬼太郎。確か次の目的地は天狗山、いや天狗大本堂だったよな」
「ああ、天狗達による警察組織《天狗ポリス》の本拠地だよ」
「そこの長、大天狗が風の龍玉を所持していると聞いておるぞ」
「……天狗大本堂か。一体どんな修行を得られるのか……!」
鬼太郎と目玉おやじの返答に、修司は次なる修行に対して意欲を湧かせていた。
そして、一行は次の目的地である天狗大本堂に向かうのだった。