【聖龍伝説】始まる伝説   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 前回の続き。
 今回は天狗大本堂で大天狗率いるカラス天狗達に修司・変身怪獣が武術を猛特訓させてもらいます。
 ちなみに修司の特訓の相手をしてくれているのは【ゲゲゲの鬼太郎】第5期で活躍した黒烏(くろからす)です。


アニメタウンの英雄達 天狗大本堂 ~黒烏と武者修行~ 

[天狗大本堂の天狗たち]

 

 修司達は雪山に続き、風の龍玉があるという天狗ポリスの総本山《天狗大本堂》に出向いていました。

「此処が人間界で言えば警視庁に当たる《天狗大本堂》か」

「そうだよ、他にも法廷つまり裁判所にもあたるんだ。僕達も何度か来たことあるんだよ」

「鬼太郎なんか昔、とある罪の濡れ衣を被せられて此処で裁判を受けて危うく有罪になりそうになった事もあるのよ」

「ね、猫娘。それはもう終わった事だろ」

「へえ……お前にとっても色々あった場所なんだな」

 猫娘の話を聞いて苦笑いを浮かべる鬼太郎を見て、修司は鬼太郎の苦労を察する。

「な、なぁ。此処のお偉いさんで《大天狗》ってのが居るんだよな。大丈夫なのか、修司やオレみたいなのが一緒でよ」

「大丈夫だよ。大天狗様とは古い付き合いだし、何より僕の父さんなんか100年以上前からの親しい間柄なんだから」

「うむ。大天狗にも雪山の雪女郎同様、話せばきっと解ってくれるから大丈夫じゃよ。それに修司君の修行にも協力してくれるよう取り計らってみるわい」

「す、すまない。鬼太郎、目玉の」

「ま、まぁ。それなら良いんだけどよ……」

 変身怪獣の不安を払しょくする様に述べる鬼太郎と目玉おやじの言葉を信じ、修司と変身怪獣は一先ず安心した。

 

 そして一行は、天狗ポリスの総本山である天狗大本堂に着いた。

「うむっ! お前ら、何者だ!」

「あ、怪しい者ではありません。僕達は大天狗様に用が有って…」

「信用できぬ! それに、人間が居るではないか! 此処は恐れ多くも天狗ポリスの総本山《天狗大本堂》なるぞ! そんな神聖な所に人間を連れてくるとは、怪しい奴等め!!」

「う、うむ。い、いかんのう。この門兵二人はワシらの事を知らんようじゃ」

 しかし門番をしていた烏天狗二名は、鬼太郎と目玉おやじ達の事を知らない妖怪だった為に素直に通してくれなかった。

 

「お、オイオイ。オレたちは怪しいもんじゃねえよ。この鬼太郎と目玉の親父の古い知り合いである大天狗って奴に会いに来ただけだ」

「うむっ! 何だお前? 見た事ない妖怪だな? ますます怪しい!」

お、おい変身怪獣。今は出しゃばるな。余計に話がこじれちまうぞ」「

「う、うう……」

 修司が変身怪獣を宥める最中も、門番二人は警戒を緩めない。

「怪しい奴らめ、よし! 中に入っていいぞ! ただし、留置所の中でじっくりと聴取するがな」

「えっ、え~! わ、私達ただ大天狗様に会いに来ただけなのに……」

 門番の対応に猫娘達が困惑してると、門の前での騒ぎを聞き付けた一人のカラス天狗が出てきた。

「どうしたのだ、お前ら?」

「おお、これは黒烏殿。実は怪しい奴らが大天狗様に会わせろと」

「うむ? 怪しい奴等とは…」

 この黒烏に鬼太郎と猫娘が気づく。

「黒さん!」「ああ!黒烏さん」

 黒烏も鬼太郎達に気づいた。

「おお! 鬼太郎殿! 猫殿! や、やめろお前達! この方々を何方と心得る。恐れ多くも我らが長、大天狗様とは親しい間柄にして、あの名高き幽霊族の生き残り【ゲゲゲの鬼太郎】殿とその御友人であるぞ!」

 天狗ポリスのエースで武術の師範でもある黒烏の言動に、先ほどまで威勢の良かった門番二人も一気に弱腰になり態度を180度変えた。

「げっ、ゲゲゲの鬼太郎!!」

「あの、幽霊族の生き残りにして大天狗様とは100年も前からの付き合いで有られる目玉の親父殿の息子さん!」

「解ったら、さっさと御通ししろ!」

「「は、ははー」」

 黒烏に注意され、門番二名はやっと巨大な門をゆっくりと開門した。

「申し訳ありません鬼太郎殿、そして猫殿。あの二人はまだ本堂に転属されたばかりの新人でして」

「な~に、僕らは気にしていませんよ」

「そうですよ、ただ黒烏さんが来てくれなかったら私達聴取されちゃうところでした」

「はっはっは、それはまた災難でしたね。ところで、今回はどの様な御用件で。一緒に御連れの人間の子と何か関係が」

 黒烏が訊ねると、鬼太郎と目玉おやじは深刻そうな顔で黒烏に話した。

「黒烏さん、実はその通りなんだよ」

「詳しくは大天狗に直接話したい」

「承知いたしました。何か余程の事情が御有りの様で」

「うん、そうなんだよ…」

「「………」」

 鬼太郎達のやり取りを前に、修司と変身怪獣は険しい面持ちを浮かべる。

 

 

 一行は黒烏の導きの元、全ての天狗の頂点に立つ長・大天狗と対面した。

「う、うわぁ」「こ、こりゃまたデケエ天狗様だな」

 修司と変身怪獣が大天狗の巨大さに驚く中、大天狗が鬼太郎や目玉おやじ達に笑顔で出迎える。

「鬼太郎、猫娘、それに目玉殿。お久しぶりですなぁ」

「ふぉっふぉ。大天狗殿も相変わらずお元気そうで」

「ははっ、なになに。目玉の親父殿には構いますまい」

「いや~、それほどでも……あるかもな」

「ふは~はははっ。ホントに目玉と話していると笑いが止まらん」

「はっはっは……ところで大天狗殿よ。今日はそちらに頼みたい事が有って来たのじゃが」

「うむ、何用ですかな? さしづめ、そこに居る人間に関する事なのでは?」

「おおっ、さすがは話が解ってくれますのう大天狗殿」

「ふっはっは。さすがに100年以上も目玉殿と付き合っていれば多少の事は聞かなくても解りますわい」

「ははっ。さすがじゃのう。実はこの少年は小田原修司という名でして……」

 目玉の親父は、修司が聖龍に認められた事、聖龍使いになる事を聖龍に承諾してもらった事、今はすでに6体の龍玉を手に入れた事、そして修司が妖怪との修行で己の肉体を強化したいと願っていること全てを、旧知の間柄である大天狗に話した。

「……という訳なのじゃ。此処に来る前にも雪山で雪女郎等と極寒の中、激しい試練にも耐え抜き氷の龍玉も無事に手に入れた。後は大天狗、そちが持っておるという風の龍玉を手に入れれば彼は晴れて聖龍使いになれるのじゃよ。じゃが単に手に入れるだけでは満足できないらしく、妖怪達の間でみっちりと自身を鍛え上げていきたいとも思っているのじゃよ」

「うむ……目玉の親父殿の話は解った。それに、聖龍に認められている人間にならすぐにでも風の龍玉を渡しても構わない。しかしっ、己の意思で自らを修行で強化したいと思っておる修司、そなたの志は天晴れである! よって、主がこの山に滞在する間のみ、ワシら天狗で主を鍛え上げてしんぜよう。此処を去る時に風の龍玉はお主に渡す。これで良いか」

「あ、ああ! それで是非お願い致す!!」

 修司はそう言い放つと、大天狗に対しても土下座して更にこう続けて述べた。

「大天狗殿! 何かとご迷惑をおかけするかも知れませんが、何とぞ! 何とぞ! 宜しくお願い致します!!」

「ふははっ、その礼儀正しい姿勢と態度、ますます気におったわ。それでは……おいっ、黒烏!」

「ははっ」

「お主、これからこの人間である修司に稽古を付けてくれないか?」

「はっ、わ、私がですが……だ、大丈夫で」

「うむ! 気にせずビシビシ鍛え抜け!! 生半可な武術では聖龍使いに相応しくない」

「ははっ、解りました大天狗様」

 大天狗からの勅令に、黒烏は修司と向き合う。

「修司殿、これからは私があなた様を稽古して差し上げますぞ」

「そっか、それじゃ俺はこれから師匠と呼ぶようにするから、黒烏殿も俺の事は修司と呼び捨てにしてくれ、い、いや……してください」

「う、うむ、そうか……そこまで気を配るのなら私も遠慮なく……オイっ、修司!」

「ハイっ! 何ですか師匠!」

「これからみっちり、お主を指導していく。心して挑むが良い!!」

「はい! どうぞ宜しくお願いします!!」

 かくして、修司は天狗大本堂で黒烏の元、武術の修行に明け暮れるのであった。

 

 

 

 

[武術の猛特訓]

 

 修司は直々に、師範の黒烏に稽古を付けてもらえる事になったが、最初に習う武術は修司が全く見た事もない武術だった。

「ではまず修司殿、我ら天狗ポリスが最も使う武術《棒術》を習ってもらいます」

「ぼ、ぼ……棒術?」

「棒術とは、古くから宗教とかかわりの深い武術で、祭礼で棒術に相当するものが古くから行われてもいます。棒術はもっとも単純な武器の一つであり、その起源は古く、剣術などに比べるとやや普及していない武術でありますが、我らの間ではこれが主流の武術なのであります」

「ふ~ん、この棒を振り回し敵をなぎ倒すってとこだな……」

「ただ振り回せばいい物でも有りません。他の武器すなわち剣や刀を持つ仮想敵を想定して訓練などをするのです。棒術は手軽に手に入りやすい棒状の物でも簡単に代用できますし、日常生活でも実用できる武術なのですよ」

「ほう、ほう」

「さらに、棒術を鍛錬すればするほど肉体的にも鍛えられ、棒術を学ぶことすなわち身体を作る最も効率の良い武術なのであります。なので、修司殿の修行にも似合うのですよ」

「なるほどな、簡単に言えば棒術で学び鍛えれば、肉体も同時に鍛えられるってわけか」

「そうゆう事です。では私が手本を見せますので修司殿は棒術の型をしっかり見て覚えてください」

 黒烏はそう言うと、棒を片手首で回転させたり、前方に突いたりと様々な型を修司に見せた。

「うわぁ……結構スゴイなぁ。ただの棒でもあんなに戦う事が出来るとは」

「ふぅ……この棒術は他の武術と組み合わせたり、他の武道でもかなりの応用ができるので大変重宝できます。では、次は修司殿も」

「う、うむ。で、では!」

 修司は見様見真似ではあったが、黒烏が行った棒術の型を演じてみた。

「……うむ、まだまだ棒術を扱い慣れてはいないから無理もないが修司殿。お主は磨けば光り輝く武術の才の持ち主の様だ」

「は、はぁ……あ、ありがとうございます師匠……」

「うむ、貴方が此処に居る間にみっちりと稽古を付け鍛え上げれば今まで以上に屈強な肉体に生まれ変わるでしょう」

「……! お、お願いします師匠! もっと自分を鍛えてください!!」

「おおっ、一気に闘志に火が付いたようだな。では、休まず鍛錬を続けますぞ!」

「オ、オスッ!!」

 修司と黒烏はそのまま棒術の特訓を続けた。

 

 

一 方そのころ、変身怪獣も別の烏天狗に棒術を教えてもらっていた。

「うりゃっ、トウっ!」

「うむっ。お主やりおるのう。そなた、以前に棒術を学んでおるのではないか?」

「ふぅ~。いや、ただ以前住んでいた超獣族の王家の武術で似たようなのがあったからな。それを幼少の頃から教育の一環として受けていただけさ」

「うむ、なるほど。それで体にその武術が身に染み付いているという訳か…」

 変身怪獣は、周りの烏天狗達から一目置かれるほどまで棒術をマスターしていた。

「くっ、変身怪獣のやつ。もうあそこまで先に進んでいるとは……」

 遠くから変身怪獣を眺めていた修司は、多少悔しそうな表情をして見ていた。そこに黒烏が告げる。

「はっはっは、修司殿。誰でも武術を極められる早さは違うのです。なので修司殿も焦らずゆっくり、そして確実に鍛えていきましょう」

「あ、ああ……そうですね師範」

 こうしたやり取りが行われながら、修司と変身怪獣の特訓の一日目は終わった。

 

 

 

 

 

[関係]

 

 修司と変身怪獣。二人は初日の稽古を終えて用意された一室で体を休めていた。

「ふう~、久々に体を動かすと疲れるぜ」

「はぁ……お前なんかまだいい方だぜ。俺なんか棒術を見たことも聞いたことも無かったから、まるで雲を掴んでいるみたいに思った通りの動きができなかったぜ。それにしても、お前が以前いた王国にも似たような武術があったとはな」

「ああ、オレたちの国の棒術は、棒の先端に金属を撒き付けたりした宝飾がされててな。その先端を相手に突き出して攻撃していた訳だ」

「なるほどな。そして、その国の王子であるお前は幼い頃から英才教育の一環として、その武術を学んでいた訳か」

「なんだか冷やかしみたいに聞こえるな」

「……鬼太郎から聞いたけど、お前の王国って昔人間に滅ぼされたんだってな」

「あ、ああ……で、でもよ。それがお前と俺の関係に何の関わりがあるんだよ」

「いや別に……だけど、何でもっと早く俺に言ってくれなかった。それとも、王国を滅ぼしたのと同じ人間だからって言うのを躊躇っていたのか?」

「い、いや……そんな事じゃないけどよ……」

 変身怪獣は黙り込んでしまう

「まあ……別にもう良いよ。俺とお前の関係には直接は関わりの無い事だしな。何より、誰にでも人には言えない言いたくない過去の一つや二つは有るってもんだ」

「しゅ、修司……」

「さっ、今日はもう寝ようぜ。明日も朝早くから特訓だ」

「お、オウ!」

 こうして、修司と変身怪獣は就寝に就いた。

 

 

 

 そのころ大天狗の一室では、目玉の親父と大天狗が酒の飲み合いを交わしていた。

「…うぐっ、うぐっ」「うぐっ、うぐっ」

「「ぷっは~、ああ格別格別♪」」

 二人は質の良い米酒を味わっていた。

「いや~大天狗殿。今年の酒も実に良い味ですのう」

「ははっ、目玉も相変わらずの飲みっぷりじゃわい」

「はははっ、お前さんと飲める酒ならいくらでも飲めるわい」

「ふっはっは、お主の酒豪っぷりには敵わんわい」

「ははっ、酒の飲み比べならワシの右に出る妖怪はおらんわ」

「ははっ、いや~目玉殿には敵いませんなぁ」

 二人が酒会を行い、酔っぱらっていたそのとき、部屋に鬼太郎が入って来た。

「おおっ鬼太郎、どうしたのじゃ?」

「父さんお酒も程々にしてくださいね。つい先日も雪山で雪女郎達と飲んだばかりじゃありませんか」

「う~む、バカ言え! 昔っから親しい友と飲む酒で酔い潰れるワシではないわい!」

「そう言って、この前も子泣きと飲んで横丁で酔いつぶれているのをカワウソが見つけたんじゃないですか…」

「……え、え~いっバカ者! せっかく父が旧知の友と飲んでいて楽しんでいるのに、間に入って楽しい気分を台無しにするな!」

「え、ええ~。そ、そんな……」

 言い争っている鬼太郎親子に大天狗か語りかけた。

「鬼太郎殿、目玉殿はワシが責任を持って飲み明かし、例え酔いつぶれでもワシが介抱してやるから心配するな」

「ええ~いっ、おいっ大天狗っ。ワシはまだ主に介抱されるほど飲んではおらんぞ……」

「はははっ、それは気を悪くしてしまいましたな。申し訳ない。そうゆう事で鬼太郎殿、主は心配せんで宜しい。主も此処まで来る道中疲れたであろう。今日はゆっくりと体を休めてもう寝なさい」

「は、はぁ……そ、それでは大天狗様、父の事お願いします」

 鬼太郎はそう言い残すと部屋から出て行った。すると途中、黒烏に出くわした。

「あっ黒烏さん」「おおっ、鬼太郎殿」

 二人はそのまま話をした。

 

「……黒烏さん、修司君の調子はどうだい?」

「うむ、まだ棒術を学んだばかりで詳しくは申せないが、かなりの見込みがある」

「えっ。す、すると修司君は強くなれるのですね!?」

「うむ、本人が努力し続ければ必ず結果が良くなります。何より修司殿には武術の経験が御有りの様で、あの様子だと、すぐに棒術を極められるでしょう」

「そうですか。良かった、彼を此処まで連れてきて」

「うむ……それより鬼太郎殿、あの修司殿が本当に聖龍に認められた後の聖龍使いになる者なのか?」

「はい、それは本当です。彼は実際に僕らに会う前から五体の聖龍に認められ、彼らの魂である龍玉を右手の数珠玉としていつも身に付けています」

「うむ、その数珠なら私も見た。何とも幻想的で神秘的な玉ではあったが、あれが大自然を司り護ると言われてきた聖龍の龍玉なのか……」

「本来龍玉はアレよりも大きいのですが、持ち主のつまり聖龍に認められた者に身に付けられるようあのような数珠の玉になっている状態なんです」

「うむ、そうか。聖龍使いが今後の人間界、いや、妖怪の世界を初めこの世界の大自然にどの様な影響をもたらしてくれるか…」

「………………」

「聖龍については未だ謎に包まれている部分が多い。それゆえ、聖龍が本当に大自然を護る存在なのか。そして我ら妖怪や人間達にどのような影響をもたらすのか全くの皆無なのだよ。ゆえに……私は少し不安で仕方がない」

 心配する黒烏に鬼太郎が話しかけた。

「大丈夫ですよ、修司君が聖龍使いになってくれれば、きっと妖怪にも人間にも住みやすい世界にしてくれますよ。彼はとても心の優しい、純粋な子なんですよ」

「う、うむ……し、しかし鬼太郎殿。お主は気づいていないか? あの修司殿の心の奥底に《闇》があるのを」

「……闇、ですか……」

「うむ、闇といってもただの闇ではない。まるで底なしの深い純粋な闇で何か特別な、そう、魅力とも言うべき力で周りの者を惹きつけていく……とても悲しみに満ちた闇だ……」

「……その話なら変身怪獣からも聞いたよ。彼も修司君と友になったのは、その闇による影響なのかもね。だけど何も恐れることはないと思うよ」

「???」

「確かに、彼の心の闇は深く色んな人や妖怪あるいは様々な種族でさえも惹き寄せ、己の闇に魅了され、惹き入れる悲しい闇を持っているとはいえ、彼は彼。修司君は修司君だよ。それに、僕から言えば、その心の闇があるからこそ彼は僕たち妖怪とも仲良くやって来れたんじゃないのかな」

「……う、うむ」

「人はもちろん、心を持つ者は、誰だって心に深い傷や闇を持っているものだよ。僕だってそうだし……それに……」

「……うん?」

「……それに心に傷や闇を持っているのは黒烏さんも同じじゃないか。……実の親の件で……」

「うっ……!」

「でも、だからこそその人は強く、そして真っ直ぐに生きていけると思うよ。過去の柵(しがらみ)に囚われず思った通りの人生を、そして未来を生きていけると僕は思うなぁ」

「きっ、鬼太郎殿…!」

 黒烏は内心とても嬉しかった。かつて自分は天狗の中で最も邪悪で、今の大天狗《赤嵐坊》の仇敵、《黒雲坊》の実子で、その父に操られ大天狗や鬼太郎と戦ってしまったという過去を持っていたのであった。そして鬼太郎と黒烏は分かれてそれぞれの部屋で休んだ。その一室で黒烏は思っていた。

(誰しも心に闇を持つ……か。鬼太郎殿や大天狗殿はあの時の私を止め、そして許してくれた……私もあの修司という人間の子を信じてみようか…)

 

 

こうして 、天狗大本堂での始まりの一日は終わった。

 

 

 

 

[修行の終わり]

 

 天狗大本堂で修行を初め、もう夏休みが終わってしまう8月の30日になってしまった。修司は学校に行かなければいけなかったので明日早朝には此処を発ってアニメタウンに帰らなければいけなかった。

 そして、最後の修行。黒烏は修司に自分と棒術で試合をして見ろと告げた。

「修司殿、そなたの修行も今日で終わりですね。そこで、最後の特訓として私と棒術で試合をして一本つまり一撃でも当ててみなされ。それで私からの修行は終わりです」

「はい! では、御手合わせの程、宜しくお願い致します師範!!」

 修司と黒烏は互いに向かい合い、一礼をすると黒烏は一気に修司に攻撃してきた。

「うおおっ」「う、トリャァー!」

 黒烏は掛け声とともに棒を突き出してきたが、修司はそれを棒で受けて防御した。

『うおおお!!』

 見ていた烏天狗達は、その戦いの熱気に自分達も熱くなっていた。

「あ、あの人間やるなぁ」

「あ、ああ……師範がみっちり棒術を教え込んだと言うが……」

「だ、だけど習い始めてまだ2週間強ぐらいしか経ってないぞ……そ、それなのにもう此処まで棒術を極められるとは……!」

 修司は攻撃されないよう敢えて距離をとっていたのだが、黒烏が修司にこう言い放った。

「修司殿、そんなに離れては私も攻撃しづらいがアナタも私に攻撃が当てられませんよ」

「え、ええ……攻撃の機会を伺っているだけですよ……!」

「なるほど…ならば! ハァッ」

 黒烏は一気に攻撃態勢に入り、修司の眼前に近付いた。

「うっ、うわっ」

 修司が驚いた瞬間、黒烏は修司の左足と右手にそれぞれ一撃ずつ攻撃した。

「うっ……ぐ、ぐぐ……」

 修司が痛がっていると、黒烏が容赦なく修司に言い放った。

「修司殿! まだまだ隙が多いですぞ!! それでは私に一撃も浴びせる前に体中アザだらけになりますぞ!!」

 容赦の無くなった黒烏の闘志に、修司の闘志にも火が点いた。

「う、うぐ……ま、まだまだ……こんなもんじゃ終われねえ!!」

 修司は立ち上がり、再び身構えると同時に黒烏対して怯まず攻撃してきた。

「うおりゃーっ、あぁタタタタタタ……!」

 修司は目にも見えぬ程の早さで棒を突き続けていったが、その全てを黒烏はヒョイヒョイとかわしていく。

「ふはは、その程度の速さでは私を捉えることはできませんぞ」

 黒烏は更に、修司の腹にキツイ一撃を突きかました。

「ウグッ!」

 修司は悶絶し、その場に膝をついた。

「ああ、やはり人間如きが師範に勝てる訳ないか」

「いくら師範直々に鍛えられたとしても結局は眉唾ほどの鍛錬だからな」

「これじゃ、最初に師範が告げた一発も当てられずじまいか」

 最初は修司の特訓の成果に、揃って評価していた烏天狗達も、徹底的に叩きのめされる修司の様子に呆れ果てていた。

 そんな二人の試合の様子を、陰で見続けていたのが鬼太郎と猫娘、そして変身怪獣であった。

 更に別の方でも隠れて大天狗が二人の試合を見入っていた。

「う……うう……」

 修司は徹底的にやられて、体中アザだらけになった。

「どうしました? もう根を上げましたか?」

 黒烏が修司に問う。

「ま、まだまだです……い、一撃でも彼方に当てなければ……い、意味がない……!」

 修司はそう言うと立ち上がり、再度黒烏と対峙する。

「……あなたの強い意志と闘志は褒めましょう。しかし! それだけでは強くは成れないのです!! もっと相手の動きを見入って隙を付かなければ私には一撃も当てられませんよ!」

 黒烏はそう修司に告げると、トドメを刺すかの如く修司に向かって行った。

(くっ、くそ……あ、相手の動きを良く見て……す、隙を付く……)

 修司が思い考えている間に黒烏は修司の眼前まで向かって行き、修司の頭部目掛けて渾身の限り棒を振り降ろそうとした。

「きゃ、きゃあ! あ、あれじゃ修司君の頭がカチ割れちゃう!」

「しゅ、修司ー!!」

「……う……!」

 猫娘に変身怪獣が叫ぶ中、思わず鬼太郎は目を逸らしてしまう。

 そんな3人を含む、それを見ていた烏天狗の群衆さらには大天狗さえも、修司の頭が割れ、彼の頭部から血が噴き出す瞬間を思い描いていた。

「くっ…(こ、このままじゃやられる! な、何か手だては……あっ、そ、そうだ!)」

 修司が次の一手をどうするか考えていると、黒烏の棒が修司の眼前まで迫っていました。

「悪いが貰ったーー!」

 修司の頭に棒が直撃する寸前、修司は一歩後ろに後退して黒烏の一撃を避けた。

「うっ、な、何!?」

 黒烏が動揺しているその瞬間、修司は左手で黒烏の棒をしっかりと握りしめ、放そうとはしない。

「うっ、う……な、何て馬鹿力だ……!」

 黒烏は何とか修司の左手から棒を抜き取ろうと、力を入れて棒を引っ張った瞬間、修司は棒を放す。

「うっ、うわっ」

 黒烏は驚き、一瞬ふらついたその瞬間、彼の正面はガラ空きに。

「よっしゃーー!!」

 修司は渾身の力で己の棒を黒烏の腹に突き刺した。

「ぐっ、ぐうう…」

 黒烏は修司の全身全霊を込めて突いた棒の威力に思わず悶絶してしまう。

「その試合、此処までー!」

 陰で見ていた大天狗が二人の試合の終わりを告げた。

「う、うおおお!!!!」

 烏天狗達は意外な勝負の結果に驚き、そして騒然となった。

「ま、まさかあの状況で!」

「し、師範の腹に一発突きを入れるとは!」

「凄い、あの瞬間の攻撃を避けそして師範の棒を掴みとり自由をなくし、咄嗟に放して相手に隙を作らせて己の攻撃に転じるとは……」

 烏天狗達が騒然としている最中、鬼太郎達も喜びに浸っていた。

「や、やった! 修司の奴やりやがったよ!!」

「ほ、ホントっ! あの状況から黒烏さんに一撃加えるなんて!」

(修司君……良く此処まで厳しい修行に、試練や特訓に耐えたね)

「はぁ、はぁ、はぁ…」

 修司が息を切らしていると、対戦相手の黒烏が修司に歩み寄って来た。

「修司殿」

「は、はいっ、師範……」

「そなたは見事に私の鍛錬に耐え、そしてみごとに私に一撃を当てた。もう私が彼方に教えることは何もない。これからは自身の力のみで己を鍛えてゆくが良い」

「は、はい! ありがとうございますっ、黒烏師範!!」

 

 かくして、修司の天狗大本堂での修業はこうして終わったのであった。

 

 

 

 

 

[最後の聖龍・風の龍《風龍》]

 

 そして、修司と黒烏が試合をした日の翌朝。

 修司はアニメタウンに帰るため鬼太郎と共に天狗大本堂を去ろうとしていた。

「それでは大天狗様、黒烏さん、それに烏天狗の皆様。今までお世話になりました」

「お世話になりました」「お世話様でした」

「うむ、修司殿の修行にワシらも協力できて本望じゃ」

 鬼太郎に猫娘そして変身怪獣が礼を述べると、大天狗も嬉しそうに語った。

 修司も修行に付き合ってくれた黒烏に礼を言う。

「ええ。誠にありがとうございました。特に、黒烏師範。彼方との修行は一生忘れません」

「ええ、私も彼方の様な人間と立ち合えて、とても嬉しいです。また機会がありましたらこの大本堂に来て下され」

「ええ、もちろんです」

 修司達が去ろうとした瞬間、大天狗が修司に歩み寄った。

「ホレホレ修司殿、これを忘れては困る。ホレっ、聖龍の納められた龍玉じゃ」

大天狗はそう言うと、修司に透き通った空色の玉を手渡した。

「おおっ! これが最後の龍玉……!」

 修司が興奮していると、龍玉が光り輝き始めた。

「うわっ」「きゃあっ、ま、また」

『うっ、うわ~』

「こ、これが……!」「……うむ」

 二度目の目覚めを目撃しておどろrく鬼太郎と猫娘同様に、驚く烏天狗達と黒烏に大天狗。

「我を望みし者、我らに認められし者、よくぞ此処まで全ての龍玉を集めし候」

「ア、アンタは最後の聖龍、風の龍【風龍】なのか……!」

「いかにも、我はこの世の全ての自然、そして命を靡(なび)かせる風の龍、風龍である。良くぞ此処までの厳しき試練に耐えた。大天狗の手中で主の闘志はハッキリ伝わって来た。主なら聖龍の長、聖龍使いになるには相応しい人物であろう……」

 風龍はそう言い残すと、修司の数珠玉の一つとなり、不完全だった数珠が完璧な数珠に成り変わっていた。

「や、やったぞ! 遂に、遂に!! 全ての龍玉が手に入ったぞーー!!」

 修司は山が崩落する程の叫び声を上げて、歓喜に満ちていた。

「ふっはっは、遂にやり遂げたのう修司よ」

「あ、ああ! ありがとう大天狗!」

「やったね修司君」「おめでとう」

 大天狗に修司が礼を言うと、鬼太郎と猫娘も修司を祝福する。

「やり遂げたな! 相棒!」

「うむ、これで聖龍の納められた龍玉は全て揃った訳じゃ」

「おめでとうございます、修司殿」

「あ、ええ。でも師範の特訓が無かったら今後、聖龍使いになってもちゃんと戦えませんよ。ホントにありがとうございました師範」

 変身怪獣も目玉おやじも黒烏も修司を祝福する。

 

 そして修司は自分を鍛えてくれた黒烏を初め、大天狗や他の烏天狗達と別れを告げて天狗大本堂を去っていった。

「それでは皆さん、お元気で」「また来ますねー」

「また会おうな~」

 鬼太郎に猫娘そして変身怪獣が別れを言う中、目玉おやじは大天狗と話す。

「お~い大天狗、次に会う時まで酒の用意をしとくんじゃぞ~」

「ふはははっ。目玉殿~今度会う時まではもっと上等の酒で量も多めに用意して待っておりますぞ~」

『さようなら~』

 大天狗も烏天狗も手を振って一行を見送った。

「修司殿~、修行で身に付けた武術。しっかりと実戦で使ってくだされ~」

「ああ解りました。師範もどうかお元気で~!」

 こうして、修司達は天狗大本堂を去り、一路アニメタウンに向かって帰路に着いた。

 

 帰路に着く道中、修司はふと呟いた。

「ふぅ~、これで後は聖龍使いになるために必要な武者鎧を探し出すだけだな」

「武者鎧? 聖龍使いは鎧を着て戦うのかい?」

 修司の呟きに鬼太郎が問い掛けると、目玉おやじが説いた。

「うむ。古よりの言い伝えでは、聖龍使いの武者鎧は兜に五芒星の飾りを取り付けていてな。主に腰に差している日本刀で戦うのじゃ」

「にっ、日本刀……!」

 目玉おやじの説明に驚く修司に、目玉おやじは説き続ける。

「うむ。その刀は聖龍使い専用の伝説の刀【聖龍剣】という。その刀は聖龍の様々な自然の力を具体化し、そして技として放ち、使う事ができるのじゃ」

 すると猫娘がここで思わず呟いてしまう。

猫「ふ~ん、だけど日本刀で戦うんじゃ黒烏さんに教わった棒術が活用できないかもね」

「い~やっ猫娘、そんなことは無いぞ!」

「「???」」

 修司の大声に鬼太郎と猫娘がきょとんとしてると、修司は力説した。

「黒烏師範が俺に叩き込んだ武術は絶対、今後の俺の人生を助けてくれるに違いない!! 世の中に、人生に無駄な経験なんて絶対にないんだ!!」

 修司がそう叫ぶと、続いて変身怪獣も話した。

「ははは~、さっすが俺の相棒だ。言う事が他の奴等とは違うね~」

 この修司の台詞に、目玉おやじは思わず笑った。

「ふぉっふぁ、確かに。人生に無駄な事なんてないのかもしれんのう。全ては生きるために必要な経験じゃ」

「ふふっ、そうですね父さん」「なるほど、納得!」

 目玉おやじに続き、鬼太郎も猫娘も納得する。

 

 

 

 こうして彼らはアニメタウンに帰っていった。

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