[登校前夜]
修司は鬼太郎達に送ってもらいアニメタウンの自宅に無事帰還した。
家では、明日から新学期が始まる学校に行く準備をしていた。
「……ふぅ~、学校に持っていく持ち物が多くて大変だぜ」
修司が翌日の学校に持っていく荷物を準備している時、ドアをノックする音がした。
「ん? どうぞ~」
修司の自室に入って来たのはウッズだった。
「ああ、ウッズか。何か用か?」
「ああ、はい。昨日から修司様帰ってきて様子を見ているのですが、何だか一回りも二回りも大きくなってきた様な。そんな感じがしまして」
「ああ、それは俺が妖怪の処でみっちりと修行してきたからな。そりゃあもうキツイのなんのって……まぁ、気の良い妖怪の知り合いもお陰でたくさん出来たけどな」
「そうでしたか…(良かった、修司様にまた新しいお友達ができて)」
「あっ、そうそう。ウッズ、俺が居ない間に何か無かったか?」
「えっ? 修司様のいない間にですか。うむ……あっ、そう言えば」
「んっ? 何かあったのか?」
「い、いや……特別大したことではないのですが、修司様がアニメタウンを離れてすぐに複数の女性達が此処を、修司様を訪ねて来たんですよ」
「んっ? 複数の女性?」
「は、はい……」
「……もしかして……なあウッズ、その女達って金髪が二人いて内一人がツインテールで頭の両端にお団子みたいなのを付けた髪型で、もう一人はロングのストレートヘアー。後の3人が青い髪のショートカットに茶髪のポニーテール、最後に一人が黒髪のロングヘアの女たちじゃなかったか?」
「……! は、はい!正しく彼女達ですよ! なんだ、やはり修司様のお知り合いだったんですか?」
「い、いや……知り合いって程じゃないけど……」
「……ん?」
「じ、実はなウッズ。その女達は……」
修司は彼女達の裏の顔をウッズに教えた。
「……えっ! か、彼女達がスーパーヒロインのセーラー戦士達なのですか!?」
「ああ、間違いない。俺の目に狂いがなければ…」
「そ、その彼女達が何の用で修司様を訪ねたんでしょうね」
「うむ、おそらく俺が正体を感づいたと知って、何かと話を付けようと考えていたんだろう」
「な、なるほど……正体を知られることは死活問題ですからね」
「ああ……それとウッズ、他に何か変わった事は?」
「他に……あっ、そうそう。その彼女達が来る直前にアッコさんが来ました」
「あ、アッコが? 何の用にだ?」
「そりゃ、妖怪に倒されかけて入院してしまった修司様を心配してきてくれたんですよ」
「……お前、アッコに何か余計なことは言ってはいないだろうな」
「い、言ってないですよ。ただ急に退院した後にすぐ御旅行に行かれてしまったと伝えてしまいました」
「なるほどな、妖怪病院の事は上手く伏せて、修行に言った事は旅行に行ったと伝えたという事か」
「な、なにか不味かったでしょうか…」
「……いや、大丈夫だ。今は部外者には何の情報も伝えてはいけない。民衆に伝えるのも、俺が英雄集団を結束させた後に各メディアを通して大々的に公表する計画なんだよ。ちょっとした事でも外部には漏らすなよ」
「は、はい……」
「それとウッズ、例の準備は進んでいるか?」
「れ、例の……! はっ、はい。地下の主要基地も其処に配備しているメインコンピューター等の準備も着々と進行しております!」
「うんっ、でかした。それで、其処に配置する要員にはお前の村の奴らを推薦したいんだが、構わないか?」
「えっ? わ、私の村の住人ですか?」
「ああ、各要員には必要とあらば住居も手配させるし他に必要なものがあれば可能な限り提供する所存だ。それに、お前も息子と一緒に暮らしたいと思わないか?」
「えっ。む、息子を……ジュニアも一緒に住まわせて良いんですか!?」
「ああ構わん。お前の身内なら大事にしなきゃいけねえし、それに俺もお前の息子ってどんななのか見てみてえしな」
「しゅ、修司様……あ、ありがとうございます! 年々山々の樹木伐採で住み所を無くしている仲間も喜びますよ!」
「ああ。地下の施設が整ったら呼んでくれや。俺の組織《聖龍隊》のバック・アップ・サポーターとして思いっきり働かせてやるからよ」
「はい……って……せ、聖龍隊って?」
「うむ、俺が組織しようと思っている集団の名前だ。聖龍使いに、すなわち聖龍に認められた強者が集う戦闘英雄集団、聖龍隊だ!」
「せ、聖龍隊……そ、そこまで構想が広がりつつあるんですね!」
「ふっふっふ……まだまだホンの序の口だ。俺の野望はもっと広大でドデカイもんなんだ」
「……(い、いったい修司様は何処まで組織を拡大しようとお考えなのだろうか…)」
ウッズとの会話を終え、新学期の準備も終えた修司は寝床に就いた。
こうして修司がアニメタウンに帰ってきて一晩が過ぎた。
[chapter:新学期初日]
翌日、修司は夏休みが終わった初日の学校に通学した。
「おはよ~、諸君っ」
修司は上機嫌で教室に入って来た。
「おっ、修司!」「「修司だ!」」
「修司久しぶりね。8月から音沙汰無しでどうしたのか、みんな気にしてたのよ」
「いや~、ちょっとアイスの食べ過ぎでね……腹壊して入院してたんだよ。それに、その後すぐ市長としての仕事の都合で遠方の方に旅行に行ってたんだよ」
大将にギョロとゴマそしてモコに修司は夏休みに何をしていたのか、みんなに上手く嘘の報告をした。
「りょ、旅行? 一体どこに行ってたんだよ?」
「あ、ああ……ま、まずは東北の雪国で次は……ぐ、群馬の方に……」
大将に問い掛けられて修司は上手く事実を伏せながら話した。
「へぇ~、市長って割と良い所に行けるもんなのねぇ~」
「い、いや……ただ遊びに行っている訳じゃなかったんだ。そ、その市長として色々と仕事もこなしていた訳で……」
修司がモコを始めとするみんなに説明してたその時、修司の後ろからアッコが抱きついてきた。
「修司~~!!」
いきなりアッコに抱き付かれ、修司は大変驚いた。
「アっ、アッコ!?」
「心配してたのよ~、全然音信不通でさぁ……」
アッコは半ベソを掻きながら修司を思いっきり背後から抱き締める。
「ア、アッコ……い、痛い……」
「えっ、あっ……ご、ゴメン……」
修司はまだ修行で、特に黒烏に痛めつけられた箇所がまだ治りきっていなかった。
「い、いてて……」
「だ、大丈夫? どこか痛いの?」
「い、いやな……ちょっと旅先で怪我しちまって……だ、大丈夫、こんなのすぐに治るさ」
そう言って修司は体の痛い個所をさすっていた。
「ほ、ほんとにゴメンね。修司が怪我してたなんて知らなくて」
「そ、そう気にすんな…ホントにお前って心配性だな……」
「……あ~あ、アッコがいつもの調子に戻っちゃたわ……」
「……あ、アッコ……」
二人の仲良さ気にモコと大将が暗い表情で二人を見詰める。
そのとき、担任の先生が教室に入って来た。
「おーいっ。お前たち席に付けー、出席をとる」
「あっ、先生が来たっ」「やっべ、早く席に付かねえと」
アッコや修司達は慌てて全員、一斉に各席に着いた。
そして始業式が終わり、半日の登校が終了した。
その帰り道。アッコが修司に色々と問い質したのだった。
[アッコの誕生日]
「修司、アニメタウンに居ない間どうしてたの?」
「あ、ああアッコ……じ、実はな……」
「うん?」
「りょ、旅行先で色々と体験して来たんだよ」
「たっ、体験?」
「ああ、雪山に登山したり、群馬県のある寺で武術を学びに行ってたんだよ」
「ゆ、雪山登山に武術!?」
「ああ、この長期の休みを利用してな。今の内に自分自身を鍛えようと考えて前々から計画していた事なんだよ」
「そ、そうだったの……」
修司はアッコに、妖怪との修行という名目を上手く伏せて、自分が何をしてきたかをアッコに伝えた。
「き、キツくなかった? 雪山に登ったり、武術の訓練学んだり」
「そりゃあ、もうキツイの何のって……雪山じゃ危うく死にかけたり、武術じゃ痛い目に有って来たし……」
そのとき、アッコが修司に問い質す。
「しゅ、修司は何でそこまでしていたの?」
「んっ? それはだな……自分が弱くて、自身の身も護れない様なヒ弱な市長じゃこの街は護れねえだろう」
「……!」
アッコは驚き、そして呆れてしまう。
「そ、そこまでするの? たかが市長なのに…」
「たかが市長、されど市長だ。この街の危機的状況に自身が弱くちゃ話にならねえだろう」
「そ……そうかしら……」
アッコは不安そうな表情を浮かべた。
そして二人はアッコの自宅の前まで着き、別れようとした時、アッコが修司に言った。
「そうだ! ねえ修司、今度の6日家に来れる?」
「えっ? お、お前の家にか? な、何で……」
「その日は家で私のお誕生日パーティー開こうと思って。学校が終わってからホンの数時間の間だから参加して欲しいのよ」
「え、えっと……お、俺なんかが参加しても良いわけ?」
「当たり前じゃない! 一緒に祝ってよ、私の誕生日!」
「あ、ああ……さ、参加できるようにスケジュール空けておくわ…」
「うん、ありがとう。それじゃ、また明日!」
アッコはそう修司に言い残すと家の中に入っていった。
修司は考えた。今まで自分が誰かの誕生日に呼ばれるなんて事は無かったからだ。
何より、自分から周りの人間との間に壁を作って、人を避けてきた修司にはアッコの気遣いが痛いほど痛感した。
周りの人間に理解されず、ただただ孤独な日々を送って来た自分が…。
(アッコがこの俺を呼んでくれた……こんな俺を……こんなの初めてで、どうして良いのやら……)
[ヒーロー達の身辺調査]
そして、修司は自宅である市長オフィスに帰って来た。
「お帰りなさーい」「おう相棒、お帰り」
ウッズと共に変身怪獣も修司を出迎える。
「なんだ変身怪獣、お前も居たのか…」
「何て言い草だよ。オレがせっかくウッズと協力しながら調査結果を書類にまとめていたのによ」
「んっ? 調査結果?」
修司が変身怪獣の台詞に首を傾げていると、ウッズが修司に報告した。
「はい、前々から修司様が調査しておくようにとの報告で、この街に住んでいるヒーロー・ヒロイン。それから特殊能力者たちの身辺調査の報告書類が完成したのです」
「!! 何だと! それを早く言えよ!! は、早くその調査結果を見せろ!!」
「解りましたから、落ち着いて」
ウッズに宥められた修司は、自室にて調査結果をまとめたウッズと変身怪獣に報告書を持ってきてもらい、其処で書類に目を通す。
「……うむ。今現在この街に確認されているスーパーヒーロー・ヒロインは《美少女戦士セーラームーン》、《愛の戦士キューティーハニー》、《ナースエンジェル》、それから不可思議なカードを収集している少女に、電脳世界で活躍する通称《コレクター》と呼ばれる女の存在か……」
「はい。ちなみに変身怪獣さんの協力でセーラームーン・キューティーハニー・ナースエンジェル・カードを収集している少女の実態及び住居、身辺状況も把握できました」
「……これだけの情報収集を……いや! 大変ご苦労だった二人とも!!」
「いや~大変だったぜ。これだけの情報を掴むのはよ……いくら俺の擬態能力が有ってもカンの良い輩も居て、危うく俺の存在がバレちまうところだったぜ」
「いや……ホントに良くやってくれたよお前ら」
「はは……しかし、その報告書にありますが、やはり修司様の仰る通り、修司様がアニメタウンを離れてすぐに此処を訪れた彼女達は、やはりセーラー戦士だったんですね」
ウッズの指摘に修司は険しい顔で報告書の内容を述べた。
「ああ。この報告書の記述ではセーラームーンは本名[月野うさぎ]、青い戦士マーキュリーは[水野亜美]、赤のマーズは[火野レイ]やはりこの前、俺と変身怪獣が聞き付けた火川神社在住の巫女だったんだな。そして緑のジュピターは[木野まこと]現在一人暮らしか。そして最後のヴィーナス、彼女は[愛野美奈子]……か」
「おい修司っ、まずは誰から勧誘するつもりだ?」
「待て待て変身怪獣、そう慌てるな。まだ俺は聖龍使いになれていないんだぜ? まずは、何処かに有るという聖龍使いの鎧を探し出さないとな…」
「しゅ、修司様! それなら、まだ完全に確認されてはいませんが有るかもしれない所在が判明いたしました!」
「なにっ! それは何処だウッズ!」
「はい、アニメタウンの郊外に位置している[聖チャペル学園]の学園長が所持しているコレクションの一つの武者鎧に、頭部に五芒星の飾りがある鎧を所持しているとの情報を掴みました! ただ、まだ完全に聖龍使いの鎧か……あるいは偽物なのかは解っていないのですが……」
「いや! 良くぞ其処まで調べてくれた!! 何とか聖チャペルに潜りこめねえかねぇ……」
「修司様、それなら今月末に開かれる学園祭に修司様が市長として御招きがあります。そこで潜入して武者鎧を拝見させてもらえば……」
「なるほどな! 市長として御呼ばれされていれば堂々と中に入れるってわけか」
ウッズと学園に堂々と潜入する話をする修司に、変身怪獣が問い掛ける。
「なあ修司よ、オレもその学園祭に行って良いか?」
「へっ、お前が? な、なんで……?」
「へへへ……念のため、擬態しながらお前の警護もするし、何かあったら変身能力でお前に成り済ましたりできるだろう? それに……」
「………………?」
「それに、その学園って美女が多いって言うしな……ジュルッ」
「……お前なぁ、そんなスケベ心で付いてくるわけ? ……何だかやだなぁ」
「そう言うなって、堅いことは抜きにな……それともう一つ」
「うんっ? まだ何かあるのか?」
「実はな……此処はなぜか犯罪組織・豹の爪(パンサー・クロー)に良く襲われているって言うんだよ。それが要因なのかは解らねえが、その組織と対立しているヒロイン、キューティーハニーも良く聖チャペルに出現してるって言う訳だ。何かあったらメタルバードに変身したオレが戦うからよ」
「そ、そうなのか……まぁ、そう言う事情なら仕方がねえな、お前も来い」
「よっしゃーー、カワイコちゃんがわんさか居るかな?」
修司の了承を得た変身怪獣のテンションは上機嫌に上昇して晴れやかな気分で一人、部屋から出て行った。
「ふぅ~、何で俺の相棒はああ何だか……」
修司が溜息をするとウッズがこう言った。
「しかし修司様、彼方の近くに居る人たちは修司様の居た世界とは真逆の存在であることはお忘れでは無いでしょ?」
「あ、ああ。まあ、そうだな……」
「だから、あんなにも風変わりで相手に対して気前良くなれる人が修司様の側には多いんじゃないですか」
「そ、そうか……」
「そうですよ、あのアッコさんも口下手で人付き合いが苦手な修司様に声をかけてくれなかったら、修司様は学校で孤立していましたよ。もっとアッコさんに対して思いやりを持ってあげないと……」
「……あ、ああ……」
ウッズ「では、私達はこれで」変身怪獣「俺も、ちょっと空飛びながら風に当たってくるわ」
部屋を出ようとするウッズに修司が声をかけて止めた。
「う、ウッズ……ちょっと、まだお前に話が有るんだ……」
「えっ、私に……ですか?」
修司はウッズにアッコの誕生パーティーに呼ばれた事を伝えた。
「……それは良かったじゃないですか。何か問題でも」
「あ、当たり前だ! お、俺は自分の誕生日を誰かに祝ってもらった事もないし、誰かの誕生日に呼ばれた事も今まで無かったんだよ。そんな俺がどのツラ下げて誕生会に行けばいいのか……」
修司が不安そうにウッズに相談すると、ウッズは笑顔で修司に話した。
「修司様、誕生日って誰にでも喜んで祝ってもらえるだけで嬉しいもんなんですよ。だから修司様も思いっきりアッコさんの誕生日を喜んで祝ってあげればいいんですよ。修司様なりにね」
「そ、そうか……た、誕生日プレゼントは何を贈ればいいんだろうか?」
「それは……まぁ女の子ですし、お化粧道具何かどうでしょうか? 例えばコンパクトとか」
「い、いや……あいつはもう別のコンパクトを肌身離さず所持しているから他のヤツはいらないと思うぜ」
「う~~ん、そうですねぇ……まっ、修司様が選んだものであれば喜びますよ、きっと!」
「そ、そうかな……」
「そうですよ! もっと自分に自信を持ってくださいよ!」
ウッズはそう修司に言い残すと、部屋から出て行った。
「ふぅ~、俺が選んだものなら何でもいいか……でもなぁ~。」
修司は一層悩んでしまう。
「誕生日はもうすぐだ。早く決めておかないと……」
修司はアッコに渡す誕生日のプレゼントを考え続けた。