[市長からの手紙]
「くっくっくっくっ……」
この日、修司は怪しく微笑んでいた。
そして修司は執事であるウッズを呼び出し、問い掛ける。
「おいウッズ、例の手紙は確実に各キャラクターのところに届けただろうな」
「はい、手筈通り全て配布致しました。特に聖チャペル学園の寮に住んでいる如月ハニーへの手紙は、学園の校長と理事長に直接渡し、彼女に間違いなく手渡すよう指示しております」
「よ~し、御苦労。後は彼らが来るのを待つだけだ。俺が開く始まりと言う名の宴にな……」
同時刻、聖チャペル学園の理事長室
「……と言う訳なのよ如月さん。市長が貴女の事を加賀美さんから詳しく聞いて、大変気に入ったみたいなのよ。それで昨日わざわざ秘書のウッズさんがこの招待状を持参して来てくれたの」
「いや~、さすがは新市長! これからのより良い街や学校作りに若い人の意見を聞きいれるとは……それに同時にパーティーも開いて親睦を深めるなんて、なんで気前の良い!」
「は、はぁ。し、しかし私が市長さんの開くパーティーなんかに御呼ばれされるなんて……しかも私一人だけ」
アルフォンヌ理事長と団兵衛校長が舞い上がる中、自分だけ学園から招待されるのを躊躇う如月ハニーにミハル教師が言った。
「まぁ、市長には市長なりの考えがあるんでしょう。それに、この学園の事も更に知りたいがために貴女一人だけを呼んでいるのかもしれないわ」
「はぁ……」
「どちらにしろ、ぐれぐれも粗相のないように。相手は街の市長様なんですからね。解りましたか如月さん!」
「はっ、はい! 解りましたミハル先生、校長先生に理事長」
同時刻:アニメタウン十番街
「うさぎー、あなた宛てに郵便よーー」「はーーい、何だろう?」
母親の育子から手紙を手渡された月野うさぎは、何気なく手紙を開封して読んでいると。
「え……ええー ーーー!!」
「うっ、うさぎ! 一体どうしたの!?」
「なっ、何事だ?」
「朝っぱらウルセエな、バカうさぎ」
「うわー、だってだって~」
突然の叫び声に驚く育子と父である謙之に弟の進悟に、うさぎは手紙を手渡して家族にも見せた。
『え~~!!』
手紙の内容に驚愕する家族。そんな中、父の謙之が手紙を読み上げる。
「な、何々……『今回あなたは当パーティーの参加が当選されました。ゆえに今回のアニメタウン主催のパーティーへの招待券を御送りいたします。尚、当パーティーへの参加は市民の義務なので必ず来るように……追伸・貴女様には特別にペットの猫を御連れする許可を与えます アニメタウン市長 小田原修司』だって!」
「す、すごいじゃないうさぎ! 市長さんからパーティーへの御誘いが来るなんて!」
「な、何かの間違いだろ? なんでうさぎにだけこんな招待状が来る訳?」
「わ、私だって知らないわよ~」
困惑するうさぎだったが、そこに玄関ベルが鳴り響く。
「はっ、はーーい」
うさぎは慌てて玄関に出ると、玄関前にはセーラー戦士の仲間達が居た。
「うっ、うさぎ大変よ!
「し、市長さんから手紙が来たのよ!」
「へっ?」
レイと亜美の報せにうさぎが一驚してると、まことと美奈子も立て続けに報せが。
「だからっ、あの市長・小田原修司から手紙が来たんだってば!」
「わ、私のところなんか特別にペットの猫を…つまりアルテミスを連れて来て良いって……」
「あ、あの……みんな……」
「ん?」「どうしたの、うさぎちゃん」
「うさぎちゃん?」「うさぎちゃん」
呆然とする四人に、うさぎは自分に届いた手紙を見せながら言った。
「……私のところにも手紙来てた……」
『え、ええ~~~!!』
セーラー戦士達が突然の手紙に驚愕している頃。
同時刻:友枝町
「おいさくら、お前宛に手紙が来てるぞ」
「は~い、誰からだろう……」
兄の桃矢から手紙を受け取ったさくらは、自室にて手紙を開封する。
「……ほ、ほえ~~~~!」
「なんやなんや、さくらお前一体どうしたんや」
「ケ、ケロちゃん。こ、これ……」
「うん? なんや……な、なに!? アニメタウンの市長から直々にパーティーへの参加状やと!?」
「な、なんで私なんかが……」
さくらやケルベロスが戸惑っていると、窓の外から知世達の声がした。
「さくらちゃ~ん」「おーーい、さくら~」「さくらっ、聞こえてる!?」
知世に小狼、苺鈴の声に、さくらは窓を開けて二階の自室から皆と話す。
「み、みんな……一体どうしたの?」
「お、俺たちのところに市長から手紙が来たんだよ!」
「パーティーへの参加状なんですけど、全く御呼ばれする覚えがないんです……」
「み、みんなのところにも!?」
「えっ、するとさくらちゃん所にも?」
同時刻:森谷家
「え~~、ウッソーー!!」
「どうしたんだいナースエンジェル、朝っぱらから騒々しい……」
「……ってデューイ、何度も言っているでしょ。私の事はいつも『りりか』って呼んでって」
「そんな事より、一体何があったんだい?」
「あっ、そうそう……し、市長さんからパーティーへの参加状が届いて……」
「んっ、市長って最近就任したばかりの若い市長の事かい?」
りりかとデューイが話していると、森谷家のベルが鳴った。
「はぁはぁ、り、りりか。た、大変だ……」
玄関を出てみると、そこには息を切らした星夜が居た。
「ど、どうしたの星夜……?」
「そ、それが……お、俺のところに市長からの、ハァ、しょ、招待状が……!」
「え~! せ、星夜のところにも!」
「えっ! そ、それじゃりりかのとこにも……」
同時刻:大江戸町三丁目・花丘邸
「……な、なんで…なんで市長さんから招待状が……」
突然の招待状にイサミが驚いていると、古い呼び鈴を鳴らして訪問者が来たのが知らされる。
「あっ、ハーーイ」
イサミが玄関を開けると其処にはトシ・ソウシ・ケイの三人が居た。
「あっ、三人ともどうしたの?」
「た、大変だぜイサミ!」
「だから、どうしたのよ?」
慌てている様子のトシにイサミが訊き返すと、ソウシが代弁する。
「し、市長さんから僕宛てに手紙が! ト、トシ達兄弟のところにも…!」
「えっ、さ、三人のところにもーー!?」
そんな四人を陰ながら見ていた女が居た。そう、高木はるかであった。
「あの聖龍使いとメタルバード、ちゃんと市長さんに伝えてくれたみたいね。市長さんの力も借りられればあの子たちの身の安全も少しは上がるわ」
[市長宅でのパーティー]
そしてパーティー当日、招待状を貰った人々(英雄達)は続々と市長の家に入り込んでいった。そしてウッズに玄関で招待状を確認されて、そのまま誘導されるように家の中央にあるエレベーターで地下のパーティー会場に連れていかれた。
「ふぅ~、何だかパーティーって言っても、呼ばれているのが数十人程しか居ないわね」
「いったい、何のパーティーなのかしら?」
「招待状には何も書かれていなかったけど……」
不安そうにしていレイとまことと亜美を横目に、うさぎと美奈子は出された料理を貪っていた。
「みんな、今は何も考えなくても大丈夫なんじゃない?」
「そうそう、今は食べれるだけ食べちゃいましょうよ。こんな御馳走、滅多に味わえるもんじゃないわよ♪」
「あのね~二人ともっ」
呑気に食事するうさぎと美奈子に、レイが怒っていると亜美とまことが呆れてしまう。
「……うさちゃんも美奈子ちゃんも呑気すぎるわ……」
「そうよっ、忘れたの? 市長さんは私達の正体に気づいているのよ。もっと慎重にならないと……」
そんな彼女たちの足元から、ルナとアルテミスが出て来た。
「そうようさぎちゃん、此処の市長さんは本当に私達に友好的なのかどうかさえ、まだ解らないのよ!」
「もぐもぐ、でもルナ、こんなに美味しい御馳走の出るパーティーに呼んでくれるんだから、市長さん悪い人じゃないと思うよ。もぐもぐ……」
「そう……ムグムグ、それに今どう考えたって答えなんか出る訳ないじゃん。しばらく食事しながら様子を見ましょうよ」
「あ~あ……うさぎも美奈子も……ヤレヤレだ」
「ホントに呆れるわね……この二人には」
食事に夢中の二人に、ルナとアルテミスは呆れ返ってしまう。
「こ、こんな豪華な所に呼ばれて大丈夫かしら…」
「まぁ、ちゃんと呼ばれているから居ても大丈夫だろう」
「モグモグ、こんな御馳走の出るパーティーに招待してくれるなんて、気前の良い市長だぜ」
一方、りりかとデューイそして星夜の三人もパーティーに参加していた。
「ほ、ほええ~~……し、知らない人たちばっかりだよ。どうしよ~小狼くん、知世ちゃん、苺鈴ちゃん……」
「少しは落ちつけよ、さくら」
「そうですわ、何か特別なイベントに招待してくださったのかもしれませんわよ」
「だ・か・ら~、何でそんな特別なイベントに私達が呼ばれたのかが! 解らないんじゃない!」
「あ~、そうでしたわね」
いつも朗らかな知世に苺鈴が怒るも、知世は変わらず穏やかに返す。
(あ~あ、校長先生や理事長、それにミハル先生の手前もあって変に断る事が出来なかったわ。そもそもなんで私だけ呼ばれたのかしら、あの時アッコちゃんと親しくなったのは夏子も同じなのに……)
如月ハニーも慣れない緊張感で胸がいっぱいだった。
と、そんな如月ハニーに突然話しかける少年が。
「どうしましたか、麗しき御姉さま」
「えっ? わ、私…」
「そうですよ、貴女以外に誰が居るんですか。少なくとも、僕の視線には美しい貴女の姿しか目に入っておりませんよ」
「は、はぁ…あ、ありがとう……あ、あなたは?」
「おおっと、僕とした事が。貴女の余りにも美しい魅力で頭がいっぱいになってつい自己紹介をするのが遅れてしまいました。僕の名前は雪見ソウシ。お姉さま、どうかお見知りおきを」
「は、はぁ。ありがとうソウシ君」
そう言って一輪のバラを手渡すソウシに、ハニーが応対していると。
「コラッーー、ソウシったら。また見ず知らずの女性に声をかけて! 恥ずかしいから止めてって言っているでしょ!!」
「おっとイサミちゃん、この僕にヤキモチ焼いてくれているのかい?」
「ふっ、ふざけないで!!」
美女なら誰であろうと気軽に声を掛けるソウシを注意するイサミに、トシとケイの兄弟も立食しながら話し出す。
「なんだよソウシ、まだ女にちょっかい掛けてたのか~。いい加減にしろよ、イサミの怒鳴り声には俺も聞き飽きたよ」
「そうだよそうだよ、女には優しくしろって母ちゃん言ってだぞっ」
「いや~、この御姉さまが余りにも美しくてつい声をかけてしまったんだよ。……って、先ほどの御姉さまは?」
「さっきのお姉さんならもう向こうに行っちゃったわよ」
そういう会話が続きながら、食事をしながらの和みムードも効果があってか、皆それぞれの自己紹介を始めた。
「……へぇ~、如月さんってあの有名な聖チャペル学園の生徒さんだったんですね」
「そ、そんな大したことじゃないわよ」
「もう~、謙遜(けんそん)しなくても良いですよ~。聖チャペルってかなり格質の高い高校だって聞きましたけど」
「まぁ、確かに規則は厳しいかもね。でも、みんな明るくて優しい人たちばかりよ」
まことやレイの質問に答えるハニーに、うさぎが思わず零す。
「へぇ~、私達と一緒ですね」
「ちょ、ちょっとうさぎちゃん! 失礼よ!」
「そ、そうよ……私達と一緒にしちゃいけないわよ!」
うさぎの失言にまことも亜美も注意すると、ハニーは笑顔で説いた。
「もうオーバーよ。私の学園はそんな高レベルじゃないわ。ただ授業が全てミッション系と言って、与えられた科目をこなしていくという、変わった授業内容なだけよ」
「それでも、やっぱり知能が低いと入れないんじゃないですか?」
「そ、そんな事ないわよ。頑張れば誰にだって入学はできるわよ」
美奈子の質問にも答えるハニー。
「そうね、報われない努力なんてないんですもの」
「もう~、亜美ちゃんは天才だからそんなこと言えるのよ~」
「ええっ、そ、そんなつもりは……」
「そうそう、IQ300の天才少女なら、何処の学校でも簡単に入れるんじゃないの~?」
「もう~美奈子ちゃんまで…そ、そんなこと……」
うさぎや美奈子が亜美をおちょくっていると、まこととレイが注意する。
「ちょっと、うさぎに美奈ちゃん! それ以上亜美ちゃんを困らせないのっ」
「そうよ、自分達が勉強ができないからって言いすぎよ」
「「は、は~い……」」
「クスクス、ホントに仲が良いのね、あなた達……」
仲睦まじい五人を見て、ハニーは思わず微笑んだ。
「……いいなぁ、向こうはキレイな御姉さま方がいっぱい居て」
「ソウシ、余り見ているとまたイサミに怒鳴られるぞ」
ソウシが羨ましそうに六人を見詰めるのをトシが忠告する中、知世がケイにケーキを取ってあげてた。
「はい僕、このケーキが取りたかったのね?」
「うんっ、ありがとうお姉ちゃん!」
「フフフ、別に構いませんわよ」
「……ケイもいいな、幼稚園児の特権をフル活用して……」
「お前……幼稚園児のケイに嫉妬するなよ」
ケイに嫉妬するソウシを見て、トシは呆れてしまう。
「ねえ小狼、アナタも少しは宴を楽しみなさいよ」
「そ、そう言われても……俺、こういう雰囲気苦手なんだよ」
従兄妹の苺鈴に言われる小狼が歩いている中、彼のズボンのポケットから零れ落ちたハンカチをイサミが拾い上げて小狼に手渡す。
「あらっ、ねえ君。このハンカチ落としたの、君じゃないの?」
「あっ、ああ……あ、ありがとう……」
「何だか随分と緊張しているわね、顔色が悪いわよ」
「は、はい……大丈夫です」
自分を気に掛けてくれるイサミに感謝する小狼だったが、彼に好意を寄せている苺鈴がすかさず間に割り込んでイサミに怒鳴ってしまう。
「ちょっとアナタ! 馴れ馴れしく小狼に言い寄らないでよ!」
「ごっ、ごめんなさい……わ、私」
「おい苺鈴、この人は俺が落としたハンカチを拾ってくれただけなんだぞ。そんなに怒鳴りつける事ないじゃないか!」
「だ、だって~ ウッ グスッ」
「あっ、あっ、ごめんなさい。彼女泣かせちゃって……」
「いえ、大丈夫です。彼女はいつもこうして俺の気を誘っているだけですし、ただの親戚ですよ」
「も、もう~っ、小狼ったら!」
三人は少しずつではあるが距離を縮めていってた。
「あっちはあっちで、何だか盛り上がっているなぁ。まっ、ワテは隠れながらパーティーの御馳走頂いていますか」
そんな賑やかなパーティーの隅っこで、ケルベロスは隠れながら出された食事に手を付けていた。
「ふ~良かった、私たち以外にも同い年の人が来てくれていたなんて」
「え、ええ。私も急にこんなパーティーに呼ばれたから戸惑っちゃって……」
此方ではさくらとりりかが同い年と言う事で気が合って会話が弾んでいた。
「……それにしても、何で市長さんは私達をパーティーに呼んだのかな? 以前、手紙が来るからって聖龍使いさんから聞いたんだけど、まさかパーティーに呼ばれるなんて……」
「えっ? あ、あなた以前に聖龍使いに会ったことあるの!?」
「あっ、え、え~と……ちょ、ちょっとね……」
りりかに問い詰められたさくらは、カードの事を何とか伏せる。
「んっ? どうしたりりか、そんなに驚いた顔をして」
「せ、星夜! か、彼女あの聖龍使いに会っているんだって!!」
「な、何だって!」「そ、それは本当かい!?」
りりかが星夜とデューイに聖龍使いの話した途端、会場の空気が一変した。
「ええ!」「あ、あの聖龍使いに……!」
「あっ、あの有名な!?」「ち、巷で話題になっているあの鎧武者の?」
「ひ、ひええ~~! あの子、スッゴイ有名人と知り合いなの~!?」
まこと・亜美・レイに美奈子そしてうさぎが驚愕する中、そんな五人とお喋りしていたハニーも驚く。
「えっ、聖龍使い……(以前学園でピンチになった時、急に現れて戦えなくなった私の代わりに怪人を倒してくれた鎧武者の……!)」
「さ、さくらのヤツ!」「なに勝手に喋っているのよ!!」
「あらら、さくらちゃん聖龍使いの事口にしてしまいましたわ…」
さくらの発言に焦りを隠せない小狼と苺鈴に反して、知世は変わらずおっとりと冷静を保っていた。
「ウン? セイリュー…?」
「せ、聖龍使いだって!?」
「か、母ちゃんから聞いているぞ! 今、街を護ってくれているスーパーヒーローじゃないか!!」
「わ、私もママから聞いているわ。よくニュースで取り上げられてて街で暴れるマモノを退治したり、治安を乱す犯罪者たちを撃退してるって、よくママの番組でも取り上げられているわ!!」
ケイにソウシ、トシにイサミも驚愕した。
この【聖龍使い】のフレーズに、みんなの意見が一致し彼に対して、更にその相方である【メタルバード】について皆いろいろと話を続けた。
「こ、この前ウチの学園に聖龍使いとメタルバードが現れて、怪人を一刀両断にしちゃったのよ!」
「お、俺たちの目の前にも現れたんだ」「俺たちのところにも…」
驚きながら話すハニーに、小狼も星夜も話し出す。
「いったい何者なのかしら、その聖龍使いって」
「メタルバードっていう銀色の鳥の姿をしたヒーローと一緒に戦っているってニュースになっているけど……」
「いったい彼等の目的は何なんだ?」
レイに美奈子そしてデューイが聖龍使いとメタルバードに警戒する素振りを口にすると、さくらが思わず呟いた。
「私、何だかその二人が悪い人たちじゃない様な気がする……」
「もうっ、さくらったら! そんな保証はないでしょ?」
「そ、そうよ……さくらちゃん、って言うのよね。言ってはなんだけど、彼等はほとんど素性の解らない人たちよ。余り信用していいものか……」
さくらの発言に苺鈴とまことが疑念をぶつける中、亜美とソウシが話し出す。
「で、でも皆さん落ち着いて……そんな素性が解らないからって悪い人って決めつけるのはどうかと……」
「そう! 青く美しい髪の御姉さまの言うとおり、簡単に他人を善人悪人と決めつけるのは良くない」
「お前は女の言う事ならホイホイ意見変えるなぁ……」
ソウシの弁を聞いて呆れるトシ。
「でも確かに。勝手にその人の事を決めつけるのは良くないと思いますわ」
「そ、そうよ! 現にこの街にはそう言った沢山のヒーローやヒロインだって居るんだしさ」
「ちょっとうさぎ!」
それ以上言ったら、今度はセーラー戦士の事が話題に出ちゃうわよ」
知世の発言に続き訴えるうさぎを、レイと美奈子が小声で注意する。
「ニュースでは良くメタルバードと一緒にマモノや犯罪者と戦っているけど……事件が済んだらすぐに消えちゃうのよね……」
「だってヒーローなんだよ! みんなが困っている時だけ姿を現して、困っている人を助けているだけなんじゃないの?」
イサミに続いてケイが唱えると、まことがケイと同じ視線にしゃがみ込んで話す。
「ふ~、あのねボウヤ。そんなにホイホイとヒーローがこの世に出てくる訳ないのよ」
「そうだよ、もしかしたら善人面した悪い奴だって居るのかもしれないんだしさ」
まことの意見にデューイも同意する。
「そんなことないよ! だって僕達しんせん組……ウグッ」
「は、ははは~ケ、ケイ……」
「ケイちゃんはちょっと黙ってようね~」
(ふ~、危ない危ない)
思わず自分達しんせん組の事まで話そうとするケイの口を、兄であるトシが塞ぎながらイサミと共に後退し、それを見たソウシは安堵する。
みんなが色々と意見を出し合っている中、亜美が咄嗟に有る事に気付いた。
「ね、ねえ! みんな聞いて!」『んっ?』
一同が亜美に注目する中、亜美は真説を説き始めた。
「そう言えば……聖龍使いが現れたのは夏休みが終わってから……そう、その間に街で一番変わった事といえば市長さんが! 小田原修司が市長になってからよ!」
この亜美の説に誰もが気付かされる。確かにマモノや怪人、犯罪は以前からあったが聖龍使いが現れるまでに街で変わった事と言えば、新市長の小田原修司が街に来たことぐらいだった。
「そ、そう言えば!」
「確かに、市長さんが街に来てから聖龍使いにメタルバードが街に現れたんだ」
ソウシにトシが気付かされると、さくらが何かを思い出す。
「はっ、そ、そう言えば……」
「ん、どうしたのさくらちゃん。何か気付いた事でも?」
ハニーがさくらに訊ねるも、さくらは言うのを躊躇ってしまう。
「あ、あの……え~と……」
「ああっ、マゴマゴしてないでさっさと話せよ!」
言葉を詰まらせるさくらに苛立ったデューイが怒鳴ると、見かねた小狼が代わって話した。
「オイっ、さくらを余り責めるなよ! 俺が代わりに言うよ。聖龍使いとメタルバードは、自分達はこの街の市長公認のヒーローなんだって言ったんだよ」
「ええっ、それはホント!?」
小狼の話を聞いて驚く美奈子に、知世も打ち明ける。
「私も聞きました、市長に相談してや……と言ってくれて」
「えっ? 相談って……」「あっ、え、え~と、つまり……」
ハニーが訊き返すと、苺鈴は返答に困ってしまう。
「そう言えば、俺たちの時にも何か言ってたな」
「ああ、ナースエンジェルに対して助言してくれたときだよ」
「えっ、ナースエンジェルって巷で噂になっている白衣の戦士の事でしょ!? 何であなた達が彼女を知っている訳?」
「そ、それは……え~とっ……」
星夜やデューイの事情を聞いて亜美が訊ねるが、りりかが困惑してしまう。
そんな皆の話が段々と拗れていくのを感じ取ってか、うさぎと美奈子のカバンの中からルナとアルテミスが堪らず出て来た。
「みんな! 其処までよっ」
「えっ、何?」「ね、猫が喋った!?」
突然皆の前に現れる人語を喋るルナに一驚するさくらと星夜。
「そう驚かないでくれよ、別にオバケって訳じゃないんだし」
「でっ、でも猫が喋るなんて……」
ルナに続き皆に話し掛けてくるアルテミスを前に、ハニーも驚きを隠せない。
「ルナっ、アルテミスっ。何で出てくるのよ!」
「余計に話がこじれちゃうじゃないのよ!」
「あ、アンタ達は何者なんだ?」
うさぎと美奈子たちに警戒心を向ける小狼。
「うわぁ、猫ちゃんが喋ってるーー」
「危ないわよっ、ケイちゃん!」
「そ、そうだぞケイ。コイツ等もしかして黒天狗党の仲間かも……」
喋る二匹に興味を抱くケイを慌てて抱き寄せるイサミだったが、此処でトシが黒天狗党の名称を口に出してしまう。
「えっ、黒天狗党って」
「確か裏社会で暗躍しているっていう犯罪組織……なんで僕達がそれを?」
まこととハニーが不思議がる中、混然とする状況にデューイが混乱する。
「ああ、もう! 何がどうなっているんだ!!」
「お、落ち着いてよデューイ」
りりかがデューイを宥めていると、そんな騒然となる集まりに追い打ちをかけるかのごとく、今度はケロが膨れた腹を見せながらみんなの前に姿を現した。
「ま、まあまあ皆はん。そんなに熱くならんといて~な……ゲフッ」
「ウワッ、今度は羽の生えたデブ猫が出たーー」
「で、デブ猫とは失敬な…わ、ワイはこれでもケルベ……ウプッ」
「ケロちゃん、いくらなんでも食べすぎだよ~」
「な、何なの。その子は……」
星夜に言い返す事も難しくなるほどお腹いっぱいに食べたケルベロスをさくらが注意する一方、ハニーがお腹を膨らませたケルベロスを指差すと知世が答えてしまう。
「その子はケロちゃん。フルネームはケルベロスって言うんですのよ」
「ケ、ケルベロスゥ~? このちっこい子が?」
レイが半信半疑でケルベロスを指差すと、ケルベロスはお腹を膨らませたまま返した。
「ゲフッ、く、黒い髪の姉ちゃん。これには訳があるんやけど今はそんな事よりもや」
「こ、この子……」「うん、大阪弁喋っているね」
ケルベロスの口調に亜美とまことが茫然としてると、そんなケルベロスにルナとアルテミスが指摘する。
「アナタ、普通の生き物じゃないわね」「ああ、微弱ながら魔力を感じる」
「それはアンさん等も同じやろ……いや、ワテの勘が正しければ、この場にいる全員が他人に言えない秘密を持っとるっちゅう心境や、そうやないか?」
ルナとアルテミスがに返事するケルベロスの発言に、その場の一同が緊張して空気が重くなる。
「ま、まさか……秘密を持っているってことで此処に呼び出された訳なんじゃ……」
「どうも、そのようね」
「うんっ? どう言うこっちゃ? 黒い猫の娘さん」
ハニーの戸惑いにルナが思い耽っていると、ケルベロスがルナに訊ねる。するとルナ同様に勘付いたアルテミスが話した。
「ああ、美奈子達の正体に市長さんが気付いただけでなく、その市長公認のヒーローである聖龍使いとメタルバードに接触しているさくらちゃん達にりりかちゃん達、そして彼が最初に表舞台に出てきた時の現場だった聖チャペル学園在校生の如月ハニーさんが呼ばれた……おそらくハニーさん、あなたは、いいや貴方も僕等と同じような秘密を胸の内に隠し持っているのではないでしょうか」
「えっ、そ、それは……」
アルテミスに指摘され、ハニーは内心激しく動揺する。
「いいえ、ハニーさんだけじゃない。此処にいるみんなが共通ではないけど似たような秘密を持っている存在なのよ」
「……なるほどなぁ、だから市長と面識のないさくらや小狼達も呼ばれたっちゅうわけか」
ルナの指摘にケルベロスも頷くばかり。
「ひ、秘密って……」「トシ、僕等にとっての秘密は……」「ええ」
不安がるトシにソウシとイサミの三人。
「ま、まさか……」「……」「秘密と言われたら……」
星夜にデューイそしてりりかにも思い当たる節が。
「秘密って言うと……」「え、ええ……」
「他に思いつかないしな」「で、でもそんな!」
さくらに知世そして小狼と苺鈴も戸惑うばかり。
「ま、まさか市長さんが」「そんな理由で私達を呼び付けたのかしら……」
「わ、私達……一体どうなっちゃうの~」
「ウワ~ン!!」
(私達がセーラー戦士である事を知って市長さんが呼んだのだとしたら……他の人達は、いったい……)
動揺する亜美にレイに対して涙目になる美奈子とうさぎ、そして一人熟考するまこと。
みんなが騒然としているその時。
音楽と共にパーティー会場の舞台袖から一人の人物が現れる。
[登場した市長と聖龍使い見参]
皆が振り向くと、舞台袖から現れた人物ウッズが会場の皆々に言い渡す。
「皆さま、大変長らくお待たせしました~。これより当アニメタウン市長・小田原修司が皆さまに御姿を御披露目いたします」
「えっ、あ、あの人は確か市長さんの秘書のウッズさん?」
現れたウッズと面識のあるハニーが戸惑う。
そして皆が驚いていると、舞台の巨大カーテンが開かれ、中央の丸い土台に続く道を、市長の小田原修司が歩き始めた。
「ようこそ! 我が屋敷、小田原修司邸に!! 此処にいる皆様を大層祝福したいと思っております」
話を進行する修司に、デューイが思い切って睨み付けながらも問い詰めようとする。
「おいっ、ちょっとアンタ」「ん~~、何だーーい、デューイく~ん」
調子に乗っている修司に怒り出しそうなデューイであったが、それをりりかが止めた。
「や、止めなさいよデューイ」「は、放せよナースエンジェル!」
この時のデューイの発言に、その場の全員が驚いた。
「な、何!?」「あ、あのりりかって女の子が……」
「白衣の戦士、ナースエンジェル?」
小狼にハニー、そしてソウシが一驚する。
「ほ、ほえ~! ま、まさかりりかちゃんが……」
先ほどまで同じ年と言う事で親しく話していたさくらも、りりかの正体を知って驚きを隠せない。
「あの子も、スーパーヒロインだった訳?」
「えっ、あの子も……って、じゃ、じゃあお姉さんも!?」
亜美が思わず口に出した言葉に、トシが一驚する。
「い、いったい何がどうなっているの?」
「うわ~、誰かこの状況を説明して~!」
「アンタね! 私達より年上なのにビービー泣かないで!」
困惑するばかりのレイに対して泣きじゃくるうさぎを見て、苺鈴がうさぎに文句を言ってしまう。
そんな混乱する会場を眼前にして、修司は更に話を続けた。
「ゴッホンっ。え~今日皆さまに此処に集まって来てもらったのには訳がある。それは皆さまの心の内にある秘密についてだ」
『………………』
修司の演説に会場の皆が注目する中、修司は淡々と語り続けた。
「そう、すでにお気づきの方々も居るとは思いますが……ある者たちは天星の魔力を使って妖魔たる存在を消し去る正義の戦士。ある者は犯罪組織・豹の爪(パンサークロー)と立ち向かう愛のスーパーヒロイン。ある者たちは癒しの力を使って汚れた魂や存在を治していく者たち。そしてある者たちは天狗の面をした悪党達と敢然と立ち向かう正義の少年少女達。ある者はこの世に災いをもたらすカードを封印するために奮闘していく者達……等など!! この俺が目を付けた英雄達が今! 目の前にズラーーっと居るじゃありませんか!!」
一気に会場の雰囲気を盛り上げる様に演説する修司の発言に、会場のみんなは自分達の立場を明かされて、かなり動揺してしまう。
「はっはっは……そうそう、まずはみんなに見て貰いたいものがある! イッツア・エネミー、カモーンっ」
するとステージの両端から、一方は修司の前に最初に現れた妖魔。もう一方は以前、聖チャペル学園で聖龍使いに斬られた怪人が、再び現れたのだ。
「ええ!」「そ、そんな!」「あの妖魔は以前……」
「わ、私達が倒したはずの……」うさぎ「な、なんでまた……」
「あ、あの怪人は確かに聖龍使いに斬り倒されたはず……」
驚き戸惑うレイに美奈子にまことに亜美にうさぎ、そしてハニー。
そして皆が注目する中、妖魔と怪人は同時に修司へと襲いかかった。
「あっ、危ーーい!」「ま、また切り付けられるわ!」
「ああっ…間に合わない……!」
まこととレイが絶叫する中、ハニーも修司の危機を察するも一瞬の出来事で達観するしかできなかった。
その場にいた全員が修司の危機を感じた瞬間、修司は隠し持っていた赤い面を手に取った。
「お、おや……あのお面は」「……少なくとも天狗の面じゃないね」
トシとソウシは修司が取り出した赤い面を見て呟き合う。
「ああ!! あのお面……!」「そ、そうだ。間違いない!」
「お、おい……あの赤い面」「ああ、聖龍使いが付けてた面に間違いない!」
「ど、どうして市長さんが…」
赤い鬼の面を見て気付き出す星夜にデューイ、小狼にケルベロス、そして不思議がるハニー。
次の瞬間、修司は赤い面を自分の顔に装着してから唱えた。
「……武装!」
修司の体が光ったと思いきや、いきなり閃光が皆の目に入り、そして何かが納まったような金属音が聞こえると同時に光が収まった。
そして皆の目の前には、刀を納めつつある聖龍使いが立っているのが飛び込んできた。
「えっ?」「な、なんやて……!?」
「そ、そんな……」「し、市長さん……?」
小狼にケルベロス、苺鈴に知世が愕然とする。
そして刀を鞘に納める寸前、聖龍使いが一言告げた。
「……斬り捨て、御免!」
聖龍使いが刀を鞘におさめた瞬間、妖魔と怪人は一刀両断になり、そして消滅。
「えっ、ええ!!」「ま、まさか……し、市長さんが?」
「あ、あの時俺たちを……りりかを救ってくれた聖龍使いだったのか!?」
レイにまこと、星夜は目を丸くして驚く。
「ク、クロウ・カードの動きを封じて、更に協力してくれると言う市長さん本人が、聖龍使い!」
「び、びっくりですわ~」「ほ、ほええ……」
小狼も知世もさくらも驚いて、茫然と立ち尽くす。
「ト、トシ見たか今の!?」
「あ、ああ見たっ、見ましたとも! え、英雄が目の前に……!」
「あ、貴方が……聖龍使いだったんですね」
驚き合うソウシにトシ、そして修司が聖龍使いだと知って愕然とするハニー。
驚く一同に修司、いや、聖龍使いは更に続けて語り出す。
「ふっはっはっは……いや~、驚かせてしまってスマンのう皆の集」
『???????』
突然口調が変わったのを前に、呆気に取られる一同を相手に聖龍使いは更に語り続けた。
「ふはは……いや、驚くのは同然じゃ。今まで極々普通の市長としてしか主らの前に姿を公にしてはおらんからのう。しかし、今より我等はお互いの秘密いや、使命を協働していく仲になってゆくのじゃあ!!」
驚いた内の数人、聖夜・苺鈴・トシ・うさぎは一直線にエレベーターに乗り込み、その場を去ろうとした。しかし、エレベーターの入り口前に、目には見えない者が立ち塞がっていた。
「ドンッ あいててて……」
「な、何かが居るぞ! 目には見えない何かが……」
「きゃ、きゃああ」「お、オバケか!? そ、それとも透明人間……」
驚くうさぎ・星夜・苺鈴・トシの四人に、見えない者が答えた。
「そこの少年、透明人間は良いセンだったぜ」
「「「「えっ!?」」」」
目に見えない存在に驚き戸惑う四人の前に立ち塞がっていた存在は身体の透明化を解除して姿を現した。
「きゃ、きゃあああ!!」「う、うわあっ! 今度は怪獣だ!」
変身怪獣を目の当たりにして驚愕する苺鈴にトシ。
「確かに、俺は自分の事を変身怪獣って呼んでもらってはいるけど……」
「くっ、クソッ!」
いきなり姿を現した変身怪獣に星夜は警戒して超能力で攻撃しようと手を前へと突き出した。
「オイオイ待てよっ、星夜君。あの日一緒に戦ったの忘れちまったのかい?」
「あ、あの日……だって?」
「そう!其処の美少年デューイと一緒に加納って二枚目と戦ったじゃねえかよ」
「き、君は……まさか!」
変身怪獣の返事に、星夜もデューイもメタルバードの事を思い出した。
「へへっ、他にも……如月ハニーの姉ちゃん♪アンタの変身後のキューティーハニーの代わりにパンサークローと戦ってあげたじゃないか……まぁ、あの時は相棒の一人舞台ではあったけどな」
「えっ、そ、それじゃアナタは……!」
「それからカードキャプターのお嬢ちゃん達。あん時は相棒の一言に最初驚いたけど、今のオレは相棒と同じ。君達の手助けをしたいと考えている」
「えっ」「そ、それでは……」「お前、もしかして……」
「メ、メタルバードさん!?」
変身怪獣の語りに、苺鈴も知世も小狼そしてさくらは変身怪獣がメタルバードだと察した。
「ご名答だぜ! 木之本桜ちゃん!! メタル・イン!!」
すると皆の目の前で変身怪獣は銀色のボディのヒーロー【メタルバード】に変身。
「メ、メタルバードさん!」
「アナタは!あのとき星夜達を助けてくれた…!」
「あ、貴方があの時のメタルバードだったのね?」
すでに面識のあるさくら達・りりか達・ハニーはすぐに受け入れたのだが、聖龍使いとメタルバードに対しては初面識のセーラー戦士にしんせん組は、ただただ戸惑うばかり。
「うむっ! 此処で話すのも何じゃし、皆でこれより地下の我らが中央基地に向かおうではないか」
『ちゅ、中央基地!?』
聖龍使いの突然の提案に皆がまたも困惑してると、メタルバードが話した。
「ああ、相棒が作り上げた俺達【聖龍隊】のメインフロアになる巨大コンピューターの在る空間さ」
「きょ、巨大コンピューターって……」
「そ、それに聖龍隊って……何の事だ?」
戸惑うレイにデューイに、聖龍使いは話し返す。
「ふぉっふぉっふぉ、知りたければ今ワシが乗っているこの特大エレベーターに乗り込みなされ」
すると聖龍使いはその中央の円形の舞台から飛び降りると、舞台の円形の部分がせり上がりエレベーターの入り口が出て来た。
「こっ、これは!」
隠されてたエレベーターの出入口に亜美が驚く中、皆を誘導するかのごとく聖龍使いが告げた。
「さぁ皆の集! このエレベーターに乗り込むのじゃ! この先にこそ主等の未来があるのじゃ!!」
そして一行は聖龍使いに導かれるまま、地下のフロアへと降りていった。
[chapter:聖龍隊結成]
聖龍使いに言われるがままエレベーターに乗り込んだ一同に沈黙が続いていた。
そして一行は地下のメインフロアに着いた。
扉が開き、皆が其処で見た物は。
まるで洞窟をそのまま改築して建てた様な巨大な地下施設であったのだ。
「う、うわあぁ~」「ス、スゲエ……!」
「こ、こんな施設が街の地下に」「凄いわ……」
「まるで本物の秘密基地の様ね」
目を輝かせるソウシにトシ、驚きを隠せない亜美にまことにハニー達に聖龍使いが述べる。
「うわはははっ、ハニー殿よ。此処は正真正銘の秘密基地でござるよ。此処で我らが戦闘に対する訓練を行ったり、敵に対しての情報をコンピューターで導きだしたり……主等をサポートするための設備は万全なのじゃ!!」
聖龍使いの勝手な発言に、デューイが口を挟んだ。
「おいアンタ。なんで僕等が一緒に戦うと勝手に決め付けるんだよ。僕はコイツ等の事情なんか知らないし知りたくもないよ」
冷たい言動をするデューイにりりかが注意した。
「止めてよデューイ! この人たちだって立派に戦っている人達なのよ。私達の様に誰かのために努力し続ける人たちなんだから、そんなこと言っちゃいけないわ!」
りりかの心の籠った一言に、みんなも安堵する。
「ま、まぁ……私たち知り合ったばかりなんだし、これから徐々に知っていけばいいのよ」
「そうですわ、時間をかければ誰だって仲良くなれる筈ですわ」
唖然とするまことに知世が笑顔で説く。
「ふ~ん、そんなもんかね?」
「こらっ、トシ。可憐なお嬢さんが言う事が信用できないのか!」
「な、なんだ……この二人は?」
「ああ……気にしなくても良いわ。いつもこんな感じなの……」
トシにソウシが食って掛かると、それを見た星夜が唖然とする中イサミが呆れながら述べた。そんなイサミ達を見て、美奈子が思わず呟く。
「ふっふ……まるでうさぎちゃんとレイちゃんみたいね」
「ちょっと美奈子~」「それってどういう意味~」
美奈子の発言に、レイとうさぎが睨み付ける。
「ちょっと二人とも落ち着いて……」「……や、喧しい……」
そんな三人を前に亜美が呆れる中、小狼は喧しい彼女達だなとやや苛立つ。
「何だか騒がしくなって来たわね……こう言うのもキライじゃないけど」
「ははっ、何だか笑っちゃう~」
苺鈴が苦笑する側で、さくらは思わず笑顔を浮かべる。
「ハハハっ、あんさん等のグループは実に賑やかやなぁ」
「ううう……」「いつも困り果てているんだけどね……」
ケルベロスやルナにアルテミスが呆れる中、聖龍使いも面を被ったまま笑い飛ばす。
「ふはははっ、いや~笑いが止まりませんな~」
「はははっ……な、何だか私まで釣られて笑っちゃう……ははっ」
「おっ、そうだぜお嬢ちゃん!その笑顔こそ最高の美少女の魅力ってやつだよ! この前出会ったみたいな辛そうな顔は、男としてもう見たくないぜ。やっぱり女の子は笑顔こそ最高のメイク・アップだ!」
つられて笑うりりかにメタルバードも笑顔で語る。
「あらっ、貴方。意外と良い事言うじゃないのよ」
「うんっ、笑顔が一番! それが大事よ」
メタルバードの格言に美奈子もイサミも賛同する。
「ふははははっ。そうじゃ、まずは自分自身が笑っていなければ他人を笑顔にする事などできやせん! みんなで悩みを打ち明け合ったり些細な事でお喋りして、薄暗い気分を払わなければ弱き者を護るヒーローではいられんわい!」
「あ、あの~」「ちょっと……」「うむ、何じゃハニー殿、レイ殿」
ハニーとレイからの問い掛けに聖龍使いが返事すると、レイが聖龍使いに訊ねた。
「え~と……せ、聖龍使いさんは本当は市長の小田原修司でありましたよね?」
「うむ、その通り。この街の市長【小田原修司】が拙者の表の顔でござる。主等が普段、普通の学生や一般人であるように、ワシも事件などがない時はごく普通の市長なのじゃよ」
レイに続いてハニーも聖龍使いに問うた。
「そ、それにしては……何だか聖龍使いの時と小田原修司の時の喋り方が尋常じゃない程違うんですが……」
「……ふははは。なるほどな、確かにそうじゃのう。しかし、それはあくまで聖龍使いの時の自分と市長としての自分を自身の中で変換させているからこそ、喋り方にも違いがあるのかもしれんし……それに、ウンショ」
そう告げると聖龍使いは顔に付けていた面を外し、小田原修司の素顔を晒した。
「ふぅ~、それに何かこの面を付けていると性格が代わっちゃうような気がしてねぇ。はっは……」
元の小田原修司の口調に戻った現状に、全員開いた口が閉まらなかった。
「はははっ、相変わらず修司様は面白いですねえ」
その時、巨大コンピューターの画面前にあるイスから声がした。
「えっ?」「だ、誰なの?」
レイとハニーが驚くと、椅子は皆の方へと向き直り、顔を見せたのは何と、先ほどから自分達と行動を共にしていたウッズだった。
「えっ、ウ、ウッズさん!?」
「こ、この人さっき俺たちと一緒にいた……!」
「俺なら最初っからアンタ等と一緒にいたぜ」
ハニーと小狼達が戸惑っていると、今度はエレベーター側から声がして皆が振り向き、其処にもウッズが立っていた。
「えっ、ええ!」「ふ、二人も居るよ!」
「そ、そんな……以前学園で見かけた時は一人だったのに……」
二人のウッズを目撃して一驚するイサミにさくらにハニー達。そんな驚くみんなに修司が説明した。
「はははっ、驚いたか諸君! 俺たちと一緒にずっと上のフロアから付いて来たのがウェルズ。そして今、目の前でコンピューターの真ん前に座っているのがウッズで俺の秘書だ。二人は双子の兄弟なんだよ」
『ふ、双子!?』
修司の説明に全員が驚いていると、メタルバードが説いた。
「はは、ちなみにウッズが兄。ウェルズが弟だ。この二人も俺達聖龍隊の一員だから、みんな仲良くな」
するとこのメタルバードの話を聞いてた亜美が、修司とメタルバードに訊ねる。
「あ、あの……その聖龍隊って……」
「ふっふ、良くぞ聞いてくれたな水野亜美。IQ300の知能指数を持つ天才少女よ」
「えっ、な、なんで私の事を……」
「ふっふっふ、他の奴らもちゃんと素性は調べているぜ。その証拠にちゃんと市長からの招待状が家に届いているだろ?」
「そ、そう言えば……」「私の家にも……」
修司の語りに驚く小狼と知世。
そして修司は己の目的を皆に主張した。
「ふっふ、俺がみんなを此処に集めた理由。それはただ一つ! みんなの力で街を護れる英雄集団、ヒーローチームを創り上げることだ!!」
『ヒ、ヒーローチーム!?』
招待された全員が驚愕する中、修司は唱え始めた。
「そう! 確かに俺たちは戦う相手も違えば使える能力、できる範囲は定められてしまう!! しかしっ、俺たちの様な英雄が一致団結すれば可能性は更に増大する!! 俺らが手に手を取り合い、ダークキングダムやダークジョーカーのような異形の輩共はもちろん、パンサークローや黒天狗党のような犯罪組織も壊滅できるはずだ!! 大丈夫! 俺が市長としての全権限を駆使してお前達のバックサポートを行いつつ、共に敵と立ち向かおうではないか!! 頼むっ、俺にもアンタ達の力になるための協力をさせてくれーー!!」
修司は咆哮の如き主張を唱え、招待された皆に向かって頼み込むと、メタルバードやウッズにウェルズ達も招待客たちに嘆願する。
「ふ~……オレからも頼むよ。コイツは街の市長になると決めた時からアンタ等のような英雄の力になってやりたいと願っていたんだよ。無論、オレからも出来うる限りの協力はしていくから頼むよ」
「私からもお願いします。修司様はただ、困っている人を救っている貴方達を更に援助していきたいと思いつめていたんです。私も貴方達のお力になるよう、全力を掛けてサポートしていきます」
「俺は主に、この地下施設の管理などをする。アンタ達にはいろんな事情があるだろうが、個々の力で敵と対立するよりも相手より有利になれるし、何より早く敵が片付けられれば一般の市民にも被害が少なくて済むと思うんだがね」
メタルバード・ウッズ・ウエルズ・そして懇願する修司に対して、英雄たちは思う所はあったものの。
「……ふぅ~、解ったわよ市長さん」「だから頭を上げてください」
「……へっ?」
一呼吸入れたレイに亜美が、頭を下げる修司に声を掛けると、さくら達も修司に応えた。
「力を貸してくれるって言うなら、喜んでお願いします!」
「まぁ、既に実力は見ているからな。断る理由は無い」
「小狼が良いなら、私も良いわよっ」
さくらに小狼、そして小狼に同調する苺鈴。
「まぁ、市長さんの協力があれば今後何かの役には立つかもしれないし、それに助っ人は多いに越した事は無いな…」
「お、おい……良いのか? 一般の人間まで巻き込んで」
「あらっ、市長さんは一般の人じゃなくもう立派な英雄よ。この前だって必死に助けてくれたんだし」
星夜もデューイも渋々了承する中、りりかも笑顔で賛同した。
「よ、よしっ。市長さんの力も貸してもらえれば黒天狗党の野望も阻止できるかもしれないし、ぱ、パパにもまた会えるかもしれない!」
「良かったなイサミ」「まっ、多少の力添えにはなるだろうね」
「修司お兄ちゃんも僕らと同じヒーローだねっ」
イサミもトシもソウシもケイも、聖龍隊への参入を同意する。
「あーーあ……何か変なキャラの市長さんに目を付けられちゃったわね」
「ふふっ、まあ何とかなるでしょ」
「うわーーい、市長さんが私達の味方になってくれた~」
既に此処までの状況で疲れ切る皆顔にまことが微笑む中、うさぎは大喜びする。
「はっは。お互い、これからいろいろと大変やなぁ。なにせこんな大所帯のグループで一緒になって度等を組もうってんだからなぁ」
「あ~あ、問題が減ったのか増えたのか……」
「ま、まぁ……市長さんも協力してくれるなら何かと都合が良いんじゃないかい、ルナ」
ケルベロスもルナもアルテミスも、この状況を受け入れるしかなかった。
「ふふっ、変わった市長さんだ事。あのアッコちゃんも気にしちゃう訳だ。それにしても、世の中結構ヒーローっているものなのね」
ハニーは修司を見て、アッコがなぜ修司に夢中なのかを察している様子。
「あ、ありがとう、ありがとう! みんな! そしてこれから宜しくな!!」
修司は心のままの気持ちをみんなに打ち明けて、英雄達と共に戦う運命を切り開いた。
しかし、英雄と共に闘う事で英雄達に立ちはだかる過酷な運命、そしてこの集いを作ってしまう事で二次元人である彼等の運命を大きく変えてしまう事に、修司はまだ気づいていない。