【聖龍伝説】始まる伝説   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 今回はクロスオーバーしまくりで、『ひみつのアッコちゃん』から怪盗ふくみみと『飛べ!イサミ』からクモ男が登場。更にミスティーハニーも登場します。
※怪盗ふくみみはアニメ第3期のアッコちゃんに登場します。作者の偏見で、例の黒スーツの青年と私立探偵の青年は最初、ちょっとした事で痴話喧嘩になります。


アニメタウンの英雄達 怪盗達と交差する姉妹の想い

[加賀美あつこへの疑心]

 

 例のもう一人のナースエンジェル騒動の翌日。修司はいつもと変わらず学校に通学した。しかし前日、仲間達から加賀美あつこに対する疑問視が度重なったため修司はどうアッコに接して良いのか不安だった。

「……あ~あ。昨日は皆が散々アッコに対してウルサクしたから、気になってあんまり眠れなかったよ…」

 そして修司が教室に入ると、アッコがいつもと変わらず挨拶してきた。

「あっ、修司。おっはよう~」「ああ、おはよう」

 修司はアッコの顔を見て、昨日みんなが言っていた事が本当なのか思ってしまう。

(う~ん、みんなが言うようにアッコにも何かしらの能力があるのかねぇ。とても、そんな風には見えねえんだがなぁ……)

「……ん? どうしたの修司。私の顔ジロジロ見て。今日も私がカワイイからってそんなに見つめないでよ♡」

「……アッコ。前にも言ったと思うけど、自分の顔鏡で良く見てみろよ」

「もうっ~、修司ったら! プンっ」

「……カワイクない奴だなぁ(やっぱり、みんなの勘違いだろうな。こんな気の良い奴に秘密とかある訳ねえだろう……)」

 

 

その日の休み時間。修司は念のため、アッコに付いて色々とモコや大将達に聞いてみる事に。

 

「なぁ、モコ、大将」

「あ? 何だ修司」「うん? な~に修司、珍しく声掛けて来て」

「い、いやなぁ。ちょ、ちょっと……アッコに付いて聞きたい事があるんだけど」

「へ? アッコに付いてか?」「あ、ああ……」

「な~にいきなり。アッコがどうかしたの?」

「い、いやな。あ、アッコが何か隠し事してないか気になっちゃってな」

「もう~修司ったらイヤねぇ。アッコの事で何疑っているか知らないけど、少しは自分の彼女の事信用しようとは思わない訳?」

「……だから。彼女とかじゃねえし。そ、それよりも。な、何かアッコの周りで起こっていないか?」

「え、な、何が起こっているって言うのよ」

「い、いや。ぐ、具体的な事は言えねえけどよ……」

 修司が困惑する中、大将が自信満々に話し出す。

「ははっ。アッコの事だったら俺の方が詳しいぜ。生年月日は、昭和62年9月6日の乙女座。血液型はO型で……」

「大将、それは単なる個人情報でしょ。逆に大将が詳しい方が怪しいわよ」

「なっ、何だと!」

「いやいや大将。そんな事は言わなくても俺知ってるよ。以前アッコ本人から聞いているしな」

「えっ、ええ~! う、うっそ。お、俺なんか自力で調べ上げたんだぜ」

「……大将。それじゃ完全にストーキングよ」

「えっ? ストッキング?」

「ストーキング! 要するに単なるストーカーって事よっ」

「もっと簡単に言えば、犯罪者要員って事だよ」

「ガッガ~ン! そ、そんな……」

「修司の言う通りよ。女の子の事付き纏うなんて普通なら警察沙汰よ」

「そっ、そんな~」「やれやれ」「あ~あ……」

 落ち込む大将を見て、ゴマとギョロも呆れてしまう。

「はぁ。……ところでモコ。さっきの話なんだが、俺がこの町に来る前からアッコに何か変わった事は無いか」

「い、いや。そうねぇ……あっ。そう言えば、ちょっと不思議かなって思う事はあるわよね」

「うん? 不思議?」

「う、うん……突然私たちの目の前にバニーガールやらリボンを付けたお下げ髪のワニが出たりと、結構この付近では変わった事や事件があるのよ」

「!? へ、へぇ…そ、そうなの(な、何なんだよ。ヘンテコな事ばっかり起こっているんだな……。あっ、それともう一つ聞いてみるか)」

 修司は更にモコへと訊ねた。

「な、なぁモコ」「ん?」

「そ、そう言ったちょっと変わった事件だけでなく、例えば最近この付近で英雄が現れたとか無いか?」

「へっ? え、英雄。そうね……」

 考え込むモコに、大将が興奮しながら逆に答えた。

「あっ、英雄だったらこの前俺等の前に現れたぞ」

「えっ?」「な、何っ? ほ、本当か大将!」

 一驚するモコに続いて修司が大将に問い掛けると、大将は自慢するかのように話し出す。

「ああ。この前俺とギョロ・ゴマが河原で中学の不良達に絡まれて居た時よ。な、何とあのセーラーマーキュリーが咄嗟に現れて助けてくれたんだぜ」

「え~! そ、それ本当なの大将?」

 モコが驚いていると、ギョロとゴマも事実だと説き出した。

「ええ、本当ですよ」

「マーキュリーが来てくれなかったら、俺たち不良共に小遣い全部盗られちゃってましたよ」

 修司が再度、大将に問い掛ける。

「そ、それで大将。そのマーキュリーは実際に戦ったのか?」

「えっ。い、いや。マーキュリーが現れた途端、不良達が驚いてよ。慌てて逃げて行っちゃったんだよ」

「そ、そうか……」

 大将の説明に修司が頷いていると、ゴマとギョロが不満を零す。

「それにしても、マーキュリーも不良が逃げた後すぐに行っちゃったからサインも貰えなかったよ」

「ホント。せめてサインぐらい欲しかったよな」

 すると此処で大将がマーキュリーを思い返して目を輝かせる。

「ああ、そうだな。それに、あのマーキュリーって以前ハイキングで会ったお姉さんにそっくりなんだよなぁ」

「大将、目がハートになっているわよ」

 モコが大将に呆れる一方で、ゴマとギョロも呆れながら言う。

「ふぅ~、大将は未だに」

「名前も知らないお姉さんに好意持っているんだよなぁ」

 一方で今までの話を聞いていた修司は考え込んでいた。

(大将が好意持っていて、ハイキングで会ったお姉さん。そしてマーキュリーそっくり……って、やっぱり亜美の事かな。それにしても、何で亜美がこの付近までやって来ているんだ? い、いや待てよ。ひょっとしたら……)

 と、修司が熟考してる中、そこへアッコ本人がやって来た。

「ねぇねぇ。みんなで何を話しているの?」

「あっ、アッコ」「!(ギクッ)」

 モコがアッコに反応する中、修司は内心激しく戸惑っていた。

「それがね。修司がアッコに何か隠し事とか無いかって言ってくるのよ。ホントに失礼しちゃうよね~」

「えっ。わ、私に……」

「そうっ。修司はアッコに何かヒミツが無いか疑っているんだぜ」

「もうっ。アッコの事疑うなんて嫌よね。少しは恋人の言う事信じられない訳なのかしら」

「し、修司……」

 モコや大将の指摘に若干ながらも動揺するアッコに、修司は答える。

「い、いや……。ちょ、ちょっと気になっただけだ。深い意味でモコや大将達に聞いてみた訳じゃない」

 そう言い残すと、修司はその場から立ち去ってしまう。

「あっ、修司……」

「一体何なのかしらね。急にアッコの事で疑うなんて」

「あぁ、全くだ。男なら女の事を信じてやらなぁイケないって母ちゃん言っていたしな」

 モコと大将が修司に不満を述べる一方、アッコは内心戸惑っていた。

(修司……もしかして、私の秘密に気付いちゃったのかな。さ、最近調子に乗って色んなヒロインに変身しちゃっているからなぁ。……それに昨日のナースエンジェルの一件、アレも有るからなぁ)

 アッコは自分が調子に乗って、修司の居ないところでも何気に変身しまくっている事実を回想していた。

(それに……昨日のナースエンジェルに変身して能力使った時の聖龍使いの言動、修司に良く似てた。で、でもまさか……)

 

 昨日会った聖龍使いの言葉遣いが急に、修司そっくりになった事にもアッコは疑心を抱いていた。

 

 

 

 

 

[議題に出された加賀美あつこ]

 

 学校終了後。修司はいつものように地下のメインフロアに降りて、一人考え込んでいた。

「………………………………」

 そんな熟考する修司に変身怪獣が話し掛ける。

「よう~、どうしたんだ修司。一人で考え事してよぅ」

「……ああ、お前か。ちょっとな」

「何だか意味深な顔して思い耽っているみたいだな」

 そんな変身怪獣はアッコについて語り出す。

「それよりも修司。例の加賀美あつこの事だけどよ」

「……何だ」

「……やっぱりあの女には何か有るよ。調べてみて色々と解っちまったよ」

「……そうか」「や、やけに反応薄いな……」

 考え込む修司の険しい表情からの反応の薄さに変身怪獣が戸惑う中、変身怪獣は更に述べる。

「ま、まぁ。この後みんなに集まってもらって、そこで調査結果を報告するよ……」

「……ああ、解った」

 

 そしてメインフロアに聖龍隊一同が集結。

 

「……よし、全員集まったな」

「ええ。私達セーラー戦士も全員集結してるわ」

 変身怪獣にレイが答えていると、小狼に続き苺鈴と知世も返答する。

「俺たちも揃っているぞ」「私も居るわ♪」「私もで~す♡」

「はは……と、知世ちゃんも苺鈴ちゃんも。昨日急だったから現場に行けなかった事後悔してるみたい……」

 さくらが茫然としてると。星夜とりりかとデューイが物申す。

「まったく。昨日は散々だったって言うのに、他人事だと思って」

「ま、まぁ星夜。もう終わった事だし、良いじゃない」

「良くないさっ。昨日僕等の目の前に現れたナースエンジェルの事忘れたのかい!?」

 デューイの指摘に。イサミとトシとソウシが宥める。

「ま、まぁ。それはそれで。みんな無事だったんだし良かったじゃないですか」

「そうそう。あの加納ってムカつく野郎には逃げられちまったけどな」

「まぁ。もう一人のナースエンジェルには驚かされましたけど」

 するとルナとアルテミスが帰宅後にうさぎ達から聞いた話に驚いていた。

「私達も昨日、家でうさぎ達から聞いたわ。りりかちゃんの目の前にナースエンジェルが現れたのよね」

「確か以前、大江戸町でもイサミちゃん達がセーラームーンを目撃しているよね。昨日の件と同じ、もう一人の英雄が別の場所に出て来ているなんて…」

 すると此処で変身怪獣が調査報告を皆に語り出す。

「ああ。それと、俺が調査してみると他にも数件。俺たちが関与していない場所や事件で、此処に居る仲間つまり英雄が出現しているという目撃談が出て来ているんだよ」

「えっ、ええ!」「そ、それ確かなの変身怪獣」

 一驚するまことに亜美に、変身怪獣は断言する。

「ああ、間違いない」

 すると此処で修司が亜美に問い掛けた。

「実を言うとよ。俺も今日学校で聞いたんだが……水野亜美。お前つい最近、この近辺の河原で不良相手に変身した事は無いか」

「えっ? い、いいえ。私がこの辺まで来ていると言えば、この家。修司君の家であるこの基地以外行ってはいないわ。そ、それに変身だってしないわよ」

「そ、そうか。いやな、俺のクラスメイトが不良に絡まれている時にお前が、いやマーキュリーが来て助けてくれたって言うからよ。そんな事一っ言も聞いていないからな。本当かなと思ってよ」

 疑念に満ちている修司に続き、変身怪獣が報告する。

「……なるほど。実を言うと英雄が目撃された場所と付近を詳しく調べてみると、俺等が携わった事件等を除いた場所でも英雄が目撃されている。それも……この近辺に集中しているぜ」

 報告を聞いたレイにルナにアルテミス、そしてケルベロスも考え込む。

「ええっ? そ、それってつまり。私達にそっくりの英雄がこのアニメタウンに居るって訳なの?」

「う~ん信じられないわね」

「あぁ。見た目がそっくりなら単なる変装かもしれないけど……」

「昨日のナースエンジェルみたく能力まで瓜二つだと、こりゃあ放っておく訳にはイカンしなぁ」

 そんな皆が熟考する中、デューイが修司に問い質す。

「そう言えば修司。君はちゃんと加賀美あつこに付いて学校の同級生から何か聞けたのかい?」

「ま、まぁ。聞いたところによると、これは俺がこの町に来る前の出来事らしいんだけど、何だかアッコ達の周りでは奇妙な事が起こっているらしいんだよ」

「き、奇妙な事?」「そ、それってどう言った出来事な訳?」

 小狼と美奈子が訊ねると、修司は不思議そうな面構えで話した。

「い……いや。な、何か本当にヘンチクリンな事ばっかりなんだけどよ。以前からこの近所ではバニーガールやらお下げ髪のワニが出没したりと、色々と変な事が起こっているみたいなんだよ」

「お、お下げ髪の……ワニ?」「ば、バニーガールって……」

「な、何だか変なものばっかり出るんだなぁ……」

「あ、ああ。まさか俺が来る前にそんな事ばっかり起こっていたなんてな……」

 修司の説明にレイもイサミも星夜アも唖然とする中、修司にデューイが再度訊ねる。

「それで修司。彼女はそう云った時、何処に居るんだ?」

「え? あ、アッコの事か。い、いや其処まで聞いてはいないから良くは解らねえ」

 この修司の返答にケルベロスが指摘する。

「ちょっと修司はん。一番重要な要点聞いてこなきゃあきまへんで」

「け、ケロちゃん。どちらにしろアッコさんが関わっているかどうか解らないのに、疑ったら悪いわよ」

「解らないからこそ、ちゃんと調べなきゃいけないんだろ」

 ケルベロスに指摘するさくらだが、そんな彼女に小狼が指摘する。

 すると此処で再び変身怪獣が報告する。

「それならオレが調べたよ。どうも加賀美あつこの周りでは、そういった類が出没しているみたいなんだよ」

「そ、そうなのか?」「その時アッコちゃんはどうしている訳、変身怪獣」

 戸惑う修司に反して、質問するルナに変身怪獣は答える。

「うん。何故かその時に限って加賀美あつこは周りの人間達の側には居ないんだよ。と言うより何か変なものが現れている時だけ姿が見えなくなっちまっているみたいでよ~」

「なるほど。奇妙なものが出てきた時だけ、彼女は姿を晦ましている居るってことかい」

「そっか~。なんだか私達みたいだね。敵が現れた時には変身して、その間私たちは居ないって感じでさぁ」

「もうっ、うさぎったら」

 納得するアルテミスに対して、自分達の実情と重ね合わせるうさぎにレイが呆れる中、まことが頭を巡らせる。

「いや待って。確かにうさぎちゃんの言い分には少し解る気がする」

「ほえっ? そ、それっていったいどういう事」

 さくらがまことに訊ねると、同じく理解した苺鈴が答えた。

「よーーするに、あの加賀美あつこもみんなと同様、何かに変身できるかもしれないってことよ」

「う~~ん……アッコがねぇ」

 苺鈴たちからの指摘に修司は腕を組み、苦虫を噛んだような渋い顔つきで、深く考え込んでしまう。

「あっ。し、修司君」「そ、そんなに考え込む事ないわよ」

「そっ、そうですよ。まだアッコさんに秘密が有るとは決まってないんですし、そんな悩む事ないですよ」

 まことに亜美、さくらが修司を気に掛けるも、其処にりりかが皆に訊ねる。

「ね、ねぇ。さっきから加賀美アッコさんの事で、みんな夢中になっているとは思うんだけど……」

「うん? 何だりりか」

 星夜が訊き返すと、りりかが皆に問い掛ける。

「こ、此処にハニーさんが居ないの、みんな気付いてる?」

「え?」「あっ、そう言えば」「今日は見当たりませんね」

 りりかの指摘にレイも美奈子もイサミも気付くと、変身怪獣が訳を語った。

「ああ。如月ハニーなら、今日は用事があるから来れないって、さっき電話が有ったぞ。どうやらまたミハル教師に目ぇ付けられて学園から出られないみたいだぜ」

「あっ、そう言えばハニーさん……」

「いっつもミハルって先生に厳しくされているんだっけね」

 変身怪獣の話を聞いて、亜美とうさぎが苦笑する。

 

 と、その時。基地内に警報が鳴り響いた。

 

 警報 警報 アニメタウン中央地区美術館に強盗事件発生 繰り返す アニメタウン中央地区に……

 

「な、何! 中央地区ってスグ近場じゃねえか」

「よしっ、聖龍隊。スグに現場に向かうぞ。支度を済ませろ!」

『了解!!』

 変身怪獣が反応する中、修司は聖龍隊の面々に出動準備するよう言い渡す。

 

 

 

 

 

[二人の怪盗]

 

 此処は警報アラームが反応した美術館内 

「は、ハァハァ。ま、待て……か、怪盗ふくみみ!」

「に、逃げるんじゃない!」

「ふはははっ。待てと言われて待つ怪盗が居ると思うのかね。では、さらばだ~!」

「あっ、待て!」「くっ、くそ~」

 美術館から高価な美術品を盗み出した『怪盗ふくみみ』は警備員達を撒き、そのまま市内の公園に逃げ込む。

「はっ。ハァハァ……よぅし、此処まで逃げてくればもう大丈夫だろう」

 ふくみみは、警備員から無事に逃げられたと思い、公園内で盗んだ品を物色した。

「グシシっ。今日も大猟大猟♪」

 怪盗ふくみみが美術品に見惚れている、その時。

「待たれいっ。怪盗ふくみみ!」「あぁん? 誰だ?」

 怪盗ふくみみが振り返ると、其処には大勢の英雄達が並列していた。

「我等、聖龍隊が居る限り、主の思惑通りにはさせんぞ!」

 ふくみみの目の前に、聖龍隊が勢揃いしていた。

「げっ! せ、聖龍隊!」

 聖龍隊を前に動揺する怪盗ふくみみ。

「ヤイヤイふくみみ。ふざけた名前してるくせに」

「笑えないわね。強盗だなんて」

「大人しく、盗んだものを返しなさい!」

「そして俺等と一緒に来い!」

「あぁ。ちゃんと警察に連れて行ってやるからよ」

「大人しくしてくれれば、怪我は負わせませんから」

「お巡りさんの所に行きましょう……ね!」

「ひっ、ひぃぃ……」「フッフッフ。では、大人しくしてもらおうか」

 メタルバード、マーズ、マーキュリー、トシ、星夜、ナースエンジェル、セーラームーンに詰め寄られ、困惑する怪盗ふくみみに聖龍使いが物申す。

 

 そうして聖龍使いがふくみみに近寄ろうとしたその時。

「フハハハッ。怪盗ふくみみ! お前が盗んだ品、大人しく渡してもらおうか!」

「えっ?」「な、何奴!」「うっ?」『えぇ?』

 怪盗ふくみみも、聖龍使いもメタルバードも他の聖龍隊も声の方へと振り返ると、其処には謎の怪人が居た。

「フハハッ。私の名はクモ男。怪盗ふくみみ、お前が盗んだ品は、今晩私が盗む予定の品だったのだ! お前の様な三流のコソ泥が私の様な一流の怪盗から獲物を横取るとはけしからん! 大人しく美術品を渡したまえ!」

「えっ、えぇ~!」

「な、何者なのじゃ。あのクモの仮面を付けた大男は?」

「あっ。あの人……!」

 一驚する怪盗ふくみみに聖龍使いに続き、イサミがクモ男に反応する。

「えっ? イサミちゃん、あの人知っているの?」

 ジュピターが訊くと、トシとソウシが明かした。

「ま、間違いない。あの男、以前おれ達と戦った事のある『怪盗クモ男』だ!」

「な、なんで大江戸町で暗躍しているクモ男が中央地区のこの地域まで来ているんだ?」

 そんなトシとソウシにヴィーナスと聖龍使いが言い放つ。

「そ、そんな事より。二人も怪盗が目の前に現れたのよ。な、何とかしなきゃ!」

「ふむ。その通りじゃ。クモ男! ワシ等の目の前で堂々と悪事を働こうとは、不届きなり!」

 しかし聖龍使いに告げられたクモ男は高らかに笑うと宣言した

「フハハハ。いかに相手が聖龍隊であっても、お前達にこれだけの数の相手をする事はできるのか!」

 クモ男が叫び終わると、聖龍隊の周りを囲むように大勢のカラス天狗達が出現した。

「な、何~!」「えぇ!?」「こ、これって……」

「そ、そんな! カラス天狗がこんなに……」

「お、おい。こ、こいつ等は一体……?」

「こ、こいつ等が例の黒天狗党の連中だよっ」

「な、なんでクモ男がカラス天狗達を引き連れているんだ?」

 困惑するメタルバード、マーズ、ナースエンジェルに一驚するイサミ。そして戸惑うデューイにトシとソウシが説明していると、しんせん組とは顔馴染の女性も現れる。

「ホ~ホホホ。久しぶりじゃなぁしんせん組。今日こそはお前達をギタギタにしてあげるわ」

「か、カラス天狗7号!」

 カラス天狗7号の出現に戸惑うイサミ達に、7号は高らかに宣言する。

「お前達を今度こそ倒さなければ、大天狗様に今までの失態の責めを受けられるからな」

「な、なんでお前達がクモ男と一緒に居る訳なんだよ!?」

 7号にトシが問い詰めると、クモ男が高らかに笑いながら答えた。

「フッハッハッハ。実を言うとな、私と黒天狗党は密かに協力関係に合ったのだよ。今回は距離の離れた地区だった上に、君たち聖龍隊を完膚なきまでに叩こうと言う事で、態々助っ人に来てくれたのだ」

「ま、マズイわね。このままじゃ……」

「え、ええ。いくら一般の人でも……」

「こ、こんな大所帯の人数。相手するのは正直キツイわよ」

「クッ。単体じゃ勝ち目がないから数でオレ等と相手をする気か……!」

「なるほどな。質より数で攻めてくる訳か」

 数で攻めてくるという相手の戦法に戸惑うマーズにマーキュリー、ナースエンジェルにメタルバードと聖龍使い達にクモ男が言い放つ。

「フハハハッ。どうとでも言え! これ以上お前達聖龍隊に我々の野望を邪魔させる訳にはいかないのだっ」

「そ~れっ。お前達遣ってお終い!」『オオォー!!』

 クモ男に続き、7号の指示で一斉に聖龍隊へと襲い掛かる黒天狗党の面々。

「うわっ。き、来ちゃったよ?」「みんな気を付けろ!」

 驚くさくらに対し、トシが皆に忠告する。

「い、いくら悪い人達とは言え、怪我させるのも可哀そうだし……」

「ふふっ、相変わらず優しいんだね。ナースエンジェルは」

 ナースエンジェルの優しさにソウシは気障っぽくウィンクしてみせると、そんなソウシに星夜と小狼が言う。

「おいソウシっ。今は色目使ってる場合じゃないだろ!」

「そ、そうだ。な、何とかこいつ等をどうにかしないと……!」

「で、でもこんな大勢どうしたら……」

「か、軽く見ても百人はいるわよ……」

 脅え切るセーラームーンにヴィーナス達に、聖龍使いが言い渡す。

「ひ、怯むな! 我等は聖龍隊。史上最強の英雄集団であるっ、皆の者かかれい!」

 こうして聖龍隊と黒天狗党の乱戦が始まってしまう中、怪盗ふくみみは一人焦燥していた。

「わ、わわわ……ど、どうしよう。あの有名な聖龍隊に黒天狗党がめ、目の前で戦っちゃっているよ。い、今の内に……」

 二つの勢力が乱闘し始めた隙を見て、ふくみみはその場から逃げだそうとした。その時。

「オイ、お前何処に行こうとしている……」「へっ?」

 逃げ出そうとする怪盗ふくみみを謎の青年達が呼び止める。

「レディー達が戦っているのに逃げ出そうとするとは、無礼な輩だ」

「おっ、お前達は……い、いったい……」

 すると二人の内の一人の青年に怪盗ふくみみは殴られ、気絶させられてしまう。

「ほ、ほえぇ……」

 目を回して気絶する怪盗ふくみみを前に、二人の青年は話し合った。

「全く。今日はパンサークローの情報掴むために、わざわざ中央地区までやって来たっていうのに。何だかトンでもない事件に出くわしちまったぜ」

「フッ。まぁ良いじゃないか。可憐な乙女達を助けるためだ。君も少しは協力してくれたまえ」

「……お前。少しキザったいな。変な仮面も付けているし」

「……うるさい」

 

 

 

 

[颯爽と登場した、二人の……]

 

「オリャッ」「でぇやぁっ」「ハアァッ!」

 一方、メタルバードとマーズは格闘技で戦う中、イサミは龍の剣で黒天狗党と交戦していた。

「スリープ(THE SLEEP)「眠」!」

「ストーム(THE STORM)「嵐」!」

 さくらと小狼も各々のカードや札の力で黒天狗党を黙らせていく。

「くっ、キリがないよ」「あ、あぁ。数が多すぎる……!」

「ムムっ。こ、このままでは……」

 しかし圧倒的不利な戦況にデューイもトシも聖龍使いも追い詰められていた。

「わっはっは。どうだ、いくら名高き聖龍隊でもこれほどの数の黒天狗党に太刀打ちできる訳ないだろう」

「ふふっ。これで今までの失態も今度こそ帳消しになる筈だわ。さぁ~者共、一気に片を付けなさい!」

 クモ男に続いて、黒天狗党の戦闘員に指示を飛ばす7号の指令で、黒天狗党の戦闘員は一斉に聖龍隊へと襲い掛かった。

「う、うわっ」「キャアア!」「こ、このままじゃ……」

 黒天狗党の一斉攻撃に、星夜もセーラームーンもヴィーナスも焦った。その時。

 突如戦闘員達の足元に一本のバラと拳銃の弾が飛んできた。

「えっ?」「ば、バラ?」

「そ、それに……ピストルの弾も飛んで来なかった?」

 突然の一輪のバラに銃弾に、イサミもジュピターもマーズも戸惑う。

「だ、誰なのじゃ!?」

 聖龍使いが問い掛けると、一人の漆黒のタキシードに身を包んだ男性が現れる。

「ハハハッ。大人数でか弱きレディー達を痛めつけようとは、笑えないね」

「なっ、何だ?」「あぁ。そ、その声は……♡」

 謎の声にメタルバードは戸惑い、セーラームーンは目の色を変える一方、もう一人の銃を携帯してる青年も姿を見せる。

「まったく。パンサークローの手掛り得に来ただけなのに、トンだ揉め事に巻き込まれちまったぜ」

「ムッ。そ、そなたは……!」

 その青年に見覚えのある聖龍使いも反応する。

「た、タキシード仮面様!」「は、早見青児か!」

 目の前に現れたタキシード仮面と早見青児にセーラームーンは歓喜し、聖龍使いは一驚する。

「フフッ。黒天狗党! セーラー戦士達にこれ以上手荒な真似はさせないぞ!」

「ふぅ~。アンタか聖龍使いってのは。あの小田原修司推薦の英雄だって聞いたけどよ」

 聖龍隊を前に、それぞれ思う事を述べるタキシード仮面と早見青児の二人。

「な、何だ。急に現れおって」

「ぐむむ。訳の解らないハナッタレの若造が! 出しゃばるんじゃない!」

 すると、この7号とクモ男の発言を聞き捨てならないとタキシード仮面と早見青児が反論する。

「ハナッタレとは……言ってくれるね」「お前等犯罪者共に言われたくないぜ」

「な、なにっ?」「お、おのれ~。者共っ、この二人もやってお終い!」

 苛立つクモ男に7号は、颯爽と現れた二人も襲うよう指示を飛ばす。

聖龍使い「うむっ。早見青児、そしてタキシード仮面。こうなったら主等も協力しておくれ!」

 聖龍使いの依願に、タキシード仮面と早見青児は気前よく頷いた。

「フッ、まぁ良いよ。麗しきセーラー戦士達を護るためなら、仕方がない」

「まぁ、俺も本業は探偵だしな。少しは共同戦前布いてやるか」

 こうしてタキシード仮面と早見青児も参戦する事に。

「やっほ~♪タキシード仮面様が居てくれれば百人力よ~♪」

「セーラームーンったら」

「相変わらず、タキシード仮面の前だと調子に乗っちゃうわね」

 喜々と舞い上がるセーラームーンに、マーズとマーキュリーは呆れてしまう。

「な、何だ。あの変な仮面を付けた男は?」

「彼はタキシード仮面って名乗っていて、時おり私たちの前に姿を現して助けてくれる事が有るのよ」

「まっ、正体は依然として分からないんだけどね」

 デューイの不信感にジュピターとヴィーナスが答える。

「何だかキザっぽい仮面男だなぁ」「ソウシ。お前がそれ言うか……」

 ソウシの発言にトシが思わず呆れて指摘してしまう。

「あっ、アンタが私立探偵の早見青児か。確かパンサークローを追ってるんだったよな」

「ああ。この近くの美術館で強盗事件が発生したって聞いたからな。パンサークローの仕業かと思って来てみたんだけどよ。変な怪盗風情だったから、一応は殴って気絶させて置いたぜ」

 メタルバードが話し掛ける中、早見青児は先ほど怪盗ふくみみを殴り倒して気絶させたことも伝えた。

「お、お願いします。早見さん」

「わ、私達。本当は一般の人は傷つけたく無いんですよ」

 さくらとナースエンジェルの姿も目視した早見青児は険しい面持ちで零した。

「ふっ、小田原修司はこんな小さい女の子にまで戦わせているのかい。少しは良識を考えてほしいね」

「………………」

 小田原修司の思考に良識を疑う早見青児の発言に、聖龍使いは黙り込んでしまうも。

「ちっ、違うんです」

 さくらが早見青児に否定すると、ナースエンジェルとさくらは続け様に早見青児に訴えた。

「し、修司さんは私たちの事を考えて居るからこそ一緒に居させてくれるんです」

「わ、私達はそれぞれ違う理由で加わっているんですが修司さんは、そんな私たちの事を保護するためにも常にみんなと一緒に居させてくれるんですよ」

「……(お、お前等……)」

 ナースエンジェルとさくらの優しい心意気に静観する聖龍使い。

 二人の訴えを聞いた早見青児は、タキシード仮面と共闘する構えを見せる。

「ふ~ん、そうかい。まぁ、あの人は俺にも協力してくれているし文句は言わないけどな」

「はっは。それでは早見青児君。共に参ろうか」

「俺に命令するなよ。ヘンテコ仮面が」

「……き、君ねぇ。少し控え目な態度取っているからって、調子に乗らないでくれるかな……!」

「はぁ? そんなキザったらしい仮面なんか付けて恥ずかしくない訳?」

「き、君……は……!!」

 と、下手すれば口喧嘩に発展しそうな早見青児とタキシード仮面の会話を、メタルバードが制止する。

「っておーい、お二人さん! け、ケンカしてないで早々とこの連中片付けないと、大変だぜっ」

 メタルバードに止められ、タキシード仮面と早見青児は渋々ながら共闘する事に。

「ま、まぁ良いさ。まずはこの連中を片付けないとな」「あ、ああ」

 

 かくして、早見青児にタキシード仮面も加わり戦闘は一気に苛烈な展開に。

 

 

 

 

[様子が可笑しい英雄(ヒロイン)]

 

 早見青児、タキシード仮面が加わり、聖龍隊は何とか百人ものカラス天狗達を倒す事ができた。

「そ、そんなバカな……屈強なカラス天狗達を意図も簡単に、それも全て倒してしまうとは……!」

「き、きぃぃ~~! お、お前等っ。また私に恥を掻かせてくれたな…」

 クモ男も7号も悔しがる中、メタルバードやデューイが二人に物申す。

「けっ、こんなんでオレ等聖龍隊を倒せると思ったのかい」

「全く。数だけで、実力なんてほとんど無いしな」

 一方のセーラームーンは思わずタキシード仮面に抱き着いてしまう。

「わ~い。タキシード仮面様が力を貸してくれたから勝てたよ~♪」

「ははっ、セーラームーン。みんなで力を合わせたからこそ得られた勝利なんだよ」

 そんな和気藹々とセーラームーンと戯れるタキシード仮面を横目に、早見青児が呆れてしまう。

「お前、やっぱりキザだな……恥ずかしいぜ」

「君はねぇ。さっきから何かと失礼な輩だね。少し黙っていてくれないかい?」

「ハァ? お前、ケンカ売ってんのかアァンッ」

 と、思わず喧嘩しそうな二人をマーズとヴィーナスが宥め止める。

「ちょ、ちょっと二人とも」「け、ケンカは止めましょう!」

 すると早見青児にセーラームーンが立腹して言い付ける。

「ねぇアナタ! 早見青児って言ったわよね。さっきからタキシード仮面様の悪口言うのやめてくれる?」

 そんなセーラームーンに早見青児は真剣な顔で答える。

「オイオイお嬢ちゃん。君はこんな悪趣味な男に夢中なのかい? 少しは常識的になろうぜ」

「オイっ。つまりは俺が非常識な男って事かよ」

「ったり前だろ。そんな全身黒のスーツにシルクハット、それにバラを常備しているなんてナルシスト以上のキザ男以外居ねえだろう」

「……お、お前は……!」

 またしても口喧嘩しそうな早見青児とタキシード仮面をナースエンジェルが宥める。

「お、お二人とも。今は目の前のクモ男と7号をどうにかしないと……」

 一方の7号とクモ男は追い詰められて困窮していた。

「く、くっそ~」「う、う~む……」

 そうして聖龍隊がクモ男と7号に狙いを付けた、その時。

「ハニーブーメラン!」「なっ」「な?」

「「何~!?」」

 突然7号とクモ男へブーメラン状の投擲武器が飛来して直撃する。

「えっ?」「い、今のは……」

「へっ?も、もしかして……」

 ジュピターにマーズそしてメタルバードが武器が飛んできた方へと顔を向ける。

「おやっ? 来てくれたのかのう……」イサミ「い、今の技は!」

 聖龍使いもイサミも突然の到着に一驚する。

「き、キューティーハニーか!」

 早見青児が叫ぶ中、キューティーハニーが現場へと駆け付けた。

「愛の戦士キューティーハニー。只今参上!」

 突如目の前に現れたキューティーハニーに、聖龍隊員達は駆け寄る。

「は、ハニーさん!」「き、来てくれたんですねっ」

「え、ええ。ちょっと近くまで来れたから……」

「???」「!?」

 ナースエンジェルとさくらに声を掛けられたキューティーハニーの戸惑う様子を察し、聖龍使いとメタルバードが違和感を覚える。

「キューティーハニー、来れるならちゃんと言ってほしかったよ」

「そうよ。いくらミハル先生に目付けられているからって、連絡ぐらいはしてほしいわ」

「え? ……え、えぇ」

 デューイとヴィーナスからの言葉にも、キューティーハニーは何処か戸惑っている様子。

「は、ハニー、キューティーハニーか!」「えっ」

 そんなキューティーハニーに早見青児が駆け寄ると、ソウシが早見青児に訊ねた。

「あれっ。青児さん、キューティーハニーの事知っているんですか?」

「あ、ああ。前々からパンサークローを追っている傍ら、彼女に何度も助けてもらっているんだ」

 そんな早見青児の発言に、喧嘩腰でタキシード仮面が呟いた。

「フッ。レディーに護ってばかりいるとは……情けない」

「! て、テメエ……」

 一触即発しそうなタキシード仮面と早見青児を前に、トシと小狼が制止する。

「あ~ちょっと二人とも!」

「何かこの二人、ウマが合わないみたいですねぇ」

 聖龍使いもさくらも喧嘩しそうな二人を見て呆然としていた。

「……う、うむ。全くじゃのう」

「け、ケンカはダメですよ~」

 すると此処でキューティーハニーがメタルバードに声を掛ける。

「あ、あの~……」「うん? どうしたハニー」

「い、今はまず。目の前の敵を倒した方が良いんじゃないですか……」

「あっ、ああ。そうだね」「た、確かに……で、でも」

 デューイとマーズもキューティーハニーの意見に賛同するが、何処か様子がおかしい。

「は……はい?」

 キューティーハニーが困惑してると、さくらとジュピターも感じられる違和感を述べる。

「な、何だか今日のハニーさん。少し様子が……」

「う、うん。何だかいつもとは雰囲気違うような……」

「へっ? あ、あ……ま、まぁそれは置いといて、今はあの女の悪人とクモの仮面付けた男の人をやっつけるのが先じゃない」

 キューティーハニーの問い掛けに、マーキュリーも早見青児もキューティーハニーに対する違和感を払拭できなかった。

「え、ええ。それはそうですけど」

「……キューティーハニー。何か、今日はやけに子供っぽい声してるな」

 一方の7号とクモ男の方も、追い詰められた現状に焦りを覚えていた。

「ど、どうしよう……」「く、くそぅ……こ、こうなったら……」

 追い詰められたクモ男は、なんと聖龍隊の眼前でパンツ一丁になり始めた。

「えっ?」「お、おい……」「う、ウソだろ……」

「ま、まさか……また」「え、えっ、えっ……」

 突然のクモ男の行動に、メタルバードも星夜もデューイもイサミもナースエンジェルも驚いた・

「きゃ、キャアアア!!!」

「きゅ、キューティーハニー!?」

「うわっ。う、うさぎみたいに大きな声出すなんて!」

「おお、オイっ、キューティーハニー。き、今日は一体どうしたんだよ! な、何か学園でミハルに言われたのか?」

 クモ男の裸体にキューティーハニーが悲鳴を上げるのを前に、デューイとマーズとメタルバードが激しく動揺する。

「うっはっはっは。どうだこの研ぎ澄まされた肉体美。君たちはこんな私に勝てるというのかい」

 クモ男は自身の肉体美を見せ付けて自慢するも、そんなクモ男に聖龍使いが高笑いして、こう言った。

「ふっ、ふふふっ。クモ男よ。主はその程度の筋肉でこのワシと対等に渡り合えるとでも言うのかのう……」

「へっ? な、なに……」「お、おい……相棒?」

「うっ……ウンショっ」

 クモ男やメタルバード達が注目する中、聖龍使いは突然、徐に右腕の甲冑部分を脱ぎ取り、己の右腕を曝け出す。

「な、何をするつもりだ!?」「お、オイっ。な、何する気だよ……」

 クモ男とメタルバードが問い掛ける中、聖龍使いは雄叫びを上げる。

「ふっふっふっふ。…オオウリャアアア!!」

 雄叫びと共に、聖龍使いは右手の拳を地面に殴り付け、自分の周りを中心に直径10メートルものクレーターを作り出した。

「えっ。……えええぇ~~!!」「う、ウッソ~~!!」

「「ま、マジかよー!!」」

 聖龍使いの剛腕に、クモ男もメタルバードも、星夜とデューイも驚愕する。

『え、えええ~!!』「ほ、ほええ~~!」

「「そ、そんな~!」」

 セーラー戦士達もさくらも、小狼とナースエンジェルも驚愕。

「「あっ、ありえね~~!!」」「い、いやあぁ~!」

 タキシード仮面も早見青児も、そして7号も驚愕してしまう。

「えっ、えええ~~! う、ウッソ~! ありえない~!!」

 いつもと様子が違うキューティーハニーも聖龍使いの剛腕に驚愕。

「ふふっ、クモ男よ。主はこれでもまだ我等と殺り合う気で居るのか……」

「いっ、いや……そ、その……あ、あわわわわ……」

 自身の剛腕を見せ付けて威圧する聖龍使いに対して、クモ男は完全に自信喪失してしまう

「せ、聖龍使いの右腕って、何だか逞しくて良いなぁ……」

「えっ? き、キューティーハニー?」

「き、今日は本当に何かおかしいわよ」

 一方で、聖龍使いの逞しい右腕に見惚れるキューティーハニーの言動に、ジュピターもマーズも違和感を抱く。

「……ねぇ、さくらちゃん。なんかハニーさんホントに様子が変だと思わない?」

「う、うん。ナースエンジェル。私も何だか、今日のハニーさん、いつもとは全然違っていて、変な違和感を感じる……」

 ナースエンジェルとさくらはキューティーハニーへの違和感を覚えていた。

「あ、アレが噂に聞く聖龍使いの実力かぁ。な、何だか凄いなぁ。……それにしても、キューティーハニーって何だか変な女性だな」

「い……いや、あんなのいつものキューティーハニーじゃない……」

 タキシード仮面も早見青児もキューティーハニーの様子がおかしい事態に愕然としていた。

 と、その時。一人の女性が聖龍隊の前に姿を現した。

「キューティーハニー! こんな所に姿を現して居たのか!!」

「えっ。あ、あなたは……」

「ゲッ。こんな時にミスティーハニーまで出てきやがった」

 突如として姿を現すミスティーハニーに、キューティーハニーが戸惑う中。メタルバードが焦り出す。

「きゅ、キューティーハニー気を付けてっ。いくら姉妹だからって気を抜いていたら大変だよ!」

「なっ、何?」

「あ、あのミスティーハニーはキューティーハニーの姉妹なのか!?」

 すると思わずキューティーハニーに忠告してしまうソウシの発言に、タキシード仮面も早見青児も一驚する。

「ちょ、ちょっとソウシ君」

「す、素性明かすのはNGでしょっ」

「あっ。ご、ゴメンナサイ……」「えっ。し、姉妹……」

 マーズとジュピターに注意されて謝るソウシだが、当のキューティーハニーは姉妹だと聞かされても唖然としていた。

「むむむむ。そなた!ミスティーハニーよっ。主は何で其処までキューティーハニーに対して憎しみしか植えつけられて居ないのじゃ!!」

「ウルサイッ。お前らには関係ない! 行くぞっ、キューティーハニー!」

 聖龍使いに問われてもミスティーハニーは憎しみをキューティーハニーにぶつけるだけだった。

「えっ? えっ、えっ……!」

「ま、待って! 姉妹同士で争うなんて止めてください!」

 突然攻撃されて戸惑うキューティーハニーに対して、ナースエンジェルが制止しようとするもミスティーハニーはキューティーハニーに攻撃を続ける。

「問答無用だ! 喰らえッ、キューティーハニー!」

「ええ! ちょ、ちょっとタンマ……」

「ハアアァ!!」「うっ、うわぁ!」

 突然の攻撃に戸惑うキューティーハニーを前にして、メタルバードと聖龍使いは呆然としていた。

「お、おい聖龍使い。今日のキューティーハニー……」

「う、うむ。何だか様子が変じゃのう……」

 

 そしてそのまま、ミスティーハニーはキューティーハニーと戦い始めてしまう。

 

 

 

 

[2人の愛の戦士!?]

 

 一方、此方は聖龍隊・地下施設のメインフロア

 ウッズとウエルズ、そして知世と苺鈴が監視カメラで戦いの一部始終を見ていた。

 

「ふぅ~。今日も派手にやってるねぇ、ヒーローの皆さん♪」

「ふふっ、本当ですね。修司さんも英雄の時の生き生きとした脈動感が逞しいですわ」

「ふっ、あんなの。小狼に比べたらまだまだよ」

 監視カメラで聖龍使いの剛腕を目視して各々話し合うウェルズに知世に苺鈴たち。

「……公園の地面にクレーター作る所の何処がまだまだなんだよ」

「そんな呑気な……修司様もまた町の公共物破壊して~。あ~あ、公園の地面があんなにも凹んじゃって……」

「はっ、ははは……ま、まぁこれも聖龍使いと言えば、らしい闘いっぷりじゃねえのかい?」

 ウェルズとウッズが話し合う中、知世が笑顔で指摘する。

「正確に言えば、修司さんらしい戦いっぷりって事ですよ」

「そっ、そんな。一体誰が業者に頼んで修繕して貰う問い合わせをすると思っているんですか? 私ですよ、私」

 知世の指摘にウッズが涙目で答えると、話題は突然現場に現れたキューティーハニーに移った。

「それにしても、ハニーの奴いきなり現れてくるとは。いったいどうしたんだ。今日はこっちに連絡すら入れてないとは……」

「は、はい。いつもは必ず何かしら連絡くらいは入れてくれるんですけどねぇ。それに、今日のハニーさん。いつもと様子が違いますし……」

「ハニーさん、今日はどうしてたんでしょうね」

「ホントよね~。聖龍隊でも一番の最年長者なのに」

「う~ん。いったい、何が有ったんだ?」

 

 ウェルズとウッズに知世と苺鈴の4人がキューティーハニーの事で会話していると、後ろの方から声が聞こえた。

 

「はぁ~。ウッズさん、ウエルズさん。それに知世ちゃんに苺鈴ちゃんも。遅れてしまって申し訳ありません」

「へっ?」「はっ、ハニー? そ、そんなバカな……」

「あれっ? 何でハニーさんが此処に居るんですか?」

「へ? ま、まさか。今まさに公園で戦っているって言うのに……」

 突然地下の基地にやって来た如月ハニーを目の当たりにして、ウッズもウェルズも知世も苺鈴も混乱する。

「はぁはぁ。ふぅ~、何とかミハル先生や学園のみんなの目盗んで抜け出せて……そ、それでみんなは?」

「あ、あ……あぁ」

「? ど、どうしたの。ウッズさん、ウエルズさん。知世ちゃんに苺鈴ちゃんまで」

 ウッズ達の反応を前に不思議がるハニーを前にして、ウェルズが問い掛ける。

「あ、あ…は、ハニー。お、お前、今ここの基地に来たばっかりなのか……?」

「え? ……は、はい。そうですけど。な、何か」

 ウェルズの質問に答えるハニーに。ウッズが事情を説明する。

「は、ハニーさん。じ、実は今さっきから……あ、あなた皆さんと合流して、せ、戦闘に加わっているんですよ?」

「へ? そ、そんなバカな……」

 ウッズの説明にハニーが戸惑う中、ウェルズがハニーに監視カメラの映像を指差した。

「う、ウソだと思うならこのモニターを見ろよ! お、お前が今まさにミスティーハニーと戦っている真っ最中なんだぞ!」

「えぇ! み、ミスティー……せ、聖羅が今私と戦っているって……」

 ハニーは画面を見て驚いた。其処には確かにミスティーハニーと戦っているキューティーハニーの姿が映っていたからだ。

「えぇ! う、うそ……!」

「う、嘘じゃないわよっ。今まさに戦っているんですよハニーさんは!」

 戸惑うハニーに苺鈴が指摘する。

「なぁ、だから言ったろう。今さっき聖龍隊と合流して、その後すぐに現れたミスティーハニーと戦闘に入ったんだよ!」

「あ……あ……な、何で……」

 ウェルズの説明を聞いて更に混乱するハニーに、ウッズが言った。

「い、今は考えても解りません! 取りあえずハニーさんも現場にお願いします」

「あっ、ああ、そうだ。あいつ等今回スグ近くだって事でトランシーバー持っていくの忘れていやがるんだよ!」

「わ、解りました。スグに私も行きます!」

 ウッズとウェルズに急かされ、ハニーもスグに現場へと急行した。

 仲間である聖龍隊の所に。妹であるミスティーハニーこと葉月聖羅の所に。……そしてもう一人のキューティーハニーの所に。

 

 

 一方、場所は戻って公園では。

「ハアァァ!」「きゃああ!」

 ミスティーハニーの猛攻に、キューティーハニーは逃げ腰で攻撃を避け続けるばかり。

「お、オイ。今日のハニーさん、いつもとは完全に様子が可笑しいぜ」

「あ、ああ。な、何だか別人みたいだなぁ……」

「は、ハニーさん。一体何が合ったって言うの?」

 星夜も小狼もマーズも逃げ腰のキューティーハニーを見て戸惑っていた。

デューイ「な、何だか雰囲気そのものが違う感じが……」

トシ「え、ええ。俺もそう感じます」

 デューイに賛同するトシも、マーキュリーもジュピターも動揺していた。

「ど、どうしたって言うの。キューティーハニーは」

「な、何だか普通じゃない……!」

「う、うわ~。ハニーさんが変だよ~!」

 終いには混乱して泣きじゃくるセーラームーンにタキシード仮面が問い掛けた。

「って、セーラームーン。キューティーハニーって元からあんな感じのダメダメヒロインじゃないのかい?」

 するとこのタキシード仮面の発言に、早見青児が文句を言う。

「オイっお前! 俺の前でキューティーハニーを悪く言うんじゃねえ!」

「おやっ。君は彼女が好きなのかい? あんな屁っ放り腰のヒロインを好きになるなんて、変わっているね」

「て、テメエ! いい加減にしろよキザナルシスト男!!」

「きみ! どうやら私と一戦殺り合いたいみたいだね……」

「う、うわ~! た、タキシード仮面様~。そ、そんなに怒っちゃ折角のイケメンが台無しになっちゃいますよ~!!」

 早見青児と喧嘩しそうなタキシード仮面に、セーラームーンが泣きながら訴える。

「ダッ~~! 一体全体どうしちまったんだよキューティーハニーはよっ!」

 メタルバードは頭を抱え込んでキューティーハニーの変貌っぷりに混乱していたが、聖龍使いの方はキューティーハニーの声色に聞き覚えがある様子。

「……(あ、あの声。何処かで聞いた事が有るような。確実に如月ハニーとは違う声質だし……)」

 一方のキューティーハニーはミスティーハニーとの戦闘の中、密かに思い悩んでいた。

「は、はぁはぁ……(ど、どうしよう。今日も調子に乗って変身しちゃったけど、ま、まさかキューティーハニーにこんな強い姉妹が居たなんて。し、しかも何故か分からないけどキューティーハニーの事恨んでいるみたいだし。い、いったいどうすれば……)」

 と、キューティーハニーとミスティーハニーが闘っている最中、突然ミスティーハニーの動きが止まり苦しみ出しだと思われた次の瞬間。

「きゅ、キューティーハニー……!!」

 なんと突然ミスティーハニーの胸の刻印から、怪人が出て来た。

「なっ、何じゃと!?」「か、怪人が刻印から出てきやがった!」

 刻印から怪人が出てきた現象に一驚する聖龍使いとメタルバード。

ヴィーナス「えっ、ええ!」

マーズ「な、何で刻印なんかから怪人が出てくる訳なのよ!」

 ヴィーナスもマーズも驚く中、ケルベロスが刻印を見て何かに気付いた。

「あっ、ああ! あ、あの刻印……!」

「えっ。ケロちゃんあの刻印が何か解るの?」

 さくらが問うと、デューイもケルベロス同様に察していた。

「あの刻印からは相当な憎悪が感じられる!」「ぞ、憎悪だって?」

 デューイの発言に星夜が焦燥する中、ケルベロスが説明する。

「うう~む。どうやら、あの刻印はミスティーハニーの憎悪から怪人を生みだす事が出来るモンらしいなぁ」

「に、憎しみから怪人が生まれるって……!」

「そ、そんなことあるの!?」

 ケルベロスの説明に、マーキュリーもジュピターも俄かには信じられない心情だった。

「に、憎しみから……」「ハアアァァァ……!」

 キューティーハニーが戸惑っていると、彼女と対峙していたミスティーハニーが白目を向けて意識を失いつつあった。

「ひっ、ひぃぃ!」

「み、ミスティーハニーが何だか白目になって、い、意識が……!」

「あ、ああ。完全に自我を失いかけていやがる……!」

 白目になったミスティーハニーを見て、トシが悲鳴を上げる中、ソウシと小狼が動揺する。

「そ、そんな……み、ミスティーハニー……!」

 キューティーハニーは必死にミスティーハニーに呼び掛けるも、その間にも怪人は聖龍隊へと襲い掛かろうとしていた。

「ウギャアアアア!!」「きゃ、きゃああ!」

 一方で、ミスティーハニーの刻印から出てきた怪人はナースエンジェルたち聖龍隊に襲い掛かってきた。

「くっ、怪人が此方に敵意丸出しで向かって来やがるぜ」

「う、うむ。そ、それではワシ等はあの怪人を倒すとしよう……!」

 メタルバードと聖龍使いが怪人討伐を最優先にする中、デューイが二人に問い掛ける。

「ってオイオイ。まずはあのミスティーハニーをブッ飛ばさなきゃいけないんじゃないのか」

「で、でも。あのミスティーハニーはキューティーハニーの妹さんなのよ。迂闊に手は出せないわ」

 デューイの問い掛けに、イサミが指摘すると早見青児が一驚する。

「えっ。か、彼女はキューティーハニーの妹なのかい!?」

「お、おい……こ、これってちょっとヤバいんじゃないか?」

 早見青児が驚く一方、タキシード仮面は怪人が此方に敵意を向けている現状に焦燥していた。

「と、取りあえず。今はまず怪人から片付けよう! きゅ、キューティーハニー、ミスティーハニーの事は任せたぞ!」

「えっ。え、えぇ。分かったわ……(ま、任せたぞ……って言われても。ど、どうしたら……)」

「ハ、ハアァァ……」

 聖龍使いがキューティーハニーに指示を出す一方、そんな状況下でもミスティーハニーは変わらず自我を失いつつあった。

(あっ、あぁ…み、ミスティーハニーが! ど、どうすれば。な、何だか彼女、憎しみだけでなく凄い悲しみも滲み出ている雰囲気だわ。……悲しみ、あッ! か、悲しみと言えば……)

 何かを思いついたキューティーハニーは、一目散にミスティーハニーの所に駆け寄った。

「ん? えっ。きゅ、キューティーハニー! い、今ミスティーハニーに近づいたら……」

「は、ハニーさん!」「き、危険すぎですよぅ!」

 突然のキューティーハニーの行動に、小狼もナースエンジェルもさくらも戸惑う。

「な、何する気やハニーはんは!?」

「おぉ、オイっ。あ、危ねえぞ!」

「き、キューティーハニー!!」「な、何する気だよ!」

「い、いったい何を考えておるのじゃ!!?」

 ケルベロスも星夜もセーラームーンもメタルバードも聖龍使いも突然のキューティーハニーの行動に愕然とする。

 そんなみんなの制止を聞かず、キューティーハニーは一直線にミスティーハニーに近寄り、そして思いっきり彼女を抱きしめた。

「えっ、え……?」「あ、あれは……!」聖龍使い「!!」

 突然のキューティーハニーの行為にマーズもメタルバードも聖龍使いも愕然とした。

「……えっ」「……ミスティ」

 突然キューティーハニーから優しく抱擁されたミスティーハニーは困惑する。

「き、キューティーハニーがミスティーハニーに…だ、抱きついた?」

「な、何を考えているんだ? あのお嬢さん……」

「……き、キューティーハニー」

 デューイもタキシード仮面も早見青児もこの事態に混乱するばかり。

「……え……え。き、キューティー……ハニー……」

 抱擁されるミスティーハニーも訳が分からず混乱していた。

 するとキューティーハニーはミスティーハニーに優しくも、力強く抱き締めながら、耳元でこう囁いた。

「ミスティー……ゴメン……貴女の苦しみ、憎しみ、そして悲しみ。そんな辛い感情から貴女を救いだす術なんて私は……正直良く分からない。でも、でも……誰よりも貴女を愛してあげる事だけはできるわ。貴女を愛する事しかできない。愛している気持ちを……ただ抱きしめるという行動でしか示せないけど……これだけは分かってほしい。貴女は、決して一人じゃない。この世に……一人ぼっちなんて有る訳、ないんだもの」

「あ……あ……(な、何……こ、この温もりは……)」

「貴女が今までどんな辛い過去を過ごしてきたかは分からないわ。でもね、過去に辛い事があったのなら、これからの人生を一緒に楽しく、そして一緒に生きて行く事は出来る筈よ! ……だから、いつまでも憎しみや悲しみに囚われなで……大丈夫、この先何が有っても周りの優しい人達が必ず貴女を支えてくれるわ……もちろん、私も一緒よ。ミスティー」

「あ……お、お姉……ちゃ……」

 ミスティーハニーはキューティーハニーに抱き締められたまま、一粒の涙を流し、静かに気を失った。

「……ミスティー」「あ、あぁ……」「こ、これって……」

 気を失うミスティーハニーをキューティーハニーが見詰める中、メタルバードとマーズは困惑してた。

「い、いったい。どうなっている……訳?」

「だ、抱き締められたら。ミスティーハニーが……」

「こ、これって一体……どうゆう事?」

 星夜にトシ、ジュピターが混乱する中、マーキュリーが説いた。

「ほ、抱擁でミスティーハニーの憎しみを浄化した……て、事?」

「ほ、抱擁……?」

「つ、つまり人の、心の温もりが感じられる包容力で憎悪を消し去ったって事?」

 マーキュリーの仮説に小狼もナースエンジェルも驚いてしまう。

「す、すごい。凄いですハニーさん! ま、まさかミスティーハニーを抱きしめて人の温もりを感じさせて憎しみを消しちゃうなんて凄いです!」

 さくらがキューティーハニーの行動を称賛する中、キューティーハニーは気絶したミスティーハニーを気にかける。

「は、はぁ……。み、ミスティーハニー? え、ちょっと。だ、大丈夫?」

「キューティーハニー、見せて。……うん大丈夫。気絶しているだけで命には別条ありませんよ」

「そ、そう。良かった」

 動揺してたキューティーハニーだが、ナースエンジェルの診断を聞いて安心する。

「は、ははは。ま、まさか。抱擁で憎悪消し去っちゃうなんてな……スゲエなオイ」

「……あ、ああ」

 メタルバードも聖龍使いもキューティーハニーの行動に驚きしか感じられなかった。

 そしてミスティーハニーが気を失ったその瞬間。彼女の刻印から出現した怪人が見る見るうちに消えていった。

「あっ。か、怪人が……」「き、消えていく……」「こ、これはっ」

「か、彼女の。ミスティーハニーの憎しみが消えたから、彼女の憎しみで生まれた怪人も消滅したのか!」

 消滅していく怪人を見て、イサミとソウシとケルベロスが驚く中、デューイが説く。

「こ、こんな形で……」

「怪人を倒す。う、ううんっ。人を救えるなんて、ホントに凄いわ!」

「な、なんか。泣けてきちゃった。グスッ」

 マーズもセーラームーンも驚き、ヴィーナスなぞ思わず涙目になる。

「す、凄い。人の、心の温もりで憎しみから生まれた怪人を消滅させるだけでなく、その怪人を生みだした人間の心までも救う事が出来るなんて……!」

「さ、流石だよ。キューティーハニー!」

 タキシード仮面も早見青児も抱擁でミスティーハニーを止めたキューティーハニーに驚きつつも称賛した。

 

 

 

 

[現れたプリンスと、乙女の正体]

 

 しかし。ミスティーハニーが気を失い、辺りに静寂が流れ始めた時。

 

「フッフッフ。いやぁ、まさか。相手を抱きしめるという幼稚な行為で彼女の憎悪を一時的とはいえ消し去ってしまうとは……」

「えっ」「だ、誰なの?」「こ、今度は何者だ?」

 謎の声にセーラームーンもマーズも小狼も動揺する。

「さ、さくらちゃん……」「な、ナースエンジェル~」

「くっ、くっそう。まだ新手か何かなのか」

 脅えるナースエンジェルにさくら、そして警戒するデューイ。

 そんな聖龍隊の目の前に姿を現したのは通称《黄昏のプリンス》と自称する人物だった。

「ああっ。お、お前は!」

「これはこれは。私の事を知っているとは、光栄だね」

「おっ、お主は。黄昏のプリンス!」

 メタルバードと聖龍使いの指摘に、デューイや小狼そしてトシが一驚する。

「! ちょ、ちょっと待て」

「た、黄昏のプリンスって確か……」

「は、葉月……い、いや。ミスティーハニーに付き纏っていた男!」

 突然現れた黄昏のプリンスにマーキュリーとジュピターが問い詰める。

「あ、貴方が!」

「み、ミスティーハニーに何をしたの!」

「ん? 何かしたって、何を?」

 問い詰められた黄昏のプリンスは平然と訊き返す。

「と、惚けんな! お前が彼女に何かしたから、彼女は憎悪にとりつかれたんじゃないのか!」

 星夜が再度問い詰めると、黄昏のプリンスは不敵に笑みながら答えた。

「ふふっ。いやいや、私はただ母上と共に彼女を育て、そして憎しみの記憶を植え付けただけさ」

「に、憎しみの記憶?」

 ヴィーナスが困惑してると、黄昏のプリンスは淡々と説き始めた。

「ふふ、そう。彼女には如月博士と姉の如月ハニーを恨むように母上が偽の記憶を植えつけ、更に《憎しみの刻印》を胸に刻み込み、彼女の憎しみが増大すると勝手に怪人が生み出されるようにしたのさ」

「なっ、何ですって!」「そっ、そんな!」「ひ、酷いわ!」

 黄昏のプリンスの説明を聞いて一驚するマーズにさくらにイサミ。

「か、彼女に偽の記憶を植え付け、更にその記憶で生み出される憎悪の感情で新たな怪人を生み出し続けるなんて……あ、貴方って人は!」

「な、何て下衆な男なんだ!」「こ、この野郎……!!」

「な、何て卑劣な真似をするんだ! お前は!!」

 ナースエンジェルもデューイもメタルバードも早見青児も怒りを露わにする。

「そ、そんな……に、偽の記憶で憎しみを感じさせるなんて……」

 キューティーハニーもこの事実に唖然とする中、聖龍使いが静かに怒りながらも黄昏のプリンスに問うた。

「む、むむむ……! 黄昏のプリンスよ。そなたは一体何者なのじゃ!」

「ふふ、私ですか。私は……」『………………』

 黄昏のプリンスは聖龍隊の前で告白した。

「私の名は、プリンスゼラ。パンサークローの首相、パンサーゾラの息子です」

『な、何っ!?』

「ま、まさかあのパンサークローの首相。ゾラに息子が居たのか!?」

「つ、つまりこの男は悪党の親玉の子供なのか!?」

 衝撃の事実に、メタルバードもトシも愕然とする。

「そ、そんな!」

「……親玉の子供。まさかそんな奴だったとはね!」

 ジュピターもデューイも愕然とする中、聖龍使いも驚きを隠せなかった。

「な、なんてこった。ま、まさかプリンスが、パンサーゾラの息子……とは」

 キューティーハニーもこの事実に混乱するばかり。

「えっ……え……」

 と、聖龍隊が驚愕していたその時。その場の話を一部始終聞いていた、もう一人のキューティーハニーが姿を見せた。

「そ、そんな……」「なっ。き、キューティーハニー!?」

 もう一人現れたキューティーハニーに聖龍使いは驚愕する。

「なにっ? ば、バカな! な、何故キューティーハニーが二人も目の前に居るのだ!?」

 プリンスゼラももう一人のキューティーハニーを見て愕然とする。

 しかし当のキューティーハニーは顔を真っ青にして、今にも倒れそうな雰囲気なのが確認できた。

「なっ、何~!」「えっ、ええ~!」

「き、キューティーハニーが二人!?」

 だが変わらずキューティーハニーが二人だという状況に、メタルバードもセーラームーンもさくらも驚愕してた。

「お、オイ。こ、これって……」

「あ、ああ。以前ナースエンジェルが二人同時に出てきた時と同じパターンだ……!」

「こ、今度はキューティーハニーが二人~!?」

 星夜もデューイもナースエンジェルもキューティーハニーが二人という状況に混乱してた。

「あっ……あぁ」

 一方で先に現れていた方のキューティーハニーの顔からは、次第に血の気が引いているのが見て取れた。

「そ、そんな……黄昏のプリンス。あ、貴方があのパンサークローの首相ゾラの……子供なの?」

「………………」

「な、何とか言ってよ!」「……ふぅ」

 そして後から現れたキューティーハニーに問い詰められたプリンスゼラは軽くため息をすると、気絶し倒れているミスティーハニーを抱きしめているキューティーハニーの元に一瞬で移動。

「きゃああっ」

 先に駆け付けてきたキューティーハニーから強引にミスティーハニーを奪還したプリンスゼラは、そのままミスティーハニーを抱きあげた。

「せ、聖羅!」

「お、オイお前! ミスティーハニーをどうするつもりだ!」

 後から駆け付けてきたキューティーハニーが叫ぶ中、メタルバードがプリンスゼラに問い掛けると返答が返ってきた。

「ふう、安心していいですよ。彼女は我らがパンサークローにとっても必要不可欠な存在。丁重にアジトまで運んであげるので心配しないでください」

「な、なぬっ。お、お前達はまだ彼女を……ミスティーハニーを利用する気なのか!」

 プリンスゼラの言動に腹を立てている聖龍使いが問い詰めると、プリンスゼラは冷淡に答える。

「ふふふっ。利用するなんて下衆な言い方ですね。大切に扱うって意味ですよ。では、これにて」

 そう言い残すと、プリンスゼラはミスティーハニーを抱きあげたまま消えてしまった。

「あっ、コラ!」「く、クソ。逃げられちまった……」

 デューイとメタルバードが制止しようとするも、既に逃げられてしまった後。

「で、でも……まさかミスティーハニーがパンサークローに記憶を植え付けられて、無理やり憎悪の感情を与えられていたなんて……!」

「ひ、酷い。酷いわ……」

 マーキュリーとマーズは余りの事実に、その場に膝を付き顔を青くしてしまう。

「ま、マーズ、マーキュリー、しっかり……」

 セーラームーンも何とか気力で持ちこたえ、二人の動揺を和らげようとした。

「そ、そんな。二人っきりの姉妹を、そんな事の為に引き裂くなんて……!」

「あ、あのプリンスゼラ……絶対に許せない!」

 ジュピターもヴィーナスも怒りで身を震わせていた。

「う、うぅ。は、ハニーさんが可哀そう。偽の記憶なんかで妹に恨まれるなんて……」

「ひ、酷い。いくらなんでも酷過ぎる……」

「そ、そんな……うっ、うぅ……」

 イサミもナースエンジェルもさくらも悲しい事実に涙を流す。

 辺りが悲しみに満ち溢れていると、後から来たキューティーハニーがみんなに声をかけた。

「……みんな。ありがとう」マーキュリー「え……」

「は、ハニーさん……」

 突然のキューティーハニーからの感謝にマーキュリーもマーズも戸惑った。

「私の妹の事なのに……そんなに気にかけてくれて……みんな、本当にありがとう」

 キューティーハニーが笑顔で発したその言葉に、嘆き悲しんでいた聖龍隊は少しばかり安堵した。

「そ、そんなの……ど、どうってことは」

「そ、そうですよ。本当ならハニーさんが一番辛いんじゃないですかっ」

「あ、あのプリンスって奴、絶対許せないわ!」

 ジュピターとナースエンジェルとヴィーナスが怒りで身を震わせる中、ナースエンジェルとさくらが言った。

「か、怪人を生みだす為にニセの記憶を植え付けるなんて……さ、サイテーーよ!」

「は、ハニーさん。あ、貴女は……貴女は大丈夫ですか……」

「……うん。みんなが妹のために泣いてくれたから、少しは楽になれたわ。みんな、本当にありがとう!」

 笑顔で皆に感謝を伝えるキューティーハニーに、イサミやトシに小狼そしてデューイが言う。

「は、ハニーさん……う、うぅ……」

「お、俺たちがもっと強かったらあんなヤロー、すぐにでもブッ飛ばしてやるのに……!」

「自分達の私利私欲のために他人を利用するなんて、ホントに許せない!」

「ぶ、ブロスも許せないほどの下衆な輩だったけど。まさか、それに匹敵する輩がまだ居たとは!」

「ま、全くだ……クッ! ……ん? そ、そう言えば先に来ていたキューティーハニーは何処に行ったんだ!?」

 デューイに賛同する星夜が指摘すると、聖龍隊は最初に現れたキューティーハニーの存在を思い出す。

『あっ!!』

「そ、そうよ。先に私たちの所に来ていたキューティーハニーが居ないわっ」

 ナースエンジェルが指摘した通り、既にもう一人のキューティーハニーは姿を晦ましていた。

「あ、あのキューティーハニーはいったい……」

「だ、誰だったんだ……?」

 セーラームーンもトシも、もう一人のキューティーハニーに呆然とするばかり。

「ま、まさかナースエンジェルに続いて、今度はキューティーハニーが出てくるとは……」

「え、ええ。そうねデューイ……」

 デューイに頷くナースエンジェル。すると星夜がまたしても気付く。

「…あ、アレっ? メタルバードは何処行った?」

 星夜の疑問に聖龍使いが答えた。

「メタルバードなら先ほど、先に来ていたキューティーハニーの後を追っている。上手くいけば彼女の正体が分かるかもしれん」

 そして聖龍使いは、現場に居合わせたタキシード仮面と早見青児に礼を申した。

「改めて礼を申し上げる。今回は主等の協力もあったので、早々と事件が解決しましたわ」

「い、いや。そんな……」

「お、俺たちの事よりもキューティーハニーの事を……宜しくお願いします」

「うむっ。……お主、相当キューティーハニーに惚れこんでいるみたいじゃのう。ふぉっふぉっふぉ」

「い、いや……お、俺も昔パンサークローに父親を殺されて、それ以来奴等を追っている際に頻繁に彼女と出くわす様になって……た、只それだけですよ」

「ふむふむ。分かり申した。それではその様にして置きますわい」

「ちょ、ちょっと聖龍使い!」

 聖龍使いにおちょくられて困惑する早見青児に、タキシード仮面が笑いながら打ち解けた。

「はっはっは、君も中々良い目をしているね。最初のキューティーハニーは恐らく偽者だ。それなのに彼女の事を悪く言ってしまって本当に申し訳ない。私からも謝罪するよ」

「い、良いんだよ。もう済んだ事は……」

 タキシード仮面と早見青児は互いに責め合った事を深く詫び、お互いに握手を交わしたのであった。

「うむうむ。男二人の友情もまた素晴らしいのう。ワッハッハッハ」

 そんな二人を見て、聖龍使いは高笑いする。

 

 

 

[トイレに入ったハニーと出てきた……えっ?]

 

 一方その頃。メタルバードは先にやって来たキューティーハニーの後を気付かれない様、透明化能力で尾行していた。

「……ふぅ~。あの女、いったい誰なんだ? 容姿は完全にキューティーハニー本人と瓜二つなのに、中身がまるで違う。それにテレパス使おうとしても、何だか修司とは真逆で光り輝いている心だから、覗こうとしても眩しくて見えやしない」

 メタルバードが尾行してると、キューティーハニーは公園内の公衆トイレに入って行った。

「うん? こんな時に便所……あっ、違うな。恐らく変装でも解くんだろうな」

 メタルバードがトイレの入り口で待ち構えていた時。トイレの中から光が垣間見れ、そして光が収まるのが目に入る。

「な、何だったんだ今のは?」

 メタルバードが不思議に思っていると、トイレの中から一人の女の子が出てきた。

「うん? アレは……ま、まさか。ウソだろ。か、加賀美あつこじゃねえか……!」

 何とトイレから出てきたのは、誰であろう加賀美あつこだった。

(ふぅ~。たまたま近くで怪盗ふくみみが現れたから退治しようと思ってキューティーハニーに変身してみたけど。まさか黒天狗党や妹さん、その妹さんを利用している悪人までも出てくるとはね。あ~あ、今夜はホントに色々あったわ。……それにしてもミスティーハニーって言うのよね、あのキューティーハニーの妹さん。……何とか姉妹仲良くなってほしいわ。私には会いたくても、顔も分からないお姉ちゃんが居るんだもの。彼女の憎しみ消せたのもホントに偶然だったから驚いたわ。……私がいつか修司にしてあげようって思ってた事やっただけなのにね)

 そう人知れず思う加賀美あつこはそのまま公園から出て行った。

「えっ、え。……え~とっ。と、トイレの中には誰か居ないのかな……?」

 メタルバードはアッコが出てすぐに女子トイレの中を見回してみたが、誰一人居なかった。

「えっ? えっ? な、何でダワサ~! って、これってチカ子の台詞だったな……」

 混乱するメタルバードはすぐさま修司の地下施設、メインフロアに戻る。

 メインフロアでは先に帰って来ていた聖龍隊士達がメタルバードの帰りを待っていた。

「あっ、御苦労変身怪獣。何か分かったか!」

「あ、ああ……」

 変身を解いた修司に問われた変身怪獣は呆然としているのを、レイや美奈子が問い詰める。

「どうしたの? 何か訳ありって顔付きだけど」

「もう一人のキューティーハニーの素性は分かったの?」

「い、いったい誰だったの。あのキューティーハニー」

「ああ。彼女は一体……」

 りりかも小狼も変身怪獣に問い掛ける。

「だ、誰だったんですか?」「もう一人の私……何処の誰だったの?」

 さくらもハニー本人も問い掛けると、変身怪獣は重い口を開いた。

「あ、あ~……じ、実を言うとよ……」

 変身怪獣は自分が見たまんまを仲間達に打ち明けた。

『な、何っ!?』

「そ、そんな。アッコちゃんが……」

「きゅ、キューティーハニーと入れ代わる要領でトイレから出て来たって……!」

 亜美もまことも変身怪獣からの報告に驚愕する。

「し、しかも! 変身怪獣が確認したら、トイレには誰も居なかったんだよね?」

「そ、それじゃアッコちゃんがキューティーハニーに変身していたって事なの!?」

「信じられないけど、そう言う事になりますね」

「う、うっそぉ! あの加賀美って人が変身していた訳?」

 トシが確認する中、うさぎが可能性を示唆し、小狼と苺鈴が信じられない心情で一驚する。

「し、信じられねえぜ……」「あ、あの加賀美あつこさんが……」

 星夜もりりかも報告に驚くばかり。

「き、昨日のナースエンジェルもアッコさんだった訳なのかな?」

「ん~。昨日工場から出て来た所を見ると、そう考えるのが普通やなぁ」

「やっぱり、あの子だったか。どうも怪しいと思っていたんだよね」

 さくらが首を傾げると、ケルベロスとデューイが同調する。

「見た感じ、普通の女の子にしか見えなかったですけどね」

「い、いや。それなら此処に居るみんなだって同じじゃない」

 知世の発言にイサミが呆然としながらも返す。

「僕たちは直接会った事はないですけど、そのアッコって人も魔力を持っているんですか?」

「いや。オレは魔力を感じる事が出来ないから、良くは解らねえんだが、何だか有るみたいだぜ」

 ソウシの問い掛けに変身怪獣が答えていると、ハニーが驚きながらも語り出す。

「あ、あのアッコちゃんが……聖羅の憎悪を消し去り、そして私やナースエンジェルになっていた……って、事なの?」

「アッコが……まさか」

 半信半疑の修司に変身怪獣が言った。

「オイオイ相棒。もう此処まで現状証拠が揃っているんだぜ。疑いの余地は無いぜ」

 変身怪獣に続き、レイと亜美もアッコへの疑念を募らせる。

「変身怪獣の目撃が本当だとしたら」

「以前にセーラームーンや私に変身していたのも彼女かもしれないわ」

 此処で小狼、デューイ、ケルベロスが危険性を唱えた。

「も、もし。今後も彼女が能力を乱用して、敵対している輩に目を付けられてしまったら……!」

「ああ。加賀美あつこにも危険が及ぶね」

「まぁ。実際に変身しているところを見ている訳や無いからホントかどうかは不明やが。念には念を入れて彼女の動向を見ているっちゅうのはどうやろか」

 三人の警告を聞いて、変身怪獣が修司に迫る。

「それは良いな。相棒、お前も賛同するだろう。あの加賀美あつこが調子に乗って今後もオレ等の真似をし続けたら、それこそダークキングダムやダークジョーカー、更にはパンサークローや黒天狗党に狙われちまうぜ」

 変身怪獣からの警告に、修司は腕を組み、思い詰めた表情をしながら重い口を開いた。

「……そうだな。最早アッコが何かしらの特別な事情があるのは明白だろう。よし、明日から徹底的に加賀美あつこを監視するんだ」

『了解』

 

 そして聖龍隊はその後それぞれの住まいに帰宅し、修司も自分の部屋に戻っていった。

 

 

 

[動きだした闇の勢力たち]

 

 そして聖龍隊の考察は見事に当たっていた。各敵勢力はすでに加賀美あつこの存在に目を付け始めていた。

 

【ダーク・キングダム本拠地】

 

「クイン・べリル様。ダーク・キングダム四天王、申しつけの通り参上致しました」

 そうクイン・ベリルに頭を下げるのは、四天王の一人ジェダイト。

「……う~む、よくぞ来た。我が配下、ダーク・キングダムの四天王達よ」

「本日は我々四天王全員を呼び出して、何かあったのですか」

 ネフライトがベリルに訊ねると、ベリルは苦しそうな声色で訴える。

「……光が、強烈な光を感じられる」

「強烈な光? クイーン・セレニティの希望の光の事ですか!?」

 ゾイサイトが訊き返すと、ベリルはこれを否定。

「ち、違う……セレニティとは別の、強大な光。そう、全ての闇を消し去ることのできる程の、心の光……!」

「こ、心の光ですって……! あ、あのクイーン・セレニティよりも強力な光がこの世にあると言うのですか!」

 クンツァイトが驚く中、ベリルは続けた。

「そ、そうじゃ……まさか、あのセレニティよりも強大な光が……し、しかも極普通の人間の心に有るとは……!」

「そ、それでクイン・べリル様。我々は一体どうしたら良いのですか?」

 ジェダイトが苦しむベリルに訊ねると、ベリルは命じた。

「お、お前達……お前達はその光を心に持つ人間を探し出せ。ほ、放っておけば何れ、我々に対して絶対に害をなす存在になろうぞ……!」

「はっ、解りました。我々ダーク・キングダム四天王。命に代えてもその人間を探し出して見せましょうぞ!」

 こうしてジェダイトを筆頭にダーク・キングダムの四天王が動き出した。

 

 

【ダークジョーカー本拠地】

 

「……ケトー、ケトー! 何処に居るケトー!!」

「あっ、はいはい。ブロス様何か御用で」

 ダークジョーカーがボス、ブロスに呼ばれてケトーが慌てて駆け付ける。

「以前カノンから聞いたのだが、何とナースエンジェルが二人も現れたというのだ」

「へっ? な、ナースエンジェルが二人も? な、何かの間違いでは……」

「いいやっ。それが間違いでは無いらしいのだ。つい先日、カノンが上手くナースエンジェルこと森谷りりかからエンジェルキャップを奪い、ナースエンジェルに変身させるのを妨害した事が有るのは、お前も知っているだろ」

「は、はい。しかし、その時は聖龍隊に邪魔されてエンジェルキャップを取り返されてしまったんですよね」

「うむ。しかしその時に変身する事の出来ない森谷りりかが眼前に居たというのに、すぐ目の前にもう一人、ナースエンジェルが現れたというのだ」

「な、ナースエンジェルが二人同時に……し、信じられませんね」

「……オマケに、そのナースエンジェルは必殺技も使用する事ができたんだ」

 と、ブロスと話しているケトーの視界に突然加納が現れて、ケトーを驚かせる。

「う、うわっカノン! 急に現れるなよ、驚くじゃねえか……」

「そんな事よりも、タダの偽者ではなくちゃんと技すら使えるもう一人のナースエンジェル。後々厄介になるとは思わないか」

「ま、まぁ、確かに。今後一度に二人一片に出られたら危険度も倍だからな」

 そんな会話するケトーと加納にブロスが命じた。

「そう言う事だ。ケトー、カノン。そちらはしばらく本物のナースエンジェルこと森谷りりかの事は放っておけ。本物ではないもう一人のナースエンジェルの行方を探し出すのだ!」

「「はっ!」」

 こうしてダークジョーカーの幹部である加納とケトーの二人も動き出した。

 

 

【パンサークロー本部】

 

「どうしたのだプリンスゼラ。いったいミスティーハニーこと葉月聖羅に何が有ったのだ?」

「シスタージルか。いやな、今日ミスティーハニーがキューティーハニーの気配を感じて飛び出して行ったのだが、其処で妙な事が有ってね」

「ん、妙な事……?」

「ああ。最初ミスティーハニーはキューティーハニーを恨み憎んで優位に立っていたんだが、いつもの要領で彼女に刻まれた《憎しみの刻印》から怪人が出現したんだ」

「なんだ、いつもの事では無いか」

「ああ、此処まではね。しかしキューティーハニーが自我を失ったミスティーを迷いなく抱き締めて、彼女の憎悪を消し去ってしまったんだよ」

「なっ、何! せ、聖羅の憎悪を抱きしめて……ほ、抱擁で消し去ってしまったというのか!?」

「ああ、それだけじゃない。浄化の力が強すぎて、生まれたばかりの怪人までも聖羅が気絶すると同時に消えてしまったんだ」

「ば、バカな! せ、聖羅が生み出した怪人は、生まれてすぐに別の生命体として活動しているはずだから聖羅の憎しみが消えただけで、生まれた怪人も消えることなどあり得ない筈だぞ!」

「……それに、それだけじゃないんだ」

「何? ま、また何かあるのか」

「ミスティーハニーの憎悪が消えて、私が姿を現したスグ後に、もう一人、キューティーハニーが現れたんだ」

「な、何じゃと……! キューティーハニーがもう一人……」

「見たところ。後からやって来た方が本物のキューティーハニーこと如月ハニーだろう。つまり、ミスティーハニーの憎悪を消し去るほどの力を持った方は、偽のキューティーハニーだったんだろうな」

「抱擁の力だけで強大な憎悪を消し去ることのできる、もう一人のキューティーハニーか……目障りな存在だ」

「ああ。それで先ほど母上であるパンサークローの総帥パンサーゾラ様にこの事を報告したら、その偽者を見つけ出し連れて来いと言われた」

「何? それはまた何故じゃ」

「母上の考えでは、そのキューティーハニーも空中元素固定装置を所持しているんじゃないかと考えておられる。正直、聖羅の装置は不完全なもので、完全なのは如月ハニーの持っている装置だけなのだ。偽者の方はどうか分からないが、もし完全な空中元素固定装置を所持しているのであれば……」

「! なるほどな。わざわざ如月ハニーから奪わなくても、その女から奪い取れば……」

「ああ。全てが上手くいく……!」

 

 

 

 そして、修司の自宅。

 修司は自室で一人異様なまでに苦しんでいた。胸を押さえこみ、まるで何かを抑制している様子だった。

「はっ、ハァハァ……く、クソ……! あ、あのゼラに加納、それに他のヒールや仲間の事を思うと……ハ、ハァ、む、胸が苦しい。い、息ができないほど……ま、また俺の……理性が壊れる……のか。ま、また破壊をしてしまうのか……!!」

 

 

 

 そして次回。

 遂に3つの悪の組織が加賀美あつこに対して牙をむき、そして修司の内心に秘められた恐るべき闇が暴走してしまう顛末に。

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