【聖龍伝説】始まる伝説   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 今回は少しシリアスな展開です。英雄たちの心の叫びも文章にしてみました。

※敵キャラの中には、作者が勉強不足な為あまりキャラが解ってないのも居ます。ゆえに少し皆様の感じるキャラクター像ではないかもしれません。そこはご了承ください。
※更に、敵キャラの扱いが酷いです。敵キャラファンの方は不快に思われるかもしれませんので御注意してください。


アニメタウンの英雄達 狙われた光と暴走する闇

[怪しい視線]

 

 アッコがキューティーハニーに変身して、ミスティーハニーの憎悪を消し去った事件から数日経ったある日。この日アッコはモコと二人っきりで下校していた。

「………………」「アッコどうしたの。さっきから何かソワソワして」

 アッコの挙動不審な態度に、モコは気になりました。

「も、モコ。後ろから誰か付いて来てないわよね」

「え? ……嫌ねぇ、誰も居ないわよ」

「そ、そっか。ゴメンね」

「どうしたのアッコ。最近何かしら周りを気にしてない?」

「……実はね、モコ。最近どうも誰かの視線を感じるのよ」

「えっ?」

「何だか登下校の際はもちろん、学校でも家でも、何処に居ても誰かの視線を感じるのよね」

「ちょ、ちょっとアッコ。それってもしかしてストーカーじゃない!? な、何か家のポストに差出人不明の手紙や小包とか届いちゃってないでしょうね?」

「う、ううん。今のところは何も家には届けられてはいないけど。……ただ誰かの視線は感じられるのよ」

「だ、大丈夫? 警察とかに相談した方が良いんじゃないの……」

「あっ、だ、大丈夫よ。まだ本当に誰かに見られているって決まってないし、もしかしたら私の気のせいかもしれないしさ。まぁ本当に怪しい人とか見かけたら通報位はしようかなって思っているけど……」

「そ、そう……で、でももし本当に何か有ったら遠慮なく言ってよね。私、アッコに何か遭ったら……遭ったらって思うと、怖い……」

 モコはアッコの事を心配して、今にも泣き出しそうな顔になってしまう。

「モコ……う、うん分かった。何か有ったら私もすぐに親や警察に言うから、モコまで落ち込まないでよ。わ、私モコを泣かすために話した訳じゃないんだからね」

「う、うん。アッコ、本当に気を付けてよ。貴女に何か有ったら私だけでなく大将やギョロ・ゴマ。それにクラスのみんなが心配するんだから!」

「モコ……うん、分かったわ。だからもう、そんな顔しないでよ。私まで泣きたくなっちゃう……」

 アッコは、笑顔でモコに話し返した。

「う、うん分かった。ところでアッコ。最近修司と一緒に帰らないの? 遂この前までは一緒に登下校していたって言うのに……」

「あ、あぁ。何か修司は最近忙しいって言ってあんまり一緒に居てくれないのよね……」

「もう~修司ったら。アッコが誰かに付け回されているのかもしれないのに、相変わらず仕事の方を重要視するのね。まったく」

「モコ、それは仕方がないわよ。修司はあくまで町の市長なんだし、そっちを優先して貰わないと」

「ま、まぁ。それが正論だけど……でも、もう少しアッコに構ってあげても良いと思うのよね」

 モコが呆れ返っていると、アッコは笑顔で答えた。

「修司は照れ屋だから、ハッキリ自分の気持ちを相手に伝えられないのよ。そういう性分なんだから、其処は受け入れてあげないと」

「……まぁ、そうかもしれないけど。ふぅ~、アッコって本当に修司にもだけど他人には甘いわよねぇ」

「えっ。そ、そう……?」

「そうよっ。今までだって人の嫌がる事を進んでやってくれているし、見知らぬ人が困っていたら見境なしに助けてあげているし。アッコって本当に自分の事よりも他人の方を優先する子なんだから」

「わ、私はただ、困っている人が見逃せないだけよ。仕事だって、結局は誰かが遣らなきゃいけないんだし。じ、自分にこそ甘えたくないのよ」

「ふふっ。アッコって本当に素敵よね。女の私から見ても惚れ惚れしちゃう」

「もっ、もう。モコったら……」

 モコからの賞賛に、アッコは思わず頬を赤くした。

「ふふ・……それとアッコ。今週の休みに一緒にデパートに買い物行かない? ちょうど女子向けの洋服のバーゲンセールがその日あるのよ」

「あっ、それ良いわね! 私もちょうど新しいお洋服が欲しかったところなのよ。分かったわ、家に帰ったらママに話して洋服代貰えるようにするから」

 アッコがいつもの笑顔に戻ったのを確認できたモコは、更に会話を続けた。

「ふぅ、良かった。アッコがいつもの調子に戻ってくれて。それじゃあ家まで一緒に付いて行ってあげるわ。本当にストーカーが居るかどうかは解らないけど、念のために送って行くわ」

「モコ、ありがとう」

 こうして二人は一緒にアッコの家まで歩いていくことに。

 

 すると二人が加賀美家の近くまで来た時だった。帰宅する二人に突然、男が後ろから声をかけてきた。

「失礼。其処のお嬢さん達」「えっ」

「は、はい……だ、誰でしょ……って、ええ!」

 二人に声をかけて来た男は、かなりの美形で、モコは一瞬見ただけでキュンっとしてしまった。

「は、はい♡な、何でしょう♡」

「この辺で加賀美と言う家を探しているんですけど、知らないですか?」

「えっ。か、加賀美……」

 男の問い掛けにアッコが動揺していると、モコが代わって答えた。

「えっ! か、加賀美ならこの子の家ですよ。ちょ、ちょっとアッコ。貴女の家に用事が有るのよこのお兄様! な、何黙り込んじゃっている訳なの、ねぇ!」

 モコに問い質されるアッコは男の顔を見て驚愕し、そして黙り込んでしまった。

 何故ならアッコとモコに声をかけて来たのは他でもない、豹の爪(パンサークロー)の総帥の息子であるプリンスゼラであったからだ。

「あぁ。貴女が加賀美さんの所のお嬢さんですね、失礼しました。私、実はデザイナー関係の雑誌編集者なのですが、今度お母様に会いに行っても良いですか」

「あ……あ……」

 アッコは余りの事態に、恐怖で顔から血の気が引き、言葉を出せずにいた。

「……どうしましたお嬢さん。どこか御体の具合でも悪いんですか」

「あ、あの…わ、私の母は今。べ、別の編集者さんの所で取材受けているのでそれ以外の雑誌の取材は受けていないんですよ……」

 アッコは焦りながらもゼラに返答した。

「……そうですか。承知しました。ではまた別の機会にお願いしますね。ふふっ」

 そう言い残すと、ゼラはそのまま去っていった。

 

「……ハッ、はぁはぁ、はぁ」

 アッコは緊張の糸が解れて、思わず呼吸を乱した。

「す、素敵な御方ね♡今のお兄様……ってあ、アッコ? ど、どうしたの? 顔が真っ青よ」

「はぁ、はぁ……だ、大丈夫よモコ。す、少し疲れているだけよ。も、もう家も近いし此処からは私一人で帰れるわ。じゃ、じゃあねモコっ」

 アッコはそうモコに言うと、全速力で自分の家に走って帰った。

「あっ、アッコ! ……ど、どうしたのかしら。急に顔色変えて……」

 様子が一変したアッコを目の当たりにして、モコは不安そうな顔を浮かべる。

 

 一方のアッコは急に背中に寒気を感じ、一直線に自分の家に走って帰った。

(はっ、はぁ。な、なんで豹の爪(パンサークロー)のプリンスゼラが私のママを訪ねてくる訳? し、しかも雑誌の編集者なんて名乗って……!)

 アッコは家に着くと一目散に家の中に飛び込み、急いで玄関の鍵を閉めた。

 そしてアッコは自分の親を叫ぶように呼んだ。

「はっ、はぁ。ま、ママ! パパ!」

「あらっ、お帰りアッコ。今日はずいぶん早かったわね」

「あっ……ま、ママ」

「どうしたアッコ。息切らしたりして」

「ぱ、パパ……は、ハァ~」

 アッコが急に体の力が抜け、その場で膝から崩れ落ちてしまう。

「あ、アッコ?」「だ、大丈夫か。何処か具合でも悪いのか?」

 目の前で崩れ落ちたアッコを見て、心配した両親が歩み寄った。

「だ、大丈夫? アッコ……」

「ど、何処か苦しいのか? 言ってみなさい」

 母親と父親からの問い掛けに、アッコは無理強いしながらも答えた。

「は、はぁ。だ、大丈夫よママ、パパ。ちょ、ちょっと疲れているだけよ。も、もう平気よ」

「そっ、そう……」

「そ、そうか。まぁ。それなら良かったんだけどな」

「は、はぁ。わ、私ホントに少し疲れちゃったから自分の部屋で休んでいるね」

「あ、あぁ。分かった。ゆっくり休みなさい」

「じゃあ後でアッコの部屋にお夕食持って行ってあげるわね」

「あ、ありがとう。ママ……」

 そしてアッコはそのまま自分の部屋に戻りベッドに潜り込んだ。

 

(あ、あ……ど、どうしよう。プ、プリンスゼラが私の家を訪ねてきた……い、以前ママの芸術作品盗みに来たのも豹の爪(パンサークロー)だった筈。で、でも何でまた雑誌の編集者に。し、しかもあのプリンスゼラが直々に私の家に訪ねてきた。な、何で……)

 

その晩、アッコは不安で一睡もできなかったという。

 

 

 

[衝突した二人]

 

 週末。明日が休みと言う事で、この日の学校は土・日の2連休をどう過ごすか。クラスで盛り上がっていた。

「俺はよ~、明日は父ちゃんと海に釣りに行くんだ。やっぱ男なら海で逞しく過ごすのが御似合いだからな」

「へぇ~、大将の所はいいですね。俺ん家なんか何処にも行く予定が有りませんよ」

「へっへ。俺の所は家族で遊園地に行くんですよ。それも、今飛びっきり話題の絶叫マシーンがある遊園地に」

 自慢げに話す大将に、ゴマとギョロが加わっていた。

「へぇ~。ギョロの方も良い所に行けるんだなぁ。おいモコ。お前ん家は何処か行く予定は無いのか」

「いいえ。私の所は相変わらず母さんが面倒臭がって外に出るの躊躇っているわ。まぁ、だからこそ明日はアッコと一緒にデパートでお買い物してくるんだけどね」

「へ、へぇ。そ、そうかアッコと一緒に……で、何買うつもりなんだ?」

「その日はお洋服のバーゲンセールやっているから、新しい洋服買うのよ。アッコもお母さんからお金もらっておニューの服を買う気なのよ」

「そ、それじゃ。も、もしかして……あ、新しい下着とか・・・・…も」

 と、大将が厭らしい思考を巡らせていると突然、大将の後頭部に平手打ちが入った。

「イッ……タアァ~。しゅ、修司……!」

「大将、お前何考えていやがるんだよ。このスケベがっ!」

 修司のツッコミにモコも呆れていた。

「全く、やんなっちゃうわね。ねぇアッコ……って、どうしたの顔色が変よ」

「……あ、モコ。ゴメンね、ちょっと最近眠れなくて……」

 アッコの顔色は、ほとんど血の気が無く、目の下には大きなクマができていた。

「あ、アッコ大丈夫か。かなり辛そうだけど」

 修司が心配してアッコに話し掛ける。

「あっ、うん。大丈夫。ちょっと寝不足なの……」

「大丈夫か。……ちょっと見せてみろよ」

 そう言うと、修司はアッコの頬を両手で挟み込み、自分の顔に近づけさせた。

「えっ。ちょ、ちょっと修司……」

 アッコが動揺する中、修司はそのままアッコの顔を見つめ続ける。

(ちょ、ちょっと。何これ?しゅ、修司ってこんなに大胆だったっけ? ま、まるで今にもキスしちゃうみたいに顔が近いじゃないのよ……)

 アッコは修司に見つめられて、真っ青だった顔色が次第に赤く照っていった。

「ヒュ~ヒュ~。お熱いね、お二人さん。ヒュ~ヒュ~」

 大将が茶化すと、修司が照れながら言い返す。

「ば、バカっ。お、俺はただアッコの目の下のクマを見ていただけだ! そ、それに良く見てみたら目も充血しているみたいだしな……」

 修司が大将に茶化されて、恥ずかしがったアッコは思わず修司から離れて行ってしまう。

「もう大将。いい加減に修司を茶化すのは止めなさいよ」

「い、いや~。修司茶化すと面白くって」

「もう~、修司が可哀そうじゃない」

 モコと大将が言い合う中、アッコは残念がっていた。

(あ~もう~大将ったら! せ、折角良い雰囲気になってたとこなのに……!)

 

 その日。下校時間になった学校正門前。

 修司は一人、正門の前でアッコを待っていた。

「……あっ、アッコ~!」「あっ、修司……」

 修司は学校玄関から出てきたアッコを呼び止めた。

「……待っててくれたんだ」

「あ、あぁ。お前が最近元気が無いから少し心配で……」

 そして修司とアッコは一緒に帰宅した。

 

「アッコ大丈夫か。モコから聞いたんだけど、最近誰かの視線を感じるんだってな」

「え、えぇ……」

「お、親には相談したのか。そ、その視線の事を」

「う、うぅん。もしかしたら私の勘違いかもしれないし、実際に怪しい人や不審な人は居ないし、今は様子見してるの」

「そ、そう……ほ、本当に怪しい人間とか見てないだろうな。た、例えば見知らぬ人とか……」

「……うぅん。別に……」

「……そ、そうか」

 

 アッコは修司に本当の事が話せなかった。不審な人間で豹の爪(パンサークロー)のプリンスゼラが自分の家を訪ねてきたなんて、口が裂けても言えなかった。修司を不安にさせたくないために。

 

 それから二人はそのままアッコの家のすぐ近くまで来た。

「あ、アッコ。家にはちゃんと両親は居るのか?」

「き、今日はパパは雑誌の写真撮影で遅くなるって聞いているし、ママはアトリエのデザインを向こうの業者さんと相談しに行っているから今は家には誰も……」

「だ、大丈夫か一人で」

「う、うん。結構慣れているから。日常だしね」

「……一人じゃ不安じゃないか」

「えっ」

「一人だと、不安にならないか。俺は昔から……身内からも怖がられて、一人で居る事が多かったから、良く分かるんだ……」

「しゅ、修司……大丈夫よ。も、もう修司ったら。また暗い事言っちゃって。なぁに、どうせパパもママもすぐに帰る筈だし大丈夫よ。もう五年生なんだし一人で留守番ぐらいはできるわよ」

 そしてアッコの家の前まで来た二人は、家の前でウロウロしている男を目にした。

「だ、誰なのかしら。あの人……い、今家には誰も居ないのに」

「あ、アッコは此処で待っていろ。俺が様子を見に行ってみる」

「あっ、修司。私も行くわ。私の家に用事が有る人なのかもしれないし」

「あ、ああ。分かった、念のため俺の後ろに居ろ」

「う、うん……」

 そして二人は、加賀美家の家の前で立ち往生している男に声をかけた。

「すいません。今その家の人は出かけていまして誰もいな……!!」

「す、すいません。どちら様で……!!」

 二人が声をかけた男。アッコの家の前に居た男は、何とあの加納望だった。

「あっ、すいません。此処があの有名な芸術家・加賀美恭子さんのお住まいでしょうか。実は僕、恭子さんの大ファンなんですけど、彼女はいつ頃帰ってきますか?」

「あ、あの……あ、の……」

 目の前の加納に怯え出すアッコを尻目に、修司は咄嗟に答えた。

「あっ。きょ、恭子さんは今夜は遅くなると聞きましたよ。また日を改めて来た方が良いですよ」

「……そうでしたか。解りました、また来ますね」

 そう言って、加納望は去っていった。

(あ、あの加納望までも家に……で、でもなんでまた……英雄の敵である人が家に……)(か、加納望……! な、何故アッコの家に来ているんだ……!)

 修司とアッコが驚いている時、アッコが急に怯えた様子で修司に告げた。

「あっ、あ。しゅ、修司……! も、もう此処までで大丈夫よ。わ、私は家でゆっくり休みたいから……」

 しかし修司は、アッコの様子を見て完全に何かに脅えているのを悟った。

「……な、なぁ。アッコ。お、お前本当に大丈夫か。顔が真っ青だぞ」

「だ、大丈夫よっ」

「い、いや。な、何だか今にも倒れそうって感じだぞ」

 修司は思わず、アッコの手を掴んでしまった。

「あ、アッコ。本当にお前大丈夫かよ!」

「大丈夫よ! ほっといて!!」

 アッコは突発的に、自分の手を掴んでた修司の手を引っ叩き、振り払ってしまった。

「! あ……アッコ」

「な、何よ! いつも私が気に掛けているのに無視ばっかしてるくせに、今度はしつこく私を気に掛けて! 修司って勝手すぎるわよ!!」

「!!」「……あっ……そ、その……」

 アッコは思わず感情的になってしまい、修司を傷付けるような発言をしてしまい深く後悔してしまう。

「……しゅ、修司……」

 アッコが修司の顔を見てみると、修司の目は死人のように光のない目になっており、その表情はまるでこの世の終わりかと思うぐらいの生気のない顔になっていた。

「しゅ、修司……」

 アッコはそんな修司の顔を見て、掛ける言葉を必死で考えたのだが見つからず、咄嗟に家の中に駆け込んで行ってしまった。

(……ま、まただ。また……自分で……絆を、繋がりを……壊してしまった……)

 

 その晩。アッコは布団に包まり、一人で耐え様のない後悔に駆られていた。

 

(な、何であんなこと言っちゃったの。しゅ、修司はただ私の事気に掛けてくれただけなのに……私の事、心配してくれてただけなのに、何で……バカ、私の大バカ……!)

 

 その晩、アッコは人知れず布団の中で泣き続けた。

 

 

 

[デパートでの友情]

 

 翌日。休日であるこの日、聖龍隊の地下基地では町の監視カメラで徹底的に加賀美あつこを監視していたのだが、デパートにアッコがモコと入店してからは大丈夫だろうとタカをくくり、それぞれ気ままに休憩していた。

 

「………………」「……どうしたんだ、修司の奴」

 修司は、昨日アッコに言われた事を気にしてしまい、今までにないほど暗くなっていた。

「な、何だか怖いよ……」

「ま、まるで生気が感じられないわ」

「本当。まるで死人みたいな顔してるわ」

「目に光が無いって言うか、そんな感じね」

 うさぎにハニーに亜美やまことが修司を心配する。

「い、いったいどうしたんですか修司さん」

「い、いえ。私にも全く。昨日学校から帰ってきたらあの状態で……」

 さくらがウッズに問い掛けるも、ウッズも昨日の事を聞いてはいなかった。

 すると突然。修司は立ち上がり、ウッズの所に歩み寄った。

「……おい、ウッズ」

「はっ、はい!」

「最近、加賀美あつこの周りで何か不審な動きは無かったか……」

「は、はい。い、今のところは……」

「……本当か」

「は、はい……ほ、本当ですが……」

 戸惑うウッズの返答を聞いた修司は、次に仲間達にも暗い表情で問い掛けてしまう。

「……ちゃんとお前等見ているんだろうな」

「な、何だと! 修司は僕等が手を抜いているって言うのか!!」

 修司の発言に、デューイは思わず怒ってしまった。

「でゅ、デューイ落ち着いて! し、修司さん。そんな事はありません! ちゃ、ちゃんとみんなで加賀美さんを監視していますよっ」

「……そうか。それなら良いんだけどよ」

 りりかに反論された修司は、また椅子に腰をかけ、糸の切れた人形のように座り込んだ。

「ね、ねえ。ホントに修司さんどうしたの? い、今までこんな修司さん見たこと無いよ」

「へっ、僕に分かるかよ!」

「でゅ、デューイ。いい加減、機嫌治せよ」

 イサミが不安がる中、未だに立腹するデューイを星夜が宥める。

「しっかしよ~。総長がこんなんでホントにこれからも上手くいくのかよ」

「そ、そうだね。言っちゃなんだけど、あの状態で戦いに到底出られるとは思えないし……」

 トシとソウシが修司の現状を気にする中、うさぎが呑気そうに喋る。

「ま、まぁ。戦闘になったらちゃんといつもの修司君に戻るでしょう」

「うさぎさん、そんな呑気な……」

「全く。何だか子供みたいな人よね、うさぎさんって」

 うさぎの呑気さに呆れる小狼と苺鈴に、ルナも同意する。

「…そうなのよ。お陰でいつも悩みの種が付きないのよね」

「あんさんもパートナーの事で大変ですなぁ」

「ははっ。そう言うケルベロスの方は調子どうだい。例のクロウカードはどれくらい溜まったんだい」

 アルテミスがケルベロスに訊ねると、ケルベロスは喜々と舞いながら答えた。

「あっ、それでしたら……パッパカパ~ン。皆はん聞いてくんなせ~。遂に、遂に……遂にクロウカードが残り一枚にまでなりやしたで~!」

「えっ、それ本当?」

「お、おめでとうさくらちゃん! これで後一枚手に入ればコンプリートできるわねっ」

「あ、あの……ありがとうございます」

 ケルベロスの話にレイや美奈子がさくらに労いの言葉を掛ける。

「ふふ。これで後は何処に最後のカードがあるのか解ればいいんですけどね」

「もう~。結局小狼は7枚しか集められなかったっていうのになぁ……」

「まぁ。それはそれとして、最後のカードを封印した後の《最後の審判》が一番気になる……いったいどんな審判があるのか」

 微笑む知世に苺鈴や小狼が危惧する「最後の審判」を聞いて、美奈子が気を落とす。「そ、そうだったわ。その審判に起こる災いを止めなきゃ元も子も無いのよね」

「はぁ、良いなぁ小狼たちは。あと1枚集めてその審判ってのを済ませれば全て終わるんだからな……」

「聖夜くん。それは私たちだってそうなんじゃないかしら。誰だって困難を一気に解決できる事は出来ないんだから。日々努力して、一歩一歩確実に目標に辿りつくようにする事が大事だと私は思うわ」

 落ち込む星夜にハニーが優しく説く。

「さっすがハニーさん! 聖龍隊でも最年長なだけは有りますねっ」

「さ、最年長って……何だか年寄り扱いされているみたい」

「あっ、す、すいません。そんなつもりは……」

「あっ、大丈夫よ。気にしないで……」

 イサミとハニーが和気藹々と話し合っている最中の出来事。

 

 

 その頃、デパート内。バーゲンセール会場では。

 其処には人ゴミの中を掻きわけ、先に進もうとしているアッコとモコの姿が。

「ん~、しょっ。ふぅ~。やっぱり休日も重なっているから人が多いわ多いわ」

「そうね……」「……アッコ、あなた大丈夫? 目が真っ赤よ」

 アッコは修司の事で泣き続けた為に、目が真っ赤に充血していた。

「………………」

「……ま、まぁ。少し休みましょう。ホラッ、あそこのファーストフード店でゆっくりしましょう」

 そして二人は店先のテーブルで、ゆっくり休む事に。

「いんや~、今日は結構掘り出し物無かったわね~。と言うよりも、ほとんどパワフルなオバサン達に良い品全部奪われちゃったもの……」

「そ、そうね……」

 アッコは親友のモコとは変わらない会話をしたかったのだが、気持ちが追い付いていなかった。

「……アッコ。今日はもう帰って休んだら。何だか最近のアッコは元気が無さ過ぎるわよ。一体どうしたって言うのよ!」

「……も、モコ。ゴメンね、折角誘ってくれたのに。……ダメだね私。友達を心配させたり、傷付けたり。ホントにサイテーーだよね」

 アッコは余りにも、自分が周りの人を心配させてしまったり、無自覚とはいえ人の心を傷つけてしまった事に、深く悔いていた。

「あ、アッコ。そんな……そんな事言わないでよ。アッコは立派よ。この前だって言ったでしょっ。アッコはみんなが嫌がる仕事も進んで行ってくれるし、困っている人が居たら知らない人でも助けに行く。そ、そんなアッコがダメな人間な訳ないじゃない!アッコ、わたし全然気にしてないからね。心配したりするのだって本当に信頼しているからこそ心配しちゃうんだし、それに相手を傷付けてしまうのだって、誰だって一つや二つの間違いが有るわ。あ、アッコは自分の意思で相手を傷付けた事なんて無いじゃない。アッコが傷付けた人が誰だか分からないけど、アッコは多分無自覚で、突発的にそうしちゃっただけなんでしょ。あ、相手だってアッコの気持ちを。アッコの本当の気持ちが分かれば、そんな誤解はすぐに消える筈よ! だからアッコ。今日は家でゆっくり休んでまた後日、その人に謝りましょう。……な~に、アッコが謝れば並大抵の男は許しちゃうわよ」

「も、モコ……あ、ありがとう……う、うぅ……」

 モコの優しい慰めに、アッコは思わず涙を流してしまった。

「じゃ、じゃあアッコ。今日はこれで。あっ、デパート出る前に顔は洗っておいた方が良いわよ。折角のアッコの美貌が泣き顔で崩れちゃ台無しでしょ。アッコは誰よりも笑顔が似合う女の子なんだから♪」

「うっ、うん……ありがとうモコ。お陰で、少しは気分が晴れたわ。それじゃ、また学校で……」

「うんっ、気を付けて帰るのよ~」

「は~いっ」

 アッコは少しだけとはいえ、元気が戻り顔色も少し良くなり、元気づけてくれたモコに別れを告げて去った。

「……ふぅ~。何とか少しは笑顔に戻ったわね。全く、修司が修司ならアッコもアッコよ。お互いに気持ちが擦れ違ってギクシャクしちゃうんだから。ホントに手のかかる親友が二人も居ると大変だわ」

 モコはそう呟くと、注文したドリンクを口に運んだ。

 

 

 

[光に襲いかかる脅威]

 

 アッコはモコに言われた通り、家に帰る前にデパートのトイレで顔を洗っていた。

「……ふぅ~。スッキリしたっ。さぁてとっ、早く帰ってゆっくり休みますか」

 

 モコに元気づけられ、気持ちが少しは楽になったアッコはトイレから出て行き、そのまま家に帰ろうとしていて時だった。

「おや。こんな所に居たんだね」「……えっ」

 アッコが声の方向に目を向けると、其処にはあの加納望が立っていた。

「あっ! あ、貴方は……」

「ふふ。覚えてくれていたのか。この前、君の家の前で一回会っているだけなのにね。……いや、もしかしたら、それよりも前に既に会っているのかもしれないね。違うかい」

「!! あ、貴方……」

「ふふっ。申し訳ないけど、少し話させてくれないかい。少し君の事が知りたいんだよ……例えば、英雄について……とかね」

「あ、あぁ……あ……」

 アッコは最初に、あのプリンスゼラに会った時の様な凄まじい寒気を再び、背中に感じていた。

「あっ、あっ……」「さぁ、一緒に来てくれるかい?」

(だ、誰か! だ、ダメだ声が出ない。ど、どうしよう……こ、怖い……)

 と、アッコが加納に脅え切っていたその時。

 

「あっ、居た居た!」「えっ?」「……え」

 対峙する加納とアッコに、四人の男性が駆け寄ってきた。

「良かった。やっと見つけたよ」「ほらっ、みんなが待っているよ」

「ほぅ、良かった。無事に見つかりましたね…」

 

「あ、貴方達……」「き、君等は。い、いったい……」

 突然現れた謎の四人組にアッコと加納が戸惑う中、四人組は加納に言い切った。

「ちょっとお兄さん。家の子に何してくれちゃっているの」

「いくらお嬢さんが可愛くったって、無理やりデートに誘うなんて失礼ですよ」

「あ、貴方達はいったい…」

 加納が訊ねると、四人組は加納に答えた。

「私たちはこの子の保護者ですよ。トイレに行ったまま帰ってこないから心配で見に来たんです」

「ほ、保護者?」

「さぁさぁ。みんなが待っているよ。屋上に行こう」

「えっ。あ、あの。ちょっと……」

 見知らぬ四人組に連れられて、半ば強引にアッコはデパートの屋上へと同行された。

「あっ……チッ」

 思い通りに事が運ばない現状に、加納は思わず舌打ちをする。

 

 一方で屋上。アッコは4人の男性達から囲まれるようにベンチに座っていた。

「あ、あの……貴方達は、いったい」

「いや~。良かった良かった。あんな強引なデートの誘いは中々断りにくいからね」

「えっ。そ、それじゃ貴方達は……」

「ええ。貴女が嫌々ながら連れて行かれそうになったのを見て、思わず嘘八百を並べてしまったんですよ」

「そ、そうだったんですか。あ、あの本当にありがとうございます!」

「いえいえ。私達も正直に申し上げると、貴女の心の中にある光に興味が有るんですよ」

「えっ? ひ、光って。そ、それっていったい何の事?」

「……どうやら、まだ自分の中にある光の力に気付いていないみたいだな。これは好都合……楽に消せる!」

「えっ!!」

 4人は一気にアッコの体を抑え込み、動けなくした。

「ちょ、ちょっと! 何する気なの!? や、止めてよっ」

「ふっふ、お嬢さん。本当に済まないが、我等が女王クイン・ベリル様の御命令だ。大人しく消えてもらおう!」

「あ、貴方達はいったい!?」

 アッコが問うと、4人はそれぞれ名乗り始めた。

「冷酷の貴公子ジェダイト!」

「キュートな、ゾイサイト♡」

「№2の使い手ネフライト!」

「そして、最も優れた才を持つクンツァイト!」

『我等、ダークキングダム四天王!!』

「だ、ダークキングダム??」

 初めて聞く名称にアッコが混乱する中、ネフライトがアッコに説いてやった。

「ふふ、どうも状況が理解できないようだね。それでは、お嬢ちゃんには特別に教えてあげるよ。我々はダークキングダム……その女王であらせられるクイン・べリル様の命令で君の事を調査そして抹殺するためにわざわざ来たんだよ」

「えっ? えっ? な、なんで私なんかを? そ、それにダークキングダムっていったい何?」

 混乱する一方のアッコに、ゾイサイトが答えた。

「な~に、私たちの事知らないの? それはちょっとショックね。まぁ貴女にも分かり易く言ってあげると……私たちはあのセーラームーンと敵対している勢力なのよ」

「せ、セーラームーンと……で、でも何でそんな人達が此処に居るのよ! わ、私なんかを相手にしてどうしようっていうのよ!!」

 困惑するアッコにジェダイトが呆れながらも指摘する。

「ふぅ~。君は全くもって、自分の心の中にある強大な光の力に気付いていないみたいだね」

「ひ、光の力……?」

 理解が追い付かずに困惑するアッコに、クンツァイトが静かに言い放つ。

「君の心の光は、あのセーラームーンをも上回る力があるんだよ。今はまだ覚醒はしていないが、何れは我々にとっても邪魔な存在になるんだ……だからこそ、今の内に消えてもらわなければいけないんだよ」

「そ、そんな……わ、私。セーラームーンや他の英雄みたいに強くは無いんです。ほ、本当です……」

 アッコは今にも泣き出しそうな様子で四天王に訴えるも、ジェダイトが早々に片付けたがる。

「ふっ、面倒だ。さっさと片付けようぜ」

「可愛い女の子を。それもセーラー戦士じゃない子を殺しちゃうのは、ちょっと癪だけど……」

「ゾイサイト。べリル様の命令だ、逆らう事はできないぞ」

「あっ、解ってるよクンツァイト♡」

 クンツァイトと色恋中のゾイサイトは可愛く頷く。

「さぁ光の力を持つ少女よ。大人しく消えてもらおうか……!」

「い、いやぁ!」

 ネフライトがアッコの命を奪おうとした、その時。

「キッシャアアァ!!」

 突如、何処からともなく怪人が現れ、四天王に襲いかかった。

「きゃああ!」「なっ、何なんだ一体!?」

「こ、こいつは……!」「わ、我々の配下の妖魔ではないな……!」

 悲鳴を上げるゾイサイトに、謎の怪人に一驚するジェダイトとネフライトとクンツァイト。

 すると、デパートの巨大看板の上に立っていた男が四天王に告げた。

「おい、お前達。その女の子に傷は付けさせないよ」

「な、何者だ。お前は!」

 ジェダイトが問うと、男は素直に名乗った。

「ふっ、私の名はプリンスゼラ。その女の子から少し聞きたい事が有るんでね。大人しく渡してもらおうか」

(こ、今度はプリンスゼラ……! い、いったい何がどうなってるのよ!!)

 突然のプリンスゼラの襲来にアッコは更に恐怖する。

「な、何をっ。急に現れて何を言い出すんだ! 何処の馬の骨とも知らない輩が出しゃばるんじゃない!!」

「ふぅ~。どうも聞き分けのない方々だ…仕方がないな。ヤレッ、者共!」

 ジェダイトの文句にプリンスゼラは呆れると同時に合図すると、一斉に辺りには豹の爪(パンサークロー)の団員が集団で出現した。

「な、何よこいつ等! いきなり出てきちゃって!」

「みんな落ち着け。こいつ等は所詮生身の人間ばかりだ! 我々四天王に敵う訳が無いだろ!!」

「ふふっ。確かに、君たちは普通の人ではない事は少しは解るさ。そこで、彼等にも出て来て貰うよ!」

 ゾイサイト達にクンツァイトが指示する中、ゼラは更なる手段を講じた。

 すると最初に現れた怪人以外にも、更に複数の怪人が四天王の前に姿を現す。

「げっ。ま、まだ居たのかよ。コイツ等……!」

「ジェダイト、怯むんじゃない! こんな連中に脅えるとは四天王の恥だぞ!」

「な、何だと……!」

 ジェダイトは普段から自分を見下しているネフライトに怒りを感じる中、クンツァイトが皆に指示を出す。。

「ひ、怯むな! こんな連中なぞ我々の力で消し去ってくれるわ!」

「よ、よ~し……て、アレッ? あ、あの女の子は……」

 と、ここでゾイサイトが先ほどまで一緒だったアッコの姿が消えている事に気付く。

「な、何? 仕舞った!いつの間にか騒ぎに乗じて逃げ出したか……」

「くっ。い、今はこの連中をどうにかしなければ……!」

 クンツァイトとネフライトが渋々ながらパンサークローと交戦する中、ゼラは密かに思っていた。

(よし。これで後は、上手くシスタージルの手中に収まってくれれば……調査してやっと分かった。あの加賀美あつこの周りで起きる不可解な出来事、そしてそれに彼女も何らかの形で関わっている事を……)

 

 しかしこの時、四天王と豹の爪(パンサークロー)のやり取りを陰で見ていた二人が居た。

 それは先ほど四天王に加賀美あつこを横取りされた加納望と、彼と同じダークジョーカーの幹部であるケトーの二人。

「おいカノン。なんでアイツ等の目の前に出て行っちゃいけねえんだよ」

「まったく。君は血の気が多くて仕方がないね」

「なっ、何っ!」

「少しは様子見をしようとは考えないのかい。それに奴等の事情はそれぞれ違うらしいが、あの四天王は加賀美あつこを消そうとしているし、ゼラと名乗る男は加賀美あつこを生け捕りにしようとしているのは目に見えている。それに、実は一つ僕に考えが有るんだよ」

「な、何?か、考えって……」

「あの加賀美って子を調べる内に色々と解ったんだよ。ちょっと耳を貸せ……」

 そして加納は、ケトーに自分の考えた作戦を耳打ちした。

「……と言う事だ。君の得意分野だろ」

「け、けどよ。そんなに上手く行くか?」

「な~に。相手は加賀美あつこが最も気になる存在なんだ。簡単には見破れまい……」

「は、はぁ……」

 

 かくして、ダークキングダムの四天王に豹の爪(パンサークロー)。そしてダークジョーカーの幹部2名は、加賀美あつこを追撃するのだった。

 

 

 

 

[向かえ! 加賀美あつこの元に]

 

一方、聖龍隊地下基地。メインフロアでは。

「あ~あ。今日は休日だって言うのに、薄暗い地下で大人しく待機とはね……」

「美奈ちゃん別に良いじゃない。こんなに大勢でワイワイやるのも楽しいし♪」

 美奈子とレイが楽しそうにお喋りに勤しんでいた。

「そうね……以前は一人っきりでパンサークローと戦っていて、少しは心細くなることもあったけど今はこうして苦楽を共にできる仲間が居るって素晴らしいわ」

「えぇ。僕もこんなに美しい御姉さま達に囲まれた日々を過ごせるなんて光栄ですよ」

「ふふっ。ソウシ君ったら」

「もう~。ホントに恥ずかしいわ……」

 ハニーに受け答えするソウシを見て微笑むまことに対し、イサミはソウシの気障な部分に恥ずかしがっていた。

「しっかしよ~。何か最近は加納や豹の爪(パンサークロー)の連中が余り動かねえよなぁ」

「ああ。何だか少し不気味なぐらいだ」

 星夜とデューイのこの会話にも、うさぎは呑気に喋り返す。

「たまには、悪い人だって休日を楽しみたいんじゃないのかな」

「うさぎさんは相変わらずのんびり屋ですねぇ」

「ホント、気が重くなっちゃうわよ」

 うさぎの呑気さにトシもルナも呆れてしまう。

「しかし、こうも動きが無いのも返って怪しく感じますね」

「その人達、最近は何をしているのかな…」

「悪党共の考える事なんて解りたくないわ」

 小狼の懸念にさくらと苺鈴が話し返す。

「……加納先輩。いったいどうしたんだろう」

「りりかちゃん……」

 加納の動向を思い悩むりりかを見て、亜美が悲痛な表情を浮かべる。

「しかし。ホントに最近加納望はもちろん、豹の爪(パンサークロー)にダークキングダムですら目立った動きが無い……一体どうしたんだろう」

「まぁ。連中が大人しくなる訳ないし、加賀美あつこを見張りながら気長に待つしかねえよ」

 アルテミスの懸念に変身怪獣が答えていると、暗くなっていた小田原修司が重い口を開いた。

「……加納望なら、昨日会ったよ」

「へっ?」「!!」「し、修司さん……」「い、今なんて……!」

 変身怪獣にレイ、りりかと星夜が一驚すると修司は再度述べた。

「加納望なら、昨日会ったんだよ」

『……な、何だって~!』

 修司の発言に聖龍隊は皆揃って驚愕した。

「お、オイっ修司! そ、それはどう言う事なんだよ! い、いったい何処でカノンと会ったって言うんだよ!!」

 デューイが問い詰めると、修司は薄暗い顔で答えた。

「か、加納は……昨日、あのアッコの家の前でうろついていたんだよ」

「な、何ですって!」「あ、アッコちゃんの家の前で……!」

「で、でもなんで加納がアッコさんの家の前に居たの!?」

 一驚するレイに亜美に続いて訊ねるイサミに、修司は返答する・

「加納の話だと、アッコの母親である加賀美恭子のファンだとか抜かしてな。アッコの家の前に突っ立っていたんだよ」

「そ、そんなバカな!」

「か、加納がわざわざそんな理由で此処、中央地区まで来る訳ないだろ!」

 修司の話に星夜もデューイも驚くばかり。

「で、でもなんで加納さんはアッコさんの家まで訪ねて来た訳なの……」

 さくらの疑問に答える様に、修司はアッコについて皆に打ち明ける。

「実は最近、アッコが誰かの視線を感じるって言うんだよ。しかも四六時中……」

「そ、それって……!」「だ、誰かがアッコちゃんを見張っているって訳?」

「見張っているなら俺たちの事じゃないか?」

「で、でも! 家の中まで視線を感じるって。ど、どう考えても可笑しいわ!」

 まことと亜美、言い合うトシとハニーを前にまことが修司に声を掛ける。

「! も、もしかして修司君」「えっ」

 まことに続き、レイが真意を衝いてくる。

「あ、あなた。アッコちゃんの事でそんなに思い詰めていたの……?」

「………………」

 修司が黙り込んでしまった、その時。

 

「中央地区市街地にて謎の存在が確認されました 繰り返します 中央地区市街地にて謎の存在が確認されました……」

 突然の警報音に変身怪獣が叫ぶ。

「な、なんだ? 中央地区って、すぐ側……ていうかこの辺じゃないか!」

 これに修司もハッと我に返ってウッズに指示を飛ばす。

「ハッ。う、ウッズ! モニターに警報反応があった地区の映像を映せ!!」

「は、はいっ」

 ウッズはすぐさまコンピューターを操作し、巨大モニターに映像を映した。

「は、はい。映りましたっ」「こ、こいつ等は!」

 監視カメラからの映像を見て、変身怪獣が我が目を疑う。

「えっ! プリンスゼラにパンサークローの怪人達が4人の男性達を襲っているわ!」

 ハニーが指摘する中。小狼が四人組の男の能力に気付く。

「い、いや。ちょっと待ってください。この4人もそれぞれ特殊能力を使っていますよ。そ、それにあの妖魔まで彼等と一緒に応戦していますよ!」

「あっ! あの4人は!」「か、彼等が何であのゼラと戦っている訳!?」

「えっ。レイさん達、あの人達の事知っているんですか?」

 一驚するレイと美奈子にイサミが訊ねると、ルナがその理由を説いた。

「か、彼等が例のダークキングダムの幹部、四天王よ!」

「し、四天王!?」「あらあら。結構カッコイイ人達ですわね」

 一驚するソウシに反して穏やかな知世に。うさぎが事実を述べる。

「でもこの人達。確かゲイが二人居た筈よ」「! ま、マジでっか……」

 うさぎからの告白に、ケルベロスは若干引いてしまう。

「な、なんで彼等がプリンスゼラと豹の爪(パンサークロー)の怪人達と戦っている訳?」

「さ、さぁ……」

 まことと亜美が状況を呑み込めない現状の中、ウッズが新たな反応を確認する。

「あっ、待ってください。少し離れた地区からも反応が有りました」

「ウッズ。其処の映像を出してくれ!」「はいっ」

 修司からの指示で映像をモニターに映すウッズ。

 すると映像が切り替わり、其処には何かから逃げるように全速力で走る加賀美あつこの姿が確認できた。

「あっ。アッコちゃんだわ!」変身怪獣「な、何か逃げているみたいだな」

 まことと変身怪獣がアッコの姿を目視すると同時に、ウッズが新たな情報を伝達する。

「あっ、後方からアッコさんを追っていると思われる生体反応が有ります!」

「う、ウッズ! そ、その追っていると思われる存在の映像に切り替えろ!!」

「はいっ」

 修司に命じられ、ウッズが映像を切り替えると、其処にはアッコを追っていると思われる男の姿が確認できた。

「だ、誰?」「ウッズ、画像を拡大しろ」「はい」

 遠くから視認できない映像にレイが戸惑う中、修司が再度ウッズに指示する。

 ウッズが映像を拡大してみると、男はあの加納望であった。

「か、加納先輩!?」

「な、なんで加納がアッコさんを追いかけているんだ?」

「か、カノン。一体何をしようとしているんだ……」

 何ゆえ加納がアッコを追跡しているのか解らず混乱してしまうりりかに星夜にデューイ。

「あ、アッコが……アッコが……」

 修司はアッコの危機的状況に、僅かながらの恐怖を感じていた。

「……おっ、おい。相棒……修司!」「……えっ」

 呆然とする修司に、変身怪獣や仲間達が言った。

「し、修司君。早く行かなきゃ!」

「そ、そうよ! このままじゃアッコちゃん、あの加納に捕まっちゃうわ!」

 レイや美奈子の言葉に、修司は背中を押される。

「は、はあ。そ、そうだな……せ、聖龍隊、出撃するぞっ」

 修司からの指示に、ハニーが提案する。

「分かったわ! 私とセーラー戦士はプリンスゼラとダークキングダムの四天王の所に向かうわ。他のみんなは修司君と一緒に加納を追ってアッコちゃんを護ってあげて!」

 ハニーの提案に、さくらやりりか達は素直に受け入れる。

「は、はい!」

「分かりました! 関係ない人まで襲うようになるなんて…」

 しかしこの時、りりかは加納のこの暴挙に悲観した。

「り、りりか……」「ナースエンジェル……く、くそぅ。カノンめっ」

 悲嘆するりりかを前に、星夜もデューイも加納への怒りを募らせていた。

「よ~しっ、みんなそれぞれ各役割を果たしながら出撃しろ!」

『了解!!』

 

 聖龍隊も悪役達の撃退及び加賀美あつこを追うのだった。

 

 

 

[目の前に現れた、あの人]

 

 その頃、加賀美あつこは騒ぎに乗じて四天王から逃げ、デパートを抜け出して町の中を走り回っていた。未だに各勢力が自分を追っている為、どうすれば良いのか。どこに逃げれば良いのか分からず、ただただ走っていた。

 

「はっ、ハァハァ……な、なんで私が追われなきゃいけないの……ま、まさか調子に乗って英雄に変身しすぎたからバチが当たったのかしら……」

 アッコが息を切らし、電柱に手を付いて休んでいる、その時。

「おっ、おい。アッコ!」「……えっ」

 アッコを呼び止めたのは、修司だった。

「あっ! ……し、修司~!!」

 アッコは修司を見て、思わず泣き出してしまう。

「アッコ大丈夫か。変な連中に追われているみたいだけど」

「うっ、うぅ……う、うん。今も逃げて来たんだけど、私怖くて……どうしたら良いか解らなくて。そ、それで……」

「うん、もう分かったよ。さぁこっちだ、付いて来い!」

「う、うん……」

 アッコは修司に言われるままに、修司に同行した。

 

 

 一方、此方は四天王とプリンスゼラの戦闘現場

「……ふ、ふぅ。君達も中々手強いね」

 息を切らすゼラに対し、ジェダイト・ネフライト・ゾイサイト・クンツァイトも呼吸を乱しながら答える。

「お、お前こそ……に、人間とは思えねえほど強いな」

「は、はぁ。こ、この私を此処まで追い詰めるとは……そ、そなた。実に素晴らしい武人で有るな……!」

「はぁ……ま、まさかネフライトに認められちゃうなんて」

「い、いや。ネフライトもそうだが、私も同感だ。ぷ、プリンスゼラと申したな。そなたの実力、天晴れですぞ!」

「ふっ。あ、あなた方の様な素晴らしい能力を持つ人達に御褒めに頂けるとは。此方も寛大であります……!」

 以外にも、互いに実力を出し切り、五分と五分の闘いをした両軍は、相手の実力に敬意を表し始めた。そして、両軍の戦いが静まり始めた時だった。彼等の目の前にセーラームーン達とキューティーハニーが現れた。

「其処までよ、プリンスゼラ! そしてダークキングダム!」

「せっ、セーラームーン!」「こ、こんな時に……!」

 セーラームーンを筆頭としたセーラー戦士達の登場に、ジェダイトとゾイサイトが焦り出す。

「プリンスゼラ! 今度は何を企んでいるの!」

「おやおや。キューティーハニーまでも現れましたか。これはちょっと厄介ですね」

 キューティーハニーからの問い掛けに、ゼラは多少ながらも焦りを覚えていた。

 実はこの時、両勢力は互いに戦いすぎて力を消耗しきっていたのだ。

「う、うむ。いかん、力が消耗していて今は戦うことなど出来んぞ……!」

「ど、どうしようクンツァイト」

 考え込むクンツァイトとゾイサイトだが、ここでゼラがある提案を四天王に投げ掛ける。

「こ、このままでは殺られてしまう……し、仕方がない! クンツァイト殿! 今は互いに休戦してこの場を切り抜けましょう!」

「むっ。や、止むを得ません。ダークキングダム四天王! プリンスゼラと共にセーラー戦士及びキューティーハニーを撒くぞ! 我々の目的はあくまで強大な心の光を持つ少女、加賀美あつこだけだ!!」

 このクンツァイトの発言にセーラー戦士達は戸惑った。

「えっ!?」「か、加賀美あつこって?」

「こ、心の光を持っているって。あ、あのアッコちゃんが……?」

「ひ、光っていったい……ど、どうなっている訳?」

 一驚するマーズにヴィーナスにマーキュリーとジュピター。

キューティ「プ、プリンスゼラ。貴方も加賀美あつこに有ると言う心の光と言うものを狙っている訳なの!?」

 キューティーハニーもゼラに問い掛けると、ゼラは淡々と受け答えるのみ。

「ふっ、心の光……ですか。いいえ、その光については今初めて知りました。まぁ、その光が有るからこそ、あの奇跡をおこせたのかも知れませんがね」

「えっ。き、奇跡って……」

「キューティーハニー、貴女は気付いていますか。あの加賀美あつこの周りでは普通では有り得ない出来事が起きている事を。そして、彼女から醸し出ている癒しのオーラを」

「い、癒し……?」

「そう。あえて言うなら、全ての憎しみや悲しみを受け入れ、そして温かく包みこむ。そう、まるで母親が幼児を抱きしめてあげる様な抱擁による癒しの力。それが四天王達の言う心の光の力なのかもしれない」

「あ、貴方はあの子を。アッコちゃんをどうする気なの!?」

「彼女は例の、もう一人のキューティーハニーについて話してもらおうかと思います」

「も、もう一人の私……!」

「そう。貴女も見たでしょ。あの時、ミスティーハニーの憎悪の感情を抱擁の力だけで見事に消し去ったキューティーハニー。その力の根源は、彼女の中に有る光の様な温もりの力なんだよ。そして、その力を、心を持っているのは調査の結果、あの加賀美あつこしか居なかったんですよ」

「!! そ、それじゃ……」

「そう。あのもう一人のキューティーハニーは、あの加賀美あつこ。……だったのかもしれません」

「で、でもそんな……あ、あのアッコちゃんが私に変身できるなんて……!」

「そうでしょうか。実際に貴女だって変身できるじゃないですか。それに、貴女以外にも変身する事のできる人達がこの町にはウジャウジャ居るのを忘れてませんか。まさか自分だけが【愛の戦士】だなんて思ってはいないでしょうね。正直、貴女にはできなかった聖羅の憎悪を彼女は消し去ったんですよ。貴女にはできなかった事を……ね」

「!!」

 ゼラに指摘されて動揺するキューティーハニー。だが、そんなキューティーハニーと話すゼラにクンツァイトがセーラー戦士達と交戦しながら訴える。

「プ、プリンスゼラ! 喋っているヒマがあるなら早く英雄達を倒すんだ!」

「おっと。これは失礼しました。ではキューティーハニー、今は貴女ではなくあの少女に集中したいので、これにて……」

「ま、待ちなさい。プリンスゼラ!」

 

 ダーク・キングダムもパンサークローも、狙いは同じ加賀美あつこには変わりなかった。

 

 

 

[すれ違う想い]

 

 一方その頃、ナースエンジェル達にさくら達。そしてしんせん組の面々と聖龍使いにメタルバードは急いで加賀美あつこの元に向かっていた。

「い、急げ! あの加納がアッコさんに何をするか解らないぞ!」

「あ、ああ。何とか間に合ってくれれば良いんだが……」

 星夜とメタルバードが急行するのを追っていくナースエンジェルとデューイ。

「か、加納先輩は何でアッコさんを追っているのかしら……」

「も、もしかして……例のもう一人の英雄の件で加納も何か加賀美あつこに関心が出来たのかもしれない!」

「し、しかし……あのアッコが英雄に変身できる力など持っているのか……!?」

 聖龍使いが疑念する中、そんな彼にケルベロスが答える。

「し、しかしやなぁ。実際ナースエンジェルにキューティーハニー。もう一人の英雄の姿が確認された時、近くにあのアッコはんが居たのは真実なんやから関係ないとは言えへんでぇ」

 トシにソウシにイサミもアッコが変身能力を持っている事に驚きを隠せない様子。

「だ、だけど。本当にあのアッコさんが色んな英雄に変身した張本人なのかな……」

「信じられないけど、状況からしてそうとしか考えられないよ!」

「あ、あんな綺麗な人が変身する能力を持っていたなんて……!」

 メタルバードとさくらもアッコの身を案ずる。

「どっちにしたって早く行かなきゃ加納に何かされちまうぞ!」

「は、はぁ。アッコさん、無事で居てくれれば良いんだけど……」

 と、此処で小狼が同行してくる苺鈴と知世に忠告する。

「と、ところで何で二人も付いてくるんだ! 今回は色んな輩が出て来ているんだ、危ないぞ!」

「しゃ、小狼達の力に少しでもなりたいのよっ」

「わ、私も。少しでもさくらちゃん達の活躍をカメラに収めたいんです」

「か、カメラに収めたいって……」

「まったく。戦闘を何だと思っているんだが……」

「ま、まぁまぁデューイ……」

 知世の言動に星夜もデューイも呆れるのを、ナースエンジェルが宥める。

 と、街中を走り抜け、アッコと加納を探しながら走っていた最中の事。

「……ムッ。こ、この感じは!」「え? ケロちゃんどうしたの?」

 突然なにかを察したケルベロスにさくらが訊ねると。

「さ、さくら! ク、クロウカードや! クロウカードの気配がするでぇ!」

「ほっ、ほえぇ!? か、カードがこの近くにあるの?」

「こ、こんな時にっ」

 ケルベロスの報告に戸惑うさくらと小狼達に、メタルバードが告げた。

「……仕方がねえ。キャプター組は此処で一旦カードの回収に急げ! 加納とアッコはオレ達で何とかする!」

「で、でもアッコさんが……」

「さ、さくらっ。今はカードが先や! 後一枚で全部集まるんやでぇ」

「い、行っておくれ。さくら、小狼。後はワシ等で何とかする!」

 戸惑うさくらにケルベロスと聖龍使いが言う。

「で、でも……」

 アッコを放っといてカードの収集に行くのを躊躇っていたさくらに、デューイが冷たく言い放つ。

「別に行っても良いよ! ほとんど戦う気のない君等が居ない方が返って早く済むからさ」

『!!』

 このデューイの発言に彼以外の全員が衝撃を受ける。

「ちょ、ちょっとデューイ……」

「い、今のはいくらなんでも言いすぎだろ」

「ちょっとデューイさん」「い、今のはちょっと……」

「何だよっ、ホントの事だろ!」

 ナースエンジェルに星夜、イサミやトシが窘める中、デューイは撤回しない。

「………………」「………………」「………………」

 デューイの発言に、さくらも小狼も言い返せず、聖龍使いも黙り込んでしまう。

「……ま、まぁ。加納とアッコはオレたちだけで大丈夫だから。お前達はカードの収集に向かって大丈夫だぞ」

「……はい」「……わ、分かりました」

 メタルバードの了承を得て、さくらと小狼達は気落ちしながらも最後のクロウカードの回収に向かう為、聖龍隊を一時抜けたのだった。

 

 それからキャプター組と別れた聖龍隊は市街地でそれぞれの組に別れて加賀美あつこと加納望の捜索を行った。

 

 

 

 別れて行動している時。しんせん組の3人はこんな会話をしていた。

「……それにしてもデューイさんたら。少しは自分の発言を考えてほしいわね」

「あ、あぁ。そうだな……」

「……あれじゃさくらちゃん達が可哀そうだよ。いくらホントの事とは言え」

「! ちょ、ちょっとソウシ! 彼方まで何てこと言うのよ!!」

 ソウシの発言に、イサミは思わず怒鳴ってしまう。

「お、落ちつけよイサミ!」

「だ、だってさくらちゃん達だって精一杯頑張っているのよ! そ、それなのに……」

「い、イサミ。だ、だってよ結局さくら達はカードの収集でいっぱいいっぱいじゃないか。敵との戦闘の時だって戦う気が微塵も無くって……言っちゃなんだけどデューイの意見には少し共感しちまうよ」

「!! と、トシ。彼方までそんな事を……!」

「だ、だってさぁ……」「う、うん……」

「……だったら、彼方達だってそうじゃない!!」

「! い、イサミ……」「! イサミちゃん……」

「あ、アンタ等はどうなのよ! いっつもいっつも黒天狗党や犯罪者、それらの勢力と戦っているのはほとんど私なのよ! 私だけが龍の剣で戦っている時彼方達は全然戦えてないじゃない! 折角修司さんが棒術で鍛えてくれてるっていうのにトシにソウシは全然進歩してないじゃない! それなのに他人の事言える訳!!」

「………………」「………………」

「さ、さくらちゃん達は本当に優しい良い子だって、トシやソウシだって知っているでしょう。か、彼女達はただ争い事が嫌いなだけで。そ、それでいつもカード使うタイミングを逃しているだけなのよ。ほ、本当はさくらちゃん達だって……わ、私と同じなのよ。ほ、本当は天狗党と戦うことなく……お、お父さんと家族4人で、ずっと一緒に暮らしたいだけなのよ……! ウッ、ウウゥ……」

「い、イサミ……」「イサミちゃん……」

 イサミは思わず、戦いに疲れた事だけでなく、本当は行方知らずの父親と共に平穏に暮らしたいと言う本音を吐きながら大粒の涙をボロボロと流し出してしまう。

 

 イサミにトシ、ソウシが言い争っているその時。聖龍使いとメタルバードは。

「……ふぅ~。にしてもデューイの奴、もっと気の効いた事言えないのかね。アレじゃあ仲間割れのきっかけになっちまうぜ」

「……う、うむ」

「ん? どうした相棒。何かまた暗くなっちまっているぞ」

「い、いや。大丈夫じゃ(結局、別々の作品。作品別のキャラクター同士では絆を結ぶことなどできないのだろうか……)」

 

 聖龍使い、いや。小田原修司は三次元人として他作品のキャラクターとの溝が深まっていく現状を、身に染みて痛感していた。

 

 

 

 そして、ナースエンジェル組は。

「おいデューイ。さっきのさくら達への台詞。いくら何でも言い過ぎだぞ」

「フンッ。僕はありのままを言っただけだよ。悪いのは非常事態なのにカードの方に行っちゃう木之本達だろ」

「で、でもさくらちゃん達だって協力してくれる時はあるでしょ。それなのに……」

「だいだいカードの封印が解けたのは、監視役のケルベロスが居眠りして、そのイビキに気付いた木之本が本を開いてしまったから解けちゃったんじゃないか。本開けたのもアレだけど、監視役がでっかいイビキ掻いて寝ていて良いものか……」

「……確かに。でも、さくら達は余り戦いをしないのは、戦いを好まない連中なんだからだと思うぞ。だからこそ攻撃力のあるカードを使える時も、思わず躊躇ってしまうんじゃないのかな……俺だって、こんな争い早く終わらせて平穏な生活が送りたいよ」

「星夜……それは誰もが思っている事なのよね」

「ナースエンジェル……」

「私ね、ときどき思うの……本当は先輩がブロスに操られている事はもちろん、ダークジョーカーの事も、ナースエンジェルの使命も全部夢だったら良かったなって……」

「えっ……」「……」

「本当はダークジョーカーなんて居ない、ブロスも居ない、ナースエンジェルも居ない平和な世界で…今までの事は全部夢で現実ではパパやママやお祖母ちゃん、弟の賞や友達の花林ちゃんに安奈ちゃん。ちょっとイジワルな所も有るけどホントは寂しがり屋のみゆきちゃんや、栄子ちゃんに美子ちゃん……そして星夜と、みんなで何もないけど平和な日常が続くだけの、在り来りの生活が送れる……そんな人生だったら良かったなって。そう思うのよ」

「り、りりか……!」「ナ、ナースエンジェル……」

 

 この時のナースエンジェルは、今まで星夜やデューイが見たことも無かった程の。とても寂しく、そして虚しさを漂わせている、悲しい顔をしていた。

 

 

 

 

[無人工場での心情]

 

 そしてその頃。アッコは修司に連れられて、人気のない無人の工場まで来ていた。「はぁはぁはぁ……こ、此処まで来ればもう大丈夫だろ」

「は、はぁはぁ……」

 二人は全速力で走って逃げて来たので、息がもう続かなかった。

「はぁ……あ、アッコ……」「し、修司……」

 二人は互いの顔を見つめ合い、しばらく黙りこんでしまう。

 

 その時、アッコを探索するために分かれて行動していたナースエンジェル組が工場までやって来て二人の姿を確認する。

「あっ、居たわ! アッコさんだわ」

「は、はぁ。良かった~、修司さんが無事に保護してくれていたか~」

「よし。これで後はカノンを見つけ出して……ンッ? な、なんで修司が此処に? さっきまで聖龍使いになって一緒に行動していたのに……」

 三人は二人に声をかけようとしたのだが、その時。アッコが修司に話し掛ける。

「あっ、あの……し、修司……」

「ん? なんだアッコ」

「あ、あのね……昨日は、ホントにゴメンね」

「えっ?」

 アッコは昨日修司に言ってしまった暴言について、謝り始めた。

「き、昨日……修司が私を気遣って優しくしてくれたって言うのに……わ、私ったら……ついカッとなっちゃって。ほ、ホントにゴメンね。修司……」

「アッコ……」

「し、修司の優しさ踏み躙っちゃって……酷い事言っちゃって……修司が心配してくれたのに私……辛かったからって修司の事傷付けちゃって……本当にゴメン!」

 アッコは涙を流しながら、修司に昨日の暴言の事を深く謝罪する。

 

 そして、この時の会話を隠れながらナースエンジェル達も聞いていた。

「あ、アッコさん……」

「そうか……修司さんが落ち込んでいたのは……」

「………………」

 ナースエンジェルも星夜もデューイもアッコや修司の近況を知って言葉を失う。

 だが突然、そんな修司とアッコの目の前に加納望が現れた。

「此処に居たか。加賀美あつこ……」「! か、加納望……」「……」

 現れた加納にアッコが怯える中、修司は加納と目と目で会話していた。

「か、加納先輩……!」「ど、どうする……このままじゃ」

「くっ……し、修司はどうするんだろうか」

 突如現れた加納に対して陰で見ていたナースエンジェル達は、どのタイミングで出て行けばいいのか迷ってしまっていた。

 そんな中、アッコは修司に打ち明けた。

「あっ…し、修司聞いて! こ、この人普通の人に見えるけど本当はブロスって言う悪い人に操られているの! 昨日だって何故か分からないけど家の前に居たでしょ! き、今日もさっきデパートでいきなり私に声かけて来て無理やり連れて行こうとしたのよ……!」

 アッコは加納がブロスに操られている事。そしてデパートでも加納に出会い、半ば強引に連れて行かれそうになったのを修司に包み隠さず話した。

 だが修司はというと。

「……フッ。そんな事、とっくに知っているさ」

「!!」

 修司は突然、怪しい笑みを浮かべるのだが、その笑みからアッコは目の前の修司が本人ではない事を悟る

「! あ、貴方は……あなた修司じゃない!」

 驚くアッコに目の前の修司は淡々と述べる。

「フフッ。いやぁ、此処まで上手くいくとはね。よほど修司とかいう人間の子を好きなんだなこの子。……こんな三枚目な面なのに良くもまぁ、こんな可愛い子に惚れられるよ。全く」

「あ、あなた……い、いったい……誰?」

 脅えるアッコを前に、加納が言う。

「ふふ。もう正体明かしても良いと思うぞ」

「ああ。そうだな……」

 すると目の前の修司はいきなり姿が変わった。

「え! あ、貴方はいったい!?」

 驚くアッコに加納は説明する。

「ふふ、紹介するよ加賀美あつこ。彼は僕と同じダークジョーカーの幹部で変装の名人。ケトーだ」

「へへっ、初めましてお嬢ちゃん。いや~全然気付かなかったね。まさかこんな三枚目に此処まで心を許しているとは…」

「だから言っただろう。加賀美あつこは小田原修司に本気で恋しているんだって。だから君に変装の話を持ちかけたんだよ」

「いやぁ、正直こんなガニ股でオヤジ臭いガキに変装するのは骨が折れたんだぜ」

「あっ……あっ……!」

 余りの出来事に、アッコは驚き動けなくなってしまった。

 

 この様子を陰で見ていたナースエンジェル組は。

「! そ、そんな……あ、あの修司さんは……」

「ケトーだったんだ! くそっ、このままじゃアッコさんが……」

「くっ、カノンにケトー。相変わらずコズルイ真似をする……」

 ナースエンジェル達が密談している中、突然加納がケトーに告げた。

「……ケトー。君は加賀美あつこを連れて一旦この場から離れてくれないか」

「へっ? そ、そりゃまた何で……」

「……さっきからコソコソと物陰から隠れてこっちの話を盗み聞きしている連中が居るんだよ」

「なっ、何!?」「えっ?」

 加納の発言にケトーもアッコも驚く中、加納は物陰に隠れている三人に告げる。

「……僕が気付かないと思ってるのかい? ナースエンジェル」

「!!」

「それと、星夜にデューイも居るだろ」

「ゲッ!」「! あっ……」

 驚愕する三人に、加納は冷淡に話し続ける。

「さっきから其処で何をしているんだい? 悪いが今は加賀美あつこに集中したいんだよ」

 この加納の発言に、ナースエンジェルは思い切って三人の前に姿を現した。

「か、加納先輩! それにケトー。加賀美あつこさんから離れなさい!」

 ナースエンジェルに続き、星夜とデューイも飛び出す。

「か、加納! オマケにケトー、加賀美あつこさんを放しやがれ!」

「久しぶりだねケトー。まさか君までもカノンと一緒に加賀美あつこを追っていたとはね」

 目の前に姿を現した三人に、ケトー、加納が答える。

「久しぶりだなデューイ……この裏切り者めが! お前は昔っからムカつく奴だったが、まさか今はナースエンジェルと一緒に俺等と対抗しているとはね……」

「君達の相手もしたいのは山々だけど、今は加賀美あつこの方に集中したいんだよ……彼女には何かしらの力が秘められているみたいだからね」

 加納の発言に、ナースエンジェル達は驚いた。

ナース「えっ? ひ、秘められた力……って。い、いったい……」

聖夜「い、いったい。何だよその力って言うのは!?」

 ナースエンジェルや星夜の疑問に、加納は先ほど耳にした話を星夜やナースエンジェル達に語った。

「ふぅ……実はさっき、ダークキングダムとか名乗る連中の話を聞いたんだが、この加賀美あつこの心には強大な光の力が有るみたいで。しかもあのセーラームーン達をも凌ぐ程の光の力らしいよ」

「ええ!?」「な、何ですって……!」

 この加納の話に、アッコ本人はもちろんデューイも受け入れ難かった。

「そ、そんなこと無いわ! 私にそんな力なんてありません!!」

「ま、まさか。その子にそんな力が有ると本気でお前達は信じているのかよ!」

 すると此処でケトーが打ち明ける。

「いやいや。俺たちはそいつ等の言う光じゃなくって、その子からもう一人の……そう、もう一人のナースエンジェルについて問い質したいだけなんだよ」

「!!」

「も、もう一人のって!?」「じゃ、じゃあまさか!?」

「や、やっぱり……!」

 ケトーの話に、アッコはもちろん星夜にナースエンジェルにデューイは愕然とした。

「あ……あぁ……(こ、この人達は気付いてしまってる。わ、私の秘密に……こ、コンパクトの秘密に……!)」

 アッコは自分の秘密が知られているのかと不安に思うと同時に、恐怖で畏縮していた。

「まっ、と言う訳で済まないが今日は君等の相手をしているヒマはないんだよ。悪いが今日だけは引き下がってくれないかい?」

「ふ、フザケナイでください!!」

「! り、りりか!」「な、ナースエンジェル……!」

 聖夜にデューイは驚いた。何故ならナースエンジェルこと森谷りりかは、好意に思っている加納望に対して滅多な事で怒鳴るような事はないからだ。

「たっ、例えどんな秘密を持っていても、それを無理に暴くなんて行いは絶対に許される訳は無いわ!」

「……」「……」「……(り、りりかちゃん……)」

 ナースエンジェルの力説に、星夜もデューイも黙り込み、アッコはナースエンジェルの優しさに感激していた。

「だ、誰だって人に言えない隠し事の一つや二つはあるわよ! 私だって友達や家族にはナースエンジェルだってこと言えずにいつも嘘ばっかりついて……ホントの事は言えずにいつも辛い思いしてるのよ。そ、それでも私はナースエンジェルである以上、貴方達ダークジョーカーの、そしてブロスの野望を打ち砕くため! そして何より加納先輩を助けるためにも、今はどんな事にも耐えて、我慢して……そして必ず、みんなが幸せに暮らせる日々を築いてみせるわ!!」

(り、りりか……)(ナースエンジェル……)

(りりかちゃん……ありがとう……)」

 ナースエンジェルの優しさを前に、星夜もデューイもアッコも感動していた。

 ナースエンジェルの心からの本音に聖夜やデューイはもちろん、加納達に捕えられているアッコも心から共感した。

「ふふ。まぁ、これからブロス様の所に連れて行って、本当にこの子がナースエンジェルに変身できるのかどうか調べるんだ。だから今日はもうこれで御暇させてもらうよ」

「ああっ。ま、待って!」

 ナースエンジェルが加納を制止しようと呼び止めるも、ケトーが立て続けに話す。

「まっ、こんな子にナースエンジェルに変身できる力が有るとは到底思えないけど。色々と調べてみたら、この子の周りには実に不可解な事ばかり起こっているから、可能性として連れて行くよ……それじゃあ」

「ま、待て!」「待つんだカノン! ケトー!」

 加納にケトーが、アッコを連れてその場から消え去ろうとした。その時。

 

 突如、工場の壁から大型ダンプカーが突っ込んできた。

「きゃああ!」「な、なに~!?」「えっ、ええ~!」

 突然のダンプカーの乱入に一驚するナースエンジェルに星夜にデューイ。

「くっ……」「きゃーー!!」「な、何が起こったー!?」

 突っ込んできたダンプカーに驚き怯む加納に悲鳴を上げるアッコ、そして混乱するケトー。

 突っ込んできたダンプカーに驚いた面々は、その場に座り込んでしまう。

「……はっ、そうだ。この隙に……!」

 アッコは加納とケトーがダンプカーに気が行っている隙に、その場から走って逃げた。

「あっ!」「し、しまった!」

 加納とケトーが逃げるアッコに気付いたその時、ダンプカーの中から運転していた者が出てきた。

「ふぅ~。加賀美あつこを追う為に近くの工事現場に有ったダンプカー拝借して此処まで来たんだけど……加賀美あつこは何処に居るかな。まったく、プリンスゼラとの戦闘でかなり力を消耗しちゃったから仕方なく人間のダンプカーを借りて追う羽目になるとは……」

 何とダンプカーから出てきたのは、ダークキングダムの四天王の一人ゾイサイト。

「あっ、お前は!」「確かダークキングダムの……」

「お、お前はさっきの……」

「ああ。さっきデパートで加賀美あつこを押さえてた一人だ……」

 星夜とデューイ、そして先ほど陰で観察してた加納とケトーに声を掛けられたゾイサイトは真顔で答える。

「あれっ? 君何で此処に居るんだい、さっきのナンパ男くん」

 ゾイサイトは不思議そうな表情で、加納達に向かって話した。

「お、お前……よくも僕たちの邪魔をしてくれたな……!」

「あ、ああ……全くだ。あと一歩のところで加賀美あつこをブロスの所に連れて行けたって言うのに……」

「え? 加賀美あつこが此処に居たの? でも何で君が此処に……あっ、そうか。デパートで私達にナンパの邪魔されたから、今度は二人掛かりであの子をナンパしていたんだね。まったく、これだから男の子ってのは……」

 ゾイサイトは呆れた様子で加納とケトーをからかう。

「き、貴様!」

「じゃ、邪魔しておいて何てこと言いやがるんだ!」

 そのゾイサイトの発言に、ナースエンジェル達は動揺し出した。

「え……か、加納先輩。ナンパしたんですか……?」

「ち、違う! 僕はただ加賀美あつこを」

「とか何とか言っちゃって。本当はアッコさんをナンパしてたんじゃないのかぁ?」

 ゾイサイトの発言を真に受け、ナースエンジェルは仰天し、星夜は加納を茶化し始めた。

「オイお前! 何急に出て来て俺達の事邪魔した癖に何デタラメ抜かしていやがる!! そ、それに男の子って……お前も男じゃ無えかよ!!」

 このケトーの発言に、ゾイサイトは少し苛立った。

「ムッ。そんな事より加賀美あつこは何処に行ったんだ! 私はあの子に用が有るの!!」

 このゾイサイトの発言に加納も怒鳴り返す。

「お前がダンプカーで突っ込んできた騒ぎに乗じてどっかに行っちまったよ!!」

「何だって! そ、それじゃ早く探しに行かないと……」

 と、アッコを追ってその場から立ち去ろうとするゾイサイトにケトーが反論する。

「テメエ! 俺等のいた場所にダンプカー突っ込ませて来たくせに、何も言わずに行っちまう気かよ!!」

「ウルサイなぁ。私はアンタ達に付き合っていられる程ヒマじゃないの。……で、加賀美あつこはどっちの方角に行ったのかしら?」

 反省の色も見せないゾイサイトに、加納とケトーは完全に怒った。

「お、お前は……!」

「な、何さっきからいい加減な事ばかり吹いていやがる……!!」

 二人は怒った形相で、ゾイサイトを睨みつける。

「おっ。もしかして怒っちゃったのかい? モテないからって、やつ当たりしないでほしいわ」

「「き、貴様ー!!」」

 加納とケトーはそのまま、ゾイサイトと戦闘に突入してしまう。

 

 三人が戦闘に突入したその隙に、ナースエンジェル達は密かに会話をしていた。

「……ね、ねぇ。これ止めた方が良いのかな」

 ナースエンジェルは三人の喧嘩を指して言うと、星夜とデューイが放置を勧める。

「ほっとけよ。それよりも、俺たちも早く加賀美さんを追いかけないと大変だぜ」

「ああ。加納やケトーの他にも、加賀美あつこを狙っている輩がたくさん居るみたいだしな」

 

 三人は加納たちに気付かれない様、静かにその場を去った。

 

 

 

 

[助けてくれたお婆さん]

 

 その頃、アッコは工場を抜け出し一人で町の中を走っていた。

「ハァ、ハァ……き、今日は一体何だって言うのよ。みんな私の心に光が有るとか何とか言っちゃって……わ、私はただ色んな人や物に変身する事しかできないのよ。そ、それなのに何で英雄達の敵が私の事を追いかけ回すのよ……ウ、ウウゥ……」

 アッコは一度に色んな敵キャラ達が襲ってきた現状に、再び泣き出してしまった。

 この時、アッコは道の真ん中に立っていたのだが、後から来た車に気付いていなかった。

 車はアッコに気付いて急ブレーキをかけた。

「きゃあっ」

 アッコが驚いた瞬間、車の中から一人の老婆が出てきて、アッコに歩み寄った。

「まぁ。大丈夫だった、お嬢ちゃん」

 老婆は驚いて転倒してしまったアッコに手を差し伸べ、アッコを立たせてあげた。

「あ、ああ……だ、大丈夫です。どうもすいません……」

「一体どうしたの? アラッ、あなた泣いているじゃない。何かあったの?」

 老婆の優しい言葉に、アッコは思わず老婆にしがみ付き助けを求めた。

「た、助けてください! わたし今悪い人達に追われているんです! も、もう何処に逃げて良いのか……わ、解らなくて…… ウゥ」

 アッコの切実な叫びを聞いて、老婆は優しい口調でアッコに話した。

「まぁ、それは大変。辛かったでしょうね……解ったわ。私があなたを安全な場所まで連れて行ってあげるわ」

 老婆の発言に、アッコは思わず微笑んだ。

「あ、ありがとうございます!」

「ささっ。私の車に乗りなさい。安全な場所まで運んであげるわ」

 老婆はアッコを車に乗るよう誘導し、アッコを乗せて車を走らせた。

 

 

 一方、そのころ工場では。

「はっ、はぁはぁ……」「へっ、へぇ、へぇ……」

「はぁ……ま、まさか此処まで戦えるとは……君達も普通の人間じゃないんだね」

 加納とケトーと熱戦を展開して、ゾイサイトは驚いていた。

「あ、当たり前だ! お、俺たちはこう見えてもダークジョーカーの幹部なんだぞ! お前みたいに何処の馬の骨とも解らねえオカマ野郎とは違うんだ!!」

 ケトーのオカマ野郎発言に、ゾイサイトは再度苛立った。

「き、君は……さっきから何かと失礼な発言ばっか言ってくるね……!」

 と、此処で加納がケトーに声を掛ける。

「お、おいケトー。ナースエンジェル達が居なくなっているぞ。恐らく加賀美あつこを追いかけに行ったんだろう」

「い、今は目の前のオカマ野郎を何とかしねえと!」

「! き、きみは……いったい何回オカマオカマと言うんだ! 終いにゃ、ハッ倒すわよ!!」

 ケトーの無礼な発言にゾイサイトも完全に怒った。

「ケッ。上等だぜ、このヤロー」

 すると加納が、ゾイサイトと更に戦おうとするケトーを制止した。

「け、ケトー。今は我々も加賀美あつこを追わなければ!は、早くしないと他の四天王や豹の爪(パンサークロー)に加賀美あつこが取られてしまう……!」

「くっ……し、仕方が無えか。今は俺たちも加賀美あつこを追わねえと……」

 加納の提言を聞き入れ、ケトーは加納と共にその場から去ろうとした。

「あっ。逃げるんじゃないよ、コラッ!」

 ゾイサイトの制止を聞かず、加納とケトーも加賀美あつこを追った。

(ちっ、何だよあいつ等。まぁ良いわ。既にあの子から感じられる光のエナジーは、私たち四天王にも一度会った時から把握できているのよ。今頃は他のみんなが加賀美あつこを……)

 

 その頃、加賀美あつこの方は。

 助けてくれたお婆さんに連れられて、アニメタウン郊外の方に向かっていた。

「……あ、あの」「ん? なぁに、お嬢ちゃん」

「こ、このまま進んでいくとアニメタウンの郊外に出ちゃいますよ。確かこの道進んでいくと郊外の河原に行っちゃうんじゃ……」

 アッコが疑問に思っていると、老婆はこう問い返したのだった。

「……ふふっ。あなたは何も心配しなくても良いのよ……加賀美あつこ」

「! お、お婆さん。何で私の名前を……」

 アッコが驚いた次の瞬間。いきなり車のボンネットに男が飛び降りて来た。

「きゃああ!」「な、何なの!」

 アッコと老婆が驚く中、ボンネットに飛び降りて来たのは四天王ネフライトだった。

「見つけたぞ! 加賀美あつこ」「あっ、貴方は……!」

「だ、誰だい! いきなり目の前に現れやがって!」

 老婆は急に、暴力的な態度を取る。。

「おいババア! 大人しくその少女を渡すのだ! 私はその少女に用が有るのだ」

 ネフライトの発言に、アッコはスグに車を降りてネフライトに告げた。

「あっ、待って。こ、このお婆さんは関係ないの! だから何もしないで上げて……」

 アッコは自分を助けてくれた老婆を庇い、自ら車を降りてネフライトに願い出る。

「ふふ、それなら大人しく一緒に来てもらおうか。クンツァイト達が首を長くして待っているからな」

 ネフライトはそのままアッコを連れて行こうと、アッコに手を伸ばした、その時。

「オイっ、待ちやがれ!」

 急に老婆は怒鳴り、スグに車から降りてきた。

「んっ」「お、お婆さん!?」

 ネフライトとアッコが凝視する中、老婆は妖しくも禍々しい雰囲気で言い放った。

「……その少女は、その加賀美あつこは我々が連れて行くのだ! お前こそ大人しく下がっていろ!」

 すると老婆は自分の服を剥ぎ取る様に切り裂き、中からシスタージルがその姿を現した。

「きゃ、きゃああ!」

「な、なぬ!? ば、ババア。お前はいったい……」

「ババアでは無いわ! 我が名はシスタージル! 誇り高き豹の爪(パンサークロー)の幹部である!!」

「な、何? 豹の爪(パンサークロー)と言えばあのプリンスゼラの……!」

「ふふっ、そうじゃ。そのゼラから言付けされてのう。町の中で加賀美あつこを確認したら、すぐさま確保せよ……とな」

「くっ、また別の輩が加賀美あつこを……!」

(あ、あのお婆さんまで悪い人だったの……! ど、何処に居てもみんなが私を追ってくる……!!)

 アッコは言い争っているネフライトとシスタージルの隙を見て、その場から逃げ去った。

「あっ、こら待つんだ! 加賀美あつこ!!」

「くぅぅ、せ、せっかく捕まえられたのに。クッソ~!」

 一人逃げ出すアッコを見定め、ネフライトとシスタージルはアッコを追走する。

 その一方、アッコは逃げながら、何で自分がこんな目に遭っているのか考えていた。

(ハ、ハァ……何で、何でなのよ! 何で私ばっか追われるのよ! 調子に乗って英雄に変身していたから? 私の中に有る光って何なのよ!!)

 アッコは泣きながら、ただただ逃げ続けた。

 

 

 

 

[苦悩するキャプター組と、合流した二人の青年]

 

 その頃。さくら達はケルベロスが感じたカードの気配を追って、無事にカードを発見。そして最後のクロウカードの封印に成功していた。

「は、はぁはぁ……」

「は、はぁ。流石に最後のカードだけあって、随分手こずったな」

 さくらと小狼が疲労困憊している中、知世と苺鈴そしてケルベロスも労った。

「や、やりましたね。さくらちゃん!」「しゃ、小狼もお疲れ様!」

「し、しかし……アーシー(地)がまさか中央地区まで来ていたとは。お、驚きやでぇ……」

 彼等は何とか最後のクロウカード、アーシー(地)のカードの封印を終え、一段落していた。

 すると突然、さくらが発した。

「ね、ねぇみんな! カードの封印も済んだんだし、私達も早く加賀美あつこさんを助けに行こうよ!」

 だが皆の反応は薄かった。

「だ、だけど……」「……」「……」

 小狼達は突然黙り込んでしまった。デューイに言われた事を未だに気にしていたのだ。

「み、みんなどうしたの! 早く行かないと……」

 急かすさくらに、小狼が指摘する。

「で、でもさくら……俺たち……俺たちに本当に英雄の活動なんてできるのだろうか」

「えっ?」「……」「……」

 小狼はそのままさくらや知世に苺鈴達に語り出した。

「……正直、今まで思っていたんだよ。俺たちは封印が解けたカードの捜索ばかりしてきて、周りのみんなとは余り協力的にしていなかったし……それに、暴走したカード以上に凶悪な敵達相手に上手く太刀合えるか……不安なんだよ」

 この小狼の話に、知世も苺鈴も賛同する。

「……ええ。今までの封印以上に危険な事が待ち受けているかもしれませんし……」

「それに、正直言っちゃうと。結局は私達とは関係ない敵ばかりなのよ……無理に協力して行かなくても、良いんじゃないのかな……て思っちゃうし」

「………………」

 三人の意見を聞いて、ケルベロスも語り出した。

「……まぁ、それは確かやなぁ。元はと言えば町の市長、小田原修司が勝手にワテラを英雄に推薦したのが切っ掛けやったんやし、正直無理に英雄の活動する必要も無いと思うで~」

 みんなの発言に、さくらが思い切って自分の考えを言い放った。

「み……みんな!」

「! さ、さくら」「さくらちゃん……」「さ、さくら?」

「うわっ。いきなり何やねんさくら」

「わ、私だって正直怖いよ。カードの封印だけでも怖いのに、更に強くて悪い人相手に上手く戦えるか…正直、さっきデューイさんに言われた様に、私は戦う気が無いから……ううんっ、勇気が無いからあんな事言われちゃったのは仕方が無いけど……いつか、そういつか必ずみんなの役に立つためにも絶対に《最後の審判》も突破して、カードの力をみんなの為に役立てたいの!」

「さ、さくら……」「さくらちゃん。其処まで……」(さくら……)

 さくらの硬い決意に、小狼も知世も苺鈴も愕然とする。

「……そう。最初聖龍使い、修司さんが言った様に一緒に戦ったり努力したり……一緒に困難を超えて行くのも大事だけど。何より自分にしかできない事を優先して、自分達が出来ない事を他の仲間に任せるのが、本当の仲間。本当の友達じゃないのかな。カードの封印は私たちにしかできないし、封印が済めばスグにみんなと一緒になって、協力していくこともできるんじゃないの? 今私たちにできる事は《最後の審判》の前にまず……聖龍隊のみんなと合流して加賀美あつこさんを救い出すためにも、私たちの魔力を……カードを使うべきじゃないのかな……ち、違うかな……」

(ふっふ~ん。まさか魔力だけでなく、さくらの心も此処まで成長していたとはなぁ…

…)

 さくらの力説を聞いて、ケルベロスはさくらの心の成長を感じ取っていた。

 するとさくらが力説していた、その時。彼女たちの前に二人の男たちが姿を現した。

「おやっ? 君たちは……」「えっ?」

「やっぱり、聖龍隊の……セーラームーンと一緒に居た」

「あっ、貴方達は……」「早見青児とタキシード仮面!」

 現れた早見青児にタキシード仮面に、さくらや小狼に苺鈴が一驚する。

「御兄さん達、何で此処にいらしたんですか?」

 知世が訊ねると、早見青児とタキシード仮面は答えた。

「実は、今この中央地区で豹の爪(パンサークロー)が活動をしていると情報が入ってきて……」

「私も。例のダークキングダムの、それも四天王が真昼間から4人総出で動き回っていると耳にして駆けつけて来たんだ」

 これを聞いたケルベロスとさくらが二人に訴えかける。

「ちょ、ちょうどええわ! 実はワテラも今から聖龍隊と合流してその二つの敵勢力と対峙しに行こうって話していたんやっ」

「は、はいそうなんです。その人達が加賀……い、いえ一人の女の子を……何故かは分からないんですけど追いかけ回しているんです!」

「な、なにっ?」「奴等! 一般の少女に手を出そうとしているのか……!」

 さくら達の話を聞き、タキシード仮面と早見青児は彼等に告げた。

「よしっ。俺たちも一緒に行こう!」「え?」

「ああ。奴等を放っておく事は出来ない……何より無力な一般の人が巻き込まれてしまっている以上、助けない訳にはいかないからな」

「あ、あぁっ。あ、ありがとうございます! 早見青児さん、タキシード仮面さん」

 さくらが礼を述べていると、小狼も発言した。

「よ、よしっ。俺も行くぞ!」「しゃ、小狼?」「えっ?」

「小狼くん……」

「さ、さくらの言う通りだ。怖がってばかりじゃ前に進む事なんて出来やしないし、それに何より今こんな時にこそカードの力を使って困っている人を救わなければいけなんだ。か、カードの力……俺たちの力だって誰かを救う事は出来る筈なんだ! 《最後の審判》も大事だけど、今はまずみんなと……聖龍隊のみんなと合流して、協力して加賀美あつこさんを助けなきゃいけない!」

「しゃ、小狼くん…」

 さくらが小狼のこの発言に心から喜んでいると、苺鈴も知世も笑顔で頷いてくれた。

「わ、私だってその気になればたくさんの人を助けてあげられるわ!」

「め、苺鈴ちゃん」

「そうですわ。誰だって、少しは他の人の力になってあげられる事は出来ますわ」

「と、知世ちゃんも……み、みんな。ありがとう」

 さくらは目に涙を浮かべて、喜びを感じた。

「ふぅ~。まぁ、そうスグに《最後の審判》が始まる訳でも無いんやし、市長はんの親友の加賀美あつこっちゅう女を助けに行きますかい」

「う、うん! 早見青児さん、タキシード仮面さん! 一緒に来てください。私たちも必ず役に立ちます!」

「ああっ、宜しく頼むよ!」「一緒に頑張ろうぜ、お嬢ちゃん達」

 さくらの呼びかけに、タキシード仮面も早見青児も賛同して同行する意思を示した。

 

 かくして、さくら達はタキシード仮面と早見青児と合流して、一緒に加賀美あつこを助けに向かった。

 

 

 

 

[激突!三つ巴の悪の組織VS正義の軍団]

 

 

 加賀美あつこはその頃、ネフライトとシスタージルから逃げ惑い、アニメタウン郊外にある河原までやって来ていた。

「ハッ……はぁはぁ。も、もうイヤ……誰か、助けて……」

 力尽きたアッコは河原で崩れ落ち、息を切らしてしまう。

「ふふっ。もう逃げられませんよ、加賀美あつこ!」

「えっ! あっ、う、うそ……」

 何と目の前にクンツァイト・ゾイサイト・ジェダイト。更に多数の妖魔たちが加賀美あつこの眼前に現れた。

「へへ。もう逃げられねえぜ」

「まったく。あの加納とケトーって失礼な男共の所為で余計な時間繰っちゃったわよ」

「あ……あ……」

 ジェダイトやゾイサイトにも追い詰められたアッコは完全に失望した。もう逃げ切る余力なんて無かったからだ。

 しかし、そんなアッコに対し更に追い打ちをかける様な出来事が起きた。

「ハッ。ハァハァ……や、やっと見つけたぞ加賀美あつこ!」

「まったく。シスタージルと有ろう者が、得体の知れない輩に妨害されて加賀美あつこを取り逃がすとは……笑えないジョークですね」

「そ、そんな……! シスタージルにプ、プリンスゼラ……!」

 シスタージルとプリンスゼラが、今度は豹の爪(パンサークロー)の手下や怪人達を大勢引き連れて現れた。

「はっ。ふぅ~。遅れて済まない、同志たちよ」

「ネフライトどうしたのだ、随分遅れて来たが……」

「あ、あのジルって女に邪魔をされて……!」

 先ほど加賀美あつこを逃がしてしまったネフライトもクンツァイトに報告すると同時に合流。

「そ、そんな……こ、こんな事って……」

 アッコは今にも泣き出しそうな顔で、声を震わせながら言葉を発した。

 すると、更に非情な事に残りの勢力。そう加納望とケトーも現れた。

「ふぅ、こんな所まで逃げだしていたんだね。加賀美あつこ」

「か、加納望……」

「ま、全く……あっ、オカマ野郎! テッメエ、さっきは良くも……!」

 アッコが怯える中、ケトーは先ほどのゾイサイトの行為を未だに怒っていた。

「あっ、君たちはさっきの……」

「ゾイサイト。彼等はいったい……」

「さっき私が加賀美あつこを追っている時に出くわした連中だよ……気を付けて。こいつ等も何らかの能力者だよ」

「そ、そんな……さっきの二人までも……」

 絶望的な情況に、アッコは更に怯えだした。

「へっへ。やいオカマ! さっきのお礼だ。お前等全員叩きのめしてやるぜ!」

「全くだ。我らがダークジョーカーに刃向かった報いだ! お前達出ろ!!」

 ケトーに続き加納が指を鳴らすと、二人の周りに多数のダークジョーカーの怪人達が出現した。

「な、何っ?」「こ、こいつ等にも手下が居たのか……!」

 ゾイサイトにクンツァイトが戸惑う中、同様にジルとゼラも困惑していた。

「くっ。どうなっているのだ、ゼラよっ」

「シスタージル……実を言うと我々以外にも加賀美あつこを狙っている輩が居た様なのだ」

 一方のアッコは悲嘆に打ちひしがれていた。

「そ、そんな……(もう……どうしようもないの……助けて、誰か……修司……!)」

 アッコは完全に失意のどん底であった。豹の爪(パンサークロー)にダークジョーカー更にダークキングダムと。自分の周りには、既に自分をどうにかしようとする者ばかりで、アッコはただ己の現状に絶望するばかり。

 

 しかし、その時だった。

「ダークキングダム、もう止めなさい!」「むっ、セーラームーン!」

 突如現れたセーラームーンたちセーラー戦士達にクンツァイトが表情を険しくさせる。

「豹の爪(パンサークロー)、アッコちゃんから離れなさい!」

「ぐぐぐ、キューティーハニーか……!」「ふふっ。もう此処まで来ましたか……」

 キューティーハニーも駆け付け、ジルもゼラも反応する。

「ダークジョーカー、貴方達の好きにはさせないわ!」

「ナースエンジェル……」「けっ、もう此処まで来やがったか」

 ナースエンジェルの登場に、加納もケトーも苛立ちを覚える。

「聖龍隊・しんせん組、只今参上!」

「おいっ、お前らもう止めるんだ!」

「可憐な乙女を泣かせるとは笑止千万ですよ!」

 イサミたち他の聖龍隊士の登場にもジェダイトたちは苛立った。

「チッ、もう他の聖龍隊まで駆けつけやがったか……!」

 更に現場には。

「銀翼の英雄メタルバード、只今参上とくらっ」

「……お前達! 我らが誇り高き聖龍隊であーーるぅ! 大人しく降伏したまえ! そして加賀美あつこから離れるのじゃあぁ!!」

 メタルバードに聖龍使いも颯爽と現れる。

「あ、あれが最近セーラー戦士と度等を組んで戦っているという聖龍使いにメタルバード! う、うむ……できる」

 ネフライトは一目見て、聖龍使いが武芸に秀でた者であると見切った。

「ってネフライト。武道の達人であるからって、そんな手合わせしたい様な目で見ないの!」

「まったく」「……やれやれ」

 そんなネフライトにゾイサイトもジェダイトもクンツァイトも呆れてしまう。

 そんなネフライトにジュピターが訴える。

「ね、ネフライト! もう止めようよ、貴方を信じているなるちゃんに申し訳ないと思わないの!?」

「! くっ……な、なる……」

 ネフライトは自分を思ってくれている人間の女子でうさぎ達の親友、大阪なると恋仲であった。彼は未だに彼女を騙してセーラー戦士たちと戦っている事に、少し後ろめたさを感じていた。

「あ、あれがナースエンジェル達に協力しているっていう聖龍使いか……」

「ああ。気を付けるんだ、あの大男は並の人間ではない……」

 一方のケトーと加納は、聖龍使いの剛腕に注意するよう警告し合う。

「あ、あれが今まで我等豹の爪(パンサークロー)の計画を尽く潰しおった聖龍使いか!」

「ああ……そうだ。彼にも超自然的な力が秘められているみたいだよ」

 ジルが問い質すと、ゼラは真顔で答える。

「あ、ああ……(せ、聖龍隊だ! それに、ちゃんと聖龍使いも居る……よ、良かった)」

 聖龍隊の到着に、アッコは心から安堵した。

「よーしっ。皆の集! まずは加賀美あつこを救出するのじゃ!」

 聖龍使いはそう叫ぶと、一気に加賀美あつこに駆け寄った。

「オレたちは援護しながら連中と応戦するぞ!」

「メタルバードも聖龍使いに続きます。

「行っくわよ~!」「わっ、ま、待って~!」

「豹の爪(パンサークロー)! もう貴方達の好きにはさせない!」

「加納先輩! 目を覚ましてください!」

「……私たちも、行くわよ!」「「お、おう!」」

 マーズにセーラームーン、キューティーハニーにナースエンジェル、そしてしんせん組の三人も敵勢力と対峙する事に。

 

 その場に居た聖龍隊員すべて、聖龍使いに続いて敵に突っ込んでいった。

 

「ひ、怯むな! 我等ダークキングダムの力見せつけてやるのだ!」

「豹の爪(パンサークロー)よ! キューティハニーはもちろん、その他の聖龍隊も全て殺してしまえ! そして加賀美あつこを奪うのだ!!」

「ダークジョーカーよ! お前達も行くのだ! おいケトー、お前も一緒に来るんだ」

「はいはい……仕方がねえな」

 混戦の中、クンツァイトが喝を入れる中、ジルは

 

 加賀美あつこを早急に奪う様に指示を出し、加納はケトーを引き連れて行動に移した。

 かくして聖龍隊は、3つの敵勢力と真っ向から三つ巴の戦いを繰り広げた。

 

 

 

[目覚める光と怒りの闇]

 

 三つ巴の戦いが勃発する中、聖龍使いは最初に加賀美あつこへと駆け寄った。

「お、お主! 加賀美あつこじゃな……無事であったか」

「はっ……は、はい。何とか……」

「うむ、それなら良い。ま、マーキュリー、それにジュピターよ! 加賀美あつこを離れた場所まで避難させてくれ!!」

 聖龍使いに呼ばれ、マーキュリーとジュピターが駆け寄ってきた。

「だ、大丈夫だったアッコちゃん」

「あっ、はい。大丈夫……」

「それは良かった。さぁ、貴女は此方に」

「あ……はい」

 アッコは二人のセーラー戦士に連れて行かれ、その場から立ち去ろうとした。が。

「へっ。はぁ……に、逃がさねえぞ! 加賀美あつこ……! 喰らいやがれ!!」

 ケトーはマーキュリーとジュピター、更に二人に連れて行かれる加賀美あつこに対して攻撃を放った。

「あっ!」「あ、危ない!」

「マーキュリー! ジュピター! それにアッコちゃん逃げて~!!」

 マーズにヴィーナスそしてセーラームーンが叫ぶが、三人の反応は遅れてしまっていた。

「え?」「えっ?」「……うん?」

 ジュピター、マーキュリーそしてアッコの3人がケトーの攻撃に気付いた時は、既に直撃寸前だった。

「きゃあぁ!」「た、大変! このままじゃ3人が……」

 悲鳴を上げるイサミに焦燥するキューティーハニー。

「そ、そんな」「クソっ、ケトーの奴。無茶苦茶しやがって……!」

「け、ケトー。まさか此処までするか!?」

 ケトーの横暴に悲観するナースエンジェルに苛立つ星夜とデューイ。

 しかし一方のケトーも加納に叱咤されていた。

「ば、バカかケトー! まずはブロス様の所に連れて行った後に処分するかどうか決める計画で有っただろ!」

「し、しかし……あのままじゃ加賀美あつこが連れて行かれちまうだろが!」

 

 そんな中、ケトーの放った攻撃は3人に直撃寸前まで迫る。

「きゃああ!」「わっ。せ、責めてアッコちゃんだけでも……」

「そ、そんな! キャア!」

 慌てふためくマーキュリーにジュピター、そして悲鳴を上げるアッコ。

 爆音と共に攻撃は3人を直撃、辺りには爆煙が舞い上がった。

 

「あっ、あぁ……!」「み、みんなー!!」

「そ、そんな……」「う、ウソでしょ……!」

 失意に暮れるキューティーハニーにセーラームーン、そしてマーズにヴィーナス。

「……あ、アレじゃ」「こ、こんな事って……」

「仮にもセーラー戦士は助かったとしても、生身の加賀美あつこはもう……」

 星夜もナースエンジェルもデューイも少なくともアッコの生存を絶望視する。

「……そ、そんなぁ」「ウソだろ……」「ま、まさか……」

「……あの攻撃じゃあ、加賀美あつこは、もう」

 イサミもトシもソウシも、そしてメタルバードも愕然とする。

「け、ケトー! なんて真似をするんだ!!」

「だ、だってよっ。逃げられじゃあ元も子も無いだろうが!」

 ケトーに文句を言う加納。

「オ、オォ……流石にあれでは」

「えぇ、生身の人間では……」

「あ、あの男。なんて早まった真似を……!」

「むむ……け、結局加賀美あつこが強大な光の力を持っているか分からず仕舞いか……!」

 クンツァイト、ゾイサイト、ジェダイト、ネフライトもケトーの軽率な攻撃に落胆する。

「な、何てことだ! あれでは加賀美あつこをキューティーハニーに変身させて空中元素固定装置を手に入れる作戦が……!」

「あの男、余計な事をしてくれましたね」

 ジルとゼラも、アッコの生け捕りが出来なくなったと幻滅するばかり。

「……あ……あ……あ……アッコー!!」

 そして目の前でアッコが攻撃されたのを目の当たりにした聖龍使いの中で何かが弾けた。

 

 

 その後景を見た一同は、マーキュリーとジュピターはともかく加賀美あつこの体はタダでは済まないだろうと予感していた。

だが。

 なんと、ジュピター・マーキュリー、それに加賀美あつこの前方に、光り輝くコンパクトが空中に浮いていた。更にコンパクトから放たれた光はドーム状の光の壁を作り、3人を攻撃から護ったのだった。

「えっ?」「こ、これは!」

「えっ……な、なんで……コン、パ……クト……が……」

 アッコは放たれた攻撃による衝撃と、自分のコンパクトが光の壁を作った現状に驚き、その場で倒れ込んでしまう。

「あっ、アッコちゃん!」

 ジュピターが叫ぶ中、マーキュリーがすかさずアッコの首元に手を当て、脈をとった。

「……うん大丈夫。少し気を失っているだけよ」

「よ、良かった……おーーいっ、みんな~アッコちゃんは無事よ~!」

 アッコの無事をジュピターは大きな声で仲間たちに伝える。

「よ、良かった……」

 マーズは胸に手を当て、心から安心した。

「う、うわ~! 良かった~!!」

 セーラームーンは大声で嬉し泣きを上げる。

「よ、良かった……うぅ……」

 キューティーハニーは安堵の余り、目から涙を零した。

「良かった……アッコさん無事で」

「あ、ああ……で、でも……」

「ああ。あのコンパクトはいったい……」

 ナースエンジェルが安堵する中、星夜とデューイは三人を護ったコンパクトの存在に疑念を抱く。

 

 そして加賀美あつこの無事を知って驚いているのは敵勢力も同じだった。

「お、おい……見たかカノン……」

「あ、ああ。あの光っているのは……」

 自分が放った攻撃を防御された光景に驚きを隠せないケトーと、コンパクトに驚く加納。

「な、何だアレはっ?」

「あの光に包まれている物体は……」

「あ、アレって女の子が化粧なんかに使うコンパクト……よね」

「……あの輝き……あ、アレこそがクイン・べリル様が仰っていたクイーン・セレニティをも上回る希望の力なのか……!?」

 ジェダイト、ネフライト、ゾイサイト、クンツァイトのダーク・キングダム四天王もコンパクトから放たれる光を目の当たりにして驚愕。

「お、おお……ぜ、ゼラよ見たか。あ、アレは……!」

「あ、あぁ。アレこそが彼女に秘められているというパワーなのか!」

 ジルとゼラもまた、アッコが持つコンパクトの力に魅了されていた。

 

 敵勢力も、自分達が目の当たりにしている現状に驚くばかり。

 

「……ハッ、はぁ。と、とにかく加賀美アッコが無事で良かったなぁ修……って、オ、オイ!」

 メタルバードは聖龍使いに声を掛けたが、目をやると聖龍使いは体を小刻みに震わせていた。

「………………」「お、おい……相棒……だ、大丈夫か……?」

 メタルバードが恐る恐る声を掛けていた、その時。

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ……ッ!!」

 聖龍使いが突然、雄叫びの様な怒声を上げた。

「きゃ、キャアア!!」「な、何っ?」

「こ、これは……!」「い、いきなり何っ?」

 セーラームーン、キューティーハニー、マーズにヴィーナス達が突然の咆哮に動揺する。

「キャアァ!」「う、うわ! い、いったい何だ?」「こ……これは!」

 ナースエンジェル、星夜にデューイも戸惑うばかり。

「う、うわぁっ!」「こ、この雄叫びは……!」

 聖龍使いの怒りの雄叫びにマーキュリーもジュピターも焦り出す。

「な、何なのっ?」「うわっ。じ、地面が……!」「じ、地面が揺れている!」

 聖龍使いが咆哮を上げた時から、大地が揺れているのを感じるイサミ、トシ、ソウシ達。

 

 聖龍隊は、突如唸り声の様な怒りの雄叫びを上げた聖龍使いと、それに連動して揺れる大地に驚愕した。

 そして驚愕しているのは敵勢力も同じだった。

「う、うわっ。な、何だ?」「こ、これはいったい……!?」

 突然の地震に動揺するケトーと加納。

「う、うわっ。じ、地震?」

「バ、バカな。雄叫びだけで地震なんか」

「で、でも! 実際に地面が揺れてるよ!」

「こ、これは一体!」

 ジェダイト、ネフライト、ゾイサイト、クンツァイトも咆哮だけで起こった地震に驚愕する。

「な、なんじゃ? 大地が揺れておる!」

「こ、これはどう言う事だ!?」

 ジルもゼラも、地震が発生するという事象に激しく動揺。

 

 大地は揺れ、風は吹き荒れ、森はざわめき。

 そして空を分厚い雲が覆い隠していった。

「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアァァ!!!!!」

 それでも聖龍使いの怒りは治まらない。

 

 

 

 

[荒れ狂うアニメタウン]

 

 時を同じくして、アニメタウン内各所でも地震や天候の以上に市民が気付いていた。

 

 アニメタウン郊外・聖チャペル学園

 

「キャアアッ!」「なっ、なに?」「地震よ、地震!」「うわあぁ!」

 突然の地震に驚き、机の下に避難するハニーの親友の秋夏子や、ハニー親衛隊のさえこ・みゆき・あゆみの四人。

 しかし学園の窓ガラスは次々に激しい地響きで割れていく。

「うっ、うわ~! なんじゃなんじゃ、いった~い!」

「ど、どうやら……地震の様ですわ!」

「で、でも! いくら地震でもこんなに長く揺れているものなのっ……?」

 慌てふためく団兵衛校長同様にミハル教師にアルフォンヌ理事長。

 学園内では窓ガラスが割れ、本棚は倒れ、最早人間が立っていられる状況ではなった。

 

 

 

 アニメタウン十番街・月野家

 

「きゃああ!」「ま、ママ! しっかり…」

「うわぁ! い、いったい何が起こったーー!?」

「し、進悟! 危ないからこっちに来なさい!」

 月野家の面々は激しい地震に驚き、3人でテーブルの下に潜り込んだ。

 

 

 

 友枝町・木之本家

「う、うわっ……でっかい地震だぞ。おい雪兎、危ねえから机の下に潜ってろ!」

「う、うん。分かったよ桃矢」

 木之本家では、ちょうどさくらの兄の桃矢と親友の雪兎が一緒に勉強をしていた真っ最中であった。

 

 

 

 森谷家

「うわぁ、地震だよママ!」「し、賞。危ないからテーブルの下に潜ってなさい!」

「な、何事だい!?」「な、何だ?」「クウゥ~……」

 森谷賞が戸惑う中、我が子を心配するまどかやくるみ一等や愛犬ハーブ。

 

 

 大江戸町・花丘家

 

「きゃ、きゃああ! な、何なの一体?」

「な、何じゃ一体……ンッ、あ、あれは……!」

 イサミの実母、玲子が戸惑う中、イサミの祖父、観柳斉は空を見上げて驚いた。

 空は分厚い灰色の雲に覆われ、怪しい雲行きになりつつあった。

「きゃっ。な、何ですの……」「あ、あれは……ま、まるで……」

 観柳斉は空を見て、驚愕した表情で言い放った。

「空が……いや、天が怒っておるようじゃ!!」

 

 

 

 アニメタウン中央区 加賀美家

 

「きゃっ。な、何……この揺れ……」

「クワッ~、クワックワッ」

「ニャアァ……」

 加賀美家でも、突然起こった地震にアッコの母である恭子は動揺し、シッポナは怖くてテーブルの下に逃げ込み、ペンペンは慌てふためいた。

 

 

 

 同じく中央区 小田原邸 地下メインフロア

 

「うわっ。じ、地震が!」「ウワッーー!」

「う、ウェルズ、ジュニア落ち着いて!」

 メインフロアでも地震の衝撃が直に伝わり、慌てふためくウェルズとジュニアをウッズが落ち着かせていた。

 と、その時。ウエルズが異変に気付いた。

「あっ、兄貴。た、たた……」

「んっ? 何ですかウェルズ、こんな時に……」

「か、か……体が……!!」

「ん……ってええ~! そ、そ、そんな~!?」

 ウェルズに続き、ジュニアも自分の異変に戸惑う。

「うわわ~。お父しゃ~ん、叔父しゃ~ん。体が~……」

「じゅ、ジュニアーー! ってうわ……」

「う、ウェルズ……!(そ、そんな……まさか自然界のパワーが不安定になっているのか……!)」

 果たしてウッズ、ウェルズ、ジュニアはどうなったのか。

 

 

 

[殺戮の闇]

 

 そして河原では。

「ウガアアアアアアアアアアア……!!」

 未だに聖龍使いが御雄叫びをあげていた。

 

「な、何なの……いったい……」

「ど、どうしちゃったの……彼……?」

「せ、聖龍使い……」「しゅ、修司さん……」

 突然の聖龍使いの豹変ぶりに、セーラームーンもヴィーナスもキューティーハニーもナースエンジェルも戸惑うばかり。

「め、メタルバード。こ、これは……」

「お、オレにも訳が分からねえよ……!」

「し……修司さん……」

 デューイの問い掛けにメタルバードは答える事が出来ず、イサミはただただ聖龍使いの豹変ぶりに脅え始めていた。

「ま、まるで怒りの感情で、自然まで怒っちまっているみたいだ……」

「せ、聖龍使いが怒ると自然までもキレちまうって事かよ!?」

「そ、そんな……まさか怒りの感情で此処まで……」

 星夜の表現にトシもソウシも信じられないという心境。

 

 突然の聖龍使いの上げる雄叫びと、同時に起きた地震や荒れた天候に、ヒロインたちは驚き、他の者たちも驚愕し、中には蒼ざめた表情を浮かべる者までも。

 そして聖龍隊は自然と、気絶した加賀美あつこと彼女の側に居るマーキュリーとジュピターの所に集まった。

「だ、大丈夫? そっちは……」

「え、えぇ……」

「だ、だけど修司君……あっ、いやいや……聖龍使いはどうしちゃった訳なの?」

「い、いや……オレも良くは……」

 マーズがマーキュリー達を気遣う中、ジュピターがメタルバードに問うも返答は変わらず同じ。

「アアアアアア……!! ………………」

 すると突如、聖龍使いが雄叫びを上げるのを止めたと思いきや、聖龍使いはそのまま敵達の方へと歩き始めた。

「えっ?」「な、なんだ急に……」

「あ、あの者……」「……気を付けろ。何を仕出かすか解らないぞ」

「お、おい……カノン……あ、あいつ……」「落ち付け、ケトー……」

 突然、此方へと歩き出す聖龍使いを前に、ゾイサイトもジェダイトも、ジルもゼラもケトーも加納も警戒心を募らせる。

 しかし聖龍使いは、ただただ無言のまま敵の方へと歩み寄るばかり。

「……はっ、そ、そうだ。おい妖魔達よ! あ、あの聖龍使いを攻撃せよ!!」

 ネフライトは配下の妖魔達に聖龍使いを攻撃するよう命じた。

「シャアアーー!!」「ギッシシシシ……」

 ネフライトに命じられ、2体の妖魔が聖龍使いに襲い掛かる。

「あぁ!」「せ、聖龍使ーーい!!」「あっ、相棒ーー!」

 マーズにセーラームーン、メタルバードが叫ぶも聖龍使いに反応は無し。

 妖魔2体が聖龍使いに襲い掛かった、その次の瞬間。

「ッ!!」

 聖龍使いは目を見開き、聖龍剣を抜刀した。

「「……グッ……グワアァァ!!」」

 聖龍使いは、一瞬の内に自分に飛び掛かって来た妖魔2体を聖龍剣で斬り裂いた。

 そして辺りには大量の妖魔の血が飛び散った。

「な、何!?」「う、うそ!」

 クンツァイトやゾイサイトたち四天王は一瞬で、しかも一撃であっさりと斬り捨てられた妖魔を見て驚愕。

「きゃ、キャアアア!!」

 ナースエンジェルが大量の血飛沫を見て悲鳴を上げた。

「あ、ああ……」「そっ、そんな……」

 血飛沫が散乱する場から少し離れた気絶した加賀美あつこの傍らで、ジュピターやマーキュリーたち聖龍隊全員も眼前の血の噴水を見て愕然とする。

「ば、バカな! た、ただの人間にあっさり妖魔が殺られるなんて!」

「い、いったい……聖龍使いに何が起こったっていうの……」

 ジェダイトは意図も簡単に妖魔が斬られた現状を信じられず、ゾイサイトは聖龍使いに何が起きたのか、理解できなかった。

「あ、有り得ぬ。あ、あの屈強な妖魔が……しかも2体同時に斬り捨てられるとは……!」

 クンツァイトは妖魔たちの血を浴びて立ち尽くす聖龍使いを前に動揺を抑えきれない。

「ウガアアアア!!」

 一方の妖魔の血を浴びた聖龍使いは更に雄叫びを上げて、敵達に攻撃を仕掛けてきた。

「う、うわっ」「は、早く殺れっ、妖魔共!」

 ゾイサイトが怯える一方で、ジェダイトが妖魔たちに指示を出した事で、妖魔達は集団で聖龍使いに襲いかかる。

「うわあああアアアア!!」

 だが聖龍使いは怒声を上げながら、次々に襲いかかってくる妖魔達を斬り捨てて行った。

「グワアアッ」「イギャアアァ!」「ヒィィィッ!」

 ある者は首を、ある者は左肩から斜め下にかけて袈裟斬りに、ある者は上半身と下半身に斬られ。一刀両断にされていく。

 すると見る見るうちに聖龍使いの甲冑も周辺も血で真っ赤に染まっていった。

「ね、ねぇ……メタルバード……せ、聖龍使いが……」

 マーズは妖魔達を切裂き、大量の血飛沫で全身が真っ赤に染まっていく聖龍使いを指差す。

「あ、ああ……ど、どうしちまったんだよ。相棒……」

 一方の聖龍使いは襲い掛かる妖魔達を斬り捨て、全て薙ぎ払っていた。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」

 聖龍使いは荒い息使いで充血した怒りに満ち溢れる瞳孔で敵勢力を睨み付けると、一気に敵勢力へと駆け出してきた。

「う、うわーー来るな! こっちに来るな!!」

 ケトーは恐怖で完全に腰が抜けていた。

「こ、これは……!」

「くっ……者共行くのだ! 行って聖龍使いを倒すのだ!!」

 突然豹変した聖龍使いに恐れ戦くジルとゼラが豹の爪(パンサークロー)の団員や怪人たちに命じる。

「ならば此方も……行けっ、ダークジョーカーの魔物達よ!!」

 加納もゼラに続く様に、手下の魔物達を聖龍使いに差し向けた。

「あぁ!」「い、いくらなんでもあの数じゃ……!」「せ、聖龍使いーー!!」

 ざっと数えても、数は50は優に超えている妖魔や怪人たちの群れが聖龍使いに襲いかかるのを目前に、ナースエンジェル、もキューティーハニーもメタルバードも愕然としていた。

 すると突然、聖龍使いは5メートルもの高さの上空に飛びあがると、大声で唱える。

「天雷(あまらがみ)!!」

 すると次の瞬間、聖龍使いの周辺一帯に次から次へと、雷が無数に落ちてきた。

「うわあっ!」「か、雷!?」「ま、まさか落雷を発生させて!?」

 突然、辺り一帯に落雷を発生させる聖龍使いを見て、イサミに星夜にヴィーナスたち聖龍隊は周辺に落ちて来た無数の落雷に驚く。

「グワアァァ!」「ギャアアァ!」「グオオォォ!」

「ぎゃああっ!」「ま、まさか雷で攻撃……ぐわあぁっ!!」

 ダーク・キングダムの妖魔達にパンサークローの怪人や下っ端やダークジョーカーの魔物までも次々に落雷を浴びて絶叫しながら黒焦げになって倒れていく。

「ば、ばかな……雷なんて……せ、セーラージュピターでも有るまいに……」

「な、何て奴……ぐわああっ!」

「ぞ、ゾイサイトーー!!」

 クンツァイトが焦燥する中、ゾイサイトにも雷が直撃する惨状を前にクンツァイトは絶叫する。

「き、気を付けろーー! 誰に落雷が落ちて来ても可笑しくないぞ!」

「う、うわぁっ!」

 ネフライトが四天王たちに注意を呼び掛ける中、ジェダイトが必死に落雷を回避していく。

「か、カノン……あの聖龍使いって……」

「あ……あぁ……」

 ケトーと加納は目の前の惨状に、顔が恐怖で引きつってい。

「ぜ、ゼラよ。私たちの部下共が……」

「あ、ああ。まるでゴミの様に消されていく……」

 ジルとゼラも、目の前の惨状に驚きが隠せなかった。

 

 そして、ようやく落雷が収まった時には。敵の群衆は雷に打たれ、肉体が黒焦げになる程激しい電撃を浴び、ほぼ全滅していた。

 辺りは黒焦げになった怪人や妖魔達、下っ端の亡骸で埋め尽くされていた。

 

「あ、ああぁ……」

 セーラームーンは眼前の後景に、ただただ恐怖を感じる他できなかった。

「お、おいっ。セーラームーン……それに他の連中もしっかりしろ!」

 メタルバードは動揺してその場に立ち尽くし、顔色を変えている仲間達を奮い立たせようよとするが。

「ぞ、ゾイサイト。しっかりしろ、大丈夫か」

 その一方でゾイサイトを心配するクンツァイトは、雷に打たれたゾイサイトを抱き抱えて声を掛け続ける。

「く……クンツァイト……だ、大丈夫だよ。安心して……」

「よ、良かった……」

 笑顔で答えるゾイサイトを見て安堵するクンツァイトに対し、ネフライトは聖龍使いに敵意丸出しで襲いかかった。

「く、クッソ~! 良くも私たちの配下の妖魔を! これ以上好きにはさせんぞ聖龍使い!!」

 ネフライトが専用の剣で斬りかかろうとした瞬間、聖龍使いも刀で攻撃を防ぎ、二人は組み合った。

「くっ……な、なんだ……この馬鹿力は……!」

 ネフライトは必死で押し合おうとしたが、聖龍使いの怪力に力負けしそうだった。

 しかしネフライトは一瞬の隙を付いて、聖龍使いの刀を弾き返し、空いていた左手で思いっきり聖龍使いを殴り付ける。

 殴られた衝撃で、聖龍使いの鬼の面が地面に落ちてしまう。

「あぁ!」「た、大変。アレじゃあ聖龍使いの素顔が……!」

「し、正体がバレちまう……!」「や、やべぇ……!」

 鬼の面が外れるという問題を前に、キューティーハニーもイサミも星夜もメタルバードも動揺する。

 聖龍隊は、敵勢力に聖龍使いの素顔、すなわち修司の素顔が見られてしまうと思い込んでいたのだが。

 

 一方の聖龍使いを殴ったネフライトは、殴り付けた聖龍使いに勇み立つ。

「はっ、はぁはぁ……ど、どうだ! 少しは効いた……か……! あ……あぁ」

 顔を殴られ、横を向いていた聖龍使いは、視線をネフライトへと向けた時だった。ネフライトは突如、聖龍使いの素顔を見て、見る見るうちに顔色を蒼然とした。

「ん? どうしたネフライト、顔色が変だぞ」

 ジェダイトが不思議そうに訊ねる中、ネフライトの顔色からは血の気が引き、蒼ざめ、そして次第に恐怖で顔が引きつっていくのが目に見えた。

「あ……あ、あ……あぁ……」

「ど、どうしたんだよネフライト。アンタらしくも無い……!! あっ! あ、あ……」

 脅えるネフライトに続き、聖龍使いの顔を見たジェダイトも、次第に顔から血の気が引き、生気のない様な顔色になっていく。

「ど、どうしたんだよ二人とも」「いったいどんな顔なんだ。聖龍使いは……」

 萎縮している二人を前に、ゾイサイトとクンツァイトも聖龍使いの顔を確認しに来る。

「そ、そんなにオッカナイ顔なのか?」

「い、いったいどんな素顔なんだ……」

 ケトーと加納も聖龍使いの顔を遠くから覗き込む。

「あ、あの聖龍使いはどんな面構えなのだ?」

「ふっ。どうせ、町でも噂になっている通りの年寄りだろ」

 ジルとゼラの二人も気になって聖龍使いの顔を覗き込んだ。

 

 そして敵勢力の幹部たちが、続け様に聖龍使いの素顔を覗き込んだのだが。

 

 

 

 

[始まりは 肉の塊(ハジマリハ ニクノカタマリ)]

 

「あ、あああぁ……!!」「こ、これは! い、いったい……!」

「!! こ、これが!」「せ、聖龍使いの素顔……!」

「お、おおぉ……! こ、この顔は……!」「な、なんと……!!」

 素顔を覗き込んだゾイサイトやクンツァイト、ケトーや加納にジルとゼラなどの敵幹部たちは揃って顔色が蒼ざめていき、恐怖に慄いた。

「ど、どうしたんだ連中?」

「な、なんだか顔色がどんどん蒼くなってきている……」

「な、何?」

「し、修司の顔って……そんなに驚くほどのもんじゃないけどなぁ」

 焦燥する敵幹部達の様子を前に、デューイやトシ、キューティーハニーにメタルバード達は不思議がる。

 この時ちょうど聖龍隊の方角からでは、聖龍使いは背中を向いていた為、修司の顔が今どんな表情をしているのか聖龍隊側では判別すらできなかった。。

「ば、ばけ……」「ギャ、ギャギャ……」「ア、アアゥ……」

 そして幹部たち同様に戦闘員である下っ端や怪人たちも、聖龍使いの顔を見て、恐怖で顔が引きつっていた。

「ば……バケモノ!」「!!」

 突然声を発したパンサークローの下っ端の発言に、聖龍隊一同は愕然とした。

「バケモノ……バケモノだ!!」「うわあぁぁ!!」

「くっ、来るな! コッチに来るな!!」

「な、何てオゾマシイ顔だ!」「こ、これが聖龍使いの正体か!?」

 幹部であるケトーにゾイサイト、ジェダイトにゼラ、クンツァイトも恐怖で混乱するばかり。

 聖龍使いの素顔を見た戦闘員や幹部たちが、揃って修司の顔を見て《バケモノ》と恐れ騒ぐ様子に、聖龍隊一同は驚愕する。

「グアアアアアアアァァァ!!!!」

 すると聖龍使いは再び、大きな奇声の如き雄叫びを上げた。

「ウアアアアアアア!!!」

 そして聖龍使いは雄叫びを上げながら敵の軍勢に飛び込んでいく。

「う、うわっ。来るな、来るんじゃねえ!」

 聖龍使いは最初、加賀美あつこやマーキュリー・ジュピターに攻撃を仕掛けたケトーに向かって行った。

「くっ、来るな! 来るんじゃねえよぉ!!」

 ケトーは聖龍使いに対して恐怖を感じながらも、必死に抵抗するかのように剣を振り回して威嚇。

 しかし聖龍使いはケトーの振り回す剣を左手で掴み、放そうとはしない。

「グッ……! は、放せ……!」

 ケトーは何とか剣を放させようと力を入れるが、聖龍使いは一向に手の力を抜かない。

「……お、お前……!」ケトー「!!」

 聖龍使いは突然、ケトーに対して語り始めた。

「お、お前……! ……良くも……良くも……仲間達を……アッコを……傷つけようとしてくれやがったな!!」

 聖龍使いはケトーに先ほどの行為に対して、怒りに満ちた口調で告げる。

「ひっ、ひいぃぃっ!!」

 ケトーはそんな聖龍使いの言動に完全に怯えてしまい、顔は真っ蒼になり、逃げ腰になっていた。

 聖龍使いは突然、掴んでいたケトーの剣を放し、その拍子にケトーは背中から地面に倒れてしまう。

「うわっ。く、来るな! 来るんじゃねえよ……!」

 最早ケトーは完全に動揺し、まともに立ち向かえる状況ではなかった。

 ケトーは必死にもがく様に聖龍使いに己の剣を突出するが。

「ウああああ!!」「う、うわあぁぁ!!」

 聖龍使いは脅え切るケトーに容赦なく聖龍剣を振り下ろし、剣を所持したままのケトーの右腕を斬り落した。

「うっ、うわああああ!!」

 ケトーの腕の斬り口からは大量に血が吹き出し、ケトー自身も自らの血で真っ赤に染まっていく。

「け、ケトー!」「い、いやあぁ!!」

「きゃあああ!」「け、ケトー……!」「そ、そんな……」

 右腕を斬り落とされたケトーを見て、蒼然とした顔で一驚する加納にセーラームーンにデューイにキューティーハニー達は、眼前の惨劇に只々、悲鳴を上げ、恐怖に慄くしかなかった。

「うわぁ! ……う、腕が……腕があぁぁ……!!」

 ケトーは腕の激痛にもがき苦しむ。

「うあああああ!!」

 しかし聖龍使いはそれでも攻撃の手を止めず、ケトーを何度も何度も斬り付ける。

「うわあああああぁぁ!!」

 ケトーは恐怖に満ちた表情で絶叫する。

 それからも聖龍使いは容赦なくケトーを斬り続けた。

 次第にケトーの身体から、皮は剥がれ、筋肉が浮き出て、血肉が飛び散り、動脈は抉り出されて、体の彼方此方から骨までも垣間見えるほどに、血肉が斬られ、骨肉が削られていく。

「……あ……あう……ぁ……」

 ケトーは、ほぼ全身の皮を斬られ剥がされ、筋肉の部分が露出し、白い骨が垣間見えるほどに斬られ続けた。そう、まるでただの肉の塊でしかない様に。

「そ、そんな……!」

 メタルバードは眼前で繰り広げられた惨劇に、さすがに血の気が引いていた。

「そ、そんな……」「し、修司さん……な、なんで……!」

「い、いくらなんでも……酷過ぎる……」

 イサミに星夜、ジュピターが蒼褪めた顔で恐怖する中。

「……あっ……」

 遂に、ケトーが事切れた。

「け、ケトー……!」「そ、そんな……ケトーが……!」

 加納もデューイもケトーの死を目の当たりにして愕然とする。

「……ハァ、ハァ……うアアアアア!!」

 一方のケトーを無残に斬り殺した聖龍使いは、更に他の敵勢にも斬りかかっていった。

「う、うわああ!」「こ、今度は此方に!」

「うああっ!」「くっ……!」「く、くっそ~!」

 ゾイサイト、ネフライト、ジルにゼラそして加納たち敵幹部は完全に恐怖で顔を蒼くし、戦意が消えつつあった。

そんな惨劇の最中。

「セーラームーン! それに聖龍隊の皆も無事か!」「た、タキシード仮面様!」

「キューティーハニー! 大事は無いか!「せ、青児さん……」

「ナースエンジェル、みんな遅くなってごめんなさい」

「聖夜、デューイさん。すいませんでした!」

「さ、さくらちゃん……」「し、小狼……来てくれたのか……」

 先ほどタキシード仮面と早見青児、二人と合流したさくら達が聖龍隊と合流した。タキシード仮面をセーラームーンが、早見青児をキューティーハニーが出迎える中、遅れて駆け付けたさくらと小狼にナースエンジェルも星夜も感動を覚える。

「おっ、おい……こ、これは……!」「な、何が遭ったんだ……」

「きゃ、きゃああ!」「な、何っ? こ、この敵の残骸の数……!」

「む、惨い……」「うっ……!」

 早見青児もタキシード仮面も、知世や苺鈴に小狼とさくら駆けつけた面々も、その場の惨劇に目を疑った。

「お、おい……こ、これはいったい……」

 蒼褪める早見青児に、メタルバードは震える唇で答えた。

「せ、聖龍使いだ。アイツが敵にキレて、こ、こんな事を……」

「な、何だと!?」「何っ!?」

「ええっ!」「そ、そんな…聖龍使いが…一人で…」

 返答を聞いて驚愕する早見青児にタキシード仮面、そして小狼にさくら達。

「うああああぁぁぁ!!!」

 しかし聖龍使いは、容赦なく敵勢に攻撃をしようと斬りかかっていく。

「あっ! こ、このままじゃ……!」

 ソウシが慌てる最中、早見青児とタキシード仮面が二人がかりで聖龍使いを止めに向かう。

「や、止めろ聖龍使い!」「も、もう止めろ!」

 暴れまわる聖龍使いを、青児とタキシードが走り寄り、そして二人掛かりで両肩を掴み、強引に取り押さえた。

 すると聖龍使いは反転して、二人に顔を見せた。

「お、お前なんでこんな事を……う、うわぁ!」

「どうして此処まで……あっ……あああぁ……!」

聖龍使いの顔を見た早見青児とタキシード仮面は、一気に蒼ざめ、立ち尽くしてしまう。

「……ウッ……ウガアアアアア!!!」

 二人の顔を見た聖龍使いは雄叫びを上げると同時に、二人の顔面を思いっきり殴り付けた。

「うぐっ!」「ぐふっ」

 早見青児とタキシード仮面は真正面から顔面に拳で殴られ、反動で後方の聖龍隊の方まで殴り飛ばされる。

「せ、青児さん!」「た、タキシード仮面様~!」

「い、いけねえ! 二人を受け止めるんだ、早く!」

 慌てふためくキューティーハニーにセーラームーンに続き、メタルバードの掛け声で聖龍隊は総出で殴り飛ばされた青児とタキシードを受け止めた。

「ぐはっ」「ぐぅっ」

 メタルバードとキューティーハニー達は何とか飛ばされた二人を受け止める事ができた。

「ぐっ、うぅ…」「い、イテテ……」

「うぅ……せ、青児さん。大丈夫……あっ!」

「た、タキシード仮面様~!!」

 殴り飛ばされた二人を受け止めた際、身体を痛めてしまうトシに星夜達に反して、キューティーハニーとセーラームーンは殴り飛ばされた二人を気にする。

 一方の聖龍使いに顔面を殴られた二人は、殴られた部分が赤く腫れ、そして額からは出血していた。

「そ、そんな……って、あ、アレ?」「ん? どうしたマーズ?」

 するとこの時、タキシード仮面は殴られた際の衝撃で、顔に付けていたマスクが外れかかり、その顔を見て驚くマーズにメタルバードが訊ねると。

「あっ~~! こ、この人!」「えっ?し、知っているんですかマーズさん」

 一驚するマーズにさくらが訊ねると、セーラームーンが叫んだ。

「え、えぇ~! ま、衛さ~ん!? な、なんで~!?」

 タキシード仮面の素顔はうさぎ達の知人である地場衛(ちばまもる)であった事に、セーラームーン達は驚愕する。

 

「せ、聖龍使い! もう止めるんだ……!!」

 一方、聖龍使いに制止するよう叫び声をかけたメタルバードが見た聖龍使いの素顔が異変だった事に、メタルバードは気付いてしまう。

 

 

 

[異形の顔(イギョウノカオ)]

 

「……あ……あぁっ……!」

「め、メタルバード?」「ど、どうしたの……」

 メタルバードの恐怖にひきつった顔を見て、マーズと苺鈴が訊ねるとメタルバードは聖龍使いを指差した。

「せ、聖龍使いが何か……!! えっ……え、え……!」

「どうしたんだよいったい……!! あっ、あぁ……」

 小狼もトシも聖龍使いの素顔の変貌を目視して一瞬にして血相を変える。

「!! きゃ、きゃああ!」「そっ、そんな!」

「な、何あれ!?」「い、いやああ…!!」

 マーズもナースエンジェルもその変わりように悲鳴を上げ、キューティーハニーもイサミも動揺する。

「し、修司さん!?」「で、でも……あ、あの顔……!」

「ち、違う……修司さんの顔じゃない……!」

 変わり果てたその顔を目視して、星夜もヴィーナスも動揺し、さくらは完全に委縮していた。

「こ、こんな事って……!!」「あ……あぅ……」

「うわ……うわぁ……!」

 思わず泣き出しそうになるセーラームーンと知世の隣で、ソウシが蒼然とした面持ちで愕然としていた。

「し、修司じゃない……あ、あの顔は修司じゃ無くなっている!!」

「あ、あの顔……ま、まるで……」

「い、いつもの修司君の顔じゃない……」

「ち、違うわ…も、もう修司君の原型じゃ無くなってる……!」

 デューイも苺鈴もジュピターもマーキュリーも、聖龍隊の誰もが聖龍使いの、いや小田原修司の素顔を目視して、完全に顔が蒼ざめ、中には今にも泣き出しそうな者まで居た。

 

 隊士達が見た聖龍使い、その素顔は。

 眉間や周りの顔の部分には多数のシワが浮き出ており、顔の色はまるで今にも火が出そうなぐらい赤黒く変色し、目は真赤に充血していた般若以上に恐ろしい形相で、同時にその目には光が無かった。

 それは最早、素顔の小田原修司の顔ではなく、まったく別の異形の顔付きだった。

 

「うううううううううぅ……ああああああぁぁ……!!」

 一方のそんな聖龍使いは奇声に近い怒声を上げながら、聖龍隊の方をじっと見つめていた。怒りで完全に元の顔では無くなったその瞳には光は感じられないが、ずっと見続けていると、まるで惹き込まれる様なまでの、純粋で、そして何処か寂しげな漆黒の闇色の瞳。聖龍使いはそんな瞳で、同胞の聖龍隊士達を見続けていた。

 

『………………』

 

 怒りに満ちた聖龍使い、いや、小田原修司のもう一つの表情。その異形の顔に魅入られる様に、聖龍隊一同はその瞳に惹き込まれて行った。そして、彼の瞳を見続けていると、まるで周りの時間が止まっているような神秘的な感覚に陥ったのだ。

 その顔はまるで。そう、例えれば《鬼》の形相に近く感じられた。

 隊士達は、その寂しげながらも、何処か不思議な魅力を感じるその瞳に惹き込まれるように、無言のまま見入っていた。

「う、ううぅ……」

 そんな時。聖龍使いの後方に、先ほどの落雷の攻撃から耐えた豹の爪(パンサークロー)の下っ端が起き上って聖龍使いに気付かれない様、忍び寄っていた。

(あっ。う、後ろ!)

 メタルバードや聖龍隊士達が立ち上がる下っ端に気付き、聖龍使いに教えようと声を出したかったのだが、誰もが喉から声が出無くなっていた。

(あ、危ない!)(ど、どうして……声が……!)

 マーズやイサミら隊士達は必死で声を出そうとしたが、全く出す事が出来なくなっていた。

 そんな中、遂にパンサークローの下っ端が聖龍使いに殺意を向ける。

「ば、バケモノめ……喰らいやがれ……!」

 下っ端は懐から拳銃を取り出し、聖龍使いに銃口を向けた。

(に、逃げて!)(ダメだ、声が出ねえ……!)

 ナースエンジェルも星夜達も、誰もが恐怖で声が出なくなっていた。

 しかし放たれた銃弾は聖龍使いの兜に跳ね返された。

「……ウウっ!」

 聖龍使いは下っ端の方を睨みつけると、下っ端は恐怖で縮み込んだ。

「ひっ、ひいぃ! こ、こっちに来んな……ば、バケモノーー!!」

 下っ端は更に銃の引き金を引こうとした、その時。

「ハアァァ!!!」

 聖龍使いは刀を右手に逆手で握りしめ、その刀を自分の横腹から背中に隠す様に構え、そして掛け声と共に刀を前方に押し出すと、刀から斬撃が放たれ、銃を撃った下っ端の方に斬撃が走った。

「う、うわあっ」

 驚く下っ端に斬撃が直撃し、下っ端の体は真っ二つに斬り裂かれた。

「こ、この男は……いったい……」「に、人間じゃない……!」

「こんな……こんな人間が居たのか……!」

 ネフライトに加納、ゼラが蒼褪める中、聖龍使いは幹部たちを、その鋭い眼光で睨みつける。

「や、殺られる!」「く……くそっ~! 殺られて堪るかー!!」

 脅え切るゾイサイトに反して、自棄(やけ)になったジェダイトは聖龍使い一直線に斬りかかった。

「し、死ねーー!!」

 しかし聖龍使いは、ジェダイトの剣戟を軽くかわすと、そのまま下の方から流れる様にジェダイトに対して刀を振り上げると同時に声を発した。

「……氷列斬!!」

 するとジェダイトは斬られる音がするのと同時に、首から下全身が氷漬けになった。

「あっ……あが……か、体が……!!」

 ジェダイトの身体が凍ってしまう。

「じぇ、ジェダイトーー!!」

 ゾイサイトが叫ぶも、聖龍使いは無情に氷漬けになったジェダイトを更に斬り付けた。

 すると凍ったジェダイトの身体には巨大な切り傷と同時に無数の罅(ひび)が入る。

「うわ……うわああぁぁ!!!」

 そしてジェダイトは断末魔を上げ、身体が粉々に砕け散り、首だけが残るという最後を迎えた。

「じぇ……ジェダイトーー!!」

「ば、バカな……」

「い、いくら我等四天王最弱とは言え、あのジェダイトがあっさりと……こ、殺されるとは……!!」

 ジェダイトが簡単に殺される惨状を前に、ゾイサイトもクンツァイトもネフライトも蒼然とする。

 ダークキングダムの四天王は、目の前で身体を氷漬けにされ、最後にはバラバラに砕かれ、自分たちの足元に転がってきたジェダイトの生首を見て、一層顔が蒼くなった。

「く、くそぅ……こ、このままじゃ……このままじゃ此方が殺されるだけだ……! ウオオオォ!!」

 加納は恐怖の余り冷静さを失い、聖龍使いに対して我武者羅に突っ込んで行った。加納が聖龍使いに剣を振り下ろそうとすると、聖龍使いは加納の剣を一振りで払い除けた。

 聖龍使いの剛力に、加納の剣はそのまま上空に弾き飛ばされてしまう。

「くぅ……!(だ、ダメだ……コイツの方が豪腕すぎて、力負けしてしまう……!!)」

 剣を弾き飛ばされて、隙だらけになった加納に対して、聖龍使いは透かさず刀の持ち手を逆手にし、思いっきり加納の身体を斬り付けた。

「うっ……ぐはっ」

 加納の身体は斬られ、腹から大量の血が飛散する。

(か、加納先輩!!)(し、修司さん! もう止めてくれよ!!)

(ダメだ……声が出ない……)

 何とか声を出したかったナースエンジェルと星夜とデューイであったが、まるで金縛りにあったように声も出ず、体も動かす事が出来なかった。

「ええいっ、もう好き勝手にさせられぬわ!!」

 現状を見続けていたシスタージルは痺れを切らして、聖龍使いに襲いかかる。

「死ねえぇ! 聖龍使ーーい!!」

 シスタージルが聖龍使いを殴り掛かろうとした、その瞬間。

 聖龍使いはジルの攻撃を咄嗟にかわし、ジルの懐に入ると同時にジルを斬り付けた。

 一瞬閃光が垣間見えたかと思いきや、聖龍使いが刀を鞘に納めると同時に、ジルの身体は斬り裂かれ、其処から大量の血が噴き出した。

「ぎゃああああああ!!!」

 ジルは断末魔を上げながら、倒れてしまった。

「し、シスタージル……!」「あ、あ……(あ、あのシスタージルがたった一撃で……!)」

 プリンスゼラ、そしてキューティーハニーは一瞬で斬り倒されてしまったシスタージルを目の当たりにして、目を丸くして蒼褪めていた。

 

 

 

 

 

[斬られゆく者たち]

 

 ケトー、ジェダイト、加納、シスタージルが尽く殺られてしまい、完全に戦意を失いつつある敵勢力。

 敵勢力で残っていたのは、豹の爪(パンサークロー)プリンスゼラ。そしてダークキングダムの四天王、ゾイサイト・ネフライト・クンツァイト。更に生き残った少数の戦闘員のみ。

「……ああああああああああああああぁぁぁぁ……」

「………………」「………………」「………………」「………………」

 不気味な唸り声を発する聖龍使いは、ただ静かにゼラやゾイサイトにネフライト、クンツァイト達を睨みつけながら、牽制を張り続ける。

「く、クンツァイト……これから、どうしようか……」

「あ、あぁ……」

「あ、あの聖龍使い……もはや只の人間ではない……よ、妖魔をも超えたバケモノだ……!」

「あ、ああ……ああぁ……」

 蒼褪めた表情で頷き合うゾイサイトとクンツァイトに対して、思わるネフライトに蒼然とした面持ちで頷き返すプリンスゼラ。

 幹部たちは戸惑っていた。これ以上聖龍使いを刺激させ、更に怒りを買う結果になっても被害は拡大する一方。しかし、黙って帰っても本拠地でボスに失態を就かれるのも困るのが現実。

「ううううううぅぅ……」

 幹部達も躊躇している間も、聖龍使いは呻き声を発しながら幹部達に迫る。

「こ、このまま退いてしまえば母上に叱られるのは目に見えている……し、しかし……」

「ど、どうするのだクンツァイト。こ、このままではどっちみち……」

「わ……分かっている! は、早く手を打たなければ……!」

 脅え切るゼラの近くで、ネフライトがクンツァイトに問い掛けていた。

 幹部達が戸惑っている現状の中、一人ゾイサイトがクンツァイトに話し掛ける。

「ク、クンツァイト……わ、私が行くよ」

「! な、何を言うんだゾイサイト……!」

「こ、このまま引き下がっても……結局はクイン・べリル様に痛めつけられるのが目に見えているよ。私が少しでも時間を稼ぐから、その間に二人は何とか策を講じてよ」

「し、しかしゾイサイト!」

「……大丈夫だよ。クンツァイト」

 ゾイサイトはクンツァイトにウィンクして言い終わると、一直線に聖龍使いに特攻した。

「ぞ、ゾイサイトーー!!」「あ、あいつ……!」

「ば、バカな真似を! 下手したら返って怒りを買うだけだぞ!!」

 クンツァイトが悲痛に叫ぶ中、ネフライトとゼラはゾイサイトの無謀な特攻に愕然とした。

「うおおおぉ!!」

 ゾイサイトは果敢にも聖龍使いに斬りかかる。

 しかし聖龍使いは軽々と攻撃をかわし、それと同時にゾイサイトの顔面を斬り付けた。

「ぎゃああああ!!」

 ゾイサイトの顔から血が噴き出す。

「ゾイサイトーー!!」

 顔を斬りつけられたゾイサイトを前にクンツァイトが叫ぶ中、自分の顔を傷付けられたゾイサイトは激怒し、聖龍使いに再度斬りかかった。

「こ、この野郎!!」

 ゾイサイトは思わず感情的になり、ただ単調に剣を振り回して攻撃を仕掛けてしまった。だが、これがいけなかった。

 聖龍使いは単調な攻撃をかわし続け、ゾイサイトに止めの一撃を与える。

 深く斬られたゾイサイトの傷口から大量の血が吹き出た。

「あ……ああぁ……」

 ゾイサイトはもがく様に、自身の傷口を手で抑えた。

「ぞ……ゾイサイトーー!!」

 血塗れになったゾイサイトに、クンツァイトが近寄る。

 そして息が荒く、弱弱しくなっていくゾイサイトをクンツァイトは優しく抱きよせた。

「ぞ、ゾイサイト……ゾイサイト! しっかりしてくれゾイサイト!! お、お願いだ、死なないでくれ……ウ、ウウゥ……」

 クンツァイトは大粒の涙を流しながら、必死にゾイサイトに話し掛け続ける。

(あ……あぁ……)(つ、遂にゾイサイトまで……)

(ま、益々血が流れちまう……)

 遠方で聖龍使いの起こす惨状を見ていたセーラームーンにマーキュリーにメタルバードたち聖龍隊は、未だに金縛りの状態で体が動かなかった。

「そ、そんな……ジェダイトに続きゾイサイトまでも……クッ、こうなれば……妖魔達! こうなってしまったら最早退く事は出来ん! 死ぬ覚悟で聖龍使いを倒しにかかれ!!」

 焦ったネフライトが叫ぶと、残った妖魔達は一斉に聖龍使いに襲いかかって来た。

「こ、こうなれば・・・・…豹の爪(パンサークロー)! お前達も残った総力を上げて聖龍使いを倒すのだ! 妖魔共に後れを取るな!!」

 プリンスゼラも生き残った下っ端や怪人等に指示を下して聖龍使いに攻撃を仕掛けていった。

『ウワアアアアア!!』『うおおおおお!!』『シャアアアアアア!!』

「あああああああああ!!!」

 妖魔達に下っ端たち、そして怪人たちを前に聖龍使いは相も変わらず《鬼の形相》をしたまま双方は突撃した。

「うあああああああ!!」

 そして聖龍使いは半ば、半狂乱の状態で敵陣に斬り込んだ。

 妖魔や怪人、更には下っ端達ですら聖龍使いに傷の一つも付けられないまま、次々に斬り倒されて行く。

 

 やがて、聖龍使いの周りには無数の妖魔・怪人・下っ端の死骸で埋め尽くされた。

 そしてその亡骸から出た血は、川に流れ出し、川は真赤に染まっていった。そして真紅の水は下流の方まで流れていく。

 

 

 

 

[燃え上がるプリンスと語り始める聖龍]

 

 そして、ほとんどの戦闘員達が斬り殺され、遂には幹部達と数人の下っ端のみが場に残った。

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

 聖龍使いは荒い呼吸を繰り返し、立ち尽くしていた。

「あ、あぁ……も、もう戦える妖魔なぞ居ない」

 ネフライトは顔を真っ蒼にして、呆然と立ち尽くしていた。

「ゾイサイト! ゾイサイトぉ! お願いだぁ……目を、目を開けてくれぇ……」

 クンツァイトは自分の腕の中で、静かに朽ちていくゾイサイトに、ただ語りかけるしかできなかった。

「く、クソっ。こうなれば私自ら……!」

 ネフライトが決死の思いで聖龍使いと立ち向かおうと決意した、その時。

 聖龍使いは何を思ったかプリンスゼラの方へ走り寄った。

「うおおおおおおぉぉぉ!!」

「な、何だ! 今度は何をするつもりだ!?」

 突如プリンスゼラに駆け寄った聖龍使いは、左手でゼラのこめかみを掴み上げる。

「ぐあっ……うっぐぅ……」

 力強くこめかみを掴まれたゼラは激痛で、もがき苦しむ。

 掴まれたこめかみからの激痛は、いくらゼラでも耐えがたく、何とか離させようともがき、暴れるが、一向に聖龍使いは左手を離そうとはしない。

「ぐあ……あぁ……!」

 ゼラが苦しんでいるその時、聖龍使いがポツリと呟いた。

「……ぜ……ゼラ……!」ゼラ「!!」

 この時、プリンスゼラを睨む聖龍使いの目は血走り、怒りに満ちた眼光だった。

 一目睨まれたゼラは背中に人言えぬ悪寒を感じる。

「せ……聖羅……葉月聖羅を……ハニーを……苦しめやがって……!!」

「!! あっ……ああぁ……」

 聖龍使いの眼光にゼラが恐怖していたその時。突如辺りに何かが割れる様な鈍い音が鳴り響いた。

「ぐああぁ!!」

 そして鈍い音と同時に、ゼラが更にもがき苦しむ。

(な、何? 今の音は?)

 離れた場所で立ち尽くし、金縛りの状態にあったマーズら隊士達にも、その鈍い音はハッキリと聞こえていた。

(い、今の音って……)ナース(ま、まさか!?)

(ま、間違いねえ……ほ、骨が……こめかみ部分の骨に罅が入った音だ!!)

 鈍い音を聞いて、キューティーハニーとナースエンジェル、そしてメタルバードは愕然とした。なんとゼラのこめかみ部分の頭蓋骨が、聖龍使いの異常なまでの握力により、罅が入ってしまったのだ。

 しかし、それでもゼラのこめかみを聖龍使いが強靭な握力で握り潰していく。

「ぐああぁ! ……あぁ……!」

 ゼラが激痛に苦しむも聖龍使いはそれでも手を放すこと無く、更に力を込めてゼラのこめかみを握り続ける。

 しかし、最初にゼラのこめかみを握り始めてから数十秒後。ゼラの身体にある変化が起きていた。

「ぐっ……(な、なんだ……か、体が……体が熱い……)」

 ゼラが自身の身体の熱さに気付き始めた、その時。何とゼラの身体の所々から発火し始めた。

(な、何だ! き、急に体から火が……!!)

 そしてゼラの体は突如、炎に包まれてしまう。

「ぎゃああああああ!!」

 ゼラは炎に包まれながら悲鳴を上げ、見る見るうちに火達磨になっていく。

「うああぁっ!」

 そして聖龍使いは、掴んでいたゼラの頭部をそのまま地面に叩き付けた。

「ぐはっ……」

 ゼラは火達磨のまま地面に転げ落ち、遂には何も言わなくなった。

(そ、そんな……!)(い、生きたまま火達磨なんて……!)

(む、惨い……惨過ぎる……!!)

 火だるまになった状態で地面に叩き付けられるゼラの惨状を目前にして、マーキュリーにイサミそして小狼達は蒼然とする。

 と、その時。突如、聖龍隊士達の頭に謎の声が響いた。

(主等、主等よ……聖龍隊よ、聞いておくれ)

(え? こ、声が……)(だ、誰の声だ!?)

(ほ、ほえっ? こ、声もそうだけど、何故かみんなの声も頭に入って来る……)

(あ、アレっ? さくらやメタルバードの声が勝手に頭から……)

 突然の謎の声に戸惑い混乱するマーズにメタルバード、さくらにトシ達に声の主が語り掛ける。

(混乱するな。お前達の心に問いかけているのは、メタルバードのテレパス能力を利用しているからじゃ。故に主等全員にワシ等の声を届ける事が出来るのじゃ)

(え? お、オレの能力?)

(左様、主のテレパシー能力は他のテレパスよりも特殊なものじゃ。自力で制御できる上に他の者の意思を別の者に送り出す事も可能な力なのじゃ)

(………)

(まぁ、要するに主の意識を通して他人と意思疎通できるのじゃ。まっ、簡単に言えば主のテレパスは電話回線の様に使う事が可能なのじゃよ)

(お、オレの能力を電話線代わりにしてるってことか……?)

(そうじゃ。その通りじゃよ)

(め、メタルバードさんのテレパスってこんな使い道も有ったんだ……)

 謎の声の話を聞いて困惑するメタルバードに納得するソウシ。

(と、ところで……あ、あなたはいったい何者なの? いきなり私たちに語りかけて来て……)

 ジュピターの問い掛けに声の主は答える。

(ふっふっ、ワシ等か……ワシ等こそ大自然の力を守護し司る、聖龍使いの力の源……聖龍じゃよ)

(せ、聖龍!?)(あ、あのアニメタウンの守護神って語り継がれてる?)

 一驚するマーキュリーに苺鈴達に聖龍たちは名乗り始める。

(左様、ワシの名は生命溢れる草木の力を司る樹木龍)

(ワシは灼熱の炎を司る火炎龍)

(ワシは清き水の力を司る水龍)

(ワシは大地の力を司る岩石龍)

(ワシは天から轟きと共に現れ、天地に衝撃を与える、雷の力を司る雷龍)

(ワシは凍てつく氷の力を司る氷龍)

(そして最後に……ワシがこの世全ての自然や命を靡かせる風の力を司る、風龍じゃ)

 七体の聖龍たちの声を聞き、ケルベロスとデューイが唖然とする。

(あ、アンタ等が例の聖龍なんやなっ)(し、修司に力を与えたという……!)

 二人の意思に樹木龍が答える。

(そうじゃ。その聖龍である……)

 そんな聖龍たちにジュピターや知世そして小狼が訴える。

(ちょ、ちょうど良いわ! お願い聖龍、彼を……修司君を止めてよ!!)

(こ、このままじゃ修司さん……もっと暴れて…)

(そ、そうだ! このままじゃ状況が更に酷くなっちまうぜ!)

 聖龍隊士達の問いかけに、聖龍達は答えた。

(そ、それなのじゃよ……)(え?)

 火炎龍の困惑する口調にセーラームーンが反応すると、水龍が事情を語る。

(今の修司は完全に怒の感情によって、自身を制御できなくなっておるのじゃ……)

(ちょ、ちょっと待って! 自分を制御できないなんて……)

 イサミが思わず訊き返すと、岩石龍が返答する。

(修司は以前からお前達を苦しめる悪人共に深い怒りを感じておったのじゃ。それが以前遭ったあのゼラとか申す若者の言動や、今回の加賀美あつこの件も重なって、完全に怒りの感情に支配されてしまっとるのじゃ……)

(そ、そんな……なんとかできないの?)

 困惑するヴィーナスに、雷龍と氷龍が答えた。

(わ、ワシ等も修司の意識に語りかけようとはしているが……完全に自我を失ってしまっているのじゃよ)

(こ、このままじゃ……修司は自然の力を解放しすぎて……!)

(ま、まさか! あいつ等だけじゃなく街までも壊しちまう訳じゃないだろうなぁ……)

 メタルバードの不安に風龍が強く否定する。

(い、いいや! それ以前に、修司の肉体が解放される自然の力に耐える事が出来ず……に、肉体が滅びてしまう!)

 この風龍の返答にマーズが思わず問い掛けると、樹木龍が切羽詰まって答える。

(ちょ、ちょっと待ってよ! それじゃあ……あのまま修司君が暴走し続けたら……)

(そ、そうじゃ! 悪人共や街が滅びる前に、修司が死に絶えてしまう……!)

 この返答にメタルバードが慌てて問い詰める。

(おぉ、おい! それじゃ早く修司を止めねえと……な、何とか手立ては無えのか!)

 だが火炎竜、水龍、雷龍は聖龍隊に言い残す。

(だ、ダメじゃ……ワシ等の力では、修司の心の闇に阻まれて、これ以上は……た、耐え凌ぐ事もままならん……!)

(す、済まぬ……もうワシ等も自分達の意識を保つ事だけで……せ……精一杯なのじゃ……)

(も、もう……お、お主等に……全てを……賭けるしか……な……い……)

 それを最後に聖龍達の声は聞こえなくなってしまった。

「せ、聖龍! オイっ、聖龍!!」

 メタルバードは思わず声を上げて聖龍に呼び掛けた。

『はっ』

 この時、聖龍隊の面々は金縛りの状態から解放されている事に気付く。

「てぃやあっ!!」

 一方の眼前では、ネフライトが聖龍使いと剣劇をしている真っ最中だった。

「お、おい、みんな、どうする?」

 トシがみんなに訊ねる。

「だ、だけど……あんなに激しい剣劇の中に飛び込んだら……」

 ソウシは目の前の激しい剣劇に怖気づいていた。

「何言っているのよソウシ!」

 そんなソウシにイサミが怒鳴る。

「い、イサミちゃん……!」「イサミ……」

 驚くソウシとトシに、イサミは続けて語ります。

「こ、こんな時こそ私たちが何とかしなきゃいけないんじゃないの! 今、修司さんは自分の感情を制御できずに苦しんでいるのよ、今まで私たちの事思ってくれていた修司さんが自分を抑えられず苦しんでいるのに怖がっていたら何もできないわよ! ……いつもいつも、私たちの事考えてくれている修司さんに……少しは恩返ししたいとは思わない訳!!」

 イサミのこの発言に、他の聖龍隊士も共感した。

「そ、そうだよ! 私達にだって彼に対して何かできる筈よ!」

「そ、そうよ。その通りよ」

「修司さんから感じる闇の心……そして怒りのオーラ。私達で何とかする以外手立てはないわ!」

「そうだな。もうオレ達以外に止められる輩は居ないしなぁ……」

「こ、こんな時こそ、みんなで力を合わせて修司さんを止めてあげないと……」

セーラームーンにキューティーハニー、ナースエンジェルに同意するメタルバードとさくらだが小狼が戸惑う。

「で、でも、どうすれば……」

 聖龍隊が戸惑う中、聖龍使いと剣劇で戦っていたネフライトが剣を握っていた両手首を切断されてしまう。

「うわあぁ! ……ぐっ……し、しまった……手が……!」

 ネフライトは両手を失い、最早戦う事はできなかった。しかしネフライトが手首から先を失った激痛に悶絶してる最中。

「ぐっ……」

 何と聖龍使いはネフライトの喉元に刀を突き刺し、貫通させていた。

「ああぁ!」「ね、ネフライトが……!」

 悲痛な声で叫ぶイサミにジュピターたち。

 聖龍隊の目の前でネフライトが刀を首に貫通させられる中、聖龍使いはそのままネフライトを持ち上げた。

「ぐはっ……うが……がっ……」

 ネフライトは首に刀が貫通している痛みで苦しみ、最後の力を振り絞ってもがき暴れるも、そんな中で聖龍使いは呟く。

「……招雷(しょうらい)!!」

 する次の瞬間、ネフライトの首に貫通している聖龍剣に雷が落ちた。

「ぐああああああああ……!!」

 喉に突き刺されたままの刀に雷が落ち、ネフライトは悲鳴を上げ感電。黒焦げになった。

「いやああぁぁ!」「そ、そんな!」「ま、また犠牲が……」

 苺鈴が叫ぶ中、マーズとメタルバードが愕然とする。

 そんな殺伐とする惨状の中で、聖龍使いは黒焦げになり朽ち果てたネフライトの亡骸を、刀を一振りして抜き去り、その場に放り投げる。。

 その最中、クンツァイトは最早虫の息であったゾイサイトに話し掛けていた。

「……ゾイサイト……ゾイサイト……あぁ……」

 クンツァイトは泣きながら、逝きそうになるゾイサイトに声を掛け続ける。

「……く……クンツァイト……」

「! ぞ、ゾイサイト! しっかりしてくれ、お願いだ! ……私を置いて行かないでくれ……」

 涙をボロボロ流しながら訴え続けるクンツァイトに対して、ゾイサイトは最後の力を振り絞って、こう呟いた。

「く……クンツァイト……」

「な、なんだい……?」

「……ありがとう……最後まで、私を愛してくれて……こ、こんな大きな傷が付いてしまった顔なのに……血だらけで、醜くなった顔なのに……ほ、ほんとに……嬉しいよ……」

「な、何を言うんだ! 例えお前がどんな醜い顔になったって……私のお前への愛は決して変わりはしない!!」

 クンツァイトは大声で、ゾイサイトに自分の変わらぬ愛情を告白した。

「……あ、ありがとうクンツァイト……私は……幸せよ。貴方の……腕の中で……死ねるのだから……」

 ゾイサイトはそう言い残し、静かに息を引き取った。

「ぞ……ゾイサイトぉーー!!」

 ゾイサイトが息を引き取るのを目視したクンツァイトは、大声で泣き叫んだ。

「つ、遂に……ゾイサイトまでも……」

「あ、あの傷じゃあ……ほぼ助からなかったでしょう……」

 ゾイサイトの死を見届けたマーキュリーと小狼達も心が痛んだ。

 

 一方で愛しいゾイサイトを殺されたクンツァイトの怒りは頂点に登った。

「おのれっ、おのれ! 聖龍使いぃ、良くも……良くもゾイサイトを! ……もう許さんぞっ、ゾイサイトも……ネフライトもジェダイトも私の大事な友だったというのに……良くもーー!!」

 クンツァイトは完全に怒りで我を忘れ、聖龍使いに斬りかかって行く。

「……うおおおおおぉぉぉ!!」

 そんなクンツァイトに反響するかのように、聖龍使いも攻撃に身を転じてクンツァイトに斬りかかる。

「うおおおおおお!!」

 クンツァイトは泣きながら聖龍使いに向突撃した。

「はあああああぁぁ……!!」

 すると突然、聖龍使いが腰を低くして、そして低い声で唸った。そして突然、叫んだ。

「天・変・地・異(てんぺんちい)!!」

 聖龍使いが叫ぶと、大地は大きく揺れ、クンツァイトの周りに巨大な竜巻が発生し、空からは雷、更には炎が出現し、炎が竜巻に巻き取られ、竜巻は巨大な炎の渦に変化した。

「うわあああああ……!!」

 炎の竜巻の中でクンツァイトは火に呑まれながら苦しみ、更に辺りの魔物や妖魔、怪人や下っ端に幹部達の亡骸までも吸い上げて、さらに巨大化して行った。その上、雷も辺り構わず落ちて来て、近づくことさえ危険な状況でに陥る。

「そ、そんな!」「こ、これじゃ近づく事さえ、できない」

「で、でも……このままじゃ修司君が……!」

「で、でも近づいたら俺たちも竜巻に巻き込まれちまうよ……!」

「それだけじゃないわ……彼の周りに無数に落ちてくる落雷。あれに直撃しただけでも命に係わるわ!」

「こ、此処は同じ帯電体質のまこちゃんに……」

「む、無理よ! 雷はともかく、あんな巨大化した炎の竜巻に近づける訳ないでしょ!」

「で、でもこのままじゃ!」

 この混然とした状況を前に、マーズにキューティーハニー、セーラームーンに星夜、マーキュリー、ヴィーナス、ジュピター、そしてソウシ達は焦り出す。

 と、その時。トシが叫んだ。

「おっ、おい。みんな、大変だ!」「ど、どうしたのトシ?」

 イサミが訊き返すと、トシが指差した方角の河原の向こう側にある林が燃えているのが視認できた。

「た、大変!」「あ、あのままだと山火事になっちゃう……」

「い、急いで消火を……」

「ダメだ! まずは聖龍使いが発生させているあの炎の竜巻を何とかしないと……」

 山火事の発生にマーズもさくらも星夜も小狼も、皆慌てふためく。

 

 空から落雷、目の前には炎の竜巻に巻き込まれ、延々と燃え続けるクンツァイトを始めとした敵達の光景。そして山火事。辺りに広がる地獄絵図の様な情景に、聖龍隊は何も打つ手が無かったという。

 

 

 

 

[優しさに満ちた光]

 

「うわああああああ……!!」

 一方、聖龍使いは未だに怒りの感情に囚われ、自我を失っていた。

「せ、聖龍使い!」「お願い、目を覚まして!」

「だ、ダメだ! オレたちの声なんて耳に入っちゃいねえぜ!」

 セーラームーンやマーズ達が必死に声を掛け続けるも、メタルバードの言う通り聖龍使いには自分達の声は届いておらず。

 聖龍使いに声をかけても自我を失っている彼には届かず、更に近づきたくても、彼の周りに落ちる無数の落雷や炎の竜巻に巻き込まれる危険性も有り、迂闊に近寄る事ができないでいた。

「うあああああ……許せねえ……許せねえぇぇ!!」

 すると突然、聖龍使いが叫び上げる。

「仲間を……仲間の大切な存在を傷付ける連中が……許せねえぇぇ!!」

 そう叫ぶと、聖龍使いは更に火や風の勢いを強め、落雷の数も増やしていく。

「も、もうこれじゃ……!」「ち、近づく事も出来ないわ!」

 マーキュリーもキューティーハニーも途方に暮れ、全員が半ば気落ちしていた、その時だった。

「……う……う~ん……」

 気絶していた加賀美あつこが目を覚ます。

「あっ、アッコちゃん!」「よ、良かった。気が付いたのね……」

「あ、あれ……な、何が起きたの……、! えっ、そ、そんな……!」

 ジュピターとナースエンジェルが目覚めたアッコを見て安堵する中、アッコは目の前に広がる惨状に気付く彼女は目の前の光景に目を疑った。この世のものとは思えない形相の聖龍使い、そして巨大な炎の竜巻に無数の落雷などの目の前に広がる惨状に、アッコは一瞬悪夢を見ているのかと思った。

「あ……あ……あ、あれは……」

 アッコは唇を震わせながら言葉を発する。

「加賀美あつこ、あれは……」

 メタルバードはアッコが混乱しない程度に状況を説明しようとしたのだが。

「……し、修司!?」『!?』

 アッコの一声に聖龍隊一同は驚愕した。最早、修司の顔はいつもの顔立ちでは無くなっていて、一目見ても彼だとは中々気付かない顔立ちであるにも拘らず、アッコは一目見て修司だと感付いたのだ。

「あ……アッコちゃん?」「あ……あれが修司って……」

 ヴィーナスにイサミら隊士達は信じられなかった。初頭から事の発端を見ていたのであれば、多少は気付くかもしれないが、先ほど目を覚ましたばかりなのに、怒りに満ち、完全に自我を失った聖龍使いの素顔を見て修司と気付けるのは至難の業だからだ。

「ま、間違いないわ……顔は変わっちゃっているけど……アレは修司よ! やっぱり修司が聖龍使いだったのね!」

 アッコは更に、修司に対して呼び掛けた。

「し、修司お願い……もう……もう止めて!」

 アッコは修司に呼び掛けたのだが、自我を失った修司に彼女の声は届いていなかった。

「し、修司……!」

 アッコは慌てて修司に駆け寄っていく。

「あ、アッコさん!」「危ない! 今近づいたら……」

 さくらやナースエンジェルたち聖龍隊の制止も聞かず、アッコは落雷や炎の竜巻が発生している現状の中で猛威を揮っている聖龍使い、いや小田原修司に駆け寄り、彼の体にしがみ付きながら叫び掛ける。

「修司、もう止めて! ……お願い……もう、苦しまないで……」

「………………」

 聖龍使いは涙を流しながら自分に呼び掛けてくるアッコに目を向けた。

「……あ……アッコ……」

 すると修司の顔が穏やかな表情になっていき、目も通常の状態に戻っていった。

 そして聖龍使いは消耗したからか、その場に倒れ込む。

「し、修司!」

 そして聖龍使いが倒れると同時に、巨大な炎の竜巻も、無数の落雷も消えていった。

「あっ、た、竜巻が!」「落雷も落ちなくなったわ……」

 竜巻や落雷が収まった状況に、マーキュリーもジュピターも安心する。

 一方のアッコは気を失った修司に声を掛け続けていた。

「し、修司……修司……! ……ハッ」

 アッコが修司の体を揺すっている、その時。彼女は自分の手に付いた血に気付く。それは聖龍使いの体にしがみ付いた時に付いた、敵達の無数の返り血だった。

「あ……あっ……」

 アッコは自分の手に付いた大量の血を見て、気を失った。

「あっ、アッコちゃん!」

 気を失い、その場に倒れてしまったアッコを目視してマーズたち聖龍隊は駆け寄った。

「あ、亜美ちゃん……修司君にアッコちゃん……大丈夫なの?」

 セーラームーンが気にしていると、亜美ことマーキュリーは答える。

「だ、大丈夫……二人とも気絶しているだけよ」

 

 修司とアッコ。二人が気を失った事により、ようやく血塗れの惨劇は終止符を向かえた。

 

 

 

 

 

[骸の山の中で……]

 

 聖龍使いの意識が無くなり、炎の竜巻が消え去った後、すぐに聖龍隊は燃え盛る林の消火に走った。

「急げーー、早くしねえと火がどんどん広がっちまう!!」

 メタルバードの指示の元、聖龍隊は何とか雑木林の消火を終えた。

 そして炎の竜巻に巻き上げられ、ほとんど黒焦げになってしまった敵達の残骸の中に、セーラー戦士やナースエンジェル、そして星夜やデューイが立ち尽くしていた。

「……酷(ひど)い」「ええ……何もかも丸焦げ」

「こ……これじゃ、いくら悪い人でも……可哀そう……!」

 マーズにマーキュリー、そしてヴィーナス達が蒼然とする中、ナースエンジェルは一人、加納望を探していた。

「か、加納先輩……先輩……」

 ナースエンジェルは眼前に広がる惨状を前に、必死に心が折れそうな心境の中を耐えながら加納望の姿を探した。恐らく、もう息絶えているかもしれない、その姿を。

 一方デューイは、最初に修司に斬り刻まれ、肉の塊り同然になり、最終的には焼かれて、原形を留めていなくなったケトーの亡骸を前に立ち尽くし、見下ろしていた。

「………………」

 デューイはただ無言のまま、黒焦げになったケトーの亡骸を見つめる

「で、デューイ……」

 星夜は静かにケトーの亡骸を見つめるデューイを心配し、声をかけた。

「………………」「だ、大丈夫……か……」

 心配する星夜に、デューイは軽く笑みを浮かべながら返事する。

「……ふっ。いやぁ、ホント……不思議な気分だよ」

「え?」

「いつも……いつもケトーの言動には怒りを覚えたり、不快に感じる事はあった。だけど何故か……何故かケトーのこんな最後を見ていると……凄く、切なくなるんだ」

「デューイ……」

 デューイは哀れな最後を迎えたケトーに対して、多少の憐れみを感じていた。そんなデューイを前に、星夜も悲痛な想いに駆られる。

「酷(むご)い……此処まで酷いなんて……」

「み、みんな……滅茶苦茶にやられちゃってるよぉ……」

 ジュピターやセーラームーンは、余りに酷い敵達の殺され方に、今にも泣き出しそうな表情で怯えていた。

 

 と、その時だった。メタルバードが有る事に気付いた。

「おっ、おい! お前等!」

「え?」「な、何ですか、メタルバードさん…」

 キューティーハニーやさくら達が注目する中、メタルバードは気付いた異変を伝える。

「い、今見渡してみたんだが……何か、死体の数が足りねえんだよ!」

「えっ?」「し、死体が足りないって……」

 メタルバードの指摘に小狼もイサミも動揺する中、星夜やデューイにトシや苺鈴も気付いた。

「そ、そう言えば……」「ハッ、た、確かに……言われてみたら、カノンの姿も見当たらない!」

「ほ、他にも……あのプリンスゼラやシスタージルも居なくなっているぜ」

「ゼラにジル……それに加納まで居なくなっているなんて……どうなっている訳?」

 河原を埋め尽くす亡骸の山の中に3人の死体だけが消えていた。

 

 

 

 その一方、ケルベロスは加賀美あつこの傍らに居た。そして彼女やマーキュリー、ジュピターの身を護ったというコンパクトを凝視していた。

「……やはりな」

 ケルベロスがコンパクトを見入っていると、他の聖龍隊士達も寄って来た。

「ケロちゃん、どうしたの?」「何が『やはりな』なの?」

 さくらとマーズが訊ねると、ケルベロスは神妙な面持ちで答える。

「うん。この加賀美っちゅう女が持っている、このコンパクトなんやがなぁ。やっぱりこのコンパクトから魔力を感じるんや」

「ま、魔力!?」

 一驚するジュピター達にケルベロスは続けて語る。

「ああ。さっきアンタやマーキュリー、そしてこの加賀美って子が攻撃に当たりそうになった時に、光の壁が現れてアンタ達3人の身を護ってくれたんやろ? そして、その光の壁を生みだしたのが、このコンパクトっちゅう訳や」

「や、やっぱり……その女の子も特殊な力が有った訳か……」

 ケルベロスの説明を聞いてデューイも納得する。

 隊士達がケルベロスの話を聞いている時、メタルバードがみんなを呼んだ。

「おーーい、お前等ーー。消火も済んだし、一旦基地に帰ろうぜ。修司やアッコ、それにタキシード仮面や青児も運ばなきゃならねえんだ。さっさと戻ろう」

 メタルバードの一声に、みんなも疲れが溜まっていた事も有り、全員その場から去ろうとした。が、その時、ナースエンジェルが突然、骸の山の方に走り出しいた。

「ん? ナースエンジェル、どうかしたのかい」「り、りりか?」

 デューイと星夜が訊ねる中、ナースエンジェルは骸の山の前に立ち、そしてエンジェルバトンを手前に差し出した。

「……皆さん、ゴメンなさい……私たちが何もできず、彼を止める術がない為に、こんな酷い死に方をしてしまって……本当に、ゴメンナサイね……」

 ナースエンジェルは敵であったとはいえ、悲惨な死に方をした敵達に対して涙を流しながら、ナースバトンから光線を放出し、無残な死様を迎えた敵達の魂を昇天させた。

 

 そして一行は、修司に殴られ、意識の無くなったタキシード仮面こと地場衛に早見青児。そして気を失った聖龍使いこと小田原修司に加賀美あつこを、自分たちの基地が有る地下のメインフロアに総出で運んだ。

 

 

 

 

[ジュピター・プラント一族の真実]

 

 聖龍隊は、気絶している4人を何とかメインフロアにまで運ぶ事が出来た…。

「はぁ、はぁ……さ、さすがに男3人に女一人を此処まで運ぶのは至難の技だったぜ……」

「はぁ……い、いっつも私が力仕事させられるんだから……」

 気絶している修司とアッコを担ぐメタルバードに続き、ジュピターも思わず愚痴を零す。

「い、今はまず……皆さんの容態を把握しないといけないわ。青児さんに……え、え~と……ま、衛って人も頭から血が出ていますし、早く処置を施さないと」

「そ、それに……修司君やアッコちゃんの容態も見ないと。ウッズさんは何処に居るのかな?」

 ナースエンジェルとキューティーハニーら聖龍隊の面々がウッズやウェルズ、更にジュニアの姿を探したが、何処にも彼等の姿が見えなかった。

「あ、アレっ? ウッズさん達居ないぞ?」

「ど、何処に行っちゃったんだろう……」

 トシにさくら達が辺りを見渡しても、誰の姿も無かった。と、その時。

「おーーい、皆さーーん……聞こえますか~」

 何処からともなく、ウッズの声が聞こえた。しかも、とても小さな声で。

「えっ? ウッズさん?」「ど、何処から声が聞こえるんだ?」

 マーズに小狼達がウッズの姿を探し回っていると、今度はウッズの双子の弟のウェルズの声が。

「おーーい、お前達ーー、こっちだこっちーー」

 これまた小さな声で聞こえるウェルズの声に、周りは混乱する。

「あ、アレっ? 今度はウエルズさん……かな? 声が似ているから、良く分からない……」

「まぁ、双子だからな……」

 イサミに星夜が見渡しても、周りには彼らの姿が目視できなかったのだが。

「うわーーん、うわーーん……お姉ちゃんたちーー、此処だよーー」

 今度はジュニアの声が、何処からともなく聞こえた。

「じ、ジュニア君?」

「い、いったい3人とも、何処に居るんだよ!」

「もう~、何処行っちゃったのよ~」

 困惑するマーキュリーにデューイ達に続き、セーラームーンが涙目で何気なく椅子に座ろうとした。その時。

「うわっ、わっ! う、うさぎさ~ん、座らないでっ、潰れます~」

 突然ウッズの声が、セーラームーンのすぐ近くで聞こえた。

「えっ? えっ? う、ウッズさん? 何処? 何処に居るのっ?」

 セーラームーンが驚いている、その時。彼女はふと椅子の方に目をやると、其処には。

「……え? う……ウッズさん?」

「うわ~、うさぎさ~ん……やっと気付いてくれましたか~」

 何と椅子の上に、小さな小さな手乗りサイズのウッズが居るのをセーラームーンが視認する。

「う、ウッズさん!?」

「な、何で? なんでこんなに小っこくなっちゃっている訳?」

 マーズとヴィーナスが驚愕していると、更に皆の足元からウェルズとジュニアの声が聞こえてきた。

「お~い、俺たちも此処に居るぞ~」

「うわ~~、気付いて~、お姉ちゃんたち~」

 小さい二人を見下ろして、キューティーハニーやトシ達が驚愕する。

「えっ? う、ウエルズさん!? それに……ジュニア君?」

「って、うわっ! 小さくなっちゃっているよ……」

 ウッズにウェルズ、そしてジュニアは、およそ5センチ程の小人になっていた。

「い……今から説明しますんで、取りあえず今はテーブルの上に私達3人を移動させてくれませんか?」

 ウッズの依願に、聖龍隊は一先ず三人をテーブルの上に移動させる。

 

 そして3人をテーブルの上に移してあげると、ウッズは説明し始めた。

「……実を言いますと……私たちは皆さんと違い人間ではないんですよ」

「ええ!」「に、人間じゃない……って」

 ナースエンジェルにジュピターが驚いていると、ウェルズが続けて事情を述べる。

「実は俺たちは人じゃなく、小人族なんだ」

「こ、小人族!?」「小人って、良く童話なんかに登場する小さな人ですよね」

 星夜に知世が呆然とする中、ウッズが説明する。

「ええ……童話に出てくる小人族は、私達の御先祖様の話もありますけどね」

「せ、先祖……?」

 小狼が反応する中、ウッズは説き続ける。

「はい。例えば日本の昔話では【一寸法師】、外国の童話では【おやゆび姫】など……あれ等は全て、私たち小人族がモデルなんですよ」

「こ、小人って……本当に居たんだ……」

 ウッズの説明を聞いて驚くさくらに、ウェルズが呆れた様子で言う。

「おいおい、もう俺等みたいな存在になっているアンタ等がそれ言うか? 変身したり魔法使ったり……俺たちと対して変わらねえじゃねえかよ」

 このウェルズの説き返しにメタルバードが呆然としながらも訊き返す。

「ま、まぁ、それもそうだが……にしても。何でお前達はいつもは俺たちと変わらない大きさで、そしてなぜ急に小さくなっちまっているんだ?」

「は、はい……普段私たちは、自然界の力を周りから少しだけ借りていて、それで普段は皆さんと変わりない大きさで生活しているんですよ」

「……変わらない大きさって…大きくなっても、あんさん等は結構小っこいやないか」

「悪かったな! 元は小人だから、でっかくなっても身長は余り無えんだよ!」

 ウッズの説明を聞いて指摘するケルベロスに、ウェルズが不満を吐き出す。

「……で、なんでウッズさん達は元の小人の大きさに戻っちゃっている訳なんですか?」

 マーズが訊ねると、ウッズは悲愴な面持ちで答えた。

「い、いえ……先ほどの地震の時に体が縮んでしまった訳で……推測ではありますが自然界のパワーが不安定になってしまった事により、私達の肉体も元の小人の姿に戻ってしまったんだと思われますが……」

「じ、地震……って……」

「さっき遭ったろう、デッカイ地震がよ……あん時に体が縮んじまってな」

 不安がるイサミにウェルズが答えると、ウッズが仮説を述べた。

「多分……あの時に自然の力が不安定になって、私たちにも影響が出たんだと思うんですが……そもそも、あの地震はいったい何だったのかも気になりますし……」

 ウッズの仮説を聞いた聖龍隊一同は黙り込んでしまう

「……ところで、何で修司様が気絶したまま運ばれて来たんですか? それと加賀美さんも気を失っていますし……それからオマケに早見さんとタキシード仮面も頭から血を出して運ばれていますし……いったい何が有ったんですか?」

「……じ、実はな……ウッズ……」

 メタルバードたち聖龍隊は、先ほどの河原での惨状をウッズ達に説明した。

 

「……ウソだろ」「……そ、そんな」「……あ……あ」

 話を聞いたウェルズ、ウッズ、ジュニアは顔を蒼ざめ、ジュニアの方は今にも倒れそうな様子だった。

「……私達も、未だに受け入れにくいのよね。まさか修司君が」

「……あんな事してしまうなんて」

「カノンやケトーが……物を言わせられないほどの速さで……」

「妖魔やダークキングダムの四天王達が、速攻で斬られていって……」

「あれはまるで……」「……本物の、地獄絵図」

「それに……修司さん自身も自我を失って、本物の鬼の様な形相になっちまって……」

「……まさか修司さんが、あんな風になってしまうなんて…」

「驚きと言うよりも……」「……うん、ちょっと怖い…」

 マーズにヴィーナス、デューイやマーキュリーにソウシやキューティーハニー、星夜に小狼そしてナースエンジェルとさくらが不安を過らせていると、ウッズが心痛な面持ちで呟いた。

「……そうですか。また……」

「! ま、また?」「そ、それってどういう事なのよ?」

 ウッズの発言にトシもジュピター達も愕然とする中、ウッズは修司の昔を語り始めた。

「……修司様は幼い頃から感情の制御が難しい性分なんです。普段は明るくて温厚なんですが、一度感情が暴走すると中々納まる事ができないんですよ……以前居た街でもそれが原因で周りから怖がられて、拒絶されて……遂には肉親からも突き放されてしまって……それでいつも孤独に囚われてしまっているんですよ」

「に、肉親って……つまり家族からも拒まれちゃっている訳なの? 修司君は……」

「え……えぇ」

「か、家族からも怖がられているなんて……」

 ウッズの説明を聞いてセーラームーンもイサミも悲痛な表情を浮かべる中、ウッズは語り続ける。

「……修司様は生まれつき、他人と上手く付き合う事ができない悲しい性(さが)を持っているんですよ。いつも周りの人の反応ばかり気にしてしまって、上手く付き合おうとしても結局最後はその関係を壊してしまって……修司様はそんな自分を変える為にも、この街にやって来たんです。少しでも自分の運命を変えようと……」

『………………』

 ウッズの話を聞いて聖龍隊の誰もが黙り込んでいると、メタルバードがふと思い出す。

「……そう言えば、以前修司が言ってたっけな。『みんなが羨ましいぜ、ちゃんと家族と普通に過ごせるんだから…』って」

「え?」

 メタルバードの話に知世が反応すると、メタルバードは悲愴な面持ちで話す。

「修司は家族と喧嘩別れしたって、自分から言った事が有ったんだよ。恐らくは自身の感情の制御不能の件も含めて、家族とは決別しちまったんだろうな」

「そんな……家族と決別しちゃうなんて……」

 メタルバードの話を聞いて修司に同情するさくらとは反面、トシやソウシ、苺鈴が発した。

「……でも……あんなに感情が暴走しちゃうんじゃ、普通に家族と過ごすなんてできないのかも……」

「確かに……いくらアッコさんが悪人に襲われていたのが事の発端だったとしても、あそこまで暴走してしまうなんて……」

「感情がコントロールできないほど、危険な事はないわよ」

 しかし、そんな皆の意見にマーキュリーが弁論する。

「で、でも……彼は普段はとても優しい少年なのは、みんなだって知っているでしょ。もっと彼の事を理解してあげても良いんじゃないかしら……」

 だが、このマーキュリーの意見にヴィーナスとデューイが唱える。

「で、でも亜美ちゃん……今後も修司君が暴走してしまった時、私達で対処できるか……」

「そうだな……彼がこの先も同じような事をしてしまったら、僕達だけで対処できるか……難しいところだよ」

 

「で、でもデューイ。修司さんをこのままにして置く事も出来ないわよ、彼だってそんな自分の欠点で苦しんでいるのよ…その短所の所為で家族とは決別してしまって、行く宛も無いままこの街までやって来て……それでも私達の為に今まで必死に協力してくれたじゃないのよ! 放っておく事なんてできないわ」

 ナースエンジェルに続き、さくらも皆に訴える。

「……私も。修司さんは今までいろんな場面で協力してくれたし、私達の能力の事も理解してくれた。私達だって修司さんの力になってあげたいです」

「さ、さくら……」「りりか……お前……」

 ナースエンジェルとさくらの心意気に、小狼も星夜も唖然とする。

 すると此処でメタルバードが修司以外の問題を皆に指摘する。

「……まぁ。今は修司の事より、後の三人。加賀美あつこに早見青児、そしてタキシードこと地場衛をどうにかしねえと……一応あいつ等は部外者だしな」

「そ、そうね。でもアッコちゃんは今回の事でかなりショックを受けているだろうし……何とかしてあげられないかしら」

「あの加賀美って女、何かしらの魔力を持っているんやが……まっ、今回は一旦置いときますか」

 メタルバードの話にマーズとケルベロスが頷く中、メタルバードはある妙案を皆に提案する。

「あぁ、それなら俺に一つ、名案が有る。まずアッコの血だらけになった服や、身に付けている物を取って、それを綺麗に洗濯するんだよ。それも猛スピードで……更に体に付いた血も綺麗に拭き取って、アッコが目を覚ます前に加賀美家に運ぶんだ、そしてベットに寝かす……後は全部夢オチだって思ってくれりゃあ大丈夫だろう」

「そ、其処までします?」

 イサミの指摘にメタルバードが真面目な顔で断言する。

「用心に用心を重ねてだ。それに、加賀美あつこは遂さっき見た聖龍使いを完全に修司と認識しちまっている……このまま帰して下手に喋られても問題だろ? だったら今日の事は全て夢だと思わせた方が、この女の為にも良いだろう?」

 このメタルバードの提案に、マーキュリーとジュピターも合意する。

「……そうかもしれないわ。今日の出来事は敵幹部達の事も含めてアッコちゃんにとっては怖い思いしか与えないでしょうし……夢だと思わせる方が、彼女の為かも」

「じゃあ、彼女が目を覚ます前に早く済ませちゃいましょう」

 と、此処でメタルバードも協力しようと挙手するが。

「よしっ、オレも手伝うか……」「アンタはダメ!!」

 突然のマーズの待ったにメタルバードが困惑してると。ヴィーナスが呆れた顔でメタルバードに言う。

「上手い事言っちゃって……女の子の裸見ようとしても、私達が阻止しちゃうわよ!」

「お、おいおい。オレがそんなふうに……」(ジロッ)

 メタルバードを一斉に凝視する女子一同の視線に、メタルバードはたじろぐ。

「……見えちゃいますよね。アハハ……」

 こうしてアッコを密かに自宅に運ぼうと決まった所でウェルズとウッズが皆に言う。

「それじゃあ、俺たちは体が元に戻ったら早見青児と地場衛に上手~く説明して置いてやるよ」

「ええ……皆さんは加賀美さんを家に送ったら、そのまま帰宅しても大丈夫ですよ。話を聞く限りでは、修司様は無傷みたいですし、今日はもう遅いですので直帰しても構いませんよ」

 二人の了承を得て、キューティーハニーが答える。

「分かりました、それじゃ私たちはアッコちゃんの返り血の後始末をしておきましょう。早く済ませて彼女を家に送ってあげないと……」

 

 こうして、聖龍隊は加賀美あつこに付いた返り血の除去を施し、彼女が気を失った状態のまま、家に送ってあげた。

 

 

 

 

 

[動き出した敵勢力]

 

 一方、修司に瀕死の傷を負わせられたシスタージルとプリンスゼラはというと。

 

「オオゥ、我が子ゼラ、そして我らが豹の爪(パンサークロー)の幹部ジルよ……どうしたのじゃ、この傷は。お前達の生命状態が危機的状態だったので、すぐさま私の力で本拠地まで運んで来たというのに……」

「い、偉大なるパンサーゾラ様……も、申し訳ありません……あ、あの聖龍使いに、此処まで……」

「は、母上……すいません……せ、聖龍使いは……い、異形のバケモノでした……我等の党員や怪人達が全て……消されてしまい……」

 パンサークローの首領パンサーゾラの力で少しずつ回復されていく、瀕死の重傷を負ったジルとゼラ。

「ううむ……最早一刻の猶予も無い。スグに葉月聖羅の調整に取り掛からなければ……!」

「オオ……それではゾラ様、葉月聖羅を……ミスティーハニーを本格的にキューティーハニーと衝突させるのですね!」

「ああ、そうじゃ……それに、今回は更に趣向を施して……二人に真実を打ち明けるのじゃ」

「は、母上……真実とは」

「ははっ、忘れたかゼラよ。如月ハニーと葉月聖羅の正体を……」

「! なるほど、二人に真実を打ち明けて精神的ショックを与える作戦ですね……」

「そうじゃ……上手くいけばキューティーハニーは戦意を失い、ミスティーハニーは憎しみの刻印から新たな……それも強力な怪人を生みだし、更にキューティーハニーを追い詰める事じゃろう……」

「……なるほど、承知しました」

 息子ゼラが同意するのを目視したパンサーゾラは続いてジルに声を掛ける。

「うむ。そしてジルよ」

「はっ、はい」

「そなたは怪我が治り次第、ある組織と接触をしてほしいのじゃ」

「あ、ある組織……」

「そうじゃ、その組織も我等の配下にし利用するのじゃ……」

 そして最後にゾラはゼラとジルに告げた。

「それまでお前達は、ゆっくり休養するのだ。良いな」

「「ははっ……」」

 

 

 

 

 所は変わってダークキングダム本拠地

「……ムムっ、まさか四天王があっさりと殺られてしまうとは……おのれ! 許さんぞ聖龍使い、セーラー戦士よ!」

 そんな配下の四天王達を全て倒されて立腹しているクイン・べリルの元に、一人の青年が訪ねて来た。

「おい、お前……クイン・べリルで間違いないだろうな」

「むっ、何者じゃ! 我が城に無断で入り込む輩は!」

 ベリルが問い質すと、其処には目に生気のない加納望が立っていた。

「そう騒ぐでない。クイン・べリルとも在ろう者が少しは落ち着きたまえ」

「……お前。只の人間の若者では無いな」

「いかにも……私の名はブロス。ダークジョーカーの総帥である。まぁ、今は重傷を負ったこのカノンと言う若者の体に全エネルギーを注ぎ、完全に体を乗っ取っている状態ではあるがね」

「そ、そのブロスが私に何の用だ?」

「ふふっ、クイン・べリルよ……貴女は配下の四天王を、全て聖龍使いに倒されてしまったらしいですね」

「ああ、御蔭で今後の作戦に支障が出てしまうわ……」

「……其処で貴女に一つ策を……どうだ、私と手を組まないか」

「な、何!? お、お前と手を組む?」

「ああ……貴女の害敵、セーラー戦士を倒す事に手を貸そう。実を言うと、私は彼女達を始め、この街で活躍する多くの英雄達の肉体に興味が有るのだ」

「え、英雄の肉体?」

「ああ……彼等の亡骸に、私の作りだした黒のワクチンを注入し、私だけのダークジョーカー軍団を創りだすのだ……無論、貴女が恋してやまないエンディミオンはちゃんと、貴女の元に居させてやろう」

「え、エンディミオンを……私の物にする手助けまでもしてくれると言うのか!」

「ああ、もちろん……ただし、貴女も私の計画に協力して貰わなければならないが」

「な、何をするのじゃ?」

「私にとって目障りなナースエンジェル、そして宇崎星夜に裏切り者のデューイ……奴らを始末する為に貴女の力も借りたいのだ。ちょうど彼等はセーラー戦士と同じ聖龍隊の面々、一緒に協力して片付けてくれればそれで良いのだ。セーラー戦士の肉体も、私が丁重にダークジョーカーとして蘇生・利用させてもらうがな」

「むむむ……(い、今はまだDDガールズも調整中……いや、このブロスにも協力させて彼女達を起動させられるようにすれば、セーラー戦士など赤子同然に消せる。それにエンディミオンを私の物にできるなら、亡骸になるセーラー戦士や他の英雄の肉体など、どうでも良いわ)」

(ふふ、クイン・べリル…いや、クイン・メタリアよ。所詮、主も私と同じ実態のない悪意の塊。もしもの時はベリルを……)

 

 

 

 そして芹沢ジャパン地下施設、黒天狗党本部

「……南蛮天狗……南蛮天狗は居るか」

「はいはい……黒天狗様、何か御用で」

「うむ…香港からニイハオ姉妹(シスターズ)の派遣は要請してあるじゃろうな」

「はいはい、ちゃんと日本に来るように電報で連絡しておきました……今週中には来れる筈ですよ」

「うむ、それなら良いのじゃ……最早一刻の猶予も無い。速急にしんせん組や聖龍隊を倒し、我等が本懐を成し遂げねば……!」

「はい……私も早く貴方様と一緒に……」

 

 

 遂に敵勢力が本格的に動き出した。

 

 パンサーゾラの言う、ハニーと聖羅の真実とは。

 加納の体に憑依し、ベリルに密約を持ちかけたブロスの狙いは。

 そして黒天狗党が要請したニイハオ姉妹とは。

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