【聖龍伝説】始まる伝説   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 遂に今作からオリジナルスーパーヒロインが登場!秘密を知られたうえ、自身の中にある光の力を使ってどうにか英雄達を助けてあげたいと願う少女の想いが奇跡を呼ぶ!


アニメタウンの英雄達 目覚めよ!希望と愛を護る奇跡の乙女

[目覚めし希望の戦士]

 

 英雄達がそれぞれ、辛い激戦を繰り広げているその頃。

 加賀美あつこは一人、部屋のベッドに座り込んで、考え込んでいた。

 あの日、コンパクトから光が出て自分の身を護ってくれた事、気絶していた自分が目を覚ました時に見た情景。

 そして聖龍使いの素顔、あれ等は本当に夢だったのか。そして本当は夢で無かったとしたら。

「……あ~あ! 考えたらキリがない……! あの日の出来事は全部夢だったのかしら……それとも……」

 アッコは考えに考えた。そして、あの時自分の手に付いた生々しい血の感触を思い出した時。あの日の出来事は全て現実だった事にやっと気付いた。

「……やっぱり。あの日の事は夢なんかじゃ無い……! 全部……全部、本当の出来事だったのよ……!」

 そしてアッコは確信した。聖龍隊は親友の小田原修司に組織され、直接指揮しているのは聖龍使いであると報道されている。

 しかし、本当は組織したのも指揮しているのも同じ人物。つまり修司と聖龍使いは同一人物ではないかとアッコは勘繰った。

「……修司は。修司は前々から英雄たちについて調べていたし、聖龍の伝説についても気にしていた……やっぱり聖龍使いは修司だったのかも……!」

 アッコは徐にコンパクトを取りだし、鏡に向かって問い掛けた。

「鏡さん鏡さん、お願い、今英雄達がどうしているのか鏡に映して」

 すると鏡が映し出した光景を見て、アッコは愕然とした。

「……え、えっ! そ、そんな……これって……!」

 アッコは自分の目を疑った。其処には月と戦うさくらの姿。ミスティーハニー瓜二つの怪人と戦うキューティーハニーにイサミ達。更に、目を覆いたくなるほどボロボロに叩きのめされたセーラー戦士達とナースエンジェル。そしてそのスグ側で、見えない壁を殴る斬るして壊そうとしているメタルバードと聖龍使いの姿が映し出されていたからだ。

「そ、そんな……英雄達が、こんなにもボロボロに……せ、聖龍使いもメタルバードも必死に透明な壁を壊そうとしているし……た、大変……!!」

 アッコは悩んだ。しかし、自分に何ができるのか。様々な人や物にしか変身できず、まして戦うなんて事ができない自分が、どうやって傷だらけの英雄達を助け出せるのか考えに考えた。

 その時。アッコの部屋の鏡台が光だし、鏡にはアッコにコンパクトを授けた、鏡の国の女王が姿を現した。

「! あっ、じょ、女王様……」

「アッコちゃん久しぶりね……どうも今、其方の世界では大変な事が起こってしまっているみたいです」

「た、大変な事……そ、そうなんです! え、英雄達が…街を護ってくれているヒーロー達が大変なんです! じょ、女王、お願いです、彼等を…英雄達を助ける事はできないんですか!?」

 アッコは鏡の国の女王に必死で問いかけた。すると女王は真剣な表情でアッコに問い返す。

「……アッコちゃん。貴女は私と最初に交わした約束、忘れてはいませんよね?」

「! そ、それは……」

 アッコは言葉を失った。アッコが女王と交わした約束、それはコンパクトの秘密を誰にも知られてはいけないと言う内容だった。

 既に多くの敵キャラにその秘密を、そして聖龍隊にも知られつつある自分の秘密。そうアッコは女王との約束を既に破ってしまっている状況だった。

「………………」「………………」

 二人の間に重い沈黙が流れる。

 しかしアッコは決断し、女王に言い放った。

「……女王様」「? 何でしょうか、アッコちゃん」

「……私は、今まで多くの人や物。そして調子に乗ってたくさんの英雄の姿に変身して来てしまいました。その所為で多くの悪者に正体がバレそうになったり、多くの英雄の人達にも迷惑を掛けてしまいました。今、英雄達が大変な目に遭っているのも、もしかしたら私にも原因があるのかもしれません。だから……だから英雄達を、苦しんでいる英雄達を今度は私が助けたいんです! いつも街の弱い人達を助けてくれた英雄達を……あの時私を必死に助けてくれた英雄達を……助け出したいんです! お願いします女王様、みんなを助け出せたらスグに罰でも何でも受けますので、私にコンパクトで変身する許可を……みんなを助け出すチャンスを下さい! お願いします!」

 アッコの心からの叫びに、鏡の女王はこう告げた。

「……しかしアッコちゃん? 貴女の今のコンパクトでは、恐らく何もできませんわよ。行ってしまっても、ただ皆さんの迷惑になるだけではないですか?」

「そ、それは……」

 言葉を無くすアッコに、鏡の女王は続けて話した。

「アッコちゃん。貴女が本当に彼等を……英雄達を助けたいと願っているのであれば……もしかしたら、このコンパクトを使いこなせるかもしれませんわね」

「え?」

 すると、アッコが手に持っていたコンパクトが、鏡台の鏡に吸い込まれ、代わりに鏡からは今まで見た事のないデザインのコンパクトが飛び出て来た。

「こ、これは……女王様、このコンパクトは……いったい……」

 初めて見るコンパクトを見詰めて不思議そうにアッコが訊ねると、女王はこう答えた。

「アッコちゃん。そのコンパクトは聖なるコンパクト、通称セイント・コンパクト。私たち鏡の国の者でも、扱える者が居なかった為に封印されてきたコンパクトです」

「だ、誰も使う事の出来なかったコンパクト……」

 驚くアッコに女王は更に続けて話した。

「そのコンパクトは、真に平和を願い、真に愛するものを護りたいという心で祈れば、特別な変身ができると伝えられています」

「と、特別な……変身……」

「その変身が、どの様な姿なのか、私にも分かりません。しかし、今まで以上に使い道が大幅に広がるのは事実です……ただし」

「た、ただし……」

「ただし、そのコンパクトでの変身は、今まで以上に危険な想いをするのを運命づけています。貴女がそのコンパクトで変身してしまったら、もう今までの平凡な日常は送れないかもしれません。それでも良いと言うのであれば……」

「………………」

 女王の発言に返す言葉の見付からなかったアッコだったが、しばらく考えた後に決断した。

「……分かりました、女王様。私、このコンパクトを使います!」

「あ、アッコちゃん……!」

「私……誰かが困っていたり苦しんでいるのを黙って見ているなんて、できません! 私には何の力も取り柄も無いのかもしれない……だからこそ! 今苦しんでいる英雄達を助けてあげたいんです! いつも誰かの為に、全力で人々を護ってくれている英雄達を、今度は私が護ってあげたいんです!!」

 アッコの固い決意、そして願いに鏡の国の女王も決心した。

「……分かりました。それではアッコちゃん、貴女にそのセイント・コンパクトを正式に使う許可を与えます。それで貴女が本当に救いたい人達を護っていくのです」

「あ、ありがとうございます! 女王様!」

 アッコは目を潤わせながら感激した。

 そしてアッコは女王に訊ねる。

「そ、それで女王様……このコンパクトは、どうしたら良いの……?」

「アッコちゃん、まずはそのコンパクトを両手でしっかりと包み込むように持つのです。そして祈るのです……《誰かを護りたい、誰かを助けたい》……と」

「は、はい……!」

アッコは言われた通り、両手でしっかりとコンパクトを持ち、そして祈った。

(……みんなを助けたい……傷だらけになった英雄達を……修司を救いたい!)

 アッコが祈り始めると、鏡から光の筋が噴き出し、その光にアッコは体を包まれる。そしてアッコの容姿が次第に変わっていった。

 

 そして光が収まると、アッコの姿は青白いコスチュームに身を纏っていた。靴は白をベースに青い線が入っており、スカートはやや長めながら、足が強調されたデザインになっていた。

 更にコンパクトは、リストバンド状に変化していて、左手首に巻きついた。

「こ、これが……!」「こ、これがセイント・コンパクトの力……!」

 容姿の変わったアッコに、アッコ本人だけでなく鏡の女王までもが驚愕した。

「こ、これが私の……私の新しい力なんですね、女王様!」

「そ、そうですアッコちゃん。これがセイント・コンパクトの真の力なのです……人の純粋な思いを増幅させ、様々な奇跡を起こせると伝えられている、伝説の魔鏡聖女……それが今の貴女なのです」

「ま、魔鏡聖女……それが私の……第2の私なのね。あ、ありがとうございます、女王様! 私これからみんなを助けに行きます!」

 アッコの発言に、女王は待ったを掛けるかのように言い放った。

「アッコちゃん、まず行く前にそのコンパクトで今の英雄達の状況を確認してから向かった方が良いんじゃないのかしら」

「あっ、はい。そうですね」

 アッコはすぐさま、左手首に装着している直径8センチ程に縮小されたコンパクトを開いてみた。

「あ、あれ? さくらちゃんの方は既に落ち着いているっていうか……何だかもう終わっちゃっているみたいね……ん? な、何なの? ……コンパクトがさくらちゃんに対して何か反応している……」

 さくらを映し出したコンパクトは、鏡の周りの部分が突然輝き始めていた。

「……それは、強い心を……光の心を持っている者にしか反応しない輝きですわ」

「ひ、光の心……(前にも、悪人達が私には強大な光の力が有るって言っていたけど、まさかさくらちゃんにも)」

 驚くアッコは、女王に向かって問い掛けた。

「じょ、女王様! 私、まずはさくらちゃんの所に向かいます! そして一緒に協力してほしいとお願いしたいのですが……」

 すると鏡の国の女王は答える。

「アッコちゃん、今は貴女がセイント・コンパクトを使って行動しているのです。貴女が本当に正しいと思っているのなら、貴女の信じた道を進むのです。それもまた強さなのですから」

「あっ、はい! 分かりました……そ、それじゃ」

「彼女の所に行きたいのであれば【ミラー・ゲート】を使うと良いわ」

「み、ミラー・ゲート……?」

「ミラー・ゲートはその左手のリストバンドから巨大な鏡を出現させ、行きたいと強く願えば、行きたい場所に行く事が出来る移動用の技です。やってみなさい」

「あ、はい……」

 アッコは左手のリストバンドになったコンパクトに、右手の人差し指と親指で、周りの駆動部分を捻り、技を発動させた。

 するとコンパクトから巨大な鏡がアッコの前に現れた。

「こ、これがミラー・ゲート……!」

「さぁ、これで貴女の向かいたい場所に行く事が出来ます。アッコちゃん、後はあなた次第、しっかり頑張るのですよ」

 声援を送る女王に対し、アッコは言い放った。

「……女王様、今の私は加賀美あつこでも無ければ、ひみつのアッコでも無いわ」

「え?」

 驚く女王に対し、次の瞬間アッコは女王に宣言した。

「今から私は英雄達を……心優しい人達を助ける聖女……魔鏡聖女・ミラーガール! いざ行かん!!」

 そう言い残して、アッコいやミラーガールはミラー・ゲートに入り、姿を消した。

 

 そんな迷う事無く決断したアッコことミラーガールの行動を目の当たりにした鑑の国の女王は驚くばかりだった

「まさかアッコちゃんがスーパーヒロインになってしまうとは……三次元から来た男の子の、闇の心の影響力ってホント凄いわねぇ……」

 

 

 

 

[試練を突破した少女の前に…]

 

 その頃、深夜の月峰神社。

 さくらは自分のクラスの担任で、この月峰神社の宮司の娘《観月 歌帆》(みづき かほ)の助けも有り、さくら自身の魔力である星の魔力を杖に転位。封印の杖を星の杖に変化させる事により、最後の審判を突破できていた。

「こ、これが……私の、私だけの力……」

「………………」

「そうよ、さくらちゃん。これで貴女が正当なカードの持ち主、クロウカードの新たな主よ」

 愕然とするさくらを見詰める月と観月歌帆。

 さくらは心から安堵していた。失敗してしまえばカードは再び解き放たれ、自分の周りの人たちの《好き》と言う感情が消滅してしまうからだ。

 しかし、審判は終わった。カードは全て、さくらを新たな主と認め、さくらの大事な人達の感情も護りきる事が出来た。

「さくらちゃ~ん」「さくら、無事か!」「さくら無事なの~!?」

 さくらが安堵しているその時、親友である知世に小狼そして苺鈴たちが駆けつけてきた。

「み、みんな!」

「おい、お前等! もうさくらは試験を突破した後やでぇ~」

 駆け付けてくれる友を見て歓喜するさくらに続き、ケルベロスは真の姿の状態で、駆けつけた三人に声を発した。

「さくら、良くやった!」「おめでとうございます、さくらちゃん」

「まっ、仕方ないけど、私もさくらの事を認める以外ないわね」

「み、みんな……ありがとう」

 小狼、知世、苺鈴の激励にさくらは笑顔で駆けつけて来てくれた三人に礼を述べた。

 

 と、そんな時だった。彼女達の目の前に、巨大な鏡の様な出入口が光を発しながら出現した。

「な、何アレ?」「あ、あれは……!」「き、綺麗ですわね……」

「ほえっ? ほえ~! ま、まさかまだ最後の審判終わってない訳?」

 鏡の様な出入口を見て、苺鈴も小狼も知世もさくらも一驚する。

「お、おい月……これもお前の仕掛けた魔法なんか?」

「ち、違う……こんなの私だって知らないよ」

「な、何なの! あの巨大な鏡は……!」

 ケルベロスも月も観月も戸惑うばかり。

 そんなさくら達が驚いている最中、一人の少女が鏡から飛びだした。

「良かった、初めてだったけど上手く通り抜けられたわ」

 ミラー・ゲートから出てきたのは他でもないミラーガールだった。

「え、え~と…あなたは…」

 さくらが訊ねると、ミラーガールは戸惑いながらも話し返す。

「えっ、あ、あなたが私同様に強い光を持っているって言う少女……」

「な、何だよお前! 何処から来たんだ」

 急に現れたミラーガールに小狼は警戒している様子。

「わ、私は……私はミラーガール。聖なる鏡で人々を……愛と希望を護り抜く魔鏡聖女よ!」

「ま、魔鏡聖女やとぉ?何だか胡散臭いなぁ」

「うわっ、ライオン!?」

 戸惑いながらも返答するミラーガールの自己紹介にケルベロスが胡散臭そうな言動をするも、翼の生えた獅子形態のケルベロスを見てミラーガールは思わず叫んでしまう。

「いったいアンタは誰なんだ! 聖龍隊にもこんな人はいない筈だぞ!」

 小狼の問い掛けに、ミラーガールは戸惑いながらも述べ返した。

「……あなた、確か小狼君って言うのよね」

「! な、何で俺の名前を……」

「あ、あなたは……」

 自分の名前を言い当てられて一驚する小狼に続き、さくらが訊ねるとミラーガールは他の皆の事も言い当てる。

「他にも知っているわ。木之本桜ちゃんに大道寺知世ちゃん。そして香港から来た李・小狼くんに従妹の李・苺鈴ちゃんよね。事情は後でちゃんと話すから、今スグ私と一緒に来てほしいの! さっき小狼くんの言った聖龍隊のみんなが大変なのよ! お願い、力を貸して!」

 突然姿を現したミラーガール、そして彼女からの懇願にさくら達は戸惑った。

 そんなミラーガールに、月と観月が話しかけた。

「……君。君はなぜ此処に居るんだ」「え?」

「……何故、関係ない貴女がこの街に来られる訳? 今さくらちゃんは最後の審判が終わって心身ともに疲れているのよ」

 ミラーガールに問い詰める月と観月。しかしさくらは混然とする状況下でミラーガールに訊ねる。

「……ミラーガール。聖龍隊が、みんなが大変って……」『え!?』

 まったく初見である筈のミラーガールを疑わないさくらの言動に、彼女とミラーガール以外の皆は驚愕する。

 そんなさくらにミラーガールは真摯に訴える。

「さ、さくらちゃん……実は聖龍使いや他のヒーロー達が大変な目に遭っているのよ! お願い、一緒に来て力を貸して」

 突然現れたミラーガールに疑いの目を向ける、月に観月にケルベロス、そして小狼に苺鈴、更には思わずキョトンとしてしまっている知世に対してさくらだけが、急に現れたミラーガールの言葉を聞き入れた。

「分かりました。ミラーガール、私も一緒に連れてって! 私も聖龍隊のみんなを助けたい!」

 しかしさくらの判断に、小狼とケルベロスが待ったを掛ける。

「さ、さくら! こんな得体のしれない女の言う事、真に受けて良いのか!?」

「そ、そうや! こんなワッケの分からない輩の言うこと真に受けたら、事が事やでぇ」

 そんな二人に対し、さくらは断言した。

「……私。私、このミラーガールを信じる……ううんっ、何故か分からないけど信じられるの! 彼女が言っている通り聖龍隊が今、大変な状況だとしたら、私も行って助けてあげたいの! お願い、私を行かせて! そして信じて、小狼くん、ケロちゃん、知世ちゃん、苺鈴ちゃん、そして観月先生、月さん!」

 さくらの発言に、みんなは渋々ながらも同意した。

「……分かったよさくら。お前の好きにすると良いさ」

「! しゃ、小狼くん……」

「まっ、さくらが此処まで言うからには、信頼できる女っちゅう事やな」

「け、ケロちゃん……」

「まぁ、どうせ言っても聞かないでしょうし、さくらの思った通りにすれば」

「ふふ、私は最初っから、さくらちゃんの言葉を信じていますわ」

「め、苺鈴ちゃん、知世ちゃん……」

「ふふっ、何だか私も、さくらちゃんの言葉を信じてみたくなっちゃったわ」

「確かに……僕も不思議と彼女を信じてみたくなって来た(彼女から感じる、この雰囲気は……)」

「せ、先生、月さん……」

「……良かったわ、みんなが信じてくれて……(それにしても、このさくらちゃんって、スッゴク周りから信頼されているのね)」

 皆からの同意を受けて感激するさくらを見て、ミラーガールは彼女の信頼の厚さを痛感する。

 

 そしてミラーガールはさくらの手を引き、ミラー・ゲートに引き連れた。

「あ、あの……ミラーガール。この鏡は……」

「あぁ、これはミラー・ゲート。何時でも何処にでも行ける便利な通り道なの。これを通って聖龍隊を助けに行くわよ」

 そして、さくらはミラーガールに引き連れられ、ゲートの中に入っていった。

「さ、さくら! 気を付けろよっ」「怪我だけはすんや無いでぇ~」

「さくらちゃん、お気を付けて」「しっかり頑張んなさいよっ」

 さくらの、そしてミラーガールの言葉を信じ、小狼やケルベロスそして知世や苺鈴たちは笑って二人を見送った。

 

 だがこの時、観月と月はミラーガールから感じられる何かについて語り合っていた。

「……月、貴方は気付いた? あのミラーガールから感じられる異様なまでの光の力……」

「……あぁ、まるで全ての闇を打ち消す事のできるような、強大ながらも、何処か温もりが感じられる……そんな光を感じられたよ」

 

 

 

 

[悲劇と現実]

 

 一方その頃、キューティーハニーはイサミたちしんせん組、更に早見青児に高木はるかと共等にダークパンサーと激戦を繰り広げていた。

 

「ぎゃああああ!」

 何処か悲しげな叫び声を上げて、ダークパンサーは執拗にキューティーハニー達を追い詰める。

「つ、強い……今まで戦った、どんな怪人よりも格段に強い……」

 余りにも強いダークパンサーを相手に、キューティーハニーは既に息が上がっていた。

「……くっ、ま、まるで私たちの力が通じない」

 イサミも何とか龍の剣で応戦していたが、全く体力の衰える様子の無いダークパンサーに対し、疲れ切っていた。

「くそ……せっかく新しいアイテムが手に入って、思う存分戦えると思ったんだけど……」

「は、はぁ……そ、それに……何だか、あのダークパンサー。何処か悲しそうな雰囲気があって、余り本気になれない……」

「な、何言っているんだ! あの怪人にそんな感情なんて……」

 新たな力を得て闘争心を高めていたトシとソウシだが、既にイサミ同様に満身創痍の状態だった。

 そして言い合うソウシと青児に、はるかが言った。

「だ、だけど……あのダークパンサー、言われてみると確かに、何処か寂しそうな感じが……」

 

 と、その時。ダークパンサーが突如、視界に入った葉月聖羅と、彼女を介抱している如月博士に向かっていった。

「……キャアアアア!」「あっ、いけない!」

 二人へと向かっていくダークパンサーを視認して、イサミが声を上げる。

「こ、このままじゃ如月さん達が……!」「き、如月博士!」

「お、お父様! それに聖羅! 早く逃げて!」

 高木はるかも早見青児もキューティーハニーも如月猛と葉月聖羅へ必死に呼び掛ける。

 しかし、ダークパンサーは二人の眼前まで攻めて来た。その時。

「せ、聖羅ーー!!」

 放心状態の聖羅を庇い、如月博士がダークパンサーの攻撃を受けきった。

『!!』「……お……お父様ーー!!」

 キューティーハニー、そしてイサミ達は目の前で如月猛博士が斬り裂かれ、傷口から大量の出血が流れ出るのを目にした。

「……あっ……あ、あぁ……」

 そして目の前で自分を庇い、倒れゆく如月博士を見て、ようやく聖羅は自我を取り戻した。

「……あ、あ、あ……」

 聖羅は目の前に倒れた如月博士に、震える手を伸ばす。するとその手を博士は突然握った。

「! …え?」

 驚く聖羅に博士は呟く様に言付けた。

「せ、聖羅……済まなかったな。お前に……娘であるお前もハニーと同じように愛してやれなくて……ホントに済まなかった……」

 博士は微かな声で、娘である聖羅に対して愛情を注いでやれなかった事を懺悔する。

「あ、あぁ……」

 聖羅の目は、次第に涙が溢れ返っていた。

「ほ、ホントにゴメンよ、聖羅……私の……大事な……む……す……め…………」

 そして如月博士は眠る様に、静かに息を引き取った。

「あ! ……ああぁ……」

 如月猛の死を目の当たりにした聖羅は激しく動揺する。

「そ、そんな……」「こ、こんな事って……!」

「う、嘘だろ!」ソウシ「そんなぁ……」

 はるか、イサミ、トシにソウシも余りの出来事に愕然とし、特にイサミは今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「……き、如月博士」

 早見青児は如月猛を守れなかった現状に悲嘆していた。

「……お、お父様……お父様ーー!!」

 キューティーハニーも父である如月猛の死を目撃して嘆き悲しんだ。

 

 こうして、如月博士は愛する娘、葉月聖羅を庇い、命を落とした。

 

 

 

 その頃、同盟ジョーカーキングダムに徹底的に攻撃され、身も心もボロボロになっていくセーラー戦士たちとナースエンジェル達。

 一方、ブロスとベリルの力でバリアーを張られ、仲間達を助けに行けないでいる聖龍使いとメタルバードは何度も何度もバリアーを殴る斬るなどして突破を試みようとしていた。

「クソ~! クソ~~!!」「くそっ、くそったれ!」

 聖龍使いとメタルバードは目に見えぬバリアーをどうにか打ち破ろうと、聖龍剣で斬り付け、メタルバードは拳で殴り付けていた。

「きゃああ!」「ぐはっ!」「がはっ」「きゃっ」

「ぐうっ!」「うわあっ!」「うわああ!」「きゃあっ!」

「うははは! 良いぞ、もっとやってしまえDDガールズ!!」

 セーラームーン/ジュピター/デューイ/マーキュリー/マーズ/ヴィーナス/星夜にナースエンジェル達は黒のワクチンで強化されたDDガールズに一方的に痛め付けられていた。そんな彼女達が苦しむ様を、加納に憑依しているブロスは高笑いで見物していた。

「こ、これっ、ブロス。妾のDDガールズをそう好きに使うでない!」

「わはは、ベリルよ。構わないであろう、どうせ我々が倒したい相手は同じなのだしな……!」

 ベリルと加納に憑依したブロスは、好き勝手に英雄達を攻めまくっていた。

「くっ…せ、セーラームーン……英雄達よ……」

 一方、タキシード仮面は十字架に縛り付けられ、身動きもできない虫の息状態で、ただただ目の前の惨状を見る事しかできなかった。

「クソ~ッ! どうにかできねえのか……!」

 メタルバードは悔しさの余り、思わず歯ぎしりしてしまう。

「くそ~、くそ~……お、俺がいけないのか……俺が、俺が! 俺が敵達を嬲殺したから、仲間がこんなに苦しんでいると言うのかーー!!」

 遂に聖龍使いは、目の前で仲間達が傷付けられていくのを、目の当りにしながらも何も出来ない不甲斐無さに絶望し、嘆き始めた。

「あ、相棒……!」

 メタルバードが悲観する中、聖龍使いは悲しみの余り、ブロスとベリルに対し、とんでもない事を言い出した。

「ぶ、ブロス! そしてクイン・べリルよ!お 願いだ! ワシの……俺の体をやる!! 俺の肉体を差し出すから仲間を……みんなをこれ以上傷付けないでくれーー!!」

『!』『!』「! あ、相棒!」

 聖龍使いの突然の発言に、セーラー戦士達もナースエンジェル達もメタルバードも愕然とした。

 装着している鬼の面の、目の部分そして隙間から大量の涙をボロボロ流しながら、聖龍使いはブロスとベリルに頭を下げて懇願する。

「せ、聖龍使い……」「か、彼が頭を下げるなんて……」

「い、いつも意地っ張りの頑固者が……」「強情っ張りの彼が……」

「ま、まさかブロスとベリルに泣きながら……」

「お、俺たちの為に……あの人……」「し、修司君……」

「………………」

 頭を下げる聖龍使いを目の当たりにして、ジュピター、マーキュリー、マーズ、ヴィーナスデューイに星夜そしてセーラームーンにナースエンジェル達は愕然とした。

 

 だが、そんな聖龍使いにベリルとブロスは嘲笑で返した。

「……ふはは……は~はは~! 聖龍使いよ、安心するが良い! セーラー戦士達を片付ければ、そなたも直ぐに後を追わせてやるぞ! うは~はっは」

「はっは……まさか冷酷に、そして残忍な殺し方で我等の手勢を虐殺した聖龍使いが……無様なものだ! わっ~はっは!」

 聖龍使いの想いを踏み躙る様に台詞を吐き捨てるブロスとベリル。すると聖龍使いは

「うっ……うぅ……! くそっ、くそ!くそ~!!」

 何と聖龍使いは悔しさの余り、今度は己の拳でバリアーを殴り始めた。

 殴り続けていく内に、聖龍使いの拳からは血が滲み出ていた。

「お、俺は……俺は結局みんなを助ける事が出来ないのか……! みんなの苦しみを取り除く事は出来ない、無力な男なのかぁ!!」

 悲痛に叫び続ける聖龍使いに、ナースエンジェルがバリアー越しに話し掛ける。

「せ、聖龍使い……」「! な、ナースエンジェル……」

「あ、貴方に伝えたい事が……」「な、なんだ……こんな時に……」

 するとナースエンジェルは以前、工場で加賀美あつこが修司に変装していたケトーに対して発言していた台詞を彼に伝えた。

「彼女、アッコちゃんが言っていたの。『自分を優しく気遣ってくれたのに、思わずカッとしてしまって貴方の想いを……優しさを踏み躙ってしまって、酷い事言ってしまって……本当にゴメン』って。彼女、貴方に伝えたかったのよ……彼女の想い、しっかり受け止めて……お願い」

 ナースエンジェルはまるで遺言の様に、笑顔で聖龍使いに伝えた。

「!! な、ナースエンジェル……こ、こんな時に……自分達が傷付いていると言うのに、俺に……アッコの想いを……」

 敵の猛攻で身も心もボロボロになり、傷だらけの体になってまでもナースエンジェルは聖龍使いに、修司にアッコの想いを伝えた。

 そんなナースエンジェルの気遣いに、聖龍使い、いや小田原修司は再び、感極まった。

 

 と、そんな最中。

 

 

 

[現れた希望の戦士とカードキャプター]

 

 突如、聖龍使いを始めとする一同の目の前に、しかもバリアーの向こう側に巨大な鏡の様な出入口が出現した。「な、何だこれは!?」「むっ、こ、これは……!」

 ブロスとベリルが一驚する中、衰弱している英雄達もゲートに気付く。

「な、何……」「あ、あれって……」

「あ、あれって巨大な……」「え、えぇ。巨大な、鏡……」

 マーズ/ヴィーナス/ジュピター/マーキュリーらセーラー戦士達は目の前に現れた出入口に驚愕した。

「な、何なんだ、今度は……」「ぼ、僕にも、何が何だか……」

 星夜とデューイも目の前に現れる出入口の状況を呑み込めなかった。

「あ、あの鏡は……!」「い、いったい、何なの……」

 出現した鏡に何らかの反応を感じるセーラームーンに、不思議がるナースエンジェル。

「あ、ありゃ一体なんだ!?」「あ、あの鏡は……いったい?」

 驚くメタルバード、そして聖龍使い。

 そして一同の目の前に最初に姿を現したのは。

「み、みんな! 遅くなってゴメンなさい!」

 最初に鏡から飛び出した木之元桜に、ジュピタやマーズそして星夜達が一驚する。

「さ、さくらちゃん!?」「な、なんでさくらちゃんが……」

「何で木之本が此処に……しかもあんなデカイ鏡から出てくるんだ?」

 驚く皆を目の前にしながら、さくらは傷だらけのナースエンジェルに駆け寄る。

「り、りりかちゃ……あっ、う、ううん、ナースエンジェル、大丈夫?」

「さ、さくらちゃん……来てくれたのね……」

 互いに見つめ合うさくらとナースエンジェル。すると此処でさくらに続いて鏡から出て来た少女に一同は注目する。

「皆さん! 遅れてしまってすいません!」

 聖龍隊にとっては、見た事も無いヒロインであるミラーガールが続けて飛び出してきた。

「だ、誰! あの子!?」「み、見た事無い子だわ!」

「だ、誰~! 誰なの、君は~!?」

 驚きっぱなしのヴィーナスにマーキュリーそしてセーラームーンら戦士達に続き、星夜とデューイも目を丸くしていた。

「わっ、だ、誰なんだ、あの女の子……!」

「こ、こんな英雄が居るなんて、聞いてないぞ!」

 そしてメタルバードも同様に驚き困惑する。

「あ、あれっ? あんな子……この街に、アニメタウンに居たっけかな??」

 そしてミラーガールの登場に一番驚いていたのが、聖龍使いこと小田原修司。

「〔ガアッーン〕(知らねーー! こんなキャラ知らねーー!! 誰なの!? 誰なんですか、この女はぁ! ウォール・トゥーサムよ~、こんなヒロイン俺知りませ~ん!!)」

 そんな最中、ブロスとベリルがミラーガールに対して問い掛ける。

「お、お前は……お前はいったい……」

「そなたは……いったい……」

「「一体何者だ!!」」

 驚くブロスとベリル、更に英雄たちに対しミラーガールは一瞬戸惑いながらも名乗った。

「私? 私は……」

『………………』

「愛と希望を聖なる鏡で護り抜く! 奇跡の乙女、ミラーガール!! 只今参上っ」

 そうミラーガールは台詞を言い放つと、ウインクをして決めてみる。

『み、ミラーガールぅ!!?』

 全員が驚愕する中、聖龍使いは再度驚いた。

「〔ガガーッン〕(ヤッパ知らねーー! こんなキャラクター知らね~よーー~!!)」

 思わず呆然としてしまう聖龍使い。そんな最中、ミラーガールは行動に移った。

「よしっ、まずはみんなの怪我を回復しましょう!」

 そうミラーガールは言うと、彼女は左手の縮小されたコンパクトを鏡の盾に変化させた。

「え? り、リストバンドの部分が盾に!?」「な、何だか綺麗な盾だなぁ……」

 煌びやかに輝く、その鏡の盾に思わず見入る星夜に見惚れるセーラームーン。するとその時、ミラーガールは鏡の盾を円を書くように空に向かって構えると、同時に温もり感じる光が彼女を中心に周辺へ降り注いだ。

「こ、これは!」「な、何? この温かい光は…」

 デューイやジュピターが優しくも温もりある光を浴びて驚く中、ミラーガールは技の名を唱えた。

「《ミラー・ヒーリング・フラッシュ》!」

 そして鏡の盾から放出された光を浴びた英雄達の体は、みるみる内に回復していった。

「か、体が……!」「体の傷が……ダメージが消えていく……!」

 自分達の傷が癒えていくのを目前にしてマーキュリーやマーズ達が唖然とする中、同様にメタルバードも聖龍使いも立ち尽くしていた。

「あ、あの女の子……何気にスッゲエ事できるんだな……」

「あ、ああ……」

 メタルバードと聖龍使いの二人は思わずポカンと固まってしまう。

「す、凄い……こんな凄い事できるんだね、ミラーガール……」

「ほ、ホントに凄いわ。私の治癒能力の上を行くかも……」

「た、確かに……一度に大人数の怪我を瞬時に回復できるなんて、ナースエンジェルにもそうそうできる事じゃ無い……!」

 瞬時に怪我を治癒させたミラーガールの技を前に、さくらもナースエンジェルもデューイも驚くばかり。

 そんな怪我が完全に回復した英雄達を見て、ブロスとベリルは焦燥し始めていた。

「ば、バカな……瞬時に英雄達のダメージを癒すなど……そんな事が出来る者がこの世に居たのか!」

「ぐ、ぐぬぬ……こ、こうなれば……DDガールズ! あのミラーガールも容赦なく叩きのめしてしまえ!!」

『シャアアアア!!』

 ベリルの命令で、DDガールズが再度襲いかかって来た。

「きゃああ!」「ま、まだコイツ等が残っていたんだ……!」

 再度襲来するDDガールズを前にナースエンジェルと星夜達が焦る中、ミラーガールが皆に呼びかける。

「みんな! 私がミラーシールドで全員の力を増幅させるから、セーラー戦士にナースエンジェル! それにさくらちゃんは攻撃して! お願い!」

 ミラーガールの依願に対して、英雄たちは驚いた。

「えっ?」「ち、力を増幅って……」

「む、無茶な! さっきまでボコボコにされて、もう技を使える程余力なんて残って無いんだぞ!?」

 動揺するマーズにヴィーナスそしてデューイ達に、ミラーガールは真剣に訴えた。

「お願い、私を信じて……!」

 ミラーガールの言葉をさくらは受け止めた。

「……みんな、ミラーガールの言葉を信じよう!」

「え?」「さ、さくらちゃん……」

 さくらの発言にジュピターもナースエンジェルも唖然とする中、さくらは自分の心情を打ち明ける。

「私、最初に彼女に会った時から何故か解らないけど、信じてみたくなったの……う、ううん。信じたいの、ミラーガールを!」

『………………』

 さくらの言葉にしばらく黙りこんでいた面々だったが、さくらの嘘偽りのない心中に背中を押される。

「……分かった。私もさくらちゃんを信じているみたいに、ミラーガールの事も信じるわ!」

「そうね。そもそも他に、この状況を打破できる方法なんて無いですしね」

「よ~し、みんなでササッと終わらせちゃお~」

「み、みんな……」

 ナースエンジェル、マーキュリー、セーラームーン達が自分を、そしてミラーガールを信じてくれた事にさくらは感激した。

 そんな皆の心が団結したのを視認したミラーガールは盾を頭上に掲げて言い放つ。

「……よし。みんな、いくわよ!《ミラー・プレイ・デザイアー》!!」

 ミラーガールが鏡の盾を天に構え技の名を叫ぶと、再び癒しの光が英雄たちに降り注いだ。

「ち、力が……力がみなぎって来るわ!」「こ、これならイケる! イケるわ!」

 ナースエンジェルもセーラームーンも力が漲るのを実感していた。

 そして目前までDDガールズが迫って来たのを見計らい、反撃に転ずる。

「さっきのお返しよDDガールズ! これでも喰らいなさい《クレッセントビーム》!!」

「わ、私だって! みんなの力に……みんなを助けられる存在になる!《ショット(撃)》!」

 ヴィーナスのクレッセントビーム、更にさくらのショットのカード。二つの技がDDガールズⅢ、通称紅の将の額に直撃、消滅した。

「ウギャアアァ!!!」

「や、やったわ! ヴィーナス、それにさくらちゃん、やったよ!」

「や、やった……倒せた……」「わ、私も……私にもできた……みんなを護る事ができた!」

 歓喜するセーラームーン同様に喜ぶヴィーナスとさくら。しかし、まだDDガールズは4人も居た。

「よしっ、今度は私が行くわ! さくらちゃん、さっきみたいに一緒に攻撃してくれる? 一緒なら更に技の威力が上がるみたいだから……」

 マーズのこの言葉に、さくらは喜んだ。今までほとんど戦闘では役に立たなかった自分を、仲間が必要としてくれたことが心の底から嬉しく感じたからだ。

「は、はいっ。マーズさん、一緒に戦いましょう!」

「えぇ、行くわよ、さくらちゃん!」「はい!」

《ファイヤー・ソウル!》《ファイアリー「火」》

「ギャアアアァ!」「ウギャアア……」

 セーラーマーズのファイヤー・ソウル、そしてさくらのファイアリーを喰らい、ⅠとⅡのDDガールズは灰になった。

「次は私! さくらちゃん、続けてお願い!」「は、はい!」

《シュープリーム・サンダー!》《サンダー「雷」》

「ギャアアアア……!」「アアアアア……!」

 そして残りのDDガールズ2体も、ジュピターのシュープリーム・サンダーとさくらのサンダーのカードを喰らって消滅した。

「「………………」」

 この戦況を目前にしたメタルバードと聖龍使いは、展開の速さに追い付いていけなかった。

「……あ、あのミラーガールが現れてから……何か物事がトントン拍子に進んで行っちまうな……」

「あ、あぁ……(あ、あんな凄い事ができるキャラクターって居たかな……どっかで見た事有る様なキャラだけど……)」

 

 そしてDDガールズ全てを倒され、追い詰められてしまったベリルとブロスは。

 

 

 

 

 

[明らかになる企み]

 

「ぐ、ぐぬぅ……ま、まさか! まさかDDガールズが、あっという間に倒されるとは……!」

「むぅ……み、ミラーガールめ……小賢しい真似を……!」

 最早、戦わせられる手駒を失い、窮地のベリルとブロス。

「さぁ、もう終わりよクイン・べリル!」

「タキシード仮面様を放しなさい!」

 ジュピターとセーラームーンに続き、デューイとナースエンジェルも敵陣営に問い詰める。

「もうこれまでだな、ブロス!」

「ブロス! 加納先輩を解放しなさい!」

「お、おのれ……!」「………………」

 そして次の瞬間、追い詰められたブロスは激しく動揺し、それに続く様にベリルも叫んだ。

「お、おのれ! セーラー戦士、ナースエンジェル……そしてミラーガール! お前達を倒さなければ私の……我の構想する最強のダークジョーカー軍団は築けんのだ! セーラー戦士達にエンディミオン……更には其処で見ている聖龍使いにメタルバードの亡骸に黒のワクチンを注入し、我は最強の軍団を築く! こんな所でお前の様な訳のわからない女に邪魔をされてたまるか!!」

 ブロスは完全に怒りで我を忘れていた。

「そうじゃ! お前の様に何処の誰かも解らぬ女子(おなご)に邪魔されて成るものか! 妾はエンディミオンと共に末永く……ん、ちょっと待て。今なんと申したブロスよ!」

 と、この時クイン・べリルはブロスの台詞の一部に違和感を覚える。

「ん? 何だベリルよ」

「い、今お前……セーラー戦士達や他の英雄達だけでなく、エンディミオンまでもダークジョーカーにすると発言したぞ……ど、どう言う事だ! お前、エンディミオンには何もしないと言ったではないか!!」

 クイン・ベリルからの指摘に対して、ブロスは彼女にこう吐き捨てた。

「……私がいつ、エンディミオンには何もしないと言ったかね?」

「!! お、お前……!」

「私はただ、エンディミオンを貴女の側に居させてあげると、そう告げた筈だ。そう……ダークジョーカーに成り果てたエンディミオンを……ね!」

「お、お前! ブロス、貴様はーー!!」

 クイン・べリルは逆上し、ブロスに飛び掛かった。だが

「あ! 頭が……頭がぁ……!!」

 ブロスに襲い掛かろうとするベリルの頭に突如激痛が走った。

「え?な、なに!?」「なにが起こっているの!?」

「あっ、見て! ベリルの様子が……」

 一驚するマーズにヴィーナス、そしてマーキュリーが指差すとベリルの風貌が突然、変わり始めていった。

「な、何が起こっているの……?」

 セーラームーンら英雄達が驚いていると、突如ベリルの額の菱形の紋章が輝きだし、DDガールズの残骸を吸収し始めた。

「こ、これはいったい!」「な、何が起こると言うのだ……」

 状況が呑込めないメタルバードや聖龍使い達に、ブロスが言い放った。

「はははは、まぁ、こうなるだろうと思ってな。前もってベリルに憑依しているクイン・メタリアに呼び掛けておいたのだよ。もしもの時はベリルを……彼女を完全な悪意の塊として完全に意識を乗っ取ってしまえとな!!」

「な、何だって!?」「ぶ、ブロス! それはどう言う事!?」

 一驚する星夜に続きナースエンジェルが問うと、ブロスは英雄たちに説明してやった。

「ふははは、元はと言えば、ベリルはただエンディミオンに対して淡い恋心を抱いていただけの女だったのだよ。だが、その叶わない恋心、その心の隙間に付け入り憑依したのが、銀河中の星々から生まれた悪意の塊であるクイン・メタリアだったのだ。私はベリルに気付かれない様メタリアを言い包めて、ただの憎悪の化身に変化させてやったのだ!」

 これを聞いた英雄たちは驚愕した。

「そ、そんな!」「べ、ベリルも憑依されていたって事!?」

 マーズやセーラームーン達が戸惑う中、デューイだけは事実を察していた。

「……そうか。ベリルも、いやクイン・メタリアもブロスと同じ存在だったのか……」

「! ど、どういう事なのデューイ!?」

 驚くナースエンジェルに、デューイは語った。

「ブロス……アイツもメタリア同様、悪の意識体からなる実体のない怪物なんだ。だからこそメタリアを自在に……いや、メタリアと同調して彼女を、クイン・べリルを思い通りに操れるのかもしれない……!」

「そ、そんな!」「ふ、二人とも実体のない怪物だったって事!?」

「お、おい……実体が無いなんて、いったいどうやって倒せばいいんだよ……!」

 動揺するマーキュリーやジュピターそして星夜達に、ブロスが更に吐き捨てた。

「はははっ、所詮お前達もベリルも、愛だの絆だの繋がりだのと下らぬ事を抜かしている愚弄な者共だ! 愛を欲してしまうからこそ、ベリルの様に哀れにメタリアに憑依され、自我を失ってしまう愚かな存在に成り下がってしまうのだよ! 愛も優しさも……そして絆など、この世に不要な物なのだ!!」

『!!』

 このブロスの発言に、その場の全員が表情を険しく一変させる。

 

 が、そんな中でミラーガールがブロスを睨みながら問い掛ける。

「……ブロス。アナタは本気でそんな事を言っている訳?」

「み、ミラーガール……?」「え?」「!」

 さくらやセーラームーンそしてナースエンジェル達から見てみれば、明らかにミラーガールは怒っている様子だった。

「……確かに。ベリルが可笑しくなってしまったのは、叶わない愛情を求めてしまったから……望んでも手に入らない愛を得ようとしてしまったから、メタリアなんかに憑依されてしまった……それは否定しないわ!」

『………………』

「でも、人は……私たちは、そんな愛が有るからこそ強くなれる! 誰かに対して優しくもなれる! そして自身も愛され、信頼される存在になれるのよ! 貴方の様に人の愛を……信頼をただ利用するだけの存在には分からないでしょうけど、だからこそ人は輝いていけるのよ!!」

 ミラーガールのこの発言に、他の英雄達も共感した。

「……そう、その通りよ!」

「人は確かに弱いわ……弱いからこそ愛を求めて、それによって時には道を踏み誤ってしまう事も有る……」

「でも愛が有るからこそ、人は同時に優しくも強くもなれるのよ!」

「愛は間違いを起こすだけじゃないわ。必ず人を……そして自分自身も幸せに導いてくれるものなのよ!」

 マーズ/マーキュリー/ジュピター/ヴィーナスに続き、星夜やデューイも賛同する。

「そうだ! 確かに人間は間違いばかり起こす種族なのかもしれない……だけど、誰かを思う気持ちが有る限り、人が不幸になる結末なんて来る訳が無い!!」

「……ブロス。僕も最初は、お前と共にこの地球を滅ぼし……ナースエンジェル達を倒そうとした。だけど、お前に裏切られ行く当ての無くなった僕をナースエンジェルは助けてくれた……確かに人の愛は、時には災いを引き起こしてしまうのかもしれない、だけど! 僕はその愛に、人の優しさに救われた! お前が、その愛を、優しさを奪うのであれば、僕は容赦なくお前を倒す!」

 そしてナースエンジェルにさくらセーラームーンもベリルとブロスに言い放つ。「

「そう! 人が人を愛する……それによる繋がりが今まで私達を、そして他の人達との絆を深めていった。人は1人では生きてはいけない、だからこそ他人を思いやり、愛する心が必要なのよ!」

「誰かを思う、誰かを信じる……そんな愛が有ったからこそ私たちは今まで頑張って来られたのよ!」

「ベリル! そしてブロス! あなた達に分からせてあげるわ、人の愛が……人の優しさが……どんなに素晴らしい力なのかを!」

 そして全員がブロスとベリルに告げ終わった、その時。ミラーガールのミラー・シールドとセーラームーンが共鳴するかの如く、同時に光り出した。

「な、なに! これは……いったい!?」「こ、この光は……!」

 ブロスもメタリアも、突然の発光に驚くばかり。

「お、おい! 何が起きやがるんだ!?」「こ、この光……(ハッ、まさか……!)」

 メタルバードが戸惑う中、聖龍使いが何かに気付く。

 するとセーラームーンの背中に白い翼が生え、より一層輝きを増した神々しさが見て取れた。

「こ、これは!」「こ、この姿は……」

「……これが、愛の力が起こした奇跡……スーパーセーラームーン!!」

「!! す、スーパーセーラームーン!?」

「!(ま、まさかミラーガールの盾と共鳴して変身できたとでも言うのか!?)」

 突然姿が一変したセーラームーンに、マーキュリーもナースエンジェルもセーラームーン本人も驚愕し、メタルバードと聖龍使いは唖然とした。

 そしてスーパーセーラームーンに変身したのを目視したミラーガールは何かを思いついた様子で皆に呼びかける。

「す、スーパーセーラームーン! それに他のセーラー戦士達にナースエンジェル達も! 私の側に来て!」

「え?」「な、何する気なの? ミラーガール……」

「何をするんだ?」「?」

 動揺するヴィーナスにジュピターそして星夜やデューイ達に対し、セーラームーンとナースエンジェルはミラーガールを信じていた。

「分かったわミラーガール! 貴女に任せてみるわ!」

「お願いしますね、ミラーガール」

「ええ! ご協力、感謝します!」

 セーラームーンとナースエンジェルが、ミラーガールの隣に寄り添ったのを境目に、他の面々も彼女の周りに寄り添うように密集した。

 だが、その時だった。

「ははは! そんなに密集していれば、集中砲火で全員消しやすいわ。さぁ、クイン・メタリアよ。更にパワーアップしてセーラー戦士達を、そしてナースエンジェルや訳の分からない小娘共を葬ってやれ!」

 ブロスがそう言うと、メタリアに乗っ取られたベリルは、目の前に転がっているDDガールズの肉体を吸収し、スーパーベリルへと変貌した。

「ははっ、さぁメタリア……いやスーパーベリルよ! 目の前の雑魚共を、共に葬ってやろうぞ!!」

「はあああぁぁ!!」

 そしてブロスとメタリアは密集している英雄たちに向かって、一斉に攻撃を放った。

「あっ、危ねえーー!」「!」

 メタルバードと聖龍使いが愕然とする中、ミラーガールが唱える。

《ミラー・ドーム・バリアー!》

 すると忽ち、ミラーガールを中心に、まるで覆うようにドーム型のバリアーが出現した。

「オッ、おおぅ! スッゲエ! 光のバリアーを出しやがったぞ、あのミラーガール!」

 驚くメタルバードに、聖龍使いが言った。

「オイ、今は呑気に見ているヒマじゃないぞ! 俺たちは早くこの見えないバリアーをブチ破って、みんなの所に加勢しに行かねえと!」

 そんな最中、ブロスとメタリアの総攻撃がミラーガールのバリアーに直撃。

「くっ……! す、凄い衝撃……」

 ミラーガールは余りの猛攻による衝撃に耐えかねていた。

「……くっ、こ、このままじゃ……」

 既にミラーガールは、メタリアとブロスの攻撃に耐えるのに、限界を感じていた。

「わははは! さぁ、これで終わりぞミラーガール! そして英雄達よ! 完全に息の根を止めてくれるわーー!!」

「うわああああ!!」

 

 ブロスとメタリアの二人は一気に力を解放。そして攻撃の強烈な光に、ミラーガールや他の英雄たちは呑み込まれていった。

「み、みんなーー!」「み、みんな! ……みんなーー!!」

 ブロスとメタリアの総攻撃を受けた皆を目の当たりにし、メタルバードと聖龍使いは蒼然とした。

 

 

 

[時と亡骸]

 

 その頃、葉月聖羅を庇い命を落としてしまった如月博士の事も有り、キューティーハニーやイサミ達、更には早見青児に高木はるか等は精神的に追い詰められていた。

「お、お父様……お父様!」

 キューティーハニーは、既に息の無い如月博士に何度も声を掛け続けていた。

「そ、そんな……ハニーさんのお父さんが……」

「そんな……そんな……!」「は、ハニーさん……う、うぅ……」

 泣き叫ぶハニーを見て、トシやソウシは掛ける言葉が見当たらず、イサミは泣きだしてしまっていた。

「そ、そんな……如月博士が……!」「そ、そんな! こんな事って……」

 早見青児も高木はるかも、悲しむハニーを見てただ呆然とするしかできなかった…。

「………………」

 一方の聖羅は、自分を庇って命を落とした如月博士を目の当りにし、そして自分の中で何かが変わり始めるのを感じ取ってた。

「……ね、姉さん……」「! せ、聖羅……今、何て」

「ね、姉さん……お父様が、お父様が……」

 そして聖羅は静かに、自分の目から涙を流し始めた。

「せ、聖羅……! あ、あなた……」

 キューティーハニーは聖羅の瞳から流れる綺麗な涙の粒を見て、本当に彼女が自我を取り戻し、更に生まれて初めて愛を感じられたのを確認した。

「せ、聖羅……聖羅!」

 思わずキューティーハニーは聖羅を抱きしめる。

(あ、温かい……あの時感じたのと同じ……姉さんの愛が……温もりが、凄く感じられる……)

 聖羅は以前、ミスティーハニーに変身していたとき、自分を抱きしめてくれたハニーが偽者である事に、未だ気付いていなかった。

「キャアアアア……」

 そんな最中、ダークパンサーが抱き合っている二人を標的に定めた。

「あっ、危ない二人とも!」「に、逃げろ、二人ともーー!」

 襲い掛かってくるダークパンサーを見て、イサミと青児達が慌てて呼び掛ける。

「えっ」「………………」

 この時、聖羅はキューティーハニーの抱擁を振りほどき、ミスティーハニーへと変身した

「ハニーーフラッシュ!」「み、ミスティー!」

「な、何する気だ!」「せ、聖羅ちゃん?」

「み、ミスティーハニー……」「彼女はいったい……?」

「あ、危ない! ミスティーハニー!!」

 突然変身したミスティーハニーを前に、動揺するキューティーハニーに青児に高木、そして困惑するトシにソウシにイサミ達。

 そしてミスティーハニーは単身、ダークパンサーに突っ込んでいった。

(姉さんだけは……姉さんだけは死んでほしくない! ……もう、お父様の様になってほしくない!)

 そう決心したミスティーハニーは、単身ダークパンサーへと特攻する。

「キャアアアアァァ……!」「ハアァァ!」

 そしてダークパンサーとミスティーハニーは互いに衝突し、相打ちに至った

「キャアアァ……」

 ミスティーハニーと相打ちになったダークパンサーは消滅した。

「……ぐっ……」

 そしてダークパンサーと相打ちになり、致命傷を負ったミスティーハニーは、その場に倒れてしまう。

「せ、聖羅!」

 キューティーハニーは倒れたミスティーハニーに走り寄った。

「せ、聖羅! しっかり……」

 するとミスティーハニーは最後の力を振り絞り、姉のキューティーハニーに話し掛ける。

「ね、姉さん……」「せ、聖羅……」

「い、今まで、ゴメンね。姉さんの事……そして、姉さんの大事な人達、傷付けて……ほ、ホントに、ごめんな……さ……」

 ミスティーハニーはそのまま事切れてしまう。

「せ、聖羅! 聖羅!!」

 キューティーハニーが呼び掛ける中、ミスティーハニーは腕に着けていたチョーカーを残し、消滅。

「そ、そんな! ミスティーハニーまで……」「み、ミスティーハニーが……!」

 如月猛に続いて死んでしまったミスティーハニーを目撃し高木はるかも早見青児も愕然とする。

「み、ミスティーハニーが消えちまった……」「こ、こんな事って……」

 トシもソウシも戦死したミスティーハニーに悲嘆する。

「そんな……ミスティーハニーが、聖羅さんが……は、ハニーさん……」

 消滅したミスティーハニーを見て、イサミは涙を流した。

「せ、聖羅…………聖羅ーー!!」

 ミスティーハニー消滅を目前に、キューティーハニーは泣き叫んだ。

 ミスティーハニー死亡時間は、ちょうど午前0時5分だった。

 

 

 

 一方、ブロスとメタリアの一斉攻撃を喰らってしまったミラーガール達は。

 ブロスとメタリアの攻撃が止み、辺りには白煙が舞っていた。

「……ど、どうなった。みんなは無事なのか?」「………………」

 心配するメタルバードに聖龍使い。そんな中、白煙が次第に収まっていき、目の前に広がっていた光景に二人は愕然とした。

「……! そ、そんな…」聖龍使い「あ、あああ……!」

 白煙の中から現れたのは、ミラーガール、セーラー戦士達、そしてナースエンジェル達にさくらの亡骸。彼女達の亡骸を前に、メタルバードと聖龍使いは絶望する。

「う、ウソだろ! ま、まさか……みんなが……」「あっ、あああぁ……!」

 メタルバードと聖龍使いは、自分の目を疑った。

「……は、はは……はははは! やったぞ! 遂に、遂に……遂にナースエンジェルを倒せたぞ! 更にセーラー戦士達も亡き者にできた! これで私が欲する史上最強のダークジョーカー軍団は現実のものとなれる! そして、行く行くはクイーン・アースも、この地球も……いや全宇宙は私の物となるのだ!!」

「はは、ははは……」

 亡骸となった英雄達を見て嘲笑うブロス。しかしメタリアに憑依されたベリルは人知れず、一粒の涙を流していた。

「そ、そんな! ……せ、セーラームーン……」

 十字架に縛り付けられ、身動きのできないタキシード仮面は一人、嘆いていた。

「そ、そんな……! み、みんな……」

 聖龍使いは今にも心痛で死にそうな思いだった。

「そ、そんな! みんなが……みんな死んじまうなんて!! そんな……そんなぁーー!!!」

 メタルバードは膝を付き、絶望視する。

「め、メタルバード……」

 聖龍使いも涙を流しながら、メタルバードを気に掛けた。

「オレは……オレはまた大事な存在を失うのか! 同族や家族……自分を慕ってくれた連中を、また失っちまったっていうのかよぉーー!!」

 そんな嘆きに嘆く二人に対し、ブロスは吐き捨てる。

「ははは、聖龍使い、そしてメタルバードよ。主等もスグに後を追わせてやるぞ……まぁ、その前に。私からの多少の慰めだ、最後に仲間の亡骸に触れて別れを惜しませてやる」

 そう告げるとブロスは、メタルバートと聖龍使いの前に張られていたバリアーを消した。

「み、みんなっ、みんな……!」

 メタルバード達は慌てて、倒れている仲間の傍らに近づいた。

「みんな……ミラーガール……」

 聖龍使いは失意の中、命絶えたミラーガールにそっと手を近付け、触れようとした。

 

 

 

 

[ミラージュ(幻)]

 

 しかしだった。聖龍使いがミラーガールに触れようとしたら、手が彼女の体を突き抜けてしまい、彼女に触る事ができなかった。

「え!?」「こ、これは!?」

 驚く聖龍使いとメタルバードの目の前で、ミラーガール達の亡骸は次第に透明になっていき、最後には跡形もなく消えてしまった。

「な、何だとっ!?」「えぇ!?」

 目の前で消失した亡骸に対し、メタルバードと聖龍使いは驚愕した。

「な、なぬ?」「これは、いったい……!?」

 驚くメタリアとブロス、そんな二人に声が掛けられる。

「こっちよ、メタリア! ブロス!」

「!?」「な、なに……!?」

「え!」「こ、これは……!」

 ミラーガールの声にメタリアもブロスも、そしてメタルバードと聖龍使いも振り向くと、視線の先にはミラーガール達の姿があった。

「えぇ!」「こ、これはいったい?」

 驚くメタルバードと聖龍使いを前に、ミラーガールは軽く笑みを浮かべて発声した。

「ふふっ……《ミラージュ・トリック》!」

「み、ミラージュ・トリック??」

「み、ミラージュ……はっ、ま、幻か!」

 戸惑うメタルバードに対し、ブロスは最初に目にした亡骸が全てミラーガールが作りだした幻術だった事に気付く。

「ふふふ、さぁみんな! ブロスとメタリアにキッツイ一発を喰らわせましょう!」

「ええ!」「まっかせなさい!」

「他のみんなも、3人に対して強い想いを浮かべるのよ! その想いがミラーガールのシールドで増幅されて、技の威力に加算されるはずよ!」

『ええ!』

 ミラーガールの合図と共に、ナースエンジェルとセーラームーンに続きマーズや他の皆が意思を合致させる。

 そしてミラーガール達の体が光り輝き出した。

「く、くっそぅ! お前達の好きにさせるかぁ!!」「うおおおおぉ!!」

 ミラーガール達に再度、攻撃を仕掛けようとしたブロスとメタリア。

 突然、二人の体が何者かに掴まれた感覚が走る中、動けなくなってしまう。

「えっ?」「な、なんだ。体が動かん……」

 慌てふためくメタリアとブロス、二人が良く自分の体を見てみる。なんと修司に惨殺された筈のダークキングダム四天王が半透明の状態で二人の体を掴みかかり、動きを封じていたのだ。

「な、なぬ?」「お、お前達は……!」

「おっ、お前等!」「!!」

 体を押さえ込まれ、動きを封じられてるメタリアもブロスも、そしてそれを目の当たりにしたメタルバードと聖龍使いも驚愕する。

「え? あ、あの人達……確か」「ああ! あの人達!」

「じぇ、ジェダイト!」「ゾイサイト……!」

「ネフライト……」「く、クンツァイト!?」

「お、お前達……何故、此処に……!?」

 同じく一驚するミラーガールにナースエンジェル、そしてマーズにマーキュリー、ジュピター、ヴィーナスそしてタキシード仮面に半透明の四天王は答えた。

驚く面々に対し、四天王達は

(た、タキシード仮面……いや、エンディミオン様)

(わ、私たち、聖龍使いに倒された後、ようやく前世の記憶が戻ったんです)

ト(だから我々、四天王総出で貴方を、そしてクイーン・セレニティを助けに参った訳であります!)

(せ、セーラー戦士よ! 更にナースエンジェルにカードキャプター……そ、そしてミラーガール! 私たちがメタリアに憑依されたベリル様と、ブロスに憑依された加納望を抑え込んでいる間に……は、早く技を放ってくれ……!)

 ジェダイト/ゾイサイト/ネフライト/クンツァイトの言葉を聞いた英雄たちは決断する。

「……分かったわ! みんな、彼等の想いも無駄にしちゃいけないわ! 一気に決めましょう!」

 ミラーガールの決断に続き、他の皆も英断した。

「ええ!」「もちろんよ!」

「彼等の想い、決して無駄にしないわ!」「サクッと決めちゃいましょ☆」

 四天王たちの想いを無駄にさせまいと意気込むマーズとマーキュリーとジュピターとヴィーナスに続き、星夜とデューイもブロスを倒す意気込みで加勢する。

「こ、これで終わらせてやる!」「これで終わりだ、ブロス!」

 そして同じく決着を着けようと意気込むさくらにナースエンジェルとセーラームーン。

「り、りりかちゃん……いくよ!」「えぇ、お願いね、さくらちゃん……!」

「みんな、行くわよ! ミラーガール、貴女もお願い!」

「ええ! 皆さん、宜しくお願いします!」

 そして全員、一気に力を放出しようとした。その時。

「くうっ、させるかぁーー!!」「ぐおおおおぉぉ!!」

 ブロスとメタリアが、掴み抑える四天王達を振り払い、ミラーガール達に攻撃しようと迫った。

 だが「そうお前等の好きにはさせんぞおぉぉぉ!!」と、聖龍使いが駆け足で、攻撃に転じようとするブロスとメタリアに向かって駆け寄る。

 聖龍使いは走りながら、刀を抜いた。その時、四天王達が聖龍使いに言付ける。

(せ、聖龍使い、聞いてくれ!)

(べ、ベリル様に憑依しているメタリアの本体は……)

(ひ、額だ! ベリル様の被っているティアラの、額の位置にある菱形の紋章だ! 其処を壊せば……)

(め、メタリアに……実体のないクイン・メタリアにダメージを与えられる!!)

 ジェダイト/ゾイサイト/ネフライト/クンツァイト達の言葉を聞いた聖龍使いは真摯に受け答えた。

「……主等の助言、感謝致しますぞおぉぉぉ!!」

 聖龍使いは叫びながら、四天王達に抑えられているクイン・べリルに駆け付ける。

「くそぅ、思い通りにさせるか!」

 ベリルに向かってくる聖龍使いを、ブロスに憑依された加納が斬りかかろうとした。しかし。

「な、なに!?」

 聖龍使いに斬りかかろうとしたブロスの前に、メタルバードが己の体で加納の剣を受け止めた。

「へへっ、お前の相手はオレだ加納……いやブロス!」「くっ」

 するとメタルバードは加納の胸ぐらを掴み、そして拳を振り上げる。

「へへ。オレの鋼の拳、喰らってみやがれ!」「うっ……!」

 そしてメタルバードは加納の顔に向けて、思いっきり拳を殴り付けた。

「ぶはっ……」

 更に聖龍使いはベリルに向かって飛び掛かり、刀を振り上げると同時にベリルに告げた。

「ベリル……いやメタリアよ! 天誅でござああぁぁるぅぅぅ!!」

 叫びながら聖龍使いは、ベリルの額の菱形の紋章を斬り付けた。

 ベリルの菱形の紋章に罅が入ると、ベリルは奇声を上げる。

「ギャ、ギャアアアアアァァァ!!」

 ベリル、いやベリルに憑依しているメタリアが苦しんでいると。

「みんな、今よ!」「喰らいなさい、メタリア!ブロス!」

「みんなの想い、みんなの優しさ……無駄にはしないわ!」

 ミラーガール、セーラームーン、ナースエンジェル3人の必殺技が炸裂した。

「《ムーン・ヒーリング・エスカレーション》!」

「《エンジェルエイドボムビーム》!」

「《ミラー・ホープ・フラッシュ》!」

「「「ファイナル・ソウル・スピリット・シャワー!!」」」

 強烈な必殺技がブロスに、ベリルに、そして聖龍使いとメタルバードに向かって放たれた。

「あ、危ねえ!」「離れるぞ、メタルバード!」

 メタルバードと聖龍使いは急ぎ、ブロスとメタリアから離れた。

「こ、これは……ナースエンジェルの力だけでは無い。この世で最も光に満ちた、心の、ひかり……う、うわぁぁ!!」

「この光…クイーン・セレニティの希望の光の比では無い……この世全ての苦しみを、そして悲しみを、消す程の……う、うわああぁ!!」

 そして、ブロスに憑依された加納望、そしてメタリアに憑かれていたベリルは、光の中に包まれていった。

 

 

 

[愛に満ちた想い]

 

 

 3人の合体技が放たれた後、その場には綺麗な虹のオーラが漂う様に舞っていた。

 

「き、きれい……」「素敵ね、この光……」

「なんだか、見ているだけ気持ちが穏やかになっていくわ」「す、素敵……」

 思わず見惚れるさくらにマーキュリー、マーズにヴィーナスだが、そんな中でジュピターが思わず呟いた。

ジュピター「そ、それに…もう終わったのよね……?」

 ジュピターの疑問にデューイが答える。

「ああ。もうブロスも、ベリルに憑いてたメタリアも、消滅した……もう終わったんだよ」

 このデューイの返答を聞いて、星夜やナースエンジェル、セーラームーンに続いてミラーガールまでも歓喜に湧いた。

「も、もう終わったんだ……終わったんだ! 俺たち勝てたんだ!」

「や、やったわ……ブロスを倒せた!」

「ええ! みんなの……みんなの力が勝ったのよ!」

「や、やった……私にも、みんなを護り抜く事ができた! やったやった!」

 英雄達は感極まり、ミラーガールは初めての戦闘での勝利に対し完全に酔い痴れていた。

「お、終わったんだ……ミラーガールの力とかも有って、やっと終われたんだな」

「あ、ああぁ……」

 メタルバードに聖龍使いは、呆然と立ち尽くしていた。

 その時、ブロスやメタリアと共に必殺技を浴びて浄化した四天王が、聖龍使いの前に姿を現した。

(……聖龍使いよ)「! そ、そなた等は!」

(聖龍使い、ホントに申し訳ありません。貴方の大切な仲間を、そして友を傷付けて来てしまって……)

 謝罪するクンツァイトやゾイサイトら四天王達に、聖龍使いは頭を下げ叫んだ。

「ち、違う! 謝らなければいけないのは拙者の方でござる!!」

(せ、聖龍使い……)

 愕然とするネフライトたち四天王に聖龍使いは謝り返した。

「其れがしが……其れがしが自身の感情を制御できない余り、主等を惨殺してしまった……いくら主等が悪事を働いていたとは言え、拙者は自分を慕ってくれている仲間達にも怖い思いをさせてしまった……こんなワシを、こんなおぞましい其れがしに、謝らないでくれ!」

 この聖龍使いの謝罪を聞いた四天王たちは微笑んだ。

(……もう良いぜ、そんな事は)「え?」

 ジェダイトの発言に聖龍使いが唖然としてると、ネフライトが聖龍使いに述べ出す。

(聖龍使い、あなたは武人として、そしてそれ以前に町を、仲間を思いやれる素晴らしい方だ。確かに感情が制御できないのは周りに多大なる迷惑がかかろう。しかし、そんな貴方にも自分を受け入れ、そして共に居てくれる仲間が居るじゃないですか。貴方はこれから、努力してそんな自分と……感情の制御ができない自分と向き合って、少しでも自分を変えて行けば良いのだ。なに、貴方なら出来る筈だ)

「ね、ネフライト……!」

(だから、もう私たちの事は気にしないで)

(ただ、これだけは伝えておきます。エンディミオン様の事を……タキシード仮面こと地場衛の事を、よろしくお願いします)

 そうゾイサイトとクンツァイトが聖龍使いに伝えると、四天王達は消えていった。

「し、四天王よ……ホントに済まない……」

 聖龍使いは涙を流しながら、天に召される彼等に詫びを入れた。

「お、終わったのか……」

 縛り付けられ、身動きできないタキシード仮面。その前に英雄達の必殺技を浴びて、浄化したクイン・べリルが亡霊となって姿を見せた。

「あ !く、クイン・べリル……」(エンディミオン……)

 エンディミオンの生まれ変わりのタキシード仮面を見つめながら、ベリルは彼に告げた。

(ごめんなさい、本当にごめんなさい……愛してるわ、エンディミオン)

 そうクイン・べリルはタキシード仮面に言い残し、消滅した。

「べ、ベリル! ……くっ、くぅぅ……」

 ベリルの愛に満ちた本心からの言葉に、タキシード仮面は涙を流したという。

 そして十字架に縛り付けられたタキシード仮面の元に、メタルバードが近寄ってきた。

「大丈夫か、タキシード仮面の兄さんよ?」

 メタルバードの言葉にタキシード仮面は弱々しく答える。

「……あ、あぁ。大丈夫だ……今回はホントに助かったよ、メタルバード」

 タキシード仮面は涙ながらにメタルバードに礼を言うと、メタルバードは謙遜しながら返事した。

「いや、今回オレたちゃ何もしちゃぁいねえよ。全部あのミラーガールが来てくれたからこそ、無事に終われたんだ」

 そう言ってメタルバードは、ミラーガールの方に顔を向けた。

「あ、あぁ、そうだったな。彼女には、礼も言いきれないほど感謝しているよ……」

 タキシード仮面もミラーガールの方に視線をやった。その隙にメタルバードはタキシード仮面を十字架から降ろした。

 この時、聖龍使いはブロスに憑依され、攻撃を受けた加納望に歩み寄っていた。

 信じられない事に、加納の体には傷一つ付いておらず、メタルバードに殴られた時の顔の傷も綺麗に消えていたのだった。

「……くっ」「おっ、どうやら気が付いたようじゃ……」

 聖龍使いは目を覚ました加納の背中を支えながら彼を起こし、声を掛けた。

「大丈夫でござるか、加納望よ」

「うっ……こ、此処は、ブロスは……」

 加納の問いかけに聖龍使いは答えた。

「安心するでござる。ブロスは完全に消え去った、全ては主が信じたナースエンジェル、そして彼女と共にブロス等に挑んだ英雄達の努力の賜でござる」

 この聖龍使いの発言に、加納はふと笑顔になった。

「よ、良かった……りりかくん、それに星夜くんにデューイ。更には他の英雄達がブロスを、そしてこの地球を救ってくれたのか……良かった」

 加納望は満面の笑みを浮かべ、心から安堵した。

 そんな加納望に、ナースエンジェル達が駆け寄ってきた。

「か、加納先輩!」「加納、無事か!」「カノン、平気か!」

 心配してくれるナースエンジェルや星夜そしてデューイ達を前に、加納は答えた。

「あ、ああ、大丈夫だ。りりかくん、それに星夜くんにデューイも、本当にありがとう……他の英雄達にも感謝しきれないよ」

 加納の感謝に対して、ナースエンジェルと星夜とデューイが各々思いを打ち明ける。

「そ、そんな……先輩も無事でホント、何よりです」

「あぁ、ホントに良かったな加納。まさか、あんなスゲエ必殺技浴びても何とも無いなんてな」

「おそらく、あの必殺技にはナースエンジェルの黒のワクチンを浄化する力だけでなく、セーラームーンの希望の光、更にはミラーガールの想いを増幅させる力も加わって、汚れた魂だけを浄化・消滅させる力になっていたんだろう」

 と、其処に他の英雄達も加納が心配でやって来た。

 

「あ、あの……」「ん? 何だいセーラー戦士たち」

 マーキュリーの問い掛けに笑顔で返事する加納。

「い、いえ……御体の方は、大丈夫でしょうか……」

「あ、あぁ。何だか不思議と、身も心も軽いんだ、まるで肩の荷が下りたみたいに楽な気分だよ」

 自分を心配して来てくれるジュピターたちたセーラー戦士に、加納は笑顔で会話した。

「だ、だけど驚いたわ。まさか、加納が此処まで紳士的に変わるとは……」

「ま、まぁ。今まではブロスに操られていただけで、本当の加納望じゃなかったんですもの」

 ヴィーナスとマーズは、紳士的に変化した加納望に驚いていた。

「で、でも良かった。りりかちゃんの大事な先輩が元に戻って」

「ありがとう、さくらちゃん」「ホントに良かった~♪」

「……ホント。みんなが笑顔になってくれて、本当に良かった」

 

 さくらにナースエンジェルとセーラームーンの安堵を前に、ミラーガールは無事に戦いが終わった事よりも、加納望が自我を取り戻した事よりも、皆が笑顔になってくれた事に心から歓喜した。

 すると其処に、メタルバードが皆を呼んだ。

「お、お~い、お前等~、傷だらけのタキシードも忘れないでやってくれよ~」

 メタルバードは傷だらけのタキシード仮面の肩を担ぎながら、歩み寄って来た。

「あ! そうだった、タキシード仮面様~」

 セーラームーンがタキシード仮面に近寄る。

「た、タキシード仮面様。わ、私……」

 セーラームーンは前世の事を色々と語ろうとした。だがタキシード仮面は満身創痍の状態で返した。

「な、何も言うなセーラームーン……過去は過去、前世は前世だ。昔の事より、今を、思いっきり過ごしていこう……」

「あ、あああぁ……」

 タキシード仮面の優しい一言に、セーラームーンは泣きだしてしまった。

 そんな時、聖龍使いが告げた。

「あ、あの~、もしもし。感動的な場面で水を差して申し訳ないが、今はまずタキシード仮面の怪我を治してやるのが先決ではないのかのぉ……」

『あっ…』

 聖龍使いの発言に、全員が「そうだった」の表情をした。そんな時。

「あっ、今すぐ治しますね」

 ミラーガールがそう言うと、ミラー・シールドをタキシード仮面に突き出した。

「《ヒーリング・フラッシュ・シャワー》」

 すると盾から光が放出され、その光を浴びたタキシードの傷は一瞬で消えていった。

「す、スゲエ!」「あっと言う間に傷が消えた……」「す、凄い治癒能力だわ……」

 ミラーガールの凄まじい治癒能力にメタルバードもマーズもマーキュリーも驚愕する。

「い、言っちゃなんだけど、ナースエンジェルの治癒能力よりも凄いかも……」

「せ、星夜、それは良いわよ。私も同感だから……」

「い、いったい、どんな力を使っているんだ?」

 星夜もナースエンジェルもデューイも初めて見る治癒能力に一驚していた。

「こんなヒロイン、アニメタウンに居たんだなぁ。なぁ、修……じゃなかった聖龍使い」

「う、うむ……(す、スゲエ能力だ。それにしても、この女、何処かで……)」

 改めてミラーガールの治癒能力を指摘するメタルバードに対して、聖龍使いはミラーガールに見覚えがある様子。

 そして、怪我が完全に回復したタキシード仮面がミラーガールに礼を述べる。

「……ふぅ~、お陰で完全に傷が癒えたよ。ありがとう、ミラーガール」

「い、いやぁ、お役に立てて嬉しいですよ……」

 ミラーガールは照れながら返事した。

 と、その時。突然ミラーガールは何かを思い出したかのように、声を上げた。

「ハッ、そ、そう言えば……! た、大変! キューティーハニーが今ごろ怪人と戦っているんだったわ!」

 その発言に、他の聖龍隊も気付く。

「し、しまった! ベリルやブロスの事で、すっかり忘れちまってた! ハニーの奴は今ごろ、ゼラに呼び出されて聖羅を助けに行っているんだった!!」

「な、なぬ! いかん、このままではキューティーハニーはもちろん、妹の聖羅も危ないでござる! は、早く行かねば……!!」

 メタルバードに聖龍使いが唱える中、ナースエンジェルやさくらも賛同する。

「えぇ!」「は、ハニーさんが妹さんを助けに……」

「そ、そんなぁ! 折角ベリルやブロスとの戦いが終わったばっかりだって言うのに!!」

 泣き言を言うセーラームーンに、マーキュリーとジュピターが指摘する。

「セーラームーン、そんな事言わないの!」

「そうよ。ハニーさんも、妹さんや豹の爪(パンサークロー)の事で大変なんだから! 早く行ってあげないと」

 するとミラーガールが此処で更なる事実を告げる。

「そ、それにイサミちゃん達もキューティーハニーと一緒に怪人と戦っている筈よ! ホントに急がないと……」

「なぬ! それは大変じゃ! い、急ぎワシ等も向かわねば……ンっ? ちょっと待つでござる」

 突然、聖龍使いが待ったを掛けた。

「ん? どーした、相棒?」

 メタルバードが訊ねると、聖龍使いはミラーガールに問い詰める。

「ミラーガールよ。主は何でキューティーハニーとイサミ等が共闘していると知っておるのじゃ?」

 聖龍使いの問いかけにミラーガールは思わず動揺した。

「ぎ、ギクッ……そ、それは……それは私がスーパーヒロインだからよ。ほ、ホホホ……」

 ミラーガールは何とか笑って、その場を誤魔化した。

「………………」

 聖龍使いが疑念の目でミラーガールを凝視する中、星夜やマーズそしてヴィーナスが発する。

「そ、それよりも早く行かねえと!」

「そうね、早くキューティーハニーを助けに行ってあげないと……!」

「間に合ってくれれば良いんだけど……」

 その時、再びミラーガールが皆に言った。

「そ、そうだ! 皆さん、私やさくらちゃんが此処に来たみたいに、ミラーゲートでキューティーハニーの所に行きましょう! アレなら一瞬で移動できます!」

 ミラーガールの発言に、聖龍隊は驚いた。

「な、なぬ? ミラーガールよ、そなたはその様な芸当もできるのであるか?」

 聖龍使いが驚いていると、さくらが答える。

「そ、そうなの! 私も友枝町から一瞬で此処まで来られたんです!」

「ち、治癒能力や防御技……それに幻術以外にも、そんな事ができるのか……」

 デューイたちが驚いている最中、ミラーガールはミラーゲートを出現させた。

 そして、そのゲートに映し出されていたのが、プリンスゼラと戦闘の真っ最中であったキューティーハニーとイサミ達だった。

「あ! ミラーガールの言った通り、イサミ達もハニーさんと一緒に戦っているぞ!」

「みんな、急いで行きましょう! キューティーハニー達を助けてあげないと!」

 星夜が叫ぶ中、ミラーガールは一足先にミラー・ゲートへと入っていく。

「あ、アレっ? 中に入れる……って、言うか通り抜けれるんだな、この鏡……」

 巨大な鏡に見えるミラー・ゲートに手を通すメタルバードが動揺してると、他の皆が口々に言う。

「よしっ、私達も行くわよ」

「えぇ、ハニーさんに加勢しに行かないと」

「ハニーさん、無事なら良いんだけど……」

「早く助けてあげましょう!」

 マーズにマーキュリー、ジュピターにヴィーナスに続いて星夜やデューイも闘志を燃やす。

「あ、ああ、そうですね、イサミ達も戦っているのに放っておけないぜ」

「まぁ、ブロスの方は済んだんだし、ついでにあのゼラって男も叩きのめしてやるか」

 ナースエンジェルとセーラームーンも意気込んでいた。

「よぉし、キューティーハニーの方も片づけちゃいましょう!」

「ええ! これまたサクッと終わらせちゃいましょう」

「そうだな、ハニーの方も自分の出生の事も有るし、精神的に負担は有るからな。少しは手助けしてやらねえと」

 と、このメタルバードの発言に、一同がキョトンとした。

「え? し、出生……?」「………………」

 マーズ達が呆然とする中、皆を静観する聖龍使い。

「ま、まぁ。それは後で言うよ。今はまずハニー達の救援に行かねえと」

 と、メタルバードが誤魔化しつつ急ごうとすると、タキシード仮面と加納望が発言した。

「ま、待ってくれ……」「僕達も……一緒に行くよ」

「なぬ?」「た、タキシード仮面様?」「か、加納先輩……?」

 自分達も同行すると言い出す二人に、聖龍使いもセーラームーンもナースエンジェルも戸惑う中、タキシード仮面と加納望は言った。

「わ、私達も共に行かせてくれ……少しでも、みんなに恩を返したいんだ」

「ぼ、僕もだ。今までブロスに好き勝手操られてしまっていたんだ……迷惑かけた分、君等を助けたいんだよ」

 このタキシード仮面と加納望の想いに対し聖龍使いは。

「……うむ、承知した。タキシード仮面と加納氏も共に来ておくれ。手勢は多い方に越した事は無かろう」

「あ、ありがとう。聖龍使い」

「足手まといにだけは、ならないようにするよ」

 こうして聖龍使いの許可を得て、タキシード仮面と加納も同行する事に。

 

 同盟ジョーカー・キングダムを倒した聖龍隊は、新たにタキシード仮面と加納望を手勢に加えて、急ぎキューティーハニー等の所に向かった。

 

 

 

 

 

[再度、怒りに……]

 

 その頃、キューティーハニーは父親の如月博士、更に自分を護るため相打ちになってしまった聖羅。その二人を愚弄したプリンスゼラと激戦を繰り広げていた。

 そして彼女に加勢するイサミ達しんせん組、そして早見青児に高木はるか達。しかしプリンスゼラの強さも圧倒的だった。

 更にハニーの方は、父親に妹の聖羅、二人の死と言う重圧により、思うように戦う事が出来なかった。

「がぁっ……くっ……」

「キューティーハニー、貴女の力で私に勝つなんて、到底できませんよ……潔く降伏したらどうですか?」

 キューティーハニーを心身ともに追い詰めるゼラ。

「き、キューティーハニー……」

「あ、あのゼラ。とんでもなく強いぞ……ウグッ」

「く、くそ……あんな下衆な男に勝つ事もできないのか……クッ」

 イサミ、トシ、ソウシもゼラに完膚なきまでに痛め付けられていた。

「ゆ、許せないわ……如月博士、更にハニーちゃんを庇って相打ちになった聖羅ちゃんまでも冒涜するなんて……!」

「くっ、ゆ、許さんぞ……プリンスゼラ!!」

 圧倒的な力を見せるプリンスゼラに対し、怒りを見せる青児にはるか、そしてイサミ等にキューティーハニー。しかし、その力の差は歴然だった。

 

 そんな最中。ミラー・ゲートから聖龍隊、更にはミラーガールにタキシード仮面と加納望が登場した。

「皆の集! 無事であるか」「せ、聖龍使い!」

 聖龍使いの呼びかけに、イサミが応える。

「イサミ、トシ、ソウシ! それに早見青児にたか……」

「ゴッホン!」

「あ、あぁ、そうだった……く、くノ一の姉ちゃんも居たんだね……は、はは」

 高木はるかは、何とか自分の本名を口に出そうとしたメタルバードの言動を止めた。

「そ、それで……イサミちゃん、今どんな状況なの? 妹さんの聖羅さんは無事なの?」

 ジュピターの質問に、イサミ達は暗い表情を浮かべた。

「……え?ど、どうしたの……?」「……セーラージュピター、実は……」

 トシが重い口調で話そうとした。

「な、何なの? 何が有ったの……?」「………………」

 ヴィーナスの問い掛けにもソウシは重たい表情を浮かべる。

「せ、聖羅さんは……」「……聖羅さんは、どうしたんです?」

 くノ一衣装の高木はるかが重い口を開こうとするのを、マーズが訊ねていると早見青児が代わって答えた。

「……みんな、聖羅は……いや、ミスティーハニーは……死んだよ」

「! そ、そんな……!」「う、ウソ! ミスティーハニーが……」

「聖羅さんだけじゃないわ。ほら、あそこ……」

 一驚するナースエンジェルとセーラームーンにイサミが指差した方角には、如月博士の亡骸が横たわっていた。

「あ、あの人は……!?」

 マーキュリーが初見の如月猛に戸惑っていると、高木はるかが答えた。

「……あの人は如月猛博士、キューティーハニーこと如月ハニーと葉月聖羅の……お父さんよ」

「! そんな!」「そ、そんな……親だけでなく、妹まで……」

 話を聞いたマーズにメタルバードは思わず、泣き出してしまいそうだった。

「せ、青児くん……そんな……」

 タキシード仮面ら全員が驚いている中、トシが訴える。

「そ、そうだ! なぁ、ナースエンジェル! お前の能力で、せめて如月博士だけでも生き返らせてくれよ! せ、聖羅さんの死体は消えちまったけど、博士の体はまだ健在なんだ。た、頼むよ……」

 だが、トシの訴えにナースエンジェルは重い表情で答えた。

「……ゴメンなさい、それは無理なの」「な、なんで!?」

 疑問に思うトシに対し、デューイが重い口調で答えた。

「トシ、あくまでナースエンジェルの能力は怪我や軽い病気を治す治癒能力なんだ。蘇生、つまり死んだ人間を生き返らせられる能力では無いんだよ。もう死んでしまっている以上、何も出来ないんだ……」

「そ、そんな!」

「死んでしまえば、もう治す事は出来ないか……正当だね」

 デューイの返答に愕然とするトシに反して納得するソウシ。そんな皆を前にナースエンジェルは涙ながらに謝罪する。

「ゴメンなさい、本当に……」

 ナースエンジェルは、自身の能力で何も出来ない不甲斐無さに悲嘆した。そんな彼女に対して、加納は告げる。

「ナースエンジェル、そんなに自分を責めてはいけない……君の力はあくまで人を治す事、人を生き返らせるものでは無いんだよ」

「そ、そうだぜ、りりか……どうしても人にはできない事が、世の中には有るんだよ」

「な、ナースエンジェル……」

 ナースエンジェルの悲しみを前に悲嘆する加納に星夜、そしてミラーガール。

 皆が悲しみに浸っていたその時、ソウシが突然発した。

「み、みんな! それもこれも、全部あのゼラって男の仕業なんだ!」

『え!!』

 ソウシの発言に皆が愕然とすると、続けてトシが話した。

「そ、そうだ! アイツが聖羅さんに事実を伝えて、彼女の刻印から怪人を生ませてしまったから、如月博士は聖羅さんを庇って死に、更に聖羅さんもハニーさんを助ける為に相打ちになって死んじまったんだよ!」

 涙目になりながら叫ぶトシの話を聞き、聖龍隊はゼラに怒りを覚えた。

「な、何ですって……!!」「あ、あのゼラが……!」

 怒りを感じるマーズやヴィーナスら聖龍隊に対し、ゼラはこう吐き捨てた。

「ふっふ、皆さん。何故怒るのですか? 私はただ聖羅に、彼女に自身の出生について真実を明かしただけですよ。そして彼女が勝手に憎しみを感じ、そして怪人を生みだしてしまった。そして如月博士が聖羅を、彼女を自ら庇って勝手に死に、そして聖羅も後を追って自らが生み出した怪人と共に自滅しただけですよ。私が直接手を下した訳でもないのに、逆恨みしないでくださいよ」

 ゼラの悪気のない発言に、一同は完全に怒った。

「て、テメエは!!」「お、お前!!」

「ふっふ……」

 怒りに満ちるメタルバードや星夜達を前に、嘲笑うプリンスゼラ。

 すると、その時。

「ぜ、ゼラ……貴様……!!!」

 聖龍使いは肩を震わせながら完全に怒り猛っていた。

「うっ!」

 その異様なまでの怒りのオーラに、思わずゼラは怯んでしまう。

 そしてその時、突如として大地が揺れ始めた。

「え? な、なに?」

 ヴィーナスが揺れ出す大地に戸惑う中、震動は更に強まる。

「きゃ、キャアア!」「じ、地震だと!?」

 突然揺れ始める大地に驚くセーラームーンにタキシード仮面。するとデューイが蒼褪め始める。

「ま、まさかこれは!?」

「ど、どうしたんだいデューイ? こ、この地震は……」

 顔を蒼くするデューイを見て加納が訊ねると、デューイに続いて他の隊士達も気付き始めた。

「そ、そうよ! これは……」「た、大変……!」

 デューイに続いてマーズやマーキュリーらセーラー戦士達、そしてナースエンジェルに星夜、更にはさくらまでもが、顔を蒼くしていた。

「ま、間違いねえ……コイツは……!!」

 メタルバードも事の重大さに気付いて焦り出す。

「じ、地面がさっきよりも強く揺れている!」

「ま、まさか、これって!」

 ジュピターに続き、イサミ達も顔が蒼褪めていった。

「な、何? この地震は!?」「お、俺にも分からないっすよ!?」

 急な地震に戸惑う高木はるかと早見青児だが、キューティーハニーは重点に気付いていた。

「ま、まさか……! 聖龍使い!」

 キューティーハニーが聖龍使いに目を向けると、聖龍使いは体から湯気を出して震えていた。

「お、オイ! まさか!」「あ、あぁ、間違いないよ……」

 トシにソウシは、今にも泣き出しそうな顔で震えあがっていた。

「な、何なの? ねぇ、これ一体どうなっているの!?」

「み、みんな。これはいったい……」「何がどうなっているのか、教えてくれよ」

 状況を呑み込めない高木はるかに早見青児そしてタキシード仮面の三人に対し、メタルバードが答えた。

「こ、この感じ……これは以前。そう、聖龍使いが敵勢に対してブチギレてしまった時に起こった現象と全く同じだ。そう、アイツが河原で悪党共を惨殺した時と同じなんだ!」

 メタルバードの返答に、早見青児とタキシード仮面は一驚した。

「な、何だと!?」

「か、河原って、以前聖龍使いが異形の顔立ちで妖魔や怪人を斬り殺し、それに私達を殴り付けた時の事か!?」

 「そ、そうよ! 早く止めないと、彼がまた……い、いいえ! 彼の体が耐えきれずに滅んでしまう!」

「ちょ、ちょっと待って! 滅びてしまうって、ま、まさか……」

 マーズの発言に驚く高木はるかに対し、イサミが説明した。

「そ、そうなの! 聖龍使いが暴走して自然の力を解放し過ぎると、肉体が耐えきれなくなって、最後には彼死んでしまうの!」

「そ、そんな!」「ま、マジかよ……!」「そ、そんな……せ、聖龍使い!」

 驚くタキシード仮面に早見青児、そしてミラーガール。しかしこの時、タキシード仮面達と共に来た加納望は河原での惨劇を思い出していた。

「そ、そうだ……あ、あの時、僕は……」

 加納は以前、河原で暴走した聖龍使いに斬られた事を思い出し、蒼褪め、そして跪いた。

「せ、先輩!」「だ、大丈夫かよ、加納」「か、カノン……!」

 ナースエンジェル達は顔を蒼ざめ、跪いてしまった加納望を心配する。

「あ……あ、あ、あぁ……」

 ゼラは以前、聖龍使いに惨殺されかけたのを思い出し、恐れ慄いた。

「あ、あぁ……ウッ、うぐっ!」

 すると突然、ゼラの頭に激痛が走った。

「こ、この痛みは……ハッ、ま、まさか!(まさか、あの時聖龍使いに遣られた時の、頭の骨がまだ完治してしなかったとでも言うのか……!)」

 以前、河原でゼラは聖龍使いにこめかみを強く掴まれ、その時の強靭な握力で頭蓋骨の、それもこめかみ部分に罅が入ってしまっていた。

「うううぅ……!!」

 そして今、その傷を付けた聖龍使いが目の前に居る。おそらく彼に対する恐怖心、つまりはトラウマが再びゼラの古傷である頭の骨の罅に当時の記憶である痛みを再度、感じさせてしまっているのであろう。

 その時。何とスグ近くの地面が裂けてしまう。

「ほ、ほえぇ~!!」「い、いや~! 地面が割れちゃった~!!」

「い、いけねえ! 以前の地震も有るんだ、この辺の岩盤が脆くなっちまっていて、下手したらこの近辺、地面が陥没するかもしれねえぞ!!」

 突如、避けた地面に驚愕するさくらやセーラームーンにメタルバード達。そんな状況下の中、聖龍使いはゆっくりとプリンスゼラの方へ歩み寄り始めた。

「ひっ、お、お前! ま、またこの私を……ぱ、パンサークローの幹部、そ、そして我らが首相、ぱ、パンサーゾラの子供であるわ、私を、こ、殺すのか! ……お、おい、何とか言え!」

 恐怖に慄くプリンスゼラ。そんな中、聖龍使いは無言のまま、ゼラに近づこうとした。

「う、うわっ。く、来るな!」

 そんな中、聖龍隊の面々は暴走状態の聖龍使いに声を掛け続ける。

「あ、相棒! 止めるんだ! また以前の様な事になっちまうぞ!」

「お、お願いよ! 自我を取り戻して!」

「聖龍使い!」「聖龍使い、目を覚ましてくれよ!」

「もうあんな真似はしないでくれよぉ!」「お願い、正気に戻って!」

「あ、貴方は本当は優しい人なのよ!」

「もう止めて! 下手したら、貴方が死んでしまうのよ」

「止まるんだ!」「また暴走してしまったら、自分が一番傷付くのよ!」

「またあんな事しないで!」「お願いです! もう、止めて……」

「君は、同じ過ちをする様な愚かな男じゃない筈だ!」

 メタルバードに続き、ジュピター、ナースエンジェル、星夜、トシ、マーズ、イサミ、セーラームーン、ソウシ、マーキュリー、ヴィーナス、さくら、そしてデューイが必死に呼び掛け続ける。

 聖龍隊は暴走した聖龍使いを止めようと叫び続けるも、そんな仲間の制止も耳に届かず、聖龍使いはそのままゼラの方に近寄ろうとした。

「あっ、あああぁ……!」

 ゼラは恐怖と古傷の激痛によって、完全に怯えきってしまった。

 

 

 

 

[奇跡を呼ぶ変身]

 

 その時だった。

「聖龍使い!」

 ミラーガールが聖龍使いに走り寄り、そして彼を背後から抱き締めて制止した。

「……聖龍使い。いいえ、修司。もう良いの、貴方が悲しんでいるのは分かるわ、私だって同じよ……だからって、そんなに感情的になる事は無いわ。感情的になって苦しむのは結局は貴方……私は、もう苦しむ貴方の姿なんて見たくないの……お願い、いつもの優しい修司に戻って」

 ミラーガールが囁く様に聖龍使いの耳元で語ると彼女の盾、つまりミラー・シールドが輝き、そして聖龍使いの体から出ていた湯気が次第に消えていった。そして最後に聖龍使いは動きを止めた。

「………………」

 無言のままミラーガールを見つめる聖龍使い。

「………………」

 そしてミラーガールも聖龍使いを見つめ返す。

「……み、ミラーガール……」

 そして聖龍使いは完全に怒りを鎮めた。

 それを見ていた聖龍隊の面々は、心持ちか完全に安堵した。

「や、やったわ……」「あ、あのミラーガールが……」

「完全に聖龍使いの暴走を……」「と、止めてくれたな……」

 一気に安心したマーズにヴィーナスそしてデューイにメタルバードたち一同は、その場に腰を落とした。

 そしてミラーガールは落ち着いた聖龍使いの横を通り過ぎ、ゼラに向かって叫んだ。

「……プリンスゼラ!」

「!」『!!』「み、ミラーガール……」

 突如、ミラーガールがプリンスゼラを怒鳴り付けるのを前に、ゼラはもちろん聖龍隊一同やキューティーハニー本人が激しく動揺する。

「……貴方は、貴方は二人っきりの姉妹を、そして親子の絆を壊した! 私は許せない、せっかく姉妹が一緒に過ごせたかもしれないのに、それを滅茶苦茶に壊した貴方が……貴方の所業が許せない!!」

 一方のミラーガールは涙を見せながら、ゼラを睨みつけていた。

「………………」

 当のゼラは頭を押さえながら、立ち尽くしていた。

 そんな時、ミラーガールは徐に左手の首に装着しているコンパクトを開いた。

「な、何する気だ……」「………………」

 メタルバードに聖龍使い達が注目する中、次の瞬間ミラーガールは衝撃の行動を取った。

「テクマクマヤコン!」

 ミラーガールが呪文を唱えると、彼女の体は光に包まれていった。

「えぇ!」「み、ミラーガール!?」「な、何をする気!?」

 光に包まれたミラーガールを見てセーラームーンにマーズ、そしてナースエンジェルは驚く中、彼女の容姿は徐々に変化していった。

「あ、あの子はいったい何をやらかす気だ?」「……さ、さぁ」

 タキシード仮面も早見青児も愕然とする中、光の中から現れたのは何と。

「真実と運命を抱く乙女! ミスティーハニー!」

『ええぇ!!』「う、ウソだろあの子ー!」「み、ミスティーハニーに成っちまった!」

 ミラーガールが死んだミスティーハニーに変身したのを目の当たりにして、聖龍隊一同もタキシード仮面も早見青児も驚愕する。

「こ、こんな事ってある訳~!?」「え? え? 何? 何がどうなっている訳?」

 高木はるかも加納望も困惑するばかり。

「悲しみを乗り越え、乙女は変わる!」「………………」

 完全にミスティーハニーに成り切っているミラーガールを前に聖龍使いは驚きの余り思考回路が完全にマヒしていた。

「み、ミスティー? そ、そんな……」

 キューティーハニーは、目の前で妹のミスティーハニーに変身したミラーガールの所業に、ただただ驚くしかできなかった。

 一方のゼラも、目の前の情景に驚くばかり。

「ま、まさか有り得ない……み、ミスティーハニーに変身できるなど……」

 ゼラは目の前の現状を受け入れられなかった。まさか今さっき死んだミスティーハニーが再び眼前に現れるとは夢にも思ってなかったからだ。

「プリンスゼラ! 貴方が犯して来た罪の数々、此処で償ってもらいます!」

 ミスティーハニーに変身したミラーガールの発言を聞いたゼラは気を取り戻す。

「……わ、笑わせるな! たかが偽者如きで偉そうな口を叩くんじゃない!」

 そんなゼラの発言に対してミスティーハニーに変身したミラーガールは悲し気に唱えた。

「……そう、確かに私は偽者。本物のミスティーハニーには成れっこないわ。例え、どんなに容姿を似せても、人は本物の存在には成れない、誰かの代わりに成るなんて事、絶対にできない! 人は、命は、この世でたった一つの大切なもの! 貴方はそんな存在を、大切な存在を奪い、傷付けて来た! その罪を、今こそ償ってもらうわ!!」

 

 その時だった。キューティーハニーの足元に落ちていた、聖羅のチョーカーが突然輝いた。

「こ、これは……聖羅のチョーカー……」

 そのチョーカーこそ、聖羅が所持していた空中元素固定装置だった

 そのチョーカーにキューティーハニーが手を伸ばすと、聖羅のチョーカーが更に光り出す。

「こ、これは!」「こ、今度はなんだ!?」

 早見青児にメタルバード達が戸惑う中、なんとキューティーハニーの空中元素固定装置と、聖羅の遺した空中元素固定装置が融合した。

 そしてそのままキューティーハニーは、更なる変身を遂げた。

「こ、これは! いったい……!?」

 驚くゼラに対し、ハニーは告げた。

「……愛のため、乙女は変わる!」

 衣装が少しばかり変化したキューティーハニーを見て、聖龍隊一同は驚愕する。

「え? え ? こ、これって、いったい……」

「は、ハニーさんの姿が変わった……」

「こ、これって……」「な、何が一体どうなっているんだ?」

 突如コスチュームが変化したキューティーハニーに驚くソウシに星夜そしてマーズにデューイ達。そんな中、思考回路がマヒしていた聖龍使いが重い口を開いた。

「う、ううむ……こ、これは……」「な、何だ相棒? 何か理解できたのか?」

 メタルバードが訊ねると、聖龍使いは仮説を述べた。

「こ、これはキューティーハニーがミスティーハニーの空中元素固定装置と融合した事で新たな変身が可能になったようじゃ」

「あ、新しい変身!?」「そ、それって……!」

 驚く高木はるかにイサミ達に、聖龍使いは更に続けて説明した。

「うむ、これはあくまでワシの推測であるが、ミラーガールの奇跡を呼ぶ力が、彼女がミスティーハニーに変身した際に再度発生し、その力が誘発点と成り、キューティーハニーの装置と聖羅の装置が融合したようじゃ……あれこそ第二のキューティーハニー。そう、例えるなら《ハイパーハニー》じゃ!」

『は、ハイパーハニー!!』

 聖龍使いの説明に一驚する一同を前に、ハイパーハニーに変身したキューティーハニーは、ミスティーハニーに変身したミラーガールに歩み寄った。

「……ミラーガール」「……はい、キューティーハニー」

 二人はしばらく見つめ合い、そしてキューティーハニーが最初に発した。

「ありがとう、そして力を貸して。聖羅の、妹の想いを無駄にしないためにも……」

「キューティーハニー……い、いいえ! 此方こそ、宜しくお願いします!」

 そして二人は、一斉にプリンスゼラに向かって行った。

「ふっ、バカな! 例えキューティーハニーがパワーアップしていようとも、偽物と協力したところで何ができる!返り討ちにしてくれるわ!」

 プリンスゼラも即座に攻撃態勢に入った。だが、その時。

「ぐはっ……あ、頭が……」

 再度、ゼラの頭に激痛が走る。

「「ハアァァ!!」」

 そんな立ち往生しているゼラに迫る、キューティーハニーとミラーガール。

「《ハニー・ヴァージナル・インビテイション》!」

「《ハニー・セクシー・ダイナマイト》!」

「「ダブル・ハニー・インパクト!!」」

 

 二人の合体技が、プリンスゼラに直撃した。

「ぐはっ……う、うわああぁぁぁ!!」

 プリンスゼラは二人の攻撃を受け、そのまま倒れてしまう。

 

 

 

 

[奇跡を起こせ!]

 

 プリンスゼラを倒した直後、ミラーガールは元の姿に戻った。

 それから一同は、聖龍使いやイサミ達、更にはキューティーハニー自身の口から、彼女たち姉妹の真実を聞いた。

 そして彼等は既に息絶えた如月博士の亡骸を囲う様に集まった。

「お父様……ウッ……」

 キューティーハニーは冷たくなった父親の亡骸を抱き寄せ、涙を流した。

「ハニーさん……」「ウウゥ……」

「そんな……ハニーさんのお父さんが……」

 マーズもヴィーナスもセーラームーンも悲しさで胸が苦しかった。

「は、ハニー……」「………………」

「………………」「ハニーさん……」

 早見青児もタキシード仮面もマーキュリーもジュピターも悲痛な想いに駆られる。

「ご、ゴメンナサイ、俺たちがもっと強かったら……」

「ぼ、僕達、何もできなくて……」

「と、トシ、ソウシ……」

「トシ、ソウシ。もう嘆くのは止めよう」

 嘆くトシやソウシにイサミ達をデューイが励ますと、加納望も言葉を掛ける。

「あぁ、そうだ。ブロスの配下に降ってた僕が言うのもなんだけど、どんなに嘆いたところで死んだ命は戻って来ない。だからこそ、命は貴重な存在なんだ」

「か、加納先輩……」

 ナースエンジェルも加納に同調する中、さくらや星夜が訴える。

「で、でも。いくら何でも、ハニーさん可哀そう……」

「そ、そうだぜ! せっかく姉妹が仲直りしたって言うのに、父親も、増して妹さんまでも死んじまうなんて!」

 そんな悲しむ一同に高木はるかが悲痛ながらに話す。

「で、でも、もうどうしようもないわ。如月博士も、聖羅ちゃんも、既に亡くなってしまったんですもの……」

 悲しみに浸る一同。そんな最中、メタルバードは膝をつき、泣き叫んだ。

「ウッ、ウウっ……す、済まねえ、ハニー……!」「め、メタルバード……」

 突然メタルバードは泣きながらキューティーハニーに謝罪し始めた。

「お、オレはお前に、必ず姉妹が仲良く過ごせる日々を築いてやると言いながら、結局何もできなかった。案の定、ベリルやブロスの時だってオレは何もできず、ただ黙って見ているだけしかできなかった…! な、何もできなくて……ホントに、ゴメンな……!!」

 号泣しながら謝罪するメタルバードを見て、キューティーハニーだけでなくその場の皆が感極まった。

「め、メタルバード……! 良いのよ、みんなが頑張っていた事は私、ちゃんと分かっているから。だから、もうう泣かないで、みんなも、ねぇ……」

「は、ハニーさん、ウゥ……」「ウウゥ!」

 キューティーハニーの優しい言葉に、ソウシや星夜たち一同は再び感涙した。

「……済まぬ、キューティーハニー。ワシが至らぬばかりに……」

 聖龍使いも泣き声でハニーに謝罪を述べる。

「聖龍使い、そんなに自分を責めちゃいけないわ……貴方はもちろん、みんな必死に頑張って此処まで来てくれたじゃない。それだけでも私は満足よ……青児さんにイサミちゃん達も、ホントにありがとう。一緒に戦ってくれて……」

 ハニーは、自分自身を責める聖龍使いを宥め、更に共に戦ってくれた青児やイサミ達にも礼を返した。

「ハニーさん……」「ハニー、ホントに済まない……」

「ありがとう、何もできなかった私たちにお礼を言ってくれるなんて……」

 自分が一番辛いはずなのにキューティーハニーはみんなの事を気遣い、優しく受け応えてくれる。イサミに早見青児そして高木はるか達はこんなキューティーハニーに対し、何もできなかったと心の中で嘆き悲しんだ。

 

 その時、ミラーガールが一人、重い口を開いて突拍子もない事を呟いた。

「……もしも。もしも時間が戻ってくれたら、少なくとも聖羅さんだけは助けられたのかな」

「ミラーガール。時間を戻せるなら誰だって苦労はしねえよ……」

 ミラーガールの発言にメタルバードが半ば呆れながらも返答してると、そんな彼女の発言にさくらが反応した。

「……時間を、戻す……あ、あぁ! そうだ、そうだよ!」

 ミラーガールとメタルバードの会話を聞いて、さくらが叫んだ。

「!? ど、どうしたさくら?」「さ、さくらちゃん?」

 メタルバードとナースエンジェルが突然声を挙げるさくらに困惑する中、さくらは突拍子もない発言を言った。

「そうだよ、時間を少し戻せば、もしかしたら聖羅さんだけでも助けられるかも!」

「な、何言ってんだよさくら!」「そうだ、時間を戻すなんて……」

 さくらの発言に驚き呆れるトシや星夜達に対し、さくらは慌ててクロウ・カードを探り出した。

 「で、できるかもしれないの! 確か……あっ、これだよ! このカードなら」

 さくらは一枚のカードを取りだし、みんなに開示する。

「そ、それは……?」

 タキシード仮面が訊ねると、さくらは表示したカードについて説明する。

「これは《タイム(時)》時間を操作する事ができるカードなの」

「じ、時間を自在に!?」「じ、時間を操作できるって……ま、まさか」

 さくらの説明に驚く早見青児にマーズ達に、さくらは続けて述べた。

「え、えぇ。これで少しだけ時間を遡って聖羅さんを、ミスティーハニーが死んでしまう前に戻れたら、きっと……」

『お、オオゥ!』

 さくらの提案に、一同は驚き歓喜した。

 するとさくらはカードの効力について思い出した詳細を述べる。

「あっ、だ、だけどこのカードは基本、1日に一度だけ午前0時に戻すカードなんです。なのでもし、それより前に聖羅さんが死んでしまっていたら……」

 不安がるさくらに、早見青児が発した。

「そ、それなら大丈夫だ! あの時、腕時計で確認したらちょうど午前0時5分だった。もし本当に0時に戻れるなら、ミスティーハニーが死んでしまう5分前に戻れる筈! 十分間に合う!」

「そ、それなら大丈夫ですね! 分かりました、すぐにカードを使います」

 そしてさくらは、タイム「時」のカードを使おうとした。

 だが。

「……あ、あぁ……だ、ダメ。さっきのベリルやブロスの戦闘で魔力が消耗して、力が……」

 何と、さくらの魔力は先ほどのDDガールズとの戦闘でかなり消費してしまっていた。

「そ、そんな……」「せ、せっかく聖羅さんを助けられる可能性が……」

 途方に暮れるジュピターやマーキュリーら一同。その時、ミラーガールがさくらの肩に手を置いて訴える。

「さくらちゃん、もう一度そのカードを発動しようとしてくれない?」

「ほ、ほえ?」

 突然のミラーガールからの要望に戸惑うさくら。そんなミラーガールに聖龍使いが訊ねる。

「み、ミラーガール、そなた、何をするつもりじゃ?」

 するとミラーガールは自分のコンパクトを付けた左手を差し伸べた。

「このセイント・コンパクトの、想いを増幅させる力でさくらちゃんの不足している分の魔力を補えるかもしれないわ」

「な、なぬ!?」「そ、そうか! さっきの戦闘でやったみたいにすれば、或いは……」

 ミラーガールの説明に一驚する聖龍使いに納得するメタルバード。

 そしてミラーガールはコンパクトに右手を据え置いてさくらに訴える。

「さぁ、さくらちゃん。貴女の両手も此処に、そして願うの。カードの力が使えるように、そして聖羅さんを助けたいと……」

「は、はい」

 さくらはミラーガールに言われるまま、コンパクトに手を置き、そして心から願った。

(お願い、カードさん。力を貸して、聖羅さんを、ミスティーハニーを救いたいの……)

(お願い、聖羅さんを、ミスティーハニーを救い出したいの!)

 そして願い祈る二人を見て、周りのみんなも祈り始めた。時が戻り、聖羅が、彼女が死んでしまう前の時間に戻れる様にと。

 

 その時だった。ミラーガールのセイント・コンパクトが光り輝き、更に皆の前にローブに身を纏った、砂時計を持った老人が姿を現した。この老人こそ、タイム「時」が実体化した時の姿。

 そして老人が手に持った砂時計を傾けると奇跡が。

 

 

 

 

[戻った時間と浄化された憎悪]

 

 そして《タイム「時」》のカードが姿を消した。辺りは何も変わり映えがしていなかった。

「も、戻ったのかな、時間が……」「さ、さぁ……」

 イサミやソウシ達は本当に時間が逆戻ったのかどうか、正直半信半疑だった。

「ほ、本当に時間が戻ったのかしら・……」「い、いや……まだ分からないよ」

 マーキュリーやデューイたち全員が立ち往生している、まさにその時。

 

「キャアアアアァァァ……!」「ハアァッ!」

 何とすぐ其処で、ダークパンサーとミスティーハニーが、今まさに衝突しようとしている真っ最中まで時間が逆戻っていた。

「あっ、アレは!」「み、ミスティーハニーだわ!」

 一驚するトシにナースエンジェルに反して、高木はるかと早見青児が慌て出す。

「そ、そうよアレは! ミスティーハニーが正に相打ちになろうかと言う瞬間よ!」

「い、いけない! ミスティーハニーがダークパンサーと衝突する……このままだと相打ちになるぞ!」

「せ、聖羅ーー!」

 キューティーハニーが叫んだ、その時。一同の側で、何かが高速で移動する様な風音が聞こえた。

 そして次の瞬間、衝突寸前のダークパンサーとミスティーハニーの間に、メタルバードが割り込んだ。

「め、メタルバード!」

 驚く聖龍使い一同。そしてダークパンサーと相打ちになるのを覚悟していたミスティーハニーは、突然目の前に現れたメタルバードに驚愕していた。

「! あ、貴方は……!」

 驚くミスティーハニーに、メタルバードはダークパンサーの攻撃を受け止めながら話し出す。

「お、お嬢さん、その美貌で死に急ぐのは、実に惜しい事だぜ……」

「………………」

「あ、アンタにはまだ、一緒に生きたい、一緒に過ごしたいと願っている姉さんが居るだろ……ね、姉さんだけじゃない、オレだってアンタみたいな美人の姉ちゃんと一緒に過ごしたいぜ。だ、だから相打ちなんてバカな真似するんじゃねえよ」

「あ、貴方……」

 メタルバードの話にミスティーハニーが聞き込んでいた、そんな状況の中だった。

「キャアアアア……」

 メタルバードに戦闘の邪魔をされたダークパンサーが、攻撃目標をメタルバードに変更した。

「おっ、ヤルか! 正直、ミスティーハニーにそっくりな怪人と戦うのは躊躇い所だが……美人姉妹の運命を護るためなら男メタルバード! ヤッてやるぜ!!」

 そしてメタルバードは拳を構えて、ダークパンサーと向き合った。

「め、メタルバード……!」「………………」

 メタルバードの男気に思わず感心するハニー姉妹。そして聖龍使いも続いてメタルバードに加勢する。

「うおおぉぉー! 其れがしも参ろうぞぉぉぉ!! 相方のメタルバードだけに戦わせていては武士の名折れ成りいぃぃぃ!!」

「よっしゃーー! 今日は全然暴れてねえから体力が有り余っちまっているんだ! ダークパンサー、悪いが初っ端から全力で戦わせてもらうぞーー!!」

 聖龍使いとメタルバードの二人は完全に、戦闘モードに移行していた。

「アアアアアア……!」

 ダークパンサーも戦意に満ちている二人を攻撃目標として認識。

「行くぞ! メタルバードぉぉぉ!!」「おおッ!!」

 そしてダークパンサーと聖龍使い、メタルバードの激しい戦いが始まった。

「うおおおおぉぉ!!」「トリャアアアァァ!!」「キャアアアアアァ!」

 聖龍使いとメタルバードは、敵意向きだしで襲いかかって来るダークパンサー相手に、激戦を繰り広げた。

『………………』「………………」「………………」「………………」

 そんな男二人を見て、キューティーハニーにミスティーハニー、そしてミラーガールや他の聖龍隊は呆然としていた。

「……ね、ねぇ。聖龍使いとメタルバードって、普段からあんな感じなの?」

 熱血丸出しで戦いに挑む二人を指差して、高木はるかがイサミ達に訊ねる。

「ま、まぁ……普段から血の気が多い二人なのは確かですけど。こ、今回は特に……」

「そ、そう言えばあの二人、今回はホントに何もしてなかったからね……」

「た、確かに。ブロスやベリルの時も余り活躍してなかったし……」

 イサミに続き、マーズとヴィーナスの二人も今夜の二人の活躍を思い返して呆れ果てていた。

 一同が、ただただ呆然と三人の戦いを見ているしかなかった現状の中、更に聖龍使いとメタルバードは闘志を湧き上げ、そして叫んだ。

「あっ、カワイコちゃんにはよ~わいけれど、護るためなら本気で戦う! 銀翼の英雄、メタルバード!!」

「あっ、か弱きものを護るため、正しきものを救うため、命を掛けるは、アッ聖龍使いとはぁ、あっ拙者のことぉ~!」

 二人は闘志むき出しでダークパンサーに立ち向かった。しかしダークパンサーも相も変わらず攻撃の手を緩めない。

 

 そして三人が戦い始めて、10分は経った。

「シャアアアア……!」

「……はっ、ゼェゼェ……ま、まだあの怪人へばっちゃいねえのか……」

「う、うむ……中々、しぶとい輩よ……」

 疲労困憊のメタルバードに聖龍使いは更に、ダークパンサーに立ち向かい、戦おうとした。だが、その時。

「ふっ、二人とも! もう止めて! それ以上ダークパンサーに攻撃しないで!」

「ん?」「なに!?」

 更に戦い合おうとする二人をミラーガールが制止した。

「み、ミラーガール!?」

「何じゃ! 戦いの途中で待ったを掛けるとは……」

 戸惑うメタルバードと聖龍使いに対し、ミラーガールは切実な瞳で訴えかける。

「ふ、二人とも、お願いだから彼女を、ダークパンサーをこれ以上傷付けないで……」

「え、え?」

「何を言うでござる! 倒さなければ拙者等がやられてしまうでござるぞ……!」

 困惑するメタルバードに聖龍使いの二人に、ミラ―ガールが事情を述べる。

「で、でも……彼女を良く見てあげて、彼女あんなに寂しそうな顔をしているのよ。見ているだけで辛くなっちゃうわ……」

 ミラーガールに言われ、二人がダークパンサーを凝視すると、確かに彼女の目は何処か寂しげな瞳をしていた。

「し、しかし……だからと言って、このままあの怪人を放っておく訳にはいかんでござる。何とか退治しなくては」

 この聖龍使いの発言にミラーガールが怒鳴った。

「聖龍使い! 貴方は何で二言目には倒す倒すしか言えない訳!? 敵を倒すことでしか正義を護れない訳なの!?」

「ううっ!!」「ひぃっ!」『!!』

 ミラーガールの突然に怒声に、聖龍使いやメタルバードら一同は完全に怯んでしまう。

「キャアアアア」

 そんな最中、ダークパンサーはミラーガールへと一直線に向かって来た。

「み、ミラーガール!」「危ない、逃げて!」

 セーラームーンやキューティーハニー達の呼び掛けに対し、ミラーガールは逃げることなく、そのまま立ち尽くしていた。

「な、何故逃げない! ミラーガール!」「逃げるんだ!」

 早見青児もタキシード仮面も困惑する中、ミラーガールは突拍子にミラー・シールドをダークパンサーに向けて構えた。

「《ハート・オブ・ミラー》!」

 すると突如、シールドからハートの模様が目立つ巨大な鏡が出現した。

「え、何? 今度は何をする気なんだ彼女は!?」

「むっ、むむむ!?」『何する気!?』

 メタルバードも聖龍使いも他の聖龍隊一同も動揺する中、ダークパンサーはその巨大な鏡面と向き合い、動きを止めた。

「シャアアア……」

 鏡面を見詰めるダークパンサーの憎しみの感情は次第に落ち着きつつあった。

「ど、どうしたんだ? あの怪人……?」「う、動きが止まった……」

 加納望やさくらが一驚する最中、何とダークパンサーが突然泣き出した。

「……う、うううぅ……」

「な、泣いてる……ダークパンサーが涙を流して泣いてる!」

「な、なんで涙を……ダークパンサーは」「………………」

 突然泣き出すダークパンサーを前に困惑するマーズやキューティーハニーにミスティーハニー達。皆が注目する中、ダークパンサーはその場で泣き崩れ、跪いてしまう。

「えぇ!」「さ、さっきまで暴れまわっていたのに、どういう事だ!?」

 ヴィーナスもデューイも困惑するばかり。

「ううううぅぅ……」

 そんな状況の中、ダークパンサーは益々泣き崩れる。

 すると混乱する状況下で、聖龍使いがメタルバードに指示を出す。

「……そ、そうじゃ。メタルバード、主のテレパスでダークパンサーの心を覗くのじゃ。何故急に泣き出したのか分かるやもしれぬ」

「あ、あぁ、そうだな。やってみる」

 そしてメタルバードはお得意のテレパスでダークパンサーの心を覗いた。

「……! こ、これは……!」

「ど、どうした。何が見えたのじゃ、メタルバード!」

 テレパスでダークパンサーの心理を覗き込んだメタルバードが一驚するのを見て、聖龍使いが問うとメタルバードは驚いたまま明かした。

「……か、悲しんでいる。ダークパンサーが自身の、自分の醜い姿を鏡で見て、嘆いていやがる……!」

「じ、自分の姿を見て……?」

 不思議に思うマーキュリー達に、メタルバードは説明し始めた。

「だ、ダークパンサーは自分の醜い姿、そして自分の憎悪に満ちた心を、あの鏡を通して直視した事により、どんなに自分がおぞましい行為をして来たか、ようやく理解できたんだ。そして、そんな自分の醜態に対して嘆き悲しんでしまっているんだ……!」

「つ、つまりそれって……」「……彼女が、ダークパンサーが心を改めたって事?」

「………………」「………………」

 メタルバードの説明にトシとジュピターが愕然とする中、ハニー姉妹は驚愕しながらも深く納得する。

 そんな泣き崩れるダークパンサーに対し、ミラーガールはそっと歩み寄り、そしてダークパンサーを優しく抱き締めた。

「な、何!?」「あ、あの人。ダークパンサーを……」

 突然のミラーガールの行動に戸惑う早見青児にイサミ達。そんな中、ミラーガールはダークパンサーの耳元で、優しく呟いた。

「もう大丈夫よ、もう苦しむ必要はないから……辛かったのよね、自分が人じゃ無いって知ってしまって。でもそんなの関係無いわ、不安になる事なんて無いのよ。誰も貴女を責めないし、誰も貴女を嫌ったりしないから……だから、安心して……」

「……う……う、うううぅ……!」

 ミラーガールの優しい囁きに、ダークパンサーは更に号泣し、そして光に包まれながら消えていった。

「だ、ダークパンサーが!」「き、消えていく!」

 目の前で強敵ダークパンサーが消滅するのを目撃して驚愕するキューティーハニーにソウシ達。

「し、信じられねえが、ミラーガールの優しい言葉でダークパンサーの根源であった聖羅の憎悪が浄化され、ダークパンサー自体を消滅させたんだ……!」

「………………!」「……み、ミラーガール」

 目の前の事象を説くメタルバード同様に、我が目を疑う聖龍使いにミスティーハニー。

 

 その場の一同は言葉を失った。

 優しい想いだけでダークパンサーの憎悪を消し去り、彼女を浄化させる事ができるとは、誰も予想していなかったからだ。

 

 

 

 

[喝を入れる聖女]

 

 ダークパンサーを抱きしめ、更に優しく話しかけた事で浄化する事ができたミラーガールに誰もが注目した。

「い、いやぁ驚いたよ。まさかあのダークパンサーを、あんな方法で倒してしまうなんて」

「いいえ。私はただ彼女に苦しまなくても大丈夫と、そう伝えただけです。倒すつもりは無いんです」

「い、いや、それにしても君のその能力には程々驚かされたよ。此処に来る前にもベリルやブロスを、言っては何だが君の能力でほとんど倒したり、浄化したりしたじゃないか。一体どんな能力なんだい……?」

 

 すっかりミラーガールに没頭してしまっているタキシード仮面に早見青児。その様子を少し離れた所から、セーラー戦士達にナースエンジェル達、更にイサミ達や聖龍使い等が眺めていた。

「ううぅ~、な、なんだかタキシード仮面様が取られた気分~」

「ま、まぁセーラームーン」

「こ、今回は本当に彼女の、ミラーガールの御蔭でみんな助かったんだし……」

「そっ、まぁ今回はホントにあの子の御蔭で全て終わったんだし……」

「タキシード仮面や早見青児が気になっちゃうのも仕方が無いわよ」

 タキシード仮面の注目を奪われた気持ちで嫉妬するセーラームーンに、マーズやマーキュリーが宥める一方、タキシード仮面同様にミラーガールの能力を称賛するジュピターにヴィーナス。

「そうですよね。彼女が居なかったら、私だって何の役にも立てなかっただろうし、タイム『時』のカードも使えず、聖羅さんを助け出す事もできなかったんですから」

 さくらもセーラー戦士たち同様にミラーガールを称賛すると、さくらに続いてナースエンジェル達も賛同する。

「……そうよね、今回は本当に彼女に助けてもらったわ。お陰でブロスも倒せた、加納先輩も戻って来られた……何にも言う事無いわ」

「そうだねりりか君。僕も彼女の力には驚いたよ、治癒能力に防御術、更には幻術までも使えちゃうんだから」

「それだけじゃない、彼女の力には人の想いを増幅できる能力も有る。僕等の想いを増大させたからこそ、今回の戦いに勝てた訳だ」

「まったく、凄い能力だよな。でも、彼女いったい何者なんだ?」

 加納にデューイ、星夜がミラーガールの正体を気にしていると、トシとソウシとイサミも頷く。

「なんだ? 星夜達の知り合いじゃなかったのか?」

「どちらにしろ、彼女も何とも言えない美しさですね」

「もう、ソウシったら……それにしても、あのくノ一のお姉さん、一体何処に行っちゃったんだろう。またお礼の一言も言えなかったし……」

 イサミの疑問に聖龍使いが答える。

「い、いや、あのくノ一殿は既に去り申した。もうキューティーハニーもミスティーハニーも、無事に助けられたし、後はワシ等に任せても大丈夫と認識したんじゃろうて……」

 

 そんな個々での会話の中、ミスティーハニーがメタルバードとキューティーハニーに付き添われ、皆の所に声を掛けに来た。

「お、オイ。みんな、ミスティーハニーから一言有るみたいだぞ」

「さぁ聖羅……大丈夫?」「え、えぇ。大丈夫……」

 ミスティーハニーは弱り切った声で皆に謝り出した。

「み、みんな……ホントにゴメンなさい。今まで、私……本当に……」

 更に謝ろうとするミスティーハニーに対し、聖龍使いが告げた。

「もう良い、もう良い。ミスティーハニー、全ては終わった事じゃ、もう謝るでない。主はこれからの生涯を正しく生きていこうとすれば、それで良いのじゃ」

「あ、ありがとう……聖龍使い」

 聖龍使いの優しい言葉に、ミスティーハニーは困惑しながらも内心嬉しく思っていた。

「あ、ありがとう、聖龍使い……そして……聖……りゅ……た……」

「み、ミスティー!」「お、オイ! どうしたんだ!?」

 突然目の前で倒れてしまったミスティーハニーを前に、キューティーハニーとメタルバード達は慌て出した。

 

 するとミスティーハニーは元の葉月聖羅の姿に戻り、更に身に着けていたチョーカーが消滅した。

「え? せ、聖羅のチョーカーが……」「こ、これはいったい?」

 驚くキューティーハニーにメタルバード達に聖龍使いが申した。

「ふむ、これはやはり……」「な、何がやはりなんだ相棒?」

 メタルバードが訊ねると、聖龍使いは仮説を述べる。

「うむ、ワシ等は先ほど、さくらのカードにより時間を遡って戻って来たじゃろ。その時には既にキューティーハニーの空中元素固定装置と聖羅の装置が完全に融合していたからこそ、今の時すなわち目の前の聖羅が身に着けていた空中元素固定装置も消滅してしまったんじゃろう。同じ時間軸に、別の時間軸の物質が存在するのは、おそらく不可能なのじゃろうて」

「……つ、つまり、どう言う事だ??」

「まぁ、簡単に申せば、既にキューティーハニーの装置と聖羅の装置は融合してしまっておるから、目の前の聖羅の装置も消えてしまったと言う訳じゃ」

「……よ、良く分からねえが……そ、それじゃあ聖羅はもうミスティーハニーには変身できないって事なのか?」

「むぅ、おそらくな。それに聞くところによると、聖羅の装置はハニーのと違い不完全な失敗作で有るがうえに、使用すればするほど肉体的に支障が出ると聞いておる。まぁ正直、聖羅の方の装置は消えてしまった方が良かったじゃろうて」

「そ、そうなのか……でハニー、聖羅の様態は? 大丈夫なのか」

 メタルバードに訊かれたキューティーハニーは葉月聖羅の容態を述べる。

「え、えぇ。少し気を失っているだけよ」

 これを聞いた聖龍使いは三人を呼んだ。

「そうか、それは良かった……おーい、ナースエンジェルにセーラームーン、それにミラーガール殿。済まぬがこっちに来て聖羅殿のダメージを回復してくれぬかぁ?」

「あっ、は~い」

「もう、相変わらず人使い荒いんだから……」

「あっ、分かりました」

 そしてナースエンジェルにセーラームーンそしてミラーガールたちは聖龍使いに言われ、傷だらけになった葉月聖羅の傷を治療した。

 そして、彼女等が聖羅の傷を治し終えたその時。

「うぅ……ま、まさか……」「!」「ぷ、プリンスゼラ!」

 遂先ほど、ハイパーハニーとミスティーハニーに変身したミラーガールの合体技に倒れたプリンスゼラが目を覚ましたのを目撃し、メタルバードとキューティーハニーが一驚する。

「し、信じられない……こ、この私が負かされるだけでなく、み、ミスティーハニーまでもが生き返っているとは……」

 プリンスゼラは、今の今まで気絶していた為、聖龍隊がさくらのカードで時を戻し、それでミスティーハニーが死なずに済んだ事を知らずにいた。なので、ミスティーハニーが生き返ったと勘違いしている様子。

 そんなゼラにミラーガールが近寄る。

「……プリンスゼラ!」「み、ミラーガール……」

 ボロボロに成り果て、目覚めたばかりのゼラに対し、ミラーガールは仁王立ちで睨みつけ、そして小さい声で言った。

「……歯、食い縛りなさい」「え?」

 更に、ミラーガールは怒鳴る様に言い放った。

「歯ァ食い縛りなさい!!」「ブッ!」

 ミラーガールは怒鳴ると、ゼラの左頬を思いっきり引っ叩いた。

『って、ええええぇぇぇぇ!!』

「〔ガーッン〕(ウソ~! プリンスゼラを引っ叩いちゃったよ、この女~!!)」

 ミラーガールがゼラを引っ叩いたのを目撃して、驚愕する聖龍隊一同と聖龍使い。

 その一方、ミラーガールに叩かれて倒れ込むゼラに、ミラーガールは更に言い放った。

「プリンスゼラ! これが、貴方が今まで愚弄して来た愛の為せる力、愛が起こした奇跡よ! 貴方を負かした力もそうだけど、ミスティーハニーが死なずに済んだのも、全てが此処に居るみんなの、愛や思いやりの力で成し得た奇跡なのよ!」

「………………」

 ゼラは突然叩かれた衝撃とミラーガールの台詞に呆然としていた。

 そんなゼラにミラーガールは更に力説を続ける。

「どう、少しは分かった? 世の中にはね、相手を信じたり愛したりする事ができない……そんな人だっているのよ。そんな人でも、誰かに愛されたり、信用してもらいたいって願っている。私は、その人にも必ず他人を愛せる心、人を信じる心が必ずあると信じている。貴方にだって、心の何処かに必ず『愛』って感情が存在する筈よ。貴方はこの先、自分の犯して来た罪を悔いるのと同時に、自分の中の愛と向き合っていきなさい。良いわね!」

『………………』

「……あ、愛、想い……奇跡を起こす、力……」

「………………」

 ミラーガールの力説に、ただただ呆然としてしまう聖龍隊一同とゼラに聖龍使い。

 そしてプリンスゼラは半ば放心状態のまま、その場から去って行った。

 

 

 

 

[素顔を明かした武士と聖女]

 

 それから一同は、再度如月博士の亡骸に集まった。

「………………」

 傍らで父の亡骸を見つめるキューティーハニー。

「……聖羅さんは救えた。だけど……」「あぁ、如月博士だけは……」

 ソウシもトシも悲痛な胸の内を呟く。するとデューイが現状で起きた奇跡を称える。

「……ああ、確かに博士は助ける事ができなかった。だけどミスティーハニー、葉月聖羅は救う事ができた。これだけでも奇跡じゃないか」

 デューイに続き、早見青児やジュピターも頷く。

「ああ、本当だったら聖羅も死んでた。だけど、さくらちゃんやミラーガールの起こした奇跡で助ける事ができたじゃないか」

「そうね、聖羅さんだけでも救えただけ、本当に良かったわ。これでもし、聖羅さんまでも死んでしまっていたら、ハニーさん本当に一人ぼっちだったわよ……」

 続けてメタルバードと聖龍使いが気落ちするキューティーハニーに話し掛ける。

「そうだぜハニー。確かに親父さんが死んでしまったのは辛い……だけどな、お前にはまだ、奇跡的に死なずに済んだ妹も居る。それにオレたちが、仲間が居るじゃないか……父親の為にも、もう悲しむのは止めようぜ」

「その通りじゃキューティーハニー。悲痛なる想いは大変良く分かる……じゃが、何時までも悲しみに浸っている余韻は無いのじゃ。ワシ等は英雄、弱き者の剣となり盾と成らねばならぬ宿命なのじゃ……この辛さを乗り越えなければこの先、護るべき者を護り抜く事はできぬぞ……気をしっかり持つのじゃ」

 みんなからの激励に視線を受けてキューティーハニーは力強い面魂で答えた。

「……えぇ、分かっているわ聖龍使い。それに大事な人を失った悲しみを経験しているのも私だけじゃ無い……人は必ず、一つや二つは辛い経験をして、その苦しみを乗り越えて来たんですもの。私だって気落ちしてばかりはいられないのも分かってる……現に、目の前で大事な親や同じ種族が死んでも、明るく楽しく今を生きている英雄だって居るんですものね」

 キューティーハニーは、そう説きながらメタルバードの方を見る。

「ん………………」

 メタルバードは顔を少し赤くさせながらキューティーハニーからの視線を逸らした。

「……何かあったの、二人とも?」

 ジュピターが不思議がってメタルバードに訊ねると。

「な、何でもねえよ!」

 メタルバードは照れながら、ジュピターに言い捨てる。

「何が有ったんだ、あの二人?」「さ、さぁ……?」

 メタルバードの様子のおかしさを不思議に思う星夜とトシ達。

 

 そんな最中、聖龍使いは今回の戦闘の一番の功労者であるミラーガールの方に歩み寄って行った。

 そして彼は、ミラーガールの真正面に立つと、彼女に礼を申し上げる。

「ミラーガールよ。主の今回の働き、誠に感謝致しますぞ。礼を申しても言い足りぬ心境でござる」

「………………」

 しかしミラーガールは何も言わず、ただ黙り込むばかり。

「み、ミラーガール……殿……?」

 どうしたのかと気にする聖龍使いに対し、ミラーガールは吐き捨てた。

「……本当に感謝しているの?」

「! そ、それはもちろん……」

「だったら、本当の言葉で礼を言ってもらいたいわ」

「ほ、本当の言葉??」

 すると、ミラーガールは顔に付けているアイマスクを取り、素顔を聖龍使いに見せつけた。

「!! あ、アッコ!?」

「そうっ、貴方が一番よく知っている筈の加賀美あつこよ!」

 聖龍使いは驚愕し、更に少し遠くで見ていた聖龍隊の面々も驚きの表情を見せた。

「あ、アッコちゃん!?」「な、何でアッコちゃんが!?」

 マーズとヴィーナスは驚きの余り、思わずお互いに抱き合ってしまう。

「え、えええぇぇぇ!!」「あ、アッコって確かあの……!!」

 セーラームーンとメタルバードも驚愕してしまう。

「お、おいタキシード仮面! あの女の子は確か……!」

「あ、あぁ、以前河原で気絶していた子だ……!」

 早見青児とタキシード仮面は見覚えのあるアッコの顔を見て愕然とする。

「あ、アッコちゃんが……!」「み、ミラーガール……!」

 ジュピターもマーキュリーも唖然とする。

「ほ、ほええぇぇ!」「あ、あの加賀美あつこさんが……!」

「か、彼女がミラーガール!?」

 さくらもナースエンジェルも星夜も仰天。

「で、デューイ……か、彼女は……」

「あ、あぁ、覚えているのかカノン。君が追い回した事のある少女だよ」

 加納もデューイもアッコの顔に見覚えがあった。

「そ、そんな。アッコちゃんが……」

 キューティーハニーは驚きの余り固まってしまう。

「あ、あの人って確か」

「し、修司さんのクラスメイト……」

「そ、それに確か修司さんの、彼女……」

 イサミ、トシ、ソウシの三人も呆然とする。

 

 一同はミラーガールの素顔を見て驚愕する中、ミラーガールは聖龍使いに言いつける。

「……次は貴方の番よ、聖龍使い」

「! な、何がじゃ……」

「次は貴方が面を取る番だって、言っているのよ」

 やや怒った表情で聖龍使いに訴えるミラーガールを前に、聖龍使いは震えた口調で申した。

「な、何を申して、お、おるか存じぬが……せ、拙者はえ、英雄でぶ、武人で有るが故に、こ、この鬼の面を外す事はで、できぬでござるが……」

「……それと、そんな喋り方と作り声じゃなく、自分の声といつもの口調で言って欲しいわね」

「! な、何の事か……せ、拙者は理解で、できぬ……で、ござる……」

 と其処へ、メタルバードが歩み寄り、聖龍使いの肩を叩いて告げた。

「……相棒、この子もう、お前の事、分かっちゃっているみたいだよ」

「!! えっ、えっ? ……ま、マジ……」

「……マジ」

 テレパスでミラーガールの心中を覗いたメタルバードの指摘に、聖龍使いは動揺する。

「………………」「………………」

 そしてしばらくミラーガールの、いや加賀美あつこの顔を見つめていた聖龍使いは、観念して鬼の面を外した。

「………………」「……やっぱりね」「………………」

 アッコに指摘された修司の顔は赤くなっていた。そして、そんな情景を目撃したタキシード仮面に早見青児と加納望は驚愕する。

「う、ウソだろっ!?」「せ、聖龍使いは……!」「お、小田原修司だって!?」

 鬼の面を外して素顔を曝した修司の顔を見て、三人は凄まじく驚いた。

「あ、ありえねええぇぇぇ!! あん時見た異形の顔は何処に行っちまったんだあぁぁぁ!!」

「いっ、今まで聞いて来た口調って、どう聞き取ってもジジイの喋り口調にしか感じられなかったぞおぉぉ!!」

「あっ、あの聖龍使いが……年配と思っていた、異形の顔の男が、ただの小学生……」

 タキシード仮面、早見青児、加納望は今まで誰にも見せた事のない様な顔付きで、驚きまくった。

 

「………………」

 一方の修司は何も言えず、そのまま黙り込んでいた。

 そんな時、アッコが笑顔で修司に声を掛ける。

「次は、その兜を外してくれないかしら?」

「か、兜?」

「そう、兜」

「………………」

 修司は言われるがまま、兜を外し、外した兜を足元に置いた。するとアッコは笑顔のまま言った。

「……よし、良いわね。それじゃ……」

「……な、なに?」

 するとアッコは徐に、右手を構えて修司に告げる。

「……歯、食い縛りなさい」

 アッコは満面の笑みで修司に告げる。

「……っ!」

 修司は恐怖に慄いた。

 まさかとは思っているのだが、もしかして先ほどのプリンスゼラの様にビンタをお見舞いされるのではないかと、修司は内心恐怖していた。

 そして修司が身構えていると、その瞬間が訪れた。

「ブヘッ!」「……え……えぇ……」

『え、ええええぇぇぇ!!』

 殴り飛ばされる修司を前に、メタルバードも他の聖龍隊も驚愕する。

(ぐ、グーパンチィィィ……!!)

 そして修司はアッコに盛大に殴り飛ばれた。

「……ぶっ……」

 アッコに殴り飛ばされた修司は地面を滑り、倒れ込む。

「……い、イタイ……何で? 何でブツ訳? なんでグーパンチな訳? ね、ね?」

 修司がアッコに訊くと、彼女は恐怖を感じる笑顔で修司に迫っていた。

「……今まで……今まで心配掛けて来て……私、ホントに不安だったのよ」

 そう言うとアッコは座り込んでいる修司を優しく抱きしめる。

「……アッコ……」

 

 アッコの優しい抱擁から感じる温もりに、修司は胸の内に何か熱いモノが動いているのに気付いていなかった。

 

 

 

[去りゆく英雄達]

 

 そして一行は如月博士の亡骸と、気絶した葉月聖羅を担ぎ、その場から立ち去ろうとした。

「……それじゃ、博士と聖羅の方は、俺が博士の車で運ぶよ」

「あ、あぁ、ありがてえ。ま、まぁ、死亡届とかの書類提出も有るし、一応は市長宅に出向いて来てくれや。其処で色々と……」

「あ、あぁ。聖龍使いの所だよな。まさか、だったが……」

「そんなに驚くな……とは言えねえな。アイツはホントに口調も性格もコロコロ変わる男だからな……」

 如月猛の亡骸と気絶した葉月聖羅を運ぼうとする早見青児に、メタルバードが話していると変身を解除したハニーが早見青児に話し掛ける。

「青児さん、私も一緒に行くわ。お父様の亡骸の事も有るけど、聖羅の様態もウッズさんに見てもらわないと……」

「ん? ウッズさんって……あっ、確か市長の秘書をしている……」

「えぇ、ウッズさんも私たちのサポートをしてくれているの。医療にも詳しい人だったから聖羅の様態も診てもらいたいし……」

「分かった。それじゃハニー、一緒に行こう」

「ええ」

 こうしてハニーと青児は、一足先に車で去って行った。

 

「ふぅ~、まぁ、これで責めて聖羅の方は大事が無ければ良いんだけどよ」

「そうね。一応はセーラームーンやナースエンジェル、そしてミラーガールの力で回復させたとはいえ、何とも無ければ良いんだけれど……」

「そ、それにしても……」「う、うん……」

 安堵するメタルバードも、マーキュリーもジュピターもマーズも現場に残っている他の皆も修司とアッコの方に視線を向ける。

「……あ、アッコ……」「なに、修司?」

 笑顔で返答したアッコに、修司は訊ねた。

「……お前、何で」

「何でって、何が?」

「……何で、こんな真似を。下手したらお前……みんなと一緒に死んでいたのかもしれないぞ。それなのに……」

 この修司の質問にアッコは平然と答えた。

「だって……私もみんなの、修司の役に立ちたくて。それで……」

 

 この二人の様子を見ていた面々は、穏やかな気持ちで和んでいた。

「良いわね、あの二人」「うんうん。なんだか良い雰囲気♪」

 ヴィーナスもセーラームーンも、修司とアッコのやり取りを目視して和やかな気分に浸っていた。

「まさかアッコさんも変身できるなんて……」「う、うん……(ホントに良い雰囲気だなぁ)」

 ナースエンジェルの横で、星夜が羨ましそうに修司とアッコを見詰める。

 

 だが、そんな雰囲気の最中。

「……バカヤロー!!」「ヒッ!」『!』

 修司は突如、アッコに怒鳴り散らして彼女と皆を一驚させる。

「し、修司……」

 突然の修司の怒声に一瞬戸惑うアッコが顔を上げると、修司は顔を俯かせながらアッコに説教し始める。

「……お、お前……ホントに危なかったんだぞ! へ、下手したら本当に死んでいたかもしれねえし、そ、それに……」

 怒鳴る修司を見てアッコは、修司が本当に辛い心境である事に気付いた。

「……ホントにごめんなさい。だけど私、不安でしょうがなくて。修司が……修司や英雄のみんなが傷だらけになって、ボロボロになって、それに……それに……」

「………………」

「……修司が泣いて苦しむとこなんて、今まで見た事無かったから、そ、それで余計不安で、つ、つい……」

 修司に怒鳴られたアッコは思わず涙を流してしまう。

「……アッコ」

 修司はアッコの泣き顔を見て、そのまま彼女の顔を直視していると。

「オイこら修司! 女泣かすなんてサイテーだぞ!」

 そう台詞を吐き、修司の背後からメタルバードが突然頭を引っ叩いた。

「って……メタルバード。だ、だがコイツは」

 言い返そうとする修司に対し、メタルバードはすかさず反論する。

「修司、この子が居なかったらセーラー戦士達やナースエンジェル等、それに葉月聖羅だって生きていなかったんだぞ。オレたちは今回、ホントに何もできなかった……だけど彼女の行動で救われたんだ。感謝しなきゃいけないのが普通なんじゃないのか」

「………………」

 メタルバードの反論に、修司は何も言い返せなかった。

 更に其処へ他の聖龍隊士駆け付ける。

「そうよ修司くん」「! お、お前等……」

 マーズ達は修司に詰め寄り、説得し始める。

「本当に私たち、彼女の御蔭でブロスやベリルに勝てたんだから」

「わ、私も……アッコさんが来てくれなかったらみんなの所に行く事なんて、できなかったし」

「彼女の頑張りの御蔭で、僕等みんな無事だったんだよ。其処は評価してあげても良いと思うんだけどな」

「で、デューイの言う通りよ修司さん。アッコさんやさくらちゃんが来てくれなかったら、私たちあのまま……」

「そ、そうだ! 彼女が来なければ、ホントに俺たち殺されていたよ! 加納だってブロスの洗脳が解ける事も無かったんだから……!」

「む、むぅ……」

 マーキュリーにさくら、デューイにナースエンジェル、星夜達の説得に押し負けそうになる修司。

 其処へ今度は加納望にイサミ、トシ、ソウシにタキシード仮面とセーラームーンも訴える。

「修司くん、それは本当だよ。彼女の能力は、どの英雄の能力にも匹敵するし、何より人の想いを増幅させるなんて、これ以上は無い程の素晴らしい力だよ。そんなにミラーガールを責めないでくれ……」

「そうです修司さん。本当にアッコさんの能力って凄かったじゃないですか」

「そうだよ! まさかミスティーハニーに変身して、ダブルハニーでゼラを倒しちゃうんだから」

「今回のアッコさんの功績は、御褒めになるべきですよ」

「その通りだ。彼女の能力で私だって回復できたんだから」

「そう! それにアッコちゃん、ホンっとに凄い力が使えるんだよ。この際、彼女も聖龍隊に加えちゃったらどう~?」

 最後のセーラームーンの提案に修司は激しく焦燥する。

「! な、何言っていやがる! 勝手に出て来て、勝手な行動とった輩をウチに入れられるかよ!」

 しかしこれにヴィーナスが咄嗟に笑みを浮かべて訊き返す。

「な~に言っちゃっているのよ。最初私たちに『協力させてくれ』って土下座した人が、他の英雄の身勝手な行動がどうとか言えちゃう訳?」

「え! 修司、土下座なんてしちゃった訳!?」「ウッ……」

 反応するアッコに対して何も言えなくなってしまう修司に代わってジュピターが説き出した。

「そうよアッコちゃん。修司君は私たち英雄の力になりたいって、頭下げてまで協力したいってお願いしたのよ。だから、今回のアッコちゃんの行動とまるっきり同じって訳」

 このジュピターの話にメタルバードも昔を思い返しながら修司に話す。

「ははっ、そういやそんな事も有ったな……と言う訳だ修司。オレだけでなく他の英雄達も同じ意見なんだ、もうミラーガールを、加賀美あつこを責めるのは止めてくれ」

「……わ、分かった、分かったよ」

 最終的に修司は観念して、アッコを言い立てるのを止めた。

 

 そして最後に修司はアッコと会話する。

「……あ、アッコ」「ん?」

「ま、まぁ……こ、今回の件については、まだ後日家に呼んで話しつけるから、もう今日は良いよ……」

 そう話すと修司はその場から立ち去ろうとした。

「あっ、修司……」

 アッコが呼び止めようとすると、修司はアッコに小声で言った。。

「……ホントに助かったよ……ありがとう」

 そう言い残し、修司は駆け足で走り去ってしまう。

「修司……」

 一人、照れながら走り去ってしまう修司を見届け、、ミラーガールことアッコは修司の不器用さを再認識する。

 

 そんな中、メタルバードがある事実に気付いて思わず零した。

「……あの野郎、此処が何処か分からねえのに、自力で帰れるのかね」

『あっ……』

 メタルバードの指摘に、他の一同も唖然とした。

 

 

 

 

[更なる結成]

 

 所は変わって、此処は大江戸町、芹沢ジャパン地下施設 黒天狗党本部

 

 首相の黒天狗は、自分達の計画を今まで妨害して来たしんせん組が、自身が本当の孫の様に愛していたイサミと、その親友達であった事を知り、深く落胆していた。

「……はぁ、まさかイサミちゃん達がしんせん組だったとは。でも今さら計画を止める事も出来ないし……他の四天王達の意見もあるし、何よりワシの長年の夢も叶えたいし……」

 

 黒天狗が一人思い悩んでいる、まさにその時だった。

「く、黒天狗様!」

 いきなり声を上げて部屋に入って来たのはからくり天狗。

「どうした、そんな大声を出して」

 黒天狗が問おうとすると、其処に更なる入室者達が。

「黒天狗様、大変です!」「は、早く逃げてください!」

 からくり天狗に続き、部屋に入って来たのはゴールデン天狗、更に南蛮天狗までも慌てて部屋に駆け込む。

「お、お逃げください! 黒天狗様、きゃああ!」

「る、ルリ子……う、うわぁ!」

 更に部屋に傾れ込むかのように転がり込んできたのは鎧天狗に銀天狗。

「どうしたのじゃお主等! いったい何が有った?」

 続々と部屋に入り込んでは倒れていく配下達に黒天狗が驚いていると、部屋に一人の女が入って来た。

「お、お前はいったい、何者じゃ!?」

 黒天狗が動揺していると、配下たちが黒天狗に謝罪しながら事情を述べてきた。

「く、黒天狗様……いきなり我等の基地にこの女を始め、得体のしれない輩がぞくぞくと侵入してきまして」

「お、お許しください……何とか阻もうとしたのですが、数が多いうえに……」

「こ、この女もトンデモなく強くて……」

「も、申し訳ありません、黒天狗様」

「私達も何とか応戦したのですが、ダメでした」

「お、女……お主は、一体……」

 からくり天狗、南蛮天狗、ゴールデン天狗、そして鎧天狗に銀天狗達の説明を受けても尚動揺する黒天狗に対し、女は黒天狗に名乗ると同時に対談し始めた。

「クックック、我の名はシスタージル。名高き犯罪結社豹の爪(パンサークロー)の幹部である」

「な、何じゃと? 豹の爪(パンサークロー)と言えば国際的にも悪名高い、あの……!」

「そうじゃ。最早この施設は全て、我等豹の爪(パンサークロー)が手中に収めたぞい」

「な、何!?」

 驚く黒天狗は、ジルに問いかけた。

「な、何故、主等豹の爪(パンサークロー)が我々の基地を占領するのであるか?」

 するとジルは不敵な笑みを浮かべて答える。

「ふっふ。それはな、主等が研究しているという鉱物に我等も興味が湧いてな…」

「な、なぬ!?(ま、まさか、こ奴等もルミノタイトを……!)」

「ふふ、それに……我はな……」

 シスタージルは怪しい笑みを浮かべながら、黒天狗に近寄ろうとした。

「く、黒天狗様に近づくな! 無礼者め!」

 近づこうとするシスタージルに、南蛮天狗は襲いかかった。

「ムッ、雑魚め!」

 襲いかかって来た南蛮天狗を、シスタージルは軽くあしらう。

「ぐはっ……」「な、南蛮天狗……!」

「そ、そんなバカな……」

「わ、我等が黒天狗党№2の南蛮天狗が……」

「まるで赤子の如く……」「そんな……」

 黒天狗でも、№2の実力を持つ南蛮天狗を意図も簡単に倒したシスタージルに対し、他の四天王であるからくり天狗にゴールデン天狗、そして銀天狗に鎧天狗達は怖気づいてしまった。

 

 一方のシスタージルはそのまま黒天狗の元に歩み寄ると、彼の耳元で囁いた。

「ふっふっふ……お前が素直に協力してくれるのであれば、お前の部下には何もしないぞ」

「し、信用しろと言うのか。お前等の様な残虐非道な輩を……」

「ふっ、それに、我等はお前の願望も叶えてやろうと思っている」

「なに? ワシの願望……?」

「お前は、本当は世界征服など、どうでもいいと思っているのじゃろ……テン・グー星人、セリ・カーモンよ」

「! お、お、お前……なんでその事を……!」

「くっく。我等の野望に手を貸してくれれば、我等が首相パンサーゾラ様は主の望みを叶えてやっても良いと仰っている。私等にとっては、お前が故郷に帰還する事など、どうでもいいのだが、主等の欲っしている鉱物について詳しく教えてくれるのであれば、我々はお前の望郷の念を叶えてやるぞよ…」

「む、むぅ……」

 まさかの事態に黒天狗は激しく焦燥。

 

 豹の爪(パンサークロー)が黒天狗党を占領し、ルミノタイトの研究についても興味を示していた。

 更に黒天狗に対しても、故郷に帰すと言う名目で自分等に従わせようと目論むシスタージル。

 

 シスタージルやパンサーゾラの狙いは。そして黒天狗の下した選択は。

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