【聖龍伝説】始まる伝説   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 今回からマジでアッコちゃんメインの話に移ります。言うのもアレですが、他のキャラクターはモブ扱いです(ファンの方々、申し訳ありません)
※それと、タイトルは英雄活動となっていますが、ほとんどが学校での日常生活になります。


アニメタウンの英雄達 聖女、初めての英雄活動

[聖女と武人の朝]

 

 ある朝。

 清々しい一日の始まりは、アニメタウンで生活している全ての住民、そして英雄達にも変わらない一日のスタートを伝える。

 そして此処、加賀美家でもそれは同じであった。

 

「……ふ、ふあぁぁ」

 目覚まし時計の音で朝、ベットから起き上がる加賀美あつこ。これから彼女は自分の一日を始める。

 彼女はパジャマから普段着に着替え、腰まではある長髪を櫛で梳かし、ふわふわのお下げ髪にする。そして頭に真赤なカチューシャを付け、最後にはピンクのリボンを髪に付けた。

 全ての身支度を済ませるとベットの傍らに置いているセイント・コンパクトをスカートのポケットに入れた。

 

 そして一階のリビングに降りると、まず自分の両親と朝の挨拶を交わすのが日課である。

「おはよう、パパ、ママ」

「あっ、おはようアッコ」

「おはようアッコ。早く朝食食べちゃいなさい」

「は~い」

「ニャ~」「クワ、クワッ」

 リビングには飼い猫のシッポナ。そして訳有って自宅で預かっている動物タレントのペンペンもアッコに鳴いて挨拶をした。

「シッポナもペンペンもおはよう」

 彼等にも変わらない挨拶をアッコは交わす。

 

 父親の方は、既に朝食を済ませソファーに腰をおろしてながらテーブルに並べた仕事道具であるカメラの各部清掃及び点検を普段と変わらず行っていた。

「はいアッコ、今日も一日頑張るのよ」

「うん、ありがとうママ」

 母親は忙しい芸術家としての仕事の合間を縫って、いつもの様に自分や家族の為に朝食を作ってくれていた。

 

 そしてアッコは母親が作ってくれた朝食を口に運ぶ。

 今日の朝食はトーストの上にスライスハム、輪切りにしたトマト。更にその上には目玉焼きが乗っていた。

 彼女は出された朝食をいつもの様に残さず食べ、洗面台で顔を洗い、歯を磨き終わるとランドセルを背負って家を出ようとする。

 

「行って来まーーす」「いってらっしゃい、アッコ」

 母と互いに笑顔で挨拶を交わして、アッコは玄関を出た。

 

 すると家の前には、修司が向かいの家の壁に背中を待たせ掛けていた。

「あっ、修司……」

「おはよう、アッコ」

「お、おはよう……」

 前触れもなく、玄関前で待っていた修司にアッコは驚いた。

 そしてそのまま、二人で一緒に学校に向かった。

「……」「……」

 無愛想な表情の修司に、アッコは何を話しかけて良いのか分からなかった。

「……アッコ」「! な、なに?」

 突然、珍しく修司からアッコに話しかけて、アッコは思わず驚いてしまう。

「……あ、朝から家の前で待っていない方が良いか?」

「え?」

「……い、いや。俺みたいな無愛想で強面の男が、お前の家の前で突っ立ってない方が良いのかな……って」

 暗く、そして何処か寂しげな表情で語る修司に、アッコは笑顔で答えた。

「……う、ううん。そんな事無いわ。ただ、いつもと違って修司が家の前で待ってくれていたから、ちょっと驚いちゃっただけよ」

「……」何も言わずアッコの顔を見つめる修司。

 

「……嬉しかったわよ、修司がわざわざ家の前で待っていてくれて。こ、これから毎日、朝はこうして一緒に学校に行ってくれるの?」

 頬を赤くしながら、アッコは修司に訊ねた。

「あ、ああ。お前が良いって言うなら……」

 修司も顔を赤くさせながら答えた。

「……そう。良かった、これからは毎朝、修司と一緒に学校に行けるのね。ヤッターー♪」

 思わず上機嫌になるアッコを見て、修司も微笑んだ。

 

 そして学校までの道中、二人はまずモコと顔を合わせた。

「あっ、おはようアッコ、修司。朝から一緒なんて珍しいわね」

「あ、おはようモコ」「……おはよう」

 笑顔で挨拶をするモコに、アッコは同じ笑顔で挨拶を交わし、修司は無表情で挨拶をした。

 そしてモコも加わり、共に通学した。

「ホントに珍しいわね。修司とアッコが朝から一緒に居るなんて」

「うん。これからは毎朝、修司と一緒に学校まで通って行くのよ」

「お、おいアッコ。言うんじゃねえよ……」

 照れながらアッコに告げる修司。

「あら、別に良いじゃない。露出の激しい恰好するより、全然恥ずかしい事じゃないでしょ?」

「ウッ……」

 アッコの発言に修司は思わず口を噤むも、その発言にモコが首を傾げる。

「へ? 露出の激しい恰好って……」

「ふふ、何でもないわ」

 笑顔で語るアッコに、修司は何も言えなかった。

 まさか以前、自宅にて皆の前で言った発言を指摘しながら言い返してくるとは、修司自身思いもよらなかった。

 

 

 更に其処へ、大将が走って来た。

「オッス。アッコ、モコ、それに修司」

「あら大将」

「おはよう、朝から元気が良いわね」

「……」

 そして計三人で学校へと向かって行った。

「しっかしな~、まさか修司とアッコが朝から一緒だなんて……今日は雨が降るんじゃないか?」

「プッ、確かにね。今まで距離をとっていた修司が自分からアッコに歩み寄るなんてね」

「もう、二人とも。修司だって人なのよ、人は変わっていくものなんだから。ねっ、修司」

「あ、ああぁ……」

 

 いつもの様に自分に対して笑顔で語りかけてくれるアッコを見て修司は無表情であると同時に内心とても穏やかであった。

 

 

 

 

[聖女と武人の学校生活]

 

 そして四人は学校に着くと下駄箱で上履きに履き替え、共に自分達の教室に向かった。

 

「おはよう」

「あ、アッコちゃん」

「おはよう加賀美さん」

「おっはよ~」

「相変わらず朝から元気だな、浪花の奴は……」

「おはよう! ギョロ、ゴマ」

「あ、大将」「おはようです」

 アッコ・モコ・そして大将は教室に入ると元気に挨拶をした。

「……」しかし修司は無愛想のまま、無表情で自分の席に着いた。

 そしてアッコも修司の隣である自分の席に着いた。

「修司、少しはみんなと挨拶しようとは思わない訳?」

「別に良いだろ」

 誰ともほとんど挨拶を交わさない修司を見て、アッコは気に掛けたのだが、修司は他人事のように無頓着であった。

 

「ふぅ~。(何で学校ではこうなっちゃうんだろう……聖龍隊のみんなの前では、あんなにも活き活きと話していたのに)」

 聖龍隊では、ごく普通に会話できてた修司が何故学校では誰とも会話せず誰に対しても接触を拒んでいるのか、アッコは気にしていた。

 

 その時。急にクラス中の女子たちが騒ぎ始めた。

「きゃあ、キーオく~ん♡」「おはよう、キーオ様♡」

「フッ、おはよう女子の諸君」

 この前転校してきた姿桐男。通称キーオが登校して来たのだ。

「き、キーオ……♡」「おっ、おはよう浪花」

 キーオの周りに群がる女子の中にはモコの姿も有った。

「チッ、またキーオか」

「転校して来てから女子たちの人気が高いですからねぇ」

「少し、羨ましいっスね」

 女子たちの恰好の的に成りつつあるキーオを見て、大将達は不満だった。

「朝から騒がしいわね、修司」「あ……ま、まあな」

 それを見ていた修司とアッコは周りと違い普段通りに振る舞っていた。

 

 

 そして朝礼が済み、授業が始まった。

 

「……よし、加賀美。読んでみなさい」「はい」

 国語の授業。アッコは教師に言われ、朗読を始めた。

「その時、王は口を開いて旅人に問いた。『お前はいったい何のために旅を続ける。何のために危険な目に遭いながらも、必死に生きようとするのだ』すると旅人は答えました。『私には生きる為の目標が無いのだ。だからこそ、旅をしながら生きる為の目標を探し求めている。そして私は、その目標を探し当てるまで死ぬことはできないんだ』旅人の力強い言葉に、王は何も言い返せませんでした」

 

 

 

 

 そして体育の時間。今日は校庭で走り幅跳びのテストを行った。

 

「……よし、次」「はいっ」

 笛の合図で砂場に走り出す生徒たち。

 其処には男子組と女子組に分かれて整列して地面に座り込んでいる修司とアッコの姿も確認できる。

「……よし、次、小田原」「はい」

 担任の指示で立ち上がり、修司は軽くストレッチを行ってからラインに立った。

 

 笛が鳴ると同時に走り出す修司。そして砂場のライン手前で大きくジャンプした。

 無事に着地もでき、すぐさまメジャーを持った生徒がジャンプの幅を測った。

「ろ……6m40です!」「うおおぉ!」

 修司の出した記録を耳にして、男子生徒達はざわめいた。

「す、凄いな小田原。6m越えを記録するとは……」

 担任の言葉にも無反応を見せる修司。

「す、スゲエな小田原」「6m行っちまうなんて」

 他の男子生徒からの言葉に対しても修司は無愛想に彼等の横を通り過ぎる。

(……修司)

 誰に対しても無愛想な修司を、アッコは女子組に居ながらも見届けていた。

 

 そんな時、一部の男子生徒の会話をアッコは耳にした。

「なあ小田原の奴、やけに腕とか足に傷が付いていないか?」

「アイツの事だ、どっかで喧嘩でもしているんじゃねえの?」

「有り得るな。あの野郎、結構キレやすいし、俺も以前殴られそうになったもん」

「……」

 この会話を聞いて、アッコは少しムッとした。

 特に殴られそうになったと発言した男子は、以前アッコや修司の目の前で聖龍隊の事を悪く言って修司の怒りを買った男子だったからだ。

(何よ、体が傷だらけだからって勝手に喧嘩しているなんて決めつけないで欲しいわ。あの傷は、修司が特訓と言って青児さんや衛さんと鍛錬した時にできた傷だって言うのに……)

 

 実はアレ以来、修司は更に自分の肉体を強化したいと言って早見青児や地場衛等と特訓を行っていたのだ。

 その内容は激しく、修司は自身の体が傷だらけになるまで行っていた。

 

 

 

 

[聖女と武人の食事]

 

 そして午前中の授業が終わり、男子生徒のほとんどが楽しみにしているという給食の時間。

 

「さぁアッコ。一緒に食べましょう」「ええ」

 アッコはいつもの様に、親友のモコと机を並べて給食を食べようとしていた。

 そして修司はと言うと、一人っきりで給食を食べていた。

 

「……」

 アッコは一人で食事をしている修司を見て、何処か居た堪れなくなった。

「アッコ、何見てるの? ……あぁ、修司ね。相変わらず一人で食べているのね」

 モコもアッコ同様、一人で食事する修司を見詰めて言う。

 アッコは一人っきりになる事の多い修司を見て、とても放っておく事が出来ずにいた。

 するとアッコは居た堪れなくなって行動に移す。

「……モコごめん。私、修司と一緒に食べるわ」

 そう言うと、アッコは自分の机を修司の机の隣にまで移動させた。

「あ、アッコ……」

 モコは修司の隣に移動するアッコを見て何処か寂しげであった。

「修司、一緒に食べよう」「えっ……」

 突然自分の隣に来たアッコを見て、修司は驚いた。

 そして二人はそのまま、食事に入った。

 

「……」「はむ……うん、モグモグ……」

 口に食べ物を頬張り、可愛らしく食事をするアッコの顔をチラチラと見ながら修司も無言で食事を続けた。

 

 その時、アッコが突然修司に聞いて来た。

「モグ……あ、そうだ。ねぇ、修司」

「えっ、な、何だ?」

 不意に声を掛けてきたアッコに対し、修司はかなり驚いた。

「な、何だ、急に……」

 突然声を掛けられた緊張で、修司はアッコと視線を合わす事ができなかった。

「うん、あの後聖羅さんは無事に聖チャペルに戻れたのかなって?」

 アッコは以前再会したミスティーハニーこと葉月聖羅が、無事に学園に戻っているのか修司に訊ねた。

「あ、ああ。それは大丈夫だ。一応は学園も監視の対象になっているから万が一敵が攻めて来てもスグに察知できるし聖羅の方もなんとか学園生活を過ごせているみたいだしな」

「そう、それは良かったわ」

「それと、一応周りからの目も有るだろうし今のところはハニーと聖羅が実は姉妹だって事は伏せて置いている。まぁ、いつかは自分らから打ち明ける事だろうがな」

「そうね。まっ、ともかく無事に過ごしているみたいでホントに良かったわ」

「あ、ああ、そうだな」

 そして修司は食事を続けようとした。だが

「あっ、それと修司……」「むぐっ」

 思わず飲んでいた牛乳を吹き出しそうになる修司。

「あっ、大丈夫、修司?」「ふぐっ……あ、あぁ」

 話を続けようとするアッコに対し、修司は言った。

「な、なぁアッコ」「え、何?」

「そ、その……俺と話してくれるのは嬉しいんだけど、食事の時ぐらいゆっくり食べようぜ」

 申し訳なさそうにアッコに告げる修司。

「あ、ゴメン。遂お喋りしたくって……」

 そうして、二人は静かに食事に戻った。

 

(何でアッコは俺なんかと関わってくれるんだろう……今まで一緒に居てくれる連中なんて学校では居なかったのに……)

(いけないわ。いくら修司の事をもっと知りたいからって食事中にまでお話ししようとしちゃうなんて。焦りは禁物ね)

 

 この二人の様子を、離れた場所からキーオが眺めていた。

(……やはりな。上手く自分の感情を表に出せないのか……よし、こうなったら)

 

 

 

[昼休みの聖女と武人]

 

 そして給食が済み、昼休みに入った。

 修司は自分の席で一人思い更け、アッコはモコとお喋りしていた。

 

「……」

「……それでね、カン吉の奴ったら、また生意気言って……てアッコ。さっきから私の話聞いてる?」

「えっ……え、えぇ……」

 明らかに自分の話を耳に入れて無かったアッコを見て、モコが言った。

「……ねぇアッコ。いくら修司が気になるからって、私の話にも意識して欲しいわよ」

「も、モコ……ごめん」

「あ~あ、最近余計に修司に意識が行っちゃっているんだから」

「……」

 モコの言葉に、アッコは何も言い返せなかった。

 

 そんな時だった。

「失礼、お二人さん」

「あっ、あなたは……」

「き、キーオ……♡」

 突然二人に話しかけて来たキーオに、モコの方は目をキラキラ輝かせていた。

「あ、あの……何か用?」

 アッコが訊ねると、キーオは2枚の紙切れを差し出した。

「フッ、いやね。ちょうど此処に映画の招待券が二人分あるんだよ。良かったら加賀美あつこ、俺と一緒に行かねえか」

「えっ、わ、私と……」

「〔ガァーッン〕う、うそ……(ま、まさかアッコに気が有ったなんて……)」

 突然のキーオからの誘いに動揺するアッコ。

 アッコはふと修司の方を見たが、修司は何事もない素振りで変わらず席に座っていた。

「……」

「どうしたんだい、加賀美」

 アッコに言い寄るキーオ。するとアッコは素直に断った。

「あ、あの……ゴメンなさい。私は無理だから、どうか別の人に声かけてみて……ねっ」

 そうキーオに告げ、アッコは逃げるように教室から飛び出して行った。

 

「……ふぅ」

 溜息をつくキーオに、他の生徒達が声を掛けた。

「キーオ、アッコに声掛けても無駄だぜ」

「あいつ、修司にぞっこんだからよ」

「……そうなのかい?」

 キーオが訊ねると、更にヒソヒソ声が飛び交う。

「だけど勿体無いわよね。加賀美さんほどの美少女が、なんで小田原君なんかにしか興味が無いのか」

「まっ、修司の野郎を好いている時点で変わった女だけどな」

「ホントだぜ。あんな得体の知れないヤローを好いているなんてよ」

「まぁ、例の英雄集団を結成させた張本人だからな。本人自体が不気味だし」

 

 それを聞いていたモコは、内心複雑な心境であった。

(……アッコには悪いけど私も何だか修司のこと不気味だって思っちゃうのよね。でもアッコの信じている人を悪く思うのもアレだし……)

 

 

 

 一方アッコは、一人手洗い場で立ち尽くしていた。

 そして手洗い場の鏡を見ながら、思い更けた。

(何で、何で修司は私が声掛けられたっていうのに何事も無い様にしていられるの? ……私の事は気にしてないのかな……私、女の子として見られてないのかな)

 そしてアッコは、鏡で自分の容姿を確認した。

 

 小学生にしては平均的な身長。そして体型も然程悪くは無い。だが彼女はふと自分の胸元を見渡した。

「……やっぱり、少し小さいかな」

 アッコは自身のコンプレックスである胸の大きさを気にした。

「聖龍隊の人達って、結構胸が大きい人がいるからなぁ……修司もやっぱり男の子だし、胸の大きな人の方が良いのかしら……」

 修司は自分を異性としては見ていないのかと、アッコは思い悩んだ。

 

 

 

 

[帰り際での事件]

 

 そして学校が終わり、修司とアッコは一緒に下校していた時だった。

 

「……ね、ねぇ修司」「な、なんだ」

 突然自分に話しかけて来たアッコに、修司は聞き返した。

「あ、あのね。昼間、私がキーオに声を掛けられたの、知ってた?」

 すると修司は無表情で答えた。

「……ああ、映画に誘われたみたいだな」「!」

 アッコは驚いた。キーオに声を掛けられただけでなく、キーオの発言までも聞いていたと言うのに無反応で有った修司の言動に呆れかえった。

「な、何よ! 私が誘われたって言うのに、修司は何も言わないの?」

 すると修司は無愛想な表情のまま会話した。

「……お前が、何処の誰と一緒に居ようと、それはお前の自由だろ」

「! な、何よ……私がキーオと一緒に映画行っちゃっても、修司は気にしない訳……」

「い、いや……お、お前だって人付き合いが有るだろ? 俺は余り人の意見とかには口出ししたくないんだよ」

「そ、それじゃあ……私があのまま、キーオの誘いに乗っていたら、どうしてた?」

「いや……お前が選択した行動なら間違いは無いだろうし、お前がキーオと一緒に居たいんであればそれはそれで良いし……俺はお前の意思を尊重したいんだよ」

「し、修司……」

 暗い表情で語りあう二人。そして修司はこう言い放った。

「俺は……その人間の生き方が過ちで無い限り、その人間の人生には口を出したくないんだよ」

 これを聞いたアッコは。

「……そう。修司って、人の意思を尊重するタイプの人なのね」

 アッコの言葉に、修司は言い返した。

「……ああ。俺自身も、自分の生き方を尊重しながら過ごしているからな」

 この修司の言葉に、アッコは言い返した。

「……だったら私の生き方にも文句は言わない訳なのよね?」

「あ、ああ。その積りだ」

 するとアッコは修司に言いきった。

「それじゃあ、私はずっと修司と一緒に居たいわ。いえ、一緒に過ごしていきたい!」

「あ、アッコ……!」

「私、もっと修司の事を理解したい。もっと修司と話したり、騒いだり……修司の笑顔を見ていたいの!」

「……アッコ」修司は内心、とても嬉しかった。

 

 今まで自分を理解しようとしてくれた者は居なかった。

 

 今まで自分と話をしようとする者など居なかった。

 

 今まで……自分の笑顔を見たいと名乗り出る者など、皆無であった。

 

 生まれてこの方、親ですら自分と関わるのを恐れ、周りからも拒絶されて来た修司にとって、もはや加賀美あつこは掛替えの無い存在になりつつあった。

 

 

 

 その時であった、スグ近くで消防車のサイレンが聞こえて来た。

「え? ま、まさか火事?」

「行ってみるぞアッコ」

 二人は急ぎ、サイレンの聞こえる場所まで走っていった。

 

 消防車が止まっていた所は、狭い路地の横に建っている木造建てのアパートだった。

 既に其処には大勢の野次馬でごった返していた。

「す、凄い家事……し、修司……」

 徐に修司に聞くアッコ。

「い、いや……あくまで消火の役割は消防士が専門だ。英雄が行うのは、あくまで補助的な活動だけだ」

 二人が会話している、その時であった。

「あ、赤ちゃん……わたしの赤ちゃんが!」

「ダメです、危ないですって…」

 燃え盛るアパートの前で、一人の主婦が警官に抑えられてた。

「ど、どうしたんだろう」「……」

 アッコと修司が注目する中、主婦は混乱しながら叫んだ。

「私の赤ちゃんが、まだ中に居るんです!」

「えっ?」「!」

 アッコと修司は主婦の発言に驚いた。

「お、おい。他の隊員はどうしたんだ!?」

 現場を指揮していた消防隊員が叫ぶ。

「そ、それが、まだ到着していなくて」

「この辺の地区は道幅が狭くて、我々以外の消防隊は到着していないんです」

「困ったぞ。我々だけでは消火活動だけで精一杯なのに……」

 思わず困り顔になる消防隊。

 

「あ、赤ちゃんがーー……」

 そして泣き崩れる主婦を見てアッコと修司は決断した。

「……し、修司!」「……ああ、行くぞ」

 二人は人目を避け、路地裏に駆け込んだ。其処で修司は鬼の面を取り出し、アッコはコンパクトを手に持った。

 そして二人は呟くように言い放った。

「武装!」「テクマクマヤコン」

 

 

 

 

 

[初めての英雄行為]

 

 激しく燃え盛るアパートを見て、主婦は変わらず我が子の身を心配し、涙を流していた。

 

「私の、私の赤ちゃんが……あああぁぁ」

 泣きじゃくる主婦に何も話しかけれず、辺りに重い空気が流れた。

 

 正にその時

「皆の集! 遅れてしまい、申し訳ないぞ!」

「え?」「そ、その声は!?」

「お母さん、今すぐ赤ちゃんを助けてあげますよ!」

「え? だ、誰なの……」

「聖龍使い、いざ見参!」

「愛と希望を聖なる鏡で護り抜く! 奇跡の乙女ミラーガール! 只今参上」

「せ、聖龍使いだ!」

「と、隣の女の子は、い、一体誰だ?」

「見たこと無い子だな」

 

 台詞を言い放ち、二人は泣き崩れている主婦に駆け寄った。

「御婦人、そなたの赤子はどの部屋の居るのでござるか!?」

 主婦に子供が何処の部屋に居るか訊ねる聖龍使い。すると主婦は泣きながら答えた。

「あ、あの、その……あ、あの部屋です」

 主婦は震える指で、部屋の方を指した。

「うむ、あの部屋でござるな。スグに助け出そう」

 聖龍使いが言うとミラーガールが名乗り出す。

「せ、聖龍使い。私に任せて「な、なぬ?」

 突然自分が行くと名乗り出るミラーガールの発言に驚く聖龍使い。

 するとミラーガールは更に告げた。

「私なら大丈夫だから。お願い、私を行かせて聖龍使い」

「……」何も言わない聖龍使い。

「お願い、私を信じて……!」

 ミラーガールの力強い眼差しに、聖龍使いは……

「……分かった、ただし十分に気を付けるのじゃぞ」「ええ」

 そしてミラーガールは単身、燃え盛るアパートに突っ込んで行った。

 

(み、ミラーガール……)

 ミラーガールを心配しながらも、聖龍使いは消防隊と共に消火活動を始めた。

 

 

 そして炎に身を投じたミラーガールは。

「くっ、な、何とかミラー・ドーム・バリアーで身を護っているとは言え、さすがに熱いわ……」

 炎の中を彷徨いながら、ミラーガールは何とか幼児を探しまわった。

 そんな時「ぎゃあぁ、んぎゃあぁ……」

 何処からか子供の泣き声が聞こえて来た。

「あ、この声は……!」

 ミラーガールは急ぎ、泣き声のする方に歩み寄った。

 そして布団の上で泣き叫ぶ幼児を発見した。

「も、もう大丈夫よ。スグにお母さんの所に連れて行ってあげるわね……」

 幼児を抱き抱え、その場を離れようとするミラーガール。

 

 だが、その時であった。

「う、うわっ」

 突如、天井が落下して来たのであった。

 外でも屋根が崩れ落ちていくのが確認できた。

「あ、赤ちゃぁぁん!」「! み、ミラーガール……」

 主婦も聖龍使いも愕然とする。

 崩れ落ちていくアパートを見て、その場の全員が二人の安否を気にした。

 

「……ぎゃあ、ぎゃあぁ……」

 崩れていくアパートから、赤子の声が聞こえて来た。

 

「……え?」「え、え?」「あ、ああぁ……」

「お、おおぉ……」

 消防士達は目を丸くして驚き、主婦は目に涙を溜めて歓喜した。 

 そして聖龍使いは目の前の光景に驚愕した。

 

 炎の中から、輝くドーム状のバリアーに包まれたミラーガールが幼児を抱いて姿を現す。

「あ、赤ちゃん……私の赤ちゃん!」

 母親がミラーガールに駆け寄る。

「大丈夫です。赤ちゃんは無事です」

 そう囁きながら、ミラーガールは幼児を母親に抱かせた。

 

「あ、赤ちゃん……あ、ありがとうございます、ありがとうございます……」

 母親は涙を流しながらミラーガールに礼を述べた。

(良かった。私にも、まだまだ人を救える事ができるんだ)

 母親の安堵した表情を見て、ミラーガールは歓喜した。

 

「……よし、拙者等の役目はこれで終わり申したな。後は本職の消防隊の方々にお任せすると致そうか」

「は、はい!」

「後は我々が頑張ります!子供の救出活動、誠にありがとうございます!」

「よし、我等はこれにてゴメン! 行くぞ、ミラーガール」

「は、はい!」

 そう観衆に言い残し、聖龍使いとミラーガールは去っていった。

 

「……さ、さすがだな。聖龍使いは」

「そ、それに、あのミラーガールって子も凄いな……」

「初めてみるけど、あの子も聖龍隊なのかな?」

「どちらにしろ良かった。死人が出なくて…」

 去って行く二人を、消防隊や野次馬の人達は見続けていた。

 

 だが、この時集まっていた野次馬の中にキーオが紛れていた事に、聖龍使いもミラーガールも気付いていなかった。

 

 

 

 

[人の笑顔]

 

 そして火事現場から少し離れた所で人目を避けて変身を解除した二人は再度、帰路に着いた。

 

「ふぅ~、何とか無事に助け出せてよかったな」

「うん。赤ちゃんのお母さんも喜んでいたしね」

 二人は変身を解くと、スグに普通の小学生として帰宅した。

「な、なぁアッコ。今日が初めて公の場での活動だったけど、どうだ?」

 訊ねてみるとアッコは。

「う、うん。屋根が崩れて来た時は、さすがに怖かったけど赤ちゃんだけでもって思ったらバリアーが出て来てくれたから良かったけど……」

 この発言に、修司が問うた。

「お、おいアッコ。子供はもちろんだが、自分の身は護ろうとは思わなかった訳か?」

「あ、ああ。それはもちろん自分の体も大事だけど、まずは赤ちゃんの人命を優先しなきゃいけないのが同然じゃない?」

「あ……」

 唖然とする修司にアッコは続けて言った。

「あの時はどうしても自分が行ってどうにか助け出したいって思ったから炎の中に飛び込んで行っちゃったのよ。お母さんのあんな泣き顔見たら、放っておけなくて……」

 

 自分の手で人を救い出したい。アッコのその思いに、修司は凄く共感できた。

「なぁアッコ」「ん? なに?」

「そのな……確かに英雄の活動って命がけだって事は、前にも言ったと思うけどな。それと同時に、英雄ってのは自分自身の命も大事にしなきゃいけないものなんだぜ」

「え? そ、そうなの?」

「当たり前だろ。自分の命を大事にしない輩が他人の命を救えるかよ。……それにな、アッコ」

 次の瞬間、修司はとんでもない事を言った。

「お前は……お前には自分を思ってくれる家族や親友がいる。お前に何か遭ったら、そんな人達が悲しむんだぞ。俺みたいな天涯孤独の男ならともかく、お前の様な温もり有る女が早死にするなんて、悲劇以外の何物でもない」

「! し、修司、今、何て……」

 修司の発言にアッコは驚いた。

 

 修司が自分の事を《温もり有る女》と言ってくれた事もそうだが、何より修司が自分の事を《天涯孤独》と名乗ったのが、アッコにとっては一番の衝撃だった。

 

「し、修司……貴方、本当に自分が孤独だと、一人ぼっちだって、そう思っている訳……」

「……」

 アッコに問われ、何も言わなくなる修司。

「……修司。前々から言おうと思っていたんだけど修司が孤独だって感じるのは、余り周りの人に心を開いてそして信じる事ができない。だから周りの人も、修司を信じてあげる事ができず、結局は修司が独りだって感じちゃうんじゃないのかしら……」

 アッコの発言に、修司は冷めた顔で言い返した。

「……言われなくても分かっている。だが俺が人を、そして親ですら信用する事ができないのは生れ付きの性分なんだ。この先、例えどんな出会いや別れ、人生を歩んで行こうと、俺の心の闇が晴れる事は無いんだよ」

「……」

「……俺は、信頼も、愛情も、それらを全く感じる事ができない、そんな人間なんだよ」

 気付くと修司の目は、まるで死んだように生気のない目をしていた。

「……修司……安心して」「…え?」

 突然《安心して》と言うアッコに、修司は驚いた。

「例え、修司がどんなに孤独に感じても、どんなに辛い思いになってしまっても、私が、いいえ、私や聖龍隊のみんなが側に着いている! だから、そんなに悲観的にならないで……」

「……アッコ」

「どんなに孤独だって感じても、結局それはただの錯覚なのよ。だってこの世に生まれて、一人ぼっちなんて有る訳ないもの」

「こ、孤独が……錯覚」

「そうよ。でなきゃ単なる幻よ。だから安心して修司。例え修司がどんなに孤独に陥っても、私だけは絶対、修司を見捨てないから」

「!」

 笑顔で自分に優しく語るアッコに、修司は驚愕すると同時に、心の底から感極まった。

「……だから修司。前にも言ったけど、ちゃんと自分から笑顔にならなきゃ周りの人たちも笑ってくれないわよ?

私は修司の笑顔、大好きなんだから♡」

「う、うん……」

 思わず顔を赤くした修司を見て、アッコは微笑んだ。

 

「修司だって人の笑顔が見たいから頑張って聖龍使いやっているんでしょ? だったらまず修司自身が笑顔になれるよう頑張らないと…ね」

 そう語りながら、アッコは修司にウィンクを贈る。

「アッコ……」

 しかしこの時、修司はとても複雑な心境だった。

 

(アッコ、俺はお前やみんなとは違うんだよ。夢や理想から生まれた二次元人とは違い、俺ら三次元人は汚れた存在なんだ。そんな俺が、お前達みたいになれる訳が無いんだよ……)

 

 自分たち三次元人は、己には無い優しさや希望そして願いといった思想概念を基に二次元人を生みだしている。

 

 そんな三次元人の自分が二次元人と同じように愛や信頼を感じる事など出来やしないと修司は思っていたのであった。

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