【聖龍伝説】始まる伝説   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 今回は主人公の暗い思想を公にします。そしてヒロインの出した決断とは


アニメタウンの英雄達 業を背負いし武人

[死者への手向け]

 

 パンサーハニーとの死闘から、早一月は過ぎた。

 とある西洋墓地。此処にはパンサーハニーによって死んだ如月猛博士の墓地が在る。

 

 何かと多忙な聖龍隊の面々は、やっと如月博士の墓前に出向く事ができた。

 

「……お父様。今日は聖龍隊のみんなが来てくれたわよ」

 父である如月博士の墓前で、如月ハニーは手を合わせる。

「……お父様、ゴメンなさい」

 妹の聖羅も、自分を庇い死んでしまった父に対して酷く悔いていた。

 皆それぞれ喪服に身を包み、暗い顔立ちで一人一人如月博士の墓前に手を合わせていった。

 そして最後には総長である小田原修司と新人の加賀美あつこが墓前に向かい手を合わせる。

 その際、小田原修司は白ユリの花束を墓前に供えた。

「……修司、その花」

 アッコが修司に訊ねると、修司は険しい面持ちで答える。

「……ああ、白ユリだ」「白、ユリ……」

「日本では、死者の魂を癒し清浄してくれると云われている」

「………………」

「博士はもちろん、俺も日本人だからな。日本人らしい弔いの仕方をしてやりたいんだよ」

 そう言いながら、修司は何処か虚しさに満ちた表情で如月博士のお墓を見つめた。

 

 そして聖龍隊を始めとした関係者一同は、墓参りを済ませ墓地敷地内から出ようとしていた。

 

「……あ、あの、みんな」

「ん?」「どうした、ハニー」

 出入り口手前でハニーに呼び止められ、変身怪獣と青児が返事する。

「ど、どうしたんですか? ハニーさん……」

 アッコがハニーに訊き返すと、ハニーは少し悲愴な顔立ちで言った。

「……みんな、今日は本当にありがとう。お父様も草葉の陰で喜んでくれているわ」

「ええ。ほんとにありがとう……」

 聖羅もハニーに続いて礼を述べる。

 

 すると、修司がハニー姉妹に言った。

「何言ってやがる。俺たちゃ当然のことをしたまでだ」

「え?」「……」

 そして修司は神妙な顔で二人に打ち明ける。

 

「仲間にとって大切な存在だったのなら生きている時だけでなく死んだ後も丁重に扱ってやるのが当然だろ?」

「「………………」」

「同じ聖龍隊の仲間はもちろん、仲間の家族、仲間の友……それ等すべてが俺にとっては守るべき対象だからな」

 そう言い残し、修司は一足早くその場から立ち去った。その顔には、少しばかり懺悔と自責の念が籠っていた。

 

 そして、変身怪獣の呟きを切っ掛けに、皆喋り出した。

「……あいつ、いつも以上に何か思いつめている顔だったな」

「え、ええ……」

 ウッズも変身怪獣の問いに複雑な面立ちで答える。

「……確かにな。修司の奴、最近余計に無愛想になったと言うか何というか……」

「うん。何だか余計暗くなった様な……」

 衛・うさぎも顔を見つめながら修司の事を話す。

「やっぱり、未だに気にしているのかな……」「え?」

 レイの発言に多少驚く美奈子。

「うん、如月さんが死んでしまってから余計に荒々しく戦うようになっちゃっているし……」

「修司君、ああ見えてとても繊細な子だから……」

 まことも亜美も更に暗くなった修司を心配する。

「うん……何だか自分を責めてしまっているみたいな」

「ああ……でも修司さんが悪い訳でもないのに……」

「だけど、彼は彼なりに責任を感じてしまっているんだよ」

 己の責任感で自分自身を苦しめてしまっていると、そう感じ取っているりりかに星夜、そしてデューイの三人。

「自分ばっかり責めてる気がするんだけどな……」

 さくらも自分を苦しめてばかりの修司を気にしていた。

「ホントです」「悔む気持ちは分かるけど……」

「あの人、何気に責任感が強いからな……」

 知世、苺鈴、小狼も暗欝な表情で話しあう。

「そもそも、修司はやたらと自分自身を責めちまう傾向が有るからなぁ」

 ケルベロスも一人で思い詰める修司に対してつぶやく。

「まるで、全ての責は自分にあるかのように、自分自身を咎めている……」

「そうだね。死んだ人の事を悲しんであげるのは素晴らしい事だけど……」

「全部自分の責任みたく感じちまうなんて……修司さんは律儀すぎるよ」

 イサミ・ソウシ・トシ等も自身を咎める修司を気にする。

 

 そしてウェルズも、修司の状況を述べた。

「あのままじゃ、修司の奴、精神的に参っちまうぞ」

「し、修司……」

 

 アッコは自分自身を責めてばかりいる修司の事を、とても心配していた。

 

 

 

 

 

[激しさを増す特訓]

 

 それから数日後。

 地下の訓練場で修司はデューイとミスティーハニーにお願いして、剣術を用いた特訓をして欲しいと頼み込んだ。

 

「……二人とも。本気でかかって来てくれよ。手加減無しで……な」

 鋭い眼つきで二人を睨みつけながら、修司は言う。

「だ、だけど修司……」

「ほ、本気なの? そのままの姿で私たちと戦うなんて……!」

 何と修司は聖龍使いにならず、そのままの姿で、しかも聖龍剣一本で稽古を付けたいと言って来たのだ。

「ああ、俺も本気で行くから、お前達も本気で俺を攻撃して来てくれ。あっ、ただし剣術だけでお願いな。特殊能力で攻められちゃ、いくら何でもヤベエから」

「「う、うん……」」

「よし……じゃ、行くぞ!」

 その瞬間、修司は一気に二人に斬り込んで行った。

「うわっ!」「ひぃっっ」

 容赦なく二人を斬りつけようとする修司。

「どうしたどうした! それじゃ折角の美顔に傷が付いちまうぞ!!」

 本気で斬りかかろうとする修司に二人は追い詰められる。

「くっ、このままじゃ……ミスティーハニー、此方も全力で立ち向かわなきゃホントに遣られちゃうよ!」

「で、でも良いの? 彼は鎧を着ていない生身の状態なのよ!」

「だ、だけどこのままじゃ……!」

 変身していない修司に躊躇う二人だが、その時。

 二人の間を修司が瞬時に横切ると、それと同時に二人の頬に切り傷ができた。

「……え?」「え、え?」

 驚くデューイとミスティーハニーに対し、修司は吐き捨てた。

「どうしたんだお二人さん。悪いが俺はもう本気でテメエ等を斬りたくなっちまったよ。死んじまったら……ゴメンな」

 殺意に満ちた表情の修司を見て、二人は覚悟を決めた。

「く、くそ…こうなったらヤケクソだ!」

「此方も本気で行きます!」

 遂に本気で修司と遣り合う決意をした二人に対し、修司は怪しく微笑みながら言い放った。

「うははは! それで良いのだ同胞よ、本気で俺に斬りかかって来やがれ!!」

 そしてデューイとミスティーハニーは、二人掛かりで修司に向かって行った。

 

 

 

 

 それから3時間後。治療室で三人は治療を受けていた。

 

「……うぐっ、もう少し優しくお願いしますよ、ウッズさん」

「あっ、すいません……」

 デューイの斬られた個所に、ウッズが包帯を巻いて処置を施していた。

 

「あっ……い、痛い……」

 聖羅も修司と激しい斬り合いをして、体の至る個所に切り傷ができていた。

 そんな時、デューイがウッズに訊ねた

「……そう言えば、ウッズさん」

「はい、何でしょうか、デューイさん」

「……僕等が聖龍隊に入って大分日が経つけど、いったい修司は何者なんだい?」

「え? それはいったい、どういう事で……」

 ウッズが聞き返すと、デューイは真顔で言う。

「以前から感じていたんだけど修司はまるで僕等とは違う存在の様な気がしてならないんだよ」

「! え、そ、それはいったい……」

 内心驚くウッズにデューイは続けて問う。

「い、いやね……何か修司からは僕等とは違う様な、そういった存在感が感じられるんだよ」

「ち、違う存在……ですか……(や、やはり、修司様が次元の違う世界から来た事を感じているのか……)」

 デューイの発言に驚いているウッズに、今度は聖羅が訊ねて来た。

「そう言えばウッズさん。修司君はどうしたの? いの一番に治療受けてもらったのに、もう姿が見えないわ」

「ああ、修司様なら今度は格闘技用の競技ルームで青児さんと衛さんを相手に武術の特訓をするそうで」

「ええ!?」「う、ウソでしょ?」

 二人は驚きを隠せなかった。

 先ほどまで自分達と激しく剣の特訓をしていたのにも拘らず、もう動き回れる修司に。

 

 

 

 一方、その頃の修司は衛と青児等と格闘術で取っ組みあっていた。

「うおおぉ!」

 青児が修司に向かって行くと、修司はすかさず反撃する。

「ていやあぁ!」

 すぐさま修司は青児の懐に入り込み、思いっきり投げ飛ばした。

「ぐはぁっっ」

 青児は床に激しく落下した。

「次は俺だ! 行くぞ修司!」「オウ! いつでも気やがれ!」

 そして衛も修司に突っ込んで行った。

「まだまだ甘ーーい!!」

 修司は厳つい顔で衛を睨みつけ、そのまま衛の胸ぐらを掴んだ。

「うおっ?」

 そして修司は胸ぐらを掴んだまま、一本背負いで衛を投げ飛ばした。

「うぐっ……」

 床に叩きつけられた衛は、激しい痛みも有って、中々起き上がる事ができなかった。

「オイオイ、どうした二人とも。小学生で、しかも三枚目の男に良い様に遣られっ放しだなんて恥ずかしくないのか?」

 呆れ顔の修司に挑発され、衛と青児は更に闘志を燃やした。

「い、言ってくれたな……」「ま、まだまだイケるぜ……」

「よし、それじゃ今度は殴り合いで遣りますか。言っておくが、俺は拳も鍛えているから、かなり固い拳を喰らっちまうぜ」

 挑発する修司に青児・衛は俄然闘志を湧かせる。

「上等だぜ」「年上を舐めない方が良いぜ……」

「……フッ、それじゃ行くぜ!」

 三人は一気に駆け寄り、そして激しくぶつかり合った。

 

 

 

 

 

[自らを追い詰める]

 

 稽古が終わり、修司はメインフロアで寛いでいた。その時、アッコが修司に歩み寄って来た。

「修司、お疲れ様。はい、スポーツドリンク」

「おう、サンキュー」

 修司はアッコにドリンクを手渡され、それを一気に飲み干した。

「て、修司。もう少しゆっくり飲んだら?」

「うぐ……ぷは~っ、いやぁ、体動かした後に冷たいもの飲むと、一気に飲み干しちまって」

「……それに、何だか風呂上がりの父親みたいに飲み干すわね」

「え? そうか?」

「ええ。やっぱり他のみんなが言うように、修司って同年代とは思えない様な言動するわね」

「ああ、全くだよな」「あっ、変身怪獣」

 アッコと修司の会話に変身怪獣も割り込んできた。

「修司って何気にオッサン臭い事言うから驚きだよな。アッコもそう思うだろ?」

「ま、まぁ。確かにそうかもね」

 変身怪獣に指摘されてしまい、アッコも修司を気にしながらも口にしてしまった。

「まっ、そうかもしれないな。俺って昔から、こんな感じなもんで」

 しかし修司の方は全く気にしてはいなかった。

 

 三人が会話している時、地下通路からデューイに聖羅、それとウッズに先ほどまで修司と組み合っていた早見青児と地場衛がやって来た。

「あ、修司。此処に居たのかい?」

「よく動けるわね。あんなに激しく斬り合ったって云うのに……」

 デューイと聖羅の話に、アッコは驚いた。

「えっ? し、修司がお二人と斬り合ったって……」

「ああ。ちょっと二人を相手に特訓していてな……結構いい運動になったぜ」

 この修司の発言に、今度はデューイ達が言い返した。

「な、何言ってるんだ? こっちは本気で斬りかかって来たから大変だったよ」

「ホント。修司君、本気で私達を斬りつけようとするんだから」

「なに言ってやがる。こっちは最初っから本気で行くと言った筈だぞ。だったらお前等も最初っから全力で戦えば……」

「な、何言うの。変身していない状態の修司君相手に本気で戦える訳ないでしょ?」

 この聖羅の発言に、アッコは更に目を丸くして驚いた。

 「し、修司! そ、そのままの状態で二人と戦った訳!?」

 すると修司は真顔で言いきった。

「ああ。だって英雄の時の状態でなく、通常の状態で体を鍛えた方が遥かに良いだろ?」

「そんなもんか?」

 思わず変身怪獣も訊ねる。

「そうだとも。通常の状態で鍛えれば基本的な肉体の強化に繋がり其処に英雄に変身した時のパワーや肉体強化の影響がプラスされるからな」

「だ、だけど、あそこまでやらなくても良いんじゃ……」

 デューイの発言に対し修司は言い返した。

「何言ってる。やるなら徹底的にやらねえと」

 其処に青児と衛も会話に入って来た。

「しかし修司。お前格闘技だけでも結構戦えるじゃねえか」

「あ、ああ。正直、聖龍使いに変身しなくても、充分に戦える様な気が……」

 腰に手を当てながら修司に言う衛。

「まあな。例えば、聖龍使いに訳有って変身できない状況になっても充分に敵と立ち向かえるようにしておかないと」

そんな会話を聞いて、アッコが修司に訊ねた。

「ね、ねぇ修司。貴方、そんなに無理して大丈夫?」

 すると修司は言い返す。

「なに、多少無理をしないと、英雄なんてやっていられねえからな」

「し、修司……」

 さらに、修司はアッコや周りの者たちに言い放った。

「自分自身を極限まで追い詰めて鍛えないと、人間ってのは簡単には成長できないからな」

 この時の修司の顔は、とても悲しく、そして凛々しい顔立ちであった。

「し、修司……」

 そうアッコたち皆に言い残した修司はエレベーターで上の階に行ってしまう。

「……あの人は、修司様はあんな人なんですよ」「へ?」

 唖然とするアッコ達に突如、ウッズが口を開いた。

「お、おい、ウッズ。それは……」「それって、どう言う事?」

 変身怪獣とアッコが訊ねると、ウッズは思いつめた顔で言った。

「修司様は、常に自分に何かしらの責任を感じてしまうんです。いつも自分自身を追い詰めながら生きて来て……そんな御方なのです」

「……修司」

 

 アッコは内心、とても息苦しい心境であった。

 

 

 

 

[常に悔むは]

 

 そして修司は自室にて寛いでいた。

 だが、徐にポケットから写真入れを取り出し、それを本開きにした状態で机の上に置いた。

 そして写真に向かい、手を組み静かに拝んだ。

 

 そんな時。

「修司君、ちょっと良い?」

 いきなり聖羅が部屋に入って来た。

「て、うわっ! せ、聖羅……」

 部屋に入って来た聖羅に驚く修司。

「……? 何を拝んでいるの?」「い、いや、何でもない」

 修司は慌てて机の上の写真入れをポケットにしまい込んだ。

「なに? 何を隠した訳? まさかアッコちゃん以外の女の子の写真でも拝んでたんじゃないでしょうね?」

 この発言に対し、修司は困惑しながら反論する。

「ば、バカ言うな! そんなんじゃ無えよ!」

 慌ててポケットに写真入れを仕舞おうとする修司を見て、聖羅は怪しく感じた。

「何隠したの? ちょっと見せなさい」「ああ、止めろっ」

 そして二人が揉み合う内に、写真入れが床に落ちた。

「さぁ、誰の写真を拝んでいたのかし……ら……! し、修司君! こ、これは……!」

 写真を見た途端、聖羅の顔は急変した。

 その写真には、何と死んでしまった自分の父、如月博士の姿が映っていた。

「し、修司君。な、何故、お父様の写真を……」

 動揺しながらも聖羅は訊ねると修司は答える。

「……忘れないようにする為さ」

「……え?」

「忘れちゃいけないからさ。俺が護り切れなかった人を、命を決して忘れず常に後悔しながらも重い業として背負い続けながら、もう同じ悲劇は繰り返さないようにする為に忘れちゃいけないんだ!」

「し、修司君……!」

 険しい顔で言い放つ修司に、聖羅は一瞬怯んだ。そんな聖羅を前に、修司は続けて胸の内を明かした。

「……俺はまだまだ弱い。救うべき人を救うには、もっと力が必要だ。そりゃ、人の力には限界が有る。故に手の及ばない現実が有るのもちゃんと分かっている。……だけど俺は、例え自分の身勝手な思想であっても、いや例えエゴであろうとも救える命や存在は己が力が及ぶ限り、そして手の届く限界までも弱い立場の者に手を差し伸べて行きたいんだ!」

「!! し、修司君……!」

 修司の高い理想概念に、聖羅は驚愕した。

 そして修司は、最後に聖羅に告げる。

「聖羅。人ってのは《死ぬ瞬間》が2度あると言う」

「に、2度……」

「そうだ。1度目は肉体が消滅する事で死ぬ、基本的な死。そして2度目は、生きている人間の記憶から死んだ者の記憶が消えてしまう……云わば《存在の死だ》」

「そ、存在の、死……」

「そうだ。生きている人、残された遺族たちに覚えてもらっている以上、死んだ者に2度目の死が訪れる事は無い」

「………………」

「これは何時の時代でも同じことだが、本当に死んだ人を弔いたいのであれば、その死んだ人を決して忘れず、心の中で《思い出》やそれに近い《記憶》として生かし続ける! これが本当の供養だと、俺は思っている!」

 力強い眼差しで語る修司の瞳を見て、聖羅は泣き崩れながら話しだした。

「……修司君。貴方は……貴方は優しすぎるわ」

「……なに?」

「貴方は何時もそう。何に対しても真面目過ぎて、そして優しくて……だから貴方は、気付かない内に多くのものを、他人が背負う苦しみや悲しみまでも、自ら背負ってしまう……」

「………………」

 水晶の様な綺麗な涙を流しながら、聖羅は修司に話し続けた。

 そんな聖羅を見て、修司は告げる。

「……聖羅。お前はやっぱり人だ」

「え?」

「お前は、そんな綺麗な涙を流す事ができる。その涙を流す事のできる優しい心を持っている。……そんなお前が、例え人でない種であろうと俺から見れば人間以上の人間だ」

「し、修司君……」

 泣き崩れる聖羅を見つめながら、修司は告げる。

「…俺は、ときどき思う。お前や、お前の姉さん。そして聖龍隊の仲間の様に、誰かを思い、そして誰かの為に涙を流せる……俺は何時か、そんな人間になりたい」

「し、修司君……で、でも、貴方だって涙を流し、そして誰かを思いやる事は出来る筈でしょ? この前うさぎちゃん達から聞いたわ。貴方は、目の前でうさぎちゃん達やりりかちゃん達が敵に遣られている時そんな現状を目の当りにしながらも、バリアーを張られていたが為に何もできずに嘆きそして涙を流したって聞いているわ……」

 聖羅の発言を聞き、修司は何とも言えない悲しい表情で言い返した。

「……それは違う、違うんだよ聖羅。俺があの時泣いたのは、仲間が傷付き苦しんでいるから泣いていた訳じゃない。あの時は自分の……何もできずに見る事しかできない自分の無力さに嘆いていたんだ!」

「! し、修司君……!」

「俺は仲間を傷付ける奴が絶対に許せねえ! だが、それ以上に何も護れない自分の弱さが最も許せねえんだ!!」

「修司君……貴方は……!」

 悲観しながら聖羅は修司を静観する。

「俺は……もっと強くなりたい。もっと人の身を、そして仲間を護れる存在に成り上がりたい!」

「う……ウウゥ……!」

 修司の力強くも悲しみに満ちた思いを聞き、聖羅は再び涙を流した。

 

 この時。死角になっている壁際に張り付く様に立ち尽くしたアッコが聖羅が閉め忘れて開きっぱなしになっている戸から漏れている二人の会話を黙って聞いていた。

「……修司……」

 彼女は懺悔と悲痛に満ちた修司の真意を知り、どんなに修司が思い悩んでいたか、ようやく分かった。

 そして彼女は新たに思った。

(……そうよ。街の人を護る前に、まだ身近に救ってあげなきゃいけない人がいる! 助けてあげたい人が、側に居る!)

 

 魔鏡聖女ミラーガールこと加賀美あつこ。

 聖龍隊に入ってから、初めての決意であった。

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