■それと新参入キャラが少しドジな面があります。
[曇りのち……]
それは今にも雨が降り出しそうな曇り空の日の午後。
修司はこの日、学校から帰るとスグに書類等の市長の仕事に手を付けた。
そして修司が一人、書類を作成している時だった。部屋のドアを叩く音がした。
「どうぞ」
修司が言うと、ドアを開けてウッズが入って来た。
「修司様、お仕事ご苦労様です。お茶をお持ちいたしました」
部屋に入って来たウッズは緑茶を注いだ湯呑みを盆に乗せて持って来た。
「おお、ありがとなウッズ」
修司はウッズに礼を言い、ウッズは仕事机の上に湯呑みを置いた。
「いえいえ。ところで修司様、お仕事の方は進んでいますか?」
ウッズが訊ねると、修司は答える。
「ああ、少しはな。だが、ちびうさやミミナの戸籍や住民登録証を新たに作ったりして改ざんする羽目になるとはなぁ……」
この時修司は、突如うさぎや衛達の前に現れたちびうさと言う少女。更にはクイーン・アースに帰還した加納望と入れ替わる様にやって来たミミナ。二人の戸籍や住民登録証等の書類を作成及び、改ざんしていた。
「ふぅ~、まさか未来から来た少女と他の星から来た子の書類改ざんまでしなきゃならないとはな……」
修司が溜息を吐きながら呟くと、ウッズが言った。
「しかし修司様。彼女達が今後もちゃんと生活できるように支援するのも市長として、そして手塚先生やウォールト氏の期待に答える為にも必要な仕事なんですよ」
ウッズは修司を2次元界に来させてくれた手塚治虫やウォールト・ディズニーへの期待に答える様にと、修司に言った。
「わ、分かっているさ……」
そう答えながら、修司は茶を少し口に含んだ。
「それに修司様。もし修司様以外の方が市長で在って彼女達の出生記録や戸籍が無い事に気づいてしまい、ちびうさちゃんやミミナちゃんに対して疑心の眼差し等が向けられてしまったらそれこそ一大事ではないですか。この先、彼女達が安心して暮らせるように取り計らってあげるのも大事な御勤めなのでは、ありませんか?」
「ま、まあな……」
ウッズに言われ、呟く様に返答した修司は更にお茶を口に含んだ。
その時だった。市長の仕事机の隅っこに設置されているアラームが点滅し鳴り響いた。
修司はすぐさまアラームの通信ボタンを押し、話しだした。
「どうした、何か事件が発生したのか!?」
修司が問いだすと、答えたのは警察の署長であった。
「し、市長! 大変です、中央区の総合デパートで怪人等の襲撃事件が発生しました! スグに聖龍隊の出動をお願いします! わ、我々では怪人達に対抗できません!」
署長の必死の叫びに、修司は答えた。
「分かった、スグに聖龍隊の面々に呼び掛ける。警察関係者は付近の一般人の避難を誘導してくれ!」
「りょ、了解しました!」
そして修司は通信を切ると、すぐさま立ち上がりウッズに発した。
「ウッズ、すぐさま現場に来れるだけの隊員達を招集してくれ! 俺は今すぐ現場に行ってくる」
するとウッズは動揺しながら修司に言った。
「じ、実は修司様。で、デパートには……」
震える口調で話すウッズに修司は訊ねた。
「ど、どうしたんだ? な、何か不都合でもあるのか…?」
するとウッズは途轍もない内容の発言を述べる。
「じ、実は本日デパートに一緒に買い物をしてくるとアッコさんから連絡が来ているんです……!」
このウッズの発言に、修司は一驚する。
「な、なんだと! い、一緒にって……だ、誰と一緒にデパートに行っているんだアッコは!?」
動揺する修司に、ウッズは答えた。
「は、はい。それが最近やって来たちびうさちゃんとミミナちゃんの二人と一緒にデパートに行ってくると、先ほど連絡をくれたんですよ」
「うっ……! ウッズ、俺は一足先に向かっている。他の面々にも伝えてくれ!」
そして修司はそのまま部屋を飛び出していった。
それを見たウッズは修司の慌てぶりに驚きながらも、すぐさま通信で他のメンバーの招集を掛けた。
[デパートでの共闘]
その頃デパートでは、怪人率いる強盗襲撃事件の真っ只中だった。人々は混乱し、辺りは騒然と化していた。
「おりゃおりゃーー、黙って有り金全部寄越しやがれ!」
黒マスクの男がマシンガンを連射させて周りの人々を威嚇していた。
「お、お願いです。命だけは……」
デパートの従業員が震える口調で命乞いをした。
「クックック。ならば言うとおりにするのじゃな。さすれば何もしないで置いてやるわ」
女の怪人が怪しく微笑みながら従業員に語る。
と、その時。
「待ちなさい、あなた達!」
「それいじょう、好きにはさせないわっ」
「な、何奴っ?」
女怪人が目を向けると、其処には変身したアッコとちびうさ。そう、ミラーガールとちびムーンが立っていた。
「ミラーガールと」「ちびムーン」
『二人揃って、即参上!』
二人のヒロインは揃って台詞を吐いた。
(や、やった~。ミラーガールと一緒なら、私にだって戦えるはず)
ちびムーンは戦力が弱かったのを気にしていたのだが常に他の英雄達と共戦しているミラーガールと一緒という事で、無事に戦えると思っていた。
(よ、よし。ミミナちゃんは別の場所に避難させたし、後はちびうさちゃんと一緒にコイツ等を倒していけば……)
この時二人と一緒にデパートに来ていたミミナはアッコに言われ、別の場所に身を隠していた。
「お、お前達だな。我等豹の爪(パンサークロー)の仕事を次々に妨害している聖龍隊は!」
女怪人の発言に、二人は答えた。
「そうよっ」
「豹の爪(パンサークロー)!これ以上の悪事は、私ミラーガールとちびムーンが許さないわよ!」
これに対し怪人は怒りながら叫んだ。
「クッソ~! こ、こんな小娘など造作も無く片付けてやるわ!」
女怪人は叫びながら、二人に突っ込んで行った。
その頃、デパートの前では警察隊がデパートを取り囲んでいた。
「離れてください離れてください」
「現在デパート内で怪人が暴れておりますので危険でーーす」
警察の指揮の下、一般人は近寄れず人混みができてた。
「う、ううむ……これじゃ中には入れないぞ……」
少し離れた所で見ていた修司は、人混みの中を迂闊に進めない状況に躊躇していた。
「……そうだ。もしかしてアッコの事だから、既に変身しているかもしれないぞ。通信が繋がるかもしれないな」
そう考えた修司は人目を避け、聖龍の龍玉で連なった数珠に取り付けてある通信機のスイッチを入れた。
「お、おいアッコ。聞こえるか、アッコ」
修司は通信機越しにアッコに話しかける。
「……し、修司。修司なの?」
通信機からアッコの声が聞こえた。
「おっ、アッコか。そっちの状況はどうなっている? 報告してくれ」
修司が訊ねると、アッコは答えた。
「い、今ちょうど豹の爪(パンサークロー)の一団と戦闘中よ。ちびうさちゃんも変身して一緒に戦ってくれているわ」
それに対し修司は更に訊ねる。
「お、おい。ウッズから聞いたけど、ミミナの方はどうなったんだ?」
「み、ミミナちゃんは先に避難させたわ」
これを聞いた修司はアッコに指示を出す。
「よし。それじゃアッコ。可能であるなら連中を建物の外に誘い出してくれ。建物の中じゃ迂闊に技を使う事も出来ねえだろうし何より俺自身、今警察がデパートの周りを取り囲んでいるから中には入れないんだ」
「分かったわ。できる限り外に誘き出す様に務めるわ」
アッコはそう言うと通信を切った。
そして修司自身も、何とか警察の目を避けながらデパートに近づいていく。
[英雄の弱点]
ミラーガールとちびムーンは修司の指示通り犯罪集団を何とかデパートの外に、ビルの裏路地まで誘い出す事ができていた。
ミラーガールはミラー・シールドから取り出したミラー・ソードで怪人や下っ端の攻撃を受けとめながら応戦を続ける。
彼女が使用するミラー・シールドは鏡ゆえ光線などの技に対しては強いのだが物理的な攻撃には逆に非常に弱いのだった。
「くっ、こ、このままじゃ……」
苦戦を強いられるミラーガール。その一方、ちびムーンも未だ戦闘には不慣れであった為、苦戦していた。
「きゃああっ」「ち、ちびムーン!」
敵に弾き倒されたちびムーンに、ミラーガールが駆け寄った。
「だ、大丈夫? ちびムーン」
「だ、だいじょうぶだよ。ミラーガール……」
ミラーガールに優しく声を掛けられて、ちびムーンも優しい口調で返事をした。
「クックック。何じゃ、その程度かえ? 聖龍隊の面々も大した事ないのぉ」
攻撃力の低い二人に対し、女の怪人は嘲笑いながら吐き捨てた。
「ま、まだまだ戦えるもん!」
怪人に嘲笑われ、ムキになるちびムーン。
「が、頑張ってちびムーン。もうすぐ聖龍使いが来てくれる筈よ」
ミラーガールがちびムーンに話している、その時であった。
「オイっ、其処の二人!大人しくしてもらおうか!」
突然、一人の下っ端が現れた。しかも左腕には先に逃げた筈のミミナが取り押さえられているうえに、下っ端はミラーガールとちびムーンに見せ付けるかのようにミミナの頭に拳銃を付き付けていた。
「み、ミミナちゃんっ」「えぇ!?」
人質にされたミミナを見て、遊び友達のちびうさにミラーガールは驚きを隠せなかった。
そんな二人にミミナを取り押えている下っ端は嘲笑いながら吐き捨てた。
「はっはァ。このガキの命が欲しければ大人しくしていやがれよ」
「そ、そんな……」
ミミナを人質に取られ、言葉を失くすちびムーン。
「み、ミミナちゃん! 何で貴女がまだ此処に居るの? さっき逃げた筈じゃ……」
ミラーガールの質問に、ミミナは怯えた口振で答えた。
「ご、ゴメンなさい。ふ、二人の活躍を間近で見てみたくて……」
銃を付き付けられ怯えるミミナを目の当りにして、ちびムーンとミラーガールは成す術が無かった。
そんな二人に対して更に追い打ちを掛けるかの如く女怪人が下っ端に命令した。
「ふっふ。さぁ者共! 今の内にヤッテお終いなさい!!」
女怪人の命令を合図に、下っ端の群衆が二人に襲いかかった。
「きゃああ!」「そ、そんな!」
ちびムーンとミラーガールは成す術なく攻撃を受けるだけだった。
そんな二人を見て、女怪人は呟いた。
「ふふ。所詮、英雄なんて人質を、一般人を盾にされただけで何もできない存在なのじゃな……」
二人が攻撃を受けてから数分が経過した頃、遅れて聖龍使いが現場に駆けつけた。
「はっ、はぁ。こ、この辺りに誘い込む事ができたと、さっきミラーガールから通信が入ったのじゃが……ち、ちびムーンも何処に居るのじゃ……」
聖龍使いが辺りを見回しながら路地裏に入っていくと奥の方で何やら激しい雑音が聞こえて来た。
「むっ、奥の方で何やら音が……!」
聖龍使いがそのまま進んで行くと、其処では。
「おりゃっ」「うぐっ」
其処ではちょうど、ちびムーンが下っ端に痛めつけられ更に倒れている彼女の腹に下っ端が蹴りを入れている真っ只中だった。
「! ち、ちびムーン……!」
聖龍使いは傷だらけで地面に横になり、更に痛めつけられているちびムーンの情景に驚いた。
「……せ、聖龍使い……」
聖龍使いを見たちびムーンは、そのまま気を失ってしまった。
「ち、ちびムーン!」
驚く聖龍使いに女怪人が話しかける。
「ほっほぉ、そなたが聖龍使いじゃな。お前もこの小娘の命を助けたくば大人しくしておるのじゃぞ」
そう言い終わると女怪人の後ろから下っ端がミミナに銃を突きつけながら出て来た。
「み、ミミナ!」「せ、聖龍使い……!」
銃を頭に突きつけられ、今にも泣き出しそうなミミナを見て、聖龍使いは更に驚愕した。
「せ、聖龍使い……み、ミラーガールが……」
「な、なに……?」
震える口調で呟くミミナの視線を追って、聖龍使いも彼女の視線の先に目をやると其処には傷付き倒れているミラーガールの姿が有った。
「!!(み、ミラーガール!)」
ボロボロにされ気を失っているミラーガールに視線を向けていた、その時。先ほどちびムーンに蹴りを入れていた下っ端が今度は彼女の頭を足で踏みつけながら聖龍使いに言い放った。
「へっへ。おい聖龍使い、大人しくしねえとこのガキもバラしちまうぜ。何なら今すぐ、このピンクの髪の毛を血で真赤にさせてやろうか? アァン?」
そう言うと、下っ端は懐から拳銃を取り出して、銃口をちびムーンの頭に向けた。
「!! お、お前等……!」
聖龍使いの感情は次第に怒りに満ちていく。
「うっ……ううぅ……」
頭を踏みつけられ、痛みを感じたちびムーンは小さく唸った。
「オッ、気付きやがったか。このクソガキが!」
下っ端は暴言を吐きながら、ちびムーンを更に踏みつけた。
「ぐっ…!」
痛みで唸るちびムーンを見てると、下っ端は更に吐いた。
「お、何だ? 弱いくせに俺らには向かうからこうなるんだ。ガキは家で大人しくママに抱っこしてもらってろ、ケッ」
下っ端はそう言い切ると、ちびムーンの顔に唾を吐き捨てる。
これを見た聖龍使いは完全に感情が昂った。
「止めろ!」
聖龍使いは叫ぶと同時にちびムーンを踏みつけていた下っ端の足に向けて、刀から斬撃を放った。
「ぐわあぁ!」
片足を斬り落とされた激痛で下っ端は地面に転げ回る。
「……はっ……い、いやああぁ!」
先ほどまで自分を踏みつけていた足が斬られ、その足から噴き出た血飛沫にちびムーンは驚愕し、悲鳴を上げた。
「な、何だと!?」
目の前で同じ下っ端が足を斬られ、もがき苦しむ様子にミミナを押さえていた下っ端は動揺した。
「ああ……!」
ミミナ本人も、斬られた脚から出る血飛沫を見て驚きを隠せなかった。
「お、お前! 良いのか、この小娘がどうなっても良いのか!?」
女怪人が聖龍使いに向かって言い放つと聖龍使いは女怪人とミミナを抑え込んでいた下っ端に鋭い眼光を向けた。
「ひっ……」「うぅっ……」
鬼の面越しに放たれる、その鋭い眼光に女怪人も下っ端も、思わずたじろんだ。
「お、お前……! こ、この娘がどうなっても良いのか」
下っ端がミミナに銃を突きつけながら聖龍使いに言い切っている途中、何かを斬るような音と一筋の光の筋が垣間見えた、次の瞬間。
「ぎ、ギャアアァ!!」
下っ端の拳銃を握っていた右手首が本人も気づかぬ一瞬の間に切断されたのだ。
「う……!!」
自分の頭に少量の血飛沫が飛び散り、その光景に驚愕するミミナ。
「そ、そんな……! ま、全く、見えんかった……!!」
女怪人は、目にも止まらぬ速さで斬り付ける聖龍使いの剣術に、ただただ驚くしかなかった。
「………………」
そして聖龍使いは女怪人に向けて睥睨を向ける。
「ウッ!」
只ならぬ殺気に満ちた眼で睨まれた女怪人は、恐怖で怯んだ。そして次の瞬間、聖龍使いは女怪人に駆け寄り、斬り付ける。
「ギ、ギャアア!!」
辺りに女怪人の悲鳴が響き渡り、そして次第に悲鳴は聞こえなくなっていった。
残ったのは、只ならぬ静寂のみ。
[キズを押さえ……]
その頃、ウッズの招集により他の聖龍隊員達が現場近くに駆けつけて来た。
「く、くそっ。聖龍使いや怪人の連中は何処に行っちまったんだ?」
地面から少し高く飛び上がり滑空しながらメタルバードが辺りを見渡しながら探索をしていた。
「ち、ちびうさ! 何処に居るの!?」「ちびムーン!」
セーラームーンにタキシード仮面も声を上げ必死にちびうさの姿を探しまわっていた。
「み、ミミナちゃん!」「ミミナ、何処だぁ!」
ナースエンジェルそして星夜もミミナの行方を必死に探索する。
「さ、さくら! そっちには居たか?」「う、ううん。まだ見つからない」
「め、苺鈴、知世。お前達は?」
「こ、コッチにも居ないわ」「ホントに、何処に居るんでしょうか……」
駆けつけてくれた聖龍隊士の中には木之本桜を始め、小狼達の姿も有った。
「あ、アッコちゃん。それにちびうさちゃんやミミナちゃん。無事でいて……!」
「あ、ああ。だが豹の爪(パンサークロー)の連中相手に三人とも無事でいられているか……」
「ちょっと青児さん! 縁起でもない事言わないで!」
キューティーハニーに対し三人の無事を危険視する発言をした青児に対して、ミスティーハニーは思わず怒鳴った。
「あ、アッコさーーん!」
「ちょ、ちょっとトシ。今アッコさんは変身している筈よ、本名で呼び出すのはちょっと……」
「そ、そうだよトシ。ミラーガールの名前で呼ばないと」
イサミ・トシ・ソウシの三人組も現場に駆けつけていた。
「そ、そっちには居た?」「い、いいえ」
「何処に行っちゃったんだろうね、三人とも」
「せ、聖龍使いもこの辺に居る筈なのに……はぁ」
マーズ・マーキュリー・ジュピター・ヴィーナスも手分けしながら捜索を行っていた。
「まったく、何処に行っちゃったんだ? 四人とも……」
デューイも頭を掻きながら探索を続ける。
その頃の聖龍使いは一人立ち尽くし、ちびムーンとミミナの二人を黙って見つめていた。
「……」「……」
ちびムーンとミミナの二人は互いに身を寄せ合い恐怖で顔を引き攣らせながら聖龍使いを見つめていた。
「……」
聖龍使いも暗く、そして悲痛に満ちた眼差しで怯える二人を見つめ返す。
ふと聖龍使いは怯える二人に背を向けると、それと同時に鬼の面に手を掛け、そして唱えた。
「……武装解除」
そして聖龍使いの甲冑は消え去り本来の小田原修司の姿に戻ると、ゆっくりと歩き始めた。
そして気絶したままのミラーガールを横目で睨む様に見つめると、再び歩き進んだ。
その時、聖龍隊士の面々の前にウェルズがジープで駆けつけて来た。
「お、お前等~!」「あっ、う、ウェルズさん!」
最初に駆けつけたウェルズに声を掛けたのはマーズだった。そして、それを皮切りに他の聖龍隊士もウェルズの所に集まってきた。
「お、お前等。せ、聖龍使いにミラーガール、それにちびうさにミミナはどうなったんだ!?」
ウェルズの問いにメタルバードとマーズが重たい口調で答えた。
「そ、それが……」「ま、まだ見つからないのよ……」
と、その時。ビルの間の路地裏から、修司が左肩を押さえながら出て来るのをタキシード仮面が気付いた。
「し、修司!」「えっ? あっ、し、修司君!」
タキシード仮面にセーラームーンが修司に駆け寄る。
「し、修司さん!」「修司さん」
ナースエンジェルに星夜も続いて駆け寄って来た。
「し、修司。ちびうさは何処だ? 大丈夫なのか?」
タキシード仮面の台詞に、修司は重い口調で返答した。
「……ああ、多少は怪我をしているが、大事は無い。ナースエンジェル、ちびムーンにミミナ、それにミラーガールの容態を見てくれ」
修司の発言にナースエンジェルは驚いた様子で訊き返す。
「え? ち、ちびうさちゃんが怪我? そ、それにミミナちゃんにミラーガールも?」
これに対し、修司は更に答えた。
「……ああ。ちびムーンもミラーガールも痛めつけられてな、ミラーガールの方は未だに気を失っている。ミミナは見た目的に外傷は無い様だが、念のため見てやってくれ」
そう仲間達に言うと修司は、今度はウェルズの方に歩み寄り、彼に話しだした。
「……ウェルズ」「! な、なんだ……」
暗くそして重たい表情で自分に話しかける修司に、ウェルズが驚いていると。
「……済まないが、後の処理は、任せるぞ」
そう呟く様に言うと、修司は左肩を押さえながらその場を去っていった。
「し、修司……!(あ、後の処理って……ま、まさか!)」
修司の発言を聞き、ウェルズに戦慄が走った。
「し、修司さん、一体どうしちゃったんだろうね……?」
「あ、ああ」
「な、何か事件に巻き込まれた三人に何か有ったのかな……?」
思い詰めた表情でその場を去った修司を見て、気になるソウシやトシにイサミ達。
その時、空から雨粒がポツリポツリと降り始めた。
メタルバードにセーラームーン、タキシード仮面にナースエンジェルに星夜が路地裏に足を踏み入れ、ちびうさとミミナの名前を呼んだ。
「オーーイ、ちびうさ、ミミナ、ミラーガール!」
「ちびうさ、大丈夫!?」「ちびうさーー」
「ミミナちゃん」「おぉい、ミミナ~」
すると路地裏の奥から、二人の声が聞こえて来た。
「う、うさぎ~、まもちゃ~ん……」
「り、りりか……星夜」
「二人の声だ」「今行くぞ!」
声を聞き、安堵するタキシード仮面に続き、メタルバードが先頭に立って路地裏の奥に進んで行くと。
「だ、大丈夫か、ちびムーン、ミミナ、それにミラーガール……ウッ」
路地裏の奥、そこを左に曲がった路地先での光景に、メタルバードは驚愕した。
「ど、どうしたメタルバード。三人とも無事か……うわっ」
「まもちゃん、どうしたの……えぇ!」
「きゃあっ」「こ、これは……!!」
路地先での情景に、続けて駆け付けたタキシード仮面にセーラームーン、そしてナースエンジェルに星夜は愕然とした。
[雨降る中で……]
其処には体を斬りつけられ、全身を真赤にされた下っ端の死体が少なく見積もっても八体は有った。
更に一番奥には体を細切れにされ、ほとんど原形が無くなった女怪人の亡骸も見受けられる。
路地に広がる血の海の惨劇を目の当りにして、メタルバードたちは言葉を失った。
「う、うさぎ……」「星夜……」
「えっ」「!」
声のする方に目を向けると其処には隠れるように蹲り、身を寄せ合うちびムーンとミミナの姿が。
「ち、ちびうさ!」「ミミナ!」
二人の姿を視認して、思わず叫ぶセーラームーンと星夜。
「うさぎーー!」「星夜!」
ちびムーンもミミナも泣きながら二人の胸の飛び込んだ。
その時、メタルバードは気絶しているミラーガールに気付いた。
「み、ミラーガール!」
メタルバードは慌ててミラーガールに駆け寄った。
それに続いてナースエンジェルもミラーガールに歩み寄り彼女の首筋に手を当て、脈をとった。
「……大丈夫。気を失っているだけです」
ナースエンジェルは笑顔でメタルバードに告げた。
「そ、そうか……良かった」
ナースエンジェルの言葉を聞き、安堵の表情を見せるメタルバード。
其処に他の隊員達も駆けつけて来た。
「せ、セーラームーン。ちびうさちゃんは無事?」
「ナースエンジェル、星夜。ミミナは大丈夫なのかい?」
声を掛けるマーズとデューイの問いかけに対してセーラームーンとナースエンジェルは返答した。
「う、うん。ちびうさはちょっと怪我が酷いけど元気が有るみたいだし大丈夫だよ」
「み、ミミナちゃんもほとんど怪我がないみたいだし、ちびうさちゃんの怪我とアッコさんの怪我を先に治してあげないと」
「そ、それは良いけど……」「こ、これは……」
ジュピターとマーキュリーは目の前の惨状に言葉を失くした。
辺りに転がる死体の切傷を見たミスティーハニーが呟いた。
「……全員、刃物の様な道具で斬られているみたいだけど、これは……」
そしてキューティーハニーがミスティーハニーに呟く様に話し出した。
「……み、ミスティー。これは恐らく、修司君が……いいえ、聖龍使いがやったのよ」
この発言に、ミスティーハニーは驚いた。
「え? ま、まさか……! 彼がこんな事を……!!」
いつも明るく振る舞っている修司がこの様な残忍な行為をするとは、ミスティーハニーは受け入れられなかった。
そして路地裏に聖龍隊が集まり、血の惨状の中を歩み、そして見回している最中。
小雨だった雨足が段々強まり、大粒の雨が降り始めた。
その大粒の雨が、気絶しているミラーガールの顔に落ち、そして頬を伝っていく。その雨粒の冷たい感触に、ミラーガールは目を覚ました。
「あっ、ミラーガール」「大丈夫ですか?」
目を覚ましたミラーガールにマーズとナースエンジェルが心配そうに声を掛けた。
「あ、あ……」
頭を強打し、まだ少し朦朧としているミラーガールは虚ろな瞳で自分に声を掛けたマーズとナースエンジェルの顔を確認する。
そしてミラーガールはふと気付いた。
「……あっ、み、ミミナちゃん……! それにちびうさちゃんは……!!」
彼女の言葉にマーズが答えた。
「大丈夫、二人とも無事よ」
続いてナースエンジェルもミラーガールに報告する。
「ちびうさちゃんはさっきエンジェルバトンで治療してあげたしミミナちゃんもほとんど外傷が無かったから大事は無いわ。今度はミラーガールの怪我を治さなきゃ」
そう言ってナースエンジェルはナースバトンから光線を放出してミラーガールの怪我を治療した。
「う、ううぅ……! こ、これは……!!」
ナースエンジェルに治療してもらい、体を起き上がらせたミラーガールの目に映ったのは無残に斬り殺された敵達の残骸。
「……ね、ねぇ。これって……!」
蒼褪めるミラーガールは震える口調で問い掛け、そして震える指で亡骸を指差すとメタルバードが彼女に歩み寄って来て話し出した。
「……修司が、いいや、聖龍使いが殺ったんだよ」
「!! そ、そんな……!」
メタルバードの台詞にミラーガールは驚きを隠せなかった。
「……これは」「……うん。また犯してしまうとは」
亡骸を見ていたジュピターとデューイは暗い表情で呟いた。
その時、死体を見ていたウェルズが言い切った。
「……なるほど。さすが修司、と言ったところだな」
「え?」「な、何が『さすが』何ですか?」
ウェルズの発言に驚き、声を発したイサミと小狼に対し、ウェルズは答える。
「よく見てみろ。足を斬られた男と右手を切断された男以外、すべて斬られた跡が一つしかないだろ。これは急所に対して、一撃だけで仕留めた証だ。常に剣術を極めている修司だからこそ、相手を苦しめず経った一撃で敵を倒せた証拠だ。まぁ、細切れにされた怪人は例外だけどな」
ウェルズの解釈に対し、マーキュリーが暗い表情で発した。
「だ、だけど……いくら何でも……」
その場の空気が重くなり、皆が口を閉ざして辺りが沈黙に包まれた。
雨は一層強くなっていき、亡骸から出た血は雨水に溶け込み路地は赤く濁った水と透明な雨水。更には泥や砂、そしてゴミで黒くなった雨水が混じり合い聖龍隊士の足元には赤黒い水が延々と流れていったという。
[小田原修司と言う人間]
その後、聖龍隊の面々は集いの場でもある修司の家の地下に身を寄せていた。
其処で各々、変身を解いたり雨で濡れた体をタオルで拭いたりしていた。
そんな面々にウッズが温かいココアを人数分、台車に乗せて持って来てくれた。
「皆さん、雨に濡れて御体冷えたでしょう。ココアをお持ちしましたので、どうぞ御飲みになってください」
「あ、ありがとうウッズさん」
ウッズに言われ、まことがココアを注がれたマグカップを手に取った。
「い、頂きます」「ご馳走さん」
まことに続き小狼とトシもカップを手に取った。
それを皮切りに、他の面々も次々にココア入りのマグカップを手に取り、口にする。
そんな中、ちびうさとミミナは揃って沈鬱な表情で椅子に座り込み、黙り込んでいた。二人を見たウッズはトレーにカップを二つ乗せ、そのまま直接二人の下に運んであげる。
「大丈夫ですか、ちびうさちゃん、ミミナちゃん」
「う、ウッズさん」「……」
笑顔で自分達に話しかけてくれたウッズに、ちびうさとミミナは軽く反応した。
「さぁ、あなた達も体が冷えて寒いでしょう。冷めない内にどうぞ」
そう言ってウッズは二人にカップを手渡す。
「あ、ありがとう……」「ありがとうございます」
ウッズに礼を言いながら、ちびうさとミミナはカップを受け取った。
「……話は聞きました。怖かったでしょう、目の前であんな光景を見てしまって」
「……」「……」
優しく語りかけてくれるウッズに対し、二人は返す言葉が見付からなかった。
そんな二人に対し、ウッズは膝を曲げて二人と同じ視線で彼女達と向き合いながら更に語りだした。
「とても怖かったのは分かります。でもね、ちびうさちゃん、ミミナちゃん。どうか修司様とは、今まで通り仲良くして欲しいです」
「え?」「え……」
この言葉を聞いて二人は顔色を変えウッズと向き合い、ウッズの目を見つめながら彼の話に耳を傾ける。
「ん?」「……え」
ウッズの発言を聞いていた他の面々も、ウッズに注目し、彼の話に耳を傾けた。
そんな中、ウッズは変わらずちびうさとミミナと目を向き合わせながら話を続ける。
「修司様は、辛かったんですよ。目の前で大切な人達が傷付き痛めつけられている現状に。だからこそ感情的になって、あんな行為に走ってしまったんです。あの人は目の前で大事な人、そして弱い立場の人が苦しめられているのを見ていると自分自身も同じ苦しみに遭っているかのように感じてしまう……そんな感受性の強い人なんです。故に自分の中で、傷付けたり苦しませている人の事を許せず力の限り相手と立ち向かってしまう……それが、小田原修司と言う人間なんです」
悲しくも、凛々しい瞳で見つめながら語るウッズの話を聞き、ちびうさやミミナはもちろん話を聞いている他の面々も思わず言葉を失くして聞き込んでいた。
更にウッズは説き続ける。
「あの人はいつも、自分の中にある闇と、そして恐怖に対して必死に向き合おうとしながら生きているんです」
「や、闇……」「……」
ちびうさ、ミミナはウッズの語る修司の闇そして恐怖というフレーズに関心を向ける。
「はい。修司様はいつも自分の心に有る闇に対して苦しみ、そしてその闇の心により起こってしまう、ある感覚に敏感に反応し、その感覚に対して恐怖を感じてしまうんですよ」
「そ、その感覚って、いったい……」
ミミナが訊ねると、ウッズは悲愴な表情で呟いた。
「……孤独ですよ」「こ、孤独……」
孤独という言葉に思わず反応してしまうちびうさ。
「修司様は生まれ付き、心に闇を持っていた為、周りから疎外されてしまったり別離されながら生活して来たんです。そして遂には自身の両親からも関わる事を拒まれてしまい、そんな環境の中、修司様は人間不信に陥ってしまい最終的には自分から周りと接触を拒み、孤立していってしまったんです」
「お、親からも拒まれたんですか?」
思わずウッズに訊ねるミミナの問いに、ウッズは答える。
「い、いえ……修司様の御両親は、ただ単に特殊な心を持っている修司様と、どう向き合っていけば良いか解らず、それで余り修司様と関わる事を躊躇ってしまったんです。修司様もそんな親の心情に対しては理解していたんですが……それでも親が自分と距離を置いてしまっている事に対して内心とても辛かったみたいです」
ウッズから語られた修司のかつての半生。そして彼が育った環境を聞き、ウッズと向き合っていたちびうさやミミナ更に他の隊士たちも暗欝な表情で黙り込んでしまう。
そんな重苦しい雰囲気の中、ちびうさがウッズに話しかけた。
「……あ、あの」「はい。何でしょうか、ちびうさちゃん」
「し、修司さん、大丈夫でしたか?」「と、言いますと?」
「さ、さっき、私達の前から去っていく時、左肩を押さえながら去って行ったんですけど、怪我でもしたんですか?」
ちびうさの質問に、現場に居た他の面々も声を上げた。
「あっ、そう言えば」
「確かに、彼左肩を押さえながら、そのまま行ってしまったのよね」
ふと思い出し、互いに顔を見つめながら語るハニー姉妹。
「そ、そう言えばアイツ。左の肩を押さえながら行っちまったんだよな」
「言われてみると、確かにそうだったな」
衛に指摘され、青児も微かに思い出していた。
そしてウッズはちびうさの問いに答える。
「はい。確かに修司様は左肩を負傷していて皆さんよりも一足先に帰って来られてスグ私に怪我の治療をしてくれと言って来られましたが」
これを聞き、アッコが慌ててウッズに訊いた。
「えっ。う、ウッズさん、修司の怪我は大丈夫だったの?」
「あ、はい。どうも怪人の爪が甲冑の隙間、布の部分に突き刺さってしまっただけですから大事は有りませんが」
「そ、そう……それなら良いんだけど」
アッコは安堵の表情を浮かべる。
この時、ウッズは突然、ちびうさに笑顔で話し出した。
「ふふ、それにしても……ちびうさちゃんは優しいですね」
「え?」
「だって、あんな怖い思いをしたのに修司様の肩の事を気にして……本当に優しい女の子なんですね、ちびうさちゃんは」
「……」
ちびうさは思わず呆然としてしまう。
「心配してくれてありがとう、ちびうさちゃん」
「……」
笑顔で自分に御礼を言ってくれたウッズの言動に、ちびうさは内心歓喜する。
その時、ウェルズが全身ズブ濡れの状態でやって来た。
「ふぅ~、ただいま……」
「あぁ、お帰りなさいウェルズ。御苦労さまでしたね」
「ああ、全くだよ」
疲れた様子で帰宅したウェルズに、兄のウッズは声を掛け、更にタオルを差し出した。
「疲れたでしょう。風邪引く前に拭いちゃいなさい」
「分かってるよ、ウッセエな」
愚痴を言いながらも、ウェルズはウッズの差し出したタオルを受け取り、体を拭き始める。
「……ところでウェルズ。現場の方は、どうしましたか?」
ウッズは気欝な面立ちでウェルズに訊いた。
「ああ、何とか片付けられたよ。あんな惨状、そのままにする事も出来ないし、毎度大変だぜ」
ウッズとウェルズが会話している、その時。変身怪獣がアッコに歩み寄り、彼女に話しかける。
「な、なぁ。アッコ」
「ん? なに、変身怪獣?」
「ちょ、ちょっとお前に頼みたい事が有るんだけどよ……」
「え? た、頼みたい事って……」
思い詰めた表情で自分に話しかけて来た変身怪獣の様子に、アッコは少し驚きながらも彼の話を聞いた。
[問い正す聖女]
それからアッコは一人、修司の自室の前に来ていた。
「ふぅ……」
軽く一呼吸入れたアッコは先ほど変身怪獣に訊ねられた事を思い出していた。
「アッコ、済まねえが修司に直接聞いて来てくれねえか? この先もこんな調子で活動していくのかって」
「わ、私が……? な、何でまた私になの?」
「い、いやな。修司って、何かこう……お前に対して結構本音と言うか、本心を話してくれる傾向が有るみたいだし。正直、オレよりもお前が修司に訊ねた方がアイツの真意を確認できるからよ」
「は、はぁ……」
「い、いやな。オレのテレパス能力もアイツにだけは効かないし奴の真意を確かめる術は、本人の口から直接出させる以外無いからよ」
そうして、アッコは変身怪獣に頼まれて一人修司の部屋の前まで来ていた。
(……そう言えば、ウッズさんも言っていたわね)
アッコは此処に来る前に、ウッズから事付けされているのを思い出す。
「あ、アッコさん。すいませんが、修司様には先ほど私が皆さんの前で、修司様の過去とか経緯を喋ってしまった事は伏せてもらえないでしょうか?」
「え。な、何故ですか?」
「い、いえね。修司様は自分の過去とか余り人にとやかく言われる事を嫌っているんですよ。自分自身の辛い過去とか思い出とか余り人に言うのも言われるのも嫌っていまして正直誰にも触れられたくないんです。他人に自分の心の内を知られたくないと言うか、誰にも知ってもらいたくない。そう思ってしまっているんですよ」
「そ、そうなんですか……」
「ま、まぁ。いつかは修司様の口から自分の本意を相手に伝えられる様になって欲しいと私は願っているのですが。今はそっとしておいて欲しいんです……」
そんな事を回想しながらアッコは修司の部屋の前で自分の頬を叩き、自身に喝を入れる。
「……良し!」
アッコは覚悟を決め、修司の部屋のドアをノックした。
「……どうぞ」
部屋の中から修司の発言を確認して、アッコはドアを開けた。
「し、修司。ちょっと良い?」
ドアを開けたアッコは小声で修司に尋ねてみた。
「……ん? 何だアッコか。どうしたんだ?」
ドアを開けると修司は目前の仕事机に向かい、書類と睨めっこしていた。
「……あ、あの」
アッコはまず、修司に対して最初何を言い出せばいいのか解らず言葉を出す事ができなかった。
この時、アッコのスカートのポケットに仕舞われてあるコンパクトに内蔵されている通信機を通して地下三階のメインフロアに居る各隊士たちの通信機に二人の会話が筒抜けになっていた。
「い、良いのかしら。こんな盗み聞きなんて……」
会話を盗み聞く行為に戸惑う亜美に対し、変身怪獣が言い切った。
「なぁに、オレたち聖龍隊の中での行いだ。それに、お前達だって修司の本心を知りたいだろ?」
「そ、そりゃあ、まぁそうだけど……」
美奈子が頬に手を当てながら言うと、変身怪獣は更に続けて言った。
「アイツだってオレ達の事情とかに色々と干渉してくるんだ。オレ等だってこれ位しねえと分が悪いぜ」
メインフロアで皆が会話していた、その時。三階の自室で修司がアッコに向かって発言する。
「ところでアッコ」「な、なに?」
修司は重い口調でアッコに訊ねた。
「……お前はもちろん、ちびうさとミミナは大丈夫だったか? 怪我とか、それから精神的に……」
「え、ええ。私達ちゃんとナースエンジェルに治療してもらったから、もう怪我は大丈夫だけど……せ、精神的って、いったい」
アッコが訊き返すと、修司は暗い顔立ちでアッコを見つめながら言い返した。
「……いくら何でも、幼子の前であんな残忍な光景を見せてしまったからな。未だに恐怖で怯えていないか気になってな」
「あ、ああ。大丈夫よ、ちびうさちゃんもミミナちゃんも元気にしているから安心して」
「……そうか。それなら良いんだ」
そう言うと、修司は再び机に上の書類と向き合った。
「……(少しは気にしていたのね、修司は……)」
アッコは修司が先ほどの自分の行為でちびうさやミミナが怖がっていた事を気にしていた事に、少しは安心できた。
そしてアッコは思い切って修司に訊いてみた。
「ね、ねぇ。修司……」「何だ? まだ何か?」
書類に目を通しながら返事する修司。
「……な、何で修司はナースエンジェルに治療してもらおうと思わないの? 彼女の能力は修司だって認めているでしょ?」
思わずアッコは、変身怪獣に訊ねられた事とは違う内容の質問を修司にぶつけてしまった。
「……アイツ、今は別に関係ねえだろ。そんな事」
メインフロアで会話を盗み聞いている変身怪獣は思わずしかめ面で呟いた。
「だ、だけど彼、本当にナースエンジェルの能力で怪我を治してもらった事、今までも無かったような……」
顎に手を当てながらデューイが呟く。
アッコの質問に、修司は答えた。
「……俺は別に大丈夫だからだ。ナースエンジェルの能力はもちろん、特殊能力と言うのは本当に困った時そして本当に苦しんでいる人にこそ使うべきなんじゃないか」
「そ、そういうもの、なの?」
アッコが首を傾げながら訊く。
「そういうものなんだよ」
修司は無愛想な顔で言い放った。
「そ、それじゃ修司は……修司は平気なの? 敵とはいえ、命を奪う事に……」
暗欝な表情で質問するアッコに対し、修司は突如手に持っていた書類を机に置き、手を顔の前で組みながら険しい顔つきでアッコを睨んだ。
そして鋭い眼つきを光らせながら真顔で断言する。
「何を言う。敵だからこそ斬り捨てられるんだ。そうでもしなければ、正しき者を護る事などできやしない」
その返答を聞いたアッコは驚いた。
「し、修司は命を奪う事に抵抗はないの? ……人を傷つけて、辛くないの……?」
すると修司は冷たい眼差しでアッコを見つめながら、返答した。
「何を言う。躊躇い、迷っていたら、その間にも悪しき者によって多くの罪なき善良な人々が苦しめられてしまうんだぞ。俺は既に、この街に来た時から迷いと言う感情を捨てている。故に、敵で有れば容赦なく斬り捨てる事も、造作もなく行える」
「そ、そんな……!」
驚愕するアッコに対して、修司は続けて話した。
「何より、あの連中はお前だけでなくちびうさまでもボロボロに痛めつけた。その前にもミミナを人質にした。更には戦えなくなったちびムーンを余計に痛めつけたり……最終的には、奴等はちびうさを、仲間を侮辱した。それだけでも忌々しき事だ。到底許せる事ではない」
冷酷に、そして鋭い顔つきで断言する修司にアッコは問い詰める。
「……修司にとって……修司にとって、命って何なの?」
これに対し修司は鋭い顔付きのまま答えた。
「俺の中では命とは……悪しき命、善良な命の二種類に分類してある。罪深く、そして悪しき命によって、心正しき者達が傷付けられるなら俺は容赦なく悪しき命を斬り捨てる。……それで仲間を護れるのであれば、安いものだろ」
「! ……な、何を言うのよ。皆、みんな同じ命じゃない。そ、そんな簡単に分けて良いの?」
鋭い眼光で淡々と話す修司に対し、アッコは目に涙を浮かべながら修司に言い詰める。すると修司は目を見開き、アッコに豪語した。
「同じではない! 悪党共とお前達は全く違うじゃないか! 命が同じ、命が平等だと言うのであればお前達だって悪人と同じ存在だと言っているのと変わりないじゃないか!!」
突如強い口調で豪語する修司に、アッコは一瞬怯む。
「お前等と違うからこそ、俺は容赦なく、そして平然と悪党共を斬り殺せるんだ! お前達と違う存在だからこそ、俺は悪人を斬り殺し、そして敵を一掃する事ができるんだ!!」
修司は興奮しながら机を叩き、アッコに言い切った。そして修司はそのまま話し続けた。
「今日斬り殺した連中だってそうじゃないか! ミミナを盾にし、お前を傷付け、更には動けなくなったちびムーンまでも手に掛けようとした! そんな輩とお前達が同じ命だと、お前こそ本気で言えるのか! 明らかに雲泥の差があるじゃ無えか!!」
「……」
アッコは興奮した修司に驚き、何も言えなかった。
「俺は認めん。聖龍隊を、俺の仲間を傷付ける者までも、護る対象にするなど、到底認めん! 【護るべき善】、【善を護る正義】そして【滅ぶべき悪】この三つを一緒の類にするなど、正気の沙汰ではない!!」
凶気に満ちた眼つきで語る修司に、アッコは穏やかな表情で、そして悲しい眼差しで言葉を返した。
[優しい心]
「……修司は……修司は、とても優しいのね」
「……なに?」
アッコの発言に驚く修司。
そしてメインフロアで二人の会話を聞いていた面々もアッコのこの発言に驚いていた。
「……俺が、優しいだと?」
睨みつけながらアッコに訊ねる修司。アッコは睨まれながらも修司に答えた。
「……そうよ。修司にとって命とは、護るべき価値ある命。そして滅ぶべき価値無き命。そう考えているんでしょ」
「………………」
修司はアッコの台詞に対し、何も言わずただ無言でアッコを睨みつけていた。
「修司は命だけじゃない。全てをその背に負いながら生きている……価値ある命、価値の無い命、それら全部を背負い、自ら苦しみながらも力強く前に進んでいく修司を、私はとても優しい人なんだなって感じられるの……」
寂しげな表情を浮かべながら、アッコは口元を微笑ませて修司に語った。
そんなアッコに修司は強い口調で言い切った。
「違う! 俺は優しくなどない! 俺に……俺に優しさなんて感情、有る訳が無いんだ!」
睨みつけながら断言する修司は、更に言い放つ。
「俺に……この俺に、お前等の様な感情など、有る訳が無いんだよ。常に強さしか求めず完全な秩序・完全な平和を望む為に敵を平然と斬る俺が……誰も愛せず、誰に対しても常に疑いの眼差しを向けてしまう不信に満ちた心を持つ俺が……こんな俺に、みんなの様な綺麗な心など、手に入る訳が無いんだよ……」
更に修司はアッコに言い放った。
「……感情なんてもの、戦う際には捨てきっている。友を、仲間を護れるのなら……護るためなら、俺は非情な人間に成り下がる所存だ」
この言葉にアッコは驚愕するも、修司は更に言い放つ。
「全ては聖龍隊の、同胞のため……俺は感情を、心を捨てて、死んだつもりで戦い抜く覚悟だ」
これを聞き、アッコは優しく修司に話し掛ける。
「……修司、そんなに心を捨てたいの? ……それなら、その心わたしにちょうだい」
これに対し、修司は驚いた素振りでアッコに返答した。
「アッコ……! 何を言うんだ。俺の心は、いつもドス黒く、歪みきった、漆黒の闇そのものなんだぞ……そんな心、お前には何の価値もないんだぞ」
するとアッコは悲しげな微笑みを浮かべて答えた。
「……例えどんな心であっても、修司の心には違いないわ。修司がみんなを大切に思っている様に、私にとっても修司は大事な存在なのよ。そんな修司の心なら、私は捨てたくは無いわ。捨てるのであれば、その心、私にちょうだい……!」
アッコの言葉を聞き、修司は険しい顔付きでアッコを見つめながら話し返す。
「……アッコ。俺の心は闇そのものなんだぞ。戦い続けて傷だらけの、醜くボロボロな心なんだぞ。それに冷たく、持っているだけで、胸の内に仕舞い込んでいるだけでも己を苦しめ、他の感情を殺め、そして誰をも信じる事ができない故に……いつも孤独に囚われる。そんな呪われた心なんだぞ。そんな心を手に入れて、お前に何の得が有る……」
するとアッコは平然とした面持ちで言い返した。
「何の得も無いわ。ただ修司の心だからこそ持っていたいのよ」
「……」
アッコの言葉に声を失う修司。そんな修司に、アッコは更に続けて話した。
「どんな心であっても、その心が修司自身の物であるのには違いないでしょ。私は修司に、自分自身を捨てて欲しくないの。どんな心でも、どんな存在でも、修司は修司に違いないんだから」
言葉を失くす修司に、アッコは微笑み潤んだ瞳で修司を見つめながら、更に話す。
「私が修司の心を持っている間、その間に修司に別の心を持って欲しいのよ」
「べ、別の、心……?」
「そう。少しでも良い。人を信じ、人を愛したり……人として少しでも心豊かな人間に成って欲しいのよ。そしていつかは、自分が孤独じゃないと感じて欲しいの」
「!!」
輝き、優しさに満ちた瞳で話すアッコの言葉に、修司は驚くしかなかった。
更にアッコは、机越しに修司の前に歩み寄り、話し続ける。
「私だけじゃ無い。みんなが、聖龍隊のみんなが修司の側に居続けるわ。例え、万が一みんなが離れて行っても私だけは、私だけは修司から離れない。傍に居るから、だからどうか、独りにならないで……独りだと感じないで欲しいの……」
「アッコ……」
アッコは目を潤わせ、瞳を輝かせながら修司に迫る。
修司はそんなアッコの瞳を、まるで鏡の様な綺麗な瞳に、惹き込まれる感覚で見入っていった。
「……アッコ、お前って女は」
地下のメインフロアで二人の会話を通信機を通して聞いていた変身怪獣たちは修司の正義への概念と思想、そしてアッコの思いやりのある台詞の数々に黙り込む。
命も、傷も、苦痛も、全てを背負いながら戦い続ける武人。
そして闇の心で有ろうと、大切な人のものであるなら大事にしたいと願う聖女。
この二人から物語は、いいや、二次元界は大きく変わりつつあるのであった。