【聖龍伝説】始まる伝説   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 今回はセラムンファンなら誰もが知っているネフなるカプのストーリーです。初恋の相手が居なくなり落ち込むなるをどうにかして助けようと、ミラーガールが提案します。


アニメタウンの英雄達 憎まれながらも……

[十番街公園での戦闘]

 

 この日、はぐれ妖魔が十番街公園に出没したとセーラー戦士達から伝え聞いたアッコはミラーガールに変身して現場に急行していた。

 着いてみると、其処でセーラー戦士達とタキシード仮面が激闘を繰り広げていた。

 

「シャアアオ!」

 物凄い剣幕で威嚇しながら、妖魔はセーラー戦士に攻撃していた。

「きゃあぁ!!」「ちょっとうさぎ! しっかり戦いなさいよ」

 妖魔に怯むセーラームーンにマーズが喝を入れた。

 そんなセーラームーンを見て、マーキュリーとジュピターは呆れていた。

「相変わらず逃げ腰ね、うさぎちゃん」

「あ、アレで本当に前世は女王だったのかしら……」

 ヴィーナスの方はセーラームーンを見て内心嘆いていた。

「は、ははは……転生すると、こうまで性格が変わるのかしら……」

 一方タキシード仮面は思わず無言になっていた。

「……(な、何だか、何も言えないな……)」

 

 

 その時、ミラーガールもセーラー戦士に加わった。

「皆さん! 遅れてすいません!」「あっ、ミラーガール!」

 セーラー戦士たちはミラーガールの顔を見て、少しだが安堵の表情を見せた。

 

「やったー♪ミラーガールが来ればもう安心だね♪」

「ホントよねー♪彼女が居れば楽に戦闘が済むんですものねぇ♪」

「は、はぁ……」

 思わず有頂天になるセーラームーンにヴィーナスを見て、ミラーガールは呆然とした。

「ってうさぎちゃん、美奈子ちゃん」

「いい加減、ミラーガールに頼ってばかりいるのは止めようよ」

「はぁ、ホントに二人とも……」「……」

 セーラームーンとヴィーナスの言動にマーキュリーやジュピター、マーズにタキシード仮面が呆然とする中、妖魔が襲いかかって来た。

「きゃあ~、来た~!!」

 半べそを掻きながら泣き喚くセーラームーン。

「な、何とかして~、ミラーガール~」

 ヴィーナスも同じく泣きわめく。

「え、え~とえ~と……あっ、そうだわ!」

 咄嗟にミラーガールは呪文を唱えた。

「ミラージュ・トリック!」

 するとセーラー戦士にタキシード仮面等が、それぞれ3人に増えた。

「えっ?」「こ、これって……?」

 動揺するセーラー戦士にミラーガールが説明した。

「さ、最近分かったんですけど、ミラージュ・トリックって、こんな使い道も有ったんです。対象となる人や物を最大3人まで増やす事が出来て、それに増えた人は技をそのまま使用する事ができるんですよ!」

 このミラーガールの説明を聞いて、マーズとマーキュリーは納得する。

「じゃ、じゃあ、それじゃ……!」「技を3倍の威力で出せるって事ね」

「え? え? な、何で技が3倍になる訳?」

「何言っているのよセーラームーン。3人に増えた状態で技を使えば、技も3つに増える。つまり3倍に上がるって事じゃないの」

「そ……そうようさぎ。そんな事も解らなかったの。ほ、ほほほ……(そ、そうだったんだ……)」

 理解できないでいるセーラームーンにジュピターが説くが、実はヴィーナスも詳しく分かっていなかった。

 

「よし、みんな行くぞ! 妖魔に向けて、集中砲火だ!」

『ええ!!』

 そしてセーラー戦士達にタキシード仮面は妖魔に向けて必殺技を集中砲火をしようと身構える。

「ギャ、ギャアァ…!」

 妖魔の周りを取り囲むようにセーラー戦士達は包囲する。

「さぁ、受けてみなさい妖魔! セーラー戦士達にタキシード仮面の必殺技を! 6人共3人に分裂しているから、18倍の必殺技をね!」

 ミラーガールが言い放ち、そして戦士たちが妖魔に向けて一気に技を放出した。

「ギャアアアア!!」

 妖魔は断末魔を上げながら、消滅。

 

「ふぅ~、何とか無事に済んだな」

「わあ~、怖かったよ、まもちゃ~ん(号泣)」

 妖魔が消えた途端、タキシード仮面に泣きながら抱きつくセーラームーン。

 

 そんな二人を見て、セーラー戦士達にミラーガールは呆然とする。

「……相変わらず二人は」「ホントに、仲が良いわよね」

「見せつけちゃってくれるわね、お二人さん」「ホントねぇ」

「……そうですね」

 戦闘が終わり、思わずタキシード仮面に抱きつくセーラームーン。

 他のセーラー戦士は見慣れていたが、ミラーガールにとってみれば少し羨ましく感じていた。

(修司に抱きつこうものなら、彼照れちゃって無理やりにでも引き剥がそうとするからな……)

「……それにしても、相変わらずミラーガールの能力って凄いわよね」

「そ、そんな。私なんかまだまだですよ……」

 マーズに褒められ、少し照れるミラーガール。

 

 さらに、マーキュリーまでもミラーガールを称賛する。

「そうよね。アッコちゃん、あっ、い、いえ。ミラーガールの能力って結構使い道が広いから、色々と応用が利くし……」

 続けて、ジュピターもミラーガールを褒める。

「回復系だけでなく、幻術や防御技も使えるし、ホントに助かるわ」

 最後にヴィーナスが笑顔で言う。

「ほんとほんと。言っちゃなんだけど聖龍使いが居なくてもミラーガールだけ居てくれれば楽に戦闘終われちゃうし♪もうこの際、ミラーガールだけ助っ人に来てくれれば充分よ。聖龍使いは居なくても、もう大丈夫♪」

「は、はぁ……」

 ヴィーナスの発言に、ミラーガールは言葉を失う。

 

 その時だった。

「はは……て、ウワッ」「ん? どしたのまもちゃん?」

 何かを見たのか、タキシード仮面が驚いた。

「え? どうしたの……て、うわっ」「うん? なに……って!」

 マーズもマーキュリーも、タキシード仮面の視線の先に目をやると驚いた。

「あ、ああぁ……」「あ、あちゃ~……」

 視線の方角に目をやったジュピターとヴィーナスは動揺していた。

「え、何? どうしたんですか……って!」

 ミラーガールも視線を向けると、視線の先には公園の入り口で思わず立ち尽くしていた聖龍使いの姿が有った。

「せ、聖龍使い……」「い、居たの……?」

 マーズとマーキュリーが訊くと、聖龍使いは暗いオーラを醸し出しながら発した。

「……ああ居たよ。何も役立つことなく、今来たよ」

「い、いつから居たの?」

 恐る恐るジュピターが訊ねる。

「……ちょうどお前達が3人に分裂して、妖魔を倒した時からじゃ」

 この発言に、ヴィーナスは思わず怯んだ。

「ギ、ギクッ。そ、それじゃ……」

「……うん聞いてたよ。ワシってもう必要ないんじゃろ」

 暗く重たい空気を醸し出す聖龍使いに、一同震える。

「ひ、ひぃぃ。お、おい聖龍使い……」

「そ、そんなに落ち込まなくても……」

「だ、大丈夫よ。今回はたまたま戦闘が早めに終わっていただけで……」

 タキシード仮面にセーラームーン、そしてマーズが言うと、聖龍使いが暗い面立ちで言った。

「うん、ミラーガールが居たから早く済んだんじゃろ。ワシって、もう居なくても良いんじゃろ……」

 この発言に、ヴィーナスは動揺した。

「あっ、ああぁ……き、聞いてた……の?」

「うん、聞いてたよ。確かにミラーガールの方が便利な能力持っているしの……ワシってもう要らない子なのかな」

 

 この発言に対し、セーラームーンとタキシードは声を掛けようとした。

「ちょ、ちょっと……」「お、おい……」

 しかし突然、聖龍使いは振り返り立ち去ろうとした。

「……もう帰ります。役に立たない子だから帰ります」

 暗い雰囲気のまま立ち去ろうとする聖龍使いにミラーガールが駆け寄った。

「わっ、わっ…だ、大丈夫よ聖龍使い。貴方だって充分みんなの役に立っているじゃない。今回はたまたま出番が無かっただけよ」

 聖龍使いの両肩を掴みながら、ミラーガールは聖龍使いを元気づけた。

「そ、そうよ聖龍使い。貴方だって充分頑張っているのは、私達ちゃんと分かっているから」

「そうよ。そんなに落ち込まないで……」

 マーズ、マーキュリーも聖龍使いに声を掛ける。

「そ、そうそう。確かにミラーガールの能力って凄いけど攻撃力が無いからそこは聖龍使いで補ってくれれば助かるのよ」

「そ、そうよ! 人には向き不向きってものが有るんだから聖龍使いも自分に合ったやり方で頑張っていけば良いのよ」

 ジュピター、ヴィーナスも続けて助言した。

 

 と其処に上空からメタルバードが全身汚れだらけの状態で降りて来た。

「皆さん、お待たせしてすいませんね~」

 相変わらず陽気な振る舞いで舞い降りるメタルバードに、ミラーガールが聞いた。

「ちょっとメタルバード。貴方一体何処に行っていたの? みんな必死で頑張っていたっていうのに」

 するとメタルバードは頭を掻きながら言い放った。

「いやな……さっき通報が有ってよ。使われてない古い排水管に子猫が入り込んじまって、オレはその場所に行っていたのよ」

 これを聞いてマーズが言った。

「えっ、そ、それで猫ちゃんは無事に助け出せたの?」

 するとメタルバードは平然と答えた。

「ああ、オレが得意の軟体化で、体をスライム状にして排水管に侵入したから無事に子猫を救い出せたよ」

 これを聞いてジュピターとマーキュリーが発言した。

「あっ、なるほどね」「それで全身汚れてしまっている訳なのね」

 会話を聞いて、聖龍使いもメタルバードに告げた。

「……良いねメタルバードも。そんな便利な能力が有ってよ……はぁ」

 暗い雰囲気で話す聖龍使いを見て、メタルバードは気になった。

「ど、どうしたんだよ相棒……何か有ったのかよ」

 メタルバードに聞かれると、聖龍使いは無言でその場から去っていった。

「あっ、聖龍使い……」

 ミラーガールは去っていく聖龍使いに声を掛けたが、既に姿は無かった。

「な、なぁ。アイツ、どうしちゃった訳?」

 メタルバードは仲間に問います。

「そ、それが……ね」「う、うん……」

 マーズとマーキュリーは答えるのを躊躇っていた。

「な、何が有ったんだよ……」

 質問するメタルバードに、ミラーガールが言った。

「め、メタルバード。後で説明しとくから、ちょっと修司の家に戻って彼の様子見といてくれる?」

 ミラーガールの頼みに、メタルバードは快く承諾した。

「あ、あぁ、分かった。それじゃあ、また後で」

 そう言うとメタルバードは飛んでいった。

 

 

「……そ、それじゃあ、俺もそろそろ行くよ」

「あ、まもちゃん、私も一緒に行く~」

 タキシード仮面の腕にしがみ付きながら、セーラームーンもその場から去っていった。

「そ、それじゃ私も……そろそろ塾に行かないと」

 マーキュリーも変身を解き、急ぎ塾に向かった。

「あ、いっけな~い。冷蔵庫の食材切らしていたんだった。急いでスーパーに行って買い込まないと」

 ジュピターもマーキュリー同様変身を解き、その足でスーパーに向かった。

「あ~あ。まさか修司君に聞かれちゃうとは……あの子意外と根に持つタイプだからなぁ……」

 ヴィーナスは先ほど聖龍使いに聞かれた発言について気にしながら帰っていった。

 

 一人になったミラーガールは、自分も変身を解くことにした。

「……そ、それじゃ、私も変身解こうかな」

 

 そして変身を解き、いつもの加賀美あつこに戻った彼女は、公園を出ようとした。

 

 

 

[落ち込む女性との出会い]

 

 その時だった。アッコの目に一人の女性が映り込んだ。

 

「あ、あれ……あの人」

 その女性は暗い表情をしており、ゆっくり公園に入ってきた。

 そして一人、ベンチに座り込むと深いため息をつく。

「……どうしたんだろう、あの人」

 その女性を気にしたアッコは、気付かれないように様子を窺った。

 

 生気のない顔で一人座り込む女性をアッコは様子見していたのだが、その時。

「……ん、誰かいるの?」

 女性がアッコに気付き、声を掛けて来た。

「あ、あの、その……」

 思わず動揺してしまうアッコ。そんなアッコを見て女性は訊ね続ける。

「……どうしたの貴女。何か私に用?」

 訊ねてきた女性にアッコは慌てながらも答えた。

「あ、あの……ご、ゴメンなさい。お姉さんが気になってしまって……」

「え? わ、私に……」

「え、ええ。なんか、とても落ち込んでいるみたいだったから、つい気になって……ゴメンなさい」

 女性に謝るアッコ。だが、当の本人は笑顔でアッコに言葉をかけた。

「……ふふ、別に大丈夫よ謝らなくて。ありがとう心配してくれて」

 女性は沈んでいたが、笑顔でアッコに告げた。

「は、はい……あ、あの」

「ん? なに?」

「お、お姉さん、どうしたんですか? 凄く辛そうな顔をしているけど、何か有ったんですか……」

 アッコは思わず女性に聞いてしまった。

 お節介な事だと自負しているにも拘らず、困っている人を見過ごせないアッコ特有の癖だった。

 すると女性は重い口を開いた。

「……ありがとう」「え?」

「ありがとう、こんな私を気に掛けてくれて……う、うぅっ」

「ああっ、お、お姉さん!?」

 突然その女性はアッコの体にしがみ付き、そのまま泣き崩れてしまった。

 

 

 そして女性を落ち着かせてからアッコは女性の座っているベンチの隣に座り込み、話を聞いてみた。

「……お姉さん、大丈夫ですか」

 アッコは女性に訊ねる。

「……う、うん。大丈夫。ゴメンね、余計な気を使わせちゃって。ダメなお姉さんよね」

「そ、そんな事有りませんって! お、お姉さん。何でそんなに……あっ、失礼しました。まだ名乗っていませんでしたね。私は加賀美あつこと言います。小学5年で、みんなからはアッコと呼ばれています」

「あ、アッコちゃんね……初めまして、私の名前は大阪なるって言うわ」

「そ、その。なるさんは、どうして落ち込んでいたんですか? 見てて、とても辛そうに感じたんですけど……」

 すると、なるはアッコの質問に暗い顔で語った。

「……実はね、私、今とても会いたい人が居るの」

「え? あ、会いたい人って……」

 そして二人は、そのままベンチに座りながら会話に入った。

 

「……その人はね、三條院正人と云う青年実業家でね。私はその人と出会って仲を深めて行ったの。……そしてある日、念願だったデートの約束をする事に成功したのよ」

 これを聞いたアッコは歓喜しながら告げた。

「や、やったじゃないですか! 大好きな人と、最愛の人とデートだなんて、夢の様じゃないですか!」

 目を輝かせながらなるに言うアッコ。だがなるは暗い顔立ちで答えた。

「……だけど、その人は突然何処かに行ってしまったの。彼が経営していた会社も何時の間にか無くなっていて……」

「そ、そんな……そ、その人から何か事付けされてはいないんですか?」

 すると、なるは悲しそうに答えた。

「う、ううん……一緒にパフェを食べに行こうって約束して……それが最後なの。うう……」

 そう言うと、なるは再び泣きだしてしまった。

「な、なるさん!」

 アッコは泣きじゃくるなるに驚き、必死に宥めた。

「わ、わたし……何か嫌われる事しちゃったのかな……魅力なかったのかな……」

 大粒の涙を流しながら、なるは呟いた。

「な、なるさん。し、しっかりしてください。まだなるさんに原因が有るって決まった訳でもないですし、その人に何か急用ができたから居なくなってしまっただけかもしれませんよ。そんなに自分を責めないでください!」

 哀しみの余り自分を責めてしまうなるに対し、アッコは励ました。

「うぅ……あ、ありがとう、アッコちゃん……」

 アッコに励まされ、なるは礼を述べて微笑んだ。

「……私は、なるさんが逆に羨ましいですよ」「え?」

 突然なるに羨ましいと発言するアッコ。

 それを聞いて驚いたなるに、アッコは更に続けて延べた。

「……実は、私にも好きな人が居るんです。だけどその人は、常に自分の殻に籠ってしまいがちな人で正直孤独に囚われてしまっている人なんです。私は何とかその人に、人との繋がりを感じて欲しいと願っているんですけどその人は自分の気持ちも素直に相手に伝える事も不下手で結局いつも一人になる事が多いんです……」

 

 沈んだ顔で語るアッコに、なるは言った。

「……アッコちゃんは素敵ね」

「え、え?」

「だって、その人と一緒に居る事よりもその人がどうしたら孤独から抜け出せるのか。そして人との繋がりを感じさせてやれるか。自分の事よりも相手の幸せを一番に考えてあげられる。……ホントに素敵な女の子なのね」

「な、なるさん……」

 穏やかな表情で告げるなるに、アッコも同じく穏やかな気持ちになった。

「と、ところでなるさん。その人の消息って、どうしても分からないんですか? 何処に行ったのとか、出身地は何処とか? その人の出処は聞いてないんですか?」

 アッコがなるに聞くと、なるは答えた。

「う、うん。彼、何だか自分の事はほとんど教えてくれなかったの……聞いても余り答えてくれなかったし……」

「そ、そうですか……」

 これを聞き、アッコは益々なるに共感した。

 何故なら修司も、自分の過去については何も教えてくれなかったからだ。

「そ、その人……どんな人だったのですか? どんな容姿で……」

 すると、なるは答えた。

「うん、ウェーブのかかった黒い長髪に、肌は褐色。そして、とても気高く、誇り高い人だったわ」

 愛しい人の特徴を説明するなるの表情は、とても穏やかで、そしてとても幸せそうな顔立ちだった。

「なるさん……」

 アッコはなるの話を聞き彼女が本当にその正人と云う青年の事を愛しているのを感じた。

 

(……何とか会わせてあげたいな。なるさんと正人って人を。やっぱり好きな人とは一緒に居たい筈よね)

 アッコはどうにか、大阪なると三條院正人を会わせてあげたいと、そう心から願った

 

 その時、アッコはなるの着ていた制服に気付いた。

 

 最初はなるの暗い表情ばかりに気を取られていたがアッコはその制服を目にした事が有った。

「あ、あのなるさん。その制服……」「ん? この制服が何か」

 アッコはなるに制服の事を訊ねた。

「も、もしかして十番中学の制服ですか?」

「え、ええ。そうだけど」

 なるの答えにアッコは驚いた。

「そ、それじゃ、月野うさぎさんや水野亜美さん、それに木野まことさんや愛野美奈子さんの事、ご存知でしょうか?」

 このアッコの質問に、なるは驚きの表情を見せた。

「え! あ、アッコちゃん、うさぎちゃんや水野さん達の事知っているの?」

「え、ええ。結構仲良くさせてもらっているんです……」

 アッコは聖龍隊の事は伏せながら、なるに答えた。

「そ、そうだったの。うさぎちゃん達と知り合いだったなんて驚きね」

「は、はい。普段から仲良くしてもらっています」

 

 その後、二人は夕暮れになるまで会話をし、そして別れた。

 

 

 

 その日の夜。アッコは自室にて一人思い更けていた。

「……はぁ~、何とかなるさんと正人って人を会わせたいんだけど。何の手掛かりも無いんじゃ……」

 何とかして、なると正人を会わせてあげたい。

 そしてアッコは何故、正人がなるの前から姿を消したのか。その真相を知りたかった。

「……そうだ。もしかしたら、うさぎさん達何か知っているかもしれないわ。明日会って話してみましょう」

 そしてアッコは自室の灯りを消して就寝した。

 

 

 

 

[聞かされた真実]

 

 翌日、アッコは修司の自宅のリビングにうさぎ達を呼び集め昨日なるから聞いた話を伝えた。

 

 

『…………』

「だから、なるさんは突然姿を消した三條院正人って男性に会いたがっているんですよ。

私はどうしてもなるさんと正人さんを会わせてあげたいんです。でも何処に行ってしまったのか、手掛りが無くて……うさぎさん達は何か知っていませんか? その三條院正人って男性の事を……」

 熱く語るアッコに対しうさぎ達は目を丸くして驚き、そして口を閉ざしたままだった。

「な、何ですか……この暗くて重い空気は……」

 その場の尋常でない空気の重さに、アッコは思わず怯んだ。

 

 そしてうさぎ、亜美がまずアッコに話しかけた。

「あ、あの……アッコちゃん」「ちょっと……」

「ん? ど、どうしたんですか、うさぎさんに亜美さん」

 何かを思い詰めたような顔立ちでアッコに言おうとする二人。

「じ、実はね。そ、その三條院って人は……」

「う、うん……アレなんだよね」

 まことに美奈子も、語るのを躊躇している感じで喋った。

「へ? な、何か有ったんですか? その三條院って人に……」

 アッコが訊ねると、レイと衛も重い口を開いて語り始めた。

「じ、実はアッコちゃん……」

「その三條院って男なんだけど、実は……」

 そしてうさぎ達はアッコに説明した。その三條院正人と名乗る男の真実を。

 

「……う、ウソでしょ……!」

 余りの事実に、アッコの表情は固まってしまった。

「……ホントなのよ、アッコちゃん」

 レイがアッコに告げた。

 続いて、まことに美奈子がアッコに真実を述べる。

「その三條院正人は……以前アッコちゃんも会った事のある、あのダークキングダムの四天王ネフライト本人なのよ」

「なるちゃんは正体を知らないで一緒に過ごして来たみたいだけどネフライトはその偽名を使って人間社会に溶け込んでいたのよ」

「そ、そんな……なるさんの愛した人が、あのネフライト……」

 アッコは驚愕した。以前、自分の命を狙って来た四天王の一人で、かつ容赦なく追跡して来たあのネフライトがなるの愛した意中の人であった事に……。

「そ、それじゃ…なるさんの愛した人は、もう……」

 そしてアッコは同時に知った。

 なるの愛した人は、自身が好意に思っている修司いや聖龍使いに惨殺され、もうこの世の人で無くなっていた事に。

 

 アッコは以前、仲間達から聞いていた。

 自分が気絶している時、聖龍使いが怒りに我を忘れてネフライトを始め多くの悪役達の命を奪って来ている事に。

「そ、そんな……! それじゃ、なるさんは、もう……」

 アッコは悲痛な表情で呟いた。

「も、もう、なるさんに会わせてあげられないの? なるさんはもう、愛した人と約束を交わすことすらできないの……!?」

 目に涙を溜めて、アッコは嘆き呟いた。

『……』

 そんなアッコを見て、思わず口を紡ぐ面々。

 

 その時、リビングに修司と変身怪獣が入って来た。

「よう、お前等」「し、修司!」

 相変わらず無愛想な顔で入って来た修司を見て、衛は驚いた。

「今の聞いたぜ。全く、余計な事情を持って来てくれたな」

「へ、変身怪獣……」

 突然入って来た上に、話を聞いたと告げる変身怪獣に、アッコは反応した。

 

 

 そして修司と変身怪獣も加わり、談話を始めた。

「……ゴッホン。え~、まず議題の根本的な原因と言いますと……お前だよな修司」

 そう言いながら、変身怪獣は修司の方に視線をやった。

 それと同時に他の面々も修司に視線をやる。

「……まぁ、そうだよな。その三條院正人、いやネフライトは俺がブッ殺したって云うからな。俺はあんまし覚えてねえけど」

 腕を組み、ふてぶてしく発言する修司の言動に、衛が物申した。

「おい修司! 少しは反省しているのか。お前がネフライトを、なるの恋人を殺ったんだぞ!」

 この発言に対し、修司は言い返した。

「何言ってるんだ。俺が殺さなくても、最終的にはセーラー戦士であるお前等にネフライトは殺されていたかもしれないんだぞ。何よりアイツが素性を隠したまま、そのなるって女と付き合ったのが原因じゃないか? 自分を偽って女と付き合ったネフライトの方に、そもそも歩が有るんじゃねえの? 俺も、そのなるって女も良い迷惑だぜ」

 悪気のない様な素振りで言い放つ修司を見て、衛やレイは少し苛立った。

「し、修司君……」「お、お前な……」

 そして、変身怪獣が皆に告げた。

「まぁまぁ。今はそれよりも、そのなるって子の事をどうにかしたいんだろ? そうだったな、アッコ」

「え……う、うん」

「どうしようかしら。なるちゃんにホントの事を話す訳にもいかないし……」

「そうだよねぇ。死んでしまっている以前に、今まで嘘を付いていた事も明かすのはなぁ……」

 亜美は口元に手を当てながら、そしてまことは頬に手を当てながら悩んだ。

 

 そして皆が悩み抜いている、その時。突然修司が告げた。

「なぁ。俺に一つ、妙案がある」

「ん? 何?妙案だって?」

 衛が思わず聞く。

「し、修司。その妙案って……」

 アッコが訊ねてみると、修司は不敵な微笑みを浮かべながら答えた。

「ん? それはだな……」

 そしてそのまま、修司は皆に己の考えた提案を論じた。

 

 

『…………』

 みんな、修司の提案を聞き、驚きを隠せなかった。

「どうだ。俺の考えた案は。これなら、そのなるって女に良い思いをさせられるし何より最後には真実を打ち明けながら全てが終われる」

 椅子に座り、腕を組みながら修司は言い放つ。

「で、でも、これって……」

 まことが暗い表情で呟く。

「……何だか、ハッピーエンドには程遠いシナリオですね」

 修司が出した案をシナリオと言い放つ亜美。

「確かにね。これじゃ、あんまりにもなるちゃんが救われないわ」

 レイも拳をほほに当てながら呟いた。

「そ、それにさ……修司君本気なの?」

「うん、何がだ美奈子」

「こ、これじゃ、修司君がまるで……」

「ああ。お前、なるに……」

 重たい表情で呟くように話すうさぎと衛に対し、修司は返答した。

「なに。本物のネフライトは俺が殺しちまったんだし、多少の事は腹を括らないとな」

「し、修司……」

 アッコは返答すう修司の顔を凝視する。

「……ところで、変身する役は、やはり変身怪獣、お前に任せたい」

「まぁな。俺以外にこの役はやれねえだろうし、仕方がねえな」

 変身怪獣に任せると告げる修司に、アッコが突然言い出した。

「ね、ねえ修司! その役目なんだけど」

「へ?」「な、何だ突然?」

 変身怪獣と修司が訊き返すと、アッコは宣言する。

「その役目、私がやるわ!」

「な、なに!?」「ほ、本気かアッコ!」

 自分がやると言い出すアッコに、変身怪獣も修司も驚愕した。

「……そもそも、この話は私が持ち込んだ問題。だからこそ私自身がなるさんの苦しみを少しでも和らいであげなきゃイケないのよ!」

 力強く言い放つアッコの言葉に、全員が息を呑んだ。

 

 そして、そのアッコの発言を聞き、修司が言った。 

「……良し。それじゃ、明日からミッションスタートだ。アッコ、お前は少しでも似せる様に心掛けておけよ。そしてうさぎに亜美にまこと美奈子。お前達も明日、何とかなるを十番街公園に来させるんだ。なるが来なきゃ何にも始まらないからな」

「え、ええ」「わ、分かったけど……」

「で、でもなるちゃんが……」

「う、うん。結局可哀そうだよ……」

 亜美にまことは半ば乗り気でない気持ちで答え、うさぎと美奈子は複雑な心境で答えた。

 

(……私が最初になるさんを気にしたからこそ始まった問題だもの。私だって、少しでもなるさんが幸せだったと感じられる様にしてあげないと……)

 アッコは一人思っていた。

 なるが少しでも幸せだったと記憶に印象付けられる様にする為に。何より、その最愛の人を殺めたのは他の誰でも無い自分の愛する人だからこそ、アッコ自身も重い責を感じていた。

 

 

 

 

[始められた作戦]

 

 翌日、午後の十番街公園。

 大阪なるは一人、うさぎ達に言われて、此処で彼女達を待っていた。

 

「……どうしたんだろ、うさぎちゃん達。突然話が有るから公園で待っててくれだなんて……何よりうさぎちゃん達って、結構自分達だけで行動する事が多いのに今日に限って何故私なんかに声を掛けたんだろう……?」

 

 一人公園で立ち尽くし、うさぎ達を待ち続けるなる。

 その時、一人の男がなるに声を掛けて来た。

「し、失礼。な、なるちゃん……」

「は、はい。誰でしょ……え、えっ? ま、まさか……!」

 なるの目の前に現れたのは、彼女が恋してやまない意中の男、三條院正人だった。

「ひ、久しぶりだねなるちゃん。ゴメンね、連絡も無しに突然姿を消して」

「ま、正人さん……」

 正人の顔を見て、なるは思わず泣きだしてしまう。

「だ、大丈夫かい、なるちゃん」

 泣きだすなるを見て正人が気を掛ける。

「え、ええ。大丈夫です。う、嬉しくて、遂……」

 そう言いながら、なるは自分で自分の涙を拭い、正人の顔を見た。

「ゴメンね、本当に。急に仕事とかの関係で海外に引っ越さなきゃいけなくなって……なるちゃんとも連絡が取れないまま、向こうに行ってしまってたんだ」

「ま、正人さん……」

「ゴメン! お、お詫びに次の日曜日、一緒に何処か出掛けないかい。ほ、ほら、前に約束しただろ、一緒にパフェ食べに行こうって」

「! ま、正人さん。覚えてくれていたんですか……」

 なるは驚いて、両手で口を押さえながら発言した。

「だ、ダメかい……こんな、約束もスッポかして何処かに行ってしまう様な男とは、一緒に居たくないかい」

「そ、そんな事有りません! わ、分かりました。では、今度の日曜日に」

「あ、ああ。了解した。それじゃ、午前10時にこの場所で」

「ええ。私、楽しみにしていますね」

 なるは笑顔で正人に述べた。

「そ、それじゃ。僕はまだ仕事が有るからこれで。必ず、必ず此処に来るから! 絶対来るから!」

 そう叫びながら、正人はその場から走り去っていった。

「ま、正人さん……」

 なるは一人、走り去る正人をずっと見ていた。

 

 

「よ、良し。これで第一作戦は無事に済んだな」

 その二人の情景を、茂みの中から変身怪獣たちが覗いていた。

「あ、ああ。だけど、ホントに加賀美の奴も何にでも変身できるんだな」

 初めてアッコの変身能力を拝見し、驚く衛。

 実は、あの三條院正人はアッコがコンパクトで変身した姿だった。

「で、でも……何だか、ね」「う、うん。結構違和感あったわね」

 レイと亜美は互いの顔を見ながら呟いた。

「は、はは……確かにね」「う、うん。声と口調が……ねぇ」

 うさぎと美奈子は、アッコの変身で違和感のあった声と口調について語る。

「……アッコちゃんの能力って凄いけど、変身能力については声だけは変身怪獣には劣るわね」

「まあな。さて、これで明日。なるに良い思いさせてから、辛いけど真実を明かさねえと……」

 まことは声の所を指摘し、修司は既に次の作戦に移行する事を考えていた。

 

 

 

 

 そして日曜日。公園でなるは正人こと、変身したアッコを待っていた。

「……遅いな、正人さん」

 なるは腕時計を見ながら呟いた。

 その時「ご、ゴメンなるちゃん!」

「あ、正人さん」正人に変身したアッコが走ってやって来た。

「ご、ゴメンゴメン。少し遅刻しちゃったかな」

 後頭部に手を当てながら、なるに謝る正人に変身しているアッコ。

「ううん、大丈夫ですよ。私、気にしてませんから」

 なるは笑顔で答えた。

「よ、良し。それじゃ、行こうか」

 そう言うと正人のフリをしているアッコはなるに手を差し伸べる。

「は、はい」

 なるは少し照れながら、差し出された手を掴んだ。

 

 そして以前と同じくセーラー戦士達に変身怪獣、そして修司は離れた場所で二人の様子を監視していた。

「よ、良し。なるちゃんは未だに気付いていない様ね」

 レイは、なるが一緒に居る正人が偽者だと気づいていない事に安堵していた。

「で、でも。結局、今日の内になるちゃんは……」

「……ええ。再会できたと言うのに、スグに破局してしまう事に」

 まことと亜美は、この後計画している作戦の内容から結局なるは苦しんでしまう結果になる事を自負していた。

「だが、これを機になるは初恋を終わらせられる。どうぜ、どんなに上手く誤魔化しても嘘は何れバレる。なら、バレる前に少しでも良い思い出を作ってやってから別れさせた方が幸せだろうしな」

「……」

 修司の発言に、衛は無言で聞き入っていた。

 

 

 

 

[念願の初デート]

 

 そしてなると正人(アッコ)は、パフェを食べに行く前に色々とお店を回っていった。

 

「あっ、ねえねえ正人さん、この服どうかな?」

「う、うん。似会うんじゃないかな」

 二人はまず、少し大人びた洋服店で買い物を楽しんだ。

 

 その様子を、先ほどと変わらず修司やうさぎ達が気付かれない様見ていた。しかも変装までして。因みに、変身怪獣は透明化能力で同行していた。

「……今のところは順調ね」「そ、そうだね」

 周りに聞こえない様に小声で会話をするレイとまこと。

「このまま最後までバレなきゃ良いんだけど」「ああ。全くだ」

 亜美と衛も小声で会話した。

「……それにしても、なるちゃんホントに幸せそうね」

「うんうん、あんななるちゃん久しぶりに見るよ」

 笑顔でデートを楽しむなるを見て、思わず自分も笑顔になるうさぎと美奈子。

(……デートって、そんなに良いもんなのかね?)

 修司は二人の様子を見ながら、一人考え更けていた。

 

 

 買い物を済ませた二人は、今度はボウリング場にやって来た。

「いやっほ~」「はは。上手い上手い」

 思いっきりボウリングを楽しむなるを、正人(アッコ)は拍手しながら誉める。

「……何だか、見てて虚しくなるわね」「ん? 何がだ?」

 突然虚しくなると発言するレイに、修司が訊ねた。

「確かにそうね。例え、この後悲劇的にも別れると分かっていても、あのなるちゃんの楽しそうな顔を見てると」

「なるちゃんが哀れ過ぎるわ……」

 美奈子とまことは思わず涙を流してしまう。

「し、修君。何とかできない? 私やっぱり、なるちゃんに真実打ち明けるのは、ちょっと……」

 うさぎが半ベソを掻きながら修司に述べる。すると修司は告げた。

「……残念だけど、ちゃんと打ち明けておいた方がなるの為ってもんだ。嘘ばっか付いていたんじゃダメなんだよ」

 修司は無愛想な顔で告げた。

 だが、同時に修司は自分自身にもその言葉を言い聞かせていた。

 

(……まぁ、嘘ばっか付いて生活しているのは俺の方だけどよ。創られた世界で偽りを付き通す、哀れな三次元人)

 

 

 

 そして、なるは正人と念願だったパフェを食べる事になった。

「うわ~、美味しそう」

 なるは目の前のパフェに目を輝かせながら喜んだ。

「さぁ、遠慮なく食べてよ。今日は徹底的に僕が奢るよ」

「あ、ありがとうございます。あ、あの……」

「ん? 何だい、なるちゃん」

「え、えっと。正人さん、今日は洋服店から始まって色々とお金払ってもらっていますけど、大丈夫ですか?」

 このなるの発言に、笑いながら正人(アッコ)は答えた。

「ああ、大丈夫大丈夫。今まで君を待たせてしまった、ほんのお詫びだよ。気にしないでくれよ」

「は、はぁ……」

「それに、どうせ修司のお金なんだし」

「え? し、しゅうじって……?」

「あ! あ、あ~、な、何でもない何でもない。さ、さっ、パフェが融けない内に早く食べなよ」

「あっ、はい……」

 

 この様子を離れた場所から双眼鏡で覗いていた面々は……。

「あ、あのバカ。余計な事言いやがって……」

「ま、まぁ。なるも気付いてないみたいだし、大丈夫だろ」

 アッコの発言に怒る修司に、それを宥めた衛。

 実は今回のデート資金は全て、修司から出ていたのだ。

「ふふっ。正人さん、はい、ア~ン♡」

 なるは正人(アッコ)の口にパフェを掬ったスプーンを運んで来た。

「え? ぼ、僕にかい?」

 思わず驚く正人(アッコ)。

「そうですよ。正人さんだって美味しい思いをしたいでしょ。だ・か・ら、はい、お口開けて♡」

「う、うん。あ~ん……」

 正人(アッコ)は口を大きく開けて、なるにパフェを食べさせてもらった。

 

「ひっ、ひぃ~!(涙目)」「な、なんて羨ましい!(涙目)」

 美奈子と変身怪獣が揃って、呟くように叫んだ。

「二人とも、僻まない僻まない」

「特に変身怪獣。貴方は透明になっているんだから発言は控えて。誰かに聞こえたらユーレイだって騒ぎになるわ」

 思わず言い放ってしまう二人を、亜美とまことが宥めてあげる。

「し、しかし……本当は、あの正人が加賀美だと分かっていても、何だか羨ましく思える場面だな」

「もうっ、まもちゃん、まさかアッコちゃんに嫉妬している訳?」

「い、いや……ただ、本当に周りから見ても幸せそうなカップルだなって。そう思えるんだよ」

「……だけど、もうすぐでそれも終わりなのよね。この後二人は公園に戻って、それから……」

 暗い表情で呟くレイ。そして修司も。

「そうだな。もう、夢はこれ位にしてやろう。いつまでも夢心地じゃいけない。現実に戻してやらねえと……」

 

 

 

 

[公園にて明かす]

 

 そして、二人は待ち合わせ場所であった公園に戻って来た。

 なるは、とても満足した表情を見せていた。それを見た正人(アッコ)も内心喜んでいた。

 

「……な、なるちゃん」「は、はい。何でしょう、正人さん」

 正人(アッコ)は、なるの顔を見つめて語り始めた。

「き、今日はホントに楽しかったよ。ありがとう……」

 その言葉を聞き、なるも笑顔で答えた。

「ま、正人さん……私も同じです。今日は本当にありがとう」

「そ、その……実は君に話しておきたい事が有るんだ」

「え? ……何ですか」「そ、その……あの」

 思わず発言を躊躇するアッコを、茂みの中からうさぎ達が見守っていた。

「わ、わ……どうしよう。アッコちゃん、やっぱり話すの躊躇っちゃっているよ」

「仕方ないわよ。内容が内容なだけだもの。どうしても言いにくいわよ」

 話を躊躇うアッコを見て、レイは呟いた。

「だから俺がやるって言ったんだよな……まさか、この場面で自分は人ではなくダークキングダムの四天王だった、なんて打ち明けなきゃいけないなんてよ……」

 最初に自分が変身すると言いだした変身怪獣が呟いた。

「そして、この後聖龍使いが現れて……」

「正人ことネフライトと一戦繰り広げてなるちゃんの目の前でネフライトを倒そうなんて……」

 亜美もまことも、この後の展開に複雑な心境であった。

「修司君も結構えげつない事するわよね。まさか《悪い夢は早く忘れちまうもんだろ? だったら早く夢から覚ましてやった方が本人の為だろ》って自分からネフライト倒して、なるちゃんに嫌われる役回りをしちゃうなんて……」

 美奈子も複雑な気分のまま、修司の考えた妙案を気にしていた。

 

 

 そんな皆の会話や心境を知らず、なるは正人(アッコ)の顔を凝視していた。

「な、なるちゃん。実は、僕……」

 なるに打ち明けようとするアッコ。だが、なるの方は思いつめた表情で口を開いた。

「……言っておきたい事って、貴方の事ですか?」「……え!?」

 なるの発言に、思わず驚いたアッコ。

「……ゴメンなさい。最初会った時から気付いていたんです」

 なるは寂しそうな表情で述べた。

「な、なる、ちゃん……!」

 そのなるの表情を見て、アッコは気付いた。彼女には既に見破られていた事を。

 

「……よし、もう良いじゃろ」

 二人が見つめ合って会話している、まさにその時。

 茂みから突如聖龍使いが飛び出して来て、正人(アッコ)に向かって叫んだ。

「やあ~い、やいやい! な~ぜ此処に居る! ネフライトよ!」

「あっ!」

「え!? せ、聖龍使い? な、何故此処に……!?」

 突然目の前に現れた聖龍使いに驚くなる。更に聖龍使いは続けて発した。

「三條院正人、いや、悪名高きダークキングダムの四天王ネフライト! お主、ま~~だ生きておったか! とっくに他の同士や配下の妖魔は全て拙者が斬り捨てたと申すに、お主はま~~だ健在とは! この場にて斬り捨ててくれるわぁ~~!」

 聖龍使いは叫び終わると同時に聖龍剣を抜き出し正面の正人に剣先を向けて構えた。

「いざ、あっ、尋常に~!」

 言い放ちながら聖龍使いは正人(アッコ)に駆けて行く。

「あっ、あっ、ちょ、ちょっとタンマ……!」

 正人(アッコ)の制止を聞かず、聖龍使いは突っ込んで行った。

 だが、その時。

「あっ、待ってください! こ、この人は本物の正人さんじゃないんです!!」

 聖龍使いの眼前に、なるが立ち塞がった。そして目の前の正人が本物でないと打ち明けたのだ。

「な、なぬ!?」

 思わず聖龍使いは急停止。

 茂みの中に居た面々も、この発言に驚愕した。

「え! うそ?」「も、もう既に気付いていたのか、なるは!」

 レイと衛が思わず言葉を零す。

「き、気付いちゃってたんだ。なるちゃん……」「う、うん……」

 うさぎと美奈子も、驚きながら同時に悲しい顔をしていた。

「で、でも。何処でなるちゃんは気付いちゃったのかしら……」

「うん。もしかしたら、今日一緒に過ごしている時に薄々気づいていたのかもしれないわね……」

 亜美もまことも、ただただ驚く事しかできなかった。

 

 

 

 

[打ち明かされた真実]

 

 なるの突然の告発。最初から正人が偽者である事に気付いていたという。

 

「……な、なるちゃん」「……」

 なるの告発に衝撃を感じた聖龍使いとアッコ。

 そしてアッコは思い切って、なるに訊ねてみた。

「な、なるちゃん……君は、僕が、偽者だと」

 すると、なるは寂しげな表情で語った。

「最初会った時から、薄々違うなって感じていたの。だけど、今日一緒に過ごしてみて確信した。貴方が正人さんではないって……」

「……」

「実を言うとね。一人称を聞いた時から違う人だって気付いたのよ」

「え? い、一人称?」

 すると、なるは変身したアッコと本物の正人の違いを述べた。

「他にも色々と、本物とは違うって感じた個所は有ったけど、やっぱり一人称。あの人、自分の事は《僕》じゃ無く《私》って呼ぶのよ」

「……あっ!」

 アッコもなるの言葉を聞いて思い出した。確かにネフライトの一人称は私だった事に。

 

 アッコに告げると、なるは今度は聖龍使いに向かって発言した。

「聖龍使い……」「……何でござるか」

 なると聖龍使いは互いに向かい合い、聖龍使いの方はまるで何かを覚悟したかのように鋭い眼つきになっていた。

「……さっき、貴方が言ったネフライトって……それにダークキングダムがどうとか、四天王がって……いったい」

「………………」

 なるの質問を黙って聞く聖龍使い。そして、内心思っていた。

(やはり、此処は……)

 

 そして封を切った様に聖龍使いは言い放った。

「……大阪なる。主には本当の事を明かそう。その三條院正人は、拙者が雇った偽者でござる!」

「え!?」「そ、それって……どう言う事?」

 突然の聖龍使いの発言に、アッコは驚きなるは動揺した。

「ちょ、ちょっと修司君!」「き、急に何言い出すの!?」

 茂みの中で、レイとうさぎが小声で叫んだ。

「や、雇った、って。い、一体、何故、そんな事を……」

 訊ねるなるに対し、聖龍使いは更に発言した。

「……頼まれたからでござる。主の愛した正人、いやネフライト殿が拙者に頼んだからでござる。そもそもこの世に三條院正人と言う人間は居らぬ。あの者の本当の名はネフライト。つい最近まで悪事を働いておったダークキングダムその幹部衆、四天王の一人だったのでござる!」

「ま、正人さんが……そんな」

 なるは目を潤わせながら聞き入れていた。

「そして、そのネフライト殿から事付けされたのじゃ。『自分には心から愛した異性で大阪なると云う少女が居る。責めて彼女との約束であったデートを、そして一緒にパフェを食べる約束を果たしてから朽ち果てたかった』……そう言い残しネフライト殿は……死んだ」

「!! そ、そんな…!」

 最愛の人は死んだ。そう告げられ、なるは思わず両手で口を押さえ、目を見開いて驚愕した。

 

 さらに、聖龍使いは続けて語った。

「ネフライト殿は敵にしておくには勿体無いほどの武人であった。主も知っておるかもしれんが、あの者は実に気高く、実に誇り高い男であった。……故に拙者はネフライト殿の頼みを聞いたのでござる!」

 この聖龍使いの告発を聞いて、なるは顔色を変えて聖龍使いに訊ねた。

「……何故、何故貴方が」

「………………」

「何故貴方が其処までやるの? 何であの人が強いって事を知っているの? 何故彼の遺言を聞く事ができたの? ……何故、あの人の最後を見届けたの……!」

 なるは、今までうさぎや亜美達に見せた事のない鋭い眼光そして恨めしそうな表情で聖龍使いを睨みながら問い詰める。

 そして、聖龍使いは覚悟を決めて答えた。

「……拙者が、そなたの愛した男を……斬り捨てたからでござる」

「!!」

 聖龍使いが発言した瞬間、なるは尋常でない顔付きとなり激しい怒りに駆られた。

 そして足元に有った石を拾うと、それを思いっきり聖龍使いに投げつけた。

「な、なるさん!」

 そのなるの様子を見ていたアッコは思わず自口調でなるに叫んだ。

 石は聖龍使いの左肩に直撃。そしてなるは、聖龍使いに向かって怒声で叫んだ。

「人殺し!!」

 そう言い切ると同時に、なるはその場に泣き崩れた。まるで、糸の切れた人形の如く。

「……」『……』

 思わず言葉を失い、ただ沈黙するしかなかったアッコとうさぎ達。

 

 特にうさぎ達は、いつも学校で見ているなるとは全く違う彼女の憎悪と悲しみに満ちた顔を見て、頭が真白になるほど動揺していた。

 

「……うぅ……ううぅ!」

 泣き崩れたなるに向かい、聖龍使いは更に告げた。

「……拙者が憎いか」「……ウッ!」

 聖龍使いに声を掛けられたなるは、鋭い眼つきで聖龍使いを下から睨んだ。

 その鋭くも悲しみに満ちたなるの目を、聖龍使いは直視しては更に吐き捨てた。

「憎ければ憎んでも構わん。好きなだけ拙者を憎むが良い。言うのも何じゃが、拙者は何一つ間違った事はしては居らん。あのままネフライトを放置しておけば一般人に更なる被害が出た事じゃろうし……何より、拙者は武士。敵を切り捨てて行くのが我が人生なのじゃからな」

「……ッ」

 吐き捨てる聖龍使いを睨みながら、なるは怒りの余り歯軋りをした。

「武士故に、対峙した敵とは衝突し合いそして最後には斬るか斬られるか。それだけの事じゃ。確かにネフライトも悪人にしておくには勿体無い程の武人であった。敵であったが故に、共に生きていくことができなかった。たったそれだけの事なのじゃ」

「………………」

 怒りで体を震わせながら、なるは未だに聖龍使いを睨みつける。

「……大阪なるよ。一刻も早く、三條院正人の事は忘れるのじゃ。主が見ていたのは、ただの白昼夢いや、悪夢でござったのじゃ。悪い夢は忘れ、早々に現実に目覚めるがよかろう……それが、主にとって一番良い運命(さだめ)なのじゃ」

 そう言い残して、聖龍使いはその場から歩き去っていった。。

「……う……う、う……うわああああぁぁぁ!!」

 まるで何かが切れたかのように、なるは大声で慟哭した。

「な、なるさん……」

 悲しみと絶望の余り、泣き崩れるなるを見て、アッコは深く動揺した。

 

 

 そして聖龍使いは、兜の内側に備え付けている無線機で衛達に告げていた。

「……衛、衛よ。それにうさぎ達、聞こえておるか?」

「あ、ああ……聞こえているよ」

「後は、お前達の役目だ」「や、役目って……!」

「決まっておろう。当初の目的通り、悲しむなるを友であるお前等が慰め、元気づける策じゃよ」

 そう言うと、聖龍使いは無線を切った。

 

 

 

[偽りであっても]

 

 聖龍使いが去り、その場に取り残された正人に変身したアッコと泣きじゃくる大阪なる。

 

「うう……うううぅ……」「……なるさん」

 真実を知らされ悲しむなるを見て、アッコは居た堪れない心境あった。

「……な、なるちゃ」「……ウッ」「! ……」

 アッコが声を掛けようとした瞬間、なるはギロッとした目付きでアッコを睨んだ。

 その目を見て、一瞬アッコは怯んでしまった。

「……あ、あの……な、なるさん」「……」

 アッコはなるに睨まれ、怯えながらも彼女に声を掛ける。

「そ、その……ご、ゴメンなさい! 貴女を騙してしまって……」

「………………」

 土下座してなるに謝罪するアッコ。

 なるはその姿を黙って見つめた。そしてアッコは更に続けて述べた。

「わ、私は……い、いいえ。私たちは少しでも貴女にネフライトいえ三條院正人さんとの思い出を楽しいままで終わらせようと思って今回の様な事をしてしまったんです……」

「……た、楽しいまま」

 なるがアッコに対し、弱弱しい声で訊ねる。

「は、はい……ほ、本当だったら私の口から貴女に自分が、あ、い、いえ三條院正人が人ではなくダークキングダムの幹部の一人で本名はネフライトと云う事を伝える筈だったんです。そして貴女にその真実を伝え終わった時に聖龍使いが現れて私と一戦交え私が遣られた振りをして、貴女に看取られながら死んでいく……そういう筋書きだったんです……せ、せめて愛しい人の口から真実を告げられ、そしてその人の最後を温かく看取りながら、なるさんの恋を終わらせたかったんです」

 アッコは正人の姿で、実に申し訳なさそうに、なるに今回の妙案の内容を説明した。

「……騙して欲しかった」「……え?」

 突然なるが、とても小さな声で発声した。

 そして彼女は封を切る様にして、いきなり大声で叫んだ。

「騙して欲しかった! 例え、例えあの人が正人さんではなくネフライトであっても人間でなかったとしても、私に嘘をつき続けても良かったから夢を見続けさせて欲しかった!!」

「な、なるさん……」

 悲痛な面持ちで泣き叫ぶなるを目の当りにして、アッコも自然と目から涙を流した。

「……嘘でも良かった。あの人が、正人さんが人間でなかったとしても私にとっては、生まれて初めて好きになった、素敵な人だったもの」

「………………」

 なるの発言に、言葉を失くすアッコ。

「アナタだってそうよ。……私、本当に今日は楽しかった。偽者の正人さんではあったけど、一緒に買い物したり、一緒にボウリングをプレイしたり……そして一緒に笑いながら、パフェを食べたり食べさせたり……本当に素敵な一日だったわ」

「……」

「最初、アナタを見た時、本当に胸が張り裂けそうなほど嬉しかった。久々に見た正人さんの顔、それだけで、どんなに心が救われたか……」

 涙をボロボロ流しながら、なるは続けて語った。

「本当はイケないと分かってた。この人は本物じゃ無い、本物の正人さんでは無い。だけど偽者でも嬉しかった……」

 偽物でも嬉しかった。そう告げるなるの言葉にアッコは居た堪れない心境に至る。

「正人さん本人も私を騙していたみたいだけど、それでも良かったの。嘘はいつかバレてしまうのだって、私にもちゃんと分かる。でも、それでも、本物の彼から直接真実を聞きたかった……」

 涙を流しながら語るなるに対し、アッコも泣きながら話しだした。

「……なるさん、本当にゴメンなさい、貴女を騙したりして……でも誤解しないで。あの人は、聖龍使いは本当は貴女に少しでも夢を見させてあげたかったの」

「ゆ、夢……」アッコの発言に驚くなる。

 彼女は呆然としながらも正人の姿で語るアッコの顔を見つめながら話を聞いた。

「あの人は、本当は貴女に少しでも夢を見させてあげたかったのよ……確かに、あの人が自分の手で本物の正人さん、いいえ、ネフライトを倒してしまったのは事実よ。でも、だからこそ彼は今回の事で貴女に少しでも良い思い出を作ってあげようと、そして良い夢を見させてから、その夢を覚まさせようと、彼なりに考えた事なのよ」

 涙を流しながらなるに話すアッコは更に語る。

「彼は彼なりに責任を感じていたわ。貴女と生き別れたまま、ネフライトを倒してしまった事で貴女を苦しめてしまった。だから彼は最後には貴女の前に姿を現して、その場でネフライトを斬り捨てて貴女に恨まれる役回りを自ら買って出たのよ」

「……」

 アッコの潤んだ瞳を見つめながら、なるは黙って聞き入れていた。

「……でも、結局貴女を騙してしまったのには変わりなかったわ。なるさん、本当に、ゴメンなさい……!」

 アッコは再び、なるに向かって土下座をした。

「あ、あなたは……」

 そしてなるは、アッコに近寄り、彼女の手を取って語った。

「……もう良いわ。頭を上げて」「! な、なるさん……」

 アッコが顔を上げると、なるの表情は穏やかな、いつものなる本人の顔に戻っていた。

「もう良いわ、もう一人の正人さん。貴方や聖龍使いの気持ちは良く分かったわ……確かに、私は長い夢を見ていたのかもしれない。気高く、そして素敵な三條院正人と云う男性と出会いそして恋に落ちていく……そんな白昼夢だったのかもしれないわ」

「な、なるさん」

「貴方の言うとおり、聖龍使いは自分から憎まれ役を演じながら私の長かった夢を覚ましてくれたのかもしれない……正直、私の中ではまだ、彼を完全には許せないでいるわ。だけど彼の目を見ていて気付いたの。彼は私に憐みの目を向けていただけでなく自分自身も苦しみ、そして悲しんでいる……そんな目をしていたの」

「……」

「……私以上に、彼自身が苦しみ、そして悲しみながらも自ら憎まれ役を演じている。そして私の夢を覚まさせ現実に戻してくれた。……残酷ながらも、優しく、そして自分自身を苦しめながら彼は私の夢を覚ましてくれたのかもしれない……」

「……なるさん」

 なるの言葉を聞き、アッコは苦心する。

 そしてアッコはなるの手を握り締め、彼女に告げた。

「なるさん、これだけは胸に留めて置いてください。三條院正人は、ネフライトは貴女に嘘を付いてはいました。だけど貴女への想いだけは嘘偽りでは無かった! 本気で貴女を愛していた事だけは、忘れないでください!!」

「……う、うん」

 アッコの力強い発言に、なるは小さく頷いた。

 

「……なるちゃん」「え……?」

 悲しむなるに声を掛けて来たのは、うさぎ達だった。

「う、うさぎちゃん! それに、他のみんなも……!」

 なるは目を、涙で輝かせながら、悲痛な面持ちでうさぎ達を見た。

「なるちゃん、元気出して」「……話は、聖龍使いから聞いているわ」

 亜美、まことがなるに話しかける。

「元気出して、なるちゃん」

「辛いのは分かるわ。分かるけど、気持ちだけはしっかり持って……!」

 うさぎと美奈子も、なるを励ましてあげる。

「取りあえず、此処で話すのもアレだし場所を移しましょう」

「そうだな。ほら、なるちゃん。立てるかい?」

 場所を移して話をしようと云うレイに、なるに手を差し伸べた衛。

 彼女等を見て、なるは少しばかり心の内が安堵した。 

「み、みんな……!」

 自分を気に掛けてくれる親友達。なるは歓喜の余り、再度涙を零してしまった。

 

 その様子を見てたアッコは、なるに気付かれない様にその場を去ろうとした。だが

「……あ、待って!」「……っ」

 何も言わず、その場から立ち去ろうとするアッコを、なるは引き止めた。

「な、なるちゃん……!」

 思わずうさぎは手を組み心配する。

「……今日は、本当にありがとう」「……え!?」

 なるは変身しているアッコに対し、率直なまでに礼を述べる。

「今日は本当に楽しかったです。ありがとうございます! もう一人の正人さん、いいえ、ネフライト様!」

 満面の笑みを浮かべて自分に礼を述べるなるの顔を見て、アッコは内心歓喜した。

「……(うん)」

 なるの顔を見たアッコは、そのまま何も言わずなるに微笑みを見せて走り去った。

 

「あ、ありがとう! ホントに、ホントにありがとう!」

 去りゆくアッコの背中を見つめながら、なるは正人の姿が見えなくなるまで叫び続けた。

「な、なるちゃん……」

 なるの一途な叫びに、うさぎ達は思わず口を押さえて泣くのを堪えた。

「………………」

 しかし一人だけ、地場衛だけは別の心情を抱いていた。

 

 

 

[憎まれるのも英雄]

 

 一方の修司は、自宅に戻っていた。

 そしてリビングで修司は好物のコーヒー牛乳をがぶ飲みする。

 

「……し、修司様」「ウグッ、ウグ……ぷは、何だウッズ?」

「そ、その……例の、大阪なるさんの件は、どうなりましたか?」

 ウッズが修司に今日の一件を訊ねてみた。

「ああ。一応は上々かもな。ネフライトが本心からなるを好いていた事も伝えたし、流れ的ではあったが俺がネフライトの奴を斬り捨てた事も伝えたから、後は親友であるうさぎ達に任せるわ」

 椅子に座りながら話す修司は空になったコップに加糖のパックコーヒーを4、そして牛乳を6の割合で注いだ。

 

 その時、修司が自製のコーヒー牛乳が入ったコップを手に取り飲もうとした矢先リビングに衛が勢いよく入室して来た。

「オイっ、修司! さっきのアレは何だ!」「ま、衛さん!?」

 物凄い権幕で怒鳴りながら入って来た衛に、ウッズは驚いた。

「ま、まもちゃんっ」「ま、衛さん、待って!」

 衛の後を追う様に、続けて部屋に入って来たうさぎとアッコが衛を制止する。

 そして彼女等に続いて他のセーラー戦士に変身怪獣も入って来た。

「ま、衛さん、落ち着いて」

「ウルセエッ、修司に言っておかなきゃ気が済まねえんだよ!」

 レイの制止を聞かず、衛は修司に歩み寄り、言い詰めた。

「オイ、修司!」

「……なんだ衛? 俺がコーヒー牛乳を飲んでいる時ぐらい静かにしてくれよ」

 そう衛に言うと、修司はコップを口に運び少しばかりコーヒー牛乳を飲んだ。

「……お前、なるに何て事言うんだ! あれじゃ彼女……」

 怒鳴りながら衛が述べると、修司は冷めた顔で衛に言った。

「……ふぅ。アレが最善の配慮だと思ったからこそ、俺はなるに対してああ言ったんだよ」

「! お、お前……」

「……死ぬ間際、ネフライトがなるを本気で愛していたと言い残していた。更に俺が彼女に恨まれる事により、少しはなるの苦しみも和らぐだろうと思ったからだ。悲痛な感情よりも、厳しいけど目を背けてはいけない現実を憎しみの感情で乗り越えていければ、なるだってこの先また新しい恋愛ができるかもしれねえだろ?」

 ふてぶてしく語る修司に衛は苛立ちと同時に、発言の内容について躊躇してしまう。

「……それに、お前らには到底無理だからな」「な、なに?」

 修司は衛を睨みながら言い切った。

「お前や、お前の女でなるの親友達でもあるうさぎ達に、こんな真似はできないだろ? ネフライトを殺め、そしてなるに憎まれる……そんな役回りをお前等にはこなせないだろ?」

 上目遣いで語る修司に、衛は何も言い返せなかった。

 

 そして修司はコップに残っているコーヒー牛乳を一気に飲み干し、そして立ち上がると皆に聞こえる様に更に続けて言い放つ。

「時に英雄ってのは、色んな理由で善人悪人関係なく恨まれちまうもんなんだよ。そして誰かかその憎まれ役をやらない限り他の関係ない連中まで憎まれちまうように世の中できているんだ」

 そして、次の発言を聞き衛は目の色を変えた。

「言っちゃ何だか、優しすぎて甘過ぎるお前やセーラー戦士には出来ない芸当だろ? お友達のなるちゃんに自分から嫌われちゃうなんて真似アマちゃんのテメエ等にゃ到底できないだろう? 代わりに恨まれてやるんだから感謝して欲しいぐらいだぜ」

「!! て、テメエ!」

 ふてぶてしい面構えで言い切る修司に、衛は完全に怒ってしまう。

 そして衛は拳を振り上げ、修司に殴り掛かった。

「ま、まもちゃん止めて!」

 しかし、うさぎの制止は耳に入らず、衛は修司の顔に向けて右拳で殴ろうとした。

 しかし修司は衛の右ストレートを軽くかわし、咄嗟に衛の右腕を掴んだ。

「おりゃっ!」

 そして修司は体勢を立て替え、そのまま衛を一本背負いで投げ飛ばした。

「イダッッ……」

 衛は腰から床に叩きつけられてしまう。

「ま、まもちゃん!」「ま、衛さん、大丈夫!?」

 投げ飛ばされ、腰から叩き落とされた衛にうさぎやレイ達が歩み寄る。

 そして修司は投げ飛ばされ腰を押さえる衛を見下ろしながら吐き捨てた。

「へっ、まだまだ足腰が弱いな」

 そう言うと修司はそそくさとリビングから出て行った。

「あ、あの野郎……」

 衛は腰に手を当てながらゆっくり立ち上がった。

「ま、まもちゃん。大丈夫……?」

 苦痛で顔を歪ませる衛を、うさぎは心配する。

「……し、修司……」

 アッコは目の前での修司の言動に驚きを隠せなかった。

「あ、アイツ……何ちゅう事を」

 変身怪獣も掌で頭を押さえながら呆然とする。

 皆が修司の言動に驚愕している、その時。ウッズが皆に話しかけた。

「み、皆さん。どうもすいません。し、修司様が……」

 手を重ね、頭を下げて謝罪するウッズ。

「う、ウッズさん……」

 アッコがウッズに視線を向けると、腰を押さえながら衛がウッズに問い詰める。

「……お、おいウッズ。し、修司はいつもアアなのか? あんな暴言吐く奴だとは知らなかったぞ!」

 腰の痛みで顔を歪ませた衛がウッズに言い寄る。

「し、修司様は……あの人は、いつもこうなんですよ」

「い、いつもって……」

 アッコがウッズに訊ねると、ウッズは悲しそうに話した。

「……あの人は昔から、人とのコミュニケーションが上手くとれず、それでつい思った事を、憎まれ口を言ってしまうんですよ」

 それを聞き、レイにまことが続けて言った。

「そ、そうなんですか?」

「ま、まぁ……元から毒舌だなって思う事は多々有ったけど……」

 そんな皆にウッズは更に述べる。

「修司様は、昔から周りの人達に距離を置かれたりそんな人達を見て自ら距離を置いてしまったり……人と接触する機会が少なくてそれで相手にどんな事を言えば良いのかどう関われば良いのか分からずそれで遂、毒のある発言を口にしてしまうんです。そのせいで余計に周りからは拒絶されてしまって……今では、人から恨まれたり、憎まれたりする事じたい、慣れてしまっているんです」

「そ、そんな……!」

「憎まれる事も、慣れてしまったって言うの……!」

 亜美と美奈子は目を見開いて驚いた。

「……あの方はプライドが高くて、それで自分の本音だけは素直に言えず代わりに毒舌を吐く事で自分の胸の中に仕舞い込んでいる思いや考えを伝えているんですよ。……毒舌や憎まれ口でしか相手と会話する事ができない、そんな御方なんですよ」

「………………」

 ウッズの修司への釈明を聞き、衛は何も言わなくなった。

「あの人は、余りにも周りから拒絶されながら過して来ました。故に自ら嫌われ役になる事も躊躇なく、平然と出来てしまいますし……何よりあの人は、人との繋がりを、今まで感じた事が無いのです」

 ウッズは不意に、目に涙を浮かべた。

「そんなぁ……」「……人との繋がりを感じた事がないなんて」

 うさぎにまことはウッズの話を聞き、思わず涙する。

「…その話、以前修司から聞いた事有る」「な、何!?」

 ポツリと呟いたアッコに、衛は驚いた。

「……修司、生まれ付き人を信じたりする事ができないって。しかも、その相手は周りの人たちだけでなく実の親や親せきにも、不信の目を抱いてしまって……。今でも他人を本気で信じたりする事ができないって……凄く虚しい顔で言ってた」

 アッコの発言に、皆表情を暗くした。

「お、親ですら信じる事ができないって……!」

 衛は俯きながら、暗い顔立ちで喋った。

「……そりゃ、確かにネフライトは何れ私達に倒されていたかもしれない。それ故に、なるちゃんを不幸にさせてしまったり、彼女に恨まれていたかもしれないわよ。でも、だからって……!」

 レイに続き、まことに美奈子も発言した。

「そうだよね。あそこまでなるちゃんに対して言わなくても良いと思うんだけど……」

「それに、何故急にアッコちゃんが変身したネフライトは自分が雇ったなんて言ったのかしら……」

「……」

 突然アッコは目を見開き、リビングから飛び出て行った。

「あっ、アッコちゃん!」

 思わずうさぎが声を掛けるが、アッコはそのまま行ってしまう。

 

 

 

 

[慣れてしまった《憎》と《悲》]

 

 一方修司は、自室で漫画を読んでいた。

 

 そんなとき、アッコがいきなり部屋に入って来た。

「ちょっと修司!」「……なんだ今度はお前かよ。今度は何だ?」

 ノックもせず部屋に入って来たアッコに向かい修司は特有の右眉を上げながら見せるしかめっ面でアッコに言った。

 

 そんな修司にアッコは言い放つ。

「……何であんな事言うのよ。せっかく自分と仲良くしてくれている人達なのに、修司の下で頑張ってくれている仲間なのに何であんな挑発的な事言っちゃうの……」

 

 すると修司は言い返した。

「仕方がねえだろ。それに、俺は間違った事は言っていない」

 冷めた表情で言う修司。

「し、仕方が無いって何よ。もっと他に言い様があるでしょ?」

 言い返すアッコに対し、修司は更に言い返した。

「それじゃ、何て言えば良かったんだ?」

「え? ……え、え~と」

 思わず戸惑うアッコに、更に修司は吐き捨てた。

「俺は思った事は勿論、本当の事なら必ず口にする男だ。例えそれで相手が俺を憎もうが、俺は気にしねえ」

「し、修司……」

 アッコは悲しそうな顔立ちで修司を見つめるも、修司は冷淡に話し続ける。

「それにあの時なるはお前を偽者だと気づいていたのを告発した時お前一人で対処できたか? 下手に喋って余計なるを混乱させたり、はたまた傷付けて余計状況を可笑しくしちまう可能性だってあっただろ。あの時俺が言わなかったら、お前一人じゃどうしようもなかっただろう」

 修司の発言に何も言い返せないアッコ。

 

 そして修司は徐にアッコへ向けてた視線を逸らし、そしてとても冷め切った顔で語った。

「……俺の事なんか、気にしなくても良いんだぜ」

「……え?」

「俺は……俺は既に、自分に浴びせられる憎しみにも、そして自分が感じる悲しみにも、慣れちまっているからよ」

「!!」

 冷めた表情で台詞を吐く修司に、アッコは衝撃を感じ思わず固まってしまった。

「……最近、感じているんだ。俺が、俺みたいな男が、お前やうさぎ達そして他の聖龍隊員と一緒に居ても良いのかと。……俺みたいに毒舌しか口から出せず、愛や信頼そして繋がりを感じられない俺が、お前等の様な心美しい連中と居ても良いのかと……」

「し、修司……」

「俺が、お前等と一緒に居るなんて、場違いなのかもな……こんな、汚れた心を持っている、俺がよ……」

 氷の様に冷たく、冷めきった顔で言い放つ修司。

 ふと、アッコは修司に言い寄った。

「……そんなこと無いわ」「……」

 アッコの悲しそうな声に、修司は何も答えない。

「……そんなこと無いわよ。わ、私は、少なくとも私は、修司と一緒に居て嫌だった事は無いわ!」

「……」

 修司は変わらず、アッコから目を背けながら無言を貫く。

「し、修司にとっては、まだ慣れないのかもしれないけど……少しずつ、少しずつで良いから慣れて行こう。人との繋がりや愛情……そして少しずつでも良いから人を信じていこうよ!」

 アッコの発言を聞き修司は徐に椅子から立ち上がり、アッコの眼前に立ち尽くした。

「し、修司?」

 修司はアッコの顔を冷えた眼つきで見つめながら告げた。

「……俺に得られると思っているのか。俺がお前等の様な感情や心を持てると、お前は本気で思っているのか」

 空虚な眼差しで見つめながら修司は語り、アッコは答えた。

「……できる、できる筈よ。いいえ、私が必ず修司に教えてあげるわよ! 修司に人としての愛情や信頼を、私が教えてあげるから! ……だから、もう、自分で自分を追い詰めないで……お願い」

 そう言うとアッコは修司に抱き付き、彼の左肩に顎を乗せた。

 そして静かに涙を流した。

 修司はそんなアッコを拒むことなく、だが同時に何も言わず冷めた顔のまま己の体にしがみ付きながら涙するアッコを受け入れた。

 

「……修司、アッコ」

 そして開きっぱなしになっているドアの死角から走り去っていったアッコを気にして彼女を追って来た変身怪獣やうさぎ達が二人の会話を密かに聞いていた。

 

 

 

 愛を、信頼を、そして繋がりすら感じた事もない男、小田原修司。

 彼に対してアッコや変身怪獣そしてうさぎ達セーラー戦士は胸が張り裂けそうなくらい暗欝となった。

 

 だが彼等は知らない、いや、知ってはいけないのかもしれない。

 修司の心が、孤独がどうしても消せないものである事を。

 人の願望や理想から生まれた事を知らない彼等はそんなものを得ようとしても得られなかった別次元の修司の心だけは救えない事実を、知る事が有るのだろうか。

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