エンデヴァー逆行物   作:デッテユー

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後日談3

俺の名は分倍河原仁。

 

ヒーロー名はトゥワイス。

 

今となってはどこにでもいるプロヒーローの一人だ。

 

突然だが、少し俺の自分語りに付き合ってくれないか。

大した意味はない、ただそういう気分ってだけさ。

 

俺の人生には二つの転機がある。

 

一つ目は中学の頃、ヴィランの起こした犯罪に巻き込まれたことで始まった。

その時の事故で両親は他界、親戚もおらず俺は一瞬で天涯孤独の身になった。

 

それから施設のお世話になりつつ、自分の今後に絶望していた時に奴らが俺の前にやってきた。

 

「君が分倍河原仁くんだね?僕たちは公安に所属している者だ」

 

そう言って綺麗な愛想笑いを浮かべた数人の大人がやってきて、俺に手を差し出してきた。

そして混乱する当時の俺に彼らは言うんだ。

 

「君の個性で、社会をより良くしよう」

 

要するに俺の個性を気に入った公安が俺を勧誘にしてやってきたんだ。

正直、そんな綺麗ごとを言われたところで俺には響かなかった。

だけど、そこに入れば少なくとも食うには困らない。

 

将来に絶望していた俺にはまさに救いの手だった。

 

後から聞いた話だが、もともと俺の個性を危険視して警察が監視をちょくちょくしていたらしい。

それに気が付いた公安が俺を横取りしたってことだ。

 

さて、警察が危険視し、公安がほしがる俺の個性、それは『二倍』。一つのものを二つに増やすシンプルな個性だ。

 

俺の頭じゃ大した使い方なんて出来ないが、公安の手にかかれば最強の個性に早変わりだ。

 

組織の人間を増やし、仕事の効率を倍速に、重要人物は増やしたコピーを影武者に。

 

俺の個性によって組織の人間はブラック労働から解放されたのか、もっと深い闇に放り込まれたのか、正直判断に困るところだ。

 

俺は俺でヒーローとしてのレールを敷かれ、知識と戦い方を叩きこまれた。

まぁ、あいにくと俺の頭と体は出来が悪く、たいして強くはなれなかったが。

 

そんなこんなで俺は公安直属のヒーローとなった。

そこからはクソみたいな仕事の始まりだ。

 

裏で悪事を働くものはヴィランはもちろん、一般人、ヒーローだって殺した。

それが今の社会を維持するためだとかなんだとこか。

 

当然恨みもない人間を殺すなんてことはしたくねぇ。

社会の維持なんて俺にはどうでもよかったからなおさらだ。

 

だから俺は自分のコピーに任務をやらせた。

何人も自分を作り、そいつらに指示された人間を殺させる。

 

そうすれば本体の俺の手は汚れない、良いアイデアだろ?

 

だが、血に汚れた俺は血に汚れていない俺を許せなかったらしい。

 

俺は俺に殺されかけた。

 

幸い俺には常に何人かの監視兼ボディガードがいて、そいつらがコピーした俺を倒してくれた。

だが、消えゆく俺を俺は忘れられなくなった。

 

それからだ、俺が自分を増やせなくなったのは。

 

増やせばコピーの俺はまた俺を殺しにくる。

それがわかっているのにどうして増やせるってんだ。

 

たとえ俺自身を増やせなくても有用な個性だってことには変わりない。

むしろ力を抑制できたと判断されたのか監視の数が減ったくらいだ。

 

そんな感じでブラック企業に勤める俺に、二つ目の転機が訪れる。

 

それは同業のレディナガンからの言葉だった。

 

『なぁ、公安を抜ける気はあるか?』

 

最初はその言葉の意味を理解できなかった。

俺達は表にいる普通の公安所属の人間じゃない。

 

組織の闇を俺達は知っている。

そんな俺達が抜けるってのはそれは死を意味する。

 

俺が何をバカなことをと言えば、彼女は言葉を続ける。

 

『オールマイトのところに転がり込む、あそこなら公安は手を出せない』

 

それを聞いて納得する。

オールマイト、知らない奴なんていないだろう。

確かに公安だってオールマイトと敵対なんてしたくないに決まってる。

 

逃走場所には最適だ。

 

聞けばすでに向こうとは話がついていて、あっち事務所のサイドキックとして迎えてくれるという。

随分と用意がいい、気になるのはどうしてそうなったのかだ。

 

ナガンは俺と違って真面目に世の中のために頑張ってきたヒーローだ。

そんな彼女が公安を抜けるなんてただ事じゃねぇよ。

 

俺がそれを聞けば彼女は照れたように頭をかきながら説明を始めた。

 

『別に、ちょっと変なガキの言葉に当てられちまっただけだ』

 

当てられた?おいおいスナイパーを打ち抜くなんざなんて野郎だよ。

しかも子供って、まさかこの女。

 

『お前、まさかショタコ『あ?今何て?』

 

俺が言い切る前に口に銃口を入れられて黙らされる。

 

ずっと死んだ目をしていた女だったのに、今はなんだ。

 

惚れた男でも出来たみたいに嬉しそうな顔しちまいやがって。

いいじゃねぇか、恋ってやつに年齢なんて些細な問題さ。

 

俺はそう言えばナガンは俺をぶん殴りながら否定する。

 

『そんなんじゃねぇって言ってんだろ!ただ・・・・ああもうなんでもいいだろ!とにかくついてくるのか来ないのか決めろ!同業のよしみで聞いてやっただけだ!』

 

頬を染めながらそう叫ぶ彼女に俺はすぐには答えず懐からアメスピを出して口にくわえる。

そして煙を吸い、吐き出す。

 

そんな俺にナガンはイラつきながらも待ってくれた。

 

俺は今の生活と新しい生活と天秤にかける。

 

いや天秤に乗せるまでもなく答えは決まってる。

 

『行くに決まってるだろ』

 

こんなブラック企業から転職出来るなら喜んで出るさ。

 

そんな感じで俺達はオールマイトのところに転がりこみ、そこで転弧と出会った。

すごく良い奴で俺はあいつのことが好きになった。

 

それから時が経つにつれ、転弧の周りには色々な奴が増えていった。

全員が転弧に救われて、あいつの傍にいたくて集まっている。

 

最高の仲間たちだ。俺は転弧やみんなのためにこの個性を使いたい。

 

ま、俺の自分語りはこんなところだ。

付き合ってくれてありがとな。

 

それで、結局なんで急にこんなことを言い出したかって?

そういう気分だった、まぁ間違ってはない。

 

けど正確には現実逃避だ。

 

目の前に迫るヴィランさん達にどう対応したらいいかわからないのよねこれが。

 

異能解放軍の残党なんて所詮逃げて生き残った奴らで弱いと思ったけど、こいつらめっちゃ強いわ。

 

「「「リ・デストロを解放しろぉぉぉ!!」」」

 

「誰それ!!」

 

俺に襲い掛かってくるヴィラン達に対し、仕方なしに個性を使おうとした時、彼らが横から強烈な筋肉に殴られ吹き飛んでいった。

 

見覚えのありすぎる筋肉、というか筋線維アーマー。マスキュラーだ。

 

「はっはー!!いいね!強いヴィランがいっぱいじゃねぇか!!今日は退屈しなさそうだ!!」

 

そう言って凶悪な笑みを浮かべながら迫るヴィランを蹴散らしていくマスキュラー。

そんなこいつにヴィラン達は舌打ちをしながら口を開く。

 

「くそ、なんでお前みたいなやつがヒーローなんかしてんだよ!」

 

ヴィランの心からの叫びに俺も同意する。

まぁこいつはもう半分ヴィランみたいなもんだし。

 

「あ?単純だよ!楽しいからだ!!てめぇらを殴れば褒められて金までくれるんだぜ!最高の職業じゃねぇか!!」

 

そう言いながらヴィランを吹き飛ばしていくマスキュラー。

いやほんと、よく転弧はこいつの手綱を握ってるよ。

転弧の言うことはだけは素直に聞くからな。

 

だが向こうもただやられるわけじゃない、当然反撃をしてくる。

それをマスキュラーは筋繊維を纏って防御し笑う。

 

「今のは俺を殺す気だったなぁ。ってことはよぉ、俺もお前らを殺していいってことだよなぁ」

 

「「「ひぃ!」」」

 

獰猛に笑うマスキュラーに憐れなヴィラン達は涙目になる。

泣く彼らにこいつは笑いながら近づいて口を開く。

 

「転弧から言われてるんだ。自分の普通を無理やり押し付けるのはダメだって。俺はもっと殴って血がみたい、けどそれを嫌がる奴に押し付けるのはよくねぇ。けど、てめぇらは俺を殺そうとしたよなぁ?だったら俺もしていいよなぁ!!」

 

こいつ、どうやってヒーロー免許試験受かったんだ?

まぁ、こんなこと言いながら殺しはしないってわかってる。

 

ここはこいつに任せて別のところに行かせてもらおう。

 

隠れながら怪我をしている味方がいないかを探していく。今の俺に出来るのはそれくらいだ。

本当は後方待機って言われてるが、仲間が命張ってるのに安全なところになんていられるか。

 

「お、トゥワイスじゃねぇか。ちょうどいいからこれ拾うのを手伝ってくれ」

 

そう言って俺に声をかけたのはコンプレス。

見ればコンプレスの近くの地面には小さな球が多く転がっていた。

 

見た感じ自分の個性でヴィランを圧縮したみたいだな。

 

「全く参るぜ、ここの奴ら全員強いのなんのって」

 

転がる玉を集めながら愚痴るコンプレスに俺も同意する。

まぁだが、それでも強いのは俺たちの方だ。

 

「大丈夫だろ、俺達には転弧がいるし。それに今回はホークスも一緒だ」

 

「まぁな、トップスリーのチームアップだ。これで倒せなかったら嘘だぜ」

 

そう言って笑い合う俺達、しかしその直後にとんでもない轟音が響き飛び跳ねる。

轟音の方へ目を向ければ、そこには超巨大な氷が出現していた。

 

そしてそのすぐ後に同じサイズの青い炎が発生し氷を飲み込む。

 

「なんだあれ!?」

 

「見た感じ蒼炎の方はエンデヴァーだな。氷はヴィランか?おいおいやべぇな」

 

あの巨大な氷と炎の中じゃ人なんて米粒みたいなもんだ。

あれを一瞬で作り出すって、巻き込まれたらひとたまりもないぞ。

 

「「・・・・」」

 

俺とコンプレスは無言で頷き合い、その場からの離脱を決める。

そうして足並みを合わせて走り出そうとした俺たちの前に、デカいシルエットが飛び込んでくる。

 

「「うおおお!?」」

 

慌てて避けて見れば吹き飛んできたのはマスキュラーだった。

こいつが飛んでくるってどういう状況だよ。

 

「大丈夫かマスキュラー」

 

「あ?ああ、お前らか。問題ねぇよ、歯ごたえのあるヴィランが出てきて嬉しいくらいだ!」

 

瓦礫を退かしながら起き上がるマスキュラーは前を見て笑う。

つられて見れば、狼の顔をした大男がこっちにやってくる姿が見えた。

 

こいつらの戦いに巻き込まれる前に逃げないとやばい。

 

「よし任せた!俺達は逃げ「あら?逃げちゃうの?」

 

女の声が俺らを遮る。

振り返ればデカい女が俺達に向かって微笑んでいた。

 

「あなたの個性、利用させてもらうわ」

 

その声を聞いた直後、俺の意識に靄がかかる。

そして靄が晴れた直後、視界が変わっていた。

 

『仁くん、ボーっとしてどうしたんですか?』

 

切り替わった視界でメチャクチャ可愛い女の子が目に入る。

トガちゃんじゃないか、あれ?なんでここにいるんだ?

 

『変な仁くんですね。マグ姉のお店なんですから皆いるに決まってるじゃないですか』

 

首を傾げながらそう口にするトガちゃんの言葉で周りを見る。

確かにそこはいつも俺達が集まる場所だった。

 

『ちょっとスピナー、見たわよ世界大会。惜しかったじゃない』

 

『あ、マグ姉。その話題は』

 

『・・・・』

 

カウンターでは転弧とスピナーが座り、マグ姉と話していた。

ああ、世界大会準決勝でスピナーが負けた時の話か。

 

内容から状況を察する。よほど堪えたのかスピナーは無言でカウンターに顔を突っ伏した。

 

『凡ミスが原因なんだろ?プロゲーマーのスピナーさん?』

 

落ち込むスピナーをナガンが笑いながら煽る。

その煽りを受けたスピナーは顔を突っ伏したまま口を開いた。

 

『・・・・うるせぇナガン。遠距離系プロヒーローのくせして、この前射撃ゲームで俺に負けたくせに』

 

『ゲームと現実を一緒にすんじゃねぇ!』

 

『ププ、私にも負けて最下位でした』

 

今度はナガンがトガちゃんに煽られ、それにキレたナガンが彼女の頭を強引に撫でまくる。

頭を強引に撫でられる彼女は楽しそうに悲鳴を上げていた。

 

『マグ姉、お酒飲んでみたいです』

 

『いやいやトガちゃんにはまだ早いって。おじさん心配だからやめときな』

 

みんなが楽しそうに飲むお酒を見て、自分もとマグ姉に注文するトガちゃんをコンプレスが止める。

 

最近になって転弧が飲めるようになったから自分も一緒に飲みたいんだろうな。

 

ぶーっと頬を膨らませるトガちゃんに癒されていると、唐突にマグ姉の店の扉が吹き飛ぶ。

 

『転弧ぉ!!暴れたくなった!やらせろ!!』

 

『ちょっとマスキュラー!扉を壊さないでって何回言えばわかるのよ!!』

 

扉を吹き飛ばしながら入ってきたマスキュラーにマグ姉が怒り、転弧が笑いながら立ち上がる。

まぁいつも通り少ししたら転弧があいつをノシて、仲良く一緒に帰ってくるだろう。

 

『・・・・バカばっかだな』

 

ナガンが出ていった転弧たちを見てそう口にする。

その言葉とは裏腹に彼女は笑っていて、俺もそれに同意する。

 

ああ、楽しいな。仲間が笑っていて、俺も笑っている。

こんな幸せなことがあるかよ。

 

幸せな時間に浸りながら愛用のたばこをポケットから弄る。

あれ?確かにここに入れたはず。

 

『探し物はこれか?』

 

ん?ああそれだ。ありがとよ。

 

目の前にいる俺から煙草を受け取って火をつけて煙を吹かす。

気が利くな、さすが俺だ。

 

・・・・・んん?

 

待て待て、なんで俺がもう一人いるんだ?

 

『気が付いたらさっさと起きろ寝坊助やろう!』

 

『早く起きろ!』

『やべぇ状況だぞ!』

『楽しそうな時間に浸ってんじゃねぇ!』

『俺もトガちゃんとイチャイチャしたい』

『俺も』

『俺も』

『早く起きて自分の仕事をしろ!』

『俺らだけにやらせんな!』

 

一人いた俺が気が付いたらいっぱいになっていた。

おいおいおいまさか、これって。

 

『早く、起きろパーンチ!!』

 

混乱する俺に目の前にいた俺が拳を振りかぶり、間抜けな技名を言いながら俺へと拳を振り抜いてきた。

 

 

「ぶへ!!」

 

その拳を受けた直後、さっきまでいたマグ姉の店から一瞬で元いたヴィラン達が根城にしていた町の景色へと戻る。

 

「あれ?俺は何して」

 

「お、気が付いたかトゥワイス!あの女やばかったぞマジで」

 

意識がぼやける中で横を見ればコンプレスの姿が見える。

コンプレスの指さす先には地面に倒れた先ほどのデカい女の姿がいた。

 

「たぶん洗脳系の個性だ、お前が操られて自分を作り出した時は終わったと思ったわ。まぁそれは杞憂だったけどな」

 

デカい女の近くには何人もの俺がいた。

コンプレスの話を聞くに、俺は自分を増やしたのか。

 

「ちょ、コンプレス!頼む俺を守ってくれ!!」

 

咄嗟に隠れるが、俺が襲ってくる気配はない。

それどころか、早く仲間の加勢にいくぞと騒ぎ始めた。

 

『急げ俺!こうしてる今も仲間がどこかで倒れてるかもしれねぇ!』

『俺らみんなと比べたら弱いけど負傷者を運んだり、避難させたりは出来る』

『殺しはもうごめんだが、それでも仲間のためなら何だってやってやる!』

 

溢れてやまない声。それを聞いて俺は納得する。

そうか、そうだよな。こいつらは俺だもんな。

 

仲間が危ないかもしれねぇって時だ、他のことなんてどうでもいいよな。

 

「よし行くぞ俺ら!まずはマスキュラーの援護だ!」

 

『『『いやあっちは行きたくねぇ』』』

 

「よし!じゃあ他のところに行くぞ!」

 

 

 

 

「・・・・ちっ、おい荼毘」

 

俺は目の前にいる敵を見据えながらうちにいる相棒に声をかける。

やがて聞き慣れた声が俺の頭に直接響く。

 

『なんだ?』

 

「この男、お前が知ってる氷男なんだろ?こんなに強いとは聞いてないぞ」

 

そうやって話す俺に巨大な氷の津波が襲い掛かってくる。

俺も同じ規模の炎を出して相殺する。これで何度目だ、聞いてた話と随分と違う。

 

『確かに俺が戦った時とは違うな。あいつは氷を操るだけで俺らみたいに作ることは出来なかったはずだ』

 

事前に荼毘から聞いていた。氷を操る男がいるって。

その男が捕まっていないのはわかってたから戦うことになると確信してた。

 

そしてその予想は的中、大規模攻撃を行う奴を俺が相手取ることになった。

 

だが、聞いていた実力程度なら今の俺なら瞬殺できると思っていたが蓋を開けてみたらどうだ。

ずいぶんと面倒なことになった。

 

「リ・デストロを返せ!!」

 

奴がそう叫ぶと空気中から水が集まり、それが氷となる。

やがて氷は大きくなり、その姿を氷山を思わせるサイズに変える。

 

これだ、こいつはどう考えても大気から水を集め、それを氷に変えている。

 

氷を操る個性だけじゃ説明がつかない。

 

『まぁ答えなんざ一つだろ。水を操る個性をもらったんだろうよ』

 

「ああだろうな!!赫勺熱拳・燐 ブルーウェーブ!!」

 

燐で反動なしで火力を底上げし蒼炎の津波を起こす。

俺の炎が相手の氷とぶつかり、溶かし始める。

 

だが、それも途中で止まる。

 

「・・・・マジでなんなんだお前」

 

水を操る個性、それは裏にオールフォーワンがいる以上こいつがそれをもっていても何も不思議じゃねぇ。

 

もしかしたら他にも個性を持ってるのか?

そうじゃなきゃこの状況の説明がつかない。

 

『炎の温度で氷が溶ける前に、氷の温度を下げて相殺されてやがるな』

 

「・・・・どんな操作技術だ」

 

炎で上がった氷の温度を下げて氷の形状を保つ。

 

言うのは簡単だが、俺の蒼炎の火力を受け続けてそれが出来るのは異常すぎる。

今の俺以上の火力を持つヒーローなんて日本にはいないぞ。

 

「エンデヴァー、その名が憎い。貴様の父親にリ・デストロは、っ!恨むんならその名を受け継いだことを恨め!!」

 

「ざけんな、この名は俺の誇りだ」

 

氷の竜が俺へと襲い掛かる。

それを炎を操り巨大な手を作り出して竜の首を掴む。

 

俺の攻撃で氷が溶け始める。だがやはり途中で止まった。

 

「上等だよ、要は火力勝負だろ」

 

そして作り出した炎の拳の火力をさらに上げる。

瞬間的に上がった熱量によって氷が溶けだし、水蒸気と共に水が蒸発する音が耳に届く。

 

「なにっ!?」

 

溶けだした氷を見て声をあげている。

 

お父さんよりも強い火力、それが俺の自慢だった。

だから、ずっと火力の上げ方を研究してきた。

 

赫勺熱拳・燐。これは未来の焦凍が考えた技で俺の技じゃねぇ。

 

ここからは俺のオリジナルだ。

 

俺の中に宿る個性因子、その限界を見極める。

 

お父さんが言っていた。個性因子の熱耐性が火力の限界だと。

じゃあ、俺の限界はどれくらいだ?

 

自分の限界に挑み続けた、そうしているうちに蒼炎は色を変えた。

 

いや、失った。

 

「赫灼熱拳・朧」

 

色を失った炎はその熱気だけを残し世界から消える。

だが、ここに存在していると示すように周囲の世界を少し歪ませる。

 

ゼロから瞬間的に自身の個性因子が耐える限界ギリギリまで上げる。

一歩間違えば個性因子が燃える綱渡りの操作。

 

赫灼熱拳・燐はデメリットなしで高威力の炎と氷を出し続けるための技だ。

 

安定した焦凍らしい技だ、でも、俺は違う。

 

安定なんて知らねぇ、歪んだ俺には不安定なくらいがちょうどいい。

 

「この技を使うのはお前で二度目だ、熱耐性がある奴でも耐えきれずくたばっちまう危険な技だからな」

 

「・・・・僕の氷が」

 

極限まで高まった熱に耐えきれず奴の氷が溶け始める。

味方にも伝達しないとな、今俺の近くにきたら巻き添えをくらう。

 

「まだ厄介なヴィランが控えてんだ。お前に手こずってる場合じゃねぇんだよ」

 

「っ!!なめるなぁぁぁぁ!!」

 

この温度の中でも完全には溶けない氷を操り俺へと襲い掛かる。

そに対し俺はゆっくりと手を奴に向け、自身の限界ギリギリを見極める。

 

「・・・・悪いな」

 

それだけ必死になるんだ、きっとお前にとってリ・デストロは父親みたいなもんなんだろう。

もし俺がお前と同じ立場なら同じように必死になる。

 

だから、お前の気持ちはわかるつもりだ。

 

だけど。

 

俺の手から放たれた透明な炎、それは奴の氷を一瞬で溶かす。

その隙に俺は奴に接近し、手加減した炎と共に拳を奴の鳩尾に入れる。

 

「がっ」

 

「こっちも譲れないもの背負ってんだよ」

 

エンデヴァーの名をもらった時から俺はヴィランには絶対に負けない。

 

誰よりも多くの事件を解決し、みんなを救う。

それが最高のヒーローの看板を背負った俺の責務だ。

 

 

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