空に浮かぶオールフォーワン、そして奴を見上げる俺とオールマイト。
動き出すのはほぼ同時だった。
「雷撃+槍化+分散+貫通」
「赫灼熱拳 跳炎」
奴の周囲に展開される雷の槍。
それは一瞬で無数に増え、眼下の俺達に向けて雨のように降り注ぐ。
俺はほぼ同時に炎を身体から放出し奴と同じように周囲に展開する。
見かけは普通の色の炎だが、これには熱以外の効果がある。
雷の槍の雨が俺の炎に接触した瞬間。
「へぇ」
奴から感心したような声が漏れたと同時にそれは起こる。
炎を貫き俺たちに向かおうとする雷はまるでゴムのように伸びた炎を抜けることが出来ず落下の速度をなくしていく。
やがて伸びた炎は勢いよくその形を縮め、包んでいた雷の槍を空へと帰す。
かつて俺に協力してくれた個性『バウンス』。
それが新たな力となって姿を変えた炎が『跳炎』だ。
「・・・・」
奴は返ってきた雷の槍を他の個性で防ぎながらこちらを見つめる。
俺と奴の攻防の一幕、その間にもう一人はすでに動いている。
「――――デトロイト」
飛び上がり奴の死角から接近していた奴の言葉が空に響く。
身体に装甲を纏った奴は奇しくもオールフォーワンと同じ漆黒の姿。
オールマイトは機械に覆われた腕を引き絞り、その拳を握り締め、放つ。
腕を纏う装甲からは電気が迸り、さらにオールフォーワンへと放たれた腕を後押しするように装甲から空気が噴出される。
そして、それは炸裂した。
「スマァァァァァァシュ!!!」
その声と共に奴の肉体に拳が接触した瞬間、空気が震え、巨大な衝撃波が俺の身体に伝わってくる。
嫌になる程見てきたからこそわかる。
この一撃はまさにかつてのオールマイトの一撃だった。
「・・・・」
並、いや大抵のヴィランならば一瞬で意識を失うであろう威力。
だが、相手はオールフォーワン。
「驚いた。まさか機械でここまでの威力を再現するとはね」
腕から何層にも重ねられた膜を出現させた奴はオールマイトの一撃をしのぐ。
そして防いだ膜が弾け、細かな弾丸となって周囲に炸裂する。
「貴様を倒すために親友が用意してくれた傑作だ」
「ああ、知っているよ。ちなみに知っているかい?彼が作り上げた個性を活性させる機械。あれを盗んだのは僕の部下と彼の助手だよ」
オールマイトを弾き飛ばした奴は世間話をするかのようにそう口を開く。
さっそく口の方も動かしてきたか。
「・・・・」
「あの装置は今まさに僕の部下が使って戦っているよ。君たちの大切な子供たちを相手にね」
そう言った後、奴は腕を巨大化させ、さらに硬質化させて振り下ろしてくる。
奴の攻撃をオールマイトは同じように腕を振るい相殺。
その隙に今度は俺が奴に接近し炎を纏う。
「赫灼熱拳 速炎 バニシングフィスト!」
元の個性『瞬発力』の効果で速度を上げた拳が奴を殴る。
一瞬で五発を奴の身体に叩き込み吹き飛ばす。
「何を言うかと思えば、もっとマシな挑発をしたらどうだ」
吹き飛び少しよろける奴に向かって言い放つ。
そんな言葉で俺とオールマイトが二人を心配するとでも思ったか。
むしろ同情するのはそいつの方だ。
「俺の息子が貴様の部下ごときにやられるわけがないだろう」
「そういうことさ!もちろん転弧少年もね!!」
俺の反対方向から奴に接近するオールマイトがそう口を開く。
それを見て俺も奴へと迫り、オールフォーワンを挟み撃ちにする。
俺とオールマイトに挟まれた上での同時攻撃、それを奴は複数の個性を使用し相殺する。
衝撃波で俺とオールマイトは距離が開くが奴への攻撃は止まらない。
奴もここがどこかわかっているだろう。
本来俺達がいなくともここは難攻不落の要塞だ。
『タルタロス』から大量の弾幕が降り注ぐ。
それをバリアを出して防ぐが土砂降りの雨を思わせる量の絶え間ない物量は奴に反撃を移らせない。
俺達はその間に通信を行い遠くで戦っている燈矢たちに連絡を入れて情報共有を行う。
どうやら向こうは情報になかった強力なヴィランが出現し手間取っているようだ。
先ほど奴が言っていた部下たちだろう。
問題ない、燈矢たちがそいつらを倒し、俺達はこいつを倒すだけだ。
「・・・・空気を押し出す+電波」
その言葉と共に俺達と含むタルタロスに奴の仕掛けた電波が押し寄せてくる。
物理的な衝撃波に機械たちは吹き飛ぶが、電波によって機能停止になるようなことにはなっていない。
「ふむ、やはり対策されているね」
「当然だ」
奴に向かって飛び上がりながら答える。
未来の経験から貴様が行うであろうことは事前に共有し対策してある。
たとえ俺のいた世界の時のように外側と内側による同時攻撃を行ったとしても今のタルタロスは対応できる。
「赫灼熱拳 旋炎」
風の個性により威力を上げた炎を奴にぶつけ、それを防ぐ奴の背後にオールマイトが接近する。
「カリフォルニアスマッシュ!!」
オールマイトの一撃がバリアを突き抜けて奴に接触する。
強烈な技を受けた奴は吹き飛び海面を叩き巨大な水しぶきを上げて沈む。
「・・・・」
海中に沈む奴を睨みつけながら思考を行う。
なぜオールフォーワンは単独でここに現れた。
俺という存在がいるんだ、電波を含めた個性対策をしていることくらい考えているだろう。
加えて今回は内側に奴の思考に同調するもう一人の自分もいない。
それを補うギガントマキアなどの巨大な戦力も連れてきていない。
奴の目的はなんだ、タルタロスに収監されている囚人たちの解放ではないのか。
海中に沈んでいる間もタルタロスによる弾幕は続いている。
が、それを吹き飛ばしながら海面から巨大な一本のレーザーが飛び出してくる。
それに対して俺も『レーザー』の個性が元になった炎を出して相殺。
その間に海面に渦が発生し、それが竜巻のように巻き上げられてこちらへと迫る。
海水を飲み込んだ竜巻がタルタロスごと俺達を飲み込もうと迫るが、オールマイトの一振りによってそれは阻止される。
「どちらも元とはいえNo.1ヒーロー同士のチームアップ。面倒だな」
「面倒なら大人しく捕まるんだな、今なら牢屋に五分もかからず入れるぞ」
戯言を言いながら炎を奴にぶつけながら接近する。
『筋力増強』の炎を身体に宿し奴を直接殴りに行く。
奴は自身へと迫る俺へと向き直り、手をかざす。
どんな個性を使おうと対応し、その黒い仮面の先の顔を覗いてやろう。
「効率よく行こう、まずはもっとも厄介な君からだ」
そう言った瞬間、
即座に再展開しようとしたが炎は出ない、それどころか個性が使用できない。
これは、まさか。
「レーザー×3+押し出す+拡散+光増幅」
個性が消え強制的に無防備な姿を晒すことになった俺にオールフォーワンからの攻撃が始まる。
背中から生えた骨と両指から光が漏れ、それが光線となってこちらへと迫る。
「っ!?エンデヴァー!!」
オールマイトの声が届く。
駆けつけてくれているが、奴の攻撃の方が早い。
機械たちが壁になってくれるが奴の攻撃の前では一瞬も持たない。
死を覚悟した瞬間、俺の身体に何かがぶつかり強制的に移動させられレーザーの軌道上から逸れた。
「これは」
身体に届いた正体を確認し、内心で礼を告げる。
空中からあの攻撃を躱した俺を見て奴は怪訝そうに首を傾げる。
「・・・・どうやらまだ味方がいるみたいだね」
その問いに俺は答えない。
タルタロスに着地しながら再び個性を使用しようとするが発動できない。
間違いない、個性を封じられている。
これはまさか、イレイザーヘッドの抹消か?
最悪を想像するが即座に否定する。あいつが個性を奪われた報告はきていない。
おそらく似た効果を持つ個性を奴が手に入れたんだ。
先ほどから機械の陰に隠れ、奴の視界から外れているというのに個性が使用できないのがその証拠。
『見る』ことが条件ではない、おそらく別の条件がある。
「無個性の気分はどうかなエンデヴァー、無力感を味わいながら死ぬといい」
「ふ、無個性か。少なくとも無力感は感じんな」
なぜなら、個性がなくなってもその強さを取り戻した男が味方にいるのだから。
「テキサススマッシュ!!」
放たれた拳を奴は予想していたのか受け止める。
衝撃が辺りを散らすが、その拳は透明な壁によって阻まれる。
だが、その拳はまだ止まってはいなかった。
「――――ライジング!」
「っ!?」
装着された装甲から電気と二度目の衝撃が迸る。
その力は凄まじく、奴が展開していた壁を突き破り、奴の装甲で覆われた顔を打ち抜いた。
装甲の破片を散らしながら吹き飛んだ奴は海面へと沈む。
沈んだ奴を睨みつけながらオールマイトの腕の装置から煙が放出される。
海面に奴が沈んだことを確認し、個性を使用する。
すると身体から炎が灯った、しかし少しすると再び発動出来なくなった。
少しの間、個性が使用出来た。
可能性が高いのは『距離』か。
海中に沈みこんだことで有効距離から離れ、個性が使用出来たが奴が浮上したことで再び有効範囲に入ってしまったと考えれば納得がいく。
「・・・・やれやれ、無個性の人間を面倒だと思う日が来るとはね」
海面から浮上したオールフォーワン。
そして、剝がされた仮面から奴の顔が見えた。
「ふ、随分と変わったな」
「ああ、君のせいだ」
ある意味で見慣れた姿と言えるだろうか。
過去、俺との戦いで傷をおった奴の顔、そして身体はボロボロになっていた。
「君との戦いの後、何とか命を繋いだ僕は海外を拠点にするしかなかった。志村転弧の危機感知の範囲がどこまでかわからなったからね」
そう言いながら奴はこちらに手を向ける。
しかしオールマイトが再び突撃しそれを阻む。
個性を封じられている状況下で動けるのは現状、オールマイトのみ。
歯噛みしながら二人の戦いを観察し、個性の有効範囲を見極める。
「デトロイトスマッシュ!!」
「凝固+衝撃反転」
見えない空気の壁がオールマイトの拳を阻み、さらにその衝撃を返される。
その様子を見て考える。
俺は未だに個性を使用できないが、奴自身は問題なく使用できる。
個性を封じる力は自分自身には効かないのか、それはあまりにも都合が良すぎるように思う。
そこまで万能な力ならばそれこそ転弧すらも倒せるはず、なのに奴はここに現れた。
ならば。
「悪いが足場になってくれ」
機械たちに指示を出し空中に駆け出す。
俺の声を聞いた機械たちが次々と足場となってくれたことにより空中を上がることが出来た。
「同じ無個性状態でも装甲のない君が来ても死ぬだけだろう」
俺の存在に気が付いたオールフォーワンが攻撃に移る。
無防備の状態で近づけば当然こうなるだろう。
だが、動かなければただの的。ならば命がけで足掻くのみだ。
レーザー、電撃、物理攻撃、様々な攻撃が飛んでくる。
どれも今の俺がくらえば重傷となるものばかり、それを経験と予想によって躱していく。
機械たちが足場となって立体的な動きを出来ているのに加え、オールマイトもいることで的は分散している。
やがて奴にある程度近づいた段階で個性が元に戻ったのを感じた。
「赫灼熱拳」
熱量増加+加熱+業火
それぞれの個性を宿した炎を混ぜ、火力を上げる。
「ボルカニック!!」
「カロライナスマッシュ!!」
俺とオールマイトの技が同時に炸裂する。
咄嗟に張った防御の個性を貫き俺達の攻撃が届く。
「っっっ!!ぐあっ」
同時攻撃に流石の奴も苦悶の声を上げる。
衝撃が発生して奴を吹き飛ばそうとするが、その前に奴に向けて炎を当てる。
攻撃を当て終えた奴は衝撃に従い後方に吹き飛ぶ。
当然再び距離が開き、奴の個性無効化の有効範囲に入ることになる。
しかし、今度は俺の個性が無効化されることはなかった。
衝撃を耐え空中にとどまった奴は俺の様子を見た後に自身の身体を確認する。
「僕の個性に干渉したか」
「ああ、その厄介な個性は封じさせてもらった」
個性『指向操作』の炎を使い個性を封じる効果範囲を極端に狭めた。
上手くいけば奴のみを個性を使用不可に出来るかと考えたが、そううまくはいかないか。
「・・・・」
奴は少し黙った後に攻撃を再開する。
それを俺とオールマイトは捌きながら追撃の隙を伺う。
このタフさから間違いなく超再生を手に入れている。
超再生を持つ相手に対しては回復の間も与えず倒しきるしかない。
高威力という面では俺とオールマイトも十分にある。
俺たちの連続攻撃を当てることが出来れば一気に倒せるはずだ。
「仕方ない、次のフェーズといこう」
そう言った奴は急に降下を始める。
ずっと空中戦を好んでいたというのに突然の行動に眉をひそめながら俺達も追いかける。
タルタロスの地上戦では機械たちの攻撃も苛烈となる。
個性対策もできている以上、空中戦よりもそっちが不利になるぞ。
・・・・いや待て。
奴が単独でここに現れた理由がまだわかっていない。
先ほどの個性を封じる力もタルタロスには関係ない。
ならば、ここを単独で攻略できる個性を手に入れているというのが妥当な考えだ。
「オールマイト!!奴をタルタロスに降ろすな!!」
「残念だけどもう遅いよ」
弾幕を潜り抜け、タルタロスに降り立った奴はその手を壁に触れる。
そして。
「
「「っ!!?」」
『タルタロスはその機能の全てを停止させ崩壊する』
その言葉を呟いた直後、辺りを埋め尽くしていた機械はもちろん、タルタロス内部の機能も含めその全てを停止させた。
バカな、奴は今なんと言った。
『
だが奴は使用した、それが意味することはつまり。
「っっっオールフォーワン!!!」
同じように奴を見ていたオールマイトが怒気を宿らせて突っ込む。
それに対し奴は笑いながら迎え撃つ。
『大気は僕の前方50m以内には存在できない』
「まずい!オールマイト!!」
その言葉を聞いて俺とオールマイトに炎を纏う。
『空気生成』+『空気操作』+『体質変化』
大気が消え失せた空間内でなんとか炎を纏って生き残る。
大気が存在できない、つまり空気を生み出しても存在が許されないというわけか。
体質変化で耐えられるのは一瞬、その間にオールマイトに手を引っ張られその空間から脱出する。
「なぜ貴様がその個性を」
「なぜって?おいおいわかりきったことを聞くじゃないかオールマイト。彼女から奪ったからだよ、君に憧れていたアメリカNo.1からね」
「っっ、ふざけるな!!」
「落ち着けオールマイト。奴の戯言だ」
彼女が個性を奪われたという報告は受けていない。
それにあのNo.1がそう易々と個性を奪われるとは思えない。
おそらく似た個性、または個性をコピーしたかのどちらか。
そして、これがあるから奴は単独でタルタロスに訪れたというわけか。
「さて、本来なら僕一人で充分だったはずだけど、ここからは増援を呼ばせてもらうよ」
その言葉と共に奴の周囲に泥が噴出する。
あれは、奴が以前使っていた泥ワープ。
そしてワープ先から現れたのは見覚えのある凶悪なヴィラン達ばかり。
俺達を自身で足止めし、その隙に手下を使い内部のヴィラン達を解放するつもりか。
脳無が出現するかとも考えたが、やはりあれは殻木球大の協力がなくては作れないというわけか。
だが、逆に言えばここに収監されている奴を確保されてしまえば脳無は作り出されてしまうということ。
絶対にタルタロスからヴィラン達を解放させるわけにはいかない。
「エンデヴァー。現れたヴィラン達の対処を頼む。私は、奴を倒す」
「・・・・一人で相手をするつもりか」
「ああ、本来奴を倒すのは私の役目だ」
そう言って笑うオールマイトと目を合わせ頷く。
タルタロス職員たちの持つ武装すらも機能しているか怪しい現状では俺とオールマイトのどちらかが対応しなければならないのは確か。
そう判断しオールマイトと離れる。
去り際に短く言葉を交わす。
「勝て」
「当然さ」
それだけを残しヴィラン達に向かって炎を放つ。
俺に向かってオールフォーワンが攻撃を使用したが、それをオールマイトが阻止し、そのまま戦闘を始めた。
◇
『・・・・トシ、その話は本当なのか』
私の話を聞いた親友デイブはそう口にする。
それに頷くと、彼は俯いて黙ってしまった。
No.1ヒーローを引退し、エンデヴァーが私の後を継いでからしばらくの時が経った頃。
私は海外にいる親友の元を訪ねていた。
理由は、個性に頼らずとも戦える私専用のサポートアイテムを作ってもらうため。
『・・・・どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ』
顔を上げた彼が一番に言ったのはそんな怒りの言葉だった。
それに対し私は申し訳なさと共に言い訳を口にする。
今回、私は彼に全てを話した。
ワンフォーオール、そしてオールフォーワンに繋がる全てのこと。
このことに関われば彼とその家族に危険が及ぶ、それを恐れ今の今まで話していなかった。
だが、エンデヴァーそして転弧少年の言葉を受けて私は彼に秘密を打ち明けることを決めた。
『今の君は力を渡し終え、無個性の状態になった。そして、その状態でも戦えるサポートアイテムを私に作ってほしいということか』
『ああ、君にしか頼めないことだ』
『・・・・トシ、君はもう戦わなくていいんじゃないか?』
頭を下げる私にデイブは静かにそう告げる。
そして一面に広がる海、その向こうにある日本の地を見つめながら口を開いた。
『君が引退するという話を聞いた時は絶望したよ。平和の象徴を失えば日本の平穏は崩れ去ると確信できた。だが蓋を開けてみればどうだ、君の後任のヒーロー達が次々と活躍し日本は今も変わらず犯罪率を抑え続けている』
『ああ、頼もしい彼らの存在があったから、私も引退という道を選べた』
『だったら、もう戦う道は君には必要ないだろう。のんびり暮らしたらいい、僕と娘と共に暮らしたってかまわない』
そう言ってじっと私を見つめるデイブ。
彼が私を思って言ってくれていると伝わる。だが、私の役目はまだ終わっていないんだ。
『オールフォーワンは生きている。そしていつか必ず表舞台に現れ転弧少年を狙い世界を脅かすだろう。その時、見ていることしか出来ないなんて嫌なんだ』
『・・・・』
『確かに今の私は無個性のようなもの。だがそれでもヒーローだ、頼む、私に戦う力を貸してくれないか』
出来る限りの思いを言葉にして親友に伝える。
私の言葉を聞いて彼はしばらく黙った後、ゆっくりとため息を吐いた。
『はぁ、頑固なのは変わらないな。わかった、協力する。最高のサポートアイテムを作ってみせる』
『っっ、ありがとうデイブ!』
『ああ、君専用だからね。実験には協力してくれよ。しばらく日本には帰れないぞ』
そう言って笑うデイブにこちらも笑顔で答える。
そうして作り上げた漆黒のスーツ。
全ては今日、この日のために。
◇
「スマッシュ!!」
装甲に覆われた腕を振るう。
その瞬間に強烈な風圧と電撃が走り拳の威力を何倍にも引き上げてくれる。
当然その分反動がデカい、だが鍛え上げた鋼の肉体ならそれにも耐えられる。
「オールマイト、君にはとうの昔に興味を無くしているんだ」
そう言いながら即死級の複合個性を連打してくる。
それを躱し、相殺しながら近づく。
「新秩序『空気は掴める』+爆発性付与」
「がぁ!!?」
突如身体に爆発が起こる。
っっっ、これは空気そのものに爆発を与えたのか。
避けようにも空気全てが爆発するというのなら避けるのは不可能。
「オハイオスマッシュ!!」
空中で拳を振るい爆発しようとしていた空気を吹き飛ばす。
一時しのぎのものだがこの隙に一気に接近し個性を使わせない。
攻撃を振るい奴は防御する。
一撃目は防がれた、だがこっちにまだ先がある。
「ライジング!!」
その声に反応し装甲から光が漏れ二撃目の衝撃が走る。
その力は奴の防御を突き破り再び奴に身体に拳を届かせた。
「このまま一気にいかせてもらう!!」
両腕から電気を走らせて乱打を行う。
「筋骨柔化+筋力強化+膂力増加+狂骨+棘爪+瞬発力+増殖+肥大化+『大気は僕と同じ大きさで固まる』」
その声が聞こえた瞬間、身体が突然動かなくなる。
見えないが、大気が奴と同じ動きをして私の身体を拘束したのか。
異形の身体へと変貌した奴の攻撃が迫る。
動けないようにして攻撃とは質が悪い。
「がっふ」
まともに攻撃をもらってしまい吐血を起こす。
大気が固定化された影響か吹き飛ばされずに奴の目の前のままだ。
「あっけないな、オールマイト」
「・・・・」
奴は一瞬エンデヴァーに視線を送り横入りがないことを確認する。
彼は来ない、私が勝つと信じてくれているからね。
その信頼に応えなくては。
「エルクレス!!」
私の声に反応し近くに潜ませていたもう一つのサポートアイテムが顔を出す。
サポートアイテム『エルクレス』これはデイブの娘さんであるメリッサが作ってくれたものだ。
エルクレスから『黒鞭』を噴出し奴に巻き付け遠くへと飛ばす。
奴が離れたことで自由が戻り、離れた隙に叫ぶ。
「装甲追加!!」
その声に反応しエルクレスが身体に纏い装甲が厚くなる。
「エンデヴァーを助けたのはそれか。装甲を追加したところで、それらは限界を超えないぞ」
そう言いながら手をこちらに向けるオールフォーワン。
それに対しエルクレスの声が響く。
『直線攻撃91.2パーセント、右に回避補助します』
相手が個性が始まる直前の変化、これまでの奴の戦闘映像からエルクレスが次の攻撃を感知し次の行動を補助してくれる。
予想通りの攻撃を右に躱し、次の攻撃に移る前に『煙幕』を噴出して私の姿を一瞬隠す。
死角に移動しそこから『黒鞭』を出し奴に巻き付けこちらに引き寄せる。
「デトロイトスマッシュ!!」
引き寄せた奴に拳を届かせる。
さらに二度目の衝撃波、そして
「ライジング・フォース!!」
機械内でエネルギーを振動反復させ増強、『発勁』を模した機能で高めたエネルギーを纏い奴の腹に突き刺す。
今までよりもさらに重い一撃に奴の身体はくの時に折れ曲がり空中へと吹き飛んでいく。
さぁ、始めるぞオールマイト。
本来奴を倒すのは私の役目。
それをエンデヴァーにそして転弧少年にさせてしまっている。
今こそ、全ての因縁に決着をつける。