エンデヴァー逆行物   作:デッテユー

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これは彼らが最高の家族になるまでの物語だ。


氷結の花嫁

「・・・・冬美」

 

「んー?」

 

本来の世界に帰り、冬美と再会してから少し時間が経った頃。

俺は少しの静寂の後についに耐えきれなくなり口を開く。

 

「・・・・そろそろ手を」

 

「あ、ごめん」

 

俺がそう言えば握られていた手を離してくれる。

その目は未だに潤んでおり、彼女の気持ちを俺に伝えてくれる。

 

「触ってないと信じられなくて。というかお父さん怪我直ってない?」

 

「・・・・それについては後で説明する。冷たちは?」

 

「お母さんは燈矢兄のところに行ってる、焦凍は学校かな・・・・夏雄は、もう街を出ちゃった」

 

「・・・・そうか、ならまずは焦凍のところへ行く」

 

夏雄については何も言わない。俺が何かを言う権利などないだろう。

冬美が俺のことを知らなかったんだ、夏雄も知らないだろう。

 

・・・・このまま知らないままの方がいいのかもしれない。

俺のことを伝えるべきかは冷たちと話して決める。

 

「焦凍は俺の事情を知っているからな。先に会って焦凍の口から俺のことを言ってくれれば俺が本物である証明になるだろう」

 

「え!?焦凍知ってたの!?もう!なら言ってくれればよかったのに!」

 

そう言いながら冬美は携帯を取り出し焦凍につなぐ。

しかし授業中のためか電源が切れているようだ。

 

事情が事情だ、学校に連絡し焦凍に繋いでもらうのが確実か。

 

俺の意見を聞いた冬美が学校に連絡すると、少し話をした後に俺に携帯を渡してきた。

何でも俺と話がしたいらしい。

 

まさかと思いながら電話を替わる、すると。

 

『や!校長さ!久しぶりだね!』

 

電話の先にいたのは校長だった。驚いている様子はない、どうやら焦凍から事情は聞いているみたいだ。

 

『焦凍くんから話は聞いてるよ!まさか本当に戻ってきてくれるとはね。直接話を聞きたいから雄英に来られるかい?』

 

『ええ、もちろんです』

 

校長の言葉に頷き電話を切る。

話が早くて助かる、こっちの世界の今の現状や今後のことについても話がしたかったところだ。

 

「私も、ついていっていい?」

 

「ああ、もちろんだ」

 

心配そうにそう言う冬美に頷いて学校へと向かう。

 

 

 

 

「・・・・まずは、すまなかった」

 

俺は頭を下げながらそう口にする。

雄英の校長室に案内され入ると、そこには校長とイレイザーヘッド、そして俊典・・・・ではなくオールマイトの姿があった。

 

彼らは校長室に入ってきた俺を見て固まっていて動かない。

全員が動かなくなってしまったのでまず俺は謝罪を行った。

 

もっとも重要な場面で死んで戦線離脱。謝って謝りきれるものではないが、それでも言わなければならない。

緑谷を含め全員が死力を尽くしてくれたおかげで死柄木や他のヴィランを倒すことが出来たようだが、俺がいれば犠牲者をもっと減らせたかもしれない。

 

「・・・・本物ですね。話は聞いてましたが、本当に」

 

イレイザーヘッドが個性を使用して俺を見る。

それで変わらない俺を見てそう判断したらしい。

 

「謝罪はいらないよ。最初に言うべき言葉はこっちさ――――おかえり。君が戻ってきてくれて本当に嬉しいよ」

 

「・・・・はい、恥ずかしながら戻ってまいりました」

 

校長の言葉に頭を上げながら答える。

そうしていると、校長室の扉が開く。

 

そこには息を切らせた焦凍の姿があった。

 

「・・・・焦凍」

 

変わらない、懐かしい姿を見て思わず名前を呼ぶ。

あちらも俺を見て目を見開き、そして声を震わせながら口を開いた。

 

「・・・・親父」

 

「ああ、しょ」「ふっ!!!」

 

一瞬、感動の再開を期待してしまった俺の頬に焦凍の腰の入った拳が突き刺さる。

油断していたのもあるが、手加減なしの一撃に俺の身体は浮き上がりそのまま床を転がる。

 

「お、お父さん!!?」

 

床を転がる俺を見て冬美が声をあげる。

下から見上げれば目を閉じて長い息を吐いている焦凍がいた。

 

「・・・・それは心配かけた分だ。他はみんなから殴られろ」

 

「ああ。その通りだな・・・・・ありがとう」

 

そう言うと床に倒れる俺を冬美が起こしてくれる。

・・・・焦凍にも気を遣わせてしまったな。

 

「っ、礼言ってんじゃねぇよクソ親父」

 

そう言って焦凍は歯を食いしばって俺に背中を向ける。

そして身体を震わせながら小さな声を口にした。

 

「・・・・おかえり」

 

「っ、ああ。ただいま」

 

焦凍の言葉に答える。

冬美の時点で感じてはいたが、焦凍に会ったことで帰って来たのだと実感した。

 

「じゃあ君がいなくなった後の話をしていくよ」

 

俺と焦凍のやり取りを見守っていた校長がこちらの世界のことを教えてくれる。

 

以前に俺が偶然こっちの世界に帰ってきてから一か月が経過していたようだ。

向こうの世界の科学者の話ではこの時点で世界の時間は同じになり流れる速度も合わさるという話だったがどうなのだろうか。

 

向こうの世界と繋がっている燈矢にこの後会いに行く予定だ、その時に向こうの様子と俺が無事世界を渡れたことを伝えてもらえればありがたいが。

 

その後もこれまでの話を説明され、その後に俺が今まで何をしていたかを聞かれる。

まぁ、それは聞かれるだろう。

 

「・・・・」

 

話す内容と話さない内容を選ぶ。

向こうの家族のことは全員が揃ってからにするつもりだ。

 

俺が世界を渡った経緯と状況。

他にオールフォーワンとの戦いやあちらの世界の様子を説明していく。

 

「あれ?もしかしてもう終わっちゃいました?」

 

説明をしていると焦凍の後ろの扉にさらに人影が見えた。

その飄々とした声に誰が来たかすぐにわかる。

 

「ホークスか」

 

「はい、お久しぶりですエンデヴァーさん」

 

俺の言葉に笑顔で答えながらこちらにやってくる。

 

・・・・ホークスの背中には見慣れたあの翼がなかった。

 

それであれ以降の戦いで失ったのだと察した。

 

俺の様子を知ってか知らずかヘラヘラと笑いながらホークスは口を開く。

 

「それで派手に腫れたエンデヴァーさんの頬を見る限りもう終わった感じですかね?エンデヴァーさん殴ろう大会、俺の分もしっかり殴ってくれました?」

 

「・・・・いや、焦凍からだけだ。お前の分はまだ残ってる」

 

「そうですか、よかったです。やっぱこういうのは自分でしないと」

 

そう言ってホークスは腕を振りかぶり、こっちに勢いよく振り抜く。

しかしその拳は俺の顔ではなく胸に、しかも当たる寸前でゆっくりとなった。

 

ゆっくりとなった拳は俺の胸を軽く叩き、離れる。

 

それだけを終えたホークスは俺を見て微笑んだ。

 

「おかえりなさいエンデヴァーさん。遅いですよ」

 

「・・・・ああ、すまなかった」

 

「ちゃんと帰ってきてくれたんで別にもういいです。それよりこのメンツを見る限り、まだ大事な人達に会ってなさそうですね」

 

校長室にいる者達を見てホークスがそう呟く。

・・・・ああ、そうだ。

 

まだ会わなければならない者達は大勢いる。

 

だがまずは。

 

「ああ。冷と、そして燈矢に会いに行く」

 

 

 

 

「・・・・」

 

燈矢兄がいる施設に私達はやってきた。

中にはやっぱりお母さんがいて、当然現れたお父さんに固まっていた。

 

お父さんの方から事情を説明する。

その間に私は焦凍にどうしてお父さんのことを教えてくれなかったのを聞いた。

 

「……いや俺も半信半疑だったし、変に希望持たせて違ってたらまずいと思って」

 

目を逸らしながらそう言う焦凍の説明に少し怒ってる様子を出しながら身体をぽかぽかと叩く。

焦凍はされるがままで、そうしている間に説明を終えたお父さんが戻ってきていた。

 

「・・・・ちょっと突然すぎて頭が痛くなっちゃった」

 

そう言って疲れた顔でお父さんを見るお母さんに苦笑いを浮かべる。

まぁ、本当にいきなりだよね。心の準備もなしに来て感動の再会もあったものじゃない。

 

そんな私達を見ながらもお父さんは燈矢兄のところへ進んでいく。

お母さんの話では珍しく目が覚めているらしい。

 

最近はずっと寝たきりだったから今日、それもお父さんが帰ってきてくれた日に起きているのは驚いた。

 

これはきっと、お父さんが学校で話してくれた出来事が関係しているのだろう。

 

「・・・・」

 

私は燈矢兄のところに向かうお父さんをじっと見つめる。

ここでの話が終わったら私達に話すことがあるらしい。

 

私の方からすでに夏雄には連絡している。

お父さんが生きているという話に半信半疑ながらも一度こっちに来てくれることになった。

 

そんなに遠くにはいないからすぐ来てくれるだろう。

 

・・・・真剣な表情のお父さんを見て明るい話ではないと予想してしまう。

 

「こうして直接会うのは久しぶりだな、燈矢」

 

「荼毘でいい。俺はもうそっちの方がしっくりくる」

 

「・・・・だが」

 

「俺とは向こうの世界で十分話してるだろ。今はそっちを優先しろよ、これから大変だろうから・・・・・俺が言えた義理じゃないけどさ」

 

「・・・・」

 

お父さんと燈矢兄が話をしている。

でも、その内容がよくわからなかった。

 

燈矢兄はもうお父さんと話している?どういうこと?

 

「・・・・わかった。向こうの世界のみんなに俺が無事着いたことを伝えてくれ」

 

「ああ、わかってる。あっちも変わってないから安心しろよ」

 

燈矢兄とのやり取りはそれだけだった。

話を終えたお父さんは私達の方へ向き直り口を開く。

 

「大事な話がある。俺が向こうの世界にいた時のことだ」

 

家に帰って、夏雄と合流してから話したいらしい。

 

いつものお父さんだけど、その様子は緊張しているのがわかった。

 

「・・・・」

 

そんなお父さんを見て、私の背中に嫌な予感が走った。

 

 

・・・・そして、その予感は的中してしまった。

 

 

 

 

「・・・・俺は向こうの世界で家族を作った」

 

夏雄と合流し、久しぶりに家族全員が揃った。

そんな中、お父さんの口から語られた内容、それは。

 

「向こうの世界に行って、俺は最初単純に過去に戻ってしまったのだと考えた。目が覚めると俺は二十歳ほどに若返っていて、目の前には若い冷がいた」

 

そう言って、お父さんは過去の出来事を説明していく。

自殺しようとして、校長先生に諭されたこと。

 

そして、もう一度私達に会って自分の行ってきたことを償おうと思いやり直したこと。

 

途中で私達と向こうの世界の私達は違う存在だと頭の底ではわかっていたけど、それでも自分を誤魔化して向こうの家族と時を過ごしたこと。

 

そして幸せな家族を目指しながら子供の向こうの世界の私達が大きくなるまで時を過ごし、命がけの戦いの結果こっちの世界に一時的に帰ってこれて、そこで焦凍と再会したこと。

 

向こうの世界での戦いを落ち着かせ、こっちの世界に帰ってきたこと。

 

・・・・向こうの世界では燈矢兄はヒーローをしていて、私達の世界の燈矢兄と一緒にいること。

 

・・・・焦凍よりも下の妹が二人いること。

 

・・・・ずっと家族一緒に過ごしていたこと。

 

お父さんはあちらの世界で何があったのかを全部話した。

 

「・・・・ぇ」

 

全てを聞き終えた私の口から言葉にもならない声が漏れ出た。

信じられない、いや信じたくない。

 

だって、そんなの。

 

でもいつまで経ってもお父さんは冗談とは言ってくれなかった。

ただただ黙って私達の反応を待つばかり。

 

それがこの話が本当のことだと私に無理やり教えてくる。

 

「・・・・俺は、お前たちに行ってきた非道への責任を果たす。遅くなってしまったが燈矢のことを含めてこれから先、人々から降りかかる火の粉は俺が全て受けきる。だが・・・・向こうの家族を捨てるようなことは出来ない」

 

少し目を俯かせながらそう語るお父さん。

その言葉と聞いて、黙っていた夏雄が口を開く。

 

けど、それよりも早く。

 

「ふざけ」「ふざけないで!!!」

 

私が叫んでしまっていた。

 

「・・・・」

 

私の叫びにお父さんは黙ったままこっちを見つめる。

そんなお父さんを見ながら私の口は止まらない。

 

「あっちの家族はみんな幸せなんだよね、燈矢兄はヒーローしててお母さんとお父さんは仲良くて、焦凍は自由に過ごしてて、私も夏雄も笑ってて、私達にはいない妹までいて」

 

「・・・・ああ、そうだ」

 

私の言葉を否定しないお父さん。

それを見て歯を食いしばる。

 

気が付けば目からは涙が溢れてしまっていた。

 

「・・・・そんなのってないよ。あんまりだよ。私はずっと普通の家族になりたかったのに、それが私達じゃなくて別の私達だなんて、そんなの、そんなの・・・・ずるいよ」

 

「・・・・冬美」

 

「そんなに幸せだったのなら戻ってこなかったらよかったのに!私達なんか忘れて向こうで幸せになったらよかったじゃない!!」

 

自分でも何を言っているのかわからなかった。

頭の中がぐちゃぐちゃで嫌な気持ちが収まらなかった。

 

涙を流しながら私は制御できない感情をお父さんにぶつける。

 

「・・・・償いのためだけに戻ったわけじゃないんだ、お前たちに会いたくて。もう一度会って話がしたくて」

 

「もういい!言い訳なんて聞きたくない!!そんなのお父さんの自己満足じゃない!!」

 

お父さんの話を聞きたくなくて途中で叫ぶ。

泣き続ける私にお母さんや焦凍が近づいてくる。

 

「・・・・冬姉」

 

「冬美、落ち着いて、ね。確かにびっくりしたけど落ち着いて話を聞きましょう」

 

「――――っっ」

 

私を落ち着かせようと優しく声をかけてくれるお母さんと焦凍。

そんな二人に私は黙ったまま俯く。

 

今口を開けば二人にもひどいことを言ってしまいそうだった。

 

「・・・・っ!!」

 

こんなに取り乱してしまった自分が、未だ溢れそうになる暗い気持ちが嫌になって私は黙ったまま走って部屋を出てそのまま外に飛び出す。

 

外はすでに暗く、月と街灯の光が私を照らす。

 

そんな中を私は靴も履かずに走り続ける。

息がきれても関係なしに走り、少しでも家族から遠くにいきたかった。

 

やがて完全に体力が切れて足が止まる。

立ち止まった私は地面に座り込み、未だ止まらない涙を手で覆って隠す。

 

「っ、うぅ。うぅぅっぅ!!」

 

静かな夜空に私の嗚咽が溶けて消えていく。

 

・・・・もう何もかも嫌だった。

 

せっかくお父さんが帰ってきてくれたのにそれを台無しにしてしまった。

子供みたいに叫んで家を飛び出してみんなを心配させて。

 

このまま消えてしまいたかった。

 

「・・・・帰らないと」

 

きっとみんな私を探している。

子供じゃないんだ、早くみんなに謝らないと。

 

相変わらず涙が止まらず袖で濡れた目を拭う。

 

そうしていると。

 

 

 

 

 

 

「――――やっと、見つけた」

 

 

 

 

 

「・・・・え?」

 

その言葉に一瞬お父さん達がやってきたのかと声の方を見る。

でも、そこにいたのはお父さん達ではなく見覚えのないの男の人だった。

 

「どうして泣いているんだい。冬美」

 

「・・・・え、えっと」

 

真っ白な人だった。

髪も、肌も、まるで真っ白な雪のような。

整った顔立ちは儚げな雰囲気を持っており、そんな人に声をかけられて困惑する。

 

困惑する私にかまうことなく彼は近づいてくる。

 

「ああ、やっと、やっと会えた。ずっとずっと会いたかった」

 

「あ、あの。あなたは?誰かと間違えているんじゃ」

 

涙を流す私を見てなぜか彼も目を潤ませ涙を浮かべていた。

私の名前を知ってる。けど、私は彼を見たことがない。

 

そんな私の言葉に彼は近づいていた足をぴたりと止める。

 

「・・・・ワープの影響で記憶が。大丈夫、すぐに思い出すよ。ひとまず帰ろう冬美、僕らの世界に」

 

「え、あ、何を」

 

悲しそうな表情を浮かべた彼が私の手を掴んでくる。

私は何が起こっているかわからず逃げようとするが彼は離してくれない。

 

そして私を掴んだ彼は横に手を向ける。

するとそこの景色が歪んでいき、やがて渦のようなものが出来上がった。

 

彼は私の手を掴みながらその空間に入ろうとしてくる。

私は慌てて抵抗するけど、その華奢な見かけとは違いすごい力でビクともしなかった。

 

「姉ちゃん!っっ!?誰だよお前!!姉ちゃんから離れろよ!!」

 

「っ、夏雄!!」

 

声がした方を見ればそこには夏雄が、その奥からはお母さんが見えた。

理解できない状況から一瞬固まった夏雄だったけど、すぐに緊迫した状況だと理解してこっちに走ってくる。

 

「っ、来ちゃダメ!!」

 

この得体のしれない男の人が夏雄に何をするかわからず叫んで止める。

すると男が夏雄とお母さんの方を見て口を開いた。

 

「夏雄くん、それに冷さん。っ、よかった、二人も無事だったんですね」

 

「はぁ!?何言ってやがる!!」

 

男はなぜか夏雄とお母さんを見て私に言ったように嬉しそうにそう口にする。

夏雄たちのことも知っている?この人はいったい誰なの?

 

夏雄達を見た男の人は私を掴む反対の腕を二人に向けた。

 

「二人も一緒に帰りましょう」

 

「っ!?」

 

「やめて!!」

 

嫌な予感が身体中を走り、私は必死に叫ぶ。

 

そんな私の叫びに応えるように別方向から氷と、そして炎がやってきた。

 

「冬美!!」「冬姉!!」

 

氷と炎、それぞれの個性を身に纏ったお父さんと焦凍が私を取り返そうと迫る。

二人の動きは速くて私は目が追い付かない。

 

けれど目の前の男の人の動きは見えた。

 

一瞬私の手を離した彼はその両手を二人に向け何かの力を使う。

 

お父さん達の目の前の空間が歪み、その歪みの中から見覚えのある何かが姿を現す。

それを見て、お父さん達はそれの名を口にした。

 

 

 

「「脳無!?」」

 

 

 

現れたのは黒い姿をしたおぞましい存在、それらは迫るお父さん達に向かって走り二人を蹴散らした。

それを見て私は叫ぶ。

 

けれど、その叫びは衝撃波にかき消されてしまった。

 

「・・・・炎司さん。あなたはやっぱり僕と冬美の邪魔をするんですね」

 

男は悲しそうな顔でそう口にする。

 

「ぁ、は、離して!!」

 

私は手を離している隙に逃げ出そうとするけど、見つかってまた捕まってしまった。

 

「冬姉を返せ!!」

 

「・・・・君は誰かな?」

 

焦凍が来てくれるけど、脳無に妨害されてそれ以上は近づけない。

二人が妨害されている間に男は先に開いていた渦の中に入り、腕を掴まれていた私も同じように吸い込まれてしまう。

 

「冬美!!!」

 

「お、お父さん!!」

 

脳無を制圧したお父さんが全速力でこっちに飛んでくるのが見えた。

私も身体の半分が吸い込まれながらも手を必死に伸ばす。

 

 

けれど。

 

「っっっ!!」

 

手が触れ合う寸前で、私は渦の中に完全に吸い込まれてしまった。

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

冬美が謎の男に連れ去られてから数時間が経過した現在。

俺たち家族は焦燥感に駆られながら情報が集まるのを今か今と待っていた。

 

あの男は誰だ、付近の監視カメラの映像から身元の特定を急いでいるが正体がわかっていない。

制圧した脳無も研究班が緊急で調べているが情報が手に入るまで今しばらくかかる。

 

校長やホークス、頼りになるヒーローにも協力を仰ぎ情報の精査を行っている。

 

「・・・・っ」

 

俺のせいだ、俺が冬美の気持ちを考えもせずに説明をしたせいでこんなことに。

 

・・・・後悔するのは後だ。今は冬美を助けることに専念しろ。

 

現地のヒーロー達以外にも俺には調べられる手段がある。

 

「シルバー、分析はどうだ」

 

『はいマスター。たった今分析が完了致しました』

 

俺の言葉に腕に取り付けられたリングが反応する。

シルバー、リングに搭載されたAI。

 

俺が世界を渡るための力を使ってくれると同時に様々なサポートが出来るように施された俺専用のサポートアイテムだ。

 

『分析の結果、私に搭載された機能と同質の力。別世界へのワープの残滓を検出致しました』

 

「っ、悪い予想が当たったか」

 

奴の作り出した歪な空間、それが俺が体験した世界を跨ぐ空間と似ているような気がした。

 

夏雄たちから聞いた奴の言葉と合わせ、奴が冬美を別の世界に連れ去った可能性を考え調べさせたが案の定だった。

 

「その世界に俺を連れていくことは可能か!」

 

『行くだけなら可能です。しかし帰りのエネルギーが不足しますので充電まで時を要します』

 

よし、行くことが出来るのなら話が早い。

 

事情を校長やホークスたちに伝え準備を進める。

 

奴が行った世界に向かい冬美を取り戻す、そしてエネルギーが戻り次第こっちに戻ってくればいいだけのこと。

 

もし奴が別の世界の人間だとするならば、こっちの世界でいくら調べようと答えは出ないだろう。

気になるのは脳無を使役していたことだが、調べている時間はない。

 

「シルバー、奴が行った世界に俺を連れていけ。今すぐだ」

 

準備を終えた俺はシルバーに声をかける。

すると横から待ったが入った。

 

「待て、俺も行く」

 

その声に振り返れば、やはり焦凍がいた。

すでにヒーローコスチュームを身に纏い準備を整えている。

 

それを見て俺は悩む。

向こうの世界がどうなっているのか想像がつかない。

 

脳無が出て来た以上、平和な世界の可能性は限りなく低い。

そこに冬美を助けるためにとはいえ焦凍を連れていくべきか。

 

「言っとくが止めても無駄だからな。目の前で冬姉を連れていかれて黙っていられるわけがねぇだろ」

 

拳を握り震わせながらそう口にする焦凍からは抑えきれない怒りを感じた。

それを見て、止めても無駄だと判断し頷く。

 

その後ろには夏雄と冷がいた。

二人も険しい顔をしていてそこには隠しきれない不安が見える。

 

冷も夏雄も行きたいのだろう、けれど無理だと理解し耐えてくれていた。

 

「待っていてくれ。すぐに冬美を救い帰ってくる。必ずだ」

 

二人を見つめながら言葉を送る。

まだ家族に伝えるべきこと、やるべきことがある。

 

こんなことで邪魔などされてたまるか。

 

事情を近くのヒーローに伝え、出発の準備を進めていく。

 

そうしていると見覚えのある、いやありすぎる二人がこっちに飛んでくるのが見えた。

 

「エンデヴァー!」

 

「・・・・緑谷、それに爆豪か」

 

「なんでお前らが」

 

やってきたのは緑谷と爆豪の二人、どちらもヒーローコスチュームに身を包んでおり事態を把握しているのか険しい表情をしている。

 

「ホークスから事情を聞きました。僕らも轟くんのお姉さんを助けに行きます」

 

「・・・・」

 

自分たちも行くと告げる緑谷たちに俺はまた黙る。

焦凍も二人の登場に固まっていたがやめるように口を開いていた。

 

それを見ていると携帯が鳴る。着信の相手はホークスだった。

 

『どーも、緑谷くんたちそっち来ました?』

 

『お前の仕業か』

 

『ええ、人手がいると思って。焦凍くんも行くんでしょ?だったら連携の取れる二人がいいし、エンデヴァーさんも三人の面倒見てたので連携は取りやすいでしょ』

 

どうやらホークスが二人に事情を説明し寄越したらしい。

二人を選んだ理由もよくわかる。

 

今更彼らを学生だからという理由で戦力外にするなどとは思わん。二人の実力は十分知っているからだ。

 

「・・・・けど、緑谷は力が、爆豪も右腕動かないだろ」

 

「まだ残り火があるよ」

 

「握力はまだ弱いが動く、問題ねぇ」

 

焦凍の言葉に緑谷と爆豪は自分の拳を前に出して力を示す。

真っすぐ、変わらない強い瞳のまま。

 

「助けられる力がある、なのにじっとなんかしてられない」

 

「・・・・けど」

 

「轟」

 

なお食い下がる焦凍に爆豪が口を挟む。

緑谷に視線を送りながら指を指す。

 

「このバカが曲がらねぇことはてめぇもよくわかってんだろ。俺もこいつについてく。こんな時間の無駄をしてる暇があんならさっさと助けにいくぞ」

 

「・・・・そうだな。緑谷、爆豪、わりぃ、手伝ってくれ」

 

爆豪の言葉に焦凍は薄く笑い頭を下げる。

それを二人は頷いて応えた。

 

ここに来て俺が口を挟むことはないだろう。

 

シルバーに目を向けて四人で世界を渡れるかを確認し、可能と返ってくる。

 

行けることを確認し、三人を目を向ける。

 

「全員覚悟はいいな」

 

怯むことなく頷く三人を見て、俺はシルバーに力を発動させる。

そして、世界を跨ぐ光が俺達を包み込んだ。

 

 

 

「・・・・光が収まった?」

 

エンデヴァーが使用した世界を移動するというアイテムが発した光が収まったのを見て目を開ける。

先ほどまで感じていた身体が歪むような感覚も収まっているしもう大丈夫だろうか。

 

ぼやけた視界のピントを合わせていき、周囲を確認する。

するとすぐに違和感に気が付いた。

 

「・・・・ここって」

 

エンデヴァー、かっちゃん、轟くんも同じように周囲を見て固まっている。

目を開けた先に広がるのは先ほどまでいた僕らの街の風景とは違っていた。

 

いや、場所は同じなんだ。

 

見覚えのある家や看板がありここが僕らがいた場所と同じところだったと教えてくれる。

けれど、僕らがいた場所とはあまりにも違っていた。

 

「・・・・少なくともワープが出来たみてぇだな」

 

「・・・・ああ、けど」

 

周囲の様子に目を細めながらかっちゃんがそう呟き轟くんも頷く。

それに僕も頷きながら周囲を見る。

 

その景色はひどく荒廃していた。

 

僕たちのいた場所もまだまだ復興の途中だった。

けれど、ここはそんな様子もない。それどころか人の気配もなかった。

 

「「・・・・」」

 

想定以上の世界の変化に僕らの思考が固まる。

そんな中、唯一エンデヴァーだけが冷静だった。

 

「ひとまず隠れながらこの世界の情報を集めていくぞ。俺一人とお前たちで別れ、建物の中を探索する」

 

その言葉に頷きエンデヴァーと別れて僕らはまだ壊れていない建物の中に入る。

 

テレビやラジオは、流れているか怪しい。新聞なんかがあればありがたいけど。

 

「・・・・新聞があった。っ、どうやらクソみてぇな状況らしいな」

 

かっちゃんが持つ新聞をのぞき込む、

日付は4か月くらい前のもの。

 

この世界の今日がいつかわからないけど、この新聞の日付を見る限り僕らのいた世界と時間は大きくズレてはいないようだ。

 

「・・・・」

 

その内容はヴィラン、脳無たちが暴れているという情報。

被害の様子とヒーロー達への罵声が記載されていた。

 

書かれた記事の内容をよく見るけど、僕らの世界で起きたことと大きな違いは見られない。

 

もう少し最新の情報があればこの世界が僕らのいた世界と確実に違うことがわかるのだけど。

 

この人の気配のなさ、荒廃した街並みから嫌な想像が頭を過る。

 

「・・・・誰か人に会えれば話は早いんだけどな」

 

周囲を探索しながら轟くんが呟いた言葉に同意する。

見る限りこの世界は僕等の世界よりも危険度が高い。

 

はやく情報を集めて轟くんのお姉さんを助けないと。

 

そうしていると、僕の耳に人の悲鳴が届く。

 

「っ!!」

 

その声に即座に反応して建物から飛び出す。

かっちゃんも轟くんも反応して個性を使って加速しその悲鳴の元へと飛んでいく。

 

僕も残り火のワンフォーオールを使用し身体を強化し飛び上がる。

 

・・・・大丈夫、まだ残り火はしっかりしてる。

 

身体に残る火を感じながら悲鳴の元に急ぐ。

 

すると二人の少女が逃げているのが見えた。

その後ろからは複数体の脳無が追いかけている。

 

「脳無!」

 

話は聞いていたけど、こんな当たり前のように街を闊歩しているのか!

今にも追いつかれそうな状況に僕らも速度をあげる。

 

 

そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死っねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・しね?

 

聞き覚えのありすぎる言葉と共に僕らの目の前で爆炎が走り、少女たちへと迫っていた脳無たちが吹き飛んでいく。

唖然と口を開けながら視界を横に映す。

 

そこには同じように固まっているかっちゃんの姿があった。

 

かっちゃんはここにいる。

 

・・・・だったらさっきのは?

 

泣く少女たちのところに到着して彼女たちを救出しながら脳無に目を向ける。

脳無達は煙をあげながらもまだ動いていた。

 

僕らが戦闘態勢で警戒していると、再び脳無たちに爆炎が発生する。

 

それによって脳無たちは限界を迎えたのか震えながら倒れ動かなくなった。

 

 

「明るい時にどうどうと街に出てんじゃねぇぞ!!死にてぇのか!ああ!?」

 

 

爆炎の煙の中で誰かが言いそうな尖った言葉が放たれる。

 

あれは個性・・・・爆破だ。見間違えるはずがない。

 

やがて煙が晴れ、中にいた者の正体を僕らへと晒す。

 

見慣れた髪、ヒーローコスチューム。

 

それは間違いなく。

 

「かっちゃ・・・・・・・・・・・んん?」

 

正体の名を口にする途中で言葉を濁す。

爆破の個性、見覚えるのある姿。

 

どこからどう見てもかっちゃんだった。

 

今、僕の目の前には二人のかっちゃんがいる。

それ自体は想定していた。

 

別の世界に行くんだ、そこに別の僕たちがいることは不思議ではない。

だからこの状況は想定の範囲内・・・・・のはずだったんだけど。

 

 

 

「・・・・女の子?」

 

 

目の前に現れたのはかっちゃん―――ではなくよく似た女の子だった。

 

髪型は少し彼女の方が長いけど同じ、コスチュームも、個性も同じ。

 

けど顔つきや体格が女の子のそれだ、声もかっちゃんと比べて高い。

 

・・・・彼女はかっちゃんのファンか何かで真似をしていて、それを僕が勘違いしたんだろう。

 

僕もオールマイトの真似をよくするから彼女の気持ちはよくわかる。

 

少女たちを保護しつつかっちゃんによく似た女の子に声をかける。

ここでこの世界の人間に会えたのは大きい、さっそく何か情報を。

 

 

「―――――は?」

 

脳無を倒した彼女が僕たちを見る。

そして、まるで信じられないものを見たかのような表情で声を漏らしていた。

 

その視線は僕達、いや僕を見ているように感じた。

 

「・・・・えっと」

 

彼女に何て声をかけるべきか悩んでいる間に彼女の口が開く。

見れば、身体も震わせていた。

 

同時に彼女の表情も変わる。

 

その表情は、敵を見るものだった。

 

「・・・・死にてぇみたいだな」

 

「え、ま、待って!僕たちは!」

 

「ぶっころす!!!」

 

何か致命的な誤解を感じ声をかけるが彼女は答えず掌から爆発を起こし空に浮き上がる。

そして僕を睨みつけながら爆破で接近してきた。

 

「っ!?」

 

こっちに飛び出してくる彼女を見て僕は咄嗟にフルカウルを使って後ろに向かって飛び上がる。

なぜかわからないけれど敵対されてしまった、ここはまず保護した少女たちから離れないと。

 

「緑谷!!」

 

「ここは僕が!二人はその子たちを安全なところに!」

 

轟くんに答えながらも距離を空け続ける。

そうしてフルカウルを使う僕を見て、また彼女が僕を睨む。

 

「っ!?フルカウルだぁ?なんで、なんでてめぇがそれを使えるんだ!!」

 

ワンフォーオールの力を纏った僕を見て彼女はさらに怒気を強める。

 

・・・・なんで、彼女はヒーローで味方じゃないのか!

 

「待って!僕たちは君に危害を加えるつもりなんて」

 

「死にやがれ!!」

 

僕の声を無視して爆破を僕にぶつけてくる。

っこれはかっちゃんのA・Pショット!

 

個性だけじゃない、かっちゃんの技も使えるのか!

 

「っくそ、エアフォース!!」

 

空気弾を飛ばし彼女の技を相殺する。

そうしているとまたかっちゃんに似た彼女の視線がさらに強くなった。

 

「・・・・なんの目的でそんな恰好してんだ、ああ?私が騙されて利用できるとでも思ったか?」

 

「な、何の話?」

 

彼女の爆破を躱し距離を保ち続ける。

このまま距離を保って時間を稼ぐ、そうすれば二人も、エンデヴァーもいずれ援護に来てくれるはずだ。

 

「・・・・信じるわけがねぇだろ、いくら見かけや個性を似せようが私は目の前で見てんだよ」

 

彼女は身体を震わせながらそう呟く。

その内容を僕は理解できない。

 

けれど、次の彼女の言葉で僕は固まってしまった。

 

「――――出久は死んだ!!っ、もう、いねぇんだよ!!!」

 

「・・・・え」

 

叫ばれた内容に思わず固まってしまう。

見れば、彼女の目には涙が浮かんでいた。

 

彼女は涙を落としながらこっちに向かってくる。

 

「っ、君は」

 

爆破をギリギリで躱し距離をとる。

先ほどの言葉で頭が混乱する。

 

僕が死んだ?こっちの世界の僕?

 

彼女はこっちの世界の僕と知り合いだったのか?

 

かっちゃんに似た姿、個性、性格。

 

戦闘スタイルも僕の知るかっちゃんの動きそのものだった。

 

「・・・・右の大振り」

 

「っ!?」

 

彼女の動きから次のアクションを予想する。

その予想は的中し彼女の動きを完全に躱す。

 

躱されたのを見て彼女は驚きながら距離を空ける。

 

「・・・・私の動きを、っ!なんなんだ!!なんなんだお前は!!」

 

「・・・・」

 

彼女は叫びながら何度も僕に迫ってくる。

けれど、冷静さを失い単調な動きになってしまった彼女の攻撃は当たらない。

 

「・・・・っっ」

 

彼女は歯を食いしばりながら俯く。

頬からは、涙が伝っていた。

 

「いい加減、死ね!!!」

 

空中で何度も爆発を起こして自身に回転を加えていく。

っ、あれは。

 

榴弾砲着弾(ハウザー・インパクト)!!!」

 

彼女の掌から巨大な爆発が起こる寸前。

 

その威力はよく知っている、彼女の技がかっちゃんと同じものならばくらうわけにはいかない。

 

けれど、それよりも僕の視界は彼女に迫る何かを捕らえていた。

 

「――――ワンフォーオール45%」

 

それを見て力を行使する。

残り火のことは頭から消えていて、ただ、駆けた。

 

「デトロイト・スマッシュ!!」

 

「っ!?」

 

彼女の真横に瞬時に飛び、彼女を攻撃しようと飛んできていた『脳無』に拳を振るう。

拳を受けた脳無は吹き飛び、僕はそのまま彼女を守るために敵を睨む。

 

そして動かない脳無を見て、安心から息を吐き次に彼女に目を向ける。

 

ハウザーインパクトをやめた彼女は空中を落下しながら僕を見ていた。

やっぱり似ている、いや似てるなんてもんじゃない。

 

そのあまりにも僕の友達と同じ姿に思わず口が動いてしまう。

 

「・・・・かっちゃん」

 

「・・・・っ」

 

彼女は空中から落下し、そのまま着地する。

けれど綺麗に地面に着地できず倒れてしまった。

 

それを見て僕は慌てて彼女に近寄り手を差し出す。

 

 

 

「大丈夫?立てる?」

 

 

 

地面に尻もちをついていた彼女に手を伸ばし口を開く。

彼女が敵とはどうしても思えない。きっと何か勘違いが。

 

「・・・・やめろ」

 

彼女は動かず、顔を俯かせる。

そのまま身体を震わせていた。

 

「・・・・やめてくれっ、これ以上重ねさせんじゃねぇよ。出久は死んだんだ、もういねぇんだよ」

 

「・・・・」

 

彼女の言葉に僕は無言のまま頭を働かせる。

それが本当なら・・・・。

 

「・・・・なのに、あいつと同じことばっかしやがって。そんなことされたら・・・・っ、信じたくなっちまうだろうが」

 

「・・・・ごめん」

 

何を言うべきか答えが出なくて僕の口から漏れたのは謝罪だけ。

 

・・・・僕は彼女の言う緑谷出久じゃない。

 

彼女の言葉を聞いて一つの予想が頭に浮かんでしまった。

 

僕の死。

 

そしてこの世界の現状。

 

街は荒廃し、脳無が何体も闊歩しているこの世界。

 

人が生活している様子もなく、先ほど救出した女の子達もボロボロだった。

 

それらを総合すると一つの答えが出てしまう。

 

・・・・この世界は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が死柄木に負けた世界だ。

 

 

 

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