四話
俺のお父さんはNo.2ヒーローだ。
テレビに映るお父さんが戦う姿をお母さんと見て、いつも目を輝かせてた。
俺もこんな風になりたいって思った。
学校では、オールマイトの話が多かったけど、お父さんの話で盛り上がっていることも多くて、誇らしかった。
嬉しくて笑顔になる。そんな風に笑いながら家に帰る途中で、知らない人に話しかけられた。
「やぁ、君は轟燈矢くんだね?」
「そうだけど、おじさんだれ?」
優しそうな笑みを浮かべて俺に話しかけてきたおじさんに俺は首を傾げる。
そんな俺の疑問におじさんは笑みを浮かべたまま口を開く。
「ああ、失礼。僕は君のお父さんの大ファンでね。ぜひ彼の息子である君と話をしてみたかったのさ」
「そうなの?へへ、いいよ!なんでも聞いてよ!」
「ああ、ありがとう」
お父さんを褒められて嬉しくなった俺はおじさんと話をする。
おじさんは俺が話すお父さんとの出来事や、お父さんのすごかったことを本当に楽しそうに聞いていた。
相槌や良いタイミングで質問も挟んでくれたりしてくれたから、俺はどんどん話すことが出来た。
すごく楽しかった。こんなにお父さんのことを話せたのは初めてだ。
「ありがとう、面白い話だった。お礼に今度は僕から話そう。君の知らない過去のエンデヴァーの話をね」
「俺の知らないお父さんの話?」
俺がそう問い返すとおじさんは微笑みながら肯定する。
興味が出て聞く体勢に俺がなると、おじさんが話し始めた。
「君のお父さんには野望があるんだ。オールマイトを超え、No.1になるという大きな野望がね。だが、彼では不可能だった、オールマイトと彼にはそれほど大きな差があったのさ」
「・・・・そんなことない、お父さんはすごいんだ!オールマイトよりもすごいんだ!!」
「でも君の学校ではお父さんよりオールマイトの話が多いんじゃないかい?それが世間の事実なんだ」
「・・・・」
学校の様子を思い出し、俺は思わず黙りこんでしまう。
でも、なんとかおじさんの言葉を否定しようと口を開き、でもその前におじさんの言葉が続いた。
「だから彼は方法を変えた。自分で超えるのではなく、子供にその野望を託したのさ」
「・・・・え?子供に?」
「そうつまり君にだ」
僕を見ながらそういうおじさんの言葉を頭の中で繰り返す。
つまり、お父さんが俺を生んだのは。
「君はお父さんのことが好きなんだろう?だったら息子の君がオールマイトを超えてNo.1になればお父さんは喜ぶんじゃないかい?」
その言葉を聞いた瞬間、俺の身体のうちから熱い何かが湧いて来たのを感じた。
そっか、俺はそのために生まれたんだ。
俺が、No.1になればお父さんが喜ぶんだ!
「――――俺!超えたい!オールマイトを超えてNo.1になりたい!!」
身体の底から沸いた熱の想うがままに言葉を作り出す。
俺の言葉を聞いたおじさんは嬉しそうに微笑んだ。
「ああ、頑張るといい。それにもし君がなれなくても大丈夫、
「――――え?」
盛り上がっていた俺はおじさんの言葉に引っかかりを覚えた。
「おそらく君のお父さんが求めているのは炎の個性と氷の個性のハイブリットだ。彼の個性の弱点を補うのにはそれが最適だからね。彼はそれを求め続けている」
「・・・・」
「君の下には妹がいるんだろ?もしかしたらその子がお父さんの求めている子かもね」
「・・・・違うよ!冬美ちゃんは違う!俺だよ!!俺がお父さんが求めている子供なんだ!!」
「そうかい?では頑張るんだよ、大丈夫、君ならお父さんの期待に応えられるさ」
おじさんは
おじさんの言葉でいっぱいいっぱいだった俺はろくな挨拶もせずにそのまま別れる。
モヤモヤしたまま家に帰り、お父さんが戻るのを待った。
そしてお父さんが帰って来た時に言ったんだ。
「お父さん!俺、お父さんの代わりにオールマイトを超えてNo.1になるよ!!そうなったらお父さん嬉しいでしょ?」
俺がそう言った時のお父さんの表情は、俺の予想と違った。
嬉しそうに笑ってくれると思ったんだ。
でも違った、その時のお父さんの表情は嬉しそうじゃなくてどっちかというと
なんで?なんで喜んでくれないんだよ・・・・俺がお父さんの求めていた子供じゃないのかよ。
俺の言葉に少し間を空けたお父さんだったけど、その後すぐに俺ならNo.1になれると言ってくれた。
そして俺の望み通り一緒に訓練をしてくれたんだ。
俺専用のアイテムも事前に作ってくれていた。
それをもらってやっぱりお父さんは俺に期待してくれているんだと確信した。
待っててよ!もっと強くなって絶対俺がNo.1になるから!
だから―――――ちゃんと見ててよ、お父さん。
◇
「ねぇねぇ転弧、次はどんな風に来るかな?」
「え?うーん?そんなのわからないよ」
僕が部屋でゲームをしていると華ちゃんがそう尋ねてくる。
華ちゃんが言っているのは最近よく来るオールマイトのことだろう。
毎回登場の挨拶が違うから華ちゃんが次はどんな風に来るのか楽しみにしているんだ。
そんな話をしていると窓の外から噂の人物が来るのを見えた。
「ハッハッハッハッハ!!私が、変装してやって、来た!!」
その声につられて見てみれば、確かに変装していた。
帽子にグラサンにいつものコスチュームではなくスーツを着ている。
でもその声となにより大きな身体のせいでオールマイトだとバレバレだった。
「・・・・」
今すぐ会いに行きたいけど、会ったらお父さんに怒られる。
だから外でお父さんとお母さんがオールマイトと会っているのを華ちゃんとこっそり眺める。
「・・・・あれ?」
いつもならそのまま追い返されるんだけど、今日は違った。
なんとオールマイトが家の中にやってきたのだ。
「オールマイト!!」
「やぁおはよう転弧少年! 華少女!!」
家の中に上がってきたオールマイトに僕と華ちゃんが近づく。
そして少し話していると、お父さんとお母さん、それに知らないおじいちゃんの姿があった。
「・・・・君たちが志村の孫か。初めまして俺はグラントリノ、ヒーローをしている」
「ヒーロー!!」
おじいちゃんの挨拶に目を輝かせる。
そんな僕を見て、おじいちゃんは笑った後、両親の方に視線を向けた。
「・・・・今日あなた達を家に上げたのは終わりにしたいからです。この話し合い以降、うちの家族には近づかないでもらおう」
「「・・・・」」
「華、転弧、二人は二階にあがってなさい」
「・・・・うん」
お父さんの言葉にお母さんもおじいちゃん、おばあちゃん、オールマイト達も何も言わない。
そしてそのまま全員はリビングにある椅子へと腰を下ろした。
僕たちはお父さんの言葉に従って二階の僕たちの部屋に戻る。
そのまま下で話が終わるのをじっと待つ。
「―――――っ」
「―――――っ」
二階に上がってどれくらい時間が経っただろう。
時折何か話し声が聞こえるけれど、うまく聞き取れない。
この話し合いが終わったら、もうオールマイトに会えないのかな?
・・・・それはやだな。
「ねぇ転弧、こっそり下に行って覗いてみようよ」
「え、いいのかな?」
「転弧も気になるでしょ?私も気になるしバレないようにさ」
「・・・・うん」
2人で二階から降りてリビングにいるオールマイト達の様子を見る。
そして固まった。
「お師匠、君のお母さんは巨悪と戦い亡くなった、私の力が足りないばかりにっ!本当に申し訳がない!!」
「としのっ、オールマイト・・・・その責任はお前だけじゃない俺もだろう。俺もあいつを」
「「っっ!!」」
リビングで、オールマイトがお父さんに向かって土下座していた。
そしてそのオールマイトを見て、お父さんは表情を歪めていた。
「君の母を殺した悪が今度はあなた達を狙っている!私はあなた達を守りたい、今度こそ!!だから、私と一緒についてきてほしいんだ!安全な場所がある、そこなら相手も手出しは出来ない!」
「特に危険なのは君の子供たちだ、相手は確実に狙ってくる。せめて彼らだけでも安全なところに移動させたほうがいい」
「~~~~っ!!また俺から家族を引き離すのか!もうやめてくれ!もううんざりだ!!」
「・・・・志村は、君の母は間違いなく君を愛していた。離れたのは苦渋の決断だったんだ。君を守るために、相手の魔の手が君に伸びないために」
「ああ、わかってるさ!あの人は俺を愛してくれてるのは、だが俺を捨てたのは事実だろう!!ヒーローっていうのは他人を守るために大切な者を傷つける存在だ!!!」
オールマイト達の言葉にお父さんは怒気を纏わせて叫ぶ。
そんなお父さんを見てしまい、僕は思わず。
「ひっ!!」
「っ!!聞いていたのか、転弧!!」
お父さんが怖くて、思わず声が漏れてしまった。
そして僕に気が付いたお父さんが怖い表情でこちらへと近づいてくる
そして僕に向かって手を振り上げた。
振り上げた手を見て、僕はとっさに目を閉じる。
・・・・でも、想像していた痛みは襲ってこなかった。
恐る恐る目を開ける、そして視界に映る姿に目を見開いた。
「オ、オールマイト」
オールマイトが僕を抱きしめて守ってくれていた。
そんな状況で僕はお父さんを見る。
僕らを見下ろすお父さんは震えていて、今にも泣いてしまいそうだった。
「弧太郎さん、確かにヒーローは守るものが多い。それによって家族を傷つけてしまうこともあるだろう」
「・・・・」
「しかし、その傷を癒すのもまたヒーローの、いや家族の仕事だ。君の母は、傷ついた君を癒すために何も残さなかったのかい?」
「――――っ」
「君の傷をお師匠は治そうとしたはずだ。その傷を広げ、治そうとしていないのは君自身なんじゃないか?」
そう言った後、オールマイトは僕から離れ立ち上がる。
そしてじっとお父さんを見つめた。
「私はお師匠から君のことを託されていた。そのことにずっと私は気づいていなかったが、頼もしい仲間の言葉で気づくことが出来た。だからどうか、君たちを守らせてほしい。これ以上君が傷つかないために。そしてその傷は私では治せないが、君自身と家族の力でなら治せるはずだ」
「・・・・」
そう言って頭を下げるオールマイトをお父さんは黙って見つめる。
そして無言の時間が流れ続け、やがてお父さんがゆっくりと口を開いた。
「・・・・引っ越しはしません。私の立ち上げた会社はこの街にありますから他所に行けば支障が出る。子供達にも負担をかけたくない」
「――――っ」
「……しかし、もうあなたを追い払うこともしません。なので、守りたいのなら自主的に守ってください」
「っ!!わかった!必ず君たちを守るさ!!」
「・・・・お前に任せっきりで悪かったな。もちろん俺も手伝う」
「ええ、お願いしますグラントリノ」
「・・・・」
そのやり取りを見届けたお父さんはリビングから無言で出ていく。
そしてお父さんがいなくなった後、僕達家族全員が安心して息を吐いた。
「びっくりしたぁ、お父さんすごく怖かった」
「華ちゃん、今までどこに」
「ごめん隠れてた」
「・・・・」
その言葉に僕はなんとも言えない表情になる。
お父さんが僕の方に来た時に華ちゃんに助けを求めて横を見たらいなくて絶望したんだけど。
「ねぇねぇオールマイト!お父さんの持ってる写真の人がおばあちゃんで師匠なんでしょう?だったらオールマイトが私達の師匠になってよ!私達姉弟ヒーロー目指してるの!」
「ハッハッハッハッハ!私も忙しいけど、君たちが本気で目指す覚悟ができたのなら修行をつけてあげよう!」
「わーい!約束よ!!」
「ああいいよ、ではそんなヒーローを目指す君たちに質問だ」
「ん、なに?」
オールマイトの言葉に華ちゃんも僕も首を傾げる。
そんな僕たちを見ながらオールマイトは言う。
「君たちはどうしてヒーローを目指すんだい?そして、どんなヒーローになりたい?」
「えっと」
「自分の中でこの質問への答えをしっかりと出せたのなら修行をつけよう」
「「・・・・」」
オールマイトの質問に僕たちは答えが出ずに口を閉じる。
そんな僕たちの頭を撫で、オールマイトとグラントリノは家を後にした。
◇
「ふむ、志村の家族は完全に守られてしまったね」
前からオールマイトが訪れていたけど、ここ最近で一気に守りが強くなった。
奴が来るようになる前から少しずつ接近し、その後も隙をついて弧太郎と接触することが出来ていたが、もう無理か。
増幅させたヒーローへの憎しみも消されてしまったようだ。
せっかく頑張って進めていたのに残念だ。
志村の孫の男の子、あれはオールマイトを削る僕のジョーカーになるはずだったんだけど。
まぁ、諦めるのは早い。隙を見つければ接触を試みてみようじゃないか。
「エンデヴァーのところへは、ひとまず種はまけた。さて無事に咲いてくれるかな?」
僕の理想通りにいってくれるのなら嬉しいが、もっといろいろな布石をうっておく必要がある。
志村がダメになったのなら、次の手を探さないといけない。
やつの心を砕き、弟を取り戻すために。
いいものがないかと探してみて、一つ気になるものがあった。
志村のところへあいつが向かいだしたと同時期に別のところへ気を向けていたことがあった。
現在はそちらへは何もないし、僕もオールマイトとの関連性が見つからなかったから見過ごしていたけど。
「・・・・緑谷一家か、さて何がある?」
この夫婦がオールマイトと関係が?調べた限りは何も見つからなかった。
それに何かを警戒していたのは最初だけだ。
オールマイトとは無関係?いや僕が興味を持たないようにあえて放置してる可能性もある。
僕もすぐにオールマイトの動きを追わなければ緑谷夫婦のところへはたどり着けなかったし。
・・・・ふむ。
「もしかして、この夫婦から生まれてくる子供かな?」
予想し、次の計画を思い浮かべる。
この子は、君にとって大事なものかな?オールマイト。
そうだったら、嬉しいな。
本当は志村転弧に与えるはずだったこの個性。
捕まったドクターが別の施設に保管してあったもの。
この子にそれを与えたら、どうなるかな?
さぁ、咲くかわからないが種はまいてみようじゃないか。
なにせ僕はこういうのが大好きだからね。