エンデヴァー逆行物   作:デッテユー

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七話

僕には二人のお兄ちゃんと一人のお姉ちゃんがいる。

 

一人目のお兄ちゃん。

夏兄は僕の三つ上で一番年が近い。

だからかわからないけど一番よく遊んでくれる。

 

三人の中で一番頼りになって好き。

 

サッカーや野球、色々なことを一緒にやって、そうしていると冬姉、たまに燈矢兄も混じってくる。

 

それで、たまにお母さんのことについてため息を吐きながら言っている。

 

『もうちょっとさ、子供の目を考えてほしいんだよな。俺が何回起きて寝室から出ようとする焦凍を止めたことか』

 

ってよくわからないけど項垂れてた。

 

次にお姉ちゃんである冬姉。

 

一番優しくて好き、それにお母さんに似てる。

だからか、一緒にいると安心する。

 

中学三年生で、来年から雄英高校っていうところの普通科?っていうところを目指してるみたい。

燈矢兄と同じ高校で、冬姉いわく燈矢兄が問題起こした時に謝るためらしい。

 

それを聞いた燈矢兄はなんとも言えない顔をしてた。

 

夏兄から学校の男の子をまた振ったって、よくわからないけど、からかわれている。

僕と夏兄と遊ぶこともあるけど、冬姉はお母さんと一緒にガーデニングをしていることの方が多い。

 

僕はサッカーとかで遊ぶ方が楽しいけど、やっぱり女の子だからなのかな。

 

 

そして、一番上の燈矢兄。

 

燈矢兄は・・・・少し嫌い。

 

遊んでくれるし、優しいし、頼りになる・・・だけど。

 

燈矢兄はヒーローを目指していて、ずっとお父さんと一緒にいる。

 

 

 

 

それで・・・・よくお父さんを独り占めしてる。

 

 

 

 

『お父さん!一緒にあそ』

 

『ご飯食べたし訓練早くしようぜ!今日こそお父さんに勝つからさ!!』

 

『おい引っ張るな、わかったから』

 

『・・・・』

 

 

個性を強くするための訓練らしいけど、お父さんがお仕事から帰ってきて皆で食事をした後は二人でずっと訓練をしてる。

 

休みの日はお父さんは僕とも遊んでくれるけど、燈矢兄に手を引っ張られて訓練所に連れていかれることもある。

 

・・・・僕と夏兄、冬姉と一緒に遊んでたのに。

 

2人はお父さんを連れていかれたのに何も文句を言わない。

訓練ならしょうがないかぁって。

 

・・・・なら、僕も訓練したい。

 

それなら僕もお父さんといられると思ったから。

 

僕がそう言うと、お父さんは困った顔をした。

 

『焦凍はまだ5歳だ、訓練はもう少し大きくなってからな』

 

そう言った後に友達や夏兄たちともっと遊びなさいと言った。

 

僕は・・・・お父さんと遊びたいのに。

 

その言葉が出そうになって、結局恥ずかしくなって言えない。

お母さんには何でも言えるのに。

 

僕が訓練のことをお母さんに言うと、お母さんは僕の頭を撫でながら聞いてきた。

 

『焦凍はヒーローになりたいの?それともお父さんと遊びたいの?』

 

『・・・・お父さんと遊びたい。ヒーローは、よくわからない』

 

お母さんの言葉に僕は抱き着きながら答える。

 

ヒーロー。

お母さんと一緒に見たテレビに映っていたオールマイト。

誰かを助けるために毎日飛び回ってるって。

 

あの人が誰かを助ける姿はかっこよかった。

 

 

でも、それと同時にお父さんもヒーローで、だから毎日忙しいんだと思った。

忙しいから僕と一緒にいてくれない。

そしてヒーローだから、それを目指してる燈矢兄の訓練に付き合うし一番一緒にいる。

 

カッコいいと思う気持ちと、お父さんをとる原因だという気持ち。

その二つがあって僕の本当をわからなくさせる。

 

お母さんに相談した後、少しだけお父さんが一緒にいてくれる時間が増えた。

たぶん、お母さんが言ってくれたんだと思う。

 

それで満足してて、ヒーローのことを忘れていた時。

みんなでテレビを見ていた時にお父さんが出てきた。

 

『赫灼熱拳 ジェットバーン!双!!』

 

加速した二つの炎の拳がヴィランに直撃する。

お父さんの技を受けたヴィランは吹き飛び、白目をむいて気絶した。

 

その後、テレビにエンデヴァーへのインタビューという文字が浮かぶ。

この番組はお父さんについて話すものらしい。

みんな興味津々で見ていて、僕も一緒になってテレビに集中する。

 

『今回はNo2ヒーロー、エンデヴァーへの生放送インタビューになります!よろしくお願いしますエンデヴァー!』

 

『ああ』

 

「もう、あの人ったらもう少し愛想よくしたらいいのに」

 

インタビューへ短い返事を返したお父さんにお母さんは呆れた表情をする。

でもそんな返事を返された女の人は気にした様子もなく質問を始めた。

 

『前回の質問では事件解決の秘訣などなどお仕事についてお聞き致しましたので、今回はなんと!エンデヴァーのプライベートへ突っ込んでいきたいと思っております!!ぶっちゃけみんなこっちの方が気になるでしょ!!』

 

「ダイレクトに言う人だな」

 

テレビに向かって笑顔でそう言う女の人を見て今度は夏兄が呆れた顔をする。

プライベートってことは僕らのこと?なんて言うんだろうお父さん。

 

『寡黙な仕事人というイメージが強い彼ですが、それと同時に愛妻家としても有名なのはすでに周知の事実だと思います!まずは全国の夫婦たちのために夫婦円満の秘訣を聞いていこうと思います!!』

 

「あらあら、恥ずかしいわねもう」

 

「・・・・」

「こら夏雄、そんな顔でお母さんを見ないの」

 

隣で何かを話してる夏兄と冬姉。

でも僕は気にすることなくテレビの方へと集中する。

 

「ではエンデヴァー!夫婦円満の秘訣をお聞かせいただけますでしょうか!?」

 

「いやいや流石に答えねぇだろ、公開処刑だぜこんなの」

「まぁ、確かに恥ずかしいよね」

 

 

『・・・・自問自答することだ。俺は冷を、妻を幸せにできているかを、微笑んでいるか、悲しそうな顔をしていないか。自分に問いかけ、努力を続ける。それしか俺は出来ん』

 

「「答えるんだ」」

 

「そんなこと考えなくたって私は・・・・はぁ、帰ったら彼と話さないと」

 

若干テレビから距離を離した夏兄と冬姉、そしてなぜかため息を吐くお母さん。

その変化に僕が少し戸惑っている間もテレビは進行を続けていく。

 

『なるほど!聞きましたかテレビの向こうの旦那様方!!これが理想の旦那ランキングNo1ヒーローの実力です!ていうかうちの旦那はちゃんと見てるんだろうな!!お酒飲んで腹出していびきかいて寝てたら叩き起こすからね!!』

 

テレビにドアップで映った女の人が横から出てきたスタッフに離される。

それで落ち着いたのか咳払いをして別の質問を開始した。

 

『おほん!では次の質問です!四人の子供を持つパパであるエンデヴァーに子育てのコツを聞いて見ましょう』

 

『……それは俺が聞きたいくらいだ。俺は四人に何かを教えられるような男ではない、息子達と娘がそれぞれで立派に育っているに過ぎない』

 

『しかし、長男の燈矢君はあの超難関の雄英高校に推薦入学し、その実力はすでにプロ以上とも言われ、雄英体育祭での活躍を期待されています。それはエンデヴァーのお力添えが大きいのでは』

 

『それも燈矢が頑張った結果だ、冬美も夏雄も立派に自分の道を自身の意思で歩んでいる。末っ子の焦凍もきっと自分の道を見つけるだろう、俺はそれに少し手を貸すだけだ・・・・俺はそれくらいしか出来ん』

 

「「・・・・」」

 

お父さんの言葉に冬姉と夏兄は何か言いたそうにしながら黙る。

 

・・・・自分の道、僕の。

お父さんは僕が見つけるって言うけど、わからない。

 

不安な気持ちを覚えながらテレビに映るお父さんをじっと見つめる。

テレビに映るお父さんはいつも通り笑うこともなく真面目な顔をしている。

 

「・・・・あれ」

 

だけどなんだろう、僕らの話をするお父さんを見て不思議な感覚を覚える。

なぜか、どうしてかわからないけど。

 

 

 

今のお父さんは・・・・泣いてるように見えた。

 

 

 

 

◇

 

 

『雄英高校体育祭!!始まりますよぉぉぉぉぉ!!』

 

アナウンスの声が会場を満たす。

それの声に続き、負けじと会場に来た人々も歓声を上げて眼下に集まる生徒たちに応援を送る。

 

「お父さん始まったね!」

 

「ああ」

 

「あ!燈矢兄ちゃんだ!おーい!!」

 

俺の左右に座る冬美と夏雄が会場の中心に進む燈矢を見つけて手を振る。

多くの人がいる中で二人の声は向こうへは届かないだろう。

 

そう思っていたが、たまたまなのかこっちへ向いた燈矢が俺たちを見つけて、嬉しそうに手を振り返していた。

 

雄英高校体育祭。

 

それはいまや日本が誇る一大イベントの一つとなっている。

全国の人々が視聴し、数々のヒーローたちが将来のヒーローの卵を確認しにやってくる。

 

このイベントはただのイベントではないんだ。

ヒーロー達に自分の力を披露し、次に繋げる場でもある。

 

ここでの成績次第では次に待つ職場体験で多くのヒーロー事務所からスカウトされるだろう。

 

燈矢は俺の事務所に来るつもりのようだったが、それはダメだと言ってある。

俺の事務所には言ってはなんだがいつでも来れる。

 

だから他の事務所に行き、俺のところでは学べないことを得てきてほしい。

 

ゆえにこの体育祭では燈矢にはなるべく上位を狙ってほしいところだ。

 

「いっぱい人がいる!」

 

「そうね、お母さんと離れちゃダメよ。迷子になっちゃうから」

 

冷の横で焦凍が興奮しながら周りを見ている。

それにつられて周りを見回せば。

 

「あっ!こっち見た!転弧少年!あれがエンデヴァーだよ」

 

「・・・・」

 

こっちを指さしながら何かを言っている男の姿があった。

あいつ、人に指さして。

 

「・・・・はぁ」

 

正直無視してやりたいが、あいつの隣にいる子供が気になる。

連絡は受けてはいたが、直接会うのはまだだった。

 

「すまん、少し席を外す」

 

冷にそれだけ告げて席を離れる。

すると向こうも察したのか席を離れて話せる場所へと移動した。

 

「直接会うのは少し久しぶりだなエンデヴァー!」

 

「・・・・ああ、それでお前の隣にいる子が」

 

「そう!志村転弧君だ!!」

 

「は、初めまして!ほ、本物のエンデヴァーだぁ!!」

 

その声に応じてオールマイトの横に立つ少年に目を向ける。

志村転弧、俺の情報でオールマイトが保護した子供。

 

・・・・予想とはずいぶん印象が違うな。

 

こちらを見て目を輝かせてる子供からは俺の知るヴィランのイメージと全く重ならない。

 

俺が知るのは今の彼ではなく、死柄木弔として巨悪となった姿。

 

保護にはずいぶんと手こずっていたようだが、こうして体育祭に共に来れるまでなったか。

それに何より。

 

「・・・・力の方はどうなってる?」

 

「順調だ、彼の中にいる先代の方々が協力してくれている。まぁ、特にお師匠はその、すごい過保護のようで」

 

「オールマイト、おばあちゃんがしばくぞ!って言ってるよ」

 

「も、申し訳ありません!!」

 

少年の言葉にすごい勢いで頭を下げるオールマイト、コントでもしてるのか。

俺の中では少年は死柄木 弔としての意識が強い。

 

だが、今目の前にいる子供からはとてもあれのような歪んだ姿は見受けられない。

……オールフォーワンめ、この子をどこまで歪めた。

 

拳を握り締めながら姿を見せぬあの男を睨みつける。

 

・・・・しかし、まさかこの子に力を渡すとはな。

初めに話した予定では未来の通り、デクに力を託すはずだった。

 

しかしふたを開けてみたら力はこの子へ渡った。

理由は聞いた、納得もひとまずしたが、やはり複雑な気持ちになる。

 

俺はあのデクこそがオールマイトの力を受け継ぐにふさわしい、いや彼しかいないと考えている。

だがそれは未来を知る俺だからの気持ちであり、情報だけしか知らないオールマイトでは気持ちは異なる。

 

・・・・この変化がどのような結果になるかわからない、デクの方のサポートもしなければならないだろう。

下手に今の緑谷一家に介入すればオールフォーワンに狙われる危険があるということで介入はしないという話になってはいる。

 

だが焦凍が高校に入学するまでには俺の出来る限りのサポートをするのが道理か。

彼の将来を変えてしまった責任をとらなければならない。

 

「むっ競技が始まったようだ」

 

歓声が大きくなり、体育祭が始まったことを告げる。

それによって会場の方へ視線を戻すと生徒たちが何かを目指して走り出していた。

 

「・・・・最初は障害物競争か」

 

焦凍の時と同じ競技、燈矢を探せばすぐに見つかり最前線を走っていた。

先頭を走れば当然もっとも早く障害物にぶつかる。

 

見れば燈矢の道を塞ぐように超大型のロボットが現れた。

しかしそんなロボットでは燈矢は止まらない。

 

『おおっと!?先頭の轟 燈矢君、一瞬であの超大型ロボットを切り刻んだぁぁぁぁ!!!』

 

赫灼熱拳 ヘルスパイダー。

高熱線を全ての指から放ち、焼き切る技。

 

俺よりも火力のある燈矢が使えばあの程度の強度はバターのように溶けるだろう。

 

他の障害物も吹き飛ばし、空を飛ぶことで躱し、そうやってどんどん進み、あっという間に一位で独走した。

 

「いや、すごいな彼。さすが君の息子だ」

 

歓声に嬉しそうに応える燈矢を見ながらオールマイトが感想を呟く。

横にいる志村転弧も楽しそうに目を輝かせていた。

 

「俺の息子だからではない、燈矢が努力した結果だ」

 

「・・・・ああ、そうだね。でも君のおかげも間違いなくあるんだ、もっと誇ったっていいんだよ」

 

「・・・・」

 

オールマイトの言葉に答えず燈矢に目を向ける。

楽しそうに笑う燈矢を。

 

「だからと言って・・・・罪が消えるわけではない」

 

 

 

◇

 

「燈矢兄ちゃん楽勝じゃん!!」

 

「うん、でも他の人の妨害するのは意地悪だよね。もう!嫌われちゃうでしょ!!」

 

「燈矢兄ちゃんはそんなに気にしないと思うけど」

 

「はぁ・・・・あの子ったらもう」

 

第一種目、第二種目で独走を続ける燈矢兄を見てみんながそれぞれの感想を呟く。

僕は何も言わずじっと燈矢兄や周りの人達を見ていた。

 

みんな、ここにいる人たちはヒーローを目指してるんだ。

ヒーローっていう夢をかなえるためにこんなに必死で頑張って。

 

「・・・・そんなにいいのかな、ヒーローって」

 

未だに僕の中で燻る思い。

カッコいいって思うけど、それと同時に僕からお父さんをとる存在でもあるんだ。

 

「・・・・そういえばお父さんはどこにいったんだろう?」

 

冬姉たちの方に顔を向けてもお父さんはいない。

周りを見ても見つからない、けっこう時間が経つのに。

 

・・・・探しにいこうかな。

 

 

席から離れて会場を歩く。

みんな、競技を見るのに夢中で僕には気が付いてないみたい。

 

すぐ戻るし、言わなくてもいいよね。みんな楽しそうに見てるのに邪魔したら悪いし。

 

階段を上がり、人の波を避けながら周りを見る。

お父さんは大きいからすぐに見つかるはず。

 

でも、結構探したけど見つからない。

 

一度戻った方がいいかな。

 

「・・・・あれ?どこから来たんだっけ?」

 

いっぱいある席の方に行くけど、いっぱいありすぎてどこにお母さん達がいるのかわからなかった。

すると、僕の身体から不安が沸き上がった。

 

「・・・・どうしよう、どうしよう」

 

泣きそうになりながら周りを見る。

そうしてると、僕の視界に一人の女の子が映った。

 

「・・・・泣いてる」

 

座り込んで、泣いてる女の子がいた。

その子を見た瞬間、僕は自分の泣きそうだったことも忘れて駆け寄る。

 

「大丈夫?どこかいたいの?」

 

「――――ふぇ?」

 

僕が声をかけると泣いていた子は驚いたようにこっちを見る。

そして話を聞くと、お母さんとお父さんとはぐれてしまったようだ。

 

あ、僕もだ。

 

彼女の言葉でようやく自分の状況を把握する。

大丈夫?って僕も大丈夫じゃなかったよ。

 

「・・・・あの」

 

「あ、大丈夫!任せて!お母さんとお父さんは僕が見つけるから!!」

 

不安そうな女の子を見て無理やり笑って手を握る。

 

夏兄は僕が泣きそうな時はよく笑顔で励ましてくれた。

冬姉は僕が不安な時はずっと手を握ってくれた。

 

2人がしてくれたことを僕がこの子にしないと。

 

でも、どうしよう。

周りを見回すけど、当然この子の両親は見つからない。ていうか顔も知らないや。

 

うぅ、周りの人に勇気を出して聞こうかな。

上を向けば大きな大人たちがいて、みんな楽しそうに声を出しながら燈矢兄たちを応援していた。

 

・・・・お母さん達がいたら。

 

「・・・・あ」

 

そう思いスタジアムの方に目を向ければちょうど燈矢兄が走り回っているのが見えた。

そうだ、お母さん達は見つけられないけど、燈矢兄ならすぐに見つけられるんだ。

 

「こっちに来て!」

 

「えっは、はい!」

 

彼女の手を引いて階段を降りる。

そして燈矢兄に近寄れるところまで行って大声で叫んだ。

 

「燈矢兄ぃぃぃぃぃ!!!!」

 

周りの歓声が大きくて僕の声がかき消される。

でも、それでもあきらめずに叫んでいると。

 

「んん?焦凍?なにしてるんだよ」

 

気が付いた燈矢兄が足から炎を出して空を飛び、僕の目の前までやってきてくれる。

そして僕と手をつないでいる女の子に目を向けた。

 

「どうしたんだ?お兄ちゃん借り物競争で急いでるんだけど」

 

「この子、迷子みたいで困ってるの!この子のお母さんとお父さんを見つけられない?」

 

「んー」

 

僕のお願いに燈矢兄は考えるように目を閉じ、そして何か思いついたのか僕と女の子を見る。

そして、僕たちの前に降りた燈矢兄は僕らを捕まえて両脇に抱え込んだ。

 

「え?あの、これは」

 

「燈矢兄?」

 

「こんな大人数の中から両親を見つけるのは面倒くさい。だから逆に見つけてもらう」

 

そう言って燈矢兄は僕らを抱えたまま空を飛び、スタジアムに戻る。

そうしていると、スタジアムにある大きなテレビに僕らの姿が映りこんだ。

 

そっか、あのテレビは競技に参加してる人達を映してるんだ。

それで燈矢兄は目立つからよくテレビに映ってた。

 

「よし、これで見つけるだろ」

 

テレビを見た燈矢兄がそう言う。

確かにこれならみんなスタジアムを見てるしこの子の両親も見てくれるだろう。

ついでに僕もお母さん達に見つかる。

 

「あーていうか借り物どうしよっかな。まぁこれは順位関係ないし別にいいか」

 

「あ、あの!何を探しているんですか?」

 

「ん?人形だけど」

 

隣にいる女の子の質問に首を傾げながら答える燈矢兄。

僕も同じように首を傾げていると、いきなり女の子の腕からウサギの人形が生えてきた。

 

「ん?は!?腕から人形が」

 

「私の個性なんです。これでよかったでしょうか?」

 

「え、ああ、大丈夫。ありがとな!とりあえずここで待ってろ、すぐ両親がここに来ると思うから」

 

「はい、ありがとうございます」

 

女の子から人形をもらった燈矢兄は炎を出しながらゴールへと向かっていく。

そして僕と女の子の二人だけになった。

 

「あの、あなたにもお礼を、ありがとうございました」

 

「いや、僕なにもしてないよ」

 

頭を下げてくる女の子に僕は頭をかきながら返事をする。

この子、すごく礼儀正しい。僕より年上なんだろうな。

 

「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

「轟焦凍、君は?」

 

「私は八百万 百と申します、轟さん、本当にありがとうございました」

 

「あはは、うん、どういたしまして」

 

彼女の笑顔に僕も笑う。

そうしていると、ここの先生だと言う人たちが僕たちの前に来た。

話を聞くと、僕らの親のところに連れていってくれるらしい。

 

僕らは手を振りあって別れる。

そして先生に連れられて、お母さん達のところに戻ることが出来た。

 

「焦凍!お前、いつの間にいなくなってたんだよ!?」

 

「ほんとだよ!すっごく心配したんだからね!!」

 

戻った僕を冬姉と夏兄が心配してくれる、そして怒られた。

2人に怒られてしょんぼりしていると、お母さんが僕を抱きしめてくれる。

 

「事情は先生から聞いたよ。勝手にいなくなったのはダメだけど、迷子の女の子を助けたんだね」

 

「・・・・うん、泣いてたから」

 

僕も泣きそうだったのは隠して頷く。

すると、隠してるのがバレたのかお母さんはクスリと僕に向かって笑いかける。

 

「大きなテレビで見てたよ。泣いてるあの子を笑顔にして、ヒーローみたいでカッコよかったよ」

 

「・・・・ヒーロー?」

 

「そう泣いてる子を助けるのがヒーローなのよ。あそこにいるみんな、そのために頑張ってるの」

 

お母さんの言葉にスタジアムで動き回っている人達を見る。

みんなヒーローになるために頑張ってるのはわかってはいたけど、理解はできてなかった。

 

そっか、あの子、百ちゃんのように泣いてる子を助けるためにヒーローはいるんだ。

ヒーローっていう存在を、この時心から理解できた。

 

泣いてる子、ううん、泣いてる人を助けられるのがヒーローなのだとしたら。

 

「お母さん、僕ヒーローになる」

 

「え?」

 

「それでね、お父さんを――――」

 

 

 

◇

 

 

『第三種目は一対一のガチンコバトルでぇぇぇぇぇす!!』

 

アナウンスの声に観客は再び盛り上がりを見せる。

対戦表が発表され、見れば燈矢の名前が第一試合に表示されていた。

 

相手は・・・・バーニンじゃないか。

 

見覚えのある名前に驚きスタジアムに目を向ければ、予想通り彼女の姿があった。

やはり燈矢と同じ年だったのか。

 

オールマイト達と別れ、席に戻った俺は家族と共に燈矢とバーニンの戦いを見守る。

どちらも炎個性、熱耐性がある以上、決着をつけるには肉弾戦か場外まで押し出すのが得策。

 

・・・・あるいは。

 

「燈矢!!あんたとは今のとこ勝負は五分だ!今日で決着といこうじゃねぇか!」

 

「バカいえ、ペーパーテストや救助ポイントはてめぇの方が上かもしれねぇけど、実力は俺の方が上だろ」

 

「じゃあ今日その実力を超えるだけだぁ!!」

 

お互いに叫び合いながら炎をぶつけ合う。

火力は燈矢の方が上だが、操作技術はバーニンの方が少し上か。

 

燈矢の大規模攻撃をなんとかいなしながら隙間で攻撃を挟み込んでいる。

 

「相変わらずのバ火力だな!ちょっとは火加減しろ!!」

 

「うるせぇ!そっちこそ、ちまちま攻撃してきやがってうぜぇな!!」

 

一進一退の攻防が続く中、燈矢が不意に攻撃をやめる。

 

「やっぱてめぇとの勝負は長引くな。でももう終わりにするぞ」

 

「はぁ?」

 

「こういうことだよ!!」

 

そう言って、燈矢が腕を振るう。

 

その瞬間、燈矢が出したのは炎ではなく――――氷だった。

 

「なっ!!?」

 

予想外の攻撃、それも氷の大規模攻撃にバーニンはなすすべもなく飲み込まれる。

そしてそのまま場外に飲み込まれ、燈矢の勝利となった。

 

『こ、これは燈矢選手!エンデヴァー譲りの炎だけでなく、なんと氷まで使用したぁぁぁ!?これはお母様の方の個性でしょうか!?』

 

アナウンスの声が会場に響き、見ていた者達が驚く。

そんな中、俺と冷は互いに目を合わせていた。

 

「燈矢、使ったね」

 

「ああ」

 

冷の言葉に頷く。

あれは冷の個性、ではない。

 

 

 

『熱音響冷却』という現象がある。

 

 

 

熱が音に変わる時、そして音が熱になる際に冷(・)却(・)作(・)用(・)が(・)発(・)生(・)す(・)る(・)。

 

その作用を利用し、燈矢は自身の炎から氷を生み出すことが出来るようになった。

 

以前に協力してもらった海外の技術者の力を借り、この作用を最大限活用できるサポートアイテムを作ってもらったんだ。

 

この氷の威力は生み出す炎の熱が高ければ高い程増す。

つまり燈矢の火力の高さがそのまま氷の威力となる。

 

通常こんなことをすれば相手だけでなく、自身もその冷却に影響され身体が凍り動けなくなる。

だが、燈矢の身体はそうじゃない。

 

もともと燈矢の身体は炎の耐性よりも氷の耐性の方が強いのだから。

 

これによって燈矢は問題なく動くことが出来る。

 

俺と同じ熱が身体に溜まるデメリットを打ち消し、焦凍と同じ半冷半燃、いや威力だけならそれ以上のことが出来るようになった。

 

・・・・これは燈矢が自分で調べ、思いついたことだ。

 

自分の身体のことを知り、身体に宿るいびつな特性すら利用して自分の力に変えた。

 

・・・・本当に、過去の俺は何をやっていたんだろうな。

 

ここまで成長を遂げた燈矢を見て、俺は自身の罪というナイフを自身に突き付ける。

燈矢の可能性を見限り、俺は・・・・。

 

「あなた、あの子が手を振ってる」

 

「・・・・ああ、そうだな」

 

こちらに向けて満面の笑みで手を振る燈矢に手を振り返す。

燈矢はまだ成長する。

 

今はまだサポートアイテムありきの力だが、いずれそれも必要としなくなるかもしれない。

あの時、死に際に見た光景。

 

冷の個性を身に宿す燈矢の姿。

あれは死に際だからこそ覚醒した力だ、ゆえに今の燈矢では目覚めない可能性が高い。

 

このことを伝え、目覚めないと焦らせることになってもダメだと思い燈矢には伝えていないが、このまま成長していけばきっといずれ。

 

「・・・・お前なら本当になれるかもしれないな」

 

誰にも聞こえないように小さく呟く。

燃えカスとなった俺の醜い野望を。

 

その道を行きたいとお前が願うのなら、俺は。

 

 

 

 

◇

 

 

時は流れる。

 

体育祭も終え、轟燈矢は順調にヒーローへの道を進んでいる。

 

下の弟と姉もそれぞれが成長を遂げていく。

 

轟焦凍も自身の道を見つけ、その道を歩み始めた。

 

志村 転弧もまた、力を馴染ませ信念を胸に急速に力をつけていっている。

 

歳月は、人を大きく成長させていく。

 

「すすめ!すすめ!ばくごうヒーローたんけんたーい!!」

 

森の中を四人の子供たちが歩く。

 

先頭の少年は掌から火花を発生させながら楽しそうに歩く。

 

その一番後ろでは心配そうな表情の少年が後をついていっていた。

 

 

やがて川に差し掛かり、その上にかけられた丸太の上を子供たちが歩く。

 

すると、先頭の少年がた(・)ま(・)た(・)ま(・)足を滑らせ、川へと落下する。

 

「かっちゃんが川に落ちた!?大丈夫かよ」

 

「平気でしょ、かっちゃんだぜぇ」

 

「っ、おう!へーきへーき!」

 

川に落ちた少年に一瞬驚いた子供達だったが、すぐに彼なら大丈夫だろうと笑う。

それに応えるようにかっちゃんと呼ばれた少年も笑う。

 

そうして笑う少年の前に。

 

 

 

 

 

 

「大丈夫?立てる?」

 

 

 

 

落ちた少年を見て川に入ってきた子供が心配そうな表情で声をかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年を助けるため、彼(・)に(・)向(・)け(・)て(・)自(・)身(・)の(・)手(・)を(・)伸(・)ば(・)し(・)な(・)が(・)ら(・)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇の中で魔王が嗤っていた。

 

 





特に関係ないけど、この作品のタグに『キャラ崩壊』ってあるんだよね。

いや特に深い意味はないけど。

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