エンデヴァー逆行物   作:デッテユー

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九話

「「・・・・」」

 

事の顛末を聞いた俺は何も言えずに項垂れることしか出来なかった。

説明にやってきたオールマイトも同じように拳を握り締めたまま何も言わなくなった。

 

油断していたつもりなどなかった。

 

いや、そんなものは言い訳にもならん。すでに事は起こってしまったのだから。

 

「・・・・私のせいだ。私が緑谷少年のことを見ていれば、こんなことには」

 

血を吐くようにそう言うオールマイトに俺は何も言えない。

いや、言いたいことはある。

 

こいつが責任を感じることはない。

 

お前のせいではない、俺のせいだ。

 

俺が知識を彼らに伝え、未来を変えたことでこうなったのだから。

 

知識によって過去に救えなかった命が救えた、不幸になった人が幸せになった。

 

だが、同じように幸せになるはずだった人が不幸に。

 

英雄になるはずだった少年が未来を変えた犠牲者となった。

 

誰のせいか?決まっている、俺以外にだれがいる。

 

・・・・だが、そんなことをこいつに言ったところで納得などしないだろう。

 

俺は一度目を閉じて考えをリセットする。

罪悪感で苦しむのは当然だ、だがそこで終わるな。

 

犯した過ちは償え。

 

「オールマイト、緑谷は今どうしている」

 

「・・・・転弧少年、グラントリノと一緒にいる。爆豪少年はリカバリーガールに応援を頼んで治療をしてもらい、他の子供たちと一緒に家に帰した」

 

「・・・・そうか、では順に話していくぞ。まずは、なぜ緑谷が狙われたかだ」

 

いくつかのケースが考えられるが。

 

・・・・最悪のケースは、俺の持つ未来の知識、又はそれとは別手段での未来の知識を得たか。

 

それによってワンフォーオールの後継者であり、オールマイトの心を揺さぶる存在である緑谷に接触した。

未来で志村転弧を死柄木弔にしたように、緑谷をヴィランにするつもりだった。

 

だが、その俺の考えにオールマイトは首を横に振る。

 

「・・・・君の情報を得てから少しの間、緑谷少年の家族を監視していたんだ。それを見られていて興味を持たれたのだと思う。未来の知識を得たのなら、もっと取るべき行動があるはずだ」

 

「・・・・」

 

確かに俺と同じほどの未来の情報があれば奴が狙うカードはもっと多い。

だが、緑谷が狙われてから他の場所の様子も確認したがそんな様子はなかった。

 

「・・・・どちらにせよ、転弧少年が助けにいっていなければ緑谷少年は奴の手に堕ちていた。それによって爆豪少年たちも犠牲になって」

 

「・・・・緑谷には、『崩壊』の個性が宿っているというのは本当か」

 

後悔の言葉を続けるオールマイト。

俺はその流れを変えて話題を強引に終わらせる。

 

やつもそれを汲んで話に乗ってきた。

 

「ああ、間違いないよ。君の未来の話ではこの個性は転弧少年にオールフォーワンが与えたとされる力だったが」

 

「・・・・緑谷を死柄木弔にするつもりだったと考えるのが妥当か」

 

想像するだけで腸が煮えくり返る。

あの少年が俺にどれだけ力を与えてくれたか。

 

『轟君は許す準備をしているんじゃないかな』

 

『エンデヴァーは僕を強くしてくれた恩師だ!過去は消えない!だから頑張ってる今のエンデヴァーを僕は見てる!』

 

 

「・・・・」

 

「ひとまず緑谷少年とそのご家族の保護をしなければ、私が責任を持って保護を」

 

「いや、緑谷の保護は俺の家でする」

 

俺の言葉にオールマイトが固まる。

そんなやつを置いて俺は言葉を続けた。

 

「お前は志村転弧の保護と育成があるだろう。やつがもっともほしいのは彼であることは間違いないんだ、お前はそっちを優先しろ」

 

「・・・・だが」

 

「俺には優秀なサイドキック達がいる、どうなろうと業務に支障を出さん。それに『崩壊』の個性に関しては俺の方が詳しく知っている」

 

未来で死柄木弔が扱っていた力、その脅威は身をもって体感している。

 

ゆえにその個性を人のために使う場合のメリットだって承知している。

 

「力のコントロール、操作、その部分では俺の方が上だ。貴様のようなバカみたいな増強型よりも操作型の俺の方が指南に向いている」

 

「・・・・バカみたいな増強型って」

 

俺の言葉でしょんぼりと肩を落とすオールマイトにため息を吐く。

 

それに、こいつのような感覚で力を使いこなせてしまうタイプは教えるのは向いていない。

志村転弧もこいつ、というより彼の中にいる過去の継承者達が修行をつけていると聞いている。

 

「・・・・緑谷の住んでいるところは俺の家から距離があるが、力の暴走の危険がある間はうちに泊まり込みでいてもらうしかないな」

 

「そうだね。それとエンデヴァー、転弧少年が気になることを言っていた」

 

「・・・・なんだ」

 

「オールフォーワンが今は君じゃない、まずはあっちからだと。そしてほしかった個性を手に入れたとも言っていたらしい」

 

「・・・・」

 

オールフォーワンが口にした言葉。

志村転弧の前にやつが狙っている人物がいる、そして新たに手に入れたという個性。

 

・・・・不穏だ、誰を狙っている。

 

「現状、転弧少年に緑谷少年、私に繋がる人物が狙われている。そうなると次に狙われるのも私絡みか」

 

「・・・・可能性があるとすればサーナイトアイだろう」

 

現在こいつのサイドキックをしている男。

個性は『予知』、その力は未来を見る力。

 

俺の未来知識とはまた違うが、未来を見ることには変わりない。

 

・・・・もしやつが俺たちが未来の情報を握っているとわかっている場合、それはサーナイトアイの個性によるものだと判断するだろう。

 

ならば、次にやつが狙うのはサーナイトアイの個性、そして未来の情報、そう考えるのは妥当だ。

 

「もちろんそれは注意しているさ、彼が私のところに訪ねて来た時から十分ね。だが、これからはより警戒を上げておくよ」

 

「・・・・そうだな」

 

これが一番納得いくが、他の者が狙われる可能性も十分にある。

 

・・・・俺のところには今のところ奴の接触はない。

ないが、それでも狙われる可能性が高いのは俺の家族だ。

 

緑谷のように油断から冷たちが襲われたなんてことになれば・・・・。

 

「互いに注意していくぞ。これ以上やつの思い通りにはさせん」

 

「ああ、もちろんだ」

 

頷きながら俺に手を差し出してくる。

俺もそれに無言で手を差し出す。

 

「ハッハッハ!君とこうして握手する仲になれて嬉しいよ!あ、ちょ、なんか力つよ、ていうか熱!?手がすごく熱い!!」

 

「・・・・」

 

 

 

僕に個性が目覚めてから数日が経った。

調べてつけられた個性の名前は『崩壊』。

 

僕の五指に触れた物を粉々にしてしまう力。

 

この力に目覚めた時に川を崩壊させてしまい、そしてかっちゃんに傷をつけてしまった。

幸いかっちゃんの怪我はオールマイトの知り合いの人に治してもらえたけど、事実は消えない。

 

かっちゃんのご両親にも謝って、もちろんかっちゃん本人にも謝った。

・・・・かっちゃんには爆破された後にすごく吠えられたけど。

 

でも、もう二度とこの個性で誰かを傷つけないために、誰かを守るための力にするために僕は個性の訓練を始めた。

 

始めたんだけど。

 

「どうした?力を使ってみろ」

 

「ひゃい!!」

 

彼の声を聞いて思わず言葉とも言えない上ずった声が僕の口から飛び出る。

僕の目の前には炎を纏った大男、No.2ヒーロー、エンデヴァーがいた。

 

あばばばばばば、オールマイトと転弧さんにつれられて来た場所がまさかのエンデヴァーの家だなんて。

2人は用事があるといってどっか行っちゃったし!ていうか個性をコントロールできるまでここに泊まり込みって!!

 

「お父さんは顔怖いんだからもっと優しくしないと!!緑谷くんが怖がっちゃってるじゃない!」

 

「むっ」

 

近くにいたお姉さんがエンデヴァーにそう注意し、それを聞いた彼は黙る。

うぅ、僕のせいでエンデヴァーが怒られちゃった。

 

申し訳なくなり視線を落とす。

すると、お姉さんの足にしがみついて僕を見る存在に気が付いた。

 

「・・・・えっと」

 

「むー」

 

僕を見てなぜか頬を膨らませる僕と同じくらいの歳の男の子。

それを見て慌てた様子でお姉さんが説明してくれる。

 

「あ、ごめんね緑谷くん!この子は私の弟の焦凍っていうの!ちょっと人見知りで、あとお父さんとの訓練を取られてむくれちゃってて」

 

 

「あ、えっと・・・その」

 

お姉さんの説明に僕はなんと言えばいいかわからずひたすら慌て続ける。

うぅ、僕もけっこう人見知りなんだけど。

 

「あとちなみになんだけど・・・・あっちの子は緑谷くんの知り合いだったりする?」

 

慌てる僕にお姉さんは後ろを指さしながらそう口にする。

それを聞いて後ろを振り返る。

 

「っ!?ちっ!!」

 

室内から外に繋がる扉からよく知ってる顔が見えた。

 

ていうか、かっちゃんだった。

 

「かっちゃん!?な、なんでこんなところに!?」

 

「あ!?別に俺がどこにいようとデクに関係ねぇだろ!!」

 

「いやここ私達の家なんだけど」

 

かっちゃんの言葉にお姉さんがそうツッコミを入れる。

 

「・・・・爆豪か。君も一緒に訓練をするか?」

 

「・・・・」

 

僕らのやり取りをじっと見ていたエンデヴァーがかっちゃんにそう声をかける。

それを聞いたかっちゃんは黙った後にそのまま無言で僕らの元へやってきた。

 

僕らが揃ったところでエンデヴァーが再び口を開く。

 

「いいか、子供であるお前たちが最初に学ぶことは個性のコントロールだ」

 

「「「・・・・」」」

 

エンデヴァーの言葉に僕は無言で返す。

僕とかっちゃん、それに焦凍くんもお姉さんに無理やり僕らの隣に並ばされていた。

 

「爆破、崩壊、半冷半燃、三人の個性はどれもコントロールできなければ人を簡単に傷つけてしまうものだ。まずはそれを自覚しろ」

 

「……なんで俺の個性を知ってるんだよ」

 

かっちゃんは小さくそう口にし、僕と焦凍くんは首を縦に振る。

それを見ながらエンデヴァーは言葉を続ける。

 

「いいか、個性とは自身の身体に備わった身体機能の一部だ。それを理解すればまず暴走は防げる」

 

「えっと」

 

言葉が難しくてうまく理解できない。

僕の反応を見たエンデヴァーは右腕を上げる。

 

「たとえば右腕を上げる。これは自分が上げたいと思ったから腕が上がった。自分が上げる気がないのに上がることはないだろう?」

 

「は、はい!」

 

「個性も腕も同じなんだ。自分が使いたいと思わなければ発動しない。だから必要以上に怖がらなくていい」

 

「で、でもあの時は使いたいって思ってなくて」

 

僕はあの時のことを思い出す。

この前に起きた出来事で僕はこの個性を自覚していなくて、当然使いたいなんて思っていなかった。

 

「それも説明できる」

 

そう言ってエンデヴァーは身体にある条件反射というものを説明してくれた。

条件が重なると反射的に動いてしまうらしい、実際に彼が僕の足を叩くと意思とは別に足が跳ね上がった。

 

個性にもそれがあり、エンデヴァーはその防ぎ方も教えてくれた。

 

その後は力のコントロールで実際に個性を発動させた。

 

「・・・・えい!」

 

目の前にある焦凍くんが出してくれた氷に指で触れ、個性を使いたいと指に意識を集中する。

すると思ってからほどなくして氷がボロボロになりあっと言う間に崩れてしまった。

 

「おー」

 

「・・・・」

 

砕かれた氷を焦凍くんは声を出しながら見て、かっちゃんは無言で見る。

エンデヴァーも見ていて、砕かれた氷を持ちながら口を開いた。

 

「ふむ、個性の発動は出来たか。この調子で慣れていくぞ」

 

「は、はい!」

 

再び個性を発動させて慣らしていき、かっちゃんも個性の使い方を教わっていた。

その後少し休憩をしてから訓練が再開される。

 

「さっさと次の訓練始めろや!!」

 

「よし」

 

かっちゃんがエンデヴァーに向けて吠える。

僕はそれを口を開けたまま震える。かっちゃん、相手はあのエンデヴァーなんだよ!?

 

でもエンデヴァーは気を悪くした様子もなく頷いて答える。

 

「では次は」

 

「「・・・・」」

 

僕とかっちゃんは無言でエンデヴァーの言葉を待つ。

 

真剣な表情の彼に対して僕は小さく汗を流す。

 

そうして待つ中、彼はゆっくりと口を開き。

 

「うちの庭の雑草抜きをしてもらう」

 

「なんでだーーー!!!」

 

かっちゃんの大声が室内を満たす。

この時だけは僕も同意してしまった。

 

 

「・・・・崩壊」

 

手に握った雑草に力を当てる。

すると雑草は一瞬で枯れて消えていった。

 

「ふむ、今回は根は残ったままか。いいぞ、崩壊の調整の第一歩だ」

 

「な、なるほど」

 

雑草取り、雑用だと思ったけどちゃんとした訓練だった。

崩壊の力を雑草で調節する。

 

雑草を全て崩壊させるのではなく根や葉の一部を残す。

こういった調整が出来れば崩壊で出来ることの幅が一気に広がるらしい。

 

「とりあえず、雑草にどんどん崩壊を試していけ。ただ俺たちが植えている花もあるからしっかり選んでだ、崩壊の対象の選別になる」

 

「は、はい!」

 

「なんで俺がこんなことしなきゃいけないんだー!!」

 

「爆豪、お前は爆破だけで雑草を抜いていけ。地面をえぐり過ぎるなよ」

 

「ただの雑用だろが!!」

 

そう叫びながら爆破で雑草を抜いていく。

エンデヴァーが言うのはまだまだ爆破の力が足りないらしく、それを上げ、かつコントロールできるためのものらしい。

 

「「「あひぃ」」」

 

僕らが雑草を抜く中、エンデヴァーの家族の人たち、お姉さんとお兄さん、それにお母さんが溶けたように家の縁側で伸びていた。

 

「ごめんねー私達暑いのに弱くて」

 

「燈矢兄ちゃんと焦凍はお父さんの個性もらってるから暑いのに強いんだよなぁ。こういう時はほんとうらやましいわ」

 

申し訳なさそうに謝るエンデヴァーの家族の人たちに僕は苦笑いを浮かべる。

そうしていると、僕の近くに焦凍くんがやってきた。

 

「大丈夫?暑い?」

 

「う、うん、少し暑い」

 

麦わら帽子やタオルを借りているけど、されでも暑い。

僕がそう言うと、焦凍くんが僕に触れる。

 

すると暑かった身体に心地よい冷たさがやってきた。

どうやら個性を使って僕の身体を冷やしてくれているみたい。

 

 

「ふぁぁ、すごく気持ちいい」

 

「よかった、かっちゃんもしてあげるね」

 

「いらねーよ!ていうかかっちゃん言うな!!」

 

焦凍くんの言葉にかっちゃんがまた吠える。

してもらえばいいのに。

 

そう思っていると、エンデヴァーの奥さんが僕たちにジュースを持ってきてくれる。

ジュースを受け取って焦凍くんと談笑し、かっちゃんはイライラしながらもジュースを飲んでいた。

 

「焦凍くんも、ヒーローになりたいの?」

 

「そうだよ、出久くんも?」

 

「うん、一緒だ」

 

そうしてヒーローについて話をして、好きなヒーローの話題になると焦凍くんはその名をつげる。

 

「もちろんお父さんだよ」

 

「・・・・」

 

恥ずかしさは微塵もなくお父さんだと告げた焦凍くんにエンデヴァーは背中を向けて雑草を抜いている。

そんな二人の様子を見て僕は笑い、かっちゃんはファザコンかっと悪態をつく。

 

七月の太陽が照らす陽気と、生温かい風が僕らの間を吹き抜けていった。

 

 

 

緑谷を預かってからしばらく時が経ち、七月から八月に時期は移った。

一か月の訓練で彼は個性にだいぶ慣れ、力の扱いに危うさはなくなった。

 

これで暴走はないと判断した俺は彼を家へと帰すことに決め、少し前に彼は俺たちの家から実家へと帰っていった。

 

一か月一緒にいたからか家族たちは寂しそうにしており、焦凍も残念そうだった。

だがまぁ、泊まりはなくなっただけで、ここにはこれからも来てもらうのだから問題ないだろう。

 

爆豪もこの一か月かかさずここに通い続け、三人は随分と仲良くなったように見えた。

 

このまま彼らが雄英高校に入学するまでの間は面倒を見ていくつもりだ。

 

燈矢、冬美、夏雄も全員大きくなりすでにそれぞれで自立を覚えている。

だから俺は三人に集中できる。

 

・・・・そう思っていたが、どうやらそうはいかなくなりそうだ。

 

「・・・・」

 

少し前に俺は冷から告げられた言葉を思い出して天を仰ぐ。

何をしているんだろうな、俺は。

 

天から視線を前に戻し、離れた先で食事をしながら談笑する家族に目を向ける。

 

暑い夏の夜、晩御飯に出て来た蕎麦をすさまじい勢いですする燈矢と焦凍。

それを見て爆笑する夏雄と呆れながら二人を見る冬美。

 

微笑みながら汁の補充をしている冷。

 

ずっと思い描いていた光景があった。

 

俺は・・・・この景色が見たくてここまで来た。

 

これで、罪は償えているのか。

 

何度も何度も自問自答を続けていた内容。

ずっと答えは出なかった。

 

しかし・・・・この景色を見て思う。

 

今この瞬間の彼らの笑顔は決して間違いではないと。

 

罪は消えずとも、償いのほんのひとかけら程は償えたと、そう思ってもいいだろうか。

 

「・・・・」

 

家族の談笑、この景色に俺はいない。

それでいい、こうして見れるだけで俺は満足している。

 

だが、家族たちは俺の手を握って引っ張ってくれる。

 

「もうお父さんこんなところで何してるの!早くしないとケーキなくなっちゃうよ!」

 

「いや俺はいいからみんなで食べてくれ。俺の分も食べたいものに分けてくれた後でいい」

 

「今日の主役が何言ってるの!?お父さんがいないと意味ないから」

 

俺のところにやってきた冬美が俺の手を取り引っ張る。

そのまま彼らのところへ連れられる。

 

俺を視界に映した全員が一斉に口を開く。

 

「「「「お父さん、誕生日おめでとう!!」」」」

 

「・・・・ありがとう」

 

笑顔で告げられた言葉に俺は小さな声で応えることがやっとだった。

食事を終え、テーブルの上に置かれたホールケーキを冷が全員分に切り分けてくれる。

 

「お父さんいつもありがとう!これ私から!」

 

「あ、俺も!いつもありがと!お父さんのおかげで期末テスト楽勝だった!」

 

冬美と夏雄は礼を告げながら何かが入った袋を渡してくる。

開けてみれば、ガーデニンググッズたちだった。

 

「悩んだけど、これなら普段使いで使えるかなって」

 

「ありがとう、使わせてもらう」

 

「はいはい!次俺ね!」

 

2人からのプレゼントを大切にしまった後に燈矢がやってくる。

満面の笑みでやってきた燈矢は俺にプレゼントを渡してくる。

 

「いつもありがと!ほんとはNo.1ヒーローになることをプレゼントにしたいけど、今は無理だからこれで!」

 

「サポートアイテムか、燈矢がデザインしたのか?」

 

「うん!サポート科の友達に頼んで一緒に作ってもらった」

 

「・・・・ありがとう、仕事で使わせてもらおう」

 

「へへ!」

 

俺の言葉に燈矢は嬉しそうに笑う。

冬美たちはプライベート、燈矢は仕事用で分けてくれていたようだ。

 

「・・・・お父さん」

 

「・・・・焦凍、なんだ?」

 

燈矢の後からもじもじとしながら焦凍がやってくる。

そして、顔を少し赤くしながら俺に何かを渡してきた。

 

「・・・・これは、氷の花か」

 

「・・・・うん、お母さんに教えてもらったの」

 

恥ずかしそうにしながらそう告げる焦凍に俺は頭を撫でながら答える。

 

「・・・・ありがとう」

 

「っうん!!」

 

俺の言葉に焦凍は満面の笑みで頷く。

そんな息子を見て、そして他の家族にも目を向ける。

 

みんなが俺を見て笑顔を浮かべていた。

 

その瞬間、俺の中で二つの感情が生まれる。

 

喜び、そして罪悪感。

 

家族からの感謝の気持ちに喜ぶ心と、そんなものを受け取る資格など俺にはないと罵る心。

その二つが混ざり合い、俺の表情を硬くさせる。

 

だが、そんな表情を家族に見せるわけにもいかずいつもの表情で取り繕う。

 

「・・・・」

 

そんな俺を、焦凍がじっと見ていた。

 

「あー次ケーキ食えるのは冬かぁ」

 

「夏雄とお父さんが夏で私達は冬で固まってるからね」

 

ケーキを食べ終えた二人が食い足りないと言いたげにそんなことを言う。

しかし、すぐに冬美は笑顔で話題を変える。

 

「ふふふ!私の誕生日は夏雄に何買ってもらおっかなぁ」

 

「げっ、少しは加減しろよ」

 

「えーどうしよっかなぁ。焦凍は誕生日に何がほしい?」

 

呆れる夏雄を見ながら冬美が焦凍に話題を振る。

しかし焦凍は首を傾げて悩むだけで答えは出せなかった。

 

そんな焦凍を微笑みながら冷が抱きしめる。

 

「ふふ、じゃあ少し早いけどお母さんからプレゼントあげちゃう」

 

「え!?なになに!?」

 

「えー!?焦凍だけかよ母さん!」

 

騒ぐ二人に冷は微笑むのを変えず、そして俺の方へと視線を送った。

それを受け、俺は何ともいえず、無言でうなずく。

 

今から冷が言おうとしていることはわかる、だがしかし。

 

・・・・どうしてこうなった。

 

「あのね、もうすぐ焦凍は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄さんになるのよ」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・お兄ちゃん?」

 

「「「ぶほっっ!!?」」」

 

焦凍は首を傾げるだけだったが、冬美と夏雄、そしてケーキに集中していた燈矢も一斉に吹き出す。

その様子を見ながら俺は再び天を仰ぐ。

 

・・・・ほんと、どうしてこうなったんだろうな。

 

いや、こうなった理由はわかる、わかるが、だが・・・・俺に何が出来たというんだ。

 

「え、は!?お母さんマジ!?」

 

「えー!!?男!?女!?」

 

ケーキを吹き出しながら燈矢が冷に迫り、冬美も興味津々に確認する。

夏雄は首を傾げ続ける焦凍に状況を説明していた。

 

「いやーさすがに焦凍で最後だと思ってたわ俺」

 

「・・・・俺はありえるって思ってた」

 

「女の子がいいなー。私、妹がほしい」

 

驚きも一瞬、すぐに嬉しそうに騒ぎ始める彼らに思わず力が抜ける。

もはや俺の誕生日どころではなく、新たな家族の話題が中心になり騒がしいまま俺の誕生日は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誕生日があった次の日。

 

俺の元に一枚の報告書が届いた。

 

俺たちが管轄する街で起きた()()()()

 

それを調査してきたサイドキック達の報告書。

 

俺たちが家族で食事をしていた頃の出来事。

街の一角にある路地裏で三人が何者かに襲われたという。

 

その日の夜は見つからず、翌朝近くを通った者が三人の焼死体を発見したという。

完全に焼け焦げてしまっていた遺体では身元の特定は出来なかった。

 

しかし、たまたま設置されていた監視カメラにその時の様子と犯人の姿が少しだけだが映っていたという。

 

監視カメラの情報から三人の身元を調べれば小物のヴィラン達だとわかった。

 

彼らと犯人に何かしらのいざこざがあり、襲い掛かったが犯人が出した()()()()()()瞬く間に焼かれていたという。

 

「――――っ」

 

報告書を読み進めるにつれて心拍数が上がっていった。

 

心臓の音がどんどん大きくなっていき、ついには耳元で鳴っているかのような錯覚さえ覚えた。

 

犯人は犯行に及んだ後、どこかへ姿を消してしまった。

 

現在もサイドキック達が探しているが未だに見つかっていない。

 

報告書には監視カメラから見たその犯人の写真が載っていた。

 

「は、ぁ、うっ、っっ」

 

その写真に視線を落とし、喉が空気をうまく取り込めず、口からは言葉のなりそこないが漏れて消える。

 

犯人は男だった。

 

真っ白の髪。

 

身体から漏れる蒼炎。

 

焼け爛れてしまった肌。

 

その全てに見覚えがあった。

 

「・・・・っ、お前も、来ていたのかっ」

 

頭が熱い、そのせいでめまいが起こり、思考も真っ白になっていった。

しかし、熱された頭とは裏腹に身体はゾッとするほど冷えていく。

 

報告書の最後を読む。

 

犯人は三人を焼いた後に路地裏の壁に炎で文字を書いていた。

その写真も報告書にあり、その壁には焼け焦げた文字でこう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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