香織は、鈴はその光景を呆然と眺め、はっと我に返る。いや、それは果たして我に返ったと言えるのか。
「あ、や………いやあああああ!?南雲君!?清水君!」
「ハジメン!清水‼︎」
白崎を光輝、鈴を龍太郎が追いかけようとする2人を行かせまいとしていた
「離して!南雲君が、清水君も、助けに行かなきゃ!」
「離してよ!離せ!ハジメンと清水はエリりんと親友にさせてくれたんだ‼︎」
「香織!君まで死ぬ気か!南雲と清水はもう無理だ!落ち着くんだ! このままじゃ、体が壊れてしまう!」
それは、光輝なりに精一杯、香織を気遣った言葉。しかし、今この場で錯乱する香織には"言うべきでない言葉"だった。
「無理って何!?南雲君と清水君は死んでない!行かないと、きっと助けを求めてる!」
「香織に鈴!落ち着いて‼︎ハジメなら大丈夫だから」
「本当?」
「本当なの?えりりん!」
「僕なら分かる。あの2人は絶対に死なないからね」
恵里はシグナルプロトマッハからハジメの魔力を感じているので無事だと分かるのだ。
2人は落ち着きメルド達に謝罪した。
「みんな脱出するぞ‼︎」
クラスメイト達はオルクス大迷宮を脱出して無事に地上へ出た。その後故意に狙った犯人である檜山大介だが、檜山は脱出直後土下座で謝罪するに徹した。狙いは光輝の目の前での土下座すれば自分を許しクラスメイトを執り成してくれると予想していたのだ。光輝は檜山を許すという意味不明なことを言い出した…が
「犯人を庇う君は勇者に向いてないよ」
「どういう事?えりりん」
「槍山は完全に悪意があって僕の大切な幼馴染と親友を落としたんだからねぇ」
絶対零度の目で恵里は槍山を睨んでいた
「何言ってるんだえ…「気安く呼び捨てすんな気持ち悪い」っ⁉︎」
天之河は恵里を呼び捨てにしようとしたが思いっきり恵里に拒絶された
「僕の天職は除霊師…メルドさんなら分かりますよね」
「霊を除霊できる優秀な天職だな」
「オルクス大迷宮内で亡くなってしまった人を呼び出します。と言っても1人が限界ですけど」
「では、呼び出してくれ」
「分かりました。オルクス大迷宮で亡くなった幽霊さん来て下さい」
恵里は1人の霊を呼び出した。呼び出したのは初老の魔法使いである
『ワシを呼び出したのはお嬢さんかな?』
「うん、おじいちゃんに聞きたい事があるんだ」
『なにかな?ワシに出来る事なら聞くと良い』
「あの槍山って奴が私の幼馴染と親友に向けて魔法弾を放ったんだ。本人はただ制御が外れたと言っていて悪気はないと言ったけどおじいちゃんならどう思う?』
『ワシは魔法使いだからの…適正がない魔法は複雑な詠唱を唱えないといけない。ワシも見ていたがあれは適正がない魔法を制御した悪意ある攻撃じゃった』
「だってさ。これでも槍山を庇う気?」
「槍山は謝罪したんだ!許すべきだろ‼︎」
天之河は現実が分かってないようだ
『此奴はなんじゃ?』
「"一応"勇者だよ」
『そうは見えんのぉ』
初老の魔法使いは勇者(笑)の光輝に呆れていた。
「魔法使いさんありがとうございます」
『なに、ワシは気にしない。ところでお嬢さんワシから提案があるんじゃ』
「提案?」
『ワシをお前さんの守護霊にしてほしいんじゃ』
「守護霊?」
『守護霊になればお前さんを守れるしワシが持っていた魔法も使える。どうかの?』
「うん、お願いするよ!おじいちゃんの名前は?」
『そうじゃのぅ…ワシの名前は"ライ"じゃ』
「よろしくねライおじいちゃん♪僕は恵里だよ」
『孫のようじゃのぅお前さん。では、またの恵里』
ライは恵里へ溶け込むように消えた。
「メルドさん槍山の拘束を」
「ああ、分かった」
メルドに指示された騎士達は槍山を拘束したが天之河は納得いかないのか叫んだが
「殺人犯を庇うのか!お前はそれでも勇者か‼︎」
と怒鳴られて黙ってしまった。これにより槍山と天之河の評価はクラスメイト達から大きく下がる事になった。
ホアルドへ戻り全員が宿で眠った。その次の日に、王都へと帰還した。誰もまた迷宮に潜ろうなどと思えなかったし、勇者一行の2名が死んだことを報告しなくてはならないからだ。
「オルクスにて2名、死者が出ました」
メルドの言葉に王国の貴族や教会の重鎮達はざわつく。それはそうだ、彼等にとって勇者とその仲間達は自分達を魔人族との戦争の勝利に導く存在。そんな勇者の仲間が、まだ魔人族と開戦前に死ぬなど冗談ではない。
「い、一体誰が亡くなったのかね………」
「清水幸利、南雲ハジメの2名です」
この場にいるのは龍太郎、恵里、雫だ。天之河はこの場にはいない
「所で、南雲ハジメと清水幸利とは誰だ?」
「聞いたことあるな、確か訓練にも真面目にしてないのだろ?」
国王やイシュタルも明らかにホッとした。ピクリと龍太郎が肩を震わせ、雫が目を見開く。彼等はヒソヒソと言っているが常人を超える感覚を手にした転移者達にはハッキリと聞こえた。
「ああ、何だ。そこだけは良かった」
「神の使徒のくせに役にも立たず、立とうとする気もない者など死んで当然ですからなあ」
「いやはや、戦争の前に死んでくれて良かったですなあ」
「ああ、戦果を残さず足を引っ張られて死んだのでは大変でしたな」
悪意のある言葉が響く。悪し様に罵る貴族達に龍太郎が怒鳴ろうとした瞬間
「『黙れクソ貴族共が』」
「「「「⁉︎」」」」
「中村⁉︎」
「恵里⁉︎」
「『すまんのお2人さん恵里の身体をワシが借りておるのじゃ』」
「「ライさん⁉︎」」
「『この場はワシに任せなさい』」
恵里の身体を借りたライは雫と龍太郎に微笑んだ後貴族達を睨んだ
「『ワシはの…お前さん方の先代に命じられてオルクス大迷宮に向かい魔物に殺された者じゃ。お前さん方は勝手にお嬢さん達をこんな場所に連れてきて殺し合いをさせて死んで良かったじゃと?…ふざけるな。そう言うのならお前さん方が迷宮へ潜れ、そして魔物に殺されるが良い‼︎』」
ライの怒気に恐怖の視線を向けてくる貴族や教会の重鎮達に目を向ける。
「『ワシは言いたいことは言ったから後はお前さんに任せるぞ』」
ライは恵里と意識を交代したが慣れてなかったのか恵里は気を失っていて倒れかける恵里を龍太郎が慌てて支えた
「次、南雲と清水の事を侮辱したら、私達はこの世界の人間族の為に戦いません。少なくとも、異世界から呼び出し家族から引き離しておいて死んで良かったなどと言う者達を助ける為に戦いたくない」
「俺も同意見だ」
雫は失礼します、と部屋から出て行き龍太郎も貴族達を睨んだ後恵里を背負って雫の後を追った。国王や教会も悪い印象を持たれてはマズイと判断したのか、ハジメと清水を罵った人物達は処分を受けたようだが……そして檜山はステータスプレートを没収され王宮の地下牢に幽閉される事になった。
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一方奈落へ落ちたハジメと清水は
「なんとか間に合ったみたいだな」
「ギリギリ助かったぜ」
蝙蝠の翼型の武器を背中に装備していた事により落下死は免れていた
「どうする?清水」
「このまま下へ降りるか。戻ろうとしても何故か上に向かえないからな」
「なら、ゆっくり降りるか」
2人はそのまま下に降りていった。途中から暗くなってきたので清水があらかじめ採取した緑陽石を錬成してライト擬きを作りハジメに渡した。
「採取してたんだな」
「勇者(笑)がロックマウントに大技を放っただろ?その時の破片がいくつか転がってきて拾ったんだよ」
緑陽石のおかげで地面が見えて2人は無事に降りた。
「さて、この先何が待っているやら」
「慎重に行くか」
奈落の底へ無事に降りた2人は歩き始めた
槍山は拘束され幽閉されました。もちろん手枷をされてます!勇者(笑)の今後はどうしようかな?