異世界では筋力と物理がものを言う   作:蜂鳥

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異世界その1

自分が異世界に転生したのだと気づいたのは、初めて両親の顔を見た時だ。

 

便利な生活とお金さえあれば食うに困らなかった現代の日本。

それとは真逆にこの世界は、不便と明日食うパンさえ手に入れる事が難しい。

それを自覚した日に、俺は異世界とは決して物語のように楽しいものでは無いのだと理解した。

 

そして同時に、そんな世界で生きていくために必要なものがなんなのかも、理解したのだ。

 

筋力と物理である。

 

 

 

少し開けた森の中。目の前で棍棒を手にした小汚い2匹の魔物と対峙する。

緑の体色に子供のような体躯。小汚いぼろ布を纏い、血走った目をこちらに向ける魔物。

 

ゴブリン。

 

元の世界でも有名なファンタジーの代表的魔物だ。

しかし、例えゲームで雑魚モンスターであったとしてもここは現実。

力は強くなくとも命を簡単に奪うことのできる怪物だ。

 

しかし、俺にとっては獲物だ。

 

「■■■〜!!」

 

汚い声を上げながら棍棒を振り翳して1匹が突っ込む。

俺は手に持った”それ”を、思い切り横から小鬼の醜い顔に振り抜く。

勢いよく唸りを上げる得物は、ゴブリンの頭骨を、粉砕を通り越して吹き飛ばし、首なし死体を作り上げる。

 

「■■■■!!!」

 

頭を吹っ飛ばし、武器を振り抜いた体勢を好機と見たのか。

もう1匹が次はお前の頭を潰してやると、飛びかかってくる。

 

しかし、振り抜かれた得物は勢いそのまま体ごと回転し、横薙ぎが上段からの振り下ろしとなってもう1匹の頭を上から叩き落とす。

 

グギャッ!

 

もう1匹も頭骨と背骨が叩き潰され、潰れたカエルのように地面に縫い付けられる。

 

「・・・ゴブリンは汚いな」

 

何度倒しても、ゴブリンの依頼は汚くて慣れないものだ。

 

 

 

「・・・ゴブリン討伐依頼、完了しました」

「はい。確認します。・・・合計で5匹分ですね。ありがとうございます」

 

討伐したゴブリンの耳をギルドに納め、報酬をもらう。ゴブリンの討伐は日本円で一体あたり1000円ほど。

命を賭けて1000円しか稼げないと言うのはなんとも厳しいものだが、数が多いため依頼も多くなる。

そのため、見かけた時はなるべく受けるようにしている。

 

「こちら報酬の銅貨5枚です。いつもありがとうございます、グレンさん。ゴブリンの討伐はベテランハンターの方はなかなか受けていただけないので、ギルドとしても感謝しています」

「・・・いえ、お気になさらず。仕事ですから」

「けれど、ちょっと耳が傷んでましたよ?”それ”だと傷がつきやすいと思いますが、なるべく傷が少ないと嬉しいですね」

「・・・善処します」

 

受付のハナさんから銅貨の入った袋を貰うと同時に、武器に対して小言を言われる。

 

フレイル。それが俺の武器だ。元は農民が穀物を脱穀する際に使用した道具がルーツとなっており、棒の先に棘のついた棍棒が鎖で繋がれている。

本体の棘と遠心力による打撃は、かつて騎士と農民との間で起きた戦争において、使用した農民に完全勝利をもたらした程の凶器である。

俺のフレイルは長い柄の先に棍棒があるもので、両手持ちでより強い力で相手を叩き潰すことができる。

 

剣や弓など、使うのに修練が必要な武器と違い、圧倒的暴力で相手を叩き潰す。

俺はこの武器を、心底気に入っている。

 

「またお願いしますね!」

 

営業スマイルで対応するハナさん。漫画でも受付嬢は美人が担当していたが、それはこの世界でも同じなのだと、

いつも通り考えながら、銅貨の袋を受け取り、俺はギルドを後にする。

 

 

 

「・・・相変わらず寡黙な人ね」

私は小声で、今ギルドを出て行ったハンターを見送って呟いた。

 

”打撃のグレン”。または”バケツヘルムのグレン”。

 

長柄のフレイルに厚みのある金属鎧、そして特徴的なバケツのようなヘルメット。

このギルドでもベテランの星3ハンターであり、同時に星に見合わずゴブリン討伐や採集などの任務も多く受ける変わった人物だ。

ギルドに彼が来て早6年。その間、ただの一人も彼のヘルメットの下を見た事がない。

ほぼ担当のような立場で彼に依頼を斡旋してきた私でも、まだ彼の顔を見た事がない。

 

受付嬢の間では、よほどのイケメンがよほどの不細工。もしくは人に見せられないようなひどい傷があるのではなんて噂もある。

ただ仕事は真面目にこなすし、彼と関わりのある人はみんな”喋らないけどいい奴だ”と、そう口々に言う。

実際、武器の都合で討伐対象が少し傷つくことが多いが、粗暴なハンターの中で彼はギルドでも評価の高い人物だ。

 

だからこそ、彼がどんな顔をしているのか気になるのだが。

まあ、素顔を明かさないのも何か事情があるのだろう。

そこに首を突っ込むほど私も子供じゃない。

 

いつも通り、依頼をこなして帰ってくる彼を迎えて、ちょっと小言を言う。

そんな関係を、私は気に入っている。

 

 

 

「・・・あ〜緊張した〜〜〜!!!」

 

ここに、日本から転生した一人の男がいる。

名をグレン。またの名を”打撃のグレン”。重装備に身を包み、その凶悪なフレイルで敵対者を叩き潰す星3ハンターである。

 

そして・・・

 

「女性と話すのやっぱり緊張する〜〜〜〜!!!」

 

女性と話すのが苦手な、コミュ障陰キャである。

 

 

 

 

 

 

 

 




グレンの基本スペックです

・グレン
・身長182センチ、体重85キロ
・細マッチョ(細いゴリラです)
・コミュ障の陰キャ

装備はこちら

・重装の金属鎧(実際は多重層の革と金属の混合鎧)長柄のフレイル、副兵装のバトン2本
・バケツヘルム
・腰につけるタイプの革製鞄

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