()が感情や心の中
『』が回想や遠くの音、声
という感じで分けてやってみてます。
見づらかったりしたらすみません。ご指摘下さい。
久しぶりに弟の名前を確認できて安心と同時に懐かしさも込み上げてきたが、すぐに頭を振り冷静に考える。
「…今の立場でエースと会えないな…」
それもそうだろう。賞金首《エース》と賞金稼ぎ《私》が争いもせずにお喋りなど周囲に知られたら関係を邪推する人も出てくるだろう。
「会うとしても変装くらいはして賞金稼ぎのアンだとバレないようにしなくっちゃ。」
(変装、か。これといって思い浮かばないが体型と顔を隠しながら靴などで工夫して背格好を高くして誤魔化せば充分でしょう。)
(せっかくだから以前天竜人の傍で控えながら護衛をしていたCP《サイファーポール》の格好と仮面を参考にしよう。
そうすれば問題が発生しても謎のCPとして行動できる。
訓練ついでにお祖父ちゃんに教えてもらった六式が役に立つ時がきたのだ。)
といっても人の体に指を突き刺す指銃は感触的にも衛生的にも使う気はない。
「とりあえずエースと会う時の問題はまた考えるとして、今目の前の問題の方がピンチかな〜。」
食料問題である。Dr.ベガパンクお手製の冷蔵庫にたくさん保存してあるし、食べる量だけ考えれば海の怪獣や魚を狩ればいいが野菜が尽きてしまいそうなのだ。
「前の島が無人島だったからほんの少しの野草と果物しか補充できなかったのが痛かったなぁ…」
「次からは野菜や果物をメインで買って保存するとして、たんぱく質系をその場その場にしようか…いや、そもそもの貯蔵スペースを別枠で確保する手もある。
船底の海楼石予定地の一角を冷暗所みたいに利用するのも……って違う違う。」
(今後の改善よりも今これからの行動だ、取れる行動は2つ!1つは記録指針《ログポース》に従って進み続ける事!
もう1つは…必然的にログポースに従わない事。どちらにもリスクが付き纏う…。進路通りなら確実に島に辿り着くけど距離が分からないからタイムリミットが私の体調次第、か。)
(もう1つだと完全な当てずっぽうか永久指針《エターナルポース》。前者は偉大なる航路では自殺行為だから確実にナシ。だけど私の持ってるエターナルポースはお祖父ちゃんから貰ったマリンフォードと、偉大なる航路から少し外れたルートのあの島の計2つのみ…体感だけどどっちも遠いからナシ…ね。)
もう1つ、可能性があるとすれば海賊や商船、それと海軍の巡航と偶然出会い略奪や取り引きなどで食料を分けてもらう事だが、この広い海では望み薄だろう。
「ん〜〜、ログポース通りの進路を行く選択肢しかない…かなー。頭が煮詰まってきちゃった…
よし!ひとまず気分転換に運動がてら月歩で飛んで島や船が見えないか確認しよ!」
思考を中断し、壁際から望遠鏡をとり船室から飛び出しそのまま地を蹴り、空を蹴る。
「こっちは…島!?…じゃないや、岩礁か!紛らわしいな〜。でもぶつかる前に気づけて良かった〜。船が危ない所だったね。」
そのまま月歩で飛び続けながら周囲を望遠鏡で見るも岩礁以外はなにもない。
「見える範囲ではないかー。海のど真ん中だし、こればっかりはしょうがないわね。」
(最近六式系の訓練してなかったから少し鈍ってる感じあるかな…。船から離れすぎないようにしながらもう少し高度上げてみよっと!)
「!っと!あっぶない!ウミネコちゃん達と衝突事故おこしちゃうところだった!」
さらに月歩を踏み込み、高く飛んだ瞬間に背後からの気配を感じてその場から飛び退いた。ニャーニャーと鳴きながら飛び去っていくウミネコを眺めながら、どこかに引っかかり、違和感を覚え1度船の甲板へ着地して頭の中を整理する。
(今、私は何に違和感を感じた?何か現状を打破するヒントが…なにか…感じた…?そっか!気配を感じたんだ!
お祖父ちゃんが教えてくれた見聞色ってやつを無意識に使ってたんだ!)
「この見聞色をもっと広く、目で見える範囲よりもっとずっと広く使えれば…!人の気配を感じれば…!ログポースに関係なく1番近い島か船に向かう事ができる!」
善は急げとばかりに集中力を高めて気配に意識を傾ける。目を閉じ顔を顰めながら額に脂汗が浮かぶ。
パッと目を開くもその顔は苦々しい。
「駄目ね…今感じた気配はおそらくさっき前へ飛んでいったウミネコ達、それと周囲にまばらに感じるのは魚…よね、きっと。なんとなく気配の大小は感じるものの遠いと精度が落ちて人と動物の気配の区別がつかない程小さくなっていっちゃいそう…。練度の問題かしら?そう簡単にはいかないわね…。」
独りごちながらお祖父ちゃんから覇気について教えてもらった時の事を思い出す。
8年前
『あーーー、そうじゃ、アン。覇気っていう便利なやつの事も教えるわい』ほじほじ
『はき?この前教えてくれたロクシキってやつとは違うの?』
『そうじゃなぁ。六式が体の強さと技術で、その次のステップの心の強さと技術みたいなもんじゃ。
見聞色の覇気、武装色の覇気、覇王色の覇気の3種類あるんじゃ。』ほじほじ
『けんぶんしょく、ぶそーしょく、はおーしょく…』
『うむ。見たり聞いたり感じたりする力と、自分自身や武器を硬くしてパワーアップする力と、相手を威圧したり周囲を惹き付ける力じゃ。人によって向き不向きがあるし覇王色を持っとるやつは滅多におらんがアンなら3つとも持ってるはずじゃ。』ほじほじ
『そーなの?私、持ってる?』
『なんせアンの父ちゃんは3つ全部使いこなしとったからのぅ。なかなか手古摺らされたもんじゃわい。』ほじほじほじほじ…っふーー
『けんぶんしょく、ぶそうしょく、はおうしょく!私覚えた!』
『ブワッハッハッハ!!アンは賢くて偉いのぅ!』
『もー!お鼻ほじった手で頭撫でないで!』
『ブワッハッハッ!すまんすまん!ブワッハッハッハ!』
当時の事を思い出しお祖父ちゃんの不真面目な態度に憤る。
(しょうがないじゃない!私あの時9歳だったし!
お祖父ちゃんずっと鼻ほじってテキトーな感じだったし!こんなに大事な力ならもっとちゃんと教えてよね!
も〜〜〜っっ!)
「いい考えだと思ったけど振り出しね…。
やっぱりログポース通りに行くしかないかしら…。」
そう呟きながらもまだ何か方法はないかと思考に耽ける。
(こんなに有用な事が分かってたらもっと覇気について
訓練したのに…!いえ、今となっては後の祭りね。
それよりもあの時お祖父ちゃんが教えてくれた事をもっとしっかりと思い…出して…………見たり『聞いたり』感じたりする力…?)
「そうよ…!話し声を、喧騒を聞けばいいんだわ!
今思えばさっきのウミネコだって気配と同時に鳴き声も聞こえた!」
(聞く力を…!さらに人の心を、感情を!)
新たに方針を定め、再度目を閉じて深く集中する。
『ザザァン ザパァァン』
(波の音。)
『ニャーニャーニャー』
(ウミネコの鳴き声。)
「声や感情に絞ってるつもりでも…!頭に入ってくる情報が多すぎる…!」
アンの全身に嫌な汗がじっとりと滲む。
そして潮風がアンの体温を急速に奪う。
寒さから、はたまた急激に襲いかかってくる疲労からか
足が…全身が震えだす。
「ぅぐっ…!このまま全てを拾ってたら……頭が…割れる…!」
(円のように広げてはダメ…自分の前方にだけ伸ばすイメージで…!まずはログポースの指す方から…限界を感じたら体ごと向きを変えればいいわ!)
覇気を前だけに伸ばし続け、頭が悲鳴を上げるも歯を食い縛り耐える。
そして、腰に下げている刀を握りしめる。
「…このまま、膝をついたら…すぐ楽になれる…ぐっ、でも、何かを、掴みかけてる…今!ここで逃げたら………二度と立ち上がれない気がする!」
その覚悟に、思いに呼応するように前へ前へと伸びる。
「これ以上はもう…伸ばせない…!ログポースが指している島は感知外…という事、ね………。このまま…左に意識を…」
(ゆっくり…少しずつじゃないと情報に押し潰される…。)
ゆっくりと左舷へ体ごと向けていく。
『キャハハハハ』『ザワザワザワ』
「っ!ここ!ログポースから45°くらい!」
『おかーさーん!カレーライス食べたい!』
(カレー食べたい!!!)
『そうねぇ…。たまねぎもじゃがいもも安いしカレーにしようかしら。』
(マー君は甘口で旦那は辛口だからお鍋2つ使うから少し面倒だけど…しょうがないわね。)
『やったー!!おかーさん大好き!!!』
(カレーだぁ!!)
「ふふふ…。カレーと一緒にサラダもちゃんと食べなきゃダメよ。」
(私は両方からバランスよく注いで中辛にしないと…
もうちょっと旦那の稼ぎがあれば節約生活から…)
「世知辛いわね…。ってそうじゃないわ!!島よ!
ちゃんと人もいるし文明もある。ひとまずこの島を目指して食料を調達が第1目標。」
(ログポースから左に45°がおおよその目安だけど偉大なる航路の海を警戒して、ちょこちょこ見聞色で進路を確かめた方が良さそうね。それに覇気の有用性に気づけた事も収穫だった。)
「なによりも…鼻ほじりながら覇気を語ってたお祖父ちゃんは本っ当に許さないんだから!」
1口メモ:幼い頃に飢え死にしかけた過去のトラウマから今回の食料不足で危機感を感じているため、強敵との戦い程ではないが覇気が伸びた。
色々括弧を分けてるものの行間が難しい…。