カードゲーム世界で、俺はカードだけを集めたい 作:パワカもぐもぐ
『パラ・リチュアル』。
この世界で大人気のカードゲーム。
その影響は単なる遊びに留まらず、プロリーグがあったり、会社や政治の駆け引きに使われたり、時には世界の命運を握ることすらある。
物心がつくころにはカードを握っていると言われるほど生活に根付いている環境で、二度目の生を謳歌することになった俺が『パラ・リチュアル』をやらない理由はなかった。
ただ俺はゲームの要素よりもコレクションの方に価値を見いだしたタイプだ。もちろんこの世界でもコレクターのような人はいるが、そういう人たちでさえも集めたカードを披露するために割と積極的に対戦を行う。
一方の俺は、集めたカードをファイルに入れて眺めるだけで満足してしまい、自ら積極的に対戦をしようとは思わなかった。
カードゲームが嫌いなわけではないのだが、この世界は給食の余りものの取り合いに始まり、学校や会社の面接などもカードゲームの勝敗で決めてしまう。
前世の感覚がある俺は、「なんでもかんでもカードで決めすぎじゃね?」と、引いている部分があるのだ。
そんなわけで俺からは必要以上の対戦をすることはない。
だが俺以外のやつはそうはいかない。例えば明らかに漫画やアニメで言えば主人公のような炎堂タツミは、顔を合わせれば対戦の申し出をしてくる。その時々で受けたり断ったりするが、飽きることなくこちらに声をかけてくる。知り合いでなくても、その辺の不良はカツアゲをするために対戦を仕掛けてくるし、局部を露出しながら対戦をしようとする不審者もいる。
要は俺が動かなくても対戦相手は向こうからやってくるという話である。
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俺は自ら『パラ・リチュアル』の対戦をすることは基本ないのだが、物事には例外が存在する。
「今日は俺が勝つぜ! エド!」
「悪いなタツミ。今日だけは絶対負けられないんだ」
俺が今いるのは近場のカードショップ”平成”。そこで行われている大会に出ていた。
もちろん単純に対戦目的ではない。俺の狙いは優勝賞品の『森林龍 モリガール・ドラゴン』のイラスト違いを手に入れるためだ。
「大会のときのエドはいつもと雰囲気が違ってワクワクするな!」
「ああ、大会に懸ける思いは間違いなくお前より強い」
「へへっ、そうこなくちゃ。じゃあ、始めようぜ!」
「「リチュアル・トライ!」」
俺たちの掛け声とともに対戦が始まった。
『パラ・リチュアル』は、プレイヤーは魔王としてユニットや魔法、秘宝を駆使して、相手の体力を0にすることを目指すカードゲームだ。カードをプレイするには毎ターン1つずつ貯まる魔力を使う必要がある。
今回先に動き出したのはタツミだ。
「俺は魔力を2使って『龍結晶 ドラゴン・ハート』を場に出すぜ!」
タツミの場に龍の心臓を模した結晶が現れる。
タツミのデッキはドラゴンを主体としたデッキだ。序盤に魔力ブーストを行い、中盤から終盤にかけて大型のドラゴンを展開してくる。
今場に出した『龍結晶 ドラゴン・ハート』もコストを支払うことで、魔力を増やせるカードだ。
「俺のターン、ドロー。『料理人見習い パンナコッタ』を召喚。デッキから2枚ドローし、2枚を捨て札にする」
対する俺のデッキは美少女グッドスタッフだ。汎用性の高い美少女カードを詰め込んだ、見た目に反して実用性を意識したデッキだ。
俺たちはこれまで何度も対戦しており、お互いの手の内は割れている。俺はタツミを妨害しながら展開し、タツミは俺の妨害をいかに掻い潜るかが対戦の鍵になるだろう。
「俺は魔力を1使って、場の『龍結晶 ドラゴン・ハート』の効果を発動! 魔力を1ブースト! さらに『龍結晶 ドラゴン・ アミュレット』を場に出すぜ!」
タツミは意気揚々と魔力ブーストをしつつ、別の秘宝カードも場に出してきた。
「龍結晶」のカードが場に2枚。おそらく場の「結晶」のカードの数だけコストを軽減する『結晶龍 クリスタル・ドラゴン』 を手札に握っている可能性が高い。
「俺は『怪盗娘にゃんにゃん』を召喚。効果でコスト2以下の相手の秘宝カードを1枚奪うことができる。対象は『龍結晶 ドラゴン・ハート』だ」
「なっ!? 俺のドラゴン・ハートが!?」
俺の場に現れたレオタードを纏った猫耳の少女により、『龍結晶 ドラゴン・ハート』のコントロールが俺に移る。
ハンデスも考えたがこちらの方が確実に遅延できる。加えて今後の魔力ブーストも封じるオマケ付きだ。
タツミは一瞬苦虫を噛み潰したような表情を見せるが、すぐに不適な笑みを取り戻す。
「さすが俺のライバルだ! 簡単には展開させてくれねえな」
「ここでクリスタル・ドラゴンを出されればテンポを取られるから当然だ」
タツミの動きを一旦潰すことに成功したが、これだけで止まることはない。むしろここからが正念場だ。
□
それからの展開はお互い一歩も譲らなかった。俺のハンデスに反応してメタユニットカードを出されたり、タツミから奪ったドラゴン・ハートで魔力を増やすことで、大型のユニットを早めに出したりと、まさに一進一退の攻防だ。
俺たちの対戦を観戦するギャラリーも手に汗握る展開で盛り上がっている。
「俺のテンションは最高潮だ! 行くぜ! 俺の切り札! 『魔王 オーガニック・ドラゴン』を召喚!」
「ついに来たか……! 魔王カード」
デッキに1枚しか入れることのできない魔王カード。扱いとしてはユニットカードだが、その体力はプレイヤーの体力と連動している。魔王カードが破壊されると、そのプレイヤーは敗北してしまうが、その分効果は強力だ。
『魔王 オーガニック・ドラゴン』は効果破壊耐性と部分的な戦闘破壊耐性を持っている。また、相手のユニットカードに攻撃できない代わりにその攻撃力は13。一撃でプレイヤーの体力の3分の2を削る恐ろしいカードだ。
そして対戦は終盤に差し掛かっている。今の体力でオーガニック・ドラゴンの攻撃を喰らってしまえば俺の負けだ。
「俺のターンドロー……」
表情に出さないようにしているが、俺の手札は良くない。オーガニック・ドラゴンを倒せるカードがないからだ。このドローで逆転のカードを引かなければならない。
俺は引いたカードに目を向ける。
「俺は今引いた『生贄の壺』を場に出す! このカードと自身のユニット1体を墓地に送ることで効果発動! 墓地から魔王カード以外のユニットを1体召喚する! 来い! 『絶対魔剣少女』!」
俺の墓地から大剣を持った少女が場に現れる。凛々しい表情をしているが、彼女の攻撃力は1。相手の体力を削り切ることはできない。ただユニットとのバトルは違う。
「このカードはユニットとバトルする時、そのユニットの体力と同じ攻撃力になる。バトルの際に体力も減ることはない」
「だけどそいつは召喚したばかりで攻撃できない! 俺のオーガニック・ドラゴンは倒されないぜ!」
「お前の言う通り『絶対魔剣少女』はこのターンは攻撃できない。だからお前に攻撃させる。俺は残りの魔力で『扇動王 メスガキング』を召喚」
俺の場に王冠を被った生意気そうな少女が召喚された。
メスガキングはくすくすと人を馬鹿にするような笑みを浮かべている。そんなメスガキングの様子に『絶対魔剣少女』は眉をひそめる。
「メスガキングは自分・自分のユニットを対象に発動する効果、またはユニットが攻撃する際の対象を変更することができる」
メスガキングの効果を聞き、タツミは俺の真意に気付く。このままオーガニック・ドラゴンの攻撃を宣言すると、強制的に『絶対魔剣少女』へ攻撃してしまう。
「俺のターン、ドロー!!」
タツミのターン開始時のドロー。その表情は晴れなかった。対処できるカードを引けなかったのだろう。
「……俺はオーガニック・ドラゴンで、エドを攻撃!」
「メスガキングの効果で対象を『絶対魔剣少女』に変更。向かい撃て『絶対魔剣少女』」
破れかぶれに攻撃してきたオーガニック・ドラゴンを倒し、対戦は俺の勝利で終わった。
□
「メスガキングさえ倒せれば俺の勝ちだったのになー」
「おかげで俺は別の大会に出なくて済んだよ」
「ちぇー。除去カードをもっと増やすかあ。でも何のカードと入れ替えるか……」
大会が終わってから俺とタツミは帰路につきながら今日の大会の話をしていた。
タツミは今日のことを受けてデッキの改造を考えている。俺としてはアグロ環境でもないし、無理して入れ替えるほどではないと思う。仮に入れ替えるなら大型のユニットカードにすることを勧めた。タツミのデッキは主人公力にかこつけて大型のユニットの枚数が多めだからな。
「サンキュー! 家帰ったらさっそく練り直すぜ! 明日また試させてくれな!」
「明日は俺以外で頼む」
「そんな事言わずにやろうぜ!」
嫌そうな俺のことを気にせず、タツミは対戦に誘ってくる。今日負けてたら凹んで対戦したくなかっただろうが、モリガール・ドラゴンを手に入れた俺は気分がいい。なんだかんだ対戦する未来が見える。
タツミも俺との付き合いは長いので、俺の機嫌が良いことを察しているだろう。
「それにしてもエドは、その、女の子のカードが好きだよな……」
「今さら何を。タツミが使うドラゴンとかも嫌いではないが、俺の心をよりくすぐるのはこっちだ」
俺は自慢げにモリガール・ドラゴンのカードをタツミに見せつける。あの体中に木を生やしたドラゴンがこんな美少女になるなんていい時代だ。
そんな俺にタツミはいぶかしげな視線を送ってくる。
「エドは現実の女の子には興味ないのか?」
「そんな偏ってはねえよ。ただ優先度が違うだけだ。タツミだって女子よりリチュアルだろ」
「俺は……いや
「ほどほどでいいなら付き合うよ」
「おっしゃあ!」
俺の言葉で妙に嬉しそうなタツミを不思議に思うが、いつものことかと一人納得するのだった。
カード用語解説
ユニットカード:プレイヤーが場に出して使役するカード。場に出すにはカードに記載の魔力を消費する。攻撃力と体力があり、戦闘時に攻撃力の数値分、体力にダメージを与える。体力が0になるとユニットは破壊される。ユニットカードは場に出したターンは攻撃できない。
魔法カード:カードに記載の魔力を消費し、効果を発動できる。使用後、墓地に送られる。
秘宝カード:カードに記載の魔力を消費し、場に出すカード。場で効果を発揮する。
魔王カード:デッキに1枚しか入れることができないカード。扱いとしてはユニットカードと同様で、記載の魔力を消費して場に出せる。体力はプレイヤーの体力と連動している。魔王カードが破壊されると、そのプレイヤーは敗北する。
カードのレアリティ
N(ノーマル)
R(レア)
SR(スーパーレア)
RR(ロイヤルレア)
LR(レジェンドレア)
SE(シークレットレア)
カード紹介
森林龍 モリガール・ドラゴン
レアリティ:PR
コスト:6
ユニットカード
種族:ドラゴン
攻撃力/体力:5/6
効果:このカードが場に出た時、自分の魔力を1増やし、自分またはユニット1体の体力を2回復する。
フレーバーテキスト:モリガール・ドラゴンは人間の姿に変化し、人々と交流を図った。
龍結晶 ドラゴン・ハート
レアリティ:N
コスト:2
秘宝カード
効果:1ターンに1度、魔力を1消費し、自分の魔力を1増やすことができる。
フレーバーテキスト:龍の魔力を注いで作られたドラゴン・ハートは、龍の里の生活を支えた。
料理人見習いパンナコッタ
レアリティ:N
コスト2
ユニットカード
種族:悪魔
攻撃力/体力:1/2
効果:このカードが場に召喚されたときに発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローし、その後自分の手札を2枚捨てる。
フレーバーテキスト:「まさか儂が料理を教える羽目になるとは」ーとある老いた美食家
龍結晶 ドラゴン・アミュレット
レアリティ:N
コスト:2
秘宝カード
効果:1ターンに1度、自分の場の種族がドラゴンのユニット1体の攻撃力をこのターンの間1増やすことができる。
フレーバーテキスト:ひとり立ちする子を思い、母龍はアミュレットを授けた。
結晶龍 クリスタル・ドラゴン
レアリティ:SR
コスト:7
ユニットカード
種族:ドラゴン
攻撃力/体力:6/7
効果:このカードは自分の場にある「結晶」と名前が付く秘宝カード1枚につき、コストが1減る。
フレーバーテキスト:諸事情で肉を食べることができなくなったドラゴンは、結晶を食べることで体の性質が変化した。
怪盗娘にゃんにゃん
レアリティ:R
コスト:3
ユニットカード
種族:獣人
攻撃力/体力:2/1
効果:このカードが場に召喚されたときに発動できる。相手の場のコスト2以下の秘宝カード1枚のコントロールを得る。このターン、コントロールを得た秘宝カードの効果は使用できない。
フレーバーテキスト:「にゃにゃ! にゃにゃにゃにゃ!」ー怪盗娘にゃんにゃん
魔王 オーガニック・ドラゴン
レアリティ:LR
コスト:10
魔王カード
種族:ドラゴン
攻撃力/体力:13/*
効果:このカードはカードの効果で、破壊されない。
このカードは攻撃力3以下のユニットととの戦闘ではダメージを受けない。
このカードはユニットに攻撃することができない。
フレーバーテキスト:命の尊さを知ったオーガニック・ドラゴンは、生物の殺生を禁止した。
生贄の壺
レアリティ:SE
コスト:5
秘宝カード
効果:このカードと自分の場のユニットを1体墓地に送る。その後、自分の墓地からユニット1体を召喚することができる。
フレーバーテキスト:「お買い上げありがとうございまーす♡」ー闇商人ニコニコ
絶対魔剣少女
レアリティ:RR
コスト:5
ユニットカード
種族:人間
攻撃力/体力:1/3
効果:このカードはユニットとバトルする時、そのユニットの体力と同じ攻撃力になる。このカードはバトルによってダメージを受けない。
フレーバーテキスト:敗北を知るために彼女は魔王討伐の旅に出た。
扇動王 メスガキング
レアリティ:SR
コスト:4
ユニットカード
種族:人間
攻撃力/体力:3/3
効果:このカードが場にいる時、自分・自分の場のユニットを対象に発動する効果、または相手のユニットが攻撃する際の対象を変更することができる。
フレーバーテキスト:メスガキングは5つの国を滅ぼし、時には魔王よりも恐れられた。