カードゲーム世界で、俺はカードだけを集めたい   作:パワカもぐもぐ

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ホコタテ対決! 前編

 一時的に四天王に加わった俺は、ルナの新デッキの練習を手伝った。

 交流戦まで時間がないため、デッキはコントロールのままを勧めたが、「思い切って変えますわ!」と本人の意思は固かった。

 俺一人だけでは練度が足りないため、四天王二人に加えてタツミを中心に友人たちに声をかけた。

 タツミは交流戦に出たがったが、今更俺が変わるわけにもいかないし、他二人も変わるつもりはなかったので、我慢してもらった。タツミは快諾したが、代わりに俺との対戦時間が増えた。

 こうして忙しなく練習をする俺たちに待ったをかける奴が現れた。

 

「ちょっと!? あたしは手伝うなんて一言も言ってないんだけど!」

 

 印象的なツインテールを靡かせながら俺たちに文句を言っているこいつは甘空ネオン。同級生で、タツミが呼んだみたいだが、用件を知らずに来てしまったようだ。

 

「えー! ネオン手伝ってくれないのか!」

「勘違いしないでよね! あたしはタツミと一緒にいたくて付いてきただけなんだから!」

「……この方はなんですの?」

「変人かな」

 

 ネオンはいわゆるツンデレヒロインと思いきや、ツンデレの方向がおかしい。デレデレになってしまっている。

 しばらくタツミと話していたネオンは、急に俺の方へと視線を向けた。

 

「大体なんであんたもいるのよ! キモオタ!」

「エド、キモオタとはどういう意味ですか?」

「知らなくていいよ」

 

 いつものが始まったと俺はため息をつく。

 ネオンはやたら俺に当たりが強い。ツンの部分が俺だけに刺さる。理由はタツミと仲がいいからだろうか。お前も仲いいだろうに。

 

「あんたみたいな女の子のカードでニヤニヤしてる奴なんて、タツミに悪影響よ!」

「なんかすまん」

「その余裕な態度も本当にムカつく! タツミの一番はあたしなんだから!」

 

 キーキー喚き立てるネオンを前に、四天王3人はなんだかかわいそうなものを見る目をしている。

 ネオンは悪い奴じゃないんだけど、俺に対して苛烈過ぎるんだよな。引くのもわかる。

 

「あんた四天王になったんだって? あんたじゃ実力不足だからタツミと変わった方がいいんじゃない?」

「それは聞き捨てなりませんわね。エドは四天王にふさわしい方でしてよ」

「ククク、四天王適正100%のエドくんに対して失礼だ」

「エドへの悪口は許さん!」

 

 ネオンの言葉にルナは反論をする。メガオとタケルの二人もネオンのあまりの言い草に怒っている。

 俺とタツミはいつものことだと慣れているが、ネオンを知らない3人からすれば、かなり失礼な奴に見えたのだろう。

 

「なに? あんたそのキモオタを庇うんだ」

「さっきから言わせておけば、例えあなたたちが友達だとしても言っていいことと悪いことがありますわ」

「友達じゃないわよ。あたしとキモオタはライバルだから。勘違いしないでよね」

 

 俺が見る限りヒロインレースを走っているのはネオンだけだ。関係ない俺を引っ張るのはやめてほしい。

 

「あんたのデッキの練習だっけ? いいわ、付き合ってあげる。あんたをボコボコにした後、キモオタもボコボコにするわ」

「あら、始まる前から傲慢ですわね。わたくしもあなたの鼻っ柱を折りたくなりましたわ」

「ふん、あたしがタツミのとなりにふさわしいってところ、見せてあげる」

 

 ネオンとルナがリチュアル・ボードを構える。

 ルナの練習のためにネオンを呼んだからいいんだけど、バチバチすぎる。

 タツミは「面白いバトルが始まりそうだぜ!」なんてはしゃいでいる。これを見てその感想が出るのは大物だ。

 

「「リチュアル・トライ!」」

 

 ただの練習のはずなのに、世紀の一戦のような雰囲気で、2人の対戦は始まった。

 

「先攻は譲ってあげる」

「後悔することになりますわよ。わたくしのターン、魔力を1使い『爆走軍団 ヘル・ライダー』を召喚しますわ」

 

 なぜか自信満々のネオンに先攻を譲られたルナは、先攻1ターン目で、ユニットを召喚することに成功した。

 

「ヘル・ライダーは、"クイック・センス"の能力を持っているため、召喚したターンでも攻撃することができますわ」

 

 ヘル・ライダーは全身から炎を出しながら、ネオンへと突撃した。

 

甘空ネオン:体力20→19

 

「ふーん、あんたそういうデッキなんだ」

 

 ネオンはルナのデッキがアグロだと察し、不適な笑みを浮かべる。

 ターンが回ってきたネオンは、何もせずにターンを終了した。

 

「わたくしのターン! 魔力を2使って、『爆走軍団 ワン公』を召喚! このカードは自分の場に「爆走軍団」と名のつくユニットカードがいれば、クイック・センスの能力を得ますわ!」

 

 ルナの場にただの子犬にしか見えないユニットが召喚される。ワン公はヘル・ライダーのすさまじい咆哮をあげた。

 

「ヘル・ライダーとワン公で、プレイヤーに攻撃!」

 

甘空ネオン:体力19→16

 

「ククク、さっそくルナの速攻が決まってる」

「いいぞ! ルナ!」

 

 メガオとタケルは、ルナの攻勢に盛り上がる。

 一方、俺とタツミは、このままルナの好きにはさせないだろうということを感じていた。

 ネオンもルナの攻撃に動じず、ターンの始めのドローを行う。

 

「あたしは魔力2で『ウォール・サーチャー』を召喚。デッキからカードを3枚表向きにして、その中から"ディフェンダー"の能力を持つユニットを1枚、手札に加えるわ」

「ディフェンダーのカードですって?」

 

 ディフェンダーは相手のユニットの攻撃を自身へと移すことができる能力だ。ただし能力の発動は1ターンに1回。前ターンに攻撃済みだと発動できない。

 そんな防御に特化した能力を持つユニットのサーチカードを入れている。これが意味することは、ルナにとってネオンのデッキは天敵だということだ。

 

「あたしは『守護龍 ガーディアン・ドラゴン』を選択。残りの2枚は山札の下に戻すわよ。さらにこの効果でディフェンダーのカードを手札に加えたことで、『ウォール・サーチャー』は次のターンの終了時まで、ディフェンダーの能力を得るわ」

 

 リソースを確保しながら防御を固め、長期戦の姿勢を示すネオン。リソース回復に乏しいアグロデッキのルナは苦戦を強いられるだろう。

 しかしネオン同様、ルナも動揺することはない。

 前に握っていたコントロールの方がやりやすいはずなのに、彼女の闘志はより鮮明だった。

 

「わたくしは魔力を3使って『爆走軍団 荒々プリンセス』を召喚! 自分の場に「爆走軍団」のユニットがいることで、攻撃と体力が1上がりますわ。さらに召喚時に相手のユニット1体とバトルすることが可能。お相手は当然『ウォール・サーチャー』ですわ』

 

 ルナの場に現れた手に待った鉄球をウォール・サーチャーに投げつける。『ウォール・サーチャー』も応戦するも、鉄球が直撃したことで爆発した。

 思ったよりも簡単に『ウォール・サーチャー』が撃破され、ネオンは少し苛立ちの表情を見せた。

 

「わたくしはヘル・ライダーとワン公で、プレイヤーに攻撃!」

 

甘空ネオン:16→13

 

「ダメージ・カウンター! 『魔王の祝福』を発動! あたしはデッキから、カードを2枚ドロー!」

 

 ネオンも攻められてばかりはいけないと、ダメージ・カウンターでリソースを伸ばす。

 

「2人とも楽しそうだな! 俺もあとで対戦したいぜ!」

「対照的で見応えあるよね」

 

 ここまではルナが優勢なように見えるが、ネオンの真骨頂はこれからだ。

 

「あたしのターン。魔力を3使って『湿地帯の嫌われもの ドローモン』を召喚。ターン終了よ」

 

 ネオンの場に体が泥で覆われた謎の生物が召喚される。種族は魔獣らしいが、あれは一体なんなんだろう。

 タツミに聞いたが、タツミもあれが何かは知らないそうだ。

 

「ずいぶんとマイペースですわね? このままだとわたくしがあっさりと勝ってしまいますわよ?」

「何よ。ちょっとだけあたしの体力を削ったからっていい気になってるわけ? 早とちりもいいところね」

 

 ルナの煽りに対して、ネオンは引き下がることはない。

 あの様子だと十中八九、例のカードを握っているのだろう。

 ネオンの手の内を知らないルナは、ここぞとばかりに展開を広げようとする。

 

「魔力を3使って『爆走軍団 ヴーア技師』を召喚。このカードは攻撃するかわりに相手のコスト6以下のディフェンダーのユニットを1体、破壊することができますわ! そして『爆走軍団』のユニットが場にいれば、クイック・センスの能力を得るため、このターンに効果を発動できますわ!さらに残りの魔力でヘル・ライダーを召喚!」

 

 ヴーア技師の効果でドローモンを破壊すれば、8ダメージが通る算段なのだろう。

 しかしネオンはその行動を咎める。

 

「ならドローモンが破壊された時の効果を発動。相手のユニットを2体、次のターン終了時まで攻撃できなくするわ。あたしはワン公と荒々プリンセスを選択」

「わたくしのユニットが……! ですがヘル・ライダーたちは動けますわ! ヘル・ライダーで攻撃!」

 

甘空ネオン:体力13→12

 

 1体目のヘル・ライダーの攻撃が通った瞬間、ネオンは笑みを深めた。

 

「かかったわね! ダメージ・カウンターよ! 『ガーディアン・コール』!」

 

 双子の悪魔がルナを嘲笑うかのように不快なラッパを吹き鳴らした。

 すると地面に2つの魔法陣が浮かび上がる。

 

「あたしは手札から魔王以外のディフェンダーを持つユニットを2体召喚! 来なさい! 『守護龍 ガーディアン・ドラゴン』! 『求道者 ミマモル』!」

 

 魔法陣は激しい光を放ち、そこから2体のユニットが現れた。

 

『守護龍 ガーディアン・ドラゴン』

コスト:8

攻撃力/体力:6/8

 

『求道者 ミマモル』

コスト:7

攻撃力/体力:4/8

 

「大型ユニットが2体……!」

 

 ルナの前に立ちはだかる巨大な龍と聖なる力を持つ求道者。

 ルナはこれを突破することができるのか。

 勝負は後半へと続く。




カード用語解説
クイック・センス:この能力を持つユニットは、召喚したターンでも攻撃できる。
ディフェンダー:相手のユニットの攻撃を自身へと移すことができる。この能力は1ターンに一度しか発動できない。また、前ターンに攻撃済みだと発動できない。

カード紹介
爆走軍団 ヘル・ライダー
レアリティ:N
コスト:1
ユニットカード
種族:アンデッド
攻撃力/体力:1/2
効果:クイック・センス
このカードが自分のターンに攻撃しなかった時、ターン終了時に破壊する。
フレーバーテキスト:ヘル・ライダーは恐れ知らずだ。死以上に怖いものはない。

爆走軍団 ワン公
レアリティ:N
コスト:2
ユニットカード
種族:幻獣
攻撃力/体力:2/3
効果:自分の場に他の「爆走軍団」と名がつくユニットがいる時、このカードはクイック・センスを得る。

フレーバーテキスト:かわいい見た目に騙されたら痛い目を見るだろう。

ウォール・サーチャー
レアリティ:R
コスト:2
ユニットカード
種族:ロボット
攻撃力/体力:2/2
効果:このカードが場に召喚された時、デッキからカードを3枚表向きにして、その中からディフェンダーの能力を持つユニットカードを1枚、手札に加えることができる。
残りの2枚は山札の一番下に好きな順番で戻す。
この効果でディフェンダーのカードを手札に加えた時、このカードは次のターンの終了時まで、ディフェンダーの能力を得る。
フレーバーテキスト:ウォール・サーチャーは探している。マスターを守ることができる人物を。

爆走軍団 荒々プリンセス
レアリティ:R
コスト:3
ユニットカード
種族:人間
攻撃力/体力:3/3
効果:このカードが場に召喚された時、相手のユニット1体とバトルすることができる。
自分の場に他の「爆走軍団」と名がつくユニットがいる時、このカードの攻撃力と体力は1上がる。
フレーバーテキスト:お城を飛び出したお姫様は、スピード狂に目覚めた。

魔王の祝福
レアリティ:R
コスト:4
魔法カード
効果:ダメージ・カウンター
自分はデッキからカードを2枚引く。
フレーバーテキスト:今日から君も眷属の一員だ。

湿地帯の嫌われもの ドローモン
レアリティ:R
コスト:3
ユニットカード
種族:魔獣
攻撃力/体力:2/2
効果:ディフェンダー
このカードが破壊された時、相手のユニットを2体選ぶ。選ばれたユニットは次のターン終了時まで、攻撃できない。
フレーバーテキスト:ドローモンの討伐依頼を受けたがる人は少ない。

爆走軍団 ヴーア技師
レアリティ:R
コスト:3
ユニットカード
種族:人間
攻撃力/体力:2/3
効果:このカードが攻撃する時、かわりに相手のコスト6以下のディフェンダーのユニットを1体、破壊することができる。
自分の場に他の「爆走軍団」と名がつくユニットがいる時、このカードはクイック・センスを得る。
フレーバーテキスト:「俺ぁ、直すより壊す方が得意でさ」ー爆走軍団 ヴーア技師

ガーディアン・コール
レアリティ:RR
コスト:6
魔法カード
効果:ダメージ・カウンター
手札から魔王以外のディフェンダーの能力を持つユニットを2体まで召喚する。
フレーバーテキスト:人の邪魔をするのが大好きな彼らは、嫌なタイミングを見計らってラッパを吹く。
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