ハリー・ポッターと闇堕ちルートのレガ主 作:今井亜美(ハーメルンのすがた)
組分けの儀式が終わって、ホグワーツ最初の夜。
みんなが寝静まったのを確認して、メアリーは寮の地下室から飛び出した。
メアリーにとって、百年ぶりのホグワーツは中々新鮮なものだった。というのも百年前と比べて、ホグワーツは増築されていたからだ。
彼女が全く知らない通路も増えていたので、探索のしがいがあると内心喜んでいた。
とはいえ、本格的な探索はまた後日にすべきだろう。今日は行かなければならない所がある。
メアリーが指を弾くと、前方に金色に光る蝶が生まれた。
蝶はメアリーの少し前方を、彼女を導く様に飛んでいる。
その後について廊下を歩く。
蝶は迷いなく動く階段を駆け上がり、メアリーもその後に続く。
やがて3階のガーゴイル像の前でぴたりと止まった。
「ここか……うーんアルバスの事だからなあ。百味ビーンズ!」
ガーゴイル像は何の反応も示さない。
「違うか。じゃあ蛙チョコレート! バタービール! これもダメね……もっとシンプルなモノかな……ホットミルクとかココア? あと好きだったのは……レモンキャンディとか、酸っぱい系のお菓子────」
その言葉を聞いた瞬間、ガーゴイル像が動き出し、横にズレる。そしてガーゴイルのいた場所から上へと続く螺旋階段が現れた。
「流石アルバス。純血よ永遠なれ、よりずっといいセキュリティだよ」
メアリーはずんずんと階段を昇り、ノックもせずにその先の扉、校長室の中に入った。
アルバス・ダンブルドアは、手に持っていた二杯のココアを机に置き、彼女を招き入れる。
「やあアルバス、久しぶり」
「どうも先輩、ご無沙汰しております」
メアリーは促される前に席について、そのまま机に置かれていたクッキーを齧ると、これまた何も言われる前にココアに手をつける。
礼儀の欠片もない行動だったがダンブルドアは何も言わず、自身もココアを一口飲んだ。
「さて、先輩。折角会えたのじゃ、旧交を温めたい気持ちは勿論あるが……その前にホグワーツの校長として、聞かねばならん事があります」
「キミの爺口調を聞くのは新鮮だね。渋くてカッコいいな」
「どうやって……再びホグワーツに? 何故今さらここを訪れたのです? 先輩は……世捨て人となった筈」
「どうやって、は簡単だよ。勿論、再び入校リストに載るように魔法をかけたんだ……百年前にね」
メアリーの口調はどこまでも軽かった。
彼女は無邪気にクッキーを口に放り込みながら話し続けた。
「何故、についてだけど、これも簡単なんだ。私が求めてるのは百年前と同じ。つまり……力だよ」
「力……ですか」
ダンブルドアは杖に手を伸ばしていた。自らの持つ最強の杖、ニワトコの杖をいつでも振るえる様に。
「確かにニワトコの杖にも興味はあるけど、別にそれは今じゃなくていいかな。だって全盛期のとっくに過ぎたアルバスと決闘しても、弱いものいじめにしかならないでしょ? アルバスが死んだ後に貰うよ」
「ふむ……杖でないとしたら、一体何をお求めに?」
「決まってるよ、トムくんさ」
トム、という名前に、ダンブルドアの目が細まる。
「トム・リドル……ヴォルデモート卿にご興味が? しかし、彼は既に死んでおりますが」
「あははは!」
突然メアリーは心底おかしいという風に大声を上げて笑いだした。
「やめてよアルバス! 真面目な顔でジョークを言うのは! 今のキミはただでさえ面白い見た目なのに……くく、ふふふ!」
表情にこそ出さなかったが、目に涙を浮かべて笑うメアリー・オールドに、ダンブルドアは内心震えていた。それは間違いなく、恐怖から来るものだった。
彼女には、全てを見透かされている気がした。
磨き上げた閉心術も、何ら役に立っていなかった。
「キミも知っている通り、赤ん坊に負けた哀れなトム坊やは生きていて、今は今年度の闇の魔術に対する防衛術の教師であるクィリナスの後頭部にくっついてる。だから今年に入学出来るようにしたんだ」
「百年前から、今日の事を知っていたと?」
「うん、予見したんだ。デミちゃんが」
デミちゃんとはメアリーが飼っている魔法動物の一匹でデミガイズの事である。
デミガイズの目は未来を見ることが出来ると言われているが、そもそも本来、人と満足にコミュニケーションがとれる生物ではない。
それでもダンブルドアは得心がいった。
この不思議な力を持った先輩なら、何とコミュニケーションをとっても不思議じゃない。
「デミちゃんが言うには、トムくんの持ってる魔力はキミと同じかそれ以上だって。悪い奴みたいだったし、丁度いいかなって思ったんだ」
「丁度いいとは?」
「アルバスは私の力についてどれくらい知ってるの?」
「古代魔術の事でしたら、あまり詳しくはありませんな」
「じゃあ簡単に説明すると、古代魔術の力を使えば、相手の力を奪い取れるんだ。代わりに取りすぎると廃人になっちゃうけどね」
「なんと……! では先輩は、トム・リドルの力を奪う為に来たと言うことですな」
「その通り! デミちゃん曰く、今から七年の間の何処かでトムくんが完全復活するらしい。だからその時にこうチョチョイとね」
「なるほど……いや、納得しました」
ダンブルドアはようやく、目の前の先輩を理解する事が出来た。結局、この先輩は何も変わっていないのだ。自分が出会った、七年生の時の彼女と同様、貪欲に知識と力を求めているだけなのだ。
「では、先輩。ヴォルデモートを敵とするのでしたら、お互いに協力しませぬか? 先輩が力を貸してくださるのでしたら、恐れるものもありますまい」
「あははっ、やめてよアルバス! 本気で協力する気なんて無い癖に! 私を完全に信用してないから首輪を付けておきたいんでしょ?」
「! それは」
図星、だった。
力を求めるメアリーの動機は分かりやすく、そして恐ろしかった。いつ彼女が敵として牙を剥くのか、全くダンブルドアには予測出来なかった。
「私は束縛されるのは嫌だな。お互いに勝手にやろうよ! アルバスはアルバスの好きな様に、私は私の好きな様に」
先輩の言葉に、ダンブルドアはただ頷くしかなかった。動機が分かっただけ良かったと、思うしかなかった。
「それはそうと、アルバス。一つ大事な事を聞きたいんだけど」
「はて? 一体何でしょうか?」
「魔法理論の教科が無いのは、一体どういう事なのかな??(怒)」
「あ(察し)」
●純血よ永遠なれ
ホグワーツレガシーでの校長室の合言葉。厳密にはそのフランス語「トゥジュアス・ピューア」
●ダンブルドアは百味ビーンズ嫌いじゃなかったっけ?
彼は若い頃、ゲロ味に当たって嫌いになった。つまりそれまでは好きだったという事。
この作品では少なくともレガ主の知ってる一年生の間は、百味ビーンズが好きだったという設定。
●力を奪う
ホグワーツレガシーでイシドーラ・モーガナークがやってたアレ。
厳密には奪っているのは魔力ではなく感情らしい。感情にはそれ自体に強い力があるらしく、古代魔術を精神に作用させると感情を奪い取れた。奪えば奪うほど強くなれるが、やりすぎると相手が廃人になる。
闇堕ちルートなので、力の探求が目的。
トムくんからすっかすかになるまで感情を奪い取る。
●ダンブルドアより強い
そもそも魔法を覚えて一年目で大人の闇の魔法使いの大群を皆殺しに出来る実力+ドラゴンになったランロクをタイマンで倒した+闇堕ちルートなので古代魔術の力の塊を全部吸収+百年間全盛期の肉体で古代魔術を研究しつくした=最強。
●デミちゃん
デミガイズ。梟の顔した猿みたいな魔法動物。透明になる力と未来を知る力を持ってる。捕まえるには予測不可能な動きをするしかない。
●魔法理論
ホグワーツレガシーで主人公の恩師であるエリエザー・フィグ先生が教えていた授業。レガシーの時代には存在していたが、ハリー達の時代には無くなっている。この後ガチギレした主人公を二時間かけて説得したダンブルドアがいたとかいないとか。