ハリー・ポッターと闇堕ちルートのレガ主 作:今井亜美(ハーメルンのすがた)
次の日。
メアリーが目覚めると、既に寝室には誰もいなかった。
ベッドのふちに止まっていたフェーちゃんが、呆れた様にピィ、と鳴く。
「寝過ごした……!」
普段から自堕落な生活を送って久しいメアリーが夜更かしをして、翌朝に起きる事が出来るか? という答えの分かりきっている実験は、案の定寝坊という結果に終わった。
当然、マグル生まれである彼女をわざわざ起こす様な奇特なスリザリン生はおらず、一人ですやすやと眠っていた訳である。
魔法で時間を確認すると、既に朝食の時間は終了しており、急いでいけば最初の授業に間に合うだろうという時刻だった。
「うん……よし!」
寝よう!
メアリーは二度寝する事にした。
眠い時は寝る。彼女にとって当たり前の事だった。
そうして初日から朝の授業にサボりをブチかまし、昼を過ぎてようやく起きた彼女は、えっちらおっちらと支度をして、気が付けば最後の授業である魔法薬学が始まる時間になっていた。
「ハリー・ポッター……我らが新しい、スターだね」
グリフィンドールとスリザリンの共同で行われる魔法薬学の授業は、スリザリン生を一人欠いた状態で始まった。
教師であるセブルス・スネイプはハリー・ポッターを嫌っているのか、彼を指名してマグル育ちの初心者(教科書を先に読み込む奇特な生徒を除いて)には到底答えられない無理難題を出題していく。
「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じた物を加えると何になるか?」
「分かりません」
「ベゾアール石を見つけて来いと言われたらどこを探すかね?」
「分かりません」
「モンクスフードとウルフスベーンとの違いは何だね?」
「分かりません」
当然、マグル界で育ってきたハリー・ポッターには全く分からなかった。
とはいえ、魔法界で育っていても、完璧に答えられる者はこの教室では少ないだろう。
少なくとも、ハリーの友人であるロナルド・ウィーズリーには、答えがサッパリ分からなかった。
唯一自信満々に手を挙げているのは教科書を先に読み込んだ奇特な生徒、グリフィンドールの女子、ハーマイオニー・グレンジャーただ一人だった。
「ハーマイオニーが分かっている様なので、彼女に聞いてはどうでしょう?」
ハリー・ポッターの反撃にクスクスと周囲のグリフィンドール生達が笑うが、スネイプにギロリと睨みつけられてすぐに黙った。
「座りなさい」
ハーマイオニーを座らせて、スネイプはなおもハリーを弄ろうとする。
「いいかポッター、教えてやろう。アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じた物を加えると────」
「ごめん、遅れたー」
完璧なタイミングで入室してきたそのスリザリン生に、誰もが釘付けになった。あのセブルス・スネイプでさえも、ワンテンポ反応が遅れた。
「……なぜ遅れたのかね」
「寝てたからだよセブルス。やっぱり一日十二時間は睡眠を取らないとね」
およそ教師に対する態度ではなかった。
そして直前まで寝てた事は誰から見ても丸わかりだった。栗色の髪には、まだ寝癖がついたままだったからだ。
スネイプは怒りに身を震わせながら、
「スネイプ先生と呼びなさい」
と答えるので精一杯だった。
後少しでスリザリンに対する贔屓の気持ちも何処かに吹き飛んで消えてしまいそうだった。
「あはは! ムリムリ! 私、先生って呼ぶ相手は決めてるんだ!」
ぷっちん。
と、セブルス・スネイプの頭の血管が切れる音が、教室中の全員に聞こえた。
もちろん能天気に笑うメアリーには、聞こえていなかった。
「丁度いい、彼女に答えて貰おう。遅れてきても平気な程、自信がある様だ」
「うん?」
スネイプの標的になった少女の行く末は、誰が想像しても同じ結末だった。
マグル生まれの少女が答えられるわけ無いのである。
しかし実際の結末は、皆の想像していたものとは全然違ったものだった。
「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じた物を加えると何になる?」
「生ける屍の水薬だね」
「……ベゾアール石を見つけて来いと言われたらどこを探す?」
「動物の胃。ヤギとか鹿とか」
「…………モンクスフードとウルフスベーンとの違いは?」
「呼び方が違う。それはトリカブトの事で、他にもアコナイトとも言うよ」
少女は完璧に答えきってみせたのである。
さしものスネイプも、これには参って、
「…………よろしい、よく予習している様だ……大変遺憾ではあるが、遅刻は不問としよう」
「どうも」
遅刻を不問とし、着席を促した。
口笛を吹きながら空いている席に向かう、泰然自若とした彼女の態度に、一部の生徒が大いなる憧れの視線を向けたが、
「諸君、何故今のをメモしないのだ?」
スネイプの言葉で、全員が一斉に憧れを投げ出し羊皮紙にメモを取り始めた。
その後、授業は進み二人一組のペアを作って実際に魔法薬『おできを治す薬』を作る事となった。
スネイプが材料と調合の仕方を黒板に書き、それを元に作成する……のだが、ここで一悶着あった。
遅れてきたスリザリン生こと、メアリー・オールドが、調合の仕方が間違っていると言うのだ。
「いや間違ってる訳じゃないんだけど……もっと良いやり方があるよセブルス」
「ほう? 一体どうするというのかね?」
「大鍋の温度を五十度上げるんだ。回す回数は、沸騰したら右に六回、左に四回。これを三度繰り返す」
スネイプは失笑した。温度を上げれば早く済むなど、みるからに子供の、魔法薬を知らない素人の考えだった。
「そこまで言うならそのやり方で作ってみるといい。ポッターが良い助手になるだろう」
「え?」
こうして、不幸にもメアリーの暴走に巻き込まれたハリー・ポッターは、この奇妙なスリザリン生と組まされる事になったのだった。
「やあ、私はメアリー・オールドって言うんだ。よろしくね!」
「う、うん……よろしくメアリー。僕は、ハリー。ハリー・ポッター」
互いに挨拶をすませたメアリーとハリー。
ハリーはメアリーの容姿が、寝癖付きの髪とはいえとても可愛らしかったので、思わず見惚れた。でも何だかんだ言ってあのスリザリンの生徒ということもあり、警戒もしていた。
「じゃあハリーは、ヘビの牙を適当に砕いてくれる? 私は角ナメクジを茹でるから」
「うん、分かった」
それからメアリーの指示通りにハリーは動いた。
即ちヘビの牙を粉々に砕き、他の材料を用意した。
それだけで、後の複雑な工程は全部メアリーがやってくれた。
彼女の動きは一切の淀みなく、随分と手慣れている様だった。
メアリーは宣言通り、大鍋に向かって『インセンディオ』を唱えて火力を上げた。
更にお玉に魔法をかけて、自動でかき混ぜる様にした。
「これでやる事は終わり。後は三分くらい待って、火から降ろして、ヤマアラシの針を入れるだけ」
「メアリーは、魔法薬に詳しいの?」
「まあそれなりに。確かなのは、私よりウィゲンウェルド薬を作った人はいないって事」
ハリーにはウィゲンウェルド薬がどんな薬なのか全く分からなかったが、きっと詳しいって意味なんだろうな、と解釈した。
「ハリーは魔法薬は苦手そうだね」
「どうかな……でもあのスネイプは好きになれそうにないや」
「そう? まあ分かる気もするな。セブルスはグリフィンドール生、特にキミの事を嫌ってそうだしね」
「キミはグリフィンドールが嫌いじゃないの?」
「寮が違うだけで人を嫌いになるって、バカバカしいと思わない?」
「……キミって不思議だね、メアリー。本当にスリザリン?」
「もちろん、スリザリンだよ。百年前からね」
話している内にお玉が自動で動いたのか、薬は完成していた。結局メアリーの言う通りだった。彼女は誰よりも早く薬を完成させたし、その出来栄えはスネイプが何も言えなくなる程完璧なものだったのだ。
スネイプの薬の採点中、ネビル・ロングボトムが周囲に不思議なパントマイムを披露していた。
ヤマアラシの針の入った皿を大鍋の前に持っていくのだが、鍋の上についた途端、皿が全く動かなくなるのである。
「あ、あれ!? 何で……何でぇ!?」
そのおかしな動きに、周りのグリフィンドール生からの視線がどんどん集まった。
クスクスと周りが笑う中、ようやく薬を完成させたハーマイオニーがそれを見て、すぐに気付いた。
「ネビル! アナタ順番を間違ってるわ! ヤマアラシの針を入れるのは、大鍋を火から降ろした後よ!」
「ええ!?」
ネビルが慌てて皿を戻そうとすると、これまた不思議な事に、あれほど動かなかった皿があっさりと動いた。
そうして、鍋を火から降ろして改めて皿を持っていくと、今度は何事もなく針が中に入るのだった。
●スネイプの演説が入ってないやん!
ごめん! 長いからカットした!
●二度寝
百年近く自堕落な生活をしてた奴がいきなり時間や規律を守れると思うか?
●おできを治す薬の作り方
メアリーの言ったやり方は、本作品オリジナル。作者が5秒で考えた。
●ウィゲンウェルド薬
ホグワーツレガシーにおいての回復薬。ゲーム中大量に欲しくなる為、誰もが量産していただろう。
慣れてくると必要なくなり、代わりに集中薬やマキシマ薬、噛み噛み白菜が欲しくなる。
●ネビルのパントマイム
もちろん、レガ主の仕業。古代魔術の力を使って皿とその上の針を止めていた。