ハリー・ポッターと闇堕ちルートのレガ主 作:今井亜美(ハーメルンのすがた)
暇だった。
ホグワーツで過ごす日々に、メアリーは既に退屈を持て余していた。
なんせ習う授業内容が、一年生の物なのだ。
メアリーは今すぐOWLどころかNEWT試験を受けても全科目で最高であるO(優)を取る自信がある。
そんな彼女にとって、一年生レベルの授業なんて、出席するだけ全くのムダと言えた。
なので基本的に朝の授業は眠ってサボり、昼の授業だけ出るのが日々のルーティンになっていた。
当然すっ飛ばされた教師陣は怒るのだが、目の前で、ネズミを完璧な金の針に変えたり、二枚の鳥の羽にフォークダンスを踊らせたり、箒で曲芸飛行を披露したりして見せれば、みんな何も言えなくなってしまうのだった。
「いえ、それとこれとは別の事ですミス・オールド! スリザリンは五点減点!!」
「あれ?」
……マクゴナガル教諭など一部の厳しい先生は、実技が出来ていても出席不足を理由に減点した。
しかしその分を実技の結果で稼いでもいたので、実質プラマイゼロなのだった……まあ、大体は。
そうして、自由な学校生活を手に入れたメアリーは一ヶ月もしない内に寮生活に飽きていた。
スリザリンに入ったのは失敗だったかもしれない。
まさかここまで純血主義が浸透しているとは。
百年前のスリザリンにも純血主義自体はあったし、風当たりの強い生徒もいたが、少なくとも自寮の人間に対する仲間意識は持っているというのが大半だった。
だというのに実に嘆かわしい事に、この百年後のホグワーツにおけるマグル生まれのスリザリン生に対する風当たりは、日に日に強くなっていった。
まだ明確なイジメこそ起きていないものの、それも時間の問題かもしれないなーとメアリーはどこまでも呑気に構えていた。
一年生だろうと七年生だろうと、メアリーにとっては等しく子供同然なので誰がどんなイジメをしてこようと全く気にしなかった。寧ろ微笑ましいとも考えていた。むしろ暇だから、いっその事何かしらのアクシデントが起きて欲しいとまで考えていたが……。
閑話休題。
とにかくそんな状態だったから、友人もいないメアリーの二度目の学生生活は灰色に染まっていた。
早くトムくんが復活して、終わってくれればいいのだが、まだまだ復活する素振りさえみせていなかった。
そんな暇を持て余した状態で一か月以上の時が過ぎ、遂にハロウィンの日が訪れた。
今日の食堂はかぼちゃ尽くし。朝から晩までかぼちゃONかぼちゃ。
夕食時にはハロウィーンパーティーが行われ、盛大に祝われる事となる。
「貴方、今日も寝てたのね」
「え?」
スリザリン寮寝室。
ハロウィンだろうと一切お構いなし。今日も今日とて惰眠を貪り昼まで寝ていたメアリーだったが、そんな彼女が起きると、珍しく声を掛けられた。
「今日はハロウィンよ? 知らないの?」
「知ってるけど、眠いものは眠いんだよ。それでキミは? 多分、初めて話すと思うんだけど」
「同室の名前くらい覚えなさいよ……ダフネよ。ダフネ・グリーングラス」
ダフネはサラリとした金髪に病的なまでに白い肌、整った顔立ちを持つとても美しい女の子だった。ただ目の下の濃い隈だけが妙に印象的で、薄幸の美少女という言葉がよく似合っていた。
「そっか。私はメアリー、よろしくね」
「ええよろしく」
「それでキミは何でまだ寝室に? みんなと遊ばないの?」
「体調が優れなくてね。医務室に行くほどじゃないから、ここで休んでたの」
「体調が? それって呪いのせい?」
「知ってるの? 意外だわ。マグル生まれなのに、グリーングラスの血の呪いを知ってるなんてね」
「血の呪いって?」
「知ってるんじゃなかったの? グリーングラス家の女は、呪われて短命なの。私もきっと早死するわ」
「血の呪いね……解呪出来ないの?」
「無理よ。呪いは先祖代々続いてるの。そして毎世代治療法が探されて、みんな諦める。どんな癒者にも癒せやしないってね」
「だろうね……だってその呪い、古代魔術だもの」
「え? 古代……なに?」
メアリーにはダフネの身体の中に光る古代魔術の呪いの痕跡が、ハッキリと見えていた。
「それを癒せるのは、世界で私一人だけって事。キミは運がいいね。それ、私が治してあげてもいいよ」
「治す? 貴方が? 冗談でしょ?」
「冗談かどうか、試してみる? その代わりもし本当に治せたら、お願いを何でも一つ聞くってのはどう? もちろんダメだったら私が何でも一つお願いを聞いてあげる」
「……そこまで言うなら、やってもいいわ。危ない事はしないって約束出来るなら、試してもいい」
「約束するよ、ダフネ。私を信じて! 少しも痛くしないから」
メアリーは杖を取り出すと、ダフネの胸にその先端を押し付けた。
「んっ……」
「動かないで、ジッとしてて……」
メアリーが集中すると、それに合わせて杖が光りだす。赤と青の入り混じった様な色の光がダフネの身体から溢れ出した。
「なっ何が起こって────!?」
ダフネは混乱していた。
杖が光ってから、どんどん体調が良くなってきていたからだ。
やがて赤と青の奔流が止まると、メアリーはダフネの身体から、赤黒い古代魔術の魔力を抜き取った。それこそ、呪いの核となっている物だった。
メアリーは抜き取った魔力を嬉々として見つめて、
「それじゃあ、いただきます」
平然と口に入れ、一口で食べきった。
「ご馳走様……うん、中々イケるかも」
目の前で満足気に頷く同級生に、ダフネはもう何も言えなくなってしまった。
呪いが治って喜ばしいはずなのに、目の前の出来事が本当に現実なのか分からなくなってしまった。
本当は遂にイカれた頭がみせた、都合の良い妄想なのではないか。だってそうだろう? 世界中のどんな名医にも治せない呪いが、こんなマグル生まれの一年生に治せるだなんて、そんなの誰が信じる?
「現実逃避するのは勝手だけど……約束忘れてない?」
「あっ……やく、そく」
そうだ、自分は約束してしまった。どんな願いでも一つ聞く、と。こんな事が出来る人間が要求してくるもの。ダフネの頭の中はたちまち恐ろしい想像で一杯になった。
微かに震えるダフネと対照的に、メアリーはいつもの軽い調子で告げる。
「私と一緒にハロウィンパーティーに行く事! これが私のお願いだよ」
唖然とするダフネに、丁度暇してたんだ! とメアリーはケラケラ笑って言った。
そうしてメアリーが一年生になってからホグワーツで過ごす初めてのハロウィンは、ダフネと一緒に過ごす事になった。
暫くダフネは無言でメアリーの後ろをついて回るだけだったが、食堂でかぼちゃジュースを飲み干してからようやく口を開いた。
「その……ありがと。ここまで歩いても、全然苦しくないし……たぶん、本当に、治ってるから」
「どういたしまして。気にしなくていいよ、もうお願いも叶えて貰ったしね」
「でも、どうやって? グリーングラスの血の呪いは誰にも解けないのに!」
「さっきも話したけど古代魔術が関係してるんだ。古代魔術の使用には特別な才能が必要なんだけど、ここだけの話、私はその専門家でね! ただ、あんまり人に話す事じゃないから内緒にしておいてくれる?」
「内緒ですって? お父様にこのことを伝えたら、山程のガリオン金貨にマーリン勲章だって授与されるわ!」
「それでもだよ。マーリン勲章なんて別に要らないもの。ガリオンは、ちょっと欲しいけど」
「貴方って……変わってるのね」
「よく言われる」
「ねえ……その、お願いがあるんだけど」
「お願い? なあに?」
「アストリアの……妹の呪いも、解いてくれないかしら? 対価が必要なら、私が何でもするわ。だから────」
「ああ勿論OKだよ。ただ、今私はホグワーツから離れたくないんだ。だからキミの妹がホグワーツに入学してからになるけど、それで良ければ」
「ええ、ええ。それで良いわ。ありがと……」
その時、大きな音を立てて食堂の大扉が開いた。
全員の視線がそこに集まる中、中心に立っていたのはボロボロのクィリナス・クィレル教諭だった。
「と、トロールがっ!! 地下室に……! お伝えしなければとっ……!」
そこまでが限界だった様で、クィレルは倒れて気絶してしまった。
(遂に来たぁッ!)
とメアリーは狂喜した。
ダフネと過ごすハロウィンも悪くはなかったが、やっぱりホグワーツはこうじゃないとっ! とガッツポーズした。
勿論、これがクィレルの、ハロウィンに合わせたお茶目なイタズラである事はメアリーには分かっていた。
分かった上で、イタズラなら盛大に乗ってあげようとそう考えた。
「行くよ、フェーちゃん!」
「ピィ!」
頭の上の不死鳥に指示を飛ばし、付き添い姿くらましで地下室に飛ぶ。
「え? メアリー? 何を────」
突然隣のメアリーが動いた事にビックリしてその手を掴んだダフネ・グリーングラスを連れて。
●血の呪い
誰にも解けないのは、古代魔術だったからなんだよ!
ナッナンダッテー!?
原作に詳しい情報が書かれてないのが悪いんだ。
私は悪くない!
●ダフネ・グリーングラス
スリザリン系二次創作御用達の金髪美少女。
原作描写はほぼ無いに等しい。
●不死鳥
ずっと頭に乗せてる。隠す気ゼロ。
だけど殆どの人は不死鳥を飼ってるなんて信じてないので、ただのオウムだと思ってる。
ゲームだと結構大きいが、映画でもシーンによってデカかったり小さかったりするので多少大きさを変えられるという事にする。今は頭に乗るくらい小さい。魔法生物だし何でもありで良いでしょ……?
●アストリア
将来マルフォイと結婚する人。
まじでそれ以外の情報が無い。
血の呪いの影響で短命だった事くらい。
●クィレルじゃなくトロールに向かう
別にレガ主はトムくんが復活してもいい、というより復活してくれないと目的を果たせないので。
今のトムくん相手にするくらいならトロール相手にした方がよっぽど楽しいよ!