ハリー・ポッターと闇堕ちルートのレガ主 作:今井亜美(ハーメルンのすがた)
トム・リドルの復活の兆しが全く無いまま、ホグワーツで過ごす時間はあっという間に溶けていき、クリスマス休暇の季節となった。
休暇中同室の人間が全員家に帰ってしまったので、メアリーは寝室を独占する事が出来た。
手始めに自分のベッドじゃなく、ダフネのベッドで寝たりしてみた。
これは中々効果覿面だった。
ベッドに入った瞬間、全身にダフネの良い匂いを感じて、いつもよりぐっすり眠る事が出来た。
メアリーは帰ってきたら一緒に寝るのもいいかもしれないなーと呑気に考えた。
ゆっくりと起きたメアリーは、他人のベッドの上でボリボリとビスケットを齧ったり、ジュースを飲んだりした。
やがて食べ終えたので、おかわりを貰いに食堂に行こうと、部屋を出る。
「あれ? 夜だ」
そう、ずっと寝ていた彼女は知らなかったが、もうすっかり夜になっていたのだ。
スリザリン寮は城の地下にあるので、時間の経過が非常に分かりづらい。
道理でいつもより多く寝た気がした訳だと、そう思いながら、折角なので深夜のホグワーツを探検してみる事にした。
深夜のホグワーツ探検スポットは幾つかあるが、城内で最も有名なのは、やっぱり何といっても図書館、閲覧禁止ゾーンにある禁書だろう。
久しぶりに行ってみるかと彼女は図書館に向けて歩き出していた。
図書館に堂々と侵入した彼女が見たのは、空中に浮かぶランタンだった。
ランタンを持っているのは白く可愛らしい子供の左手。
メアリーはすぐに、目くらまし術も知らない誰かが透明マントを使っている事に気が付いた。
その見知らぬ誰かは、閲覧禁止ゾーンの扉前までやってきて止まった。
そこに掛けられている分厚い鍵が、突破出来なかったからである。
「鍵が……そりゃそうだよな……鍵くらいかかってる」
「アロホモラの出番だね」
「無理だよ、まだ鍵開け呪文は知らない……って誰!?」
透明マントを着ていたハリー・ポッターが後ろからの声に驚いて振り返ると、にこやかに笑う見知ったスリザリン生がいた。
「やあ、ハリー。キミも探検? 私も丁度禁書の閲覧に行こうと思ってたんだよ」
「メアリー……脅かさないでくれ! でもどうして僕がいる事が分かったの?」
「あれで隠れてたつもり? ランタンを外に出してたらバレバレだよ……暗いならルーモスを唱えなきゃ」
「ルーモス?」
「知らないの? なら教えてあげるからほら、杖を出して」
ハリーは言われた通り、透明マントを脱いで杖を出した。
メアリーはハリーの背後に立ってハリーの杖腕を掴む。
必然的に、ハリーの身体に密着する体勢になった。
「メ、メアリー! ちょっと近いよ! これじゃあ杖が振れない!」
「いいから。大丈夫だから、集中して。いい? 杖の振り方はこうだよ」
メアリーが杖を動かす。
ハリーは正直、後ろから伝わる柔らかく温かい感触を如何に考えない様にするかで頭がいっぱいだった。
「呪文はルーモス。さあ、唱えて……」
耳元から聞こえる囁き声。
「ル、ルーモス!」
ハリーが邪な気持ちを振り切る様に唱えると、杖先から光が生まれて、周囲を照らし出した。
「これでランタンは要らないね」
メアリーはハリーから離れて、ランタンを消滅呪文で消し去る。
ハリーはやっとメアリーが離れた事で、ホッとしたような、残念な様な不思議な気持ちになった。
「じゃあ行こっか」
「待って、メアリー。鍵がかかってて────」
「アロホモラ」
カチャリ、と音を立てて閲覧禁止ゾーンの扉に掛かっていた鍵が開く。
何も言わず中に入っていくメアリーの後を、ハリーは慌てて追いかけた。
「ねえ、メアリーは何しにここに来たの?」
「私はただの探検だよ。ハリーは何か探してる本でもあるの?」
「えっと……ニコラス・フラメルの本を探してるんだ」
「錬金術に興味があるの? 賢者の石を作りたいとか?」
「え? 賢者の……なに?」
「賢者の石だよ。世界で唯一、フラメルさんが作った不老不死になれる石」
「それだよ、メアリー! ニコラス・フラメルは賢者の石の製作者だったんだ!」
図らずもハリーは、禁書を読む前に答えを掴んだ。
メアリーは突然大きな声を出したハリーに目を丸くした。
「そこにいるのは誰だッ!!」
大きな声に気付いたのか。
ホグワーツ管理人のアーガス・フィルチが鋭い声を上げてこちらに駆けてきた。
「マズイ……! メアリーこっち!」
「わっ」
ハリーはメアリーの腕を引き、透明マントを広げた。
マントの大きさは、子供が二人隠れるには十分だった。
「やばい、杖が光ったままだ!」
「貸して……ノックス」
メアリーが唱えると、杖の明かりがふっ……と消え、辺りに暗闇が訪れた。
「そこにいるのは分かってるぞ……確かに声が聞こえたからな……!」
周囲をうろつき始めたフィルチの横を透明マントがずり落ちないよう気を付けながらすり抜けて、ハリーとメアリーは何とか外に出た。
「危なかったね……見つかるかと」
「シッ……まだ誰かいるよ」
メアリーがハリーの口に人差し指を押し付けて黙らせる。
二人の正面の廊下には、クィレルとスネイプがいて、何かを話し合っている様だった。
「セ、セブルス……わ、私は────」
スネイプが、壁際にクィレルを押し付けて、低い声で問う。
「私を敵に回したくはないだろう……?」
「な、な、何の話か……さ、サッパリ……」
「何の話をしてるんだろう……?」
「待って、ハリーあまり近づくと……」
バレる……そう告げる前に好奇心から、ハリーの足が前に動く。
反対にメアリーがその場に留まろうとした事で、透明マントが不自然に揺れ、音を立ててしまった。
「何だ……?」
尋問中のスネイプでさえ、その不自然さに気が付きこちらに手を伸ばした。
ハリーは息を呑んだ。メアリーはこの状況から抜け出す面白い方法を一つ思いつき、早速実行してみた。
「よし……ハリー!」
「んむ!?」
メアリーはどこからか小瓶を取り出して口に含むと、ハリーにキスをする。
ハリーはこの場の状況についていけず、頭が真っ白になった。ただ喉に送られる何かの液体を無意識で飲んだ。
スネイプが透明マントを剥ぎ取ると、そこには一羽の不死鳥だけがいた。
「ピィ!」
不死鳥は鳴いて、床に落ちた透明マントを掴むと何処かに姿くらましで消えてしまった。
「ど、ど、どうして不死鳥がこんな所に……!?」
「ふむ……今のは確か、メアリー・オールドのペット……」
「先生方、ここにおられましたか!」
そこにフィルチがやってきて、閲覧禁止ゾーンから声が聞こえた事を二人に話した。
「なるほどこちらは囮か……目くらまし術で透明マントを作りペットで注意を逸らした……閲覧禁止の棚にいたのなら、まだそう遠くは無い」
スネイプはそう呟き、マントを翻す。
スネイプがクィレルとフィルチを伴ってその場を立ち去ってから、少しして。
ハリーとメアリーの二人の姿が、ゆっくりと廊下に出現する。
そうしてからようやく、メアリーはハリーの唇から離れた。
二人の口の間を、どちらのものともとれない液体が繋いでいた。
「い、今……な、何をどうやって……ぼ、僕にキスしたの!?」
「透明薬……飲むと身体が透明になる……はあ……ふう。間一髪だったね」
「キ、キスしたの……キミが初めてだ」
「私にとってもね。パフスケインやニーズルとは何回もしたけど、人間は初めて。ファーストキスを奪っちゃってごめんね? 私が相手でいやだった?」
「う、ううん。そんな事ないよ。メアリーが相手で良かった」
ハリーは割と心からそう思っていた。
メアリー・オールドは確かにちょっと、いやかなり変わった所もある相手だが、見た目だけは本当に可愛い女の子だったからだ。
スリザリン生ではあるものの純血主義者でもないので、ハリーはロンの様に嫌ってもいなかった。
そう考えれば、メアリーが相手だったのは全く悪くない。むしろ自分が相手で良かったのかと言いたいくらいだった。
ハリーの言葉を聞いて、メアリーは微笑む。
「キスって凄いね。頭がふわふわして、幸せになる。天然のフェリックス・フェリシスだよ。ねえ、もう一回しよ?」
「え? あ────」
メアリーは返事も聞かず、ハリーの顔を掴んで再びキスをした。
二人が寝室に戻ったのは、それから暫く経ってからの事だった。
●他人のベッドの上に飲食物を持ち込む
人間の屑。
ちゃんと許可を貰ってからにしようね。
●ニーズル
猫っぽい魔法動物。敵を見抜く力がある。
見た目がめっちゃ可愛い。
髭が高価らしく、杖の芯にもなる。
ホグワーツレガシーでは無理矢理抜いて売ろうとしていた生徒がいて、レガ主とその友人のポピーが止める、という一幕がある。
猫との異種交配が可能で、後にハーマイオニーのペットになる猫『クルックシャンクス』はニーズルとのハーフだったらしい。
●透明薬
その名の通り、飲むと透明になる薬。
ホグワーツレガシーだと飲めば目の前にいても敵にバレず、ステルスキル(ペトリフィカス・トタルス)出来る。
●フェリックス・フェリシス
幸運薬。
飲むとその日一日は幸運が訪れ、何をやっても上手くいくとかいうチートアイテム。何で戦争で誰も使わなかったのか本当に謎(一応スラグホーンが飲んでた疑惑があるけど)。
調合に6ヶ月かかるこの薬を、ホグワーツレガシーでは何と30分で量産可能。(ゲーム内時間換算。一日48分らしいので。実際の調合時間は1分)
きっと凄く強いのかな……とプレイヤーをわくわくさせておいて、その効果は大きい宝箱が地図上で見える様になるだけという悲しいアイテムだった。
●キス
この作品はおねショタだったんだよ!
ナッナンダッテー!?
ぶっちゃけこの展開に一番戸惑ってるのは作者なんだよね。
なんかこのババア、勝手にキスしやがったぞ……ショタにキスとか邪悪すぎるだろ……!
なにやっとんじゃこのクソボケがーっ!
ハリー早く気付け! そいつは人間の屑だっ!
恐らくゲームでのセバスチャン同様、闇の魔術に傾倒しすぎたせいで、感情の制御が利かなくなってると思われる……。
なおこの後、レガ主は無事キス魔になったとさ。
●こっそりキスを見てた人
「先輩……若い燕にも程がありますぞ……(ドンビキ)」
●みぞの鏡「あれ? 出番は?」
人間が幸せになるのに、鏡なんて要らないんだ。そうでしょ、アルバス?
愛だよ、愛。だからキスしよ!
アルバス「アバダケダブラ!」