The Elder Scrolls V:Skyrim-Pokemon Edition   作:楽園の主

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前回とまとめて書いたけど長くなったので二分割して投稿します。



第4話 ─鉱山に蔓延る盗賊戦─

やはりというか、入口にポケモンが1匹。山賊だろうか、バルチャイが居た。

おそらく賊の見張り役だろう。

 

「気を逸らしててね。」

「はい?」

 

返答するが早いか、さっと走って消えてしまった。恐らく、視界外から攻撃を仕掛けるつもりだろう。

それなら、わざわざ姿を現すことは無い。

どこからからと様子を伺っていると、どうやら上から仕掛けるようだ。

なら視界を下に、と思い、弓に矢を番える。

ノラに正確に狙える技量はないが、それで構わない。

重要なのは気を逸らすことだから。

欠伸をして、目を細めたところに、ノラは矢を放つ。

 

「んお……!なんだ!?」

(外した、けど。)

 

本来は足元へ撃とうと思っていたのだが、それは外れ、バルチャイの羽を掠めて後方へ。

何が飛んできたか、と後ろを見たあと、射撃ポイントであろうノラの方を向いて警戒した。

意識はこちらへ向いている。ダメ押しで、わざと草をガサガサと音を立てた。

ひゅっ、とシャルナは鉱山の入口がある岩の上から飛び降り、バルチャイを狙う。

 

「何もんだ──ぐあっ!」

 

飛びかかり、地面に叩き伏せた後、短剣の柄で殴った。

さらに追撃で、かわらわりをするように顔を攻撃。

バルチャイは気絶した。

シャルナは周囲を警戒、仲間が居ないことを確認してノラに合図を送った。

 

「ナイス。」

「いえ、こちらこそありがとうございます。」

「かったいなぁ。もう少しフレンドリーでいいのに。」

 

小さな声でそう会話しながら、シャルナはバルチャイの持っているものをスっと回収した。

 

(まぁ、相手は賊だしいい、のかなぁ……?)

 

その様子に苦笑いし、2人は鉱山へと入る。

キイ、と扉を開くと薄暗いが、松明を灯しており、真っ暗だ、ということはない。

地形的にそこそこ急な下り坂になっており、ノラとシャルナは滑らないように、音を立てないように下っていく。

ふと、下を見ると細いロープが張っていた。

ちら、とシャルナを見ると彼女もノラの方を見ていた。

ワイヤートラップのようだ。引っかからないように跨いで通行する。

道は左に続いており、右側は窪んでいるだけで道とはなっていないようだ。

道は途中からは木製の橋となっており、どうやら水場の上になっているようだ。

 

「誰かが迷い込んでくる心配は?入口が隠されてる訳じゃないからさ。」

「また言ってるのか?見張り番がいると言ってるだろ。」

 

2人はその声が聞こえた瞬間、右側の窪みの方へと隠れ、姿勢を低くした。

 

「仕掛けた落石の罠のことも忘れてもらっては困る。まぁ心配しても仕方ない、少し休め。もうすぐお前の見張り時間だし、居眠りされたくないからな。」

「ああ……そうさせてもらうかな。」

 

しばらくすると、足音とともに橋に1匹のズルッグが現れた。

どうやら、橋は真っ直ぐだけでなく、横にも分岐しているようだ。

先については、こちら側からの視認性が悪く、不明。

 

「……罠を起動して、こちらに寄せるのはどうでしょう。」

 

例えば橋の上で戦うことになったとしよう。

相手の数が分からない以上、声がしなかっただけでふたりとは限らず、まだ多数いる可能性もある。

そうなると、前だけでなく横にも分岐しているなら囲まれる可能性がある。

と、なれば後ろに撤退路がある状態で、相手をこちらへと誘導した方が敵は一方向から来ることになって、逃げる場合も逃げやすいのではないか、とノラは考えた。

 

「名案。ズルッグはノラがお願い。私は後続1匹を。」

「了解。」

 

ニヤ、のシャルナは笑い、近くにあった木材を投げ、ワイヤートラップを起動。落石が起きて音を立てた。

 

「!誰だッ!」

 

そう言ってズルッグが走ってきた。

ズルッグの後ろを取るために暗く窪んだ場所に息を潜める彼女ら。

 

「な、なんだ!やっぱり不安が当たったじゃないか!」

 

休憩していたであろうもう1匹、ベロバーが走ってきていた。

低い姿勢で、力を溜めているシャルナ。ノラも、心の準備をしていた。

 

(見られないように、後ろから──)

 

通り過ぎた、その瞬間に、ノラは飛び出した。同時にシャルナも、まるで射出されたかのようにベロバーの方へと襲いかかる。

ノラの左手には砂、右手には大きめの石。

まずは先んじて、石を投げながら腰に差した斧の柄を握る。

ゴッ、と鈍い音がしてズルッグの頭部に命中。これで気絶すればよし。だが。

 

「ッてェな!なん──」

 

そう甘くはない。だが、想定済み。振り返った瞬間、顔に砂を投げた。

 

「うぇ、目が!」

 

これで姿は視認されていないはずだ。

走りより、ズルッグの腕と、伸びた皮を掴み、回転しながら、遠心力を利用して思いっきり壁に叩きつけた。

 

「ぐへっ!!」

 

地に落ちそうなズルッグを、さらに斧の柄で頭を殴った。

 

(こ、これでダメなら次、次は!?)

 

なにせ、ポケモンとなんてまともに戦ったことがない。

気絶させるにはどうしたらいいかなんぞ分かるはずもない。

これでダメなら首を絞め、意識を落とすか。

そう考えたが、人間とは全然違う体だけに、それで意識を失うかわからない。

それでも窒息なら狙えるか、と考えていると。

 

「か……へ……。」

 

そう聞こえたが最後、しん、と静かになった。

息を荒くさせるノラ、なんとかはなったのだろうか。

ふら、とふらついてぺたん、と座ってしまった。

 

「こっちは終わ──え、大丈夫!?」

 

大きな声では無いが、心配した声でノラの方へと走りよった。

 

「い、いえ。大丈夫です。少し、その、躓いただけで。」

「大丈夫ならいいけど……。」

 

そう言いながら手を差し伸べるシャルナ。その手を借りて、ノラは立ち上がった。

 

「とりあえず……これでいっか。」

 

ワイヤートラップに使われていたロープを使って、ベロバーとズルッグを縛ることにしたようだ。

気絶したベロバーを引きずって連れてきて、2匹の手と胴体を縛った。

その間、しばらく経つがこちらに人が近寄ってくる気配はない。

 

「……ねぇ、ノラって、あんまり戦ったことない?」

「そう、ですね。実は。」

 

実際、彼女は戦闘経験は皆無だ。

ヘルゲンでは殺らなければ殺される、という程の状況だった。

今は違う。目的があるとはいえ、確かに攻撃しなければ何をされるか分からないとはいえ。

能動的に、自分から手を出している。

相手が人間ではない、ということを差し引いても経験の浅い彼女にとって、精神ダメージが大きい。

 

「でも、大丈夫です。」

 

しかし、この世界は甘いことを言ってられる世界ではない。

覚悟はいずれしなくてはいけなかった。

出来なければ、簡単に死んでしまう世界だ。

ぱちん、と頬を叩いて気合いを入れ直した。

シャルナとノラは彼らの所持品を頂戴する。

いくらかの金と、ベロバーからは棍棒をもらった。

斧がある以上、そちらの方が攻撃としては適しているが、投擲武器としてなら使えるだろう。

ベロバーはさらに短剣を持っていたが、それはシャルナに譲った。

さて、先に進もうと橋へと向かうとそこは左右と前に道が伸びていた。

右は下へ階段が伸びており、地面に続く。

先には焚き火とその上に組木、鍋。隣には寝床があった。

ここで休憩しながら見張りを交代するのだろう。地面からは水場につながっているため、さらにその先は無く、行き止まりだ。

左は跳ね橋だがそれは降りておらず、先にはすすめない。

前に進むしかないようだ。

前へ進めばそこはすぐに洞窟に戻り、左向きに上り坂が続いていた。その逆は行き止まりで、岩場。恐らく鉱石を掘り進めている場所だ。

上り坂を登りきると少しの高台となっており、そこは床は壁が木で補強され、机や椅子、棚といった誰かがそこで食事をしたりするであろう場所があった。

1面の1部が大きく穴が空いており、そこから跳ね橋と、先程ノラたちが戦っていた場所が見えた。食事しながらも監視できるように、ということだろうか。

その部屋の隅には、ひとつのレバー。それを倒せば、跳ね橋が降りた。

これで、先に進める。

 

「跳ね橋が降りた……?」

「いや、でも衛兵を1人立たせていたはずだ。」

「用心しておけよ、他にも誰かいる気配がする。入口を見ておいてくれ、俺はこの辺を見てみる。」

「おうよ。」

 

2匹のポケモンが奥から現れた。ズルッグとニャースだ。

ニャースの体毛は灰色で通常よりも髭が曲がっている、オリジナルとは違うあくタイプの姿だ。

 

(見事にあくタイプばかり……偏見があるわけだ。)

 

とはいえ、偏見があるからこそ生き辛くなりこういった賊になってしまうのか、賊が多いから偏見が多いのか、とどちらかと断言は出来ない。

シャルナはこちらへ来たと同時に攻撃を仕掛けられるよう、部屋の入口横の壁に張り付くように隠れる。

ノラは、弓を構え、矢を番える。

 

(ズルッグは格闘タイプでシャルナにとって弱点をつかれるかもしれない相手、狙うなら先にそっちだ。)

 

指を離し、射撃。一直線に飛び、その矢はズルッグの肩を貫いた。

叫び声を上げ、そのまま橋から落ちて水場へと落ちていった。

射撃ポイントを見抜いたニャースはこちらへ来るべく、走り出す。ノラは次の矢を番えるが間に合わなかった。

だが、後ろにはシャルナがいる。

この部屋へと入って来たニャース、ノラへと飛び掛ろうとした瞬間に背後から拘束、そのまま首を絞め、意識を飛ばした。

一旦そこをシャルナに任せ、水場に落ちたズルッグを仕留めにノラは走る。

橋から階段を降りて、水際へ。ちょうどズルッグが息を切らせながら上がってきたところだった。

 

「ま、待ってくれ!助け──」

 

聞くと、覚悟が揺らぐ。そう思って、斧を振り下ろす。

刃の方では無い方で頭を思いっきり殴った。

覚悟はしているが、それは無闇に命を刈り取るという意味では無い。

気絶を狙った一撃は、成功した。

そのまま水の中に浸かって死んでしまっても困る。

半身だけ水に浸かったズルッグを陸へと引きあげて、放置した。矢が刺さって血が出ているが、それを手当するという程の余裕は無い。

それで死んだら、ズルッグの運が悪かっただけだ。そう思うことにした。

橋を渡ると、再び洞窟になっていた。

壁から光が指していたため、そこをそっ、と覗くと中は部屋になっていた。

どうやら道の途中から入れる部屋が壁の向こうにあるらしい。そこには、眠っている賊が1匹、コノハナが居た。

起こさないようにそっ、と道を行く。

道を曲がると、右にも道があり、右側が先程見えた部屋につながっている。

左を向けば鉄格子の牢屋が複数あった。奴隷でも、収監していた過去があるのだろうか。

右側の部屋へと向かい、扉代わりだろう鉄格子を静かに開ける。

キィ、と小さく音を立てるが起きる様子はない。

ちら、と隣の棚を見れば道具がいくつかあり、比較的小さなメイスも立てかけられている。

恐らくこのコノハナが使っている武器だろう。

斧を腰元のベルトに付け、メイスを頂いたノラ。

手に取ると、少し小さく軽いことがわかる。コノハナサイズのためだろうか、ともかく軽いことはありがたいことだ。

さらに棚にはロープと、服があった。

 

「……んお……なんだよ、今休んで──んごっ!?」

 

服で轡を作って口に咥えさせ、手足と体を椅子とともにロープで縛る。

しかし、コノハナもただやられる訳には行かない、と頭の葉を勢いよく、切り裂くように振り回す。

シャルナとノラはしゃがんでこれを回避。直後に後ろの壁に亀裂が入った。

おそらく、エアカッターだろう。これ以上撃たれても困る、とシャルナは先程のベロバーから"もらった"短剣で頭の葉を突き刺し、壁に縫いつけた。

無理やり動かそうものなら大きく傷ついてしまい、治るまではかなりの期間を要するだろう。

コノハナは動けない。

 

「んん!!んんん!!!」

 

ガタガタと椅子の上で睨みながら暴れるコノハナ。騒がしいことこの上ない。これでは見つかってしまう。

シャルナは自前の短剣を取りだし、脅して静かにさせようとした。

 

「待ってください。」

 

彼が騒いだとしても、ノラ達がその場に居ないなら意識をそちらに向けさせるだけになり、こちらの隠密性は上がる。

むしろ、騒いでもらって敵を呼び、背後をつく事は出来ないか、とシャルナに聞いてみた。

 

「なるほど、やってみよっか。」

 

急いでその場を離れ、近くの岩場に隠れる。近くの松明を遠くに投げ捨てて暗くし、隠密性を上げた。

 

「いざとなったら、テレポートよろしくね。」

 

シャルナは小さな声でノラに伝える。

 

「…………。使、えません。」

「え?」

「「…………。」」

 

目を逸らしながら言うノラ。一瞬、時が止まった。

 

「え、マジカルシャインは?」

「使えません。」

「サイコキネシスは!?」

「使えません。」

「ねんりきは!?ムーンフォースは!?マジカルフレイムはサイドチェンジはサイコパンチは魔術とか魔法は!?」

「最後のいくつかに関しては知りもしませんが全部使えません。」

 

全部小さな声で言っていたが、平時ならシャルナは大きな声で叫んでいたことだろう。

もう全部言うしかない、とノラは暴露した。

頭を抱えるシャルナ。

 

「くぅぅううアテにしてたのに……!」

「す、すみません……。」

「や、いいよ。事前に話を聞いてない私も悪い、過ぎたこと言っても仕方ないよ。」

 

げんなりとして言うシャルナに、ノラは心を痛めた。

シャルナは頭数を増やす以外にも考えあってサーナイトであるノラを誘った。

もちろん、装備を整えるにあたって交渉しやすいように、というのもそうだが、タイプ相性のことだ。

マスカーニャである彼女は賊には多い、格闘タイプや毒タイプには相性が悪い。

それに対してエスパー技やフェアリー技で対処出来るサーナイトは相性補完として悪くないという訳だ。

この2人ではむしタイプに弱くなる、かと思えばサーナイトはマジカルフレイムを始めとした炎を使える個体も多い。

さらにポケモンの技以外にも発展した学問、魔法や魔術と呼ばれるものもある。

エスパータイプやゴーストタイプなど、適性はあるものの誰でも使える可能性のある分野だが、サーナイトは適性が高いことが多い。

そこにも炎を扱えるものもあるのだが、それすらも使えないときた。

しかし、そこは事前に作戦を立てたりしていればわかったこと。

それは旅人として先んじていたシャルナの落ち度である。

失敗できなくなったな、と彼女は呟いた。

緊急時に頼るものがなくなってしまった。

 

「……。」

 

ノラは、どうにか役に立たなくては、と思った。

ただでさえ旅に対して心得もない、戦いは素人、技も使えなければ術もない。

今までの戦いも隠密を活かして無理矢理、そして膂力と道具を使っただけ。

それにしては上手くいっていた、というだけ。

 

「なんだなんだ。おーい。」

 

コノハナの方へと、2匹ほどが歩いてきていた。ポチエナとメグロコだ。

エアカッターの音と、呻き声に反応したのだろう。

そして、部屋へと入っていこうとした瞬間にノラとシャルナは飛び出す。

僅かに先行したシャルナがメグロコを狙ったのを見て、ノラはポチエナを狙った。

恐らく気づかれる前に攻撃することは出来ないとみて、彼女は棍棒とメイス、どちらも投げた。

 

「なッ!あぶ、ねェな!!」

 

どちらも避けられてしまった上に、ポチエナは素早い動きでノラの方へと飛びかかる。

武器を投げた腕に噛みつかれてしまった。

幸い、篭手の部分に噛み付かれたため、肌にダメージは無い。

が、ポチエナは顎の力を強める。メキ、と腕から音がした。

顎の力、というのはとても強い。それは人間だったとしても。

例え篭手で肌へのダメージを避けても、このままでは腕の骨をへし折られてしまう。

渾身の力でポチエナごと腕を振るって壁に叩きつけようとした。

が、それをポチエナは察知して口を離し、後ろへと跳び退いた。

即座に走り出し、ノラに突進する。

ノラは斧を手に取りつつ少し横へ回避し、向かってくるポチエナの頭を叩いた。

その攻撃は相手の突進の勢いも載せられる。

ギャン、と声を上げてポチエナは勢いそのままに吹き飛び、壁に当たって地に落ちる。

頭が砕けたか、頭から少しだけ血を流しながら気絶している。

痺れるような痛みに、ノラは手をプルプルと震わせてしまう。

 

「そっちは大丈夫だった?」

「ええ、なんとか。」

 

シャルナに問われた時、心配させまいとさっと腕を隠した。

ポーションは確かに持っているが、外傷がある訳では無い。

効くという保証はないし、致命傷でもない。

致命傷を食らった時にさっき使ったからポーションはもうない、なんてことになったら困る。

 

(大丈夫、少し痺れてるだけ。もしダメそうなら言えばいい。)

 

シャルナとノラは進む。賊はあとどれ位いるのだろうか。

シャルナの捜し物は見つかるのだろうか。

そんなことを考えた。

少し進むと視界が開けた。しかし洞窟の中は川の上にあるのか、下は水場だった。

歩けるような岩場は転々としかなく、それを木の足場や橋でなんとか通行できるようにしているようだ。

途中には岩肌が窪んだ箇所があり、机や棚が置かれている。

今は賊だが、しっかり仕事が出来る環境ならそこで仕事をするポケモンが集まっていたのだろう。

そこには1匹、ズルズキンが居た。本か地図か、なにか書面を見つめていた。

先に気づけたのは幸いだ、どうするか。

周りのポケモンは全て進化していなかったが、目の前のポケモンだけは進化している、恐らくここの盗賊の頭だろう。

壁に背を預け、シャルナとノラは考える。

ズルズキンの元へと続く道は1本、先に進むにはその道しかない。

もう1つの道は、また水場へと続く階段だ。下にはなにか道具があるがよく見えない。

落下の可能性と、踏ん張れないことを考えると橋の上で戦うのは避けたい。

と、なればこちらに寄せるか、急いで渡って直接戦闘か。

と、2人は考えていると。

 

「誰かいるのか?」

 

ぞわ、と悪寒が走った。声が、間近だったからだ。

見つかってしまう。隠れる暇は、ない。

だが、シャルナだけならなんとか隠れることが出来るだろう。

そのシャルナはノラの方を見て焦っていた。

こちらのシャルナな隠密戦闘の方が得意。相手のズルズキンは恐らく直接戦闘が得意だろう。

 

(正直私は戦力になるとも思えない。)

 

もう考えている暇は無い。

 

「隙を突いて下さい。」

 

短く、端的に、小さな声でシャルナに伝えた。

ノラは斧を持ち、壁から出て回転を加えながらズルズキンへと飛びかかる。

 

「女ァ!?一人で何しにきやがった!」

 

ズルズキンは格闘タイプだ。本来は格闘するのだろうが、ノラが武器を持っていることを見て腰に指した斧を手に取って構えた。

ノラは相手の頭を目掛けて斧を振るう。ズルズキンは、それと同じくして斧を振るった。

膂力はもちろんズルズキンの方が強く、鉄のぶつかる音がして、ノラの斧は弾かれた。

空中で弾かれたためかバランスを崩し、何とか着地するもふらついてしまった。

その隙を逃すズルズキンではない。

前へステップ、ノラに近づき鳩尾に頭突きを入れた。

体がくの字に曲がったノラ、彼女から今度は後ろステップで離れたあと、短い距離を走りながら飛び蹴りを放った。

胸元にクリーンヒット、ノラは飛ばされて地面を転がる。

 

「やってくれたなお前!!」

 

そのまま髪を深く捕まれ、壁に叩きつけられた。ガン、と大きな音がひびき岩肌に傷をつける。

ノラの後頭部に鈍痛が走ると共に、つぅ、と血が流れた感覚が首筋にあった。

髪を掴んだ手をどうにかしようとしたが、ズルズキンはそれを見越していたか、腕を踏み抜き、メキ、と音を立てた。

 

「1人で随分なアイサツじゃねぇか。なぁ?」

 

ぺちぺちと頬を叩くズルズキン。

ノラは受けたダメージにより視界が歪み、相手をしっかり視認できていない上に反撃するほどの力も残っていない。

ズルズキンとサーナイトの身長差は平均して50~60cmほど。

ズルズキンはノラの頭を岩肌に押し付けているが、体格差により、ズルズキンはノラに跨っているし、ノラは座った状態になっている。

手をどうにかしても、逃げれはしない。

でも、それでもいいのだ。シャルナから視界が外れるなら。

 

「あんま抵抗すんなよ?傷が多いと高く売れねぇからな。」

 

奴隷商人にでも売りとばすつもりなのだろう。

しかし、抵抗するなら綺麗な状態じゃなくなってしまう、と。

 

「ホワイトランの衛兵じゃないな。近くの村にもサーナイトの目撃は子分から聞いてねぇ。なんの目的だ?」

 

ノラは喋らない。強い目線を、ズルズキンに向け続けるだけだ。

苛立ったように足を持ち上げ、もう一度、腕を踏みつけるズルズキン。

苦悶の声が、彼女から漏れ出た。

 

「あ゙ぅッ……。」

「村の人間に頼まれたか?それで女1人で来たのか?舐めすぎだっつの。」

 

ノラは痛みに顔を歪め、涙を目に浮べる。

 

「可愛くねぇ声だな。命乞いするとかねぇのかよ?何でもしますから助けてくださ〜い、ってよ。」

 

声は荒らげていないが、下衆なことを言うあたり楽しんでいるんだろう。弱い相手を、ノラを蹂躙することを。

ノラは考えた。あいてが1番こちらへ意識を向けて、隙を晒させるにはどうすればいいか。

 

─ぴちゃっ─

「……ッ死ねやクソメスが!!!」

 

相手の顔に、唾を吐いた。ズルズキンは激昂、ノラの顔面を殴ろうと腕を振りかぶった。

振り上げられた拳。痛めていない方の腕が、反射的に顔を守ろうとする。

だが、それもポチエナに噛まれた腕。あまり力も入り切らない。

振り上げた拳は、高くで止まった。

 

「2人、いやがったかよ……。」

 

ブシュ、と血が出る音が聞こえ、ズルズキンは横に倒れた。

シャルナが、ズルズキンを短剣で背中から刺した上でもう一撃、袈裟斬りしたようだ。

倒れたズルズキンを道の向こうへと投げ飛ばし、シャルナはノラに走りよる。

 

「ごめん、ごめんね大丈夫!?」

「生き、てます。」

「なんでこんなことしたの!?」

ノラは説明する。

シャルナが、自分を見て焦った顔をしたのはきっと1人でなら、戦うなり逃げるなり何とかできるけど自分がいるから焦っているのだ、と思った。

だから、囮になることを選んだ。

回転を加えながら飛びかかったのは、スカートの部分を広げるためであった。

飛びかかり、視界は斜め上。さらにスカートを広げ、翻すことでズルズキンの視界の多くに自分を写す。

視界の端に見えて気づいた、という可能性を可能な限り下げるためだ。

 

「私が見捨てて逃げてたらどうすんのさ。」

 

彼女はズルズキンに飛びかかった瞬間からシャルナがどこにいるのかは認識できていなかった。

もしシャルナが、ノラを見捨て、逃げていたら確かにそこで終わりだった。

ただ、シャルナを信じて、彼女の役に立とうと動いた。

根拠はないが、彼女は信じれる、と思った。

 

「人を見る目は、ありますから……。」

 

そもそも、逃げたなら逃げたでそれは、ノラがシャルナの逃走の役に立てたということ。

それならそれでいい、とも思っていた。

シャルナはそっ、とノラを横抱きにし、ズルズキンが元いた場所へと向かった。

そこには休憩できる場所があるはずだ、と思ってのことだ。

思惑通り、横になれる場所があった。

そこにノラを寝かせ、ポーションを取り出す。

 

「傷にかけるよ。」

 

バシャ、とポーションをかけられると傷が痛む。

が、ヘルゲンからの脱出の際で、ポーションの効果はわかっている。ぐっ、と堪えるノラ。

一瞬で傷が治るとは驚くことだ。ポケモンの体が凄いのか、ポーションが凄いのか、あるいはどちらもか。

 

「これも飲んで。治癒のポーションだから。」

 

傷に直接かけたものとは違うものらしい。

回復のポーションは傷を治すポーションで、治癒のポーションは自然治癒力を上昇させる、と言ったところだろうか。

 

「治りきるまでもう少しかかるから、その間に周りみてくる。休んでて。」

 

シャルナはそう言って周囲を警戒しにここから離れた。

体の治癒力が上がっているのか、痛めた腕が熱い気がした。

本来のサーナイトなら"いのちのしずく"や"ねがいごと"を使えたはず。

どちらも回復技、もし技が使えたのならこんな迷惑をかけなかったのに、とノラは悔やんでいた。

しばらくして、シャルナが戻ってくる。

幾分か回復したので、立ち上がってそれを迎えた。

 

「盗賊はあれで最後だったし、出口すぐそこだよ。傷は大丈夫?」

「ええ、お陰様で。ところで探し物は……?」

「ダメだったよ。こいつらじゃなかったみたい。」

 

ため息を吐きながらシャルナは言った。しょんぼりとした顔をしており、なんとも愛らしい顔だ。

 

「大丈夫?歩ける?」

「問題ありません、十分に回復してます。」

「ならいいけど……。」

 

少し後頭部が痛むが、出血は止まった。腕の痛みと痺れも止まったから行動は十分に可能だ。

シャルナとノラは洞窟内の、生きている盗賊たちを再度しっかり縛り、もし目が覚めても動けないようにしてからエンバーシャード鉱山から出た。

 

 

 

 

 

───

 

 

 

 

 

「おお!やってくれたのか!まだ1日も経っていないのに!」

「規模がそんなに広くなかったからね。」

 

先程のことを鍛冶師のチャオブーに伝えると、たいそう喜んでいた。

盗賊も捕らえたが、今はどうすることも出来ないので放置してきたことも伝えた。

ホワイトランの衛兵がやってくるまでは引渡しは出来ないが、もし拘束を解いても頭が殺されている以上、もうあの鉱山に滞在することは無いだろう。

 

「あとはこっちで処理する、本当に助かったよ。」

 

その後の処理は任せ、シャルナとノラは鍛冶場を離れた。

とりあえず、消費したポーションなど、消費したものを補充する必要がある。

2人は雑貨屋によってみることにした。

 





書きながらズルズキンを調べていたんですが、彼って防御と特防の種族値どちらも115もあるんですね。意外でした。
同値のポケモンで言うと……
防御ならジバコイルやジュラルドン、コライドンなど。
特防ならエルレイドやスイクン、ミライドンなど。
HPはさておき数値でいえば思ったより硬いんだな……と思いました。

ところでなんですがあなたは"これ"を、どちらが好きで見ていますか?

  • Skyrimが好き
  • ポケモンが好き
  • どちらも好き
  • どちらでもない
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