俺と晴は店舗予選を目の前に最終調整をしていた。
「やっぱ環境トップペアに対するメタペアの方がいいんじゃねえか?環境ペアと別のペアに負けるのは事故って考えで。」
「下手に付け焼き刃のメタをするよりもやっぱり俺は練度を取りたい。このままのペアで予選に出よう。」
「俺はミラーした時の練度勝負で不安しかないから今のペアしたくないんだけど。」
「どうせ本選行ったら練度勝負になるんだから開き直って今のまま行こうぜ。これで負けたら次の飯俺が奢るから。」
「まぁ、お前がそこまで言うならわかったよ。でもここの予選で負けたら次の予選は俺の言うようにしてもらうからな。」
「わかってるよ。負けたら、だけどな。」
「おし、方針も決まったし飯食って明後日の本番備えるか。」
「おう、飯どうする?いつも通りラーメン行くか?」
「そうだな。カツとか食うにしても前日とかの方がいいかもだしな。いつものとこ行くか。」
そうして翌日。
「ふぁー、今日も調整しなきゃかあ。ん?なんか声高くね?目線も低いし、腰やったか?でも痛くないんよなぁ。」
洗面台に映る自分の姿を見た瞬間目を疑った。
腰程まである烏の濡れ羽色の長く美しい髪。病的なまでに白く艶のある肌。鈴を張ったような目。今までの人生で最も美しいものを見た。
「おん、な?は、え、なんで!?あれ俺だ。この美少女俺だ!」
混乱する中あることに気がつく。そう、ないのだ。
「あれ、ない。俺の息子がない。どうして?俺まだ童貞卒業してねぇのによぉぉぉぉ。」
哀れな男の叫びである。
俺は少し落ち着きを取り戻し相棒へと連絡をすることにした。信じられるかは怪しいが今頼れるのはあいつしかいない。
「もしもし?」
「朝っぱらから電話かけてくんなカス。風邪でもひいたか?なんか声高くね?」
「簡潔に言う。なんか朝起きたら俺美少女になってた。てへぺろ。」
「は?すみません、優の奴に代わって貰っていいですか?ふざけてる暇ないので。」
「いや、だから俺が優なんだって。信じてくれよ。お前が初めて買ったエロゲと同人誌の作品名言えるしさ、な。」
「今からお前の家行くって優に伝えてください。あと、お前覚えとけよとも。」
「うい、じゃあ来る途中朝飯買ってきて。ハンバーガーでいいよ。」
「シバくんで覚悟しとけも追加でお願いします。」
これで相棒を家に呼ぶことができた。あとは勢いだな。
ピンポーン。ガチャ。
「おら、チャイム鳴らしてやっただけ感謝しろカス。さっさと出て来い。」
そのまま晴は俺の部屋までズカズカと入ってきた。
「おーす。ようやく来たな。」
「は、女の子?なんでコイツの家に?」
「だから俺が優なんだって。信じろって。」
「今から優にしか答えられない質問をする。それを答えられたら信じてやる。」
これで勝ち確になった。
「俺と優で初めて交換した同人誌はなんだ?」
「確か、高2の時に俺が清楚系ギャルとの純愛でお前が歳上ダウナー系お姉さんとの共依存ものだったよな。」
「次だ、俺と晴が初めて2人きりで一緒にいったリアルイベントはなんだ?」
「これはなんだったけ?えーと、あれだ。高3の頃、卒業後で大学入る直前にやってた奴で地域イベントとのコラボしたお祭りみたいなやつ。」
「最後だ、俺と優の出会ったのはいつだ?」
「この質問普通は最初にしない?小5の頃のクラス替えの時だろ、あの頃懐かしいよな。始まった時はまだお互いの名前すら知らなかったのにこんなにも長い付き合いになってやがる。」
「…………………はぁーーーーー。」
なんかすっげえため息つきはじめた。
「お前本当に優かよ、質量保存の法則どうした。てか、大会前にこんなんになって大丈夫か?」
「まぁ、大丈夫だって。それよりも今はやるべきことあるだろ。」
「なんだよ、そんなものあるか?」
「朝飯。」
「あぁ、お前外出れないもんな。ほら、食えよ。」
「ありがとよ。はぁ、マジで親父たちにどう伝えよう?」
「まぁ、最悪俺が着いて行って証明すれば大丈夫だろ。」
こいつは本当に頼りになるやつだな。
「ありがとよ、相棒。」
「カッコつけてんなよ、優。」