ペンダントを捨てたマール。転送装置とペンダントの反応の仕方が怖くて投げ捨てた。だが時既に遅く、ベンダントもマールも空間の裂け目に吸い込まれていく。誰か助けて!とマールが思った瞬間、赤髪の男が腕を握った。赤髪の男はマールを引っ張り上げようとする。しかし、その男もマールと共に空間の裂け目に引きずり込まれた。
大変な目にあった二人は、それが初対面だった。クロノはルッカの助手としてテレポート装置に座る人々を監視していた。万が一装置が誤作動した際、被験者にも危険が及ぶと判断された場合、装置から被験者を引きずり離す(守る)のがクロノに与えられた役目だった。マールは転送装置に座る15番目のテスターだった。マールのペンダントがトラブルの原因になったのか、装置そのものの不具合なのか、一応クロノは状況を報告する為に無線に語りかけた。
しかし、応答はなない。携帯を取り出すも電波が入らなかった。GPSも受信しなかった。
GPSが入らない地域なんて地球上のどこにもない。まさか地球外?とクロノが考え事をしているとマールから悲鳴が上がった。
頭がツルツル、真ん中から縦に割れた背の低い人々。それはヨダレを流しながら迫ってくる。
まさかのアブダクション?宇宙人に誘拐されて人体実験されてしまうのか?
クロノはマールに人を呼んでくる様に促し、その場に残った。
敵の正体は魔族であるがクロノ達は魔族の存在を知らない。魔族とは【
】である。
現代人は魔族を知らない。魔族なんて見た事が無かったので、クロノ達はエイリアンだと勘違いした。
クロノが現在対峙している敵は魔族の中では弱い分類にある野良魔族であり、知性が低い。【 】の材料になって生まれた魔族である。
弱い分類魔族といっても氷河期を素で乗り切れる遺伝子が組み込まれている分、人間よりも強い。クロノは単なる人間であり、何も考えずに三体同時に相手をしたならば死が待っているだろう。
クロノはマールを逃がしたものの、魔族の一体がマールを追いかけた。クロノの前から一体減ったことでクロノが助かる見込みが格段に増加した。
とはいえマールをほっておけない。マールを追いかける魔族にクロノは石を投げつけた。
ツルツルの頭に当たった。ブチキレた魔族はクロノを追いかけた。
クロノが勝っているのは身長差だった。。魔族は身体能力が高いとはいえ、身長差は逃げ足の速度に直結する。魔族はクロノを捕まえられそうで捕まえられない。クロノは逃げながら橋の下に隠れた。足場は川である。川の上流へ向かって石を投げ、再び橋の上に戻ると、魔族はクロノとは真逆の方向、音のした方向へ向かいクロノを見失った。
その隙にクロノはマールが逃げた方向に向かった。
山のふもとでマールを見つけたクロノ。マールは甲冑を着た男に話かけられていた。
男はマールを行方不明のリーネ王妃と勘違いしていた。マールは誤解であり人違いだと説明したが、男はクロノを見るなり言った。『その赤いペンダントは! この男に脅されているのですね? だから他人を振りしていて…』
男は剣を抜き、剣先をクロノへ向けた。クロノは剣道の経験があった。男の構えは長年熟練された戦士のものであり、隙が見えなかった。仮に真剣が手元あったとして勝ち目はないだろうとクロノは思った。
にらみ合いをする二人、兵士は誘拐犯(クロノ)から王妃の退路を確保するべく、マールとは逆の方を一瞬みた。その一瞬の間にマールは消失した。
クロノも兵士も何が起きたか判らなかった。兵士はマールが消えた瞬間を見なかった。クロノはマールが光ながら消える瞬間を見た。マールの顔が見えなくなった。というより、クロノはさっきまで見ていたマールの顔を思い出せなくなっていた。
マールの先祖であるリーネが死ぬ事でマールが生まれなくなる仕組み。クロノがマールと出会わない歴史が作られる事の作用からクロノの記憶からマールが消えかけていた。だが、そんな仕組みは今のクロノは知らない。そもそも何故マールが消え、マールの顔が思い出せないのか考える暇は無かった。
目の前の兵士は【王妃が突然消えた困惑をクロノを捕まえるという代償行為で解消】しようとしていた。目の前にいる赤髪男の正体が魔族で妖術によって妃を隠したのではないかと疑った。
兵士は首にかけていた警笛を吹いた。音を聞き付けて周辺にいる仲間の兵士がやってくる。
クロノは思った。逃げるなら逃げきらないといけない。逃げて捕まってしまえば、やましい事があるとして逃げたのだから、酷い尋問が待っているかもしれないと。
怖くなったクロノは全力で走った。
幸い兵士は重い武器や鎧を装備している。逃げるのには有利な条件は揃っていた。
◎
その頃、ルッカは青ざめていた。転送テストは全世界に同時生中継されていて各国政府や国連も強い関心を抱いていた。今世紀最大の発明の披露と共に最大のトラブル。どう言い訳の演説をしようか悩んだ挙げ句叫んだ。
『失敗は成功の元なのよ!サイエンスに失敗はつきものなのよ!』
いわゆる開き直り。幸いクロノとマールの死体は見つかってない。殺人罪は適応されない。
怯えなくていい。そう自分に言い聞かせて平静を保つ。
空間の揺らぎは小さくだが未だ残っている。
ルッカは二人が消えた瞬間を冷静に思い出していた。まるで映画の様なワンシーン。もしゲートがどこかの世界に通じているなら大発見である。事故の際にペンダントが反応した事を思い出したルッカ。
ペンダントの石の成分、波長に原因があるのではと推理した。転送装置は、あらゆる金属を試していて危険は無い事が判明していたが、未知の金属に関しては例外であり検証できなかった。再現実験するにはペンダントが必要であったが手元にはない。
波動観測装置をチェックするルッカ。
特殊な電磁波、波動が機器を狂わせたりして事故に繋がる恐れがあるとき、類似した波動を発生させて共振させ悪影響を打ち消す為の装置である。マールのペンダントが異常反応した際も波動は記録されていて、その波動と同じ波係を出せる様に装置にプログラムすればゲートの再現実験をできるかもしれない。
検証は転送装置の電力量を限りなく0にするところから始まった。装置がショートとしかけた事もあって、慎重に稼働させる。
一回目の実験にて、電力量が少しでもあれば同様のゲートを再現できる事が判明する。つまり携帯可能な小型の転送装置でもゲートの再現は可能になり、仮に向こう側の世界に電力設備がなかったとしてもバッテリーさえあれば戻れるかもしれない。
転送装置の小型の模擬機(サンプル)を作っておいたのが役立ち、1時間で即席のゲートホルダーが完成した。
試しにゲートにドローンを入れる。目の前にクロノの死体がないので安堵する。温度計や酸素チェッカー、放射能測定器も使い、向こう側の安全を確認する
安全そうなので、いざ入ってみることに。
心臓はドキドキ。
一部始終はテレビで全世界に報道されている。ポーカーフェイスを保つ。
カメラ写りを気にして髪をかき上げたり、カメラ目線のままゲートに入る。
つまり後ろ向きでゲートに入ったせいで、お尻にかぶり付きそうな青い化け物がいる事に気付かなかった。
ふりかえると目が合い、絶叫するルッカ。 その声のデカさに青い奴らも絶叫した。驚いた青は茂みに隠れた。
すぐさま千年祭会場に戻ってゲートを閉じたルッカ。ゲート先で見た状況をマスコミに伝えるべきか悩んだ。
もしクロノとマールが化け物に殺されているとしたら責任問題になる。
悲しむ親たちと業務上過失致死からの警察出動、逮捕⇒牢屋⇒裁判⇒刑務所の流れが見えてしまい、これまでの輝かしい人生が走馬灯する。
今の状況で真実を公言する勇気はルッカにはなかった。
ゲートの先には危険な生物がいる。武器になるものはないか探すルッカ。護身用の電気銃を携帯していたが弾数が10発しかなく心もとない。予備のマガジンが車の中にあり、合計50発を用意する。ついでに大きなリュックを背負う。
リュックにはゲートホルダーが壊れた際の修理に必要な工具類が一式入っている。半だごて、ニッパー等、多様なものが入って20kgを背負う。ついでに、あったほうが便利かもしれない双眼鏡を会場にいたルッカファンの一人から借りる。
クロノがゲートに入って2時間が経過していた。この間、マスコミや野次馬らは天才ルッカを信じて挙動不審なルッカの行動も温かく見守っていた。
エイリアンに警戒しながらゲートに入る。エイリアンはルッカの様子を伺いながながら距離をとりながら着いてくる。
滝の音。ルッカには見覚えのある風景だった。トルース山の滝に似ている。もしトルース山だとしたらガルディア城もそこから見えるはずだった。
城下の景色には道路と車がない。 このガルディアはレンガ調の道で車の代わりに馬や馬車が主役である。双眼鏡を覗くと、人々の姿は中世紀頃の服装をしている。
中世紀頃のガルディアであるなら、ヨーロッパ各地で起きた黒死病(ペスト)の流行の影響を受けているかもしれない。ルッカの知るガルディアの歴史でも国内はペストの影響により経済危機にみわわれ、飢餓での死者を多くだしていた。もしそうなら治安の悪さも推測される。
だが街並みをみる限り、餓死者がいる様には見えない。
ヨーロッパ人口の三割がペストで死んだとされる、もしそうなら沢山の墓があるばすであった。
ルッカの考察は【あくまでここが過去のガルディアであるならば】である。エイリアン(魔族)がいる世界であるから別世界であり、歴史は地続きではないと思っている
ルッカはリュックから無線電波増幅装置を取り出してバッテリーに繋いだ。クロノが持っている筈だろう無線と繋がる事を期待して言葉を投げる。
無事に繋がる無線。
クロノは逃亡中だった。現代的な服装が目立ち過ぎていて、民家から服を盗んで人混みに紛れていた。街でマールの行方を聞き込みしようとしたが、兵士らの追っ手が聞き込みにやってきて、それどころでないらしく、逃げている間に人気の少ない森の中を進んでいた。
「リーネのいた時代といえば400年前…30年戦争の時代だったわよね…。」
クロノは歴史にうとかった。
「神聖ローマ帝国、プロテスタントの反乱をきっかけに始まった宗教戦争のことよ。それがヨーロッパ中を巻き込む国際戦争へと発展した時代で、たしかガルディアでも多くの犠牲者がいたとかなんとか…。て、それよりもマールディア王女様はどうしてる?」
何の事かさっぱりだったクロノ。
「一緒に空間の渦に飲み込まれた女の子のことよ! 実はあの子、王族だったのよ! 今会場は彼女のSPやらが占拠しててパニックしてて、とにかく戻れる装置を作ったから早く戻ってきなさい!」
かくかくしかじで
「消えたって!? しかもその現場にいあわせた兵士らしき人にクロノが魔族だと思われて、魔法で王妃様を隠して誘拐したと誤解されて、攻撃されて逃げてるって? 追われてて元来た道に帰れそうにないって…。意味判んないわよクロノー!」
「…一体今何処なのクロノ! 」
「林の中…。直ぐそばに教会…? 多分のマノリア修道院の事ね…。その周囲の林の中にいるの?」
「直ぐに私も向かうから、とにかくそこで待ってて!」
ルッカの格好は現代的であり、中世の時代には目立ちすぎる。。不用意に進めばクロノと同じ様に不審者扱いされかねない。一度ゲートをくぐって中世に合う服を持ってこようと思ったが、ゲートがいつまで存在しているかわからないのでクロノと同じように人目を避けながら進んだ。
その最中、とある家の庭でセンスのいい服を発見するルッカ。防具になりそうなヘルメットと防弾ベスト的なスーツ(原作のルッカの衣装的なものを)を発見し、拝借した。
400年前のルッカの先祖、アシュティア家の庭であったが、ルッカがその事に気付くことはなかった。