どうやらポケモンの世界になったみたいです   作:秋初月

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プロローグ

 

 

 

ピピピピピ…。

 

 

 

 静まり返った部屋に鳴り響くアラーム音。

 

 若干薄暗い空間に輝く光源を頼りに腕を伸ばし、スマホを操作する。

 

 ぼーっとする頭を半ば無理やり動かしてアラームを止める。

 

 

 

「んぅ~...」

 

 

 

 止める際に薄く開けた眼で確認した時刻は06:30。

 

 それを確認した私は再び瞼を下す。

 

 すぐにやってきた眠気の心地よさに身をゆだねれば、ゆっくりと意識が遠くなっていった。

 

 

 

 

 

 ピピピピピ…。

 

 

 

 

 

 二度目のアラーム音。

 

 再び意識を浮上させ、スマホに表示された画面を見る。

 

 

 

 07:25

 

 

 

 やはり二度寝は気持ちがよい。

 

 このまま三度寝に入ってもよいが、今日は休日ではない。

 

 そろそろ起きねば…。

 

 

 

 いまだ残る眠気に抗い身体を起こせば、重力にひかれて落ちる銀髪が目に入る。

 

 最初こそ驚いたが、今ではもう見慣れた私のものだ。

 

 寝起きで固まった身体をほぐしていると、不意に頭の中に響く声。

 

 

 

 『…おはよ、アリア』

 

 「おはよう、ジラーチ」

 

 

 

 私が先ほど眠っていた布団の中から、もぞもぞとはい出てくるジラーチ。

 

 作りものなんかじゃない。

 

 国内だけではなく、世界的にも有名なあのゲーム。

 

 

 

 ポケットモンスター、縮めてポケモン。

 

 

 

 そのゲームの中に登場するキャラクターが、幻のポケモン呼ばれた存在の一体が私の目の前にいる。

 

 世界をそのゲームの世界に作り変えてしまった元凶でもある。

 

 私がその元凶を生み出してしまった原因のようだけどね。

 

 決して故意ではないが。

 

 

 

 『…抱っこして』

 

 「はいはい」

 

 

 

 小さな両手をこちらに向けて甘えるジラーチを抱き寄せ自室を出る。

 

 一階へと降り、リビングへと向かう。

 

 

 

 「おはよう、母さん」

 

 「おはよう、アリア。ジラーチちゃん。ご飯はもうできてるから冷めないうちにたべましょ」

 

 「うん。いただきます」

 

 

 

 

 

 数分後。

 

 

 

 「今日からでしょ?」

 

 「うん」

 

 

 

 食器を片付け、部屋に戻ろうとドアに手をかけた瞬間、声をかけられる。

 

 

 

 「もういくの?」

 

 「うん、あと一時間もしたらいくよ」

 

 「もう少しゆっくりしていけばいいのに」

 

 「これ以上ゆっくりしてたら甘えてお昼すぎとかになっちゃいそうだし」

 

 「それはゆっくりしすぎよ」

 

 「あはは、じゃあ準備してくるね」

 

 

 

 荷物は昨日のうちにまとめてある。

 

 あとは着替えと最終確認を行うだけ。

 

 私も今年で10歳。

 

 前の世界では20は過ぎていたので精神年齢としてはすでに30なのだが、ようやくポケモントレーナーの資格を獲得し、旅に出ることができるようになった。

 

 今日はその当日。

 

 ワクワク半分、不安が三割、残りの二割は名残惜しさといったところだろうか。

 

 寝癖を整え、旅用の私服に着替える。 

 

 くるりと回り、おかしな部分がないかをチェックする。

 

 

 

 「まあこんなもんかな」

 

 

 

 ボールポーチをつけ、あらかじめ決めていたメンバーをセットしていく。

 

 まずは、ジラーチのボール。

 

 そして、ゲームで使用していた私の頼れる相棒ポケモンたち。

 

 きっとこの世界では過剰となってしまう戦力だけど、外す選択肢は私にはない。

 

 私の大事な家族たちだ。

 

 ボールをなでると、嬉しそうな反応がボーから伝わってくるのがわかる。

 

 

 

 「よし、いくか」

 

 

 

 階段を下りていくと、玄関の前にお母さんがいた。

 

 私が来るのを待ってくれていたらしい。

 

 

 

 「いくのね」

 

 「うん」

 

 「忘れ物はない」

 

 「うん」

 

 「体には気を付けるのよ」

 

 「うん」

 

 

 

 心配そうな目でこちらを見つめ、私を強く抱きしめてきた。

 

 私もゆっくりと腕を回し、抱きしめ返す。

 

 

 

 「一生のお別れじゃないんだし、おおげさだよ母さん」

 

 

 

 やがて、お母さんは小さく息を吐き、名残惜しそうに腕の力を緩めた。自分もそっと腕を離す。

 

 玄関の扉を開けると、朝のひんやりとした空気が頬を撫でた。

 

 

 

 「それじゃあいってきます」




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