家を出てからすぐにボールから飛び出し、私の両腕に収まりご機嫌な様子のジラーチ。
ボールの中に入っているのは嫌いなようで、私に抱かれてるのが好きらしい。
『〜♫』
鼻歌まで歌っている。
うちの子が可愛すぎる。
もう無理、抱きしめちゃう。
『わぁー!』
んー、このすべすべの肌触りがたまらんね。
私が甘えれば、ジラーチも嬉しそうにじゃれてくれる。
そうやってしばらくたわむれた後、私はポーチからボールを一つ取り外して放り投げた。
「ロトー!」
中から現れたのは、ロトム。
すでに手持ちは満杯なのだが、特別にスマホロトムは許可されている。
ボールから飛び出したロトムは、取り出した私のスマホにするりと入り込んでいく。
スマホからロトムの顔をが現れ、若干サイズも変化する。
このロトムは前世から持っていたロトムではなく、旅に出るならとお母さんが持たせてくれたものだ。
一人で旅をする私にとって、ロトムの存在は非常に心強い。
「ロトムー、GPS起動できる?」
「了解ロトー!」
「ここからゴーストタイプのジムがある北見まで案内お願い」
「おまかせロト!」
「ありがと」
一歩前を浮遊し、誘導を始めるロトムについていく。
ロトムを憑依させることによって、スマホの充電も必要なくなる。
アニメとかゲームだと普通に主人公は旅してるけど、よく考えたらすごいと思う。
特定の世代なんてスマホもないのに。
私は絶対迷う自信がある。
まぁ最悪、道に迷ったらとして最終手段は用意してあるが、緊急事態以外はなるべく使いたくはない。
"そらをとぶ"は覚えさせていないので、私を運ぶとなるとポケモンの負担がでかすぎるからね。
「この距離だと最短で2,3日か…。まぁ気長にやっていこう」
私の住んでる北海道には三つのジムリーダーがあって、場所は北見、札幌、稚内の3ヶ所。
タイプは順に、ゴースト、みず、氷。
その中で、今いる現在地から一番近いのは、北見にあるゴーストジム。
まぁ、一番近いとは言っても200キロ近くもある。
さすがは北海道、広大だ。
長距離を移動するにあたって、野宿することに対してかなりの不安があったのだが、そこまで心配する必要はなさそうだった。
まだ明るい時間帯なので点灯してはいないけど、ちらほらと街頭が配置されている。
ちゃんと安心して一人旅できるように整備されているらしい。
時折野生のポケモンも見かけるも、人を警戒しているのかうかつに近づいてきたり襲ってきたりは今のところない。
人とはちょいちょいすれ違いはするものの、トレーナーにはまだ出会えてはいない。
いきなりジムに挑む前に、少しだけ肩慣らしはしておきたさはある。
私はまだ、この世界になってからバトルをしたことが一度もない。
テレビで実際にバトルの様子を観たことは何度もあったが、対人経験はない。
まぁ、本当はやろうと思えば経験を積む機会はいくらでもあったんだけどね。
やろうとしなかっただけ。
実際に誘われたことは何度もあったが、私は誰ともバトルしなかった。
怖かった。
バトルがではなく、人の目が。
私の手持ちは前世からのパートナー達で、自慢じゃないけど最高レベルの水準だ。
努力値やもちものだってそのまま。
地元の同年代や大人達でも相手になる人はいないだろう。
『アリア、大丈夫?』
エスパータイプであるジラーチには、私のネガティブな感情が伝わってしまったようだった。
「ごめんね、ジラーチ。大丈夫、私が臆病なだけから」
私はポケモンバトルがしたくないわけじゃない。
ゲームの中でみることしかできなかったことを、現実で体験してみたい。
あのテレビの映像でしかみられなかったあの白熱したバトルを私は求めている。
だから私は旅に出た。
トレーナーとして全国を巡り、バッジを集める。
そして、トーナメントに出るのが私の目標だ。
◇
あれから歩くこと十数時間。
すっかり日は暮れ、私も疲れたので今日はここで休むことにした。
ジラーチは腕の中ですでに夢の中だ。
道の端っこにテントを張り、寝袋を敷いて横になり目を瞑る。
人生初めての一人旅で初めての野宿。
静まり返った空間に時折聞こえる草木の揺れる音。
街灯の明かりはあってもやっぱり怖いものは怖い。
『...大丈夫だよアリア...』
薄っすらと目を開けてみれば、ジラーチは気持ちよさそうに眠っている。
夢の中でも、どうやら私を心配してくれているらしい。
「ふふっ、ありがとうジラーチ」
ジラーチを抱き寄せ撫でていると、だんだん瞼が重くなってきた。
次第に周りの音も気にならなくなり、私の意識は沈んでいった。
ちなみに、ゲームとは町の名前とかも全然違うストーリーを予定しています
ゲーム内の人物とかは登場させる予定ですのでお楽しみに