どうやらポケモンの世界になったみたいです   作:秋初月

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シリアスを感じさせないように書きたかったのに無理でした…


vsジムリーダー ゴースト3

 

 

 案内されたバトルフィールドは、ゴーストタイプのジムらしく、薄暗い雰囲気に包まれていた。

 

 フィールドの四方に設置された紫色の炎が揺らめき、不気味な影を作り出している。

 

 

 「ルールは3vs3の勝ち抜き戦ですが、チャレンジャーのみ途中の交代は可能となります。禁止行為として————」

 

 

 どうやら、あの受付の人は審判でもあったみたいだ。

 

 そして観客席には、入口であった少年——ジュンもいた。

 

 名乗られたわけではないが、あの特徴的な髪形は間違えようがない。

 

 原作キャラがここにいる。

 

 それも同じ年ごろ。

 

 シンオウ地方は北海道が舞台の設定だ。

 

 ポケモンの世界に飛ばされたわけではなく置き換わっただけだが、ジュンがいるということは主人公のコウキやヒカリはいるのだろうか?

 

 ストーリーは?

 

 ギンガ団は原作通りに活動しているのだろうか?

 

 

 「あたしを前にしてその態度……、ずいぶんと余裕じゃないか」

 

 

 キクコさんの声。

 

 

 「そんな甘っちょろい考えで挑戦しにきたんなら、あたしのポケモンに食われちまうよ?」

 

 

 挑発的な言葉とともに、キクコはニヤリと笑った。

 

 そうだった。

 

 今はそんなことを考えている暇ではない。

 

 それに目の前にいるトレーナーはあのキクコだ。

 

 今はジムリーダーとして活動しているが、一時は四天王の一角だった人物。

 

 決して楽に勝てる相手ではない。

 

 だが、

 

 

 「キクコさんこそ……、私のポケモンたちは————強いですよ?」

 

 「…言うじゃないか小娘。いいだろう、ゴーストタイプの怖さ、たっぷり味合わせてやるよ!さぁ、おいで——!」

 

 

 気持ちを落ち着けるよう、深く息を吸って吐き出す。

 

 誰を出すかは、もう決めている。

 

 「初陣だけど、いけるよね?」

 

 ポーチから取り外したボールに向かってそう問いかけてみると、「任せろ!」と言わんばかりに力強く揺れる。

 

 

 「じゃあ、お願いね。あなたの力、私に見せつけて————!」

 

 

勢いよくボールを投げる。

 

 

 「バンギラス!」

 

 「ガラガラ!」

 

 

 紫の炎が揺れる中、二体のポケモンがフィールドに姿を現した。

 

 目の前にいる少女、アリアが繰り出したポケモンの咆哮がフィールドを揺らし、強烈な砂嵐が吹き荒れる。 

 

 よろいポケモン、バンギラス。

 

 タイプは、岩悪の複合タイプ。

 

 山を崩したり地響きを起こしたりするほどの力を持ち、資格のないトレーナの命令には従わないほどの凶暴性を併せ持つポケモンだ。

 

 

 「バンギラスか…。相性は最悪だが、あたしのガラガラはそんなことで怯むタマじゃないよ!————いくよ、ホネブーメラン!」

 

 

 キクコの指示とともに、ガラガラが力強く振りかぶり————投擲。

 

 巨大な骨が回転しながら砂塵をかき分けるようにして飛び、バンギラス目掛けて一直線に迫りくる。

 

 「やっぱり持ってるよね」

 

 ガラガラの専用技で、太い骨を持っている場合、その威力は二倍に跳ね上がる。

 

 それに、地面タイプの技はバンギラスにとって効果抜群だ。

 

 安易に受けて良い攻撃ではない。

 

 スピードの遅いバンギラスではよけるのも難しいだろう。

 

 だけど、ゲームの世界ではなく現実ならばこんなこともできる。

 

 

 「バンギラス、ストーンエッジ!」

 

 

 私の指示に従い、バンギラスが雄叫びをあげ思い切り地面を踏みつける。

 

 すると、地面から鋭利な岩の刃が一瞬で隆起し、迫るホネブーメランを下から突き上げる。

 

 回転力を失い、宙を彷徨う棍棒。

 

 

 「なんだってっ!?」

 

 

 驚愕するキクノ。

 

 

 「まだだよ、バンギラス!」

 

 

 地面からさらに、鋭利な岩が連鎖するように隆起し、まるで津波のようにガラガラへと襲いかかった。

 

 逃げる暇を与えず殺到する岩波に瞬く間に飲み込まれ、ガラガラの悲鳴が上がる。

 

 

 「ガラガラっ!」

 

 

 技の発動が終わり、隆起した地面がもとに戻ればそこには。

 

 

 「…が、ガラガラ戦闘不能!」

 

 「……」

 

 

 

 ——sideキクコ

 

 

 その場に倒れ伏すガラガラの姿を目にし、思わず奥歯に力が入る。

 

 甘く見ていた。

 

 目の前の少女は自分より格下だと。

 

 挑戦者の実力を見定める立場なのだと慢心していた。

 

 ガラガラを戻し、新たなボールを構える。

 

 気持ちを入れ替えなければ。

 

 「次の相手はこいつだよ、いきな——クロバット!」

 

 キクコの次なるポケモン——クロバットが、漆黒の翼を大きく広げて宙に舞った。

 

 

 「もう一度ストーンエッジ」

 

 

 バンギラスが大地を再び踏み鳴らせる。

 

 ガラガラを一撃で沈めるほどの威力を誇るストーンエッジ。

 

 当たれば間違いなく瀕死は免れないだろう。

 

 

 「クロバット、地面スレスレを狙いながら距離を縮めなっ!」

 

 

 だが、キクコは前進するよう指示を下す。

 

 キクコの指示を受け、クロバットがフィールドを低空で滑るように進む。

 

 狙い澄ましたかのように突き出る岩の刃。

 

 それをわずかに身体を傾けることで回避する。

 

 爆発的に立ち上がる岩の隙間を縫うように潜り抜け、そして————。

 

 

 「いまだよっ、上がりな!」

 

 

 急上昇。

 

 それと同時に、ひときわ大きな岩の槍が先ほどまでいた空間を貫いた。

 

 

 「エアカッター!」

 

 

 お返しだといわんばかりに、空気を切り裂いて衝撃波がバンギラスへと降り注ぐ。

 

 手ごたえはあった。

 

 いくら効果はいまひとつとはいえ、まともに当たれば堪えるはず。

 

 だが、

 

 

 「バンギラス、れいとうビーム」

 

 

 風刃を突き破り、鋭い冷気がクロバットを襲う。

 

 

 「クロバット!」

 

 

 咄嗟に回避行動をとるクロバットだが、完全には避けきれず、掠めた冷気が翼の先端を凍らせる。

 

 翼のバランスを崩し、クロバットの高度がわずかに落ちる。

 

 その瞬間——。

 

 

 「かみくだく!」

 

 

 巨体が砂煙の中から飛び出した。

 

 バンギラスが鋭い牙を剥き出しにして一気に距離を詰める。

 

 そして、何とか羽ばたこうともがくクロバットへと容赦なく突き立てた。

 

 

 「クロバット、戦闘不能!」

 

 

 油断はなかった。

 

 それでも一瞬にしてやられてしまった。

 

 

 「…このあたしが何もできずにここまで追い詰められるとはね」

 

 

 残り一体。

 

 

 「これがあたしの最後のポケモン」

 

 

 このままでは終わらない。

 

 

 「いきな、ゲンガー」

 

 

 久しく忘れていた感覚。

 

 勝ちたい。

 

 たとえ目の前のバンギラスを倒せたとしても、残りの二体を突破することは不可能だろう。

 

 それでも。

 

 「出し惜しみは無しだよ。ゲンガー、あたし達の絆見せてやろうじゃないか!」

 

 キクコの声に反応し、指輪に嵌め込まれたキーストーンが七色の輝きを放つ。

 

 同時に、ゲンガー身体を光が包み込む。

 

 次第に光は暗く濁り、膨れ上がるように黒い球体を作り出す。

 

 やがて球体の形が歪み、ゆっくりと崩れ始めた。

 

 どろりと溶け地面に黒いシミを作り出す。

 

 黒いシミがじわりと広がり、まるで意思を持つかのように蠢いたかと思えば、紫がかった指がシミの中からゆっくりと這い出てくる。

 

 指先が地面を掴み、力強く押し出すようにして、もう片方の腕も現れる。

 

 そして、闇の中から突き出される大きな頭部。

 

 大きく裂けた口元がニヤリと笑い、紅い瞳がゆっくりと開かれた。

 

 

 

 

 

 アリアはその光景をじっと眺めていた。

 

 キクコのラストポケモンは——ゲンガー。

 

 原作通りの、彼女の相棒。

 

 人生初めてのポケモンバトル。

 期待と不安が胸の中でせめぎ合い、けれど始まってみれば、その想いはすぐに静まり返った。

 

 ——あまりにも、レベルが違いすぎた。

 

 ゲームにおいて、レベルの差は決定的な力の差として現れる。

 現実には「レベル」なんて数値は存在しない。けれど、見えないだけで、それは確かに“ある”と感じた。

 

 キクコさんのポケモンと、私のバンギラス。原作通りなら、その差はおよそ40。

 

 ガラガラとの戦いで、私はそれを痛感した。

 

 戦いの最中にもかかわらず、妙に冷静になっていた。

 

 続く二体目——クロバットの攻撃も、案の定、バンギラスにはまるで通らなかった。

 

 攻撃が効かなくとも飛び回られるのは鬱陶しいので無理やり地に落とし、とどめ。

 

 最後の一体もさっさと終わらせよう。

 

 そう思っていた。

 

 けれど——。

 

 目の前の光景に、アリアの口元がかすかに綻ぶ。

 

 メガ進化。

 

 原作では、キクコがメガ進化を使う描写なんてなかったはずだ。

 

 そして、同時に気付く。

 

 この戦いを早々に“終わったもの”だと決めつけてしまっていたことに。

 

 絶望的な差。

 

 それでも、相手は全力で私を倒そうとしに来ている。

 

 「……」

 

 使う予定はなかった。

 

 勝手に決めつけていた自分への、ほんの少しの後ろめたさ。

 

 だからせめてものお詫びに、私も全力で応えようと思った。

 

 

 「お詫びに私も見せてあげる」

 

 

 ゆっくりと手を上げ、自身の髪を耳にかけた。

 

 その動作に合わせて、隠されていた小さな髪飾りが露わになる。

 

 そこに嵌め込まれていたのは——七色の輝きを秘めたキーストーン。

 

 

 「まさか!」

 

 

 それを見たキクコの表情が驚きに変わる。

 

 アリアの指がそっと髪飾りに触れる。

 

 すると、キーストーンが淡く光を放ち始めた。

 

 

 「私たちの全力を——!」

 

 

 その声に応じるように、共鳴したメガストーンの光がバンギラスの巨体を包み込んでいった。

 

 その光の中心で、バンギラスの姿が変貌を遂げていく。

 

 背中の棘はさらに鋭さを増し、岩の鎧のような体躯は一回り大きくなっていく。

 

メガバンギラスが咆哮を上げ、肌を切り裂くような砂嵐が吹き荒れた。

 

 そして——。

 

 

 「逆鱗!」

 

 

 「ゲンガーよけ——」

 

 

 爆発音が響き、キクコの横を何かが高速で過ぎてゆく。

 

 背後で何かが激突する。

 

 キクコが後ろを振り返れば、壁に埋まったまま動かないゲンガー。

 

 そのままゲンガーをメガストーンの光が包み込み、メガ進化が解除された。

 

 

 「げ、ゲンガー戦闘不能…。よって、勝者…チャレンジャーのアリア!」

 

 

 

 

 

 

 




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