父はフランス料理が得意で実家は定食屋だった幸平 創真。現在は幸平の姓は薙切に変わり、薙切 創真と呼ぶ。元遠月学園第1席にして「天才」と言われていた。
母は実家が薙切家だった遠月学園の薙切 恵里菜で総帥であった。今は総帥と復帰したところである。私を育ていた間は夫の幸平 創真に総帥の座を代理として任せた。母はイタリア料理が得意である。
父と母のレストランは父の実家の定食屋を遠月グループの力で改装したものだったが私は父と母の料理する背中を見ていたのだ。
いつも美味しそうな匂いが厨房から入ってくる。たまに副店長の美作 昴のおじさんが働いているが、私はそんな美味しそうな様子をいつものように両親が働く姿を見ていた。
「店長、こっちは卵焼きできました。」
美作のおじさんとは別のおじさんが言う。
「おう。美作、そっちはできるか?」
「店長、あと3分で焼き上がります。」
と美作は少し黙って
「しかし、まさかフランス料理とイタリア料理を大衆料理に出してしまうとは流石ですね。」
父が言う。
「親父である城一郎よりも個性的でいいだろう。」
幸平 創真の父で私の祖父である城一郎は肺ガンを患っており、いつ死んでもおかしくはなかったので無理矢理、父が入院させたのだ。
すると美作おじさんがこっそり厨房の様子を覗く私に気づく。
「うん?」
「綾お嬢様?そんな所で何をしているのですか?」
と美作は言う。
「お父さんの仕事を見るの。」
と言う。
「無茶言わないでください。旦那様に見つかったらタダではすみません。ここは退いてください。」
「ヤダ!!」
今の私は5歳児なのだが我儘な性格なのだ。
だが今まで拒否していたお父さんから驚くことを言われる。
「美作、ウチの娘をこちらにこさせてくれ。」
「俺だって3歳から包丁を持った。綾もそろそろ料理を経験させようと思う。」
「分かりました。旦那様がそこまで仰るなら言いでしょう。」
美作が渋々答えると
私が父の元へ来る。
「パパ!!」
「よしよし。綾は良い子だ。父さんが今から作る料理を見せてやろう。」
父さんは素早い動きでテリーヌ(フランス料理)を作った。
「だがおまえはまだ作るのは速いから包丁の持ち方から学ぼう。」と言うと
私は言う。
「うん!!」
「あなた、私にも綾をこっちにこさせてくれない?」
落ち着いた良い腰で母である薙切 恵里菜が言う。
「あぁ、綾、すまんが包丁の持ち方はあとだ。お母さんの手伝いのほうに行ってくれ。」
「うん!!」
料理で子供の手伝いというのは見て学ぶということを前に父さんが言っていた気がする。
「お母さん?」
「いい? 綾。今からお母さんも作るわね。」
フェットゥチーネをお母さんが作る。
数年後、
私は12歳になり、父と母の手伝いをすることになった。うちの店の従業員は美作のおじさん合わせて29人。うち21名は昼勤。残り8名は夜勤の人。
「お姉ちゃん遊ぼう。」
うちの妹は葵。5歳下の妹だ。
ある時、お父さんとお母さんは消えてしまった。美作のおじさん曰く遠月学園の仕事もあるとのことで。お父さんは堂島さんと時折、祖父の様体を常に報告しながら世間話や料理に関することを話すのだという。
私はお父さんの物腰柔らかい性格が好きでたまらないから速く帰って欲しい。ところがその夜、美作のおじさんが店の戸締まりして帰っていくと黒ずくめの日本人が現れ、
「薙切の子か、人身売買のお金にはなるな...........。」
そして私と葵は売られたのだ。悲しかった同じ日本人に裏切られたのだ。
しかし奇跡がお起こる。
「日本人2人 女性 12歳と7歳 両健康」
「200万円から」
「8000万」
「1億4000万」
「3億6000万」
競売人の声しか聞こえなかったが次の人が私たちを買ってくれたのだ。
「12億7000万!?」
「12億が出ました!!」
「他にいませんか?」
「それでは落札しましょう。」
ハンマーの音がして私達は落札されたのだ。私を購入した人はアドラステア帝国のアヴァンダルというところで料理人をしていたバーナード・ファンダル・ヴァーリ。
バーナードさんは私達にアドラステア帝国の料理を教えてもらった。
「いいかい。君達はアドラステア帝国に住む。大日本帝国時代の姓と名を捨てないといけない。今日から私の子になりなさい。」
日本だと養子縁組してくれる人はあまりいないらしい。ますます日本と日本人が腹がたったが私こと綾は今日からアドラステア帝国で薙切の姓を捨てヴァーリと名乗り、リシテア・フォルデ・ヴァーリ。葵はアリス・ファルナム・ヴァーリと名乗るようになる。