ポケモン LEGENDS KYUREM 〜英雄、二人〜 作:影山ザウルス
ソリダゴ、ハナナ、テフラの3人は強面店主の店に集まっていた。
そこにはズルッグの窃盗被害を受けた露天商達も集まっている。
露天商は事前に窃盗犯を捕まえたという話を聞いていたため、その表情は皆、険しい。
「それで、ポケモンは?」
テフラはモンスターボールを取り出し、中からズルッグを呼び出した。
ズルッグはどこか怯えている様子で、大人しくしている。
露天商達の視線がズルッグに向けられると、露天商達の顔に明確な怒りが現れた。
「このッ!!」
露天商の1人がズルッグに歩み寄るが、テフラがズルッグを守るように立ち塞がった。
「退け!!俺や他のがどれだけ迷惑かかったと思ってんだ!!?」
露天商が凄むが、テフラは頑なに立ち塞がる。
他の露天商達も今にも怒りが爆発しそうだ。
「皆さん、お待ちください」
露天商達の怒りがズルッグに向けられ、そんなズルッグを守るように立ち塞がるテフラと、その場を治めようとするソリダゴ。
しかし、空気はどんどん悪くなるばかり。
そこへ大鍋を持った強面店主が現れる。
喧嘩腰の露天商達にその鋭い眼光で睨まれると大人しくなり、テフラとソリダゴにも座るように促す。
その後ろから人数分の皿を持ったハナナが転ばないように慎重に歩いてくる。
強面店主はハナナから皿を受け取ると、大鍋に用意したスープを入れて、その場に集まる全員に振る舞った。
「パンもありますよ」
ハナナが店の奥からカゴに入ったパンを持ってきた。
ソリダゴとテフラは振る舞われたスープに恐る恐る口を運んだ。
「美味しい……!!」
「ああ、やっぱり店主のスープは最高だな」
「この味のために露天商やってんだよな」
露天商達は店主のスープを口々に褒め称える。
実際、その美味しさにソリダゴとテフラも驚いている。
その美味しさは兵舎で出されるスープよりもずっと美味しい。
店主は店の奥に行き、大皿を一枚と何かが入った麻袋を持ってくると、ズルッグの前に大皿を置いた。
麻袋の口を開くと、大量の木の実が溢れ出し、大皿に山積みにした。
「ズル〜!!」
目の前に出された大量のご馳走に目を輝かせるズルッグ。
しかし、出された量はズルッグ一匹では食べ切れない。
それを見たハナナはソリダゴとテフラを促し、アチャモ、ニャオハ、ゼニガメをモンスターボールから出した。
「ゼニィ!!」
「チャモチャモ!!」
「フニャ〜」
四匹が揃うと、一斉に大皿の木の実を食べ始めた。
無邪気に木の実を頬張る四匹。
その姿を見る露天商達の顔からは怒りが消えていた。
「こうしてみると、ポケモンって可愛いのね」
「そうね、ずっと恐いものだと思ってたわ」
まだ人間とポケモンが分かたれているこの時代において、ポケモンの区分は大きく二つに分かれている。
一つは攻撃的で危険なポケモン。
もう一つは危険は少ないポケモンだが、注意が必要。
結局のところ、ポケモンには常に危険が伴い、騎士団以外の人には実際に間近でポケモンを見る機会などそんなに多くは無い。
「さっきはカッとなって悪かったな」
さっきズルッグに歩み寄ろうとした露天商が言った。
「いえ、皆さんのお怒りも尤もです。今後は自分達3人でズルッグが犯した窃盗被害の弁償を行っていこうと思っています」
「時間は掛かるかも知れません!!でも、お願いします!!」
3人は立ち上がり、露天商達に深々と頭を下げた。
それを見たゼニガメは木の実を食べる手を止めて、露天商の方へと歩み寄る。
その後ろにズルッグ、アチャモ、ニャオハが続き、四匹も頭を下げる。
指示を出していたわけじゃない。
おそらく、ポケモン達が自分達の意思でその行動を取ったのだ。
「ああもうわかったわかった!!頭を上げてくれ!!」
「では……?」
「俺達も商売人だ。客に、増して子供に頭を下げさておいて意地を通すつもりは無い」
露天商達は皆同意見のようだ。
「ただ、アレだ……その、ちょっと、たまにでいいから店を手伝ってくれねえか?」
「アタシの知り合いの赤ん坊の面倒を見てほしいの」
「最近またドブが溜まってきて参ってたんだよな〜」
露天商は口々に様々な依頼を言い出す。
それらは以前、3人が熟したポケモンに関係の無い依頼だった。
3人にはそう言った依頼を受けないように釘を刺されている。
ソリダゴはそれらを断らなければいけない。
「わかりました!!」
しかし、先に口を開いたのはハナナだった。
「ただ、騎士団としてではなく、私達が個人に……ということでお願い出来ますか?」
「ああ、それで頼むよ」
露天商は笑顔で3人に拍手を送る。
「いいのか?そんなこと勝手に決めて?」
ソリダゴがハナナに耳打ちする。
「騎士団としては出来ないけど、個人で皆さんのお手伝いをするななんて言われてないでしょ?」
「どこでそんな屁理屈を……」
「盲点を突いたって言って」
ハナナはどこか誇らしげに笑うのだった。
ポケモン。
それはこの世界のあらゆる場所に住む生き物。
草原に
山に
川に
海に
空に
雪原に
やがてポケモンは街の中でも見られるようになっていく。
そして、ポケモンは深い霧に覆われた墓地にも。
墓地の片隅に佇む小屋には、紫色のボサボサの髪を一つにまとめた少女がお茶を入れている。
まるで、誰かの帰りを待ちわびるかのように。
そのため音も無く小屋の扉をすり抜けて、小屋の中に入ってきた巨大な影には気付かない。
胴体に巨大な口と頭部の紅い一つ目がある特徴的なポケモン。
「ノワ」
まるで、『ただいま』と言ったようなポケモン。
「あ、おかえりなさい、ヨノワール」
少女はこのヨノワールの帰りを待ちわびていた。
少女は淹れたてのお茶をヨノワールと呼ばれるポケモンに振る舞う。
お茶を振る舞われたヨノワールはゆっくりとお茶を啜る。
まだ人とポケモンが分かたれているこの時代の片隅で、人知れずにポケモンとの絆が生まれている。