ポケモン LEGENDS KYUREM 〜英雄、二人〜   作:影山ザウルス

16 / 22
2つの道〜出発編〜

ホワイト・ゴード社での調査を終えたハナナとテフラ。

プラズマ騎士団の資料室から埃を被ったダンゴロ洞窟の内部がわかる資料を見つけたソリダゴ。

三人はニールの待つ研究所で合流した。

それらの指示を出したニールはと言えば、研究所の本棚の中身をぶちまけたように大量の本の読み漁っている。

 

「ニール博士、ただいま戻りました」

 

「Bon retour.皆、どうでしたか?」

 

ニールは本を読み続けながら、三人に声を掛けた。

その様子から、ニールの不穏な閃きの重要度を感じ取った三人は早速報告を始める。

 

「まず俺から。ダンゴロ洞窟の内部構造がわかる資料を見つけました。ただ埃を被るほど放置されていたので、現在のダンゴロ洞窟とどれだけ違いがあるのかまではわかりません」

 

「Oui」

 

ソリダゴが広げた資料を見るニール。

そこに描かれているのはダンゴロ洞窟を横から見た時の断面図と上空から見た時の断面図、簡単な穴の縦横長さ、出入り口との高低差とダンゴロ"しか"生息していないという注釈のみが書かれた資料だ。

 

「Oh mon Dieu.ここはきっと学術的に価値ある洞窟なのに、これだけなんて……」

 

ニールは資料から得られる情報量の少なさに落胆を隠せない。

今でこそ玉石採掘の重要地点。

この資料が作成されたのがいつなのかはわからないが、洞窟としての構造も中にある資源も資料作成当時には重要視されていなかったことが伺える。

 

「ハナナ、テフラは話を聞けたかい?」

 

「ハイ!!たくさん聞けました!!」

 

ハナナとテフラはホワイト・ゴード社で聞いた水の痕跡についての報告をした。

情報の真偽と関連性という点においてはさておき、情報量だけは大量だった。

何しろ二十年近くダンゴロ洞窟で働いていた人達の情報なのだから、情報量も相当なものだ。

 

「très bien!!まさかこんなに水の痕跡があるとは……ダンゴロ洞窟に水が、いや地下水脈があるのはほぼ確実だろうね」

 

ニールは集められた水の痕跡のメモを見直して、ソリダゴの持ってきたダンゴロ洞窟の資料と交互に見比べた。

 

「Je vois.ダンゴロが逃げ込む横穴……この先から聞こえる水が流れる音……ダンゴロしかいない洞窟……」

 

ニールの頭の中では集まった情報から考えられるダンゴロ洞窟の状況を考察が始まっている。

その様子をただ見つめるしか出来ない3人。

だが、ソリダゴだけはハナナとテフラが集めてきた大量の情報を見つめていた。

大工房での話を聞く限り、容易に情報を聞き出せる状況ではなかっただろう。

しかし、2人はこれだけの情報を集めることが出来た。

一方の自分はと言えば、古びた地図を見つけてきただけ。

 

「Monsieur ソリダゴ」

 

突然、名前を呼ばれてソリダゴは我に返る。

 

「キミが持ってきた資料はとても重要なことを教えてくれた。merci」

 

ニールは優しく微笑むが、ソリダゴには納得がいかなかった。

資料は古く、洞窟の内部構造とダンゴロしかいないとしか書かれていない資料にどんな重要なことがあると言うのだろうか?

そんな逆上を見抜いているのか、ニールは資料の重要性を話し始める。

 

「この資料に書かれた情報は確かに少ない。でも、"書かれていない"ということも重要な情報なんだ。例えば、洞窟内部構造に水の痕跡や横穴の記載は無い。しかし、それ以外はかなり正確に書かれている。この資料が作成された時には、おそらく横穴も無かったと考えられる。他のページの資料も見たけど、水がある所にはちゃんと水の痕跡が描かれているし、作成者の欄も確認したけど、この資料を作ったのは、こういう地質の調査を行う1つのgroupeが携わっている。つまり、ダンゴロ洞窟だけ手抜きがされている可能性は少ない。それだけこの資料が信頼するにあたる資料だという証明なのさ」

 

ニールには何もかも筒抜けのような気がして、ソリダゴは自分の顔が熱くなるのを感じた。

 

「さて、皆。今日はお疲れ様!!あとはボクに任せて!!」

 

「え?でも……」

 

時間の猶予がどれくらいあるのかわからない現状で、ニールに任せていいのだろうか?

決してニールを信頼していないというのではなく、もっと自分達に何か出来ることは無いのだろうか?

 

「Ne vous inquiétez pas.あの堅物団長をギャフンと言わせる資料を作るからさ。でも、その先はきっとシーカーの出番が来る。だから、ゆっくり休んで、備えておいてほしいんだ」

 

ニールがウインクすると、半ば強引に研究所から3人を追い出した。

3人が出て行った後も、ニールはしばらく3人が離れたかどうか聞き耳を立て、3人の足音が遠ざかったのを確認すると大きな溜め息を付いた。

そして、吐き出した分の空気を吸い込み直して、机と向き合った。

 

「さて、どうやってあの堅物に納得させようか?」

 

頭の中で集まった情報を整理しつつ、広がった資料の整理も始めるニール。

その中に見慣れない書類が1枚混ざっていた。

拾い上げ、確認すると

 

『本日を以て貴社との契約を全て打ち切らせていただく』

 

とだけ書かれている。

 

「これは……?」

 

見るからに上等な紙に丁寧な細工の判が押されている。

しかし、ニールにはこの書類が何の書類なのかわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボルツの朝は早い。

プラズマ騎士団の団長は、騎士団に入団してからの経験と積み上げた実績に基づき選出される。

つまり、ボルツは騎士団の中で最強のポケモン使いであることを示している。

しかし、最強故に彼が前線に立つことは少ない。

彼が立つということ自体が、その危機的状況と緊急性を物語ってしまう。

そのため大規模なポケモンの暴走や大量発生でもない限り、陣頭指揮を執ることはあっても、直接戦闘に出ることは稀である。

そんな団長が普段行っている業務と言えば、執務室に籠もり、大量の書類との格闘だ。

書類の内容と言えば、任務の報告書や騎士団の運営に関わる書類、各地でのポケモンの動向の報告書、依頼書の選定と依頼に従事する騎士と貸与するポケモンの選別などなど多岐に渡る。

事務作業に関しては確かに事務所というものはあるものの、事務所の裁量で決定を出せない案件は団長の所に回ってくる。

ボルツにとっては、ポケモンよりも厄介な相手とも言える。

そのため彼は朝早くから執務室に行き、書類との格闘を始めるのだが、今朝に関しては、自分よりも早く朝を迎えた人間が待ち受けている。

いや、その白衣を着た風変わりな男はまだ夜の続きのようだ。

目の下にはクマが出来ていて、眠そうにあくびをする度に頭の上に乗っている鳥ポケモンに頭を突かれている。

 

「オキロ!!オキロ!!」

 

「起きた起きた。大丈夫、寝てな……ファぁ〜……」

 

特大のあくびをすると再び鳥ポケモンが風変わりな男の頭をつつく。

 

「あ、Bonjour Monsieur.」

 

風変わりな男がボルツに気がつくと封筒を見せびらかすように手を振った。

 

「こんな朝から何の用だ?Monsieur ニール」

 

ボルツは正直このカンパ・ニールという男が嫌いだ。

ボルツはポケモンという危険な存在から国民を守るために戦ってきた。

対するニールはポケモンとの共存を目指し、ポケモンの生態を研究するためにハルモニア王国に来たという。

思考、いや思想が正反対。

水と油。

白と黒。

そんな男に嫌悪感を抱きつつ、何かと避けてはいるが、立場上そうもいかないのが忌々しく感じる。

 

「現在進行中のダンゴロ洞窟への採掘任務に関して、お知らせしたいことがありまして」

 

「それで徹夜というわけか?」

 

「ええ、まあ、ファぁ〜」

 

再びニールがあくびをして、頭の上の鳥ポケモンがニールをつつき始める。

 

「……そうか。なら、後で目を通そう」

 

ボルツはニールから書類を受け取ろうと手を伸ばすが、ニールは差し出さない。

 

「Non.後ではダメです。今、目を通してもらいます」

 

ニールは眠そうな目に火が灯ったように真剣な眼差しで、ボルツを見つめた。

ボルツもダンゴロ洞窟のことは知っている。

今回の採掘任務では十分な人員を当たらせているため、今更報告されるようなことはないと感じている。

しかし、目の前にいるニールは是が非でも報告書に目を通してもらうまで引き下がるつもりが無いと感じる。

 

「…………わかった、目を通そう」

 

ボルツは執務室に入り、ニールも中に招き入れた。

ボルツが執務室の机に座ったのを確認すると、ニールはすかさず封筒を差し出した。

ボルツは鬱陶しさを感じながらも、封筒を開き、中の報告書を取り出すと、早速目を通し始めた。

報告書の結論を言えば、採掘任務の即時中止とダンゴロ洞窟内部構造の再調査の必要性が書かれている。

その理由はダンゴロの生態が関わっている。

ダンゴロは岩タイプのポケモンとしては珍しく、地下水を飲む習性がある。

これは水タイプの攻撃や水そのものに耐性があるということではないが、岩のように硬い皮膚が大量の水を飲んだことにより、柔らかくなる事例が発見されたことがある。

つまり、ダンゴロが生息する場所には多かれ少なかれ水があることになるのだが、過去に行われたダンゴロ洞窟の調査資料には、水の痕跡の記載は無い。

その一方で、玉石の採掘を行なっていたホワイト・ゴード社の証言によると、ダンゴロ洞窟内部には無数の横穴があり、その周囲や横穴の奥からは湿った土や水の音など水の痕跡が確認されている。

これは、ダンゴロ洞窟にプラズマ騎士団が把握出来ていない未知の空間と地下水が存在する根拠となり、再調査を行う理由として挙げられている。

しかし、仮に未知の空間や地下水があったとしても、採掘任務を即時中止する理由にはならない。

考えるべきは、ダンゴロには本来"地下水を探り当てるほどの能力は無い"ということ。

それでは"何者"が地下水を見つけたのか?

そして、何故ダンゴロ洞窟にはダンゴロ"しか"いないのか?ということを考える必要がある。

まずダンゴロ洞窟の地下水を発見に関わっているのは間違いなくダンゴロが進化し、僅かな地下水も見つけることが出来るガントルによるものだと断定出来る。

つまり、ダンゴロしかいないと思われているダンゴロ洞窟にはダンゴロの他にガントルが生息している可能性が非常に高い。

おそらく、ダンゴロ洞窟の調査が行われた時よりも以前に、ガントルによって洞窟内部の地下水が見つけられたのだろう。

それによりダンゴロ洞窟にダンゴロとガントルの群れが住み着いたと考えられる。

ダンゴロしか生息していないと思われていたのには、把握されている洞窟内部にダンゴロしかいないだけであり、未知の空間にはガントルも生息していると考えられる。

そして、長い年月を経ても尚、発見を免れたままダンゴロとガントルの群れは未知の空間でその生息数を増やしていると考えられるため、もしも採掘任務中に遭遇した場合の危険度も未知数と言える。

以上が報告書に書かれている内容になる。

 

「なるほど。未知の空間に危険度が未知数のポケモンの巣窟……確かに再調査は必要なようだな。だが、モンスターボールの製造が中断している現状、玉石の採掘任務を中止することは出来ない」

 

ボルツはそう言いながら、ニールが徹夜で書き上げた報告書を捲りながら、自分の考えを曲げるつもりが無いことを伝える。

その報告書を捲る手は正直読む価値無しと判断するように素早いが、最後の1枚を見た途端、ボルツの手が止まった。

そこには契約の打ち切りを通知する"あの書類"。

 

「Monsieur.この書類は?」

 

「……さあ?」

 

ニールはまるでその反応を待っていたと言わんばかりにわざとらしく答える。

現在、大工房ではホワイト・ゴード社が採掘した玉石の納品が無く、モンスターボールを作れない状況にある。

そのホワイト・ゴード社はプラズマ騎士団から一方的に契約が打ち切りになったという証言を得られている。

その証拠の書類が紆余曲折あり、今まさにプラズマ騎士団の団長の手元にある。

しかし、団長はと言えば、契約の打ち切りという事実そのものを"知らなかった"。

そのため、騎士団から数名をダンゴロ洞窟へと派遣し、玉石の採掘任務に当たらせているというのが現状だ。

 

「Monsieur ボルツ.ボクはある1点だけにおいて、あなたを信頼しています。それはあなたがポk」

 

「私はポケモンが嫌いだ」

 

「oui Monsieur」

 

ボルツにとってポケモンは親と故郷を焼き尽くした憎い仇であり、その憎い仇を打破するための道具と思っている。

騎士団に入団してからも、復讐のためだけに戦ってきた。

しかし、一人の騎士の力などたかが知れている。

一匹でも多くのポケモンを打破するためには、騎士団に所属するポケモン使い一人一人の練度を高め、強いポケモンを集める必要がある。

モンスターボールはそのために必要不可欠な道具の1つだ。

ボルツにとって、そのモンスターボールの製造が中断されることはあってはならないし、ましてやそんな状況を作り出すことなどあり得ない。

 

「つまり、騎士団の内部にこの状況を作った者がいると?」

 

「ボクにはわかりません。ボクにわかるのは、ダンゴロ洞窟に行った団員の皆さんが危ないということです」

 

いつになく真剣な眼差しのニールと、この状況を作り出した人間が騎士団内部にいること知って怒りに燃えるボルツの視線が火花を散らす。

 

「採掘任務の中止は出来ない」

 

ボルツの意志は鋼のようだ。

 

「しかし、団員の危機的状況とダンゴロ洞窟の再調査の件を両立する方法がある」

 

ボルツは引き出しから何も記載されていない書類を取り出し、ペンを走らせる。

そして、何かを書き終えると書類をニールに差し出した。

 

「ポケモン調査隊シーカーにダンゴロ洞窟への増援、及びダンゴロ洞窟内部の再調査任務を命じる」

 

ボルツがニールに渡した書類には任務の内容と、任務に伴う必要な物品の用意の許可する旨が記されている。

 

「Je comprends.Monsieur ボルツ」

 

ニールはまるでこの結果になることを予測していたかのように笑みを浮かべ、大袈裟に一礼すると執務室を後にした。

一人執務室に残ったボルツは再度書類に目を通す。

 

 

 

 

 

 

徹夜明けの眠気をソリダゴ、ハナナ、テフラの3人が揃うまでの僅かな時間で解消しようと仮眠を取ったニールだったが、ハッキリ言って寝不足だ。

しかし、徹夜した甲斐もあってダンゴロ洞窟への増援と再調査任務を取り付けたニールはいつになく上機嫌だ。

 

「どうだい!?あの団長から任務を取り付けたよ!!」

 

ニールは集まった3人に任務の許可書を見せびらかした。

 

「やりましたね!!でも、どうやって?」

 

「いい質問だね、mademoiselle ハナナ。自分が求めている要求よりも、大きい要求を相手に提示させると人という生き物は……」

 

「あの、ニール博士……」

 

ニールが自慢げに心理学の知識を披露しようとした所にソリダゴが割って入った。

もちろん、心理学が役立ったことは事実ではあるものの、悠長に構えている暇も無いのが実際の所だ。

おそらく、先行した採掘部隊はホドモエから船に乗る頃か、場合によっては昨夜の内にシッポウ港に到着する頃だと考えられる。

 

「ああ、ごめんごめん。つい上手くいったから自慢したくなっちゃった」

 

「あ、いや、そうじゃなくて……」

 

ソリダゴは視線をハナナに向けた。

 

「ハナナ、大工房のシルフさんから預かった手紙はあるか?」

 

「え?うん、あるよ」

 

ハナナは鞄から昨日受け取ったマスター・コウテツ宛の手紙を取り出した。

それを見たソリダゴは神妙な面持ちで口を開く。

 

「提案なんですが、ダンゴロ洞窟に行くのと、カナワ盆地のマスター・コウテツへ手紙を届ける二班に分けて任務にあたるのはどうでしょう?」

 

それを聞いた3人、特にハナナとテフラはソリダゴが別行動を提案することなど初めてのことで驚きは計り知れない。

 

「……理由を聞いても?」

 

「まず、今回ダンゴロ洞窟に行くのはモンスターボールの素材である玉石を採掘するため。そして、その手紙はモンスターボールの製造を担う大工房から預かったものです。だから、どちらも優先順位が高いと考えます」

 

大工房のシルフには「出発は明日」と言ってるが、その後に出たダンゴロ洞窟への増援と再調査命令を比べた際、命令の方が優先されるべきだ。

しかし、どちらもモンスターボールという騎士団にとって重要な案件として、共通しているのも事実。

 

「なので、ハナナとテフラにはカナワ盆地に向かってもらい、ニール博士と自分がダンゴロ洞窟への増援に向かうというのはどうでしょう?」

 

その瞬間、ハナナが何かを言いたげに一歩踏み出すが、それをニールが制止した。

 

「……その人員配置の根拠は?危険度未知数のダンゴロ洞窟に行くんだから、全員、少なくとも岩タイプに強いゼニガメ、ズルッグもいるテフラが行った方がいいのでは?」

 

「まず、博士は洞窟の再調査があるので洞窟に行ってもらう必要があります。次に戦闘が起きた場合ですが、確かにニャオハだけでなく、テフラのポケモン達もいることが理想です。ですが、そうするとカナワ盆地に行くのがハナナだけになってしまいます。かと言って自分とハナナがカナワ盆地に行くには散発的に起きる戦闘でバランスが悪いと考えています」

 

カナワ盆地までの道のりの開拓はほとんど手付かずの状況で、生息するポケモンも把握出来ていない。

草タイプと炎タイプのポケモンが苦手とするポケモンが現れた場合、カナワ盆地にたどり着けるかどうかも怪しい。

しかし、ゼニガメ、ズルッグ、アチャモの3匹ならば互いに弱点を補い合うことが出来るだろう。

 

「そ、それなら皆一緒にダンゴロ洞窟に行った方が……!!」

 

「ハナナ……ダンゴロ洞窟に行った後は採掘と再調査があるんだ。手紙を届けるのが遅くなる。それにダンゴロ洞窟が危ないって決まったわけじゃないんだ。先発した採掘部隊もいるし、ニャオハは進化を控えてる。きっと大丈夫だ」

 

ソリダゴは終始落ち着いた口調で話している。

提案の内容も、班分けも合理的で、それを否定する理由も見当たらない。

強いて気になるとすれば、やはりハナナとテフラの反応とソリダゴの態度。

3人は幼馴染で、ソリダゴだけ2歳年上ということもあり、騎士団に入団したいと言ったハナナとテフラを入団出来る年齢になるまで待っていたという話は以前聞いていた。

それだけハナナとテフラの側を離れなかったソリダゴが今回は2人との別行動を提案しているのだ。

 

「oui.ソリダゴの提案を受け入れましょう」

 

「博士!!?」

 

ニールの返答に驚きを隠せないハナナ。

 

「ハナナ……手紙を届けるのも立派な任務です。それに決してハナナやテフラが足手まといになるから別行動するわけじゃないのはキミもわかっていますよね?」

 

岩タイプのポケモンの巣窟に炎タイプのアチャモは確かに不利ではあるものの、それならば別の貢献の仕方もある。

だから、ソリダゴは決してハナナを足手まといだと思っている訳ではない。

今回はたまたま優先順位の高い事案が2つあり、その解決にどう動くべきか考えた末の判断だ。

 

「…………わかりました」

 

「テフラもいいか?」

 

ソリダゴの問いかけにやや不満げではあるが、テフラも頷いた。

 

「ヨシ、そうと決まれば早速準備だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

準備を終えたのはその日の昼前。

カナワ盆地に行く2人は鞍と手綱を付けたゼブライカを引いている。

本来気性の荒いゼブライカだが、専属の調教師によって騎士団員であれば誰でも乗れるように訓練されている。

一方のダンゴロ洞窟に向かう2人は大きな荷車を引くバッフロンのそばに立っている。

 

「それじゃあ、2人共気を付けて行くんだぞ?」

 

「ダゴ兄も無茶しないんだよ?」

 

そう言って、しばしの別れを惜しむように言葉を交わすとハナナとテフラのベルトから突然アチャモとゼニガメが現れた。

 

「チャモモ〜」

「ゼニィ」

 

「2人共、ハナナとテフラのこと頼んだぞ」

 

「チャンモ!!」

「ゼニ!!」

 

2匹は任せてくれと言うように胸を張った。

そろそろ出発しようと、テフラがゼニガメをモンスターボールに戻そうとすると、何やらゼニガメが申し訳なさそうにゼブライカの鞍を指差した。

 

「ゼ、ゼニ?」

 

どうやらゼブライカの背に乗りたいらしい。

テフラはゼニガメを持ち上げて、鞍の前方に乗せると、続いて自分も跨った。

ハナナの方もアチャモを鞍に乗せて、出発の準備が整ったようだ。

2人は視線を合わせて頷くと、ゼブライカの腹を軽く蹴って、歩き出した。

 

「行ってきま〜す!!」

 

見送るソリダゴとニールに手を振るハナナとテフラ。

その姿が見えなくなるのを確認すると、2人もバッフロンが引く荷車に乗り込んだ。

 

「それじゃあ、ボクらも」

 

ソリダゴが手綱を持ち、出発の合図を送ろうとした直前に、どこからかペラップが飛んできて、バッフロンの頭に止まった。

 

「シュッパツ〜!!」

 

「バフォ〜!!」

 

ペラップの掛け声と共に歩き出すバッフロン。

王都から王国の西側を南下して、向かうはホドモエシティ。

港町として物流の拠点となっているホドモエシティから、海路を使って、王国南東部のシッポウ港へと向かう道が安全な道とされている。

王国の東部から陸路で向かう道もあるのだが、シッポウ港や目的地のダンゴロ洞窟の北部にはヤグルマの森と呼ばれる深い森が広がっているために通ることが出来ない。

手綱を持つソリダゴは前だけを見ているが、その表情はどこか曇っている。

 

「心配かい?」

 

「え?ああ、まあ……」

 

答えもどこかうわの空。

自ら提案し、2つに分けた別々の道をそれぞれの思いを胸に突き進む。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。