Spring Sky StarS! 作:笹ピー
ディスカバ3周年おめっとー! カービィちゃん、ほんとにありがとう!
じゃあSS投稿するね(白目
001
――我々は望む、七つの嘆きを。
――我々は覚えている、ジェリコの古則を。
――されど、希望の星は遥か彼方にて輝きを放つ――
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
0-0
何処か遠い、遠い銀河の彼方に存在する星――”ポップスター”。
その星の呆れかえるほど平和な国、”プププランド”。
そこで暮らす若者、”カービィ”は今日も今日とて、のんびりお昼寝に勤しんでいました。
ここ数日、プププランドの住人達やカレの仲間達はなにやら忙しそうにしていましたが、のんびり屋さんのカレは特に気にせず、いつも通りの様子。
今日の天気も快晴――雲一つなく透き通るような青空。
春の陽気に晒された草むらは暖かい毛布のようで、カレにとっては絶好のお昼寝日和。
樹木の下で木漏れ陽を浴びつつ、気持ちよさそうに熟睡するカービィ。
どうやら今日もカレがお昼寝から目を覚ますのは、ずいぶん時間がかかりそうです……。
――……は、……ではないですから……――
――……は……今まで本当に……――
ふと何かに呼ばれた気がして、目を覚ましたカービィ。
否、”呼ばれた”というより”聴こえた”と言うべきだろうか。
まだ寝足りないと思いつつ、小さな身体を上へ伸ばしてから大きなあくびをひとつ。
それから辺りを見渡して――そして、目にした光景にカレは目をまあるくする。
なんと、昼寝をする前に見た景色とは、変わってしまっていた!
見上げても蒼い空は見えず、代わりに薄暗い屋内の天井が見えるのみ。
足に伝わるのは草原の土ではなく、硬いコンクリートの床の感触――何処かの施設のようだ。
これには流石のカレも驚き、実はまだ夢の中なのではないかと思うほど。
しかし、カレが見る夢にしては少々薄気味が悪い場所である。
はて、と短い手で頭を搔きながら困った様子のカービィ――だったが、結局考えたところで解決しないと考え、一先ずこの建物を探索するために行動することに。
――きっと、なんとかなるさ。
そんなことを考えながら、何処とも知れない施設の探索を始めるのであった。
それから、探索を始めて数十分ほど。
探索の最中みかけた設備は、カービィが今まで見たことがない事が無いモノばかり。
当然、用法や動かし方などカレが知る由もない。
とりあえず出口を探すことを最優先していたカービィだったが、行けども行けども目の当たりにするのは、妙な置物や閉鎖された扉ばかり。
流石のカレも、終わりが見えない探索に疲れが見え始めてきた頃だった。
ひとやすみでも しようかな。
そんなことを考えていたときに、偶然にも通れるだけの隙間が開いている扉を見つけたカービィ。
よく見ると扉の隙間からは、木漏れ日の様な光が漏れ出ている。
今までと違う様子が気になったカービィは、狭い隙間を柔らかい体を活かしつつなんとか潜り抜ける――と、神聖な雰囲気を漂わせる広間へと、足を踏み入れた。
天窓からは、今までの鬱蒼とした薄暗さを感じさせない日差しが差し込み。
その日差しが当たる場所を指し示すかのように生い茂る、若芽。
――そして、大きな椅子に鎮座しながら、一糸纏わぬ姿で眠る少女の姿。
どことなく儚げな雰囲気に興味が湧いたカービィはやがて中央の椅子まで近づき、未だ眠り続ける少女の様子を伺う。
視線の先では、人形のように目を閉じたまま動く気配の無い少女。
試しに呼びかけてみようと、まあるい両手を大きく振りながら声をかける――が、返ってくるのは沈黙のみ。
おひるねちゅう なのかな?
少女の様子に対して、そんなことを思うカービィ。すると、そういえば自分もお昼寝の途中だったと、ふと思い出す。
不思議な声を聴いて目を覚ましたが、正直寝足りなかったのも事実。
この辺りはお日さまも当たって、ポカポカと気持ちよさそうだ。
ちょうど休憩もしたかったし、そのうち眼前の少女も起きるだろう。
――などと呑気に考えては、さっそく椅子の支柱を背もたれに一休みすることに。
それから数分後。
一休みどころか、熟睡しているピンクボールがいたとかなんとか。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
1-1
「……あれ? あのロボットたち、急に追ってこなくなった……?」
ピンクボールが眠りこける時、同じくして。
息を切らせつつ後ろを振り返った少女――才羽モモイは、先程まで追いかけてきていたオートマタ――人型のロボットの姿が見えないことに、不思議そうな表情を浮かべていた。
現に、いま彼女がいる工場跡地のような施設に入るまで確かに存在していた姿は、まるで幻だったかのように忽然と姿を消していた。
念のため注意深く周囲を確認し、改めて追ってきていないことを確認し終えるや否や、モモイは安堵の表情を浮かべた。
「なんでかわからないけど……ラッキー、で良いのかな?」
フーッと額の汗を拭いながら呑気な言葉を呟くモモイに「良くないよっ!」と抗議する声が。
その声を発した張本人であり、彼女の双子の妹である――装飾品の色など細かい違いはあれど、彼女と類似している――才羽ミドリが涙目を浮かべながら、彼女に詰め寄った。
「いったいなんでこんなところでロボットたちに追われなきゃならないの!?」
「お、落ち着いてミドリ、生きていればいつかいい日も来るよ」
「今日の話をしてるの! そもそもお姉ちゃんのせいでしょっ!」
モモイ自身は泣きべそをかく妹を慰めるつもりだったようだが、残念ながら効果は無く。
それどころか、相手の感情を逆撫でする結果に終わってしまった模様。
普段大人しい彼女から予想できない尋常ならざる迫力に、思わず狼狽えるモモイ。
そんな2人に、待ったを掛ける人物が。
”――落ち着いて、二人共。”
言い争い――というより一方からの抗議――を続けていた2人はその一声により口を閉ざす。
それから、やや不満な表情を浮かべるミドリがその相手へと目を向ける。
「で、ですけど”先生”……」
”先生”。
ミドリにそう呼ばれた大人は、今もなお不服そうな彼女を諭すように優しく、”とりあえず今の状況を整理しようか”、と声を掛けた。
一先ず”先生”の言葉で落ち着きを取り戻したのか、不承不承ながらも頷くミドリ。
それを傍目に、「助かった……」と呟きつつ、モモイが胸を撫で下ろした。
そして、改めて自分達が居る場所を見渡しつつ、難しい顔をしたモモイが浮かんだ疑問を呈する。
「……それにしても本当にここ、何をするところなんだろ」
そもそも、3人がこのような危険地帯に来たのは――ある事情からであった。
数千の学園が集まり作られた、巨大な学園都市”キヴォトス”。
その管理者である、”連邦生徒会”が立ち上げた――連邦捜査部”シャーレ”。
そのシャーレに所属している大人――”先生”の元に、とある”部活動”から助力を求める手紙が送られてきた。
――”ゲーム開発部”は今、存続の危機に陥っています。生徒会からの廃部命令により破滅が目前に迫っている今、助けを求められる相手は貴方だけです。
――勇者よ、どうか私達を助けてください!
文面に所々大仰なフレーズがあるのは、さておき。
困っている”生徒”の頼みを無下にはできない”先生”は、送り主であるミレニアムサイエンススクール所属の部活動――”ゲーム開発部”の部室へ事情を聴くために足を運ぶことなる。
その道中、彼女達がぶん投げたゲーム機に直撃するといったトラブルもあったが、部員である才羽モモイ、その妹のミドリとの邂逅を果たした”先生”。
自己紹介も兼ねて、改めて手紙の内容について詳しい説明を求める――その最中、思わぬ来客によってゲーム開発部の現状が明らかとなる。
ゲーム開発と謡ってはいるものの、実績に繋がるような成果はゼロに等しく。
唯一挙げられる自作ゲーム――”テイルズ・サガ・クロニクル”も”クソゲーランキング第1位”という、とても成果とは呼べない始末。
さらに言えば、正式に部活動として認められる部員数も足りていないという有様。
結論から云えば――廃部は、時間の問題。
そんな時、最後の手段、と云わんばかりにモモイがある噂話について語る。
”G.Bible”。
彼女曰く――ソレは”ゲームの聖書”。
かつてキヴォトスに在住していた伝説のゲームクリエイターが残していった記録であり、そこには”最高のゲーム”を作る方法が記されている――と謡われている、伝説のアイテム。
それを手にし、今度開催される”ミレニアムプライス”にて受賞を果たすゲームを作る――というのが彼女が思いついた、廃部を回避する手段だった。
とはいえ、”G.Bible”は所詮は噂の類に過ぎず。
実際に見たという話も明確ではない上、本当に存在しているのかも怪しい代物。現にその話を聞かされたミドリは半信半疑の反応であった。
それでも諦めきれないモモイを筆頭に、3人はミレニアム近郊の廃墟――キヴォトスの管理者であり、本来なら管轄外である”連邦生徒会”が閉鎖していた場所へと、足を踏み入れることに。
閉鎖の理由は現状不明だが、老朽化した廃ビルに罅割れているアスファルト――そして、何かを警戒するように武装したオートマタがうろついている姿を見れば、確かに閉鎖するのも頷けるほどの危険地帯であった。
そこで巡回中だったであろうオートマタに見つかり、大群に追われる羽目に遭う3人だったが”先生”の指示のおかげもあってか、なんとか包囲網を突破。それから隠れ蓑になりそうな工場跡地にまで辿り着くことができ――今に至るのであった。
「……連邦生徒会はあのロボット達がいるから出入りを制限してたのかな?」
幾分か冷静になったミドリが、今まで疑問だったこの廃墟の封鎖理由について推測を立てる。
一方、その言葉にモモイはううん、と頭を捻りつつ、思い浮かんだ考えを口にする。
「あのロボット達が実は連邦生徒会の秘密兵器で、とかは考えてみたけど……」
「何か引っかかってるんだよねー」と、自身で口にした仮説に釈然としない様子を見せる。
――その時であった。
『───接近を確認』
「えっ、な、なにっ?」
「部屋全体に、音が響いてる……?」
工場内に配置されていたスピーカーから突如として響き渡る、無機質かつ無感情な機械音声。
突然のことに驚きつつも、それぞれ携帯している”銃器”を構え、先生の前へ出るモモイとミドリ――もっとも動揺を抑えきれていないのか、両者とも不安と焦りが入り混じった様子ではあったが。
一同が警戒してる中、再び音声が響き渡る。
『対象の身元を確認します。――……才羽モモイ、資格がありません』
「え、え? 何で私のこと知ってるの!?」
『対象の身元を確認します。――……才羽ミドリ、資格がありません』
「私のことも……?」
淡々と告げていく音声に戸惑う二人。
ここへ逃げ込んだのは偶然であるにも拘わらず、機械音声――AIと云うべきか――は2人の素性を把握している様子だった。
そもそも”資格”とは何の事なのか。
疑問が尽きない一同を余所に、AIの確認作業は”もう一人”の方へと向けられる。
『対象の身元を確認します。――……”先生”、資格を確認しました』
AIが下した判定は――是。
つまりこの場において唯一人、認められたことを意味する。
まさかの承認に、驚愕を隠せない3人。
特に承認された当人が一番驚いているのが、この状況の異質さを示しているといっても過言ではなかった。
「え、どういうこと!? 先生はいつこの建物と仲良しになったの!?」
モモイが困惑した様子で”先生”に詰め寄るも、当の本人も”そういわれても……”と戸惑う様子を露わにするのみ。
立て続けに不測の事態が起こるそんな中、再び室内に機械音声が響き渡る。
『才羽モモイ、才羽ミドリの両名を、先生の”生徒”として認定。同行者である”生徒”にも資格を与えます』
そう告げると少し間を置いてから、『承認しました』と淡々と告げられる。
幸か不幸か”先生”だけではなくモモイ、ミドリの両名にも、何かしらの権限が与えられた模様。
そして今度は間を置かず――
『――下部の扉を開放します』
――下部の扉?
機械音声が発した言葉に、一同が怪訝な表情を浮かべる。
思わず足元に視線を向けるが扉らしきものなど無い。
どういうことなのか、と疑問が浮かぶ中、ある可能性に思い至ったモモイが「もしかして……」と恐る恐るといった様子で呟いた。
彼女が察したのも束の間、床部に走る一筋の切れ込み。
瞬間、3人の立っていた床が消滅――否、左右に割かれて床板が引っ込んだというべきか。
当然、上に乗っていた3人の立っていた足場が失い――落下する。
「お、落ちッ――!?」
誰かが叫んだその言葉を、耳にしつつ。
三者三様な悲鳴を挙げ、暗闇が続く穴へと落下していくのだった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
1-2
それから、不幸中の幸いというべきか、全員大したケガも無く下層部へと入りこむことに成功した3人。落下直後にちょっとしたトラブルもあったが、落ち着きを取り戻すとこのフロアを探索することに。
帰り道を探すため、という理由もあるが、特定対象の認証式による扉の開錠や、意図的に隠しているであろう下層部への入り口。そもそも、廃墟のはずなのに電気供給が行き届いている点。
それらを踏まえて、何かあると予感したモモイ達。
それが彼女達の目的である”G.Bible”なのか、はたまた別の何かなのか――期待と不安の相反する感情を抱えた、歩を進めていく。
そして――――そこで、3人は遭遇する。
「……えっ!?」
「お、女の子……?」
落ちてきた場所と打って変わって、薄暗さを感じさせない、陽の明かりに照らされた広間。
荒廃した廃墟の印象に反して、どこか神秘的な雰囲気を漂う。
そんな空間の中において一際存在感を放っていたのは――中央の椅子に鎮座しながら眠る、人形のように細やかで、おとぎ話のお姫様のような愛らしい少女。
――それから。
”椅子の下にも何かいるね……”
その椅子の支柱にもたれかかりながらグースカと眠る、ピンクボールのような生物だった。
「この子……眠ってるのかな?」
それから、警戒しつつも少女と未確認生命体に近づく3人。
そして、少女の顔を見つめていたミドリが浮かんだ疑問を口にする。
それは”眠っていることに対しての事実確認”というよりも、”そもそも本当に眠っているのか”という意味合いを含んだ疑問だった。
それを受け、少女の寝顔をジーッと注意深く見るモモイ。
そして確信を得たかのようにひとつ頷き、神妙な顔を浮かべた。
「……返事がない、ただの死体のようだ」
「不謹慎なネタ言わないで!」
元ネタを知らなければ本当に不謹慎と捉えかねない発言に、発言者を咎めるミドリ。
それに対し本人も軽い冗談のつもりだったのか、「ごめんごめん」と軽い調子で謝りつつ、ケラケラと笑う。
「こっちは完璧に寝てるってわかるのにねー」
そう呟いた彼女の視線は、”もうひとり”の方へと向けられる。
微動だにせずにじっと目を瞑る少女に対し、こちらは目を閉じながらスースーと規則正しい呼吸を繰り返す様子は、まさに居眠り中といった風。ある意味、対照的である。
そんな不思議生物に”先生”も興味津々なのか、写真でも撮るかのように”タブレット”を構えていた。
「……お姉ちゃん、あんな動物、今まで見たことある?」
「動物図鑑とか、テレビやゲームにはあんなのでてなかった、と思うけど……」
そう会話しつつ、桃色の生物に目を向けては双子の姉妹は首を傾げる。
裸のまま眠る少女もそうだが、このピンクの生物も謎の存在であることは間違いなく。
そもそも目と口は確認できるが鼻と耳の存在が確認できない以上、生物かも怪しいと考えるモモイとミドリ。それからしばらく睡眠中のピンクボールについて考え込む2人だったが、考えても仕方がないと判断したのか、再び少女の方に視線を向けたミドリが口を開く。
「というかこの子の場合寝ているんじゃなくて、電源が入ってない、って感じしない?」
「……言われてみれば、確かにマネキンっぽいね」
ミドリの言葉を受け、あらためて少女に近づきながら観察するモモイ。
その内、微動だにしない少女に好奇心が湧いたのか「どれどれ……」と言いながら、試しに相手の肌に触れるモモイだが、その肌の感触に驚愕する。
「凄い、肌もしっとりしてるし柔らかい……あれ? ここに何か文字が書かれてる」
腕のところを触っていたモモイが、椅子の肘掛に何か文字が刻まれていることに気付き指し示す。
その指先をミドリが目で追うと、確かに大文字のアルファベットが刻まれていた。
刻まれた文字は―――”AL-ⅠS”
「どう読むのか分からないけど……”アリス”って、読むのかな?」
文字の綴り的に浮かんだ名称を口にするモモイ。
偶然なのか、ある童話の登場人物と同じ名前――しかしこの状況において、この少女には何故だか相応しい名前なのかもしれない。
すると横、から覗き込んだミドリが文字の綴りに疑問符を浮かべ、「ちょっと待って」と呟く。
「これよく見ると全部同じ字体じゃなくて……AL-”1” S、じゃない?」
「え、そう?」
ミドリの疑問に目を細め文字に再度近づいて注目するモモイ――だったが、結局のところ「ううーん」と頭を捻る結果に。
ミドリの言う通り”AL-1S"かもしれないし、モモイが最初思った通り”AL-IS"なのかもしれないが、確信を以て答えられる者がいるわけもなく。
「……とりあえずこのままじゃ可哀そうだし、服でも着せてあげよっか」
「へえ、予備の服なんて持ってきてたんだ――ってそれ私のパンツじゃんっ!」
「違うよ、これは私の。お姉ちゃんのと猫ちゃんの表情が違うでしょ」
同じ女性として裸のままにしておくのも気が引ける――という考えからか、万一着ている服がボロボロになっても大丈夫な様に、持参していた予備の制服を着せていくミドリ。
おそらく”先生”が話し声に耳を傾けつつも、近づいて来なかったのはそれが原因だったのかもしれない。
持ってきた服のサイズは少女の体格には僅かに合ってはいなかったものの、何とか違和感なく着させたミドリが「これでいいかな」と、満足気に頷く。
その様子を見てようやく”先生”もホッとした表情で少女へ近付く――と同時に『ピピピ……』と甲高い電子音が鳴り響き、すぐ傍にいたモモイが肩を跳ね上げ慌てふためく。
「な、何この音!? 警報音みたいだけど……もしかして近くにロボットが!?」
「ううん……この子から聞こえた気がする」
少女の方を警戒しながらミドリが答える。
確かに彼女の言葉通り、少女から電子音声が発せられていた。
『状態の変化、および接触許可対象を感知。休眠状態を解除します――』
その音声を皮切りに。
今まで沈黙を貫いていた少女に変化が起きる。
固く閉じられていた瞼が少しづつ開くと、蒼く透き通るような瞳を覗かせる。
それと同時に、他の”生徒”と同じように頭上に天使の輪のようなモノ――”ヘイロー”が少しづつ具現化していく。
その姿だけ見れば、キヴォトスにおける”生徒”と変わりない姿であった。
突如として目覚めた彼女に、周りが唖然としている中。
徐にその相手が、口を開いた。
「……状況把握――難航。会話を試みます……説明をお願いできますか?」
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
1-3
ゆっくりと椅子から降りた少女が一同に視線を向けてから、機械的な言葉遣いで尋ねた。
そんな彼女の急な問いかけに「せ、説明?」と、モモイは戸惑う様子を見せる。
「せ、説明が欲しいのはこっちの方! あなたは何者? ここは一体なんなの!?」
一方で、内心の不安を押し隠しながら強気に質問を返すミドリ。
それに対し、問われた少女は動揺すること無く、口を開く。
「本機の自我、記憶、目的は消失状態であることを確認――データがありません」
返ってきた答えは、要約すれば”自分には記憶が無い”という衝撃発言。
だというのに少女の反応は、まるで他人事のような態度であった。
彼女の返答にミドリは「ど、どういうこと……」と、更に困惑した表情を浮かべる。
続けて、先程の勢いとは打って変わって、おそるおそるといった様子で問いかける。
「い、いきなり攻撃してきたりしないよね?」
「肯定。接触許可対象への遭遇時、本機の敵対意思は発動しません」
「うわ、すごい。ロボットの市民ならキヴォトスによくいるけど、こんなに私たちに似てるロボットなんて初めて」
そんなミドリとは対照的に、興味深々にマジマジと少女の容姿を観察するモモイ。
実際、彼女の見た目は人間と言われても疑う者はいないと云える程、精巧な造りであった。
ともあれ情報を得られなかったミドリは困った表情を浮かべては、縋るように”先生”の方に視線を向ける。その視線に気付いた”先生”は少し逡巡した後、”君の名前は?”と少女に問いかける。
「回答不可。本機の”深層意識”における第一反応が発生したものと推定されます」
返ってきたのは、回答できないという答え。先程より明確な原因が挙げられたが、彼女が一体何者なのかはわからぬまま。
結局のところ大した情報を得られず、ううん、と”先生”も頭を悩ませる羽目に。
「…………工場の地下、ほぼ全裸の女の子、おまけに記憶喪失……」
そんな中、したり顔を浮かべながらブツブツと何かを呟いているモモイ。
まるで天啓を得たかのような様子である。
姉の行動を大体予測できるミドリがその様子に猛烈に嫌な予感を察知し、怪訝な表情を浮かべる。
「――ふふっ、良いこと思いついちゃった!」
「いや……今の言葉の羅列からは、嫌なことしか思い当たらないんだけど……」
楽し気に声を弾ませるモモイとは対照的に不安げな表情を浮かべるミドリ。その様子を見て疑問符を浮かべる”先生”。
この時、この場で無理やりにでも話を聞けばよかった、と後にミドリは語る。
――そんな3人を余所に、なぜか別の方へと視線を向け続けていた謎の少女が、
「本機から接触許可対象へ、回答を要求します」
と、3人へ徐に問いかけた。
その言葉に釣られるように、
しかし、少女の視線は依然として”先生”の顔――の”横”に向けられたまま。
「そちらの”未確認生命体”の詳細を求めます」
――未確認生命体?
少なくとも自分たちのことを指しているのでは無いことはモモイ達は理解していた。ならば彼女は一体何に対して言っているのか。
相手の言動に疑問符を浮かべていた”先生”だったが、ふと気が付く。
何故かこちらを見ているモモイとミドリが、顔を青くして口を開けた状態で固まっていることに。
その時、ある違和感に気付く”先生”。
” ――いつもより、左肩がほんの少し、重いような?”
” ――今、皆は何処に視線を、向けている?”
” ――――おそるおそる、自分の左肩に目を向ける。”
”
”ハァイ!”と片手を上げながら、元気よく笑顔で声を掛けられた。
瞬間、悲鳴。
”先生”から、モモイから、ミドリから、この場所に落下したとき以上の悲鳴が響き渡った。
「おおおお、起きてたの!?」
「せ、先生、気が付かなかったんですか!?」
慌てふためく双子の姉妹だが、一番動転したのは間違いなく”先生”である。
何せ未確認生物が自分の肩に掴まっている上、至近距離から声を掛けられたのだから――実際、驚きのあまり悲鳴をあげつつ思いっきり後ろに倒れ、尻もちをつく始末。
それに対してこんな騒動を起こした張本人は”先生”が倒れる際、ピョンっと上手いこと跳んで先程まで少女が座っていた椅子の肘掛に着地。そのまま3人の慌てっぷりを不思議そうに眺めていた。
そんな3人があわわと騒然としている最中、唯一リアクションを起こさなかった少女が視線を”桃色の生物”に顔を向け、口を開く。
「対象の情報を検索…………エラー。情報の取得を不可能と推定。対象から情報の提供を試みます」
そう呟く少女に対し、その言葉の意味を理解していないカレは体を傾げ、キョトンとした表情を浮かべる。
そんな反応に構わず、彼女は一歩近づき――――お互いに見つめ合いながら、口を開いた。
「あなたの”名前”を教えてくれますか?」
奇しくも、先程自分自身にも向けられた質問。
少女に問いかけられたカレはキョトンとした表情から一転、先程の様に元気よく片手を挙げ笑顔で応えた。
――”カービィ”!――
春の陽気が見え始めてきた、今日この頃。
キヴォトスに”はるかぜ”が吹くのだった。
【 つ づ く 】
●タメになる☆TIPS集
【思わぬ来客によって判明するゲーム開発部の現状】
→一体何瀬ユウカなんだ……
【……返事がない、ただの死体のようだ】
→あのシリーズ死体も襲ってくるんだが
【これよく見ると全部同じ字体じゃなくて……AL-”1”S、じゃない?】
→これ原文だとローマ字って言ってるんだけどローマあるんかこの世界(震え声)
【そちらの”未確認生命体”の詳細を求めます】
→マジでなんなのこいつ
【Q.カービィ喋らせんの?】
→基本的に喋らせない。ポヨも言わないゲーム基準。(ウイ! とかハーイ! とかワーイ! とか)掛け声的なものしか言わないディスカバみたいなかんじ。でも生徒たちにカービィって言わせたいから名前喋るのだけアニメ設定持ってきた。我ながらなんて都合がいいんだ
基本的に吹き出しは使わず地の文で表現。ここはワシのこだわりみたいなモンなので許してクレメンス……。技名だけ喋らせるかちょっと考え中。ばくれつハンマー投げとか言わせてー
【Q.カービィ世界からあのキャラは来る!?】
→無い、諦めて。例外はいるけどワドチャンとかメタ様とか陛下とかイカサマタマゴとかフレンズとか出さずあくまでカービィ単騎。十分過剰戦力なんだよなあ
【このSS書くきっかけ】
→純粋無垢(アリスチャン+カービィチャン)同士がイチャイチャしてるのを見たかった太郎そして誰も描いてない現実にのた打ち回って我慢が利かなくなった作品がこれってワケ☆