Spring Sky StarS!   作:笹ピー

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 果たして第二章に行くまで何話書けばいいのかオラワクワクすっぞ(震え声)


011

11-1

 

 

 

 ――資格審査を終えた次の日。

 再び廃部の危機が迫りつつあるゲーム開発部は、ある場所への探索を決断した。

 

 そこは禁断の地。

 そこは廃棄された地。

 

 そこは、まだ見ぬ”未知”が眠る場所。

 

 

 

 ――ミレニアム郊外に存在する、”廃墟”へと、再び足を踏み入れたのだった。

 

 

 

 遡ること昨日。セミナー書記の担当、早瀬ユウカが退室した後の事である。

 アリスが部員として認められたことはモモイ達にとっては実に喜ばしいことだが、ミレニアムプライスで入賞できなければ廃部が確定してしまうという事実のせいで、晴れ晴れしい気持ちは微塵も無く。第一、廃部になってしまえば部員が増えたところで意味がない。

 

 審査が始まる前とは打って変わって沈痛な空気が流れるゲーム開発部――とはいえ黙ったままでは何も解決しないと、置かれた状況を確認するためにミドリが口を開いた。

 

「……結果的に、まだゲーム開発部は存続の危機、ってことだよね」

「……うう、詐欺だ、謀略だ、DLC商法だ……」

 

 ミドリの結論に、先ほどまでいた人物に対して恨みがましく呟くモモイ。

 そんな気落ちした二人の様子に申し訳なさを感じ、ユズは沈んだ表情を浮かべる。

 

「……ごめん。わたしが、会議に参加できなかったせいで……」

「ゆ、ユズちゃんは悪くないよっ。仕方ないものは仕方ないし……」

 

 落ち込むユズに、ミドリが慌てて宥める。元々こういった会議等、多く人が集まる場では代理人としてモモイが出る、というのが取り決めだったため、確かにユズは責められるべきではないと云えるだろう。尤も本人は罪悪感から顔を俯かせたままであるが

 

 一方で、心当たりが有りまくりなサボり魔は耳が痛いお言葉にうぐぅ、と苦しそうな声を漏らす。当時の軽はずみな行動を悔やんでいる模様。

 

 そんな姉に溜息を吐くミドリだが、過ぎたことを責めたところで事態は解決しないし、任せっきりだった自分にも非が無いわけではない――とこれ以上は勘弁してやることにした。問題のゲームのセーブデータは後で消させて頂くことになるが。

 

 けれども、やるべきこと――果たすべき目標はある意味明確である。

 

「……とにかく、ミレニアムプライスで受賞できるような、すごいゲームを作るしかないね」

「――ってことは、結局”G.Bible”が必要なんじゃん! またあの廃墟に行くの!?」

 

 最高のゲームを作るノウハウが記されていると謡われている、”G.Bible”。

 技術も経験も劣る彼女達がこの状況を覆すには、確かにソレに頼らざるを得ないだろう。

 

 しかし、ミドリの発言に大群のロボットに追われたことを思い出したのか「やだぁ!」と嫌々に声をあげるモモイ。そんな彼女の反応にミドリもあの場所に足を踏み入れることに抵抗が無いわけではないのか、難しい顔を浮かべる。

 どうしたって危険が付きまとうのは必然。その事実が彼女達に躊躇いが生まれてしまう。

 

 

 

 そんな二人の思い悩む様子に、一人の少女が心の中で決断する。

 

 ――……責任、取らないと――

 

 大切な仲間が、友達が。

 自分の、自分達の”居場所”を守ろうとこんなにも骨身を削ってくれている。

 

 ――なら、自分だけがいつまでも尻込みしている場合じゃない。

 

 

 

 そう考えたゲーム開発部の部長――”花岡ユズ”はモモイ達の方へと顔を上げ、おずおずと口を開いた。

 

「”G.Bible”を探しに、また廃墟に行くなら……わたしも、一緒に行く」

 

 彼女の口から出た言葉にモモイとミドリが驚愕する。この中でユズの内面を最も知る二人だからこそ、この発言は衝撃的だった。

 そんな二人の反応を余所に、ユズは語り続ける。

 

「……元々は、私のせい、だから。それにこの部室は……もう私だけのものじゃない――」

 

 

 

 ――いっしょに守りたいの――

 

 噛み締める様に呟いた一言を最後に、二人は言葉を失う。

 彼女自身、半年近く校舎の外に出てない上に授業もインターネットを経由しての受講のみ。この間の祝勝会もモモイ達の背に隠れながらで、ようやく動ける始末。

 

 そんな彼女が、今の発言をするだけにどれだけの勇気を振り絞ったのか――二人からすれば想像に難くない。

 

 そんな彼女の決意に最初に応じたのは――新たに仲間に加わった少女。

 

「パンパカパーン! ユズがパーティに参加しました!」

 

 ニッコリと笑みを浮かべたアリスが嬉しそうにユズを迎えると、抱き抱えられているカービィも笑みを浮かべて一緒に喜ぶ。二人としてもユズが一緒に行動してくれるのは嬉しいことなのが表情から窺える。

 純粋に喜ぶ二人の反応に照れくさそうにしながらも、ユズも嬉しそうに頬を綻ばせる。

 

 そんな光景を目の当たりにしたモモイ。

 そして、彼女も覚悟を決めたのか、表情にいつもの明るさが浮かび上がる。

 

「――よおしっ、そうと決まれば準備だね! 私、もう一度”ヴェリタス”に頼んでもっと詳しい場所探ってくる!」

 

 と、意気揚々と告げたモモイは、善は急げと云わんばかりに勢いよく部室を飛び出そうとする――が、「ちょっと待って」と言うミドリの一言に引き留められ、その行動は未然に防がれてしまう。

 出鼻をくじかれた不満をぶつけようとするモモイだったが、アリス――に抱き抱えられているカービィを真剣な表情で見詰めるミドリの姿が目に映り、喉から出かかった言葉をなんとか飲み込むことにした。

 

 一方、彼女に見詰められているカービィはキョトンとした様子だったが、そんなカレに構わずミドリは口を開く。

 

「……あのね。これから向かおうとするところは、危険な場所なんだ」

 

 ゆっくりと、相手の反応を確かめながら言葉を紡ぐミドリに、カービィも静かに聞く。

 

「この間は実弾じゃなかったからなんとかなったけど、今回はそうじゃない。ケガで済めば良い方……だと思う」

 

 だから、と言葉を一旦区切り、彼女はカレの目を見た。

 相変わらず、曇りのない純粋な瞳だった。

 

 

 

「カービィはどうする? ……それでも、私たちと一緒に、来る?」

 

 本意を問うような言葉を最後に、相手の応答をジッと待つミドリ。

 

 これは彼女なりの気遣いであった。

 ここから先は本当に危険なことが待ち受けているかもしれない、と暗に伝えるミドリ。

 

 結局のところ、彼女達はカービィの潜在能力を未だ図りきれていない。

 先日は吸い込み能力を披露したが、肝心の耐久性については未知のまま――無傷で事を終えてしまったのが裏目に出たとも云える。尤もその為に被弾させるつもりなど、彼女達にはさらさら無かったが。

 その反面、カレの実力について疑う余地はない。実際、与えられた作戦に基づいて行動できる辺り、それ相応の対応力と判断力が備わっているのだろう――もしかしたらこの中で一番秀でているのかもしれない。

 

 

 

 だからこそ――此処から先も付いてくるのであれば、カレの本意を確かめねばならない。

 自分たちの問題に、何の益にもならないのに、危険を孕んでいると知った上で本当に付き合うつもりなのか、と。

 

 これ以上、無理に付き合う必要は無いのだ、と。

 

 

 

 そんなことを考えていたミドリに対して、カレはジッとミドリの方へ見つめて――

 

 

 

 ――――やはり、相変わらず笑みを浮かべ自信満々に頷くのだった。

 

 

 

 それを見たミドリは、呆れたような――困ったような微笑を浮かべる。

 なんとなく、カービィの考えがわかっていたが故の反応。例え、言葉を通じ合わせられなくとも。

 

(危険とか、損得とか……多分、関係ないんだろうなあ)

 

 確証も根拠も、無い。

 しかし、そんな確信があるミドリ。

 

 きっとカレは自分のしたいことに唯々正直で、実直なのだろう。

 周りを気にせず昼寝をするのも、美味しいものに夢中に食いつくことも。

 

 

 

 ――そして、”ゲーム開発部の手助け”をすることも。

 

 そうでなければ自ら危険を呈してまで付き合うはずがない。

 

 

 

 そんな時、今まで沈黙を保っていたアリスは「大丈夫ですっ」と、ミドリを安心させるかのように自信に満ちた表情で口を開く。

 

「アリス達なら、必ずクリアできます――目指すはハッピーエンドです!」

 

 意気揚々と告げるアリスの言葉に一瞬、呆気取られるミドリ――――だったが、「そうだね」と一言呟いてから、力強く頷く。

 

「――みんなで、最高のハッピーエンドを迎えよう!」

 

 ミドリの啖呵に同意するかのように、一同は片手を高く上げ、「おーっ!」と威勢よく応答する。先程まで漂っていた暗く沈んだ空気は、もはや微塵も無く。

 

 

 きっとその先に自分たちが追い求める”ハッピーエンド”があるはずだ、と信じ――――少女達は、再び歩みだすのだった。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

11-2

 

 

 

 そして時は戻り、廃墟区域の丁度入口。

 

 誰も立ち入っていないことを示すかのように、薄汚れた立入禁止看板の前には”G.Bible”を探しに求めに来たゲーム開発部一同の姿。

 

 

 

 そして――

 

「……すみません、”先生”。またこんな場所に着いて来てもらって……」

”ううん、大丈夫だよ”

 

 申し訳なさそうに頭を下げるミドリに、優しく宥めるように声を掛ける”先生”。

 昨日、廃墟に向かうことを決意したミドリ達は早速”先生”へ今回の遠征について同行を要請したところ、二つ返事で快く頷いてくれたのだ。

 

 そんな二人のやり取りを尻目に、モモイが改めて目標地点の場所を確認する。

 

「”ヴェリタス”が教えてくれた場所は、ここから少し離れた工場跡地みたい」

「工場跡地って……アリスちゃんとカービィを見つけた、あの?」

 

 モモイの発言に首を傾げたユズが問う。

 彼女の問いに対してううん、と首を振り、モモイは更に詳しく場所を指し示す。

 

「ソコとはまた別の場所みたい。多分――……あれだと思う」

 

 スマホで方向を確認しながら指した方向へと、一同が視線を向ける。確かに視線の先には遠巻きに大きな工場の様な建物がぼんやりと視認できる。

 

 その景観を見たミドリが、ポツリと呟く。

 

「……結構、遠いね」

「凡そ、距離3㎞先と思われます」

 

 彼女の呟きに補足するかのようなアリスの言葉――とはいえ、徒歩でいけない距離ではない。精々20分も歩き続けていれば到達できる距離。

 

 ――問題は、たどり着くまでに徘徊するロボットを対処し続けなければならないことだが。

 

「……なんか、数増えてない?」

「そんなこと――……ある、かも」

 

 冷や汗を掻きつつ呟いたモモイの疑問に、ミドリがげっそりと項垂れる様に肯定する。実際にモモイの言葉通り、オートマタやドローンが3~4機程固まって行動しているのが遠目で確認できた。

 

 たまたま前回は出くわさなかったのか――或いは、厳重態勢に成り得る事が起きたのか。

 その答えを、この場にいる者たちが当然知る由もない。

 

 前回使ったルートが安易に使えなくなったのも確かではあるが、別ルートが安全である保障は無い。正面突破を試そうにも相手の残存兵力は未知数。物量に圧されれば前進も儘ならない。

 

 これには”先生”も思い悩む様に熟考する。いくら指揮能力に優れているとはいえ、悪戯に消耗戦を強いられれば”G.Bible”の捜索どころではない。

 なによりも帰路に余力を残すことを考えれば、やはり目標地点に辿り着くまで極力戦闘を避け消耗を抑えるべきなのが最善、と考えたのだろう。

 そんな”先生”に倣ってかモモイ達も何か策は無いかと頭を悩ませる。カービィも口元に手を持っていき、考えているようなそうでないようなそぶりを見せる。

 

 そんな中、ある建物がふと目に入ったユズ。

 およそ20階建てと思われるビル――その跡地が、ここから数十メートル程離れた場所に建っていた。

 

 「あのビル」と、ユズの口から無意識に漏れた言葉に一同の視線が集まる。その視線を一斉に受けたことで彼女の引っ込み思案な性格が顔を覗かせたが、なんとか心の中で抑え込みながら、今思いついた考えを躊躇いがちに口に出す。

 

「え、えと、あ、あのビルの屋上から、見渡せないかな……って」

「そっか! 上から見渡せれば配置とか行動パターンとか分かるかも!」

 

 「さっすがユズ!」と褒め称えるモモイにユズは照れる様子を見せる。幸い周辺には敵機の影は見当たらない為、内部に進入することは難しくない――エレベーターなど動いているわけがないので屋上まで階段で上がらなくてはならないが。

 

 決まりだと云わんばかりに、全員が目を見合わせ頷く。

 一同はその場を後にし、廃墟となったビルへと駆け込むのだった。

 

 

 

 それから10分程の時間を要し――階段上がりの苦しさと辛さと足疲れを約一名と一匹以外味わうことになったのはさておき――屋上に辿り着くことが出来た一同。

 

 少し休憩を挟んでから、当初の目的通り屋上から敵情視察を行おうと――

 

 

 

「……ちょっと見えにくいね」

「う、うう……」

 

 ミドリの遠慮がちの一言に、申し訳なさそうに呻きながら萎縮するユズ。

 

 確かに周りに比べれば一番高いビルであった。しかしだからと言って他の建造物が高くないというワケではない。詰まるところ他の建物との高低差に大きな差はない。

 

 結論を言えば、他の建物が地上への視界を遮っていた。

 

 とはいえ無駄足だったわけでもない。あくまで部分的な箇所の視界を遮られているだけであるため、先程よりも敵機の数や行動は確認しやすい。寧ろ先程までは全く掴めなかった動きが凡そ掴めたのは大きな進展である。

 

 ――ということを落ち込んでいる彼女に懇切丁寧に伝える”先生”だったが、やはり彼女としてはこの結果に納得できなかったのだろう。浮かない表情を浮かべるだけ。

 

 落ち込むユズの様子を見て、うーん、と悩まし気に眉を寄せるモモイ。

 

「せめて、ここから”飛んでいければ”なぁ」

 

 

 

 何てことの無い呟き――ぼやきと言った方が正しいか。

 その言葉に反応したのは、ピンクの生命体だった。

 

「偵察用のドローンでもあれば良かったね」

「ううん……けどあれ結構目立つんだよねー」

 

 そんな姉妹が話し込んでいる最中、アリスの腕からするりと抜け出したカービィが、モモイ達へと呼びかけた。その呼びかけに「ん?」と首を傾げるモモイとミドリ。

 

 「どうしたの、カービィ?」とモモイが尋ねると、自信満々に胸(と思われる箇所)を叩いてアピールするカービィ。それに対して何を伝えたいのか流石に分からず、益々疑問符を浮かべる才羽姉妹。

 

「先程のモモイ達の会話に何か反応してましたが……」

 

 そんな中、カレの行動に対してアリスは思い当たる節を述べる。

 アリスの言葉を受け、先程の会話を思い返す二人。

 

 

 

 ――ううん……けどあれ結構目立つんだよねー

 ――偵察用のドローンでもあれば良かったね

 

 

 

 ――せめて、ここから”飛んでいければ”なぁ――

 

 

 

 ――まさか。

 

 ある予感を思い浮かべていた二人を余所に、カレは大きく口を開いていた。

 しかしお得意の”すいこみ”は行わず、そのまま口を閉じる――否、空気を含んだまま口を閉じたのか、まるで風船のように膨らんだ状態になったカービィ。

 

 その状態で、コンクリートの床を蹴る。当然、身体は地から離れる。

 

 

 

 ――それで終われば、ただ”跳んだだけ”の話で終わっていただろう。

 

 

 

「――う、浮いてる……!?」

「てか、”飛んでる”っ!?」

 

 ミドリとモモイがそれぞれ驚愕の表情を浮かべ、少し離れていた”先生”とユズも何事かと目を向ければその光景に目を疑う。

 一方、モモイ達と同じく初めて見たはずのアリスは「すごいです!」と彼女達と真逆に目を輝かせ、笑みを浮かべながらはしゃぐ。

 

 

 

「カービィには”飛行能力”が備わっていたのですね!」

 

 嬉しそうに口にしたアリスの言葉通り――カービィは空中にフワフワと浮いていた。

 正確には、少しづつ落下している体を鳥の羽ばたきの様に短い手を動かすことにより上昇させ、それを恒久的に繰り返すことで結果的に飛行を可能とさせるということだろう。

 

 故に、”ホバリング”。カレが得意とする技の一つである。

 確かに、カレの軽さと驚異的な肺活量。それを踏まえれば口いっぱいに空気を含めば風船のようにフワフワと浮くことも可能なのだろう――到底真似できるものではないが。

 

 

 

 何はともあれ、カレの新たな能力を垣間見た一同だったが、ある考えがモモイの脳内をよぎった。

 

「なるほど、そういうことだね……」

「お姉ちゃん?」

 

 ふふふ、と不敵な笑みを浮かべるモモイに訝しむミドリ。そんな妹の反応はさておき、宙に浮かぶカービィへと近づきつつ向き合うモモイ。

 

「つまり、カービィを使って空を飛ぶ――そう、まるで”カプモン”のように!」

 

 ゲームで散々見た描写を思い描き、自信満々な表情を浮かべながら宙に浮かぶピンクボールの両足を掴むモモイ。

 

 

 

 空を飛ぶ、という期待を胸に。意気揚々と高らかに告げた!

 

「さあ――飛んでっ、カービィ!」

 

 

 

 カービィは 頑張って 手を パタパタ動かしている。

 モモイの足は地面から離れず。

 

 カービィは 必死に 頑張って 手を パタパタ動かしている。

 モモイの足は未だ大地を踏みしめたまま。

 

 カービィは 流石に疲れたので 口から 溜めこんでいた 空気の弾を 吐き出した。

 ”空気弾”を受けたモモイは一瞬体が宙に浮いたが、すぐさま尻もちついて地上へと帰ってきた。

 

 

 

 空気を吐き出したことにより元の姿に戻ったカービィは、尻もちついたままのモモイを見て、困ったように頭(と思われる箇所)を掻く。

 モモイは笑顔のまま、というより頬を引き攣らせたまま固まっていた――気恥ずかしさからか頬が紅潮したまま。

 

 

 

 ――何とも言えぬ空気の中、愚姉の勇姿を見届けた妹を皮切りに各々が口を開く。

 

「重いんだ」

「重かったんだ……」

”重そうだったね……”

「重量オーバーです」

「ややや、やかましいわいッ!」

 

 好き勝手言いやがる者どもに乙女の矜持をズタズタにされたモモイだった。

 

 

 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

 

11-3

 

 

 

 結論として、カービィはこの場にいる人物と一緒に飛ぶことはできない。

 ミドリから云わせれば「重量的に当たり前でしょ」という話だが、実際に試してみなければわからない。その為モモイの尊い犠牲は必要不可欠だったのだろう。多分。

 

 結局のところ話は振り出しに戻ると、現時点で確認できる機影の行動を分析し、安全なルートを導き出すことになった。幸いな事に、回り道こそあれ目的地に比較的に無事に辿り着けそうなルートを確定することができた。

 

 しかし、あくまでも視認できた集団を基にした進路。予想外の接敵も有り得る。

 決して油断はできない――そんな緊張が張り詰める中、ゆっくりと進行を続けていく一同。

 

 その甲斐あってか、時間は掛かったが敵との邂逅も無く進む一行。目的地も距離からして、残り僅かというところ。ようやく到着か、と各々安堵の表情が浮かぶ。

 

 

 

 ――その筈だった。

 

「う、うっそー……」

「こ、これは、ちょっと……」

 

 目的地である工場跡地――から十メートル程離れた建物を陰にしてモモイ達が見たのは、目的地の入り口付近を警備するオートマタの4~5体で一組の少数編隊。とはいえそれが一組ならば特に問題は無かっただろう。

 

 

 

 ――問題は、それと似た編成の部隊が10組、集っている現状だろう。

 

 巡回を行っているのが4組。建物を囲む様に間を空けながら配置されているのが残りの6組。何処かに潜伏している可能性も無きにしも非ず。

 

 今までとは違う、厳重な警備体制。明らかに何かを守っているかのような、異常とも云える配置。間違いなく此処に何かがある、と全員が確信するが――

 

「ど、どうしよう?」

「どうするも、こうするも……これじゃ見つからずになんて……」

 

 狼狽えるモモイの発言に、弱気にミドリが言葉を返す。

 事実、ミドリの言葉通りこの状況下で見つからずに建物に侵入するのは至難の業である。そして、見つかればあの場にいるオートマタが総員で襲い掛かってくるのは必然。

 編隊で言えば10の数だが、個数で見れば約50体ほど――否、他の箇所を警備している機体も騒ぎに気付けば駆けつけてくるだろう。そうなれば敵の数は増える一方になる。

 

 その状況を踏まえ、アリスは背負った銃器を降ろしながら口を開く。

 

「――強行突破しましょう、それしかありません」

「そ、そうだけど……」

 

 アリスの言葉に迷いを見せるミドリ。

 確かに彼女の言う通り手段は限られている。此処で様子を見ていたところでオートマタ達に変化はない。アレは人ではなく与えられた指示をこなす為だけに稼働しているに過ぎないのだから。

 しかし、あの数相手に切り抜けられるかという不安がミドリやモモイに迷いを生じさせる。実力もそうだが弾薬が尽きる可能性も有る。それに加えあのオートマタは重装甲で身を固めている為、生半可な攻撃では破壊は難しいだろう。

 

 そんな時である。

 静観に徹していた少女が徐に顔をあげ口を開こうと――――しかし、尻込むように口を徐々に閉ざしていき、何も言わないまま気落ちした表情で俯く。

 

 

 

 ――そんな彼女の様子を、横目に見ていた”先生”が口を開く。

 

”ユズは何か思いついた?”

 

 怯えさせない様に優しい声色で――あくまでも、彼女から口を開きやすいように。

 

 ”先生”の言葉に肩を跳ねるユズ。その言葉につられ、モモイ達の視線が彼女へと集まる。

 視線を受けたユズはしどろもどろに――というより何処か自信なさげに「いや、あの、えと、その」と言葉を濁らせるが、否定の言葉を言わない辺りやはり何か考えが浮かんだのだろう。

 

 やがて周囲の視線に堪えきれなくなり、観念して自信なさげに口を開くユズ。

 

「……成功する保証は、無い、です。あくまでも、思いつき、というか……」

 

 そう前置きをして、ユズは”思いつき”の案を説明する。途中、質問や意見などもあったものの、たどたどしくではあるが、それに対してしっかりと答えつつ説明を続けていく。

 

 居た堪れない気持ちを抱えたまま、話を続けていき――大まかな説明を終えてから、彼女は恐る恐るモモイ達の反応を伺った。

 

 

 

 対して、一同の反応は――――

  

「――いけそうじゃない!?」

「寧ろ、この案以外思いつかないかも……」

”アリスもいいかな?”

「ハイ、この作戦ならば成功確率90%は間違いありませんっ」

 

 思いのほか、各々からの好感触な反応に戸惑うユズ。

 

 その反応に対して、認められて嬉しい気持ちとは裏腹に、自分を過小評価しがちの少女にはやはり不安が勝ったのか「で、でもっ」と口を挟んだ。

 

「ぜ、絶対上手くいくとは限らないし……さっきも、上手くいかなかったし――」

「そんなことないよっ」

 

 後ろ向きな言葉を紡ごうとするユズの言葉を、モモイがキッパリと断じる。

 その言葉に呆けにとられたユズに構わず、ニッコリと笑みを浮かべたモモイが言葉を続ける。

 

「こういう時のユズって、すごい頼りになるモン!」

「うん、ユズちゃんの判断に救われたこと、結構あったし」

 

 モモイの言葉に同調するようにミドリも笑みを浮かべ頷く。その表情には、確たる信頼が籠っていた。

 そんな二人から、そんな風に思われていたとは思いもよらなかったユズは何と言っていいのか言葉を詰まらせる。しかし彼女の抱えた不安を取り除くには及ばず「けど……」と表情は浮かないまま。

 

 そんなユズを見兼ねて、「仕方ないなあ」と肩を竦めたモモイはアリスの背を押し――ユズの前へと突き出す。

 

「なら、今回の作戦の”要”に聞いてみようじゃん!」

 

 モモイの言う、”要”という単語を反応したユズが目の前に立たされたアリスとカービィに目を向ける。この作戦において、キーパーソンといっても過言ではない二人である。

 

 ユズが二人に何と言葉を掛けるべきか迷っている――その一方で、アリスは胸元に抱えているカービィへ、カービィは見上げてアリスの方へ、互いに見つめ合ってから同時に頷く。

 

「――アリス達なら、大丈夫です。このパーティなら、絶対に成功できます!」

 

 アリスの自信に満ちた言葉に便乗するように、カービイも笑みを浮かべて意気揚々と片手を突き挙げる。その表情には不安など、微塵も無く。

 

 不安を吹き飛ばさんとする二人の真っすぐな発言や反応に、ユズは言葉を失う。

 唯々、不思議で仕方なかった。

 

 

 

 不安は無いのだろうか。

 危険を顧みないのだろうか。

 

 こんな私を、どうして――

 

 

 

 戸惑いを隠せず、思考に暮れる少女に、()()が優しく”大丈夫だよ”と、声を掛けた。

 

”皆で力を合わせれば、きっと上手くいくから”

 

 その言葉に便乗するように、周りの仲間たちも笑みを浮かべて頷く。

 その言葉に――その信頼に、不思議と安心感を覚える少女。

 

 

 

 ――皆で、力を……――

 

 先程の言葉を噛み締める様に、心の中で反芻するユズ。

 完全に不安を拭えたわけではない。かつての経験上、己を卑下しがちの少女にとってやはり自分自身の行動に自信が持てないのは仕方の無いことだった。

 

 

 

 けどそれは、あくまで自分一人で決行した場合。

 今の彼女は一人ではない。

 

 

 

 自分を信じきれない少女だが、仲間の――”友達”の言葉を信じられないほど愚かではない。

 

 

 

 少し間を置いてから、やがて顔をあげたユズは大切な仲間へと目を見つめ返す。

 不安はあれど――先程とは違い、決意した表情を浮かべて。

 

 

 

 そして――彼女の立案した作戦が始まったのだった。

 

 

 

  【 つ づ く 】

 

 

 




●タメになる☆TIPS集



【……うう、詐欺だ、謀略だ、DLC商法だ……】
→気づいたら総額1万越えとかよくあるよくある

【私、もう一度”ヴェリタス”に頼んでもっと詳しい場所探ってくる!】
→初回時は工場跡地にある、とまでは言ってなかった……はず……

【きっとカレは自分のしたいことに唯々正直で、実直なのだろう】
→なやみのないやつです。

【ホバリング】
→カービィと言ったらこれその2。これも30年以上お世話になってます

【花岡ユズ】
→一挙一動褒めてあげたい子なんばーわん


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