Spring Sky StarS! 作:笹ピー
次の投稿は日曜からになります。ご了承ください。
あとガチャしてたらわたしの5万消えたんだが誰か知らん? (ᓀ‸ᓂ)<ばにたす ばにたーたむ
17-1
数々の障害を乗り越え、ようやく目的地を前にするモモイ達――しかし、彼女たちにとって予想外な出来事が待ち受けていた。
C&Cのナンバー2、”コールサイン・ゼロワン”の肩書きを持つ一ノ瀬アスナのまさかの待ち伏せ。彼女を何とかしない限り、差押品保管所に辿り着くことは叶わない。
しかしモモイとミドリの実力はあくまでも一般の生徒より少し上回るかどうかのもの。対するアスナとの実力差など言わずもがな、どう足掻いてもあっという間に打ちのめされるのが関の山である。
もし、この場に”戦術指揮”に優れていた人物がいれば――――まだ話は違っていたのかもしれないが。
「――――うあぁっ!」
アスナの容赦ない攻撃に、倒れ込むように飛び出すことでなんとか回避するモモイ。
しかし、体勢が崩れた彼女に次の攻撃をかわすことは不可能――その隙を逃すつもりはないと云わんばかりに、アスナは更に追撃を仕掛ける為に距離を詰めようとモモイへと駆け出す。
「お姉ちゃんッ!」
姉の危機にミドリは迫りくるアスナを狙い撃つ――が、恐ろしいことに軌道を読んでいるかの如く最小限の動きだけで躱されてしまう。
勘が鋭いことも確かだが、どう動けば最善なのかを理解しているその体捌きは、培われてきた経験による賜物と云えるだろう。
ミドリの迎撃は空しく終わり、モモイへの追撃は避けられない――と思いきや、突然足を止め、後ろへ跳ぶように下がるアスナ。
そして後方に跳ぶのとほぼ同じタイミングで、つい先程まで彼女が立っていたところを横から地を”滑るように”物体が横切った。
追撃が来ない隙に、倒れこんだモモイへと近づき彼女の手を引き急いで起き上がらせるミドリ。 「お姉ちゃん、大丈夫!?」と心配そうに声を掛けるミドリに対して、「な、なんとか」と冷や汗を掻きつつ無事な事を伝えるモモイ。
「や、やっぱりでたらめに強い……これがC&Cのエージェント……!」
噂に違わぬ実力を見せ付けられ、息を呑むミドリ。
実際の所、戦闘が開始されてから彼女達はアスナの動きに対応しきれないまま”数分程”経っていた。
――しかし、言い換えれば彼女達は”数分間”も持ちこたえていた。
なにより、彼女達の表情は悲観的に満ちたものではない。
「――でも……」
「――うん。すごい、”カービィ”……!」
モモイとミドリが感嘆した様子で呟くと、ここまで彼女達がなんとか凌ぎきれていた”要因”へと視線を向ける。
二人の目を向けた先に映るのは――注意を引きつけたアスナの攻撃を機敏に躱すカレの姿。
――あのC&Cのエージェントと渡り合ってる……!
戦闘が始まるやいなや、素早い動きでアスナが最初に狙いを定めたのはモモイだった。前衛から戦力を削るセオリー通りの策なのか、はたまた彼女の直感による最適解なのかは彼女のみぞ知る。
当然、迫り来るアスナを迎撃するモモイ――しかし、銃撃を躱しつつ接近する彼女を止めることは叶わず。
アスナの接近を避けきれないと身を固くするモモイ――そこに横槍を入れるかの如く、カービィが地面に身体を擦らせながら滑り込むことで彼女の足を止める。
注意はカレの方へと向くと同時に、突撃銃による銃撃がカービィを襲うが、反撃を察していたのか、飛び跳ねるような側転で回避。そのまま彼女の猛攻を捌き続けるカービィ。
基本的には身軽な動きで躱し続け、避けきれないと判断した攻撃は”ガード”で防ぐ――最初、銃弾が当たることに悲鳴をあげる才羽姉妹だったが、カレが片手で頭を庇うようなモーションを見せたと思ったら、銃弾を防ぐという予想外の結果に驚愕したのは別の話――所謂、オトリ役に徹したのだ。
無論、その状況を黙ってみているモモイとミドリではない。カービィがアスナを引きつけている間に態勢を整えた二人は、彼女への攻撃を試みる。
その兆候を事前に察したアスナは彼女達の攻撃を回避。
その隙を突いて再び二人に迫るアスナ。それを再びカービィが妨害を行う。
その繰り返しが続く。
当然、相手の攻め手を凌ぎ続けるというのは口で言うほど容易い行為ではない。
少なくとも相対する敵と同じ――或いはそれ以上の技量を持つことが前提で成り立つ話である。
その現状を、対峙しているアスナが一番実感していた。
(……双子の二人も、思ってたより全然悪くない。お世辞にも実力がすごいとは言えないけど……二人で一人みたいなチームワークにおいては間違いなくベテラン級の……)
チラリと才羽姉妹に視線を向け、彼女達の能力を評価するアスナ。そこに驕りや慢心は無く、双子の以心伝心とも云える連携を素直に称賛した。
とはいえ、それだけなら彼女が手間取る理由にはならない。
もし才羽姉妹だけなら、今頃二人は地に倒れ伏しているだろう。
――やっぱり、この子のおかげかな――
それを阻む存在――二人を守るかのように立ち塞がるピンクの未確認生命体へとアスナは再び意識を向ける。
(見切りが尋常じゃないほど早い。それにフェイントを織り交ぜてても、冷静に対応してくる……直感が優れてる、ってかんじかな)
早い段階からカレの立ち回りを理解していたアスナは先程から動き方に抑揚を付けたりなど、攻め方を変えたりするが、それすら対応するカービィにより状況は変わらず。
アスナ自身、自分と似た戦闘スタイルの相手と対峙することが無かったせいか、その対処に手を焼いているようだ。
しかし、その事実に彼女は焦燥することなく――――
「――――あはっ」
と、笑みを零す。
「良いじゃん良いじゃん! ますます楽しくなってきたよーっ!」
無邪気に浮かべた笑顔を隠そうともせず。
嬉々とした様子でアスナは更に早く――――鋭く駆け出す。
「う、うそっ!? スピードアップした!?」
先程より一段とスピードが上がったことに驚くモモイ達。対面するカービィもその限りでは無いが、すぐに気を取り直し再び彼女に立ち向かう。
カレからすれば、今までも追い詰められてから本領を発揮する相手は初めてではない。
故にこのぐらいのことで、焦ることは無い。
――そんなカレとは裏腹に、焦燥感に駆られるモモイとミドリ。
(このままモタモタしてたら……!)
(ほかのメイド部のメンバーが……っ!)
確かにカービィのおかげで二人はなんとかアスナの猛攻を凌ぎ切れてい――しかし、それはアスナも同じ。彼女自身、この戦闘が始まってからまだ被弾を許していない。これはモモイとミドリの技量が低い、というよりアスナの回避能力が優れていると言わざるを得ないだろう。
そして、肝心のカービィも殆ど攻撃手段が無い状態であり、攻めあぐねている、というのが実情であった。
得意の”すいこみ”は、俊敏な動きを続けるアスナ相手では効果は薄い。
モモイ達が知る中で強力な攻撃手段である”星形弾”は、そもそも
口に蓄えた空気を勢いよく吐き出す”空気弾”や、”スライディング”といった攻撃手段でアスナの行動を阻止しているものの、彼女への直撃は叶わず。
故に、互角に渡り合っている、と云えば聞こえは良いが、実際は頓着状態が続いている状況。
悪戯に時間だけが過ぎていくのみ。
このままでは、他のメンバーによる足止めも無駄に成り兼ねない。その事実に焦りを募らせるモモイとミドリは判断を迫られる。
戦闘の継続か、撤退か――
このまま継続していればもしかしたらアスナを戦闘不能にできるかもしれない。しかし、それは希望的観測とも云える予想。
それどころか敵の増援が間に合ってしまえば、状況はより悪化することは目に見えている。今でさえ拮抗がやっとの中、対峙する相手が増えれば一気に戦況を崩されかねない。
ならば、この場は撤退するのが得策――しかし、目的地まであと一歩のところまで来た、という事実が彼女達に迷いを生む。
この機会を逃せば、次はないかも知れない。
そんな不安がどうしても頭の中から拭いきれず、決断を躊躇ってしまう。
そうして、思い悩むように苦渋の表情を浮かべる双子――だっだが、その片割れであるミドリが覚悟を決めたようにモモイへと打診する。
「――……お姉ちゃん、一旦退こう!」
彼女が選んだのは、撤退。
この状況を打破するには決め手が足りない――何よりカービィがどこまで持ちこたえられるかわからない、と考えた故の判断だった。
彼女の言葉に一瞬迷いを見せるモモイだったが、「うん、仕方ない……!」と同意するように頷く。彼女自身、踏ん切りがつかなかっただけであり、撤退することに反論は無かった。
そうと決まれば、と逃げる隙を作る為、カービィの援護も兼ねてアスナへと狙いを定めるモモイとミドリ――だったが。
刹那、鈍い衝撃音と共に彼女達の足元のタイルに穴が空く――その大きさは凡そ
それと同時に、着弾の衝撃によって弾き跳ぶタイルの破片。そして、不意の一撃により驚愕した才羽姉妹の短い悲鳴。
それにカービィは反応した。
反応――してしまった。
その持ち前の正義感ゆえにカレは”ともだち”や”なかま”の危機にじっとしていることはできない。時としてその善性は誰かの助けとなる一方で、時には事態を悪化させることも度々。
だからこそ、今回はその”性格”が災いしてしまった。
危険にさらされたモモイ達の方へ、思わずカレは
つまり、目の前の強敵――コールサイン・ゼロワンの一ノ瀬アスナから
「――――隙ありっ!」
そんな致命的な隙を見逃すアスナではなく、飛び掛かるように彼女はカービィへと駆け出す。
それに気づいたカービィが慌てて避けようとするが、一歩及ばず。
「あはっ、つ~かまえた!」
躱すこと叶わず、アスナの手によって体を摑まれるカービィ。そんなカレを捕まえたアスナが見る者を魅了するかのような、無邪気な笑みを浮かべる。
それに対し、拘束から逃れようと必死に手足をジタバタさせるカービィだが、カレの短い手足ではアスナに掴みかかることすら叶わず。
不意の銃撃に気を取られていたモモイとミドリも、カレが捕まったことに気が付くと思わず「カービィっ!!」と焦燥感と悲壮感に駆られた声をあげる。
ジタバタもがくカービィとは裏腹に、カレの体の柔らかさと軽さに興味津々と云わんばかりに目を輝かせるアスナ――と思いきや、いきなりカレの体の向きを変えつつ上へ持ち上げる。
それと同時にカレの口から空気の塊が天井へと放たれる。
どうやら空気弾を当てて怯ませようしたが、その前に彼女に察知されてしまった模様。
いよいよ打つ手が無くなったカービィを助ける為、二人がアスナに攻撃しようと銃を構え――再び大口径弾による狙撃によって行動を妨害される。
その衝撃に思わず身を縮こませるモモイとミドリ。
そんな二人にも狙撃を行っている相手には心当たりがあった。何せ先程もその実力の片鱗を見せつけられたのだから。
「や、やっぱり、これってカリン先輩の……!」
「……ってことは、”ウタハ先輩”……!」
――そして、それが意味することも。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
17-2
ズキズキと痛むおでこのせいなのか、それとも近くで鳴り響いた銃声によるものなのか――とにかくウタハは朧げながらも意識を取り戻した。
妙に痛む額を擦ろうと手を当てようとし――両手は後ろ手に、両足は足首を揃わせるように拘束されてることに彼女は気が付く。
一体何が、と今まで閉じていた瞼を開くと同時に、フリル付きのミニスカート越しでもわかる大きな臀部が彼女の視界に入った。
「……この大きなお尻は一体誰の……?」
「……大きくて悪かったな」
率直な感想を思わず呟くウタハに対し、スコープから目を離さないままステキなお尻の持ち主である――角楯カリンが気恥ずかしそうに小声で答える。
ウタハの失礼な物言いにムスッとした表情を覗かせていたカリンだったが、すぐ気を取り直すと少し申し訳なさそうな調子で呟く。
「……ごめん、手加減する余裕は無かった」
「まさかヒビキの攻撃の中でも、正確に私を狙撃できるなんてね」
確実に意識を落とす為とはいえ、人体の急所に大口径弾を当てるという所業を行ってしまったことに、流石に申し訳なさを感じていたカリンが謝罪する一方、ウタハはあらためて彼女の狙撃技術の高さに苦笑いを浮かべつつ感心したように呟く。
「――視覚でしか敵を補足できないような狙撃手なんて、C&Cにはいない」
その発言に対して、淡々と。しかし、ほんの少し誇らしげに語るカリン。
ウタハの言う通り、カリンが行ったのは降り注ぐ爆撃の中での狙撃。
言葉で表すのは容易だが、実際は爆風の中に加え、ウタハ自慢の発明品である”雷ちゃん”の銃撃を掻い潜りながらも初弾を見事命中させ、一撃で彼女の意識を刈り取ったのだ。
彼女は当然の事と口にするが、並外れた技量と胆力――そして己の腕を信じる確固たる自信を持たなければ成し得ない所業であったことは言わずもがな。
それから横倒れのまま動けない体で、唯一動かせる頭を少し動かし辺りを見渡したウタハはあちこち破損されたまま横倒れになっている”雷ちゃん”を見つける。どうやら彼女が気を失った後、こちらも
自分の発明品がボロボロになっていることに内心で悲しむウタハ、そんな彼女の様子を横目で確認していた――流石に彼女の心情まで察せなかったが――カリンが告げる。
「……あなたの後輩ならまだ無事だ。もっとも、この状況じゃ手は出せないと思うが」
彼女の言葉により再び視線を戻すウタハ。今の行動を後輩の身を案じたものと推察したようだ。
ウタハとしてはそういう意図のつもりではなかったが、気にならないといえば嘘になるため、話を合わせることに。
「君がこうして私のすぐそばにいるのは、やはり」
「この状態なら、先輩想いの彼女はまさか撃ってこないだろう」
「言ってくれる」とカリンの言葉に満更でもない様子で呟くウタハ。こんな状況でも彼女にとって後輩に慕われているという事実は、嬉しいものであった。不利な状況であることには変わりないが。
さてどうしたものか、と溜息一つ吐きながら思考に暮れるウタハに対し、釘を刺すようにカリンが告げる。
「あまり変なことは考えないほうがいい。余計なことをしても、体を痛めるだけだ。私も心が痛む」
言葉だけ見ると”何をしても無駄だ”と暗に言っているようにも聞こえる内容だが、逆に言えば”何もしなければこれ以上危害を与えるつもりはない”、という彼女なりの気遣いであった。可能な限り傷付けずに事を済ませたいという、彼女の優しさとも云えるのかもしれない。
そんな彼女の心遣いに対し、ウタハは少し口を濁らせ――ちょっと気恥ずかしそうに呟く。
「……ほんの少しでも良いから離れてもらえるかい。この状態だと君のお尻が近すぎて、ちょっと困る」
「そっちが背を向ければいいだろう!?」
流石にスコープから目を離して失礼なウタハに声を荒げる、お尻の大きいカリンだった。
顔を赤くしたカリンの怒号から間もなくして、二人の間に訪れる静寂。
先程の彼女の言葉通り臀部から顔を逸らし、夜空を眺めるウタハ。それに対して、黙々とスコープを覗きながら戦況を観察し続けるカリン。
文字通り手持ち無沙汰になったウタハはカリンの様子に対し、ふと湧いた疑問を口にした。
「狙撃を行っていないみたいだけど、何かあったのかい?」
世間話をするかのような彼女の問いに対し、少し逡巡した後――応えても問題ない、と判断したのかスコープからは目を離さないまま言葉を返すカリン。
「”撃たない”というより、”撃つ必要がない”だけだ」
端的にそう伝えるカリン。
その言葉に「どういう意味かな?」と疑問符を浮かべるウタハに対して、彼女はその目に映る状況を伝える。
「ゲーム開発部の才羽姉妹はコールサイン・ゼロワンによって足止め。少しすればコールサイン・ゼロスリーとセミナー役員もその場に合流する。そうなれば私たちの絶対的優位は揺るがない」
淡々と事実を述べるカリンはそのまま「唯一の不確定要素もゼロワンが拘束――」と説明していたが、その最中で急に言葉を止める。
その様子にウタハが首を傾げてから少し間を置いた後、「一つ聞きたい」と声を低くしたカリンが逆に尋ねる。
「――”アレ”もあなたたちの発明なのか?」
先程より真剣味を帯びた彼女の疑問に対し、”アレ”とは何か、などと言うつもりはウタハには無い。彼女が聞きたい存在など、”ある存在”を指していることは明白であった。
「いいや、カレはほぼ間違いなく生物に属するだろう。睡眠、食事はもちろん、独立した考えを持っているのは確認済みだ」
「……その言い方だと、”それ以上のことは解らない”、と言っているようにも聞こえるけど」
ウタハの回答を聞いたカリンが胡乱げな様子で呟くと、「まったく、そのとおりさ」と肩を竦めながら苦笑いを漏らすウタハ。
立て続けに「気になるのかな?」と今度は彼女が訊き返すと、少し考え込む様子を見せつつカリンは頷く。
「……私の行動を見抜いた上、あのアスナ先輩に匹敵する直感と対応力……もしもあの”姉妹”がいなければ、まともに隙を作れなかった」
ほんの少し悔しさを滲ませながら呟くカリン。それは自分の技量だけでは当てることができない、ということを認めるも同然だった。
先程カリンが行った狙撃の目的は、カービィへの動揺を誘う為。
先の一連で仲間を庇う行動が目立ったカレの性格を見抜いた彼女は、隙を作る為わざと才羽姉妹の足元を狙った。
無論、彼女達のどちらかを狙い撃つことも可能だったが、最終的にカリンはその選択を選ばない方が良いと判断した。
相手を必要以上に怪我させず鎮圧したい――というのも理由の一つだが、彼女にとってカービィというのが何をしでかすのかわからない、未知の存在であることが一番の理由だった。
――もしも、仲間がやられたことによって、激情に駆られたら?
――アスナにも匹敵する実力者が、更に潜在能力を引き出してしまったら?
事実はどうあれ、万が一の可能性を考慮し、できる限りあの姉妹は自ら”投降”させた方がいいと判断したカリンは、わざと外すように狙撃。結果的には彼女の思惑通り、モモイ達に気を取られたカービィは致命的な隙を晒し、アスナに捕まってしまうのであった。
そうして、先程までの行動を思い返していたカリン。その一方で、彼女の言葉を耳にしていたウタハは薄く笑みを浮かべて、「なるほど、あの子らしい」と呟く。
その言葉に反応したカリンが、怪訝な表情を浮かべてウタハの方へ意識を向ける。それに気付いたのかともかく、彼女は語り続ける。
「私たちのときもそうだったよ。何の得にならないというのに、彼女たちへ自ら手を貸すことを選んだ」
彼女の脳裏に浮かぶ、自信満々の笑顔と共に、短い手で胸のようなところを叩く姿。
そんなカレを思い返しながら彼女は続ける。
「カレにとって、あの子たちはそれだけ大事な存在なのだろう。たとえ、自分が危険に晒されようとも」
「……何が言いたい?」
話の意図が読めず痺れを切らしたのか、眉を顰めながらウタハに問いかけるカリン。
それに対して、どこか楽しげな彼女は「私が思うに」と前置きしてから語る。
「カレはとんでもなくお人好しで――――仲間想いの子、だということさ」
星々がきらめく夜空を見上げながら――確たる自信を持って断言するウタハであった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
17-3
「――ハレ先輩から連絡! ウタハ先輩が捕まってカリン先輩を抑えられなくなったって!」
「この状況を見ればわかるよ!」
モモイの焦燥に満ちた言葉に、半ばヤケクソ気味に言葉を返すミドリ。
状況は一転して、絶体絶命。
ウタハの戦闘不能によりカリンによる狙撃が再開。
頼りのカービィはアスナによって捕らえられてしまいモモイ達の戦力は低下。
更にアカネとロボット集団がこちらへと向かって来ている始末。
気付けば当初の懸念点であった”C&Cのメンバーとの交戦”が完全に避けられない状況となっていた――それどころか、3人揃い組にも成り得るという最悪の事態に。
「あははっ、何が何だかわからないけど私たちが優勢って感じ? もしかして、もうそっちの計画は失敗寸前かな!」
どう足掻いても四面楚歌な状況に余裕の無いモモイ達に対し、楽し気に無邪気な笑みを浮かべるアスナ。両者が浮かべる表情が、この状況の明暗を見事に分けていた。
そんなアスナから逃れようと未だもがくカービィ。しかし脇(と思われるところ)を両側から掴まれている以上、抜け出すことは困難。空気弾も顔の向きを真正面に向けられている為、アスナに当てることは不可能。
追い込まれた状況に、歯噛みするモモイとミドリ――しかし、この絶望的な状況に於いても彼女達の瞳は光を損なわれていない。
――まだ、失敗じゃない……!
彼女達も企てた作戦が全て成功するとは考えていない。
そもそもC&Cのメンバー3人をそれぞれ封じるという作戦自体、何か一つでも問題が起これば一気に瓦解する計画だということは重々理解していた。
だからこそ――彼女達は予め”作戦が失敗した場合”の作戦を用意した。
――計画通りに行かなかった場合のことも、計画しておかないと――
作戦会議の際、ミドリが提示したのは作戦が失敗した際のバックアッププラン。すなわちゲーム開発部の内、誰かが捕まったとしても一人でも目的物である『鏡』を入手出来ればいい――という考えだった。
つまり、モモイとミドリは奪取を図る部隊でもあると同時に、セミナーやC&Cを引き付ける陽動部隊でもある。
地下の電源設備で電源を遮断する役割を宛がわれたユズでは、仕事を終えてから差押品保管所に移動するまで時間が掛かる。
故に、モモイとミドリが囮になる場合――その場所に向かう人物は、ただ一人。
(私たちが派手に動けば動くほど、一度閉じ込めた”アリス”への警戒は薄くなるはず……)
(もしも捕まったとしても”謹慎”ぐらいなら部室で”G.Bible”をこっそり見ながらゲームを作れる……!)
――すなわち、最初に捕まったアリスこそが、追い詰められたモモイ達にとって最後の手段。
セキュリティを掌握した現状、彼女の軟禁は既に解かれたも同然。モモイ達が相手を引き付けている間に、別ルートから差押品保管所へと侵入及び『鏡』の奪取。それこそが彼女に宛がわれた最後のクエストだった。
モモイとミドリはこの場で捕まえられてしまうだろうが、あくまで彼女達が求めているのは”G.Bible”の中身。そのパスワードさえ解除できればセミナーに『鏡』を没収されたとしても問題は無い――元の持ち主でもあるヴェリタスは困ってしまうかもしれないが。
ここまで派手に騒動を起こした以上何かしらの罰則は覚悟しているが、今までの経験上謹慎以上の処分を受けていないことから、部室内で大人しくゲーム作りに勤しむことは可能――と考えているようだった。
故に今のモモイとミドリの役目は、時間稼ぎ。できる限り長く、相手をこの場に留まらせることが優先目標となる。
そんな二人の思惑を雰囲気で察したのか、アスナが「うーん?」と不思議そうに首を傾げる。
「ちょっとずつ必死さが無くなってる気がするけど……まさか、諦めたわけじゃないよね?」
流石は並外れた直感を持つアスナと言ったところか、彼女達の様子から何か企てていることを感じた。
その指摘にぎくりと身を固まらせる二人だが、両者とも口は硬く閉ざしたまま。
結局のところ怪しまれようがまれまいが、相手が計画に気付かれていなければそれ自体が足止めに繋がる。
下手に動けば墓穴を掘りかねない――という事を考慮して何も喋らないという方針でこの場を乗り切ろうとしているようだ。
しかし――そんな二人の努力を無下にするように、
ゲーム開発部にとって色々な因縁を持つ”少女”が姿を現す――!
「――――この状況なら、諦めた方が賢明だとは思いますけどね」
アスナの発言を拾うような発言が後方から聞こえた事に、モモイとミドリが肩を跳ねつつ思わず振り返る。
聞き覚えがあるどころか彼女たちにとって、ある意味お馴染みの声。
すなわち――セミナー所属部員の”早瀬ユウカ”が現れた!
「げえっ、ユウカ!」
「久しぶりね。とりあえず、ここまで状況を引っ掻き回したことについては褒めてあげる。それについては本当に驚いたわ」
彼女を視界に入れるのと同時に、恐れ慄く様にカエルが潰れたような声を張り上げるモモイ。一方のユウカはここまで来られたことについてモモイ達を称賛するような言葉を口にする――皮肉交じりではあるが。
ゆっくりと近づいてくるユウカにたじろぐ才羽姉妹。それに対して「でもそれはそれ、これはこれ……」と未だ嘗て無いほどの怒気を滲ませて彼女は呟く。
「こんなありとあらゆる方法を使ってまで生徒会を襲撃するなんて、やり過ぎよ。猶予を与えたことと言い、ちょっと甘すぎたのかしら」
御尤もなご指摘に、身を固くするモモイとミドリ。恩を仇で返す所業にユウカが怒るのはは至極当然である。
そんな二人にとって、今までの計画をご破算にし兼ねない宣告を彼女は口にする。
「もう悪戯じゃ済まされないわよ。無条件の1週間停学か、拘禁ぐらいは覚悟した方が良いでしょうね」
眉間に皺を寄せつつ口にしたユウカの発言に、「停学!? 拘禁!?」とモモイが泡食った様に声をあげる。
”停学”と聞けば”謹慎”と然程変わらないようにも聞こえるが、実態は大きく異なる。
謹慎はその言葉通り”学区外への外出禁止”であり、活動そのものを禁止されるわけではない。モモイ達が考えていた通り、部室で大人しくしていればいいだけで済む話である。
その一方、停学処分の場合は謹慎の罰則に加え”部活動等の活動の禁止”という罰が追加される。最悪、部室に行くことすら許されず”反省部屋”という名の収容室で”拘禁”されることとなる場合も。
とはいえここまで騒ぎを起こして尚、1週間程度で済ませるのはユウカ自身の優しさからか――甘さと言うべきなのかはまた別の話である。
それ以上に、二人が気にしているのは――
「そんな、1週間だと……”ミレニアムプライス”に間に合わない!」
ミドリが狼狽する様子を露わにしながら呟く。
彼女達の部活動を存続させるためにはミレニアムプライスでの受賞を果たさなければならない――だからこそ、提出締切が1週間後に控えている現状、1週間の停滞は致命的である。
もしモモイとミドリが停学を受けてもゲーム開発部にはユズとアリスの二名が残るが――ゲーム制作をしたことのないアリスは勿論のこと、普段のプログラミングの作業に加えて、シナリオやグラフィックにまでユズが手掛けて作品を完成させることは、ほぼ不可能に近い。
つまり、ここで捕まっていい、という二人の目論見は完全に通用しなくなってしまった。
寧ろ捕まってしまえば最後――例え『鏡』を手に入れたとしても、期限内にゲームが作れなければ意味が無い。
「アリスちゃんも、今は反省部屋に入ってもらってるわ。1人だけで可哀そうだったけど、あなたたちが来ればきっと喜ぶでしょう」
「うぅ……!」
勝ち誇ったように不敵な笑みを浮かべつつ言うユウカに、呻き声を漏らすモモイ。
そんな姉の様子にいよいよ後が無いと悟ったのか、「お、お姉ちゃん……」と声を震わせながら縋るように視線を向けるミドリ。
「どうにかして、突破しないと……っ!」
しかし、モモイはまだ諦めていない。彼女の眼は微かに光を灯したまま。限りなく可能性は低いが、まだ詰みではない。
不安と恐怖を内心に抱えながらも、己を鼓舞するかのように声は張り上げるモモイ。
そんな彼女の意気込みに対し、「突破? へえ……」と少し失笑するように呟いたユウカが、そのまま言葉を重ねる。
「――――私たちを?」
その言葉が合図となったのか不明だが、ユウカの後ろから何十体の戦闘ロボットゾロゾロと現れる――差押えたロボットの集団である。
――そして、遅れてメイド服を纏う少女が少し息を整えながら、ユウカの隣に並ぶ。
「ふぅ、やっと着きました……。こんなに息が切れるなんて、まさか本当に体重が……いえ、そんなはずは……」
「うえぇ!?」
「あ、アカネ先輩に、戦闘ロボットまで!?」
急いで来たせいか、少しずれていた眼鏡の位置を直しながら――先程暴露されかけた体重について真剣に考えだす少女――室笠アカネがぶつぶつと呟きながら二人の前に姿を現す。
そして思わぬ光景に絶句していた二人が我に返ると同時に、驚愕の声をあげる。
そんな二人に気付いたのか気を取り直すように、こほん、と可愛らしく咳ばらいを挟みつつ、「ふふ、今度こそ”本物”みたいですね」とアカネはにこやかな笑みを浮かべ、丁寧な姿勢のまま挨拶をする。
「あらためて初めまして、モモイちゃん、ミドリちゃん――ですが、ここまで入り込んできてしまったあなたたちに、もう言い訳の余地はありませんよ?」
物言いは丁寧。その上、上品な微笑みを浮かべたまま――ではあるが、如何せんそれが却って二人に威圧感を与えていた。その上、背丈ほどの大きさを持つケースから覗かせる爆弾が恐怖心を煽らせているのは言うまでも無く。
その一方、ユウカは辺りを見渡すように視線を飛ばす――が”誰もいない”ことを確認すると、溜息を一つ吐く。
「……”先生”はこの場にいないようだけど――どうせ、どこかでこの状況を見ているのでしょう? シャーレに抗議文ぐらいは送らせていただくので、ご承知くださいね」
この場にいない”先生”に対して顰め面を浮かべながら告げるユウカに対して、ミドリが思わず言葉を発しようと――その寸前で喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
そんな彼女の様子に気付かないままユウカが「それと……」と呟きながら――未だアスナから抜け出そうとしているカービィの方へと警戒しつつ視線を向ける。
「――その子についても聞いておかないとね」
「ねえねえアカネ! この子すっごい強いし、すっごく軽くて柔らかいよっ!」
「か、軽くて柔らかいはともかく……カリンから聞きましたが、まさかそんな子がアスナ先輩と渡り合えるなんて……」
ユウカの一言を機に、アスナが無邪気な笑みを浮かべつつ手に持った未確認生命体をアカネに見せつけるように突き出すと、彼女は驚く様子を見せつつも興味深そうにその姿をまじまじと見つめる。
何せピンクボールと形容されてもおかしくない生物が、C&Cの二番目の実力者に付いていけるという事実は、アカネやユウカにとって驚くべきことである。人は見かけによらない、というがこれに関しては最たる例と云うべきだろう。
「……どこで拾ってきたかは知らないけれど、聞きだす時間はたっぷりあるわ。さあ、いい加減観念しなさい」
「う、ううっ……」
そう言いながらモモイとミドリへと鋭い視線を向けるユウカ。
それに対して、二人は逃げるようにゆっくりと後ずさりしていくが、そんな二人の距離をゆっくりと詰めていく戦闘ロボット。
往生際が悪いともいえる行為だが、彼女達の頭の中では今も尚この状況を切り抜けようと色々な考えが浮かんでは――叶わぬことだと判り、消えていく。
とにかく、最後まで天啓が浮かぶまでの時間を稼ぐ。
――――しかしそんな悪あがきも、終ぞ何も生まず。
「それ以上下がっちゃうと、捕まえちゃうよ?」
この場において、場違いな程キョトンとした様子で呟いたアスナの声に、振り返る才羽姉妹。
彼女との距離は既に3mあるかないかの、距離。
それに対し、彼女達ににじり寄るロボット集団は、残り5m程まで詰め寄ってきていた。
もはや、どうすることもできない。
その現実に直面したモモイの視界が滲みだす。
「ここで、本当に……? 嫌だ…………っ!」
「お姉ちゃん…………っ!」
自分が自分でいられる場所。好きなモノを共有できる場所。
大好きな仲間と一緒にいられる場所。
それら全てが無に帰すことを認めたくないモモイとミドリが悲壮な声をあげる。
溢れ出しそうな涙を留める二人の視界はぼやけているせいか、遠くのユウカ達の顔がはっきりと見えない。
それでも、未だになんとかしようともがく――特徴的な体を持つ”仲間”の姿は認識できた。
諦めずジタバタともがく、彼女達の新たな仲間。
「……カービィ……っ」
「――……ごめん……ごめんね、カービィ……。私たちのこと色々助けてくれたのに、私たちの力不足で……わたしたちのせいで…………!!」
そんな健気とも云えるカレの姿に、今までの事を思い返し、申し訳ない気持ちで胸が詰まりそうになるモモイとミドリ。
何より、カレのことが明るみに出てしまった以上、もう二度と会うことはできないかもしれない――そんな想像が彼女達へより一層の悲しみを引き起こす。
きっと、この場にいないアリスが、最もその事に悲しむだろう。
そう考え、ついに涙を抑えられなくなった才羽姉妹。
――その時だった。
そんな二人の悲しみも。
この絶望的な状況も。
――全てを”吸い”込まんとする、カレの勇気がきらめいた。
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→SDXでガードできるようになったのは画期的だったよ
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