Spring Sky StarS! 作:笹ピー
A.まだ土曜34時だから(震え声)
アンケ、というか、小話の方ですが、ガイアが個別より部活動で話作った方がいいんじゃね、って私に囁いてたので、ひとまずそういう形にします。正直アンケに答える人いるのかもわからんしね! 個別も筆が乗れば作る、かも。
あとちょっと。
21-1
D.U.地区。シャーレのオフィス。
今日も今日とて、増え続ける業務を片付ける為、デスクワークに勤しむ”先生”。
栄養ドリンクをお供に、あまり好きではない報告書を処理していた際、ふと思い出したかのように時計へと視線を向ける。
時刻は17時になるかならないかの、時間帯。
そのことに、不安そうに眉を顰める”先生”。
“皆、大丈夫かな……”
”先生”が気にかけた人物――それはゲーム開発部の部員達のことだった。
昨日、様子を伺うことも兼ねて、差し入れを持っていった”先生”。その際にゲーム制作が佳境中とのことを知る。制作に追い込みをかけるだろう、と配慮し”先生”は今日はまだ、彼女達に連絡を取っていない。
しかし逆を言えば、今の時間になっても向こうからの連絡は、無い。
そのことに、”先生”が不安を感じるのも無理はない。
何故なら、今日が”ミレニアムプライス”の――作品提出の期日なのだから。
「―――お姉ちゃん、まだ!?」
ミドリの焦り声が、部室内で木霊する。
その声にモモイが、「ま、待って急かさないで!」と忙しなくタイピングの手を走らせる。
「あと2分だよ!? 急かさずにいられないって!」
「正確には96秒――そう言っている間に92秒……」
若干取り乱しているミドリに反して、秒単位で冷静に残り時間を告げるアリス。
二人にせっつかれるような形だったが「わ、分かった分かった! もうできたから!」と、なんとかモノを仕上げたモモイは、すぐにゲーム構成用のフォルダにデータを上げる。
それを確認したユズは、すぐにデバッグを始める。
「――こっちは簡単なテストだけやって……うんっ、エラーは出てない!」
40秒程費やして、ユズのチェックが完了する。
それを受け、すぐさま作品のアップロードに取り掛かるモモイ。
そして、残り時間が少ないことを悟ったカービィがここ最近すっかりお馴染みのカチンコを手に持つ。
「ファイルをアップロード、完了まで予想時間……15秒! アリス、あと何秒!?」
「残り19秒です……!」
アリスの言葉に、一同に緊迫感が走る。
思わずミドリは「お願い……!」と祈るように手を組む。このタイミングで停電でも起きようものなら、目も当てられないこととなるだろう。
それから数秒後、片足立ちでカチン、と手に持った道具を鳴らすカービィ。
そして――
【ミレニアムプライスへの参加受付が完了しました】
と、いうメッセージを目にした、瞬間。
「――――間に合ったああぁぁ!」
両手を上へ突き出し、喜々とした顔を浮かべるモモイを筆頭に、他のメンバーもようやく一息つく。
なんとか間に合ったことに緊張の糸が切れたのか、ユズがぐったりとした様子を見せる。
「ギリギリ……心臓止まるかと思った……」
「あとは……3日後の発表を待つだけ、だね」
ミドリの言葉にユズは頷く。
なんとか提出にこそ間に合ったが、これで終わりではない。3日後の結果発表会にて、彼女達の作品の名が挙げられて、ようやくゴールなのである。
この部室にいられるのか、否か。
泣いても笑っても3日後に全てが決まる、と言っても過言ではない。
――すると、突然モモイが「そこで提案なんだけどさ」と二人の間に割り込むように口を開く。
「先に、web版の『テイルズ・サガ・クロニクル2』をアップロードしてみるのはどう?」
彼女の提案に、面食らうミドリとユズ。
「ど、どうして?」と問いかけるミドリに「3日も待てないよ! それに審査員の評価より先に、ユーザーの反応を見たくない!?」と返すモモイ。
それに対して、少し悩まし気な表情を浮かべるミドリが、後ろ向きな姿勢を見せる。
「……でもちょっと怖くない? 低評価コメントも心配だし」
「何言ってるのさ! そもそも、ミレニアムプライスに出品するためだけに作ったゲームじゃないでしょ!」
怖気づくミドリを鼓舞するように、笑みを浮かべるモモイ。
「自信を持って、見てもらおうよ! 私たちはベストを尽くしたんだから!」
「そ、それはそうだけど……」
モモイの言葉を受けても、やはり心配が勝るのか、なかなか首を縦に振らないミドリ。前作の反響を気にしているが故の態度だろうか。
そんなモモイの言葉に思うところがあったのか、「――……うん、アップしよう」と、今まで沈黙していたユズがその提案に乗る。
何時になく前向きな姿勢に驚くミドリを、ユズは落ち着いた表情で諭す。
「作品っていうのは……見てくれる人、遊んでくれる人がいてこそ、完成されるものだと思うから――わたしは、わたしたちのゲームを、きちんと完成させたい」
「ユズちゃん……」
「どんな結果になっても……全力で頑張ったから。それに……みんなが一緒だから、きっと受け止められる」
そこで一旦、口を止めたユズは、全員を見渡してから――晴れやかな笑顔を浮かべた。
「――――わたしはもう、大丈夫」
彼女のひた向きな言葉を受けたミドリが、悩むように顔を俯かせる。その時、たまたまこちらを見ていたカービィと目が合った。
視線に気づいたカレは、彼女を励ます様に自信満々に己の胸(?)を叩く。
対して、彼女は困ったように微笑む――彼女の中で決意が固まったようだ。
そんな彼女の心境の変化を察したモモイは、意気揚々とパソコンへ向き合う。
「それじゃあ――今すぐアップロード!」
専門サイトに作品をアップロードを終えたその後。
プレイしてから感想を投稿するまで、少なくとも3時間掛かると見込んだモモイは、それまで休憩にしようと提案した。
一方、逸る気持ちを抑えきれないアリスは、今か今かとパソコンの前で感想が届くのを待ち侘びていた。
そんな彼女に近づく、ピンクの影。
彼女の制服の裾をクイクイと引っ張ると、それに気付いたアリスが首を傾げた。
「どうかしましたか、カービィ?」
キョトンとする彼女に対し、ニコニコとカレはゲームのコントローラーを持ち上げた後に、パソコンを指し示す。
カレの行動が気になったモモイ達も、その意図が読み取れず疑問符を浮かべる――と、ユズがある予感を口にした。
「……もしかして、遊んでみたい、って伝えてるのかな?」
そんな彼女の言葉を肯定するように、何度も頷くカービィ。
その反応に驚く一同。今まで彼女達のゲームを眺めているだけだったカレが、ここまでアピールすることは無かったからである。
一方で、彼女達も興味が無いわけではない。カレがどんなプレイをするのか、自分達が作った作品にどんな反応を示してくれるのか、といった理由からである。
何よりカレ自身、今作の内容を把握しきれていない。
今回、ゲーム開発の知識など無いカレに宛がわれたのはタイムキーパーのような役。何処から拾ってきたのかカチンコを持ってきたカレは、それを鳴らして予定時間が来た事を知らせるのが仕事だった。
アラーム等でも十分ではあるが、それを設定する手間すら煩わしい状況だった他メンバーには、意外と好評だった。余談だがカレが動き出すのを見る度に、いつも作業が遅れがちのモモイが「ひえッ」と肩を跳ねていたとかなんとか。
結論から言って、制作活動にはあまり関わっていないカービィ。
ある意味、初見と言ってもいい。
「アリス、カービィのゲームプレイが見たいです!」
「うん。感想が来るまで、まだ時間がかかると思うし……」
アリスが興味津々な反応を見せると、ユズも微笑みながら賛同する。
才羽姉妹もちょうどいい機会だと考え、頷く。
「――よし! 『テイルズ・サガ・クロニクル2』の記念すべきプレイ1号は、カービィで決まりだね!」
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
21-2
ついに始まる、カービィの『テイルズ・サガ・クロニクル2』のゲームプレイ。
この世界の言語を理解していないカレに代わって、アリス達が朗読してあげることに。
最初はコントローラーを持てるか――というより、指が無いのにどうやって操作するのか不安だったが、なんと器用に手を動かして扱えることを証明した。
ゲームを起動して、始まるオープニング。
舞台は前作から数百年後の世界。再び復活した魔王を倒しに、前作の勇者の血を継ぐ者が旅立つ、という王道ファンタジーの流れを汲んだ設定である。
主人公の名前は、当然”カービィ”と入力。他にも”ぽよぽよ”とか”ニンテン”など、変わり種も候補に挙がったが、結局この名で落ち着いたとか。
そして、勇者”カービィ”の冒険が、始まるのであった。
「――あ、レベルアップ、したね」
「カービィってエンカウントした敵、律儀に倒していくよね」
「経験値稼ぎですね。冒険の基本です!」
「案外、容赦ない性格なんだ……」
向かってくる相手に、臆さず攻める姿勢を見せたり、
「……ちょ、ちょっと残りのHPまずくない?」
「うん、ここは回復した方が――って、えぇっ!?」
「か、カービィ、ここは回復一択――ってうそぉ!? ここでクリティカルヒット!?」
「す、スゴイですっ! HP一桁でボスを倒しました!」
ボス相手に、何故かとんでもない運命力を働かせたり、
「――あれっ? また次の階段、通り過ぎてない?」
「見つけていないアイテムでも探しているのでしょうか?」
「さっきのダンジョンも、隅々まで探索してたよね」
「けっこう、几帳面なところが、あるのかも……」
「また釣りをしています。これで26回目です」
「もしかして……釣りが好きなのかな?」
「お遊び程度の要素だったんだけど……気に入ってくれて、良かった」
「案外こういう要素が、評価に繋がるんじゃない!?」
息抜きに釣りや寄り道を楽しみつつ――カレの冒険は続いていく。
そして、自由気ままに冒険を楽しんでいた勇者カービィの冒険も、ついに大詰めを迎える。
魔王城へと進入を果たした勇者と、道中仲間になった者達は、世界を滅ぼそうと目論む魔王と遂に対峙する。それを傍で観ていたモモイ達にも熱が入る。
そして始まる、勇者と魔王の闘い。
数々の経験を活かし――何より、自身の直感を信じ、魔王へと肉薄していく勇者一行。
片や魔王も、勇者を滅ぼさんと、強力な一撃を見舞う。
長引く戦いに消耗していく両者――否、勇者の方が消耗が激しいか。
仲間達の体力にはまだ余裕はあるが、魔王の一撃で消し飛びかねない。普通ならば、ここは形勢を立て直す意味も兼ねて、回復や防御を固めるのが定石だろう。
――しかし、この勇者は違った!
凛々しい目つきをしたカービィが、ある技を選ぶ。
カレが選んだ技は――”いっとうりょうだん”。
それを視認したモモイ達が、驚愕した表情を浮かべ、息を吞む。
「ま、まさかっ!?」
「うそ……!?」
「ここで……!?」
「き、来ます……っ!」
”いっとうりょうだん”。
命中率5%程度。その上、外すとダメージが自分に返ってくるという諸刃の剣。
しかし、その分命中時の見返りは凄まじく、超高火力に加え、必ずクリティカルとなる一撃。
言ってしまえば、追い込まれたプレイヤーが、夢を託してぶっぱする為の技。
というか、そういう意図で作られた技である。
しかし、この勇者は違う。追い込まれたから使うのではない。
瀕死の勇者にとどめを刺そうと、魔王が迫りくる。
腕を振りかぶる魔王。その腕が振り下ろされれば、勇者の命が尽き果てるのは自明の理。
しかし、それこそが勇者の狙い。
相手から自身の間合いに入ってくれるのなら好都合。
絶体絶命の
放たれるは神速の一閃。
既のところで気付いた魔王だが、回避は勿論、ガラ空きの懐への防御も間に合わない。
回避も、防御も間に合わない魔王が唯一できたこと――それは、己が身でその一撃を受けることだけだった。
崩れ落ちる、魔王の体。
決着は、火を見るよりも明らかであった。
見事にハイリスクハイリターン技をこの土壇場で当てたカービィに、歓声を上げるモモイ達。魅せプレイをこの目で直接見れたこと――何より、それが自分達で作り上げたゲームなら、尚更だった。
「スゴイ、スゴイよカービィ! 一発で魔王戦に勝っちゃうなんて!」
「うん……! しかもあんなギリギリの状態で……!」
「それに、ちゃんと相手の行動パターン読んだ上で……本当に凄い……!」
興奮冷めやらぬ各々が褒め称える中、アリスがカレを持ち上げて――満面の笑みを浮かべる。
「――流石はアリスの”オトモ”です、見事な逆転勝利です!」
嬉しそうにモモイ達と同じようにカービィを褒めるアリス。
片や、皆から褒められてることに、カービィは照れくさそうに頭を掻きながらも、笑みを浮かべる。
魔王を倒した、勇者カービィ。
ついに世界に平和が訪れたのであった――――!
「――と、安心するのは早いよ?」
モモイが不敵な笑みを浮かべる。その言葉にキョトンと体を傾げるカービィ。
そんな彼女の言葉を裏付けるように、ゲーム画面の魔王が、ゆっくりと立ち上がってきた。
【魔王が 起き上がりそうだ ……】
【どうしますか?】
【とどめをさす / 仲間にする】
立て続けに表示される、メッセージ――そして、最後に選択肢が表示された。
言語が分からないカービィがアリスの方へと目を向けると、彼女がそのメッセージを朗読する。
意地の悪そうな笑みを浮かべて、腕を組んだモモイが告げる。
「さあ、ここが最後のポイント! カービィはどうする!?」
モモイの言葉を受けて、改めて画面へと視線を向けるカービィ。この選択を選ばない限り、次に進むことはできないようだ。
与えられた使命を果たす為、魔王を討つか。
或いは、己の正義感に準じ、魔王に手を伸ばすか。
モモイ達がカレの選択を、静かに見守る。
一方で、カービィはジッと選択肢の表示を見つめてから――
特に迷うことなく、”仲間にする”を選んだ。
その選択に、モモイ達はおおっ、と僅かに湧き上がる。カレならこの選択を選ぶと予想はしていたが、実際に選ぶまでわからないのだから、当然の反応とも云える。
――それとは対照的に、アリスは目を見開いていた。
選択肢を選んだ、その次の瞬間――画面の中の魔王が、憤怒の表情を浮かべる。
カレの選択を同情、憐憫――或いは、軽蔑と受け取ったようだ。
一体何処からその力を振り絞ったのか、激情に駆られた魔王が怨嗟の声を上げながら、その姿を大きく変化させる。
そして――まさかの第二戦目が始まる。
満身創痍の勇者。この戦いを乗り越えられる余力は、ほぼ無いに等しい。
仲間達も、この迫力に呑まれまいと気力を振り絞るが、それも時間の問題。
一転して、絶体絶命に陥る勇者達。
正義感に準じた結果がこのような結果を生んでしまうとは、皮肉と言うしか他ない。
しかし、勇者の目は、輝きを失わず。
例えそれが魔王だとしても――手を取り合えると信じて。
「流石のカービィも、ピンチかな?」
「やっぱり、ちょっと初見殺しすぎない?」
モモイの言葉に、少し苦笑いを浮かべるミドリ。
最後の最後でこのような展開を用意していたモモイ達。つい軽はずみな気持ちで選択肢を選べば、強化された魔王との第二戦目が始まるという、衝撃展開。
もちろん、この戦闘に勝つことは可能。
しかし、その場合、魔王を倒すことと同義であり、結局とどめを刺す展開と同じ結末を迎える。だからこそ正しい手法を取らなければ、この選択肢を選ぶ意味は無い。
そしてその答えは、この戦闘中で”ある行動”を選ぶことだった。
とはいえ、モモイ達も意地悪するつもりは無い。
答えをあっさり言ってしまうのはゲーマーとしての矜持に関わるが――この戦闘に敗北したら、ヒントぐらいは与えるつもりだった。
しかし、次のカレの行動に、少女達は目を見開くことになる。
カレが選んだのは技――ではなく、その下の”どうぐ”。
表示された一覧から、
選んだのは――”朽ちた勇者の剣”。
「――え? ちょちょちょ、ちょっと待って!?」
「い、いやいやいや、嘘でしょ……!?」
「う、嘘……ほんとに……?」
目の前に映る光景に愕然とする、3人。
伏線は確かに張っていたが、序盤も序盤の話。ちゃんとストーリーを理解していなければ、気付くこともできないといっても過言ではない。
カレがそれを理解していたのか――それとも、いつもの直感か。
それを断定できる者は、この場にはいなかった。
一方、唯一反応を見せなかったアリスは、ただ静かにカレのプレイへと注目していた。
各々がそれぞれの反応を示している中、カービィはゲームを進めていく。
画面では、魔王がその剣を見て、何か憑き物が落ちたような表情を浮かべながら、かつての生涯を語った。
かつて魔王は、
人を愛し、世界を守るために戦う――人だった。
数多くの戦いを勝利に導いた。
数多くの人を救った。
その人物は、いつしか”勇者”と呼ばれるようになっていた。
その後も、人の為に――世界の為に、勇者は戦った。
民は、勇者に畏怖の念を抱く。
あまりにも強大な勇者の力を、恐れてしまった。
勇者の最期は、あっけなく。
信じていた民に、裏切られ――命を散らす。
それで終わるはず、だった。
無念の死、裏切った民への憎悪――生まれ持っていた強大な力。
それがかみ合った結果、運命のいたずらか、それとも必然か――勇者は蘇った。
蘇った勇者は、人を見限った。
それを証明するかのように――生前、死んでも離さんと誓っていた
――それが、
魔王が語り終わると同時に、かつての人の姿へと戻る。
それから、最後まで己に手を差し伸ばし続けた――
そして、人の善性を思い出させてくれた勇者へと、感謝の言葉を述べ――静かに息を引き取るのだった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
21-3
――ゲームが終わったことを示す様にスタッフロールが流れる中、一息ついたカービィへモモイ達が座り込んだまま詰め寄る。
「ま、まさか一発でトゥルーエンドに辿り着くなんて……!」
「しかも、初見プレイで……!?」
「す、凄い……! ホントに凄いよ、カービィ!」
驚きの表情を浮かべるモモイとミドリ。
一方で、珍しくはしゃぐ様子を露わにして、褒め称えるユズ。製作者として、隠し要素まで遊び尽くしてくれることを本当に喜んでいる様子である。
それから、彼女達が最も聞きたかった事を、モモイが代表して尋ねる。
「――それで、どうだった!? 私たちの渾身の作!」
彼女達が気にしているのは、当然このゲームの感想。
特に、自分にも周りにも正直なカービィの感想は、今の彼女達が望んで止まないモノである。
彼女の言葉を受け、カレは考え込むように手を口元へ当てる。
それを緊張した面持ちで見守るモモイ達。
言葉を喋れないカレは代わりに行動で示すゆえに、その一挙一動に集中する。
やがて、考えがまとまったのか、歩み出したカービィはモモイへと近づく。
そして、彼女の両手を自身の手で掴むと、体全体を弾ませながら楽し気にブンブンと振る。
突拍子の無い行動に困惑するモモイを余所に、今度はミドリへと近づくとモモイにやったのと同じことをする。そのまま立て続けに今度はユズに対して行うカービィ。
そして、最後に何か考え事をしていたアリスの元へ近づくと、手を伸ばす。
それに気付いた彼女は、少し驚きつつも、微笑んでからカレに手を伸ばす。
その手を掴んで、やはりブンブンとカービィは体を弾ませながら振る。
「つまり……
一連の行動を見ていたモモイ達は、カレの意図を読み取ろうと――恐る恐るといった様子で問いかけるミドリ。
その言葉に――ニコニコと笑いながらカービィは大きく頷く。
それを見届けたモモイ達の表情が、喜色満面なものに変わる。
「――ほら、やっぱり! 今回の作品は間違いなく傑作ものだって!」
「わ、わかったって! そんなにはしゃがないで、お姉ちゃん!」
調子付いて絡んでくるモモイを、ミドリは鬱陶しそうな様子を見せるが、彼女自身ニヤケ面を隠しきれていなかった。
そんな2人の馴れ合いを微笑ましそうに見守っているユズも、心なしか上機嫌に見えるのは気のせいではなく。
結論から言えば、『テイルズ・サガ・クロニクル2』はカービィにとって、面白いゲームであると評価したようだ。
その事実に自信を持ったのか、先に上げていたweb版の評価を聞こうとモモイが提案しようと――あることを思い出したかのように「あっ!」と声を上げた。
「せ、”先生”に連絡するの、忘れてた……」
「ちょっとお!?」
頭を掻きながら、てへっと笑うモモイに、鬼気迫る様子で詰め寄るミドリ。
現在時刻は20時頃。尚、”先生”から2時間前にモモトークが来ていたが、ピンクボールのゲームプレイに夢中で気付いてなかった模様。
すぐさま”先生”に返信を返そうとするモモイ――そんな彼女にミドリが待ったを掛けた。
「わ、私が送る。無視したお姉ちゃんだと気まずいでしょ」
「え? いや別にあんま気にしてないけど――」
と言うと、「いいからっ」と何故か必死にその役割を代ろうとするミドリに、不思議そうに首を傾げるモモイ。いったい何が彼女をそこまで駆り立てるのだろうか。
2人の様子に苦笑いを浮かべていたユズ――だったが、横目に映った少女の様子に違和感を覚える。
「……アリスちゃん、どうかした?」
「え……?」
ユズの言葉に、少し遅れてアリスは反応する。
実際、先ほどから彼女はどこかボーッとした様子を見せていた。
いつもの調子ではない彼女を案じるように、ユズが眉を寄せると「だ、大丈夫ですっ」と、気丈に振る舞うアリス。
そんな彼女の態度に「そ、そう……?」と少し違和感を覚えながらも、一先ずユズは納得した。
ユズに心配させまいと、笑顔を見せるアリス。
その表情の裏で、
『テイルズ・サガ・クロニクル2』のエンディングを迎えて、一時間ほど経ち。
アリスとカービィは、エンジニア部から借りている仮設住居へと帰宅している最中だった。
あの後、web版の評価を閲覧したゲーム開発部。
結果的に見れば、概ね好評――前作の内容を知っていると思われるプレイヤーからの煽りコメントもあったが――というのが彼女たちの見解だった。
何より、記事サイトに載っていたこともあり、予想以上に遊んでいる人が多いことに一同は驚く。少しでも遊んでくれたらいいやー、と軽く考えていたモモイの度肝を抜いたとか。
何はともあれ、カービィとネットの評価によって、作品の出来に自信が持てたゲーム開発部。
この6日間、納期に追われていたこともあり、休息も兼ねて今日のところは解散することに。
いつものようにカービィを抱きかかえながら、帰路に就くアリス。
普段の彼女なら、今日の出来事を楽し気に語るのだが、今日に限っては何故か沈黙を貫いていた。その様子に疑問符を浮かべるカービィ。
どこか居心地の悪い雰囲気の中、エンジニア部の屋外実験場を通り過ぎる2人へ話し掛ける、少女の姿が。
「――やあ、こんな時間に奇遇だね」
この場所の所有者でもあるエンジニア部の部長、白石ウタハだった。
彼女に気が付いたアリスは、少し驚きつつ彼女に問い掛ける。
「ウタハ先輩、こんな時間にどうかしましたか?」
「ああ、ちょっと運び物をしていたところさ」
そう言いながら後ろへ振り返ると、少し遠くでヒビキとコトリが30㎝程のサイズの鉄箱を台車に乗せて運んでいる姿が。
向こうの2人がアリス達に気付くと、手を振った。
「少し危険な火薬が入ってるから、万が一に備えて屋外に置くことにしたんだ」
「危険な火薬……」
「火薬研究部の新作でね。ミレニアムプライスに出品したと聞いて、早速取り寄せたんだ」
ヒビキ達の方へ視線を向けていたウタハが、ミレニアムプライスの話をしたのをきっかけに、アリス達へその話題を振る。
「君たちも、無事に作品を完成させたようだね」
「はい、大ヒット間違いなしの作品です!」
アリスの意気揚々な発言に、「そうか」と微笑むウタハ。
続け様に彼女は言葉を重ねる――が、
「カービィも面白いって、評価、して――……」
説明の途中でアリスの歯切れが唐突に悪くなる。
様子が変わった彼女に首を傾げたウタハが「どうかしたかい?」と尋ねるが、アリスは「だ、大丈夫です」と誤魔化す様に笑みを浮かべた。
不思議そうな表情を浮かべたウタハが、カービィへと視線を向けるも、カレも不思議そうな表情を浮かべるばかりだった。
それからウタハと別れたアリス達は、まっすぐに帰宅。
帰って来て早々、腹ペコ状態のピンクボールの為にご飯を準備しようと冷蔵庫を開けたアリス。
――だったが、なんと食べ物が無かった!
冷凍食品すら底を突いていた様だ。
食糧管理を怠っていたことに、苦い顔を浮かべるアリス。
そして、食べ物が無いことにショックを憶え、消沈するようにしおしおと元気を失うカービィ。
その姿に慌てたアリスが「も、問題ありませんカービィ!」と励ます様に声を掛ける。
「この近くにコンビニという万能道具屋があります。今からアリスが調達に向かいます!」
その言葉を聞いたカービィが、一転して目を輝かせた。
その様子にホッと胸を撫で下ろし、「少し待っていてくださいね」と言い残し、彼女は早速コンビニへと駆け出すこととなった。
それから、コンビニで食料を買い込んだアリス。
底知れない胃袋を持つカービィだが、意外にも一食の量は――ご飯の量で云えば2~3合分でも十分だったりする。
要はカレの目の前に出す量さえ弁えれば、ドカ食いすることは無い。
逆に言えば、どんな量でも目の前に差し出されれば、一瞬でカレのお腹に納まってしまう――ということにもなるのだが。
ともかく家路を急ぐアリス
――だったが、あることを思い返し、思い悩むような表情を覗かせた。
先程から彼女の記憶にチラつく光景。それは終盤、カレが選択した場面のことだった。
彼女にとって、”魔王”とは打ち倒さなければならない存在だった。
それが”勇者”の使命であると――役割だと思っていたがゆえに。
しかし――カレの選択は、彼女の予想とは真逆だった。
心の何処かで、カレと自分は一緒の考えを抱いていると期待していたアリス。
オトモであるカレと、心通わせていると、信じていた。
あの選択を見た瞬間、何故かカレとの距離が遠く感じてしまった。
自分と異なる考えを持っていることに、困惑してしまった。
自分と一緒ではないことに、ショックを受けた。
――何よりも、何故その選択を選んだのか、分からなかった。
(なぜ、カービィはあの選択をしたのでしょう)
純粋すぎるがゆえの、善意なのか。
それとも、かつて似た経験をしたことがあるのか。
ただのきまぐれなのか。
考えても埒が明かないことは彼女も気付いているが、それでも考えられずにいられない。
しかし、考えても結局答えは出ず、思考は悪循環に陥るばかり。
トボトボと肩を落とし、帰路に就くアリス。
気付けば、先程ウタハと話し込んだ屋外実験場だった。
「――――よぉ、こんな時間に出歩きかよ」
そんな彼女に、どこか最近、聞いたことのある声色が耳に入ってきた。
――背筋が凍る程の、悪寒と共に。
咄嗟に振り返る、アリス。
目に映り込んだのは、メイド服の上にスカジャンを羽織った少女――
「ちょいと、面かせや」
――――コールサイン・ダブルオーの美甘ネルであった。
【 つ づ く 】
●タメになる☆TIPS集
【カチンコ】
→映画で「アクション!」っていうとき使うアレ。なぜカービィチャンにこれなのかはSDXでノヴァくん爆発させてきてね。
【ボス相手に、何故かとんでもない運命力】
→個人的にボス特攻スキル持ってると思ってる
【隠し部屋】
→夢の泉とか気付いた人変態すぎると思ったわ
【釣り】
→初代から釣りしてる描写あるよねこの子
【夢を託してぶっぱする】
→困ったときの一撃技
【絶体絶命の刹那――それを勇者は見斬った】
→ !!!
次の更新はちょっと未定。
カレの誕生日前には出すつもりです。
小話、どの部活動を先に書くべき?
-
セミナー
-
エンジニア部
-
ヴェリタス
-
メイド部(C&C)