Spring Sky StarS! 作:笹ピー
A.くそぅ! くそぅ! くそぅ!
ということで一日遅れだけどカービィちゃんハピパ! ついに33周年も迎えたんかワレ。
これからもよろしくね。
今回でパヴァーヌ編第一章は完結です。
相変わらず改変要素多いので、ご了承お願いいたします。だから間に合わなくなるんだわ
追伸)投稿したと同時に0時になって二日遅れになっとるやんけ! くそぅ! くそぅ!
23-1
「――ねぇねぇ、アリス。ちょっとこっち来て~?」
ネルの襲撃から、三日が経った昼頃のこと。
フフフ、と怪しい笑みを浮かべたモモイが、手招きを交えてアリスを呼ぶ。それを疑うことなく、こてんと首を傾げたアリスはとてとてと、彼女の元へと近づいていく。
近づいてきたアリスに対して、一瞬後ろを振り返ったモモイが
「じゃ~ん! メイド服~!」
「ひぃっ!」
突き出されたメイド服を見るや否や、一目散に部屋の隅へと逃げ出すアリス。
その様子に「あはは、いい反応!」と悪戯っ子のような笑みを浮かべるモモイに、「何してるの、もう!」と、ミドリが咎める。
「アリスちゃんが完全に怯えきってるじゃん!」
そう言うと、部屋の隅で丸くなるアリスの元へ駆け寄り、頭を撫でて宥めるミドリ。
一方で、先日の出来事からか、メイド――或いは、それを連想する物にすっかり苦手意識が芽生えてしまったアリスは「し、しばらくはメイド服は見たくありません!」と、ぶるぶると身を縮こませていた。
襲撃のあった次の日。当の被害を被ったアリスから、その詳細を知ったモモイ達。
被害者はどう見てもアリス側だが、エンジニア部の施設を荒らしてしまったことや、備品を紛失させてしまったことも事実。一先ず代表的立ち位置でもある、部長のユズが自ら率先して(すごく緊張しながら)、エンジニア部にその旨を報告にしに行ったが、
『そのことなら心配いらないよ。さっきC&Cから弁償についての話が来てね』
『まあそれ以外にも色々聞かれたけどね』と、言葉尻に付け加えながらもエンジニア部の部長であるウタハは、アリス達の行いを容認した。
ともあれ、お咎めは無しだとその際、ネルから言伝を預かっていたウタハが、その内容を伝える。
――また会おう――
そのことを、ユズから伝えられたアリスの顔色が青くなったのは別の話。
そういった経緯もあり、メイド――というよりネルに苦手意識を刷り込まされたアリス。
一方、同じく彼女と対峙したであろう、もう一人はというと。
「だって、カービィだと全然驚かないんだもん」
「そういう問題じゃないでしょっ」
ソファに座って、2人のやり取りに苦笑いを浮かべていたユズの隣で、呑気にチョコ棒を頬張るピンクボールを指差すモモイに、プンプンと窘めるミドリ。
事実、目に映るメイド服に全く怖気づく様子などなかったカービィであった。
いつものように、騒がしくも賑やかなゲーム開発部。
しかし、今日は彼女達の今後を決定づける――大事な日であった。
それを裏付けるように、ふと時計を見つめたユズが、ポツリと呟いた。
「――――”ミレニアムプライス”、そろそろ始まるね」
その時が近づいてきたのか、自ずとモニターの目の前で、陣取る様に座り込むゲーム開発部。
各々緊張した面持ちを露わにしながら、その時を待っていた。
「……もし受賞したら、クラッカー鳴らそっか!」
重苦しくなっていく空気に耐え切れなくなったか、徐に努めて明るく提案するモモイ。
唐突な彼女の発言に、目を丸くするミドリ達だったが、表情を和らげて「そうだね」とミドリが頷く。
「ベストを尽くしたんだから……大丈夫、だよね」
「……うん。きっと、大丈夫」
ミドリの言葉に、同調するユズ。
そして、「大丈夫です」とアリスが自信を持って告げる。
「必ず、受賞します」
無意識に、抱きかかえているカービィを、ギュッと抱きしめるアリス。彼女に抱きかかえられていたカレも、しっかりと頷く。
不安を抱えながらも、確かな自信を胸に抱く彼女達。
それは間違いなく、積み重ねてきた苦労によって裏付けられたモノである。
そして――いよいよ、その時を迎える。
ミレニアムプライス・授賞式会場。
各企業の技術部や広報、そしてメディアが多く集い、会場は異様な盛り上がりを見せていた。
そんな中、壇上の上で一人の少女がマイクを持ち――
「――これより、ミレニアムプライス授賞式を開会します!」
と、エンジニア部の1年生――豊見コトリが、ハツラツとした声で告げる。
実績を持つ部活動の部員、かつ説明が得意ということで、今回の司会・進行役に抜擢されたのだろう。
自身について簡単な紹介を挟みつつ、彼女は司会を務めていく。
「今回は、これまでのミレニアムプライスの中でも最多の応募数となりました。おそらくは生徒会の方針変更により、部活動維持のために”成果”が必要になった影響かと思われます!」
活き活きと語り続けるコトリ。
心なしか、目が輝いているのはきっと気のせいではなく。
「昨年の優勝作品である、生塩ノアさんの”思い出の詩集”は、本来の意図とは少し違ったようですが……その形而上的な言葉の羅列が、ミレニアム最高の不眠症に対する治療法として評価されました」
過去の経緯を交えつつ、今回出品された作品について話は移る。
例を挙げると、”歯磨き粉と見せかけてモッツァレラチーズが出る持ち歩きチーズ入れ”や、”ミサイルが内蔵された護身用の傘”。
他にも、”ネクタイ型モバイルバッテリー”、”光学迷彩下着セット”、”ちょうど缶一個なら入る筆箱型個人用冷蔵庫”、”イケるところまで火薬力を高めましたハイブリット火薬”――
――そして、キヴォトスのインターネット上でセンセーションを巻き起こしている、レトロ風ゲームの”テイルズ・サガ・クロニクル2”など。
「――などなど、今回出品された三桁の応募作品のうち栄光の座を手にするのは――たったの7作品!」
画面越しで、彼女の発言を聞いたモモイ達が息を呑む。
この7作品の内、自分達の作品が呼ばれれば――全てが解決する。
画面に映る、コトリが口を開く。
『それでは7位から、受賞作品を発表します! 7位はエンジニア部、白石ウタハさんの”光学迷彩下着セット”――――』
それから、彼女の口から述べられていく、作品名とその効用、及び評価された理由。
7位から始まり、続けて6位、5位――と、発表されていく中。
”テイルズ・サガ・クロニクル2”は未だ呼ばれることは無かった。
最初こそ、余裕のあったモモイ達だが、それも次第に失われていく。
祈る様に自分達の名前が挙げられることを願いつつ――それも叶わぬまま、いよいよ第1位の発表に入ろうとしていた。
『――最後に! 今回のミレニアムプライスで、最高の栄誉を受賞した作品です!』
ホントにホントの、最後のチャンス。
ここで名前が挙がらなければ、全てが終わる。
『その1位は……!』
早まる心臓の鼓動を感じつつ、彼女達はコトリの言葉を待つ。
そんな彼女達を焦らす様に、間を作ったコトリが――――ついに口を開けた!
『――――CMの後で!』
「アリスっっ!!!」
「充電完了、いつでも撃てます!」
「気持ちは分かるけど、撃っちゃダメ!」
激情に駆られ、全てを葬り去らんと命ずるモモイに、同調するように従ずるアリス。必死に宥めようとするミドリの懸命な抑止により、何とか未遂に終わったが。
唯一、この騒ぎに加わらなかったユズは、気が抜けてしまった反動か、床に突っ伏したまま。
そんな彼女の反応を確かめるように、カービィは肩をポンポンとたたいていた。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
23-2
一先ず、気を落ち着かせたモモイ達。それと同時にCMが終わり、彼女達は気を引き締め直す。
それから、コトリが「さあ、それでは発表します!」と、待望の作品名を告げる。
『待望の1位は……
それ以上、聞く必要は無かった。
焦らされた割に、呆気ない顛末。
期待していた名は、結局告げられず。
我慢できなかった少女が、反射的に愛銃を構え――モニターに向けてヤケクソ気味に発砲した。
「――きゃあっ! 本当に撃ってどうするの!?」
「どうせ全部持っていかれちゃうんだし、もう関係ないっ!」
驚愕するミドリに対し、半べそを掻いて憤慨するモモイ。悔しそうに、悲しそうに表情を歪める彼女に、妹はそれ以上言葉が出てこなかった。
期待していた結末は訪れず、彼女達に突き付けられたのは、非情な現実。
重苦しくなっていく空気の中、「分かってるよ!」と、モモイが唐突に口を開いた。
「ネットの評価も悪くなかったし、ちゃんと成長してるって――全部が否定されたわけじゃない……へこたれる必要なんてないって……っ!」
今作における世間の評価と、自分自身の手応え。
成長していることを実感できた彼女は、続けていけばもっといい結果を出して――これからも皆で、もっと面白い物語が始まると夢見ていた。
きっと、最後には皆で笑顔になれるハッピーエンドがあると――彼女は本当に、信じていた。
しかしそれは、今後も部活動が続いていけば、の話。
ここが無くなってしまえば、ユズとアリス、そしてカービィは――――
「――……ううん、わたしなら、大丈夫」
悔し気に目尻に涙を浮かべたモモイの頭を、優しく撫でるユズ。
急な行動に茫然とするモモイに対し、「わたし、寮に戻る」と、ユズは凛々しい面持ちで宣言した。
その宣言に、驚くモモイとミドリ。
彼女の過去を思えば、苦い記憶しかない場所に自ら戻るというのだから、2人の反応は当然と云えるだろう。
2人の戸惑いを余所に、彼女は言葉を重ねる。
「もうわたしのことを、叩く人はいないと思う――ううん、もし仮にいたとしても、大丈夫」
そう言うと、彼女は傍にいる、小さな
視線を受けたカレは、キョトンとした様子だった。
相変わらずのカレの様子に、頬を緩ませ――
「ちゃんと面白いって、心から思ってくれた子がいるから」
と、頭を優しく撫でるユズ。
そんな彼女につられて、カービィは嬉しそうにニコニコと笑みを浮かべる。
それから他の面々を見渡し、彼女は呟く。
「それに、今のわたしにはみんながいるから……――大丈夫だよ」
ここ数日間に渡る様々な経験。それを仲間達と乗り越えた実績。
それは、失われつつあった彼女の自信を、確固たるものとしてくれたようだ。
――そうなれば、唯一の気がかりは。
「ただ……アリスちゃんや、カービィが……」
「……いえ、アリスたちは大丈夫です。”先生”が――シャーレが、もしもの時は私たちを引き取る、と言っていました」
ユズの心配に対して、気にしなくいい、と答えるアリス。
しかし、それとは裏腹に彼女の声色は、どこか暗いものであった。
そんな彼女の心境を表すかのように、「ですが……」と呟いて、
「もうみんなとは……一緒に、いられないんですね」
辛そうな彼女の顔を見て、モモイ達が表情を歪ませる。
少なくとも、今までのように会うことは難しい、とわかっているが故に。
その内、居ても立っても居られなくなったミドリが、泣き出しそうな顔で駆け寄った。
「――わ、私、毎日シャーレに行く! 2人に会いに、本当に、絶対に毎日行くから!」
言っている途中で、涙ぐむミドリ。
その傍らで、同じように感情を抑えきれなくなったモモイが、「や、やっぱりヤダ!」とぽろぽろと涙を流した。
「わ、私の部屋に連れていく! ごはんだって私の分あげるから――――」
と、モモイが言いかけている途中であった。
突如、ノックも無しに、勢いよく開かれた部室のドア。
――入ってきたのは、喜々とした表情を浮かべた早瀬ユウカと、シャーレの”先生”だった。
「――モモイ! ミドリ! アリスちゃん! ユズ!」
”――おめでとう!”
まるで打ち合わせでもしたかのように、ゲーム開発部を祝福する2人。
それに対し、あまりにも予想外だった2人の登場に、思考が追い付かないモモイ達はポカーン、と口を開けたまま固まっていた。
ピンクボールだけが”ハーイ”と呑気に挨拶したのが、更にシュールさに拍車を掛けた。
気まずい雰囲気に”あ、アレ?”と呟く”先生”と、「え、何この反応」と口を開いたユウカが、2人揃って困惑する様子を覗かせる。
――そして我に返ったモモイが、怒りに震えるようにプルプルと肩を震わす。
「な、なにさ! もう笑いに来たの!? この悪魔! 鬼! 人でなし! 太もも!!」
「ちょ、ちょっと、一体何のこと――っていうか誰が太ももよ!?」
いきなりの怒号に困惑し――そしてあんまりな言い草に怒りながら、ユウカはモモイを窘める。
その傍ら、”どうかしたの?”とミドリに尋ねる”先生”だったが、急に頭を下げる彼女に目を丸くする。
「お、お願いです”先生”! せめてあと1日だけ待ってもらえませんかっ!?」
”えっ、ちょっ”
急な申し出に、面食らう”先生”。
そんな反応に構わず、ミドリは懇願するように誠心誠意、頭を下げ続けた。
混沌としていく状況。
そこに救いの手を差し伸べるように「あ、あの……!」と、ユズが声を張り上げた。
それに気付いた一同が、彼女へと視線を移す。
「え、えっと……何が
「何って……結果、見てなかったの?」
ユズの問いに対して、怪訝な表情を浮かべるユウカ。
そんな彼女の返答に、ますます困惑の表情を浮かべるモモイ達。
そんな彼女達を見兼ねて「今も放送中なんだからちゃんと見てみなさいよ」とモニターへ視線を移し――蜂の巣になったモニターが目に入り、目を丸くする。
「ちょ、ちょっと何が起きたの!?」
「その……お姉ちゃんが、モニターを吹っ飛ばしちゃって……」
バツが悪そうなミドリの答えに、「ほんとに何をしてるのよ……」とユウカは呆れ果てる。
仕方なく自分のスマホを取り出し、今も続いている授賞式の生中継映像を彼女達に見せつけるのであった。
『――――……以上の理由から、今回は”特別賞”を設けます』
映像に映ったのは、審査員と思われる大人のロボット。
話の流れ的に、何か特例事項を説明していたようだ。
そこから、審査員は
曰く――最初こそレトロ風という時代を超えたコンセプトや、次々と想像を超えていく展開と、一見それらとマッチしそうにない不可思議な世界観に困惑こそした、と。
しかし、新しい世界を旅して、ひとつひとつ新たな絆を結びながら、魔王を倒しに行く――古き良き
『プレイしながら、かつて初めてゲームに夢中になった頃の思い出を、鮮明に思い出しました。そういった点を評価して、この作品に……』
そこで一度、言葉を切り――改めて、その作品名を口にした。
『――
――これは、夢なのではないか?
そう思うほどに、モモイ達はあまりにも都合の良い展開に、唖然としていた。
先程の状況と、今の状況が一転したが故に。
そんな彼女達の様子に構わず、「その、実は」とユウカは少し照れくさそうな顔を浮かべる。
「私もプレイしてみたの。決して手放しに面白かったとは言えないけれど……良いゲームを遊んだ後の、あの独特な感覚が味わえた」
どこか懐かしそうに、しみじみと彼女は語り続ける。
「――あなたたちのおかげで思い出したわ。小さいころに遊んでた、色んなゲームのこと。あの頃の……新しい世界で旅をする楽しさを」
そう語り終えると、モモイを見据えたユウカ。
急に見つめられたことに戸惑うモモイの反応を余所に、ユウカは少し申し訳なさそうな顔を浮かべ――
「……ご、ごめんなさい。この間、ここにあるゲーム機のこと、”ガラクタ”って言って……」
と、以前口走ってしまったことについて謝罪した。
まだアリス達を見つける前。廃部について再通知に来た際、ユウカがモモイに対して言ってしまった言葉である。
その言葉に、目をパチクリさせて。
そして、ようやく思考が追い付いてきたモモイが「えっと、っていうことは」と、恐る恐る尋ねた。
「――わ、私たち、廃部にはならないんだよね!?」
期待に声を震わせたモモイが、確かめるように問い掛ける。
その言葉に、ユウカはしっかりと頷く。
「とはいえ正式な受賞じゃないから、あくまでも”臨時の猶予”――来学期までゲーム開発部の部室没収、及び廃部を保留する、っていう措置なんだけど……少なくとも今から廃部ってことは――」
――それ以上、聞く必要は無かった。
彼女達にとって大事なのは、
我慢できなかった彼女が、喜びに打ち震えるように身体を震わせ――両手を突き上げた。
「やったああぁぁぁっ!」
歓喜の声を上げるモモイを筆頭に、ミドリとユズが喜びを露わにする。
「良かった……!」
「やった……やったあ……!」
互いに抱き合って、喜びを共有する3人。
一方で、何が起こっているのか、いまいち把握できていないアリスとカービィは、疑問符を浮かべたまま。
そんなアリス達にミドリが、満面の笑みを浮かべて告げる。
「アリスちゃん、カービィ! 私たち、特別賞を受賞したんだよ! だからこの場所も、今まで通りのまま!」
はしゃぐミドリに、困惑するアリス。
しかし、彼女の言いたいことがなんとなく伝わっているのか、「えっと、つまり」と尋ねる。
「これからも……みんなと一緒にいて、良いのですか……?」
その言葉に、モモイ達がしっかりと頷く。
嘘じゃない、と云わんばかりに――しっかりと。
それを見たアリスが、ようやく実感が湧く。
本当に、こんな夢のような時間が、まだ続くということに。
目尻に涙を浮かべながらも、彼女は正直な気持ちを口にした。
「アリスも――……私も、嬉しいです」
そんな彼女に、同調するように――
喜びを体現するかの如く、満面の笑顔でカレは空中へと跳び出した。
それが、彼女達にとっての合図だった。
抑えきれない感情に突き動かされるように、アリスを――そして、落ちてきたカービィを囲うように抱き着く3人。
「アリスちゃんっ! カービィっ!」
「私たち……っ!」
「これからも、ずっと一緒だよ!」
ミドリ、モモイ、ユズが泣きながらも、微笑む。
カービィも嬉しそうに笑みを浮かべる。
そして、ようやく掴んだ
「――はいっ、これからも、よろしくお願いします……!」
4人の少女達と1匹の生き物が幸せいっぱいに戯れる光景を――
”先生”とユウカは、微笑ましそうに見守っていたのであった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
23-3
数々の苦難を乗り越え、ついに部活動の廃部を阻止したゲーム開発部。
すべての問題を解決したとは言い難いが、少なくともこれ以上無い成果であった。
ようやく平穏な日常を迎えられる、と喜びを噛み締める少女達。
これからの毎日に、期待に胸を膨らませるのであった――
そんな、彼女達は――今。
「――……って、なんで私たち、報告書を書かせられてるの!?」
原稿用紙を目の前にして、頭を悩ませていた。
モモイが怒号を上げる傍で、はぁ、と溜息を吐いたミドリが「仕方ないでしょ」と姉を窘める。
「今の私たちは、
「だからって、今じゃなくていいじゃん!」
ミドリの指摘に、納得いかないとばかりに駄々をこねるモモイ。
そんなモモイの様子に苦笑いを浮かべながらも、原稿用紙のマス目を埋めていくユズ。そして、「ちりょくをアップさせるトレーニングですね、理解しました!」とはりきりながら、アリスも作業に勤しんでいた。
そして、全くマスが埋まっていない原稿用紙を目の敵にしていたモモイが、「おのれユウカめ~!」と、先程までこの場にいた人物に、恨み言を吐くのであった。
彼女達が廃部を免れたことに喜び合った、その後。
モモイはユウカから突然、何かを手渡された。
始めこそ、受賞したお祝い品だと思い込んだモモイが目を輝かせ――すぐに首を傾げる。
渡されたのは、数十枚分の原稿用紙だった。
渡された代物に疑問符を浮かべるモモイ達に対して、彼女はにこやかに笑みを浮かべて言った。
『この間の襲撃についての詳細を、原稿用紙20枚分――明後日までに提出して頂戴ね』
予想外の発言に、目が点になるモモイ。
どういうことだってばよ、と聞き返す前に、ユウカが答える。
『シャーレの部員として起こした事案についても、ちゃんと報告する義務があるって知ってた?』
思わず、モモイ達が”先生”へと振り返る。
”先生”が申し訳なさそうに、頬を引き攣らせた。
この間のセミナー襲撃。モモイ達はシャーレの部員として動くことで、セミナーからの追及を免れた。故に、この件に関してセミナー側が彼女達に何か要求することはできない。
しかし、シャーレ側として、他の方面へと報告する義務は存在する。
その場合、当時の当番・日直がその業務を担当することとなっている。
つまり、この間の騒動において、モモイ達には報告書を出す義務が残ったままであった。
実は”先生”も、ちょっと忘れてた。
とはいえ、今までやったことの無い作業をいきなりやらせるのは流石に難しい――ということで、彼女達には文章だけ書いてもらい、後の補足や文体の修正はユウカが担う、ということになった。
何故、彼女が取り仕切っているのかは”先生”のみぞ知る。
思わぬ事態に冷や汗を掻くモモイが『わ、私たち、今はゲーム開発部だし』と、この場を切り抜けようと意地でも足掻く。
しかし、ユウカが突き付けた”シャーレの当番・日直申請書”を目の前にして、彼女は栗みたいな口をあんぐりさせた。
当然、該当者はここにいるゲーム開発部の4人である。
それを承認したことを示す、ミレニアム生徒会の捺印もバッチリ。
咄嗟に、モモイ達が”先生”へと振り返る。
”先生”が本当に申し訳なさそうに、頭を下げた。
――そして、20枚分の原稿用紙を、それぞれ手分けして対応するモモイ達であった。
余分に貰っているので、一枚破れても全く問題ない。素晴らしい配慮である。
「完全に、この間の意趣返しだったね」
「反論の余地も、なかったね……」
先程のユウカの様子を思い出し呟くミドリに、頷くユズ。
申請書を突き出すのといい、自分達がやったことを、そのままやり返された気分であった。
2人の会話に耳を傾けていたモモイが、「悔しい、悔しい~!」と言葉通りの表情を浮かべる。
彼女にとって、ユウカにやり返されたという事実はかなり屈辱的だったらしい。
そんなモモイに対し――「でもさ」と、いたずらっぽく笑うミドリ。
「お姉ちゃん、ユウカに褒められて嬉しそうにしてたじゃん」
その言葉に「うぐっ」と、言葉を詰まらせるモモイ。
図星の反応であった。
言いたいことを言い終えたユウカが、ゲーム開発部の部室から退出する時である。
原稿用紙の束を握り込んだモモイが、その背中を恨みがましく見つめていた――するといきなり、ユウカが彼女の名を呼んだ。
急に呼ばれたことに肩を跳ねるモモイ。
まさか読心術でも使えるのか、と内心、戦慄したとか。
そんな彼女の考えなど露知らず、ユウカは振り返ると――
彼女を見つめて、微笑んだ。
『……本当に、おめでとう。見直したわ』
まるで自分のことのように嬉しそうに微笑む彼女に、目を丸くするモモイ。
その内、気恥ずかしくなってきたのか『そ、それじゃあ、ちゃんと期限守りなさいよっ』と少し頬を染めながらユウカは退出していった。
その時、姉が浮かべていた表情を、双子の妹は隣からしっかりと見ていたとか。
その時のことを思い出したモモイが「うぅ~」と小っ恥ずかしいそうに狼狽える。実際に嬉しかったのは本当なのか、ミドリの指摘を否定できない模様。
そんな彼女のいじらしい反応に、微笑むユズとアリス。
すると、今まで会話に耳を傾けていたアリスが、あることに気が付く。
「何を描いてるんですか、カービィ?」
隣にいたカービィが、原稿用紙の裏に何か描いていることに気付き、彼女は首を傾げながら問いかける。
他の3人もその言葉に反応し、クレヨンを手に持つカレの方へと注目する。
そんな彼女の言葉に顔を上げると、今まで描いていたものを見せつけるカービィ。
そして――用紙に描かれている絵に、4人は目を丸くした。
お世辞にも上手いとは言えない、園児並みの画力。
しかし、ちゃんと特徴を捉えているせいか、誰が描かれているのかは分かりやすい。
カレが見せつけた紙には、モモイやミドリ、ユズにアリス――そしてカービィが笑顔を浮かべた姿が描かれていた。
自信満々に、皆へと絵を見せつけるカービィ。
その絵をジッと見つめていたアリスは、やがて頬を綻ばせて、呟く。
「何故かはわかりませんが……この絵を見てると、胸が温かくなります」
「……うん。とっても、温かい」
アリスがしみじみと呟いた言葉に、同意するようにユズは頷く。
拙い絵ではあるが、込められた想いはちゃんと伝わっているようだった。
「いつもは、のんびり屋さんだけど……私たちのために一生懸命頑張ってくれたよね」
絵を優しい眼差しで眺めていたミドリが、この不思議な生き物に色々と助けられたことを思い返し、感慨深く呟く。
最後の最後まで自分達に付き添ってくれたカレに対し、彼女が初めに抱いていた警戒心は、もはや無かった。
すると、1人静かにカレを見つめていたモモイが、「よしっ」と思い立ったように勢い良く立ち上がる。
いきなり立ち上がった彼女に、驚く一同――それに構わず、
「今から、授与式を始めよう!」
と、モモイは声高々に告げた。
一方、彼女の提案に首を傾げる3人を代表して、ミドリが尋ねる。
「……えっと、いきなりどうしたの、お姉ちゃん?」
「だから授与式だって、
声を弾ませるモモイの返事に、ますます困惑するミドリ。
今までも突拍子な提案をすることはあるが、今回はそれに輪をかけたものであった。その証拠に、どちらかというと巻き込まれる側であったユズも、目をパチクリさせている。
そんな彼女の発言に「一体何を贈るのですか?」とアリスが尋ねると、得意げに笑みを浮かべたモモイが口を開く。
キョトンとするカービィを見据えて、言い放つ。
「もちろん――ゲーム開発部の
それから――その日から。
ゲーム開発部のマスコットとして、ミレニアムサイエンススクール――否、
カレが名を馳せることとなったのは――――また、別の話。
――データ復旧率98.00%――
誰もいない、深夜の部室。暗闇の中で、ゲーム機が独りでに立ち上がる。
画面から、血のような赤い光を発しながら。
――システム作動……準備完了――
続けて、やはり独りでにプログラムをセットするゲーム機。
しばらくして、読み込みが完了する。
その時、画面には”Divi:Sion”という、白文字が浮かんだ。
――AL-1S……いえ……
――私の、大事な…………!@#$%$^&*(!@$!!――
星が輝く、透き通った夜空に。
小さな小さな暗雲が、立ち込めるのであった。
【時計じかけの花のパヴァーヌ 1章:レトロチック・ロマン】
【お し ま い】
タメになる☆TIPS集? ああいい奴だったよ。
一先ず、今回で第一章が完結したので、ちゃんとした後書きを。長いよ。
まず、ここまで見てくださった皆様に、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
あらすじに書いた通り、私の欲望と願望をぶち込んだ作品だったので、ここまで多くの人に見て下さったことに本当に驚いてます。「50ぐらいお気に入り行けば御の字じゃろ^^」って思ってたら、その10倍以上登録されててビビったわ
改めて、”星のカービィ”と”ブルーアーカイブ”の人気に舌を巻く次第でした。いやほんとに。
この作品を通して、ブルアカしか知らなかった人がカービィに興味を持って、逆にカービィしか知らなかった人がブルアカに興味を持ってくれれば、両作品のファンとして、この上ない喜びでございます。勿論、両作品を知っている人も、当作品を楽しんでいただければ光栄です。
アンケも多くの方から票を頂き、感謝の至りです。まさか100票以上入るとは……。
アンケの結果通り ①メイド部→②セミナー→③エンジニア部→④ヴェリタス
の、順で投稿させていただきます。でもちゃんと最後まで書くよ。だって書きたいし
長くなりましたが、最後に今後の展開について。
繰り返しになりますが、第二章に移る前に日常回的な小話を何話か挟んでから、という流れを考えています。なのでメインにはあんまり絡まない……はず……。
ちょっと自分的にも羽根休み的な部分もあったり。上手く行くかは別として
最後になりますが、改めてここまで見てくださって、ありがとうございました。
引き続き、この作品をどうぞよろしくお願いいたします。
小話、どの部活動を先に書くべき?
-
セミナー
-
エンジニア部
-
ヴェリタス
-
メイド部(C&C)